本発明の感熱記録材料は、加熱により発色する感熱発色層を有しており、感熱記録材料を構成する層のうち、少なくともいずれか1層中に、アクリル系重合体鎖部およびウレタン系重合体鎖部を有し、且つアクリル系重合体鎖部とウレタン系重合体鎖部とがシリコーン系重合体鎖部を介して結合しているアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が含まれていることを特徴としている。このように、本発明の感熱記録材料では、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が、感熱記録材料を構成する層のうち、いずれかの1層又は2層以上の層で、層を形成する成分として用いられているので、感熱記録材料の耐水性、耐スティッキング性、耐地肌かぶり特性、および耐熱画像安定性を向上させることができる。
感熱記録材料の層構成としては、感熱発色層を有していれば、特に制限されないが、感熱発色層が支持体上に形成された層構成を有していることが好ましく、特に、支持体上に形成されている感熱発色層上に保護層(オーバーコート層)が形成された層構成を有していることが好ましい。具体的には、感熱記録材料の層構成としては、例えば、支持体と、該支持体上に形成された感熱発色層との2層による層構成、支持体と、該支持体上に形成された感熱発色層と、該感熱発色層上に形成された保護層との3層による層構成などが挙げられる。また、感熱記録材料の層構成としては、前述の2層や3層による層構成において、感熱発色層と支持体との間や、感熱発色層と保護層との間に中間層が形成された層構成、感熱発色層と支持体との間にアンダーコート層(下塗り層)が形成された層構成、支持体の感熱発色層に対して反対側の面にバックコート層が形成された層構成、何れかの層間に又は最表層としてインク層が形成された層構成なども挙げられる。従って、感熱記録材料を構成する層としては、例えば、感熱発色層、保護層、中間層、アンダーコート層、バックコート層、インク層などが挙げられる。また、本発明の感熱記録材料は、前記の各層の他に、各層間の接着性を高めるための接着層、熱伝導性をコントロールすることが可能な熱伝導制御層、各種情報を電気的、磁気的または光学的に記録可能な情報記録層、酸素バリアー層などの公知の層を有していてもよい。
従って、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を含有する層としては、例えば、感熱発色層、保護層、アンダーコート層、中間層、バックコート層およびインク層から選択された少なくとも1層が挙げられ、好ましくは保護層、アンダーコート層および中間層から選択された少なくとも1層であり、特に保護層が好適である。なお、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、層を構成する成分として含有されていればよく、例えば、層を構成する主成分としての樹脂成分の他、バインダー成分又は結合剤などとして含有されている。
[アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体]
アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、アクリル系重合体鎖部およびウレタン系重合体鎖部を有し、且つアクリル系重合体鎖部とウレタン系重合体鎖部とがシリコーン系重合体鎖部を介して結合した構成を有している。具体的には、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、例えば、下記式(1)で表すことができる。
[式(1)において、X
1はウレタン系重合体鎖部、X
2はアクリル系重合体鎖部、X
3はシリコーン系重合体鎖部、W
1は2価の有機基、W
2は2価の有機基、u
1は0又は1、u
2は0又は1である。]
前記式(1)において、u1が1である場合、ウレタン系重合体鎖部X1とシリコーン系重合体鎖部X3とは2価の有機基W1を介して結合していることを意味し、一方、u1が0である場合、ウレタン系重合体鎖部X1とシリコーン系重合体鎖部X3とは2価の有機基W1を介さずに直接結合していることを意味している。また、u2が1である場合、アクリル系重合体鎖部X2とシリコーン系重合体鎖部X3とは2価の有機基W2を介して結合していることを意味し、一方、u2が0である場合、アクリル系重合体鎖部X2とシリコーン系重合体鎖部X3とは2価の有機基W2を介さずに直接結合していることを意味している。従って、前記式(1)で示されるアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、ウレタン系重合体鎖部X1とシリコーン系重合体鎖部X3とが2価の有機基W1を介して又は介さずに結合し、アクリル系重合体鎖部X2とシリコーン系重合体鎖部X3とが2価の有機基W2を介して又は介さずに結合している構成を有している。
なお、2価の有機基W1は、ウレタン系重合体鎖部X1とシリコーン系重合体鎖部X3とを結合させることが可能な2価の有機基であれば特に制限されず、有機系原子(炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等)により形成された各種の2価の有機基から適宜選択することができる。より具体的には、2価の有機基W1としては、例えば、2価の炭化水素基(2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基や、これらの炭化水素基が2種以上組み合わせられた基等)、カルボニル基、オキシ基、イミノ基、チオカルボニル基、チオ基や、これらの基が2種以上組み合わせられた基[例えば、「−NH−C(=O)−NH−2価の炭化水素基−」基、「−NH−C(=O)−S−2価の炭化水素基−」基、「−NH−C(=O)−NH−2価の炭化水素基−NH−2価の炭化水素基−」基など]などが挙げられる。また、2価の有機基W2は、アクリル系重合体鎖部X2とシリコーン系重合体鎖部X3とを結合させることが可能な2価の有機基であれば特に制限されず、有機系原子(炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等)により形成された各種の2価の有機基から適宜選択することができる。より具体的には、2価の有機基W2としては、例えば、2価の炭化水素基(2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基や、これらの炭化水素基が2種以上組み合わせられた基等)、カルボニル基、オキシ基、イミノ基、チオカルボニル基、チオ基や、これらの基が2種以上組み合わせられた基[例えば、「−O−C(=O)−」基、「−NH−C(=O)−」基、「−2価の炭化水素基−O−C(=O)−」基、「−2価の炭化水素基−NH−C(=O)−」基など]などが挙げられる。2価の有機基W1や2価の有機基W2に関する前述の基は、各種の置換基(特に、炭化水素基等の不活性な置換基)を1種又は2種以上有していてもよい。置換基は、例えば、2価の炭化水素基における炭素原子や、イミノ基又は「−NH−」部における窒素原子などに結合することができる。
このように、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、アクリル系重合体鎖部とウレタン系重合体鎖部とが、シリコーン系重合体鎖部を介して結合していれば、さらに、アクリル系重合体鎖部とシリコーン系重合体鎖部との間や、ウレタン系重合体鎖部とシリコーン系重合体鎖部との間に、2価の有機基が介在していてもよい。すなわち、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、アクリル系重合体鎖部およびウレタン系重合体鎖部を有し、且つアクリル系重合体鎖部とウレタン系重合体鎖部とが、シリコーン系重合体鎖部を介して結合している構成を有しており、さらに、ウレタン系重合体鎖部とシリコーン系重合体鎖部とが2価の有機基を介して又は介さずに結合し、且つアクリル系重合体鎖部とシリコーン系重合体鎖部とが2価の有機基を介して又は介さずに結合している構成を有している。
アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体において、シリコーン系重合体鎖部は、Si−O結合を有していればよく、例えば、骨格又は主鎖が「−(Si−O)g1−Si−」(g1は1以上の整数である)で表されるシリコーン系重合体鎖部や、骨格又は主鎖が「−(Si−O)g2−V−(O−Si)g3−」[Vは2価の有機基である(但し、「−(Si−O)g4−Si−」(g4は1以上の整数)で表される基を除く)。g2は1以上の整数、g3は1以上の整数である]で表されるシリコーン系重合体鎖部などが挙げられる。もちろん、「Si」は珪素原子、「O」は酸素原子を意味している。なお、シリコーン系重合体鎖部は、網目状の構造を有していてもよい。また、1つのシリコーン系重合体鎖部に、複数のウレタン系重合体鎖部、及び/又は、複数のアクリル系重合体鎖部が結合していてもよい。さらにまた、逆に、複数のシリコーン系重合体鎖部が、1つのウレタン系重合体鎖部や、1つのアクリル系重合体鎖部に結合していてもよい。なお、すべてのシリコーン系重合体鎖部に、ウレタン系重合体鎖部およびアクリル系重合体鎖部がそれぞれ1つ以上必ず結合している必要はない。
ウレタン系重合体鎖部としては、ウレタン結合を有する(特に、主鎖又は骨格にウレタン結合を有する)ポリマーにより構成されたポリマー鎖部であれば特に制限されないが、加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)の残基が好適である。従って、ウレタン系重合体鎖部は、例えば、加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)におけるウレタン系重合体(例えば、該ウレタン系重合体における主鎖又は骨格のウレタン系重合体部)から構成されていてもよい。
また、アクリル系重合体鎖部は、アクリル系モノマー成分によるポリマーにより構成されたポリマー鎖部であれば特に制限されないが、モノマー成分としてアクリル系単量体(B)および加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基を有し且つエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基を有する化合物(C)を用いて得られる重合体(アクリル系重合体)の残基が好適である。従って、アクリル系重合体鎖部は、基本的には、アクリル系単量体(B)による重合体(アクリル系重合体)(例えば、該アクリル系重合体における主鎖又は骨格のアクリル系重合体部)から構成されていてもよい。
さらにまた、シリコーン系重合体鎖部は、加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)における加水分解性珪素原子含有基と、加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基を有し且つエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基を有する化合物(C)における加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基と、加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物(D)とにより形成されていてもよい。シリコーン系重合体鎖部としては、基本的には、加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物(D)の重合体(シリコーン系重合体)(例えば、該シリコーン系重合体における主鎖又は骨格のシリコーン系重合体部)から構成されていることが好ましい。なお、加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基を有し且つエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基を有する化合物(C)における加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基が加水分解性珪素原子含有基である場合、この加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基を有し且つエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基を有する化合物(C)は、加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物であるため、シリコーン系重合体鎖部を形成することが可能である。すなわち、加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基を有し且つエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基を有する化合物(C)は、加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物(D)としても利用することができる場合がある。そのため、シリコーン系重合体鎖部は、加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基を有し且つエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基を有する化合物(C)を構成単位として含む重合体鎖部から構成されている場合がある。
