JP2006348259A - ポリイミドフィルムおよびその製造方法 - Google Patents

ポリイミドフィルムおよびその製造方法 Download PDF

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Keizo Kawahara
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Abstract

【課題】機械特性、CTE特性に優れた厚手のベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドフィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】フィルムの長手方向および幅方向の引張弾性率がいずれも6000MPa以上、フィルムの長手方向および幅方向の引張破断伸度がいずれも20%以上、かつフィルムの長手方向および幅方向の線膨張係数がいずれも10ppm/℃以下である厚さ26μm以上のベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドフィルム。ポリアミド酸溶液を乾燥したゲルフィルムに見られる吸熱ピークの前後30℃の温度で2〜5分間処理して、その後ただちに150〜250℃にて2〜5分間処理し、その後ただちに300〜500℃にて2〜10分間処理、150℃以上にて処理する時間が合計で20分以下で製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、機械特性、低熱膨張性に優れた厚手のポリイミドフィルムおよびその製造方法に関する。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンを原料として製造されるポリイミドフィルムは、種々の分野で広く利用されている。特に、フレキシブルプリント配線用銅張基板(FPC)やテープ・オートメーテッド・ボンディング(TAB)用キャリアテープなどの製造に用いる基材フィルムとして広く使用されている。
ベンゾオキサゾール環を含有するポリイミドフィルムは、特に耐熱性、機械特性に優れ、低い熱膨張係数(CTEという)を示すことが知られている。(特許文献1〜3参照)
しかしながら、かかる先願特許には、フィルムの膜厚が厚い場合の、機械特性、CTE特性については開示されていないが、実際に厚いフィルムを先願特許の方法で得ようとした場合、十分な機械特性が得られず、また熱膨張係数も薄いフィルムに比べて高いものしか得られないという問題があった。本発明者は、従来技術においては26μm以上の膜厚では、低CTEのフィルムを得ることが出来ないことを確認した。
特公昭45−8435号公報 特開平6−56992公報 特表平10−508059
本発明者らは、機械特性、CTE特性などに優れた厚手のベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドフィルムを得ること、および工業的規模で生産する製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の発明を完成した。すなわち本発明は、下記の構成からなる。
1. ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を含むジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物を含むテトラカルボン酸無水物類から得られるポリアミド酸の溶液を乾燥してゲルフィルムとなし、さらに熱処理により脱水することにより得られるポリイミドフィルムであって、フィルム厚さが26μm以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の引張弾性率がいずれも6000MPa以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の引張破断伸度がいずれも20%以上であり、かつフィルムの長手方向および幅方向の線膨張係数がいずれも10ppm/℃以下であるポリイミドフィルム。
2. フィルムの幅が500mm以上であり、面積が90m2以上である上記1に記載のポリイミドフィルム。
3. フィルム厚さが35μm以上である上記2に記載のポリイミドフィルム。
4. ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を含むジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物を含むテトラカルボン酸無水物類から得られるポリアミド酸の溶液を乾燥して得られるゲルフィルムを、ゲルフィルムの吸熱ピーク温度の−30℃〜+10℃の温度の範囲で2〜5分間処理して、その後ただちに150〜250℃にて2〜5分間処理し、その後ただちに、300〜500℃にて2〜10分間処理する工程を含み、150℃以上にて処理する時間が合計で20分以下であることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
(ここに吸熱ピーク温度とは、DSCにより測定したゲルフィルムの25〜225℃の範囲に於ける吸発熱挙動において見られる吸熱のピーク温度であり、複数のピークが得られる場合には最も大きなピークの温度をいう。)
5. ゲルフィルムの残留溶媒量が40質量%以下であることを特徴とする上記4に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
本発明によれば、高い剛性、強度、耐熱性を有するベンゾオキサゾール構造を有する厚手のポリイミドフィルムを提供できる。本発明で得られた厚手のベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドフィルムは、寸法精度の要求が厳しいフレキシブルプリント配線用銅張基板(FPC)やテープ・オートメーテッド・ボンディング(TAB)用キャリアテープなどの製造に用いる基材フィルムとして有用である。また、本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、上記の優れた特性を有するベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドフィルムを工業的規模で提供し得る。
本発明のポリイミドフィルムは、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を含むジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物を含むテトラカルボン酸無水物類から得られるポリアミド酸の溶液を乾燥してゲルフィルムとなし、さらに熱処理により脱水することにより得られる。
<芳香族ジアミン類>
芳香族ジアミン類としては、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンおよびその芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、アルコキシル基、シアノ基等で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。ここで、上記アルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部又は全部は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類は、単独で用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。本発明で用いるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、具体的には以下のものが挙げられる。
Figure 2006348259
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これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましく、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールがより好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つのアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化2」〜「化5」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、全ジアミンの30モル%以下であれば下記に例示されるベンゾオキサゾール構造を有しないジアミン類を一種又は二種以上を併用しても構わない。そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、
ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、
1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
<芳香族テトラカルボン酸無水物類>
本発明で用いられる芳香族テトラカルボン酸無水物としては、具体的な例としては、以下のものが挙げられる。
Figure 2006348259
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これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%以下であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種又は二種以上を併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明のポリイミドフィルムは、まず、(a)ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸無水物類とを溶媒中で重合させてポリアミド酸溶液を得て(以下、工程(a)ともいう。)、次いで、(b)ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して自己支持性がでる程度、具体的には乾燥後の全質量に対する残留溶媒量が40質量%以下になる条件で乾燥することにより自己支持性を有するゲルフィルムを得て(以下、工程(b)ともいう。)、次いで、(c)ゲルフィルムを後述の条件で熱処理して、イミド化反応させる(以下、工程(c)ともいう。)ことにより製造される。
上記工程(a)〜(c)において、必要によりフィルム(ゲルフィルムを含む。)の延伸処理を行ってもよい。延伸処理を行う場合の面積倍率は、好ましく2以下であり、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.3以下である。なお、さらに好ましくは延伸処理を行わない無延伸フィルムとするのが好ましい。面積倍率を上記範囲内にすることにより、イミド化後の伸度の低下を抑制することができる。
無延伸フィルムとは、テンター延伸、ロール延伸、インフレーション延伸などといった機械的外力による意図的な延伸を加えずに得られるフィルムをいう。例えばゲルフィルムの両端を固定した場合に、溶媒蒸発にともない収縮挙動が生じる場合があるが、この場合は機械的外力を意図的に加えていないから、本発明では無延伸フィルムとして扱う。