従って、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、例えば、シリコーン系重合体鎖部が珪素原子(Si)および酸素原子(O)のみにより形成された骨格又は主鎖を有するシリコーン系重合体鎖部であり、ウレタン系重合体鎖部が加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)の残基であり、且つアクリル系重合体鎖部がモノマー成分としてアクリル系単量体(B)および加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基を有し且つエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基を有する化合物(C)を用いて得られる重合体の残基である場合、下記式(2)で表すことができる。
[式(2)において、X
1aは加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)の残基、X
2aはモノマー成分としてアクリル系単量体(B)および加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基を有し且つエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基を有する化合物(C)を用いて得られる重合体の残基、u
3は1以上の整数である。また、W
1、W
2、u
1、u
2は前記に同じ。]
なお、前記式(2)では、シリコーン系重合体鎖部は、骨格又は主鎖のみが示されている。具体的には、式(2)における「Si−O−(Si−O)u3−Si」の部位がシリコーン系重合体鎖部の骨格又は主鎖を意味している。このようなシリコーン系重合体鎖部における骨格又は主鎖中の各珪素原子には、炭化水素基(アルキル基など)、水素原子、ヒドロキシル基、炭化水素−オキシ基(アルコキシ基など)、シリコーン系重合体鎖部などが結合していてもよく、また、ウレタン系重合体鎖部やビニル系重合体鎖部が2価の有機基を介して又は介さずに結合していてもよい。なお、前記式(2)におけるシリコーン系重合体鎖部に、他のシリコーン系重合体鎖部が結合している場合、他のシリコーン系重合体鎖部の末端には、ウレタン系重合体鎖部や、ビニル系重合体鎖部が2価の有機基を介して又は介さずに結合していてもよく、また、他のシリコーン系重合体鎖部における骨格又は主鎖中の各珪素原子には、前述のシリコーン系重合体鎖部と同様に、炭化水素基(アルキル基など)、水素原子、ヒドロキシル基、炭化水素−オキシ基(アルコキシ基など)、シリコーン系重合体鎖部などが結合していてもよく、また、ウレタン系重合体鎖部やビニル系重合体鎖部が2価の有機基を介して又は介さずに結合していてもよい。また、前記式(2)において、u3は、1以上の整数(正の整数)であれば特に制限されず、目的とする構造のアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体に応じて適宜選択することができる。
前記式(2)において、X
1aは加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)の残基であり、該加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)は下記式(2a)で表すことができる。また、X
2aはモノマー成分としてアクリル系単量体(B)および加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基を有し且つエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基を有する化合物(C)を用いて得られる重合体(アクリル系重合体)の残基であり、該重合体は下記式(2b)で表すことができる。
[式(2a)および(2b)において、X
1a、X
2a、W
1、W
2、u
1、u
2は前記と同じである。]
前記式(2a)における珪素原子や、前記式(2b)における珪素原子には、式(2a)や式(2b)では明確に示されていないが、炭化水素基(アルキル基など)、水素原子、ヒドロキシル基、または炭化水素−オキシ基(アルコキシ基など)が結合している。このような珪素原子には、3つの基(水素原子を含む)が結合することができ、これらの3つの基は、すべてが同一の基、部分的に同一の基、すべてが異なる基のいずれの形態を有していてもよい。なお、式(2a)および式(2b)における珪素原子に結合している酸素原子は、ヒドロキシル基または炭化水素−オキシ基における酸素原子である。このように、前記式(2a)で表される加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)や、前記式(2b)で表される重合体における珪素原子には、ヒドロキシル基または炭化水素−オキシ基が少なくとも1個結合していることが重要である。
(加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A))
加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)(「ウレタン系ポリマー(A)」と称する場合がある)としては、分子内に(特に、主鎖の骨格として)ウレタン結合を含有するウレタン系重合体鎖部を有しており、また分子内に少なくとも1つの加水分解性珪素原子含有基を含有しているポリマーであれば特に制限されない。このようなウレタン系ポリマー(A)において、ウレタン系ポリマーに加水分解性珪素原子含有基が導入される方法としては、特に制限されず、加水分解性珪素原子を有していないウレタン系ポリマーに、加水分解性珪素原子含有基を導入する従来公知の方法や、この従来公知の方法から類推される方法などを適宜利用することができる。例えば、ウレタン系ポリマーを構成するモノマー成分として、加水分解性珪素原子含有基を有するモノマーを用いる方法、各種官能基を有するウレタン系ポリマーに、前記ウレタン系ポリマー中の官能基に対する反応性官能基、および加水分解性珪素原子含有基を有している化合物を反応させる方法などが挙げられる。具体的には、前者の方法としては、モノマー成分として、加水分解性珪素原子含有基を少なくとも1つ有し、且つ、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基等のイソシアネート反応性基を複数有する化合物、加水分解性珪素原子含有基を有するポリイソシアネート化合物を用いる方法などが挙げられる。また、後者の方法としては、官能基として、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基等を有するウレタン系ポリマーに、前記ウレタン系ポリマー中の官能基に対する反応性官能基として、加水分解性珪素原子含有基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基等を有する加水分解性珪素原子含有化合物(アルコキシシラン系化合物など)を反応させる方法などが挙げられる。なお、このような、前記ウレタン系ポリマー中の官能基に対する反応性官能基、および加水分解性珪素原子含有基を有している化合物としては、例えば、下記に示されるイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1-d)などを用いることができる。ウレタン系ポリマー(A)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
ウレタン系ポリマー(A)において、加水分解性珪素原子含有基としては、加水分解性シリル基を好適に用いることができる。従って、ウレタン系ポリマー(A)としては、加水分解性シリル基を有するウレタン系ポリマー(加水分解性シリル化ウレタン系ポリマー)を好適に用いることができる。
ウレタン系ポリマー(A)は、例えば、下記に示される工程(X)では、水分散液又は水溶液に調製されて用いられているので、ウレタン系ポリマー(A)としては、水に対して分散性又は溶解性を有していることが重要である。そのため、ウレタン系ポリマー(A)は、分散性又は溶解性を発揮することが可能な基を有していることが重要であり、このような基としては、親水性基(アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基など)が好適である。従って、ウレタン系ポリマー(A)としては、分子内に少なくとも1つの親水性基を有する加水分解性シリル化ウレタン系ポリマー(親水性基含有加水分解性シリル化ウレタン系ポリマー)を好適に用いることができる。
また、加水分解性シリル化ウレタン系ポリマーにおける加水分解性シリル基としては、特にアルコキシシリル基が好適である。このようなアルコキシシリル基におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基などのC1-4アルコキシ基(炭素数が1〜4のアルコキシ基)を好適に用いることができる。さらに好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(なかでもメトキシ基、エトキシ基)が挙げられる。もちろん、炭素数が5以上のアルコキシ基であってもよい。このようなアルコキシ基は、1つの珪素原子に、通常、1〜3個(好ましくは2又は3個)結合している。なお、アルコキシ基は単独で又は2種以上組み合わせられていてもよい。すなわち、1つの珪素原子には、同一のアルコキシ基が結合していてもよく、異なるアルコキシ基が2種以上組み合わせられて結合していてもよい。
従って、加水分解性シリル化ウレタン系ポリマーとしては、アルコキシシリル化ウレタン系ポリマーを好適に用いることができ、なかでも、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)が好適である。前記親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)としては、例えば、分子内に少なくとも1つの親水性基を含有し、且つ分子内に少なくとも1つのアルコキシシリル基を含有しているウレタン系ポリマーであれば特に制限されないが、特に、親水性基含有ウレタン系ポリマーの末端のイソシアネート基が少なくとも部分的にアルコキシシリル化されて得られる末端アルコキシシリル化親水性基含有ウレタン系ポリマーを好適に用いることができる。より具体的には、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)としては、例えば、親水性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-a)、親水性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-b)、ポリイソシアネート化合物(A1-c)、およびイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1-d)を反応して得られる親水性基含有アルコキシシリル基末端ウレタン系ポリマーなどが挙げられる。
(親水性基非含有・複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A1-a))
親水性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-a)(「イソシアネート反応性化合物(A1-a)」と称する場合がある)は、分子内に、アニオン性基、カチオン性基やノニオン性基などの親水性基を有しておらず、かつ分子内に少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物であれば特に制限されない。該イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対する反応性を有する基であれば特に制限されず、例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基(無置換アミノ基)、第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)、メルカプト基などが挙げられる。なお、イソシアネート反応性基は、1種のみであってもよく、2種以上組み合わせられていてもよい。本発明では、該イソシアネート反応性基としては、ヒドロキシル基、第1級アミノ基、第2級アミノ基が好ましく、特にヒドロキシル基が好適である。従って、イソシアネート反応性化合物(A1-a)としては、例えば、親水性基非含有ポリオール化合物、親水性基非含有ポリアミン化合物、親水性基非含有ポリチオール化合物(好ましくは、親水性基非含有ポリオール化合物や親水性基非含有ポリアミン化合物)などを用いることができ、特に親水性基非含有ポリオール化合物(親水性基非含有で且つ複数のヒドロキシル基を含有する化合物)が好適である。イソシアネート反応性化合物(A1-a)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