<工程(a)>
ベンゾオキサゾール環を有する芳香族ジアミン類と、テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは8〜30質量%となるような量が挙げられる。
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜80時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは8〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜500Pa・sであり、より好ましくは30〜300Pa・sである。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。さらに、重合反応時および重合反応後に、フィルムに滑り性を付与するなどといったハンドリング性の向上のために、有機系又は無機系の滑剤を添加してもよい。
<工程(b)>
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラム又はベルト状回転体などが例示される。適度な剛性と高い平滑性を有する高分子フィルムは、上記支持体として好ましく利用できる。好ましくは、支持体の表面は金属であり、より好ましくは、錆び難く耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体の表面は必要に応じて鏡面にしたり、あるいは梨地状に加工することができる。支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
ゲルフィルムを自己支持性が出る程度に乾燥する際の残留溶媒量は、好ましくは20〜50質量%であり、より好ましくは25〜40質量%である。当該残留溶媒量が20質量%より低い場合は、イミド化反応が不所望に進行してしまい、あるいは、分子量低下により、ゲルフィルム自体が脆くなりやすい。また、50質量%を超える場合は、自己支持性が不十分となり、フィルムの搬送が困難になる場合がある。工程(b)にて得られるゲルフィルム(ゲルフィルム)は、少なくともベンゾオキサゾール構造を有するポリアミド酸を含み、一部のポリアミド酸はイミド化していてもよい。
上記のようなゲルフィルムを得るための乾燥条件としては、150℃未満での処理が挙げられる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒として用いる場合の乾燥温度は、好ましくは100〜130℃、より好ましくは105〜125℃であり、さらに好ましくは110〜120℃である。乾燥温度が130℃より高い場合は、分子量低下がおこり、ゲルフィルムが脆くなりやすい。また、ゲルフィルム製造時にイミド化が一部進行し、イミド化工程時に所望の物性が得られにくくなる。また90℃より低い場合は、乾燥時間が長くなり、分子量低下がおこりやすく、また乾燥不十分でハンドリング性が悪くなる傾向がある。また、乾燥時間としては乾燥温度にもよるが、好ましくは10〜90分間であり、より好ましくは15〜80分間である。乾燥時間が90分間より長い場合は、分子量低下によりフィルムが脆くなりやすく、また10分間より低い場合は、乾燥不十分でハンドリング性が悪くなる傾向がある。また、乾燥効率の向上又は乾燥時の気泡発生抑制のために、100〜130℃の範囲で温度を段階的に昇温して、乾燥してもよい。
そのような条件を達する乾燥装置も従来公知のものを適用でき、熱風、熱窒素、遠赤外線、高周波誘導加熱などを挙げることができる。
<工程(c)>
工程(b)で得られたゲルフィルムを構成するポリアミド酸をイミド化することでポリイミドフィルムが得られる。その具体的な方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
ベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドの厚さを制御するために、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度を適宜調節し得る。
熱閉環法による場合には、フィルムを加熱すべき最高の温度は、好ましくは250〜550℃である。前記範囲内にすることで、閉環反応の充分なる進行と劣化の抑制とを両立し得る。熱閉環法による場合の加熱プロファイルについて、以下にやや詳しく説明する。
好ましくは、イミド化のための加熱は3段階以上の加熱工程を有する。前記加熱工程としては、乾燥中に見られる吸熱挙動の前後30℃の範囲で2〜5分間処理(以下、「第1段目の加熱」ともいう)して、その後ただちに150〜250℃にて2〜5分間処理(以下、「第2段目の加熱」ともいう)し、その後ただちに、300〜500℃にて2〜10分間処理(以下、「第3段目の加熱」ともいう)する工程を含み、150℃以上にて処理する時間が合計で20分以下であることが好ましい。
加熱工程の説明において、「処理する」とは、規定された範囲の温度下に規定された時間フィルムを存在させることを意味し、必ずしもフィルム自体の温度が規定された温度に、規定された時間到達することを要するものではない。加熱を施す態様は特に制限されず、フィルムをバッチ式の加熱手段に投入してもよいし、予め温度が定められたトンネル炉などにフィルムを搬送することでもよい。長尺のフィルムを処理することを考慮すると、異なる温度に設定された複数の区画を有するトンネル炉に規定の速度でフィルムを搬送することによる加熱が好ましい。安定した物性としわなどの抑制のために、より好ましくは、両端部を把持した状態で搬送する。把持方式としては、ピンテンター方式やクリップテンター方式が一般的である。フィルム幅方向の把持機構を有しないロールツーロール方式も可能である。