イソシアネート反応性化合物(A1-a)としての親水性基非含有ポリオール化合物(A1-a)(「ポリオール(A1-a)」と称する場合がある)としては、分子内に親水性基(アニオン性基、カチオン性基やノニオン性基などの親水性基)を有しておらず、かつ分子内に少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物であれば特に制限されない。ポリオール(A1-a)としては、例えば、多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリルポリオール、ヒマシ油などが挙げられる。ポリオール(A1-a)において、多価アルコールには、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などが含まれる。また、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコールの他、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などのモノマー成分として複数のアルキレンオキシドを含む(アルキレンオキサイド−他のアルキレンオキサイド)共重合体などが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物などを用いることができる。多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物において、多価アルコールとしては、前記例示の多価アルコールを用いることができる。一方、多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、環状エステルの開環重合物において、環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。3種類の成分による反応物において、多価アルコール、多価カルボン酸、環状エステルとしては、前記例示のものなどを用いることができる。ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネートなど)の開環重合物などが挙げられる。具体的には、多価アルコールとホスゲンとの反応物において、多価アルコールとしては、前記例示の多価アルコールを用いることができる。また、環状炭酸エステルの開環重合物において、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。なお、ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
ポリオレフィンポリオールは、オレフィンを重合体又は共重合体の骨格(又は主鎖)の成分(モノマー成分)とし且つ分子内に(特に末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールである。前記オレフィンとしては、末端に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンなど)であってもよく、また末端以外の部位に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、イソブテンなど)であってもよく、さらにはジエン(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)であってもよい。また、ポリアクリルポリオールは、(メタ)アクリレートを重合体又は共重合体の骨格(又は主鎖)の成分(モノマー成分)とし且つ分子内にヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールである。(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルなど]が好適に用いられる。なお、ポリオレフィンポリオールやポリアクリルポリオールにおいて、分子内にヒドロキシル基を導入するために、オレフィンや(メタ)アクリレートの共重合成分(共重合性を有するモノマー成分)として、ヒドロキシル基を有するα,β−不飽和化合物[例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなど]を用いることができる。
ポリオール(A1-a)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを好適に用いることができる。
なお、イソシアネート反応性化合物(A1-a)としての、親水性基非含有ポリアミン化合物や親水性基非含有ポリチオール化合物としては、例えば、前記例示の親水性基非含有ポリオール化合物(A1-a)に対応する親水性基非含有ポリアミン化合物や親水性基非含有ポリチオール化合物などが挙げられる。例えば、イソシアネート反応性化合物(A1-a)としての親水性基非含有ポリアミン化合物には、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミンの他、親水性基非含有ポリアミン誘導体(ヒドラジン及びその誘導体など)を用いることができる。脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,3−ペンタメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,2−ブチレンジアミン、2,3−ブチレンジアミン、1,3−ブチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンの他、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどが挙げられる。脂環式ポリアミンとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1−アミノ−1−メチル−4−アミノメチルシクロヘキサン、1−アミノ−1−メチル−3−アミノメチルシクロヘキサン、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4´−メチレンビス(3−メチル−シクロヘキシルアミン)、メチル−2,3−シクロヘキサンジアミン、メチル−2,4−シクロヘキサンジアミン、メチル−2,6−シクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環式ジアミンなどが挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、ナフチレン−1,4−ジアミン、ナフチレン−1,5−ジアミン、4,4´−ジフェニルジアミン、4,4´−ジフェニルメタンジアミン、2,4´−ジフェニルメタンジアミン、4,4´−ジフェニルエ−テルジアミン、2−ニトロジフェニル−4,4´−ジアミン、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジアミン、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジアミン、4,4´−ジフェニルプロパンジアミン、3,3´−ジメトキシジフェニル−4,4´−ジアミン等の芳香族ジアミンなどが挙げられる。芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3−キシリレンジアミン、1,4−キシリレンジアミン、α,α,α´,α´−テトラメチル−1,3−キシリレンジアミン、α,α,α´,α´−テトラメチル−1,4−キシリレンジアミン、ω,ω´−ジアミノ−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−アミノ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−アミノ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルアミノメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジアミンなどが挙げられる。親水性基非含有ポリアミン誘導体としてのヒドラジン及びその誘導体としては、例えば、ヒドラジンや、ジヒドラジド系化合物[例えば、カルボジヒドラジド(カルボヒドラジド)、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドなどの脂肪族ジカルボン酸ジヒドラジド類;イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジドなどの芳香族ジカルボン酸ジヒドラジド類;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジヒドラジドなどの脂環式ジカルボン酸ジヒドラジド類など]などが挙げられる。
イソシアネート反応性化合物(A1-a)の分子量は、特に制限されず、低分子量化合物、高分子量化合物のいずれであってもよい。なお、イソシアネート反応性化合物(A1-a)が低分子量化合物(例えば、低分子量の親水性基非含有ポリオール化合物や、低分子量の親水性基非含有ポリアミン化合物など)である場合、鎖延長剤として利用することも可能である。
(親水性基及び複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A1-b))
親水性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-b)(「イソシアネート反応性化合物(A1-b)」と称する場合がある)は、分子内に少なくとも1つの親水性基(アニオン性基、カチオン性基やノニオン性基など)を有しており、かつ分子内に少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物であれば特に制限されない。イソシアネート反応性化合物(A1-b)において、親水性基としては、アニオン性基、カチオン性基やノニオン性基などが挙げられ、特に、アニオン性基が好適である。アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホ基を好適に用いることができ、なかでもカルボキシル基が最適である。なお、カチオン性基としては、例えば、第3級アミノ基(ジ置換アミノ基)などが挙げられる。また、ノニオン性基としては、例えば、ポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、オキシエチレン−オキシプロピレンコポリマー鎖など)を含有する基などが挙げられる。
また、イソシアネート反応性化合物(A1-b)において、イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対する反応性を有する基であれば特に制限されず、例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、イソシアネート反応性基は、1種のみであってもよく、2種以上組み合わせられていてもよい。本発明では、該イソシアネート反応性基としては、ヒドロキシル基、第1級アミノ基、第2級アミノ基が好ましく、特にヒドロキシル基が好適である。従って、イソシアネート反応性化合物(A1-b)としては、例えば、親水性基含有ポリオール化合物、親水性基含有ポリアミン化合物、親水性基含有ポリチオール化合物などを用いることができ、特に親水性基含有ポリオール化合物(親水性基及び複数のヒドロキシル基を含有する化合物)が好適である。イソシアネート反応性化合物(A1-b)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
以上より、イソシアネート反応性化合物(A1-b)としては、親水性基がアニオン性基であり、イソシアネート反応性基がヒドロキシル基であるアニオン性基含有ポリオール化合物(アニオン性基及び複数のヒドロキシル基を含有する化合物)が好適である。イソシアネート反応性化合物(A1-b)としてのアニオン性基含有ポリオール化合物(A1-b)(「ポリオール(A1-b)」と称する場合がある)としては、例えば、前記ポリオール(A1-a)の項で例示のポリオールにカルボキシル基が導入されたカルボキシル基含有ポリオールなどが挙げられる。本発明では、ポリオール(A1-b)としては、アニオン性基を有する低分子量のポリオールが好ましく、特に、下記式(3)で表されるポリヒドロキシカルボン酸を好適に用いることができる。
(HO)aL(COOH)b (3)
[但し、式(3)において、Lは炭素数1〜12の炭化水素部位を示す。aは2以上の整数であり、bは1以上の整数である。]