第2段目の加熱を第1段目の加熱の「後ただちに行う」とは、第1段目の加熱終了後に、温度が1段目加熱温度未満である環境にフィルムを曝すことなしに、150〜250℃の環境下にフィルムを存在させることを意味する。そのような方法の実現手段としては、典型的には、異なる温度に設定したゾーンを有する連続式の乾燥炉等でのフィルムの搬送が挙げられる。
第3段目の加熱を第2段目の加熱の「後ただちに行う」も上記同様であり、第2段目の加熱温度未満である環境にフィルムを曝すことなしに、300〜500℃の環境下にフィルムを存在させることを意味する。
第1段目の加熱と第2段目の加熱の温度差は好ましくは100℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは30℃以上である。そのような温度差を設けることで、イミド化反応前に可能な限りゲルフィルム中の溶媒を除いてやることが可能であり、その結果として、フィルムが高均一性、高配向性となって所望の特性を呈するものと考えられる。
第2段目の加熱と第3段目の加熱の温度差は好ましくは150℃以上であり、より好ましくは200℃以上であり、さらに好ましくは230℃以上である。そのような温度差を設けることで、急激なイミド化反応が可能であり、その結果として、フィルムが高密度、高配向性となって所望の特性を呈するものと考えられる。
第1段目の加熱の処理時間は、好ましくは1〜10分、より好ましくは1〜5分である。上記範囲内にすることにより、ゲルフィルム中の溶剤を十分に蒸発させることができるので後の加熱による気泡発生等を効果的に抑制することができ、結果として、良好なる物性を得ることができる。
第2段目の加熱の処理時間は、好ましくは1〜10分、より好ましくは1〜5分である。上記範囲内にすることにより、ポリアミド酸の不所望な解離に起因する分子量低下を抑制することができ、結果として、良好なる物性を得ることができる。
第3段目の加熱の処理時間は、好ましくは1〜10分、より好ましくは3〜7分である。上記範囲内にすることにより、十分にイミド化させることができ、かつ、フィルムの劣化を抑制することができる。
本発明のベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドの製造において、150℃以上にて処理する時間の合計は、好ましくは20分以下であり、より好ましくは4〜10分である。上記のような範囲にすることにより、電子部品の基材フィルムとして好適なフィルムを工業的規模で生産できるという利点がある。
好ましくは、製造工程中における150℃以上の処理は連続的になされる。換言すると、ひとたびフィルムを150℃以上の環境下に存在させたならば、150℃未満の環境下に曝すことなく、上記の加熱処理を合計20分以下で行った後に、室温にまで冷却させることが好ましい。
化学閉環法を施す場合には、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布した後、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有するフィルムを形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは150〜250℃による2〜5分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは300〜550℃による2〜5分間の熱処理である。
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
熱閉環反応であっても、化学閉環法であっても、支持体に形成されたポリイミドフィルムの前駆体(ゲルフィルム)を完全にイミド化する前に支持体から剥離してもよいし、イミド化後に剥離してもよい。
厚さが26μm以上の厚手のポリイミドフィルムにおいて良好な機械的物性や低CTE特性が得られない原因は、製膜工程において分子配向が成長しないためと推察される。ポリイミドフィルムの製膜過程における分子配向は、ゲルフィルム作製時の溶剤の揮発に伴うフィルムの収縮(厚さ方向)、加熱イミド化工程における、さらなる乾燥と脱水反応に伴う収縮、フィルムの把持によりフィルムに加えられる張力により促進される。PIBOの如き剛直分子鎖を有するポリイミドにおいてはイミド化反応後には分子鎖運動の自由度が損なわれるため、分子配向は主にイミド化反応前のポリアミド酸の段階に支配される。すなわち、高配向のポリイミドフィルムを得るためには、ポリアミド酸からなるゲルフィルムの段階で十分な配向成長をおこなう必要があるものと考えられる。
支持体に塗布されたポリアミド酸溶液の乾燥は塗膜表面からのみとなるため、フィルムの厚さが厚い場合には、乾燥に長時間を要する。ゲルフィルムの残留溶媒量は出来るだけ低い方が望ましい。ポリアミド酸溶液中の溶媒にはポリアミド酸分子鎖に拘束された溶媒成分と、拘束されていない溶媒成分があることが知られており、機械的物性を低CTE特性の点で望ましいゲルフィルムの形態とは、ポリアミド酸と拘束溶媒のみからなるゲルフィルムである。
乾燥時間を早めるために温度を高めるのは衆知であるが、温度を高めると乾燥と同時に脱水反応が生じ、イミド化が進行し、分子鎖の運動性が損なわれるため、高配向のゲルフィルムを得ることはできない。
本発明者らは、最低限の自己支持性が達せられた段階でゲルフィルムを支持体から剥離し、支持体無しの状態でさらに乾燥を継続することにより、より乾燥が進んだ高配向のゲルフィルムを得るべく研究を行った結果、ゲルフィルム剥離後の乾燥は非常に注意深く行う必要があることを見出した。すなわち、乾燥温度は、ゲルフィルムの吸熱ピーク温度から導かれる特定の温度範囲である必要があり、この温度範囲より高い温度で乾燥を行うとゲルフィルムの分子量低下とイミド化反応が進みすぎ、機械特性の低下を招く。またこの範囲より温度が低い場合には、乾燥に長時間を要し、生産性が低下すると共に、ゲルフィルムの緩和がすすみ、フィルムの寸法安定性や平面性が低下する。