前記式(3)において、Lの炭化水素部位としては脂肪族炭化水素部位であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の形態のいずれであってもよい。また、a、bは同一であってもよく、異なっていてもよい。2つ以上のヒドロキシル基は、同一の炭素原子に結合していてもよく、異なる炭素原子に結合していてもよい。さらに、bが2以上である場合、2つ以上のカルボキシル基は、同一の炭素原子に結合していてもよく、異なる炭素原子に結合していてもよい。
このようなポリヒドロキシカルボン酸としては、特に、ジメチロールアルカン酸(なかでも、2,2−ジメチロールアルカン酸)が好適である。ジメチロールアルカン酸としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸、2,2−ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロールデカン酸などが挙げられる。
なお、イソシアネート反応性化合物(A1-b)としてのカチオン性基含有ポリオール化合物(A1-b)としては、例えば、前記ポリオール(A1-a)の項で例示のポリオールに、第3級アミノ基(ジ置換アミノ基)が導入されたものに相当する第3級アミノ基含有ポリオールなどが挙げられる。また、イソシアネート反応性化合物(A1-b)としてのノニオン性基含有ポリオール化合物(A1-b)としては、例えば、前記ポリオール(A1-a)の項で例示のポリオールに、ポリオキシアルキレン鎖(ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、オキシエチレン−オキシプロピレンコポリマー鎖など)等のノニオン性の親水性基が導入されたものに相当するポリオキシアルキレン鎖含有ポリオールなどが挙げられる。
(ポリイソシアネート化合物(A1-c))
ポリイソシアネート化合物(A1-c)(「ポリイソシアネート(A1-c)」と称する場合がある)は、分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物であれば特に制限されない。ポリイソシアネート(A1-c)には、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが含まれる。ポリイソシアネート(A1-c)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ−ト等の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネ−ト、p−フェニレンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,4−ジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,5−ジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、2−ニトロジフェニル−4,4´−ジイソシアネ−ト、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジイソシアネ−ト、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシネ−ト、4,4´−ジフェニルプロパンジイソシアネ−ト、3,3´−ジメトキシジフェニル−4,4´−ジイソシアネ−ト等の芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ω,ω´−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
ポリイソシアネート(A1-c)としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼンを好適に用いることができる。なお、本発明では、ポリイソシアネート(A1-c)としては、前記例示の脂肪族ポリイソシアネ−ト、脂環式ポリイソシアネ−ト、芳香族ポリイソシアネ−ト、芳香脂肪族ポリイソシアネ−トによる二量体や三量体、反応生成物又は重合物(例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの二量体や三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなど)なども用いることができる。また、本発明では、ポリイソシアネート(A1-c)とともに、ジイソチオシアネート系化合物(例えば、フェニルジイソチオシアネートなど)を併用することができる。
(イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1-d))
イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1-d)(「イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)」と称する場合がある)としては、分子内に少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有しており、かつ分子内に少なくとも1つのアルコキシ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対して反応性を有している基であれば特に制限されず、例えば、第1級アミノ基(無置換アミノ基)、第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)、メルカプト基、イソシアネート基、ヒドロキシル基などが挙げられ、第1級アミノ基、第2級アミノ基、メルカプト基が好適である。なお、イソシアネート反応性基は、1種のみであってもよく、2種以上組み合わせられていてもよい。
本発明では、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)としては、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A1-d1)、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物(A1-d2)を好適に用いることができる。
なお、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A1-d1)(「アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)」と称する場合がある)としては、分子内に少なくとも1つの第1級又は第2級アミノ基を有しており、かつ分子内に少なくとも1つのアルコキシ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。従って、アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)は、アミノ基として第3級アミノ基(ジ置換アミノ基)を1つ以上含有していてもよい。また、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物(A1-d2)(「メルカプト基含有アルコキシシラン(A1-d2)」と称する場合がある)としては、分子内に少なくとも1つのメルカプト基を有しており、かつ分子内に少なくとも1つのアルコキシ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。
イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)において、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基などのC1-4アルコキシ基(炭素数が1〜4のアルコキシ基)を好適に用いることができる。さらに好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(なかでもメトキシ基、エトキシ基)が挙げられる。もちろん、炭素数が5以上のアルコキシ基であってもよい。このようなアルコキシ基は、通常、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)の珪素原子に結合しており、その数は、通常、1〜3個(好ましくは2又は3個)である。なお、アルコキシ基は単独で又は2種以上組み合わせられていてもよい。すなわち、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)の珪素原子には、同一のアルコキシ基が結合されていてもよく、異なるアルコキシ基が2種以上組み合わせられて結合されていてもよい。
また、イソシアネート反応性基がアミノ基である場合、第2級アミノ基や第3級アミノ基は、炭化水素基(例えば、フェニル基などのアリール基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基など)や複素環式基(複素環含有基;例えば、イミド骨格を有する複素環式基など)等の置換基を有することにより、第2級アミノ基や第3級アミノ基を形成していてもよい。なお、該炭化水素基や複素環式基などの置換基は、さらに他の置換基(例えば、各種炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基、カルボキシル基、シアノ基、オキソ基、アミド結合含有基、アミノ基、複素環式基や、これらの基が組み合わされた基を含んでいる基など)を有していてもよい。
さらに、イソシアネート反応性基(第1級アミノ基、第2級アミノ基や、メルカプト基など)は、珪素原子に直接結合していてもよいが、2価の基を介して結合していることが好ましい。このような2価の基としては、各種の2価の有機基を用いることができる。2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、アリレン基、アルキレン−アリレン基、アルキレン−アリレン−アルキレン基等の炭化水素基のみにより構成される2価の炭化水素基;アルキレン−オキシ−アルキレン基、アルキレン−カルボニル−オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−カルボニル−アルキレン基、アルキレン−ポリ(オキシアルキレン)基、アルキレン−イミノ基、アルキレン−イミノ−アルキレン基等の炭化水素基と他の基(オキシ基、カルボニル−オキシ基、カルボニル基、イミノ基、アミド結合含有基など)との種々の組み合わせにより構成される各種の2価の基などが挙げられる。2価の有機基としては、炭素数が1〜20程度の2価の有機基(2価の炭化水素基など)を好適に用いることができる。
従って、例えば、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)がアミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)である場合、アミノアルキル基の形態としてアミノ基を含有していてもよい。このようなアミノアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、1−アミノプロピル基、2−アミノプロピル基、3−アミノプロピル基等のアミノ−アルキル基(特に、アミノ−C1-3アルキル基)や、これに対応する第2級アミノ基(置換基として炭化水素基を1つ有しているアミノ−アルキル基等)又は第3級アミノ基(置換基として炭化水素基を2つ有しているアミノ−アルキル基等)などが挙げられる。なお、第2級アミノ基や第3級アミノ基における窒素原子に置換している炭化水素基などの置換基が、さらにアミノ基を有していてもよい。すなわち、例えば、N−アミノアルキル−アミノアルキル基、N−[N−(アミノアルキル)アミノアルキル]アミノアルキル基などの形態であってもよい。なお、第1級アミノ基とともに、第2級アミノ基を有していてもよい。第1級アミノ基や第2級アミノ基の数は、特に制限されないが、通常、1又は2個である。
本発明では、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)としては、例えば、アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)である場合、特に、下記式(4a)で表されるイソシアネート反応性基として第1級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシラン化合物、下記式(4b)で表されるイソシアネート反応性基として第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有しているアミノ基含有アルコキシシラン化合物、下記式(4c)で表されるイソシアネート反応性基として第2級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシラン化合物を好適に用いることができ、メルカプト基含有アルコキシシラン(A1-d2)である場合、下記式(4d)で表されるイソシアネート反応性基としてメルカプト基のみを有しているメルカプト基含有アルコキシシラン化合物を好適に用いることができる。
[式(4a)〜(4d)において、R
1、R
2は、同一又は異なって、アルキル基を示し、R
3、R
4はそれぞれアルキレン基を示し、R
5はアリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を示す。また、mは1〜3の整数である。なお、式(4b)におけるR
3及びR
4のアルキレン基は、同一であってもよく、異なっていてもよい。]
前記式(4a)〜(4d)において、R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4程度のアルキル基(C1-4アルキル基)が好適である。また、R2のアルキル基としては、R1のアルキル基と同様のアルキル基を用いることができるが、メチル基やエチル基が好ましい。R3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等の炭素数1〜3程度のアルキレン基が好適である。また、R4のアルキレン基としては、前記R3のアルキレン基と同様に、炭素数1〜3程度のアルキレン基を用いることができる。また、R5において、アリール基としてはフェニル基を好適に用いることができ、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4程度のアルキル基を好適に用いることができ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基を好適に用いることができる。なお、mは1〜3の整数である。
前記式(4a)で表されるイソシアネート反応性基として第1級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、β−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシラン;β−アミノエチルメチルジメトキシシラン、β−アミノエチルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジプロポキシシラン等の(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシランやこれらに対応するアミノアルキルジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。前記式(4b)で表されるイソシアネート反応性基として第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有しているアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のN−(アミノアルキル)アミノアルキルトリアルコキシシラン;N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のN−(アミノアルキル)アミノアルキルアルキルジアルコキシシランなどが挙げられる。前記式(4c)で表されるイソシアネート反応性基として第2級アミノ基のみを有しているアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−フェニル−β−アミノエチルトリメトキシシラン、N−フェニル−β−アミノエチルトリエトキシシラン等のN−フェニル−β−アミノエチルトリアルコキシシラン;N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリブトキシシラン等のN−フェニル−γ−アミノプロピルトリアルコキシシランや、これらに対応するN−フェニルアミノアルキル(モノ又はジ)アルキル(ジ又はモノ)アルコキシシランの他、さらに、上記の置換基がフェニル基である第2級アミノ基を有するアミノ基含有アルコキシシランに対応するN−アルキルアミノアルキルトリアルコキシシラン(例えば、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−アミノメチルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリプロポキシシランなど)や、N−アルキルアミノアルキル(モノ又はジ)アルキル(ジ又はモノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
本発明では、アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)としては、商品名「KBM6063」、同「X−12−896」、同「KBM576」、同「X−12−565」、同「X−12−580」、同「X−12−5263」、同「X−12−666」、同「KBM6123」、同「X−12−575」、同「X−12−577」、同「X−12−563B」、同「X−12−730」、同「X−12−562」、同「X−12−5202」、同「X−12−5204」、同「KBE9703」(以上、信越化学工業社製)なども用いることができる。従って、アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)としては、N−(5−アミノペンチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β[N−β(アミノエチル)アミノエチル]−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、1,2−ビス(γ−トリメトキシシリル−プロピルアミノ)エタン、ビス(γ−トリメトキシシリル−プロピル)アミン、N−β(アミノエチル)−β(4−アミノメチルフェニル)エチルトリメトキシシラン及びこれらに対応する炭化水素基(アルキル基やアルキレン基など)の炭素数が異なるアルコキシシラン系化合物などや、第1級又は第2級アミノ基とともに他の基(スチレン性不飽和基、オレフィン性不飽和基、カルボキシル基など)を有するアルコキシシラン系化合物、第1級又は第2級アミノ基を有するとともに塩の形態(塩酸塩など)を有しているアルコキシシラン系化合物、第1級又は第2級アミノ基を有するとともにアルコキシシリル基を複数有しているアルコキシシラン系化合物も用いることができる。
前記式(4d)で表されるイソシアネート反応性基としてメルカプト基含有アルコキシシランとしては、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、β−メルカプトエチルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリブトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン;β−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、β−メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジプロポキシシラン等の(メルカプトアルキル)アルキルジアルコキシシランやこれらに対応するメルカプトアルキルジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
本発明では、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)としては、反応のし易さ、広く市販され入手のし易さなどの点から、アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)を好適に用いることができる。アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)において、イソシアネート反応性基として少なくとも第1級アミノ基を有するアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランを好適に用いることができる。また、イソシアネート反応性基として第2級アミノ基のみを有するアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランを好適に用いることができる。
アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)としては、前記に例示のような少なくとも第1級アミノ基(特に、第1級アミノ基および第2級アミノ基)をイソシアネート反応性基として含有するアルコキシシラン化合物(「第1級アミノ基含有アルコキシシラン」と称する場合がある)と、不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)とが反応して得られた少なくとも第2級アミノ基をイソシアネート反応性基として含有するアルコキシシラン化合物(「エステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d4)」と称する場合がある)であってもよい。このようなエステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d4)としては、少なくとも第1級アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物と、不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)との反応により得られる第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物が好適であり、特に、第1級アミノ基及び第2級アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物と、不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)との反応により得られる第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物を好適に用いることができる。
エステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d4)において、不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)としては、不飽和カルボン酸のカルボン酸基(カルボキシル基)のうち少なくとも1つ(好ましくはすべて)がエステルの形態となっている化合物であれば、特に制限されない。不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)としては、不飽和1価カルボン酸エステルであってもよく、不飽和多価カルボン酸エステル(例えば、不飽和2価カルボン酸エステルなど)であってもよい。不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)としては、炭素−炭素二重結合を形成している炭素原子に直接カルボキシル基又はそのエステル結合含有基(例えば、アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基など)が結合している化合物が好適である。このような化合物としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、イソクロトン酸エステル、2−ブテン酸エステル、3−メチル−2−ブテン酸エステル、2−ペンテン酸エステル、2−オクテン酸エステル等の他、桂皮酸エステル等の不飽和1価カルボン酸エステル;マレイン酸エステル(モノ又はジエステル)、フマル酸エステル(モノ又はジエステル)、イタコン酸エステル(モノ又はジエステル)等の不飽和2価カルボン酸のエステルなどが挙げられる。不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)において、エステル部位としては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル等の脂肪族炭化水素によるエステル(アルキルエステルなど);シクロヘキシルエステル、イソボルニルエステル、ボルニルエステル、ジシクロペンタジエニルエステル、ジシクロペンタニルエステル、ジシクロペンテニルエステル、トリシクロデカニルエステル等の脂環式炭化水素によるエステル(シクロアルキルエステルなど);フェニルエステル、ベンジルエステル等の芳香族炭化水素によるエステル(アリールエステルなど)などが挙げられる。なお、エステル部位を複数有する場合、それぞれのエステル部位は、同一であってもよく異なっていてもよい。不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)としては、前記例示の不飽和カルボン酸エステルの中でもアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル(これらを「(メタ)アクリル酸エステル」と総称する場合がある)、マレイン酸ジエステルを好適に用いることができる。より具体的には、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。またマレイン酸ジエステルには、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジ(2−エチルヘキシル)、マレイン酸ジドデシル、マレイン酸ジオクタデシル等のマレイン酸ジアルキルエステルなどが含まれる。
より具体的には、第1級アミノ基含有アルコキシシランと、不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)とが反応して得られた少なくとも第2級アミノ基をイソシアネート反応性基として含有するアルコキシシラン化合物[エステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d4)]としては、不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)の炭素−炭素二重結合におけるβ位の炭素原子が、第1級アミノ基含有アルコキシシランにおけるアミノ基の窒素原子に少なくとも結合した化合物等が挙げられる。すなわち、エステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d4)は、第1級アミノ基含有アルコキシシランにおけるアミノ基の窒素原子が、不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)の不飽和結合(炭素−炭素二重結合)に対してマイケル付加反応を行うことにより得られる化合物である。該反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。また、反応に際しては加熱や加圧を行ってもよい。
具体的には、エステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d4)としては、例えば、第1級アミノ基含有アルコキシシランが前記式(4a)で表されるイソシアネート反応性基として第1級アミノ基のみを有するアルコキシシラン化合物であり、不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)が下記式(5)で表される不飽和カルボン酸エステルである場合、下記式(6)で表すことができる。
[式(5)において、R
6、R
8は、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。R
7はアルキル基、アリール基又はシクロアルキル基を示す。R
9は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基を示す。]
[式(6)において、R
1〜R
3、R
6〜R
9およびmは前記に同じ。]
また、エステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d4)としては、例えば、第1級アミノ基含有アルコキシシランが前記式(4b)で表されるイソシアネート反応性基として第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物であり、不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)が前記式(5)で表される不飽和カルボン酸エステルである場合、下記式(7a)又は下記式(7b)で表すことができる。
[式(7a)及び(7b)において、R
1〜R
4、R
6〜R
9およびmは前記に同じ。]
前記式(5)、(6)、(7a)および(7b)において、R1〜R4およびmは前記と同様である。具体的には、R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4程度のアルキル基が好適である。また、R2のアルキル基としては、R1のアルキル基と同様のアルキル基を用いることができるが、メチル基やエチル基が好ましい。R3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等の炭素数1〜3程度のアルキレン基が好適である。また、R4のアルキレン基としては、前記R3のアルキレン基と同様に、炭素数1〜3程度のアルキレン基を用いることができる。なお、mは1〜3の整数である。また、R6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜2程度のアルキル基などが挙げられる。R7のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20程度のアルキル基が挙げられる。また、R7のアリール基としては、フェニル基などが挙げられ、R7のシクロアルキル基としてはシクロヘキシル基などが挙げられる。R8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基が挙げられる。さらにまた、R9のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜2程度のアルキル基などが挙げられる。R9のアリール基としては、フェニル基などが挙げられる。また、R9のアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基において、アルキル基部位、アリール基部位、シクロアルキル基部位としては、前記R7で例示のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基が好適に用いられる。
本発明では、アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d)としては、少なくとも第2級アミノ基を含有しているアルコキシシラン化合物[なかでも、前記式(6)、前記式(7a)や前記式(7b)で表されるようなエステル変性アルコキシシラン(A1-d4)]が好適である。なお、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)としては、式(4a)〜(4d)で表されるイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(アミノ基又はメルカプト基含有アルコキシシラン)や、エステル変性アルコキシシラン(A1-d4)[なかでも、前記式(6)、前記式(7a)や前記式(7b)で表されるようなエステル変性アルコキシシラン(A1-d4)]を好適に用いることができる。
(親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1))
親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)は、前述のように、イソシアネート反応性化合物(A1-a)、イソシアネート反応性化合物(A1-b)、ポリイソシアネート(A1-c)、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)の反応生成物であり、分子内にイソシアネート反応性化合物(A1-b)に由来する親水性基(特に、アニオン性基)と、分子内に(特に主鎖の末端に)イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)に由来するアルコキシシリル基とを有するウレタンプレポリマーである。さらに、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)は、必要に応じて、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)に係る不飽和カルボン酸エステルに由来する側鎖[エステル基(エステル結合を有する基)]等の側鎖や基などを有している。
親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)としては、例えば、イソシアネート反応性化合物(A1-a)、イソシアネート反応性化合物(A1-b)、およびポリイソシアネート(A1-c)の反応により得られる親水性基含有ウレタンプレポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)との反応により、前記親水性基含有ウレタンプレポリマーの末端のイソシアネート基が少なくとも部分的にアルコキシシリル化されて得られる末端アルコキシシリル化親水性基含有ウレタンプレポリマーであってもよい。より具体的には、親水性基含有ウレタンプレポリマーは、イソシアネート反応性化合物(A1-a)、イソシアネート反応性化合物(A1-b)、およびポリイソシアネート(A1-c)の反応生成物であり、該反応は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマーを調製する公知乃至慣用の方法に準じて行うことができる。該親水性基含有ウレタンプレポリマーとしては、末端がイソシアネート基となっているものが好ましい。なお、イソシアネート反応性化合物(A1-a)、イソシアネート反応性化合物(A1-b)、およびポリイソシアネート(A1-c)を混合又は反応する際には、反応促進のために重合触媒を用いることができる。また、反応又は混合は溶媒中で行うことができる。
また、親水性基含有ウレタンプレポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)との反応は、両者を混合し、必要に応じて加熱することにより行うことができる。このような親水性基含有ウレタンプレポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)との反応により、前記親水性基含有ウレタンプレポリマーの末端のイソシアネート基が少なくとも部分的にアルコキシシリル化されて、末端アルコキシシリル化親水性基含有ウレタンプレポリマーを調製することができる。なお、この混合又は反応に際しては、前述のように重合触媒を用いることができる。また、前記混合又は反応に際しては、溶媒を用いることができる。
前記重合触媒としては、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させる際に用いられる公知乃至慣用の重合触媒(硬化触媒)を用いることができる。より具体的には、重合触媒としては、有機錫化合物、金属錯体、アミン化合物などの塩基性化合物、有機燐酸化合物などが挙げられる。有機錫化合物には、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジブチル錫フタレート、オクチル酸第一錫、ジブチル錫メトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、ジブチル錫ジバーサテートなどが含まれる。また、金属錯体としては、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物類;オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等のカルボン酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナート錯体、バナジウムアセチルアセトナート錯体等の金属アセチルアセトナート錯体などが挙げられる。さらに、アミン化合物等の塩基性化合物には、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類;テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類;三共エアプロダクツ社製の商品名「DABCO」シリーズや「DABCO BL」シリーズ、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン等の複数の窒素原子を含む直鎖或いは環状の第三級アミン又は第四級アンモニウム塩などが含まれる。さらにまた、有機燐酸化合物としては、モノメチル燐酸、ジ−n−ブチル燐酸、燐酸トリフェニル等が挙げられる。
このようにして、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)(特に、親水性基含有アルコキシシリル基末端ウレタン系ポリマー)が調製されうる。なお、これらの混合に際しては、各成分の混合順序は問わない。しかし、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)を効率よく得るためには、まず、イソシアネート反応性化合物(A1-a)及びイソシアネート反応性化合物(A1-b)の混合物に、ポリイソシアネート(A1-c)を加え、さらに必要に応じて重合触媒を加えて反応させて、親水性基含有ウレタンプレポリマーを調製した後に、該反応混合液にイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)を加えて反応させることにより、末端アルコキシシリル化親水性基含有ウレタンプレポリマーを調製することが好ましい。