吸熱ピーク温度とは、DSCにより測定したゲルフィルムの25〜225℃の範囲に於ける吸発熱挙動において見られる吸熱のピーク温度であり、複数のピークが得られる場合には最も大きなピークの温度を云う。
係る吸熱はポリアミド酸分子鎖に束縛された溶媒が脱離する温度と考えられる。係る吸熱ピークを大きく越えない温度で、ゲルフィルム剥離後の乾燥を行うことにより、イミド化反応を抑制しつつ非拘束溶媒をゲルフィルムから除き、ポリアミド酸と拘束溶媒のみからなる理想に近いゲルフィルムを得ることが出来るものである。
本発明のポリイミドフィルムは、26μm以上の厚さのフィルムであり、かつフィルムの長手方向および幅方向の引張弾性率がいずれも6000MPa以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の引張破断伸度がいずれも20%以上であり、かつフィルムの長手方向および幅方向の線膨張係数がいずれも10ppm/℃以下である。
ここで、フィルムの長手方向および幅方向は、長尺の帯状を呈するフィルムの長手方向および幅方向をさす。
ポリイミドフィルムの引張弾性率が6000MPaよりも小さいと、剛直性が不足して取り扱い難くなるという不具合がある。フィルムの長手方向および幅方向の引張弾性率はいずれも、好ましくは6000〜12000MPaであり、より好ましくは7000〜10000MPaである。フィルムの長手方向および幅方向の引張弾性率がいずれも上記好ましい範囲内であれば、フィルムを薄くしても充分に取り扱い易くなるという利点がある。
ポリイミドフィルムの引張弾性率を向上させる手段としては、上記製膜条件を適用することが重要であるが、更にポリアミド酸の分子量を上げることも有効である。ポリアミド酸の還元粘度は、2.0〜7.0dl/gが好ましく、特に3.0〜5.0dl/gが好ましい。還元粘度が高すぎるとポリアミド酸溶液の粘度が高すぎて製膜しにくくなる場合がある。
ポリイミドフィルムの引張破断伸度が20%以上よりも小さいと、フィルム巻き取り時や加工時に破断しやすくなる。ポリイミドフィルムの長手方向および幅方向の引張破断伸度はいずれも、好ましくは20〜80%であり、より好ましくは25〜60%である。
ポリイミドフィルムの引張破断伸度を向上させる手段は、引張弾性率向上と同様に、上記製膜条件を適用することが重要であるが、更にポリアミド酸の分子量を上げることも有効である。ポリアミド酸の還元粘度は、2.0〜7.0dl/gが好ましく、特に3.0〜5.0dl/gが好ましい。還元粘度が高すぎるとポリアミド酸溶液の粘度が高すぎて製膜しにくくなる場合がある。
ポリイミドフィルムの線膨張係数が10ppm/℃よりも大きいと、温度変化による寸法変化が大きく電子部品用の基板として用いる場合に残留応力が生じて故障の原因になり易いという不具合がある。フィルムの長手方向および幅方向の線膨張係数はいずれも、好ましくは0〜10ppm/℃であり、より好ましくは0〜5ppm/℃である。フィルムの長手方向および幅方向の線膨張係数がいずれも上記好ましい範囲内であれば、寸法変化が小さく、電子部品用の基板として用いる際に信頼性が向上するという利点がある。ポリイミドフィルムの線膨張係数を低くする手段としては、イミド化の際に上述の加熱処理を施すことが挙げられる。
本発明のポリイミドフィルムの厚さは26μm以上であれば特に限定されないが、例えばプリント配線基板用ベース基板に用いることを考慮すると、通常26〜150μm、好ましくは26〜100μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
本発明のポリイミドフィルムの大きさに特に限定はない。上述したトンネル炉を用いる製造方法によれば、例えば、幅500mm以上、面積90m2以上の長尺フィルム、大面積フィルムを製造することができる。
本発明のポリイミドフィルムでは、当該フィルム表面に微細な突起を形成させ滑り性を発現させるために滑剤が添加されていてもよい。滑剤としては公知の有機、無機の微粒子を使用することができる。有機粒子、無機粒子の材質は特に限定されず、フィラーとして通常用いられる素材を用いればよい。具体的には、ベンゾグアナミン粒子、ポリイミド粒子などの耐熱性樹脂微粒子、SiO2、TiO2、B23、Al23、Sb23、BeO、MgO、CaO、SrO等の金属酸化物、AlN等の金属窒化物、IIa族のアルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ra)のオルトリン酸塩化合物、同じくIIa族のアルカリ土類金属の炭酸塩、Al、TiV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ta、W、Pt、Au、Pb、Bi、C、Si等の金属、半金属の微粉末、上記金属を含む合金粉末や複合粉末、その他の鉱物類を用いることができる。かかる滑剤の平均粒子径は、好ましくは0.05〜2.5μmの範囲である。フィルムの全質量に対する滑剤の添加量は、好ましくは0.003〜2.0質量%である。滑剤粒子は球形であることが好ましい。
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN,Nージメチルアセトアミドに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
2.フィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン(登録商標)1254D)を用いて測定した。