親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)において、イソシアネート反応性化合物(A1-a)、イソシアネート反応性化合物(A1-b)、ポリイソシアネート(A1-c)、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)の各成分の割合は特に制限されない。例えば、ポリイソシアネート(A1-c)と、イソシアネート反応性化合物(A1-a)およびイソシアネート反応性化合物(A1-b)との割合としては、ポリイソシアネート(A1-c)におけるイソシアネート基/イソシアネート反応性化合物(A1-a)およびイソシアネート反応性化合物(A1-b)におけるイソシアネート反応性基(NCO/NCO反応性基)(当量比)が、1より大きく2.0以下(好ましくは1.02〜1.5、さらに好ましくは1.05〜1.4)となるような範囲から選択することができる。該NCO/NCO反応性基の比が大きすぎると(例えば、2.0(当量比)を越えると)、分散性が低下する。一方、該NCO/NCO反応性基の比が小さすぎると(例えば、1以下(当量比)であると)、シリル基導入が充分にできなくなり、各種物性が低下する。あるいは、ポリイソシアネート(A1-c)は、親水性基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基の含有量が、0.3〜7.0質量%(好ましくは0.4〜4.0質量%、さらに好ましくは0.5〜3.0質量%)となるような割合で含まれていてもよい。イソシアネート基の含有量は多すぎると(例えば、7.0質量%を越えると)、分散性が低下する。一方、イソシアネート基の含有量が少なすぎると(例えば、0.3質量%未満であると)、反応時間が非常に長くなり、シリル基導入が充分にできなくなり、耐水性が低下する。
イソシアネート反応性化合物(A1-b)は、親水性基がアニオン性基である場合、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)[すなわち、アニオン性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー]中のアニオン性基の含有量が、0.4meq/g以上(例えば、0.4〜0.7meq/g、好ましくは0.4〜0.6meq/g)となるような割合で含まれていることが好ましい。該アニオン性基の含有量が多すぎると、耐水性が低下する。一方、該アニオン性基の含有量が少なすぎると(例えば、0.4meq/g未満であると)、分散安定性が低下する。
イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)は、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)中の珪素原子の含有量が、例えば、0.02〜10質量%(好ましくは0.03〜3質量%、さらに好ましくは0.05〜2質量%)となるような割合で含まれていることが好ましい。該珪素原子の含有量が多すぎると(例えば、10質量%を超えると)、得られた組成物の安定性が低下し、一方、少なすぎると(例えば、0.02質量%未満であると)、効率的に3元共重合体を得ることが困難になり、期待される効果が得られない場合がある。
なお、不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)が用いられている場合、その使用量は、エステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d4)が、少なくとも第2級アミノ基を1つ残す量であることが望ましい。例えば、第1級アミノ基含有アルコキシシランにおける第1級アミノ基及び第2級アミノ基1モルに対して0.8〜2モル程度の範囲から選択することができる。なお、不飽和カルボン酸エステル(A1-d3)は、少なくとも第2級アミノ基が残存するような条件で反応させて用いることができる。
ウレタン系ポリマー(A)[特に、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)]を調製する際の溶媒[例えば、親水性基含有ウレタンプレポリマーの調製の際に用いられる溶媒や、親水性基含有ウレタンプレポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)との反応の際の用いられる溶媒など]としては、特に制限されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;N−メチルピロリドン等のピロリドン類などの有機溶媒を用いることができる。このように、溶媒として、有機溶媒を用いた場合、加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマーを調製した後に、公知の除去方法(例えば、減圧蒸留方法等の蒸留方法など)により、有機溶媒を反応混合物から除去することができる。
本発明では、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を、下記に具体的に示されるような工程(X)〜(Y)を具備しているアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体の製造方法により調製する際には、ウレタン系ポリマー(A)[特に、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)]を調製する際の溶媒としては、特に、工程(Y)で重合を行うアクリル系単量体(B)を好適に用いることができる。このように、溶媒としてアクリル系単量体(B)を溶媒として用いてウレタン系ポリマー(A)を調製すると、溶媒の除去を行わずに、ウレタン系ポリマー(A)を調製した反応混合物をそのままの状態で、工程(X)で利用することができる。すなわち、工程(X)では、アクリル系単量体(B)を溶媒としてウレタン系ポリマー(A)を調製した反応混合物を、そのままの状態で、水に分散又は溶解させることにより、アクリル系単量体(B)を溶媒として含んでいる、ウレタン系ポリマー(A)を、水に分散又は溶解させて、アクリル系単量体(B)を含んでいる、ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液を調製することができる。しかも、この工程(X)で得られた水分散液又は水溶液中のアクリル系単量体(B)[すなわち、ウレタン系ポリマー(A)の調製の際に溶媒として用いたアクリル系単量体(B)]は、工程(Y1)、(Y2)や(Y3)では、アクリル系単量体(B)を重合する際のモノマー成分(アクリル系モノマー成分)として用いることができる。従って、ウレタン系ポリマー(A)の調製に際して、アクリル系単量体(B)を溶媒として用いると、溶媒の除去を必要とせず、前記アクリル系単量体(B)は、そのまま系に含まれた状態で、工程(X)〜工程(Y1)、工程(X)〜工程(Y2)や、工程(X)〜工程(Y3)で利用することができ、極めて効率よく、しかも人体のみならず、環境的にも極めて優れた条件下で、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を製造することが可能となる。しかも、迅速に製造することができるだけでなく、コストを低減させることができる。このように、ウレタン系ポリマー(A)の調製に際して、アクリル系単量体(B)を溶媒として用いる場合、アクリル系単量体(B)は、すべてを溶媒として予め用いられていてもよく、一部のみが溶媒として用いられていてもよい。ウレタン系ポリマー(A)の調製に際して、アクリル系単量体(B)の一部のみが溶媒として用いられている場合、残部のアクリル系単量体(B)は、工程(Y1)、工程(Y2)や工程(Y3)で、一括的な導入方法や、滴下による導入方法などにより系内に導入させて、アクリル系単量体(B)の重合を行うことができる。
本発明では、ウレタン系ポリマー(A)としては、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)として、前記式(4a)〜(4d)で表されるアミノ基含有アルコキシシラン化合物又はメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、またはエステル変性アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d4)[特に、前記式(6)、前記式(7a)や前記式(7b)で表されるようなエステル変性アルコキシシラン(A1-d4)]が用いられている加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマーを好適に用いることができる。
(アクリル系単量体(B))
アクリル系単量体(B)としては、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸エステル]等が挙げられる。該(メタ)アクリル酸エステルには、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が含まれる。アクリル系単量体(B)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C1-4アルキルエステル]などが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルには、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が含まれる。(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルエステル等が挙げられる。
本発明では、アクリル系単量体(B)とともに、アクリル系単量体(B)と共重合が可能なエチレン性不飽和単量体(共重合性不飽和単量体)が用いられていてもよい。共重合性不飽和単量体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。このような共重合性不飽和単量体としては、公知乃至慣用の共重合性不飽和単量体を用いることができる。具体的には、共重合性不飽和単量体には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸の他、カルボキシアルキル(メタ)アクリレート(カルボキシエチルアクリレート等)などのカルボキシル基含有単量体;無水マレイン酸、無水イコタン酸などの酸無水物基含有単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチルなどのヒドロキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アクリルアミド系単量体;N−ビニルカルボン酸アミド類;N−ビニルカプロラクタムなどのN−ビニルラクタム類;N−ビニルピリジン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、N−(1−メチルビニル)ピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリンなどの複素環含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどの(メタ)アクリル酸アルキレングリコール系単量体;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸などのスルホン酸基含有ビニル系単量体;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有ビニル系単量体;塩化ビニルなどのハロゲン原子含有ビニル系単量体などが含まれる。また、共重合性不飽和単量体としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの各種の多官能系単量体も適宜選択して用いることができる。
(化合物(C))
また、加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基を有し且つエチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基を有する化合物(C)(「化合物(C)」と称する場合がある)としては、エチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基(「不飽和結合反応性基」と称する場合がある)を分子中に少なくとも1つ有し、且つ加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基(「加水分解反応性基」と称する場合がある)を分子中に少なくとも1つ有する化合物(例えば、モノマー成分)であれば特に制限されない。化合物(C)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。エチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基(不飽和結合反応性基)としては、エチレン性不飽和結合(エチレン性の炭素−炭素二重結合)を含有する基に対して反応性(特に、付加反応性又は重合反応性など)を有する官能基であれば特に制限されないが、エチレン性不飽和結合含有基、メルカプト基が好適である。なお、不飽和結合反応性基としてのエチレン性不飽和結合含有基としては、エチレン性不飽和結合(エチレン性の炭素−炭素二重結合)を含有する基であれば特に制限されないが、例えば、ビニル基や、1−メチルビニル基(イソプロペニル基)、1−エチルビニル基などの1−アルキルビニル基などが挙げられ、ビニル基やイソプロペニル基(特にビニル基)が好適である。また、化合物(C)において、加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基(加水分解反応性基)としては、加水分解性珪素原子含有基に対して反応性(特に、加水分解による反応性)を有する官能基であれば特に制限されないが、加水分解性珪素原子含有基が好適である。