3.フィルムの引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
乾燥後のフィルムを長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ長さ100mm、幅10mmの短冊状に切り出して試験片を得た。この試験片について、引張試験機(島津製作所製オートグラフ(登録商標)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmにて、引張弾性率、引張強度および引張破断伸度を求めた。
4.フィルムの線膨張係数(CTE)
測定対象のフィルムについて、下記条件にて長手方向(MD)および幅方向(TD)の伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、・、・、・、と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、各方向ごとの全測定値の平均値をCTEとして算出した。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
5.フィルムの面配向係数
測定対象のフィルムを測定治具に装着して以下の条件にてX線回折測定を行って、2θ=21.8°付近に現れる回折ピークについての極点図を求めた。
装置名 ;(株)リガク製RINT 2100PC、多目的試料台
電圧、電流値 ;40kV、40mA
測定法 ;反射法および透過法
走査範囲 ;反射法 α;15〜90°/2.5°間隔
β;0〜360°/5°間隔
反射法 α;0〜15°/2.5°間隔
β;0〜360°/5°間隔
スリット ;DS 0.1mm、SS 7mm、RS 7mm、
縦発散制限スリット 1.2mm
走査スピード ;連続(360°/min)
検出器 ;シンチレーションカウンター
図1は、この極点図を模式的に表したものである。図中、2本の破線部における回折強度プロファイルからピーク半値幅(HMDおよびHTD)を求め、HMDおよびHTDの平均値をHa(単位:°)と定義した。尚、ピーク半値幅は、リガク製解析プログラムを用いて求めた。このようにして得られたHaから、ベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドの面配向係数を次式により算出した。
面配向係数 =(180°− Ha)÷180°
6.フィルムの密度
ベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドを、5mm×5mmのサイズに切り出し、密度測定に供した。この切り出しサンプルを、硝酸カルシウム水溶液で調製した密度勾配管に投入し、予め投入した密度が既知の標準フロートの位置と密度の検量線および5時間後のサンプル位置から、密度を測定した。なお、密度勾配管の液温は30℃である。
7.ゲルフィルムの吸熱ピーク温度
試料を下記条件でDSC測定し、吸熱ピーク温度を求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製DSC3100S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料重量 ; 4mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
(実施例1)
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、500質量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、8000質量部のN,Nージメチルアセトアミドを加えて完全に溶解させてから、480質量部のピロメリット酸二無水物を加え、さらに球状アモルファスシリカ粒子シーホスターKE−P30(日本触媒株式会社製)5.0質量部をホモジナイザーにて予備分散したN−メチル−2−ピロリドン500質量部を加えて、25℃にて40時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液が得られた。この還元粘度は(ηsp/C)は4.0dl/gであった。
(ポリアミド酸のフィルムの製造)
このポリアミド酸溶液を支持体としてのステンレスベルトにコーティングした。コーティングではコンマコーターを用い、コンマコーターとベルト間のギャップを850μmに調節した。その後、コーティングしたものを4つの区画を有する熱風式乾燥機内を搬送させた。4つのゾーンとも110℃に設定し、各ゾーンに約4分間存在するようなスピードで搬送した。すなわち、110℃における約4分間の乾燥を連続して4回行ったことになる。さらに換言すれば、110℃にて約15分間乾燥したことと同等である。上記手法にて作製したポリアミド酸フィルム(ゲルフィルム1)を得た。ゲルフィルム1の吸熱ピーク温度は150℃であった。
(ポリイミドフィルムの製造)
ゲルフィルム1をステンレスベルトから剥離し、紙巻に巻き取った。得られたゲルフィルムは、幅700mm、長さ180m、厚さ80μmであった。得られたゲルフィルム1を、4つのゾーンからなる連続式の熱処理炉に通した。第1のゾーンを130℃、第2のゾーンを200℃に設定し、第3および第4のゾーンを450℃に設定した。各ゾーンを3分間ずつ経るようにフィルムを搬送した。第4のゾーンを出たあとは自然放冷にて室温まで冷却して、ワインダ−にて巻取り、厚さ38μmの褐色のポリイミドフィルムを得た。
(実施例2)
(ポリアミド酸のフィルムの製造)
実施例1と同様のポリアミド酸溶液を、ステンレスベルトにコーティングした。コーティングではコンマコーターを用い、コンマコーターとベルト間のギャップを1000μmに調節した。その後、コーティングしたものを4つの区画を有する熱風式乾燥機内を搬送させた。4つのゾーンとも110℃に設定し、各ゾーンに5分間存在するようなスピードで搬送した。すなわち、110℃における5分間の乾燥を連続して4回行ったことになる。さらに換言すれば、110℃にて20分間乾燥したことと同等である。上記手法にて作製したポリアミド酸フィルム(ゲルフィルム2)を得た。ゲルフィルム2の吸熱ピーク温度は152℃であった。
(ポリイミドフィルムの製造)
ゲルフィルム2を用いて、実施例1と同様に操作してポリイミドフィルムを得た。
(実施例3)
(ポリアミド酸のフィルムの製造)
実施例1と同様のポリアミド酸溶液を、ステンレスベルトにコーティングした。コーティングではコンマコーターを用い、コンマコーターとベルト間のギャップを2070μmに調節した。その後、コーティングしたものを4つの区画を有する熱風式乾燥機内を搬送させた。4つのゾーンとも110℃に設定し、各ゾーンに約11分間存在するようなスピードで搬送した。すなわち、110℃における約11分間の乾燥を連続して4回行ったことになる。さらに換言すれば、110℃にて約45分間乾燥したことと同等である。上記手法にて作製したポリアミド酸フィルム(ゲルフィルム3)を得た。ゲルフィルム3の吸熱ピーク温度は149℃であった。
(ポリイミドフィルムの製造)
ゲルフィルム3を用いて、実施例1と同様に操作してポリイミドフィルムを得た。
(実施例4、5)
表2のように条件を変えた以外は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを得た。
(比較例1)
表2のように条件を変えた以外は、実施例1と同様にポリイミドフィルムを得た。
(比較例2)
(ポリアミド酸のフィルムの製造)
実施例1と同様のポリアミド酸溶液を、同様手法にてステンレスベルトにコーティングした。その後、コーティングしたものを4つの区画を有する熱風式乾燥機内を搬送させた。4つのゾーンとも90℃に設定し、各ゾーンに約4分間存在するようなスピードで搬送した。上記手法にて作製したポリアミド酸フィルム(ゲルフィルム4)を得た。ゲルフィルム4の吸熱ピーク温度は133℃であった。
(ポリイミドフィルムの製造)
ゲルフィルム4を用いて、実施例1と同様に操作してポリイミドフィルムを得た。
(比較例3)
比較例2にて用いたポリアミド酸フィルムを比較例1と同様にポリイミドフィルムを得た。
各実施例、比較例でのフィルムの製造条件を表1および表2にまとめ、得られたフィルムの物性を表3にまとめる。表中、GFはゲルフィルム(ポリアミド酸フィルム)を表し、MDはフィルムの長手方向を表し、TDはフィルムの幅方向を表す。
Figure 2006348259
Figure 2006348259
Figure 2006348259
本発明のベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドフィルムは、電子部品の基材フィルムとして好適な機械特性と耐熱性を具備し、寸法精度の要求が厳しいフレキシブルプリント配線用銅張基板(FPC)やテープ・オートメーテッド・ボンディング(TAB)用キャリアテープなどの製造に用いる基材フィルムとして好適に使用される。
ベンゾオキサゾール構造を有するポリイミドのX線回折極点図を模式的に表す。

Claims (5)

  1. ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を含むジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物を含むテトラカルボン酸無水物類から得られるポリアミド酸の溶液を乾燥してゲルフィルムとなし、さらに熱処理により脱水することにより得られるポリイミドフィルムであって、フィルム厚さが26μm以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の引張弾性率がいずれも6000MPa以上であり、フィルムの長手方向および幅方向の引張破断伸度がいずれも20%以上であり、かつフィルムの長手方向および幅方向の線膨張係数がいずれも10ppm/℃以下であるポリイミドフィルム。
  2. フィルムの幅が500mm以上であり、面積が90m2以上である請求項1に記載のポリイミドフィルム。
  3. フィルム厚さが35μm以上である請求項2に記載のポリイミドフィルム。
  4. ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を含むジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物を含むテトラカルボン酸無水物類から得られるポリアミド酸の溶液を乾燥して得られるゲルフィルムを、ゲルフィルムの吸熱ピーク温度の−30℃〜+10℃の温度の範囲で2〜5分間処理して、その後ただちに150〜250℃にて2〜5分間処理し、その後ただちに、300〜500℃にて2〜10分間処理する工程を含み、150℃以上にて処理する時間が合計で20分以下であることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
    (ここに吸熱ピーク温度とは、DSCにより測定したゲルフィルムの25〜225℃の範囲に於ける吸発熱挙動において見られる吸熱のピーク温度であり、複数のピークが得られる場合には最も大きなピークの温度をいう。)
  5. ゲルフィルムの残留溶媒量が40質量%以下であることを特徴とする請求項4に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
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