従って、化合物(C)としては、加水分解性珪素原子含有基及びエチレン性不飽和結合含有基を有する化合物(エチレン性不飽和結合含有基を有するシラン系化合物)や、加水分解性珪素原子含有基及びメルカプト基を有する化合物(メルカプト基を有するシラン系化合物)などを用いることができる。
化合物(C)において、加水分解反応性基としての加水分解性珪素原子含有基としては、前記と同様に、加水分解性シリル基が好ましく、なかでもアルコキシシリル基が好適である。アルコキシシリル基におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基などのC1-4アルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(なかでもメトキシ基、エトキシ基)が好適である。もちろん、炭素数が5以上のアルコキシ基であってもよい。このようなアルコキシ基は、1つの珪素原子に、通常、1〜3個(好ましくは2又は3個)結合している。なお、アルコキシ基は単独で又は2種以上組み合わせられていてもよい。すなわち、1つの珪素原子には、同一のアルコキシ基が結合していてもよく、異なるアルコキシ基が2種以上組み合わせられて結合していてもよい。
従って、化合物(C)における加水分解反応性基としては、例えば、下記式(8)で表される反応性シリル基が好適である。
[式(8)において、R
10は水素原子又は炭化水素基を示す。]
前記式(8)において、R10の炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基などが挙げられる。R10における脂肪族炭化水素基には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜20程度のアルキル基などが含まれる。また、R10の脂肪族炭化水素基としては、前記アルキル基に対応するアルケニル基、アルカジエニル基、アルキニル基なども用いることができ、不飽和結合の位置は特に制限されない。さらに、R10の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基などの環を構成する炭素数が5〜10程度のシクロアルキル基の他、多環式炭化水素環(例えば、ノルボルナンにおける炭化水素環等の橋かけ環など)を有する基などが挙げられる。R10の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基やナフチル基などのアリール基などが挙げられる。なお、芳香族炭化水素基における芳香族性環としては、ベンゼン環や縮合炭素環(例えば、ナフタレン環等の2〜10個の4〜7員炭素環が縮合した縮合炭素環など)が挙げられる。R10としては、脂肪族炭化水素基等の炭化水素基(特に、アルキル基)が好適であり、なかでも炭素数1〜10(さらに好ましくは1〜6、特に1〜4)程度のアルキル基が好ましい。なお、R10の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。また、該置換基等を介して、R10の炭化水素基は、他の炭化水素基と結合して環(芳香族性環や非芳香族性環)を形成していてもよい。
前記式(8)で表される反応性シリル基は、1つの珪素原子に、反応性を発揮する「−OR
10」基を少なくとも1つ有していればよい。なお、1つの珪素原子に結合可能な「−OR
10」基の数は1個、2個又は3個である。また、1つの珪素原子に複数の「−OR
10」基が結合している場合、「−OR
10」基は、すべて同一であってもよく、すべて又は部分的に異なっていてもよい。なお、1つの珪素原子に、「−OR
10」基が1個又は2個結合している場合、1個又は2個の水素原子又は炭化水素基などの基が珪素原子に結合していてもよい。具体的には、反応性シリル基としては、下記式(8a)や(8b)で表される反応性シリル基などが挙げられる。
[式(8a)、(8b)において、R
11は水素原子又は炭化水素基を示す。また、R
10は前記に同じである。p
1は1又は2である。p
2は1、2又は3である。なお、R
10、R
11は、それぞれ、同一又は異なる珪素原子に結合しているR
10又はR
11と結合していてもよい。]
前記式(8a)や(8b)において、R11の炭化水素基としては、R10の炭化水素基と同様の炭化水素基(例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基など)を用いることができる。具体的には、R11における脂肪族炭化水素基には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜20程度のアルキル基や、前記アルキル基に対応するアルケニル基、アルカジエニル基、アルキニル基などが含まれる。なお、R11の脂肪族炭化水素基が、例えば、アルケニル基である場合、末端に炭素−炭素二重結合(ビニル性の炭素−炭素二重結合)を有するアルケニル基であってもよく、分子内部に炭素−炭素二重結合(非ビニル性の炭素−炭素二重結合)を有するアルケニル基であってもよい。このように、R11が脂肪族不飽和炭化水素基である場合、不飽和結合の位置は特に制限されない。また、R11の脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基としては、前記R10の脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基として例示の脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基などが挙げられる。R11としては、脂肪族炭化水素基等の炭化水素基(特にアルキル基)が好適であり、なかでも炭素数1〜10(さらに好ましくは1〜6、特に1〜4)程度のアルキル基が好ましい。なお、前記式(8a)や(8b)において、R10、R11の炭化水素基は、それぞれ、置換基を有していてもよい。また、該置換基等を介して、R10やR11の炭化水素基は他の炭化水素基(例えば、他の珪素原子に結合しているR10やR11の炭化水素基など)と結合して環(芳香族性環や非芳香族性環)を形成していてもよい。また、R10は、同一の又は異なる珪素原子に結合しているR10又はR11と結合していてもよく、R11は、同一の又は異なる珪素原子に結合しているR10又はR11と結合していてもよい。R10やR11が、異なる珪素原子に結合しているR10又はR11と結合している場合、前記珪素原子は、同一の分子中の珪素原子であってもよく、異なる分子中の珪素原子であってもよい。互いに結合しているR10やR11の珪素原子が、同一の分子中にある場合は、環を構成することになり、異なる分子中にある場合は、架橋構造を構成することになる。
p1は1又は2であり、好ましくは2である。なお、p1が2の場合は、R11が存在せず、式(8a)中の珪素原子に2つの「−OR10」基が結合していることを意味している。また、p2は1、2又は3であり、好ましくは2又は3である。なお、p2が3の場合は、R11が存在せず、式(8b)中の珪素原子に3つの「−OR10」基が結合していることを意味している。
なお、前述のような反応性シリル基を含有する化合物としては、その反応性シリル基が、前記式(8a)で表される反応性シリル基である場合、前記式(8a)で表される反応性シリル基を繰り返し単位又は繰り返し単位の一部として含有していてもよく、あるいは、繰り返し単位(又は繰り返し単位の一部)ではなく、単一の2価の基として含有していてもよい。また、前記式(8a)で表される反応性シリル基における一方の端部には、前記式(8b)で表される反応性シリル基が結合していてもよく、他の基が結合していてもよい。
反応性シリル基としては、前記式(8b)で表される反応性シリル基が好適である。前記式(8b)で表される反応性シリル基としては、具体的には、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロポキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリブトキシシリル基、トリイソブトキシシリル基、トリs−ブトキシシリル基、トリt−ブトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、メチルジプロポキシシリル基、メチルジブトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、エチルジプロポキシシリル基、エチルジブトキシシリル基、プロピルジメトキシシリル基、プロピルジエトキシシリル基、プロピルジプロポキシシリル基、プロピルジブトキシシリル基等のアルキルジアルコキシシリル基やこれらに対応するジアルキル(モノ)アルコキシシリル基などが挙げられる。また、これらのアルキルジアルコキシシリル基やジアルキル(モノ)アルコキシシリル基のアルキル基が水素原子となっているものに相当するジアルコキシシリル基やアルコキシシリル基などが挙げられる。さらにまた、前記トリアルコキシシリル基、アルキルジアルコキシシリル基やジアルキル(モノ)アルコキシシリル基が加水分解されて、少なくとも1つのアルコキシル基がヒドロキシル基となっているものに相当するヒドロキシル基含有シリル基などが挙げられる。
化合物(C)として、前述のような反応性シリル基を含有する化合物(「反応性シリル基含有化合物」と称する場合がある)としては、分子中に、エチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基(不飽和結合反応性基)を少なくとも1つ有しているとともに、前記式(8)で表されるような反応性シリル基を少なくとも1つ有していればよい。このような反応性シリル基含有化合物としては、前記式(8a)や(8b)で表される反応性シリル基が、2価の有機基を介して又は介さずに、不飽和結合反応性基と結合している反応性シリル基含有化合物などが挙げられる。不飽和結合反応性基としては、前述のように、ビニル基や、1−メチルビニル基(イソプロペニル基)、1−エチルビニル基等の1−アルキルビニル基(好ましくはビニル基やイソプロペニル基、特にビニル基)などのエチレン性不飽和結合含有基の他、メルカプト基などが挙げられる。一方、前記2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、アリレン基、アルキレン−アリレン基、アルキレン−アリレン−アルキレン基等の炭化水素基のみにより構成される2価の炭化水素基;2価の炭化水素基と2価の他の基[例えば、オキシ基、カルボニル基、カルボニル−オキシ基、オキシ−カルボニル基、オキシ−カルボニル−オキシ基、チオ基、チオカルボニル基、チオカルボニル−オキシ基、カルボニル−チオ基、オキシ−チオカルボニル−オキシ基、チオ−カルボニル−チオ基、アミド結合含有基(−NHCO−基や−CONH−基など)、イミド結合含有基(−CONHCO−基)、ウレタン結合含有基(−NHCOO−基や−OCONH−基など)、ウレア結合含有基(−NHCONH−基;尿素結合含有基)など]との種々の組み合わせにより構成される各種の2価の有機基(例えば、アルキレン−オキシ−アルキレン基、アルキレン−カルボニル−オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−カルボニル−アルキレン基、オキシ−アルキレン基、カルボニル−オキシ−アルキレン基、オキシ−カルボニル−アルキレン基、オキシ−アリレン基、カルボニル−オキシ−アリレン基、オキシ−カルボニル−アリレン基、アルキレン−オキシ−カルボニル−アリレン−カルボニル−オキシ−アルキレン基等)などが挙げられる。
具体的には、不飽和結合反応性基としてのエチレン性不飽和結合含有基が2価の基を介して結合した形態として、例えば、ビニル基が2価の基を介して結合した形態としては、例えば、アリル基(2−プロペニル基)等のビニル−アルキル基;ビニル−フェニル基、アリル−フェニル基等のビニル−(アルキル)−アリール基;ビニル−シクロヘキシル基、アリル−シクロヘキシル基等のビニル−(アルキル)−シクロアルキル基;(メタ)アクリロイル基(アクリロイル基、メタクリロイル基);(メタ)アクリロイルオキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル基;(メタ)アクリロイルオキシフェニル基等の(メタ)アクリロイルオキシアリール基;ビニル−オキシカルボニル−フェニレン−カルボニルオキシ−エチル基、ビニル−オキシカルボニル−フェニレン−カルボニルオキシ−プロピル基、アリル−オキシカルボニル−フェニレン−カルボニルオキシ−エチル基、アリル−オキシカルボニル−フェニレン−カルボニルオキシ−プロピル基等のビニル−(アルキル)−オキシカルボニル−フェニレン−カルボニルオキシ−アルキル基などが挙げられる。もちろん、エチレン性不飽和結合含有基が2価の基を介して結合した形態として、1−アルキルビニル基(1−メチルビニル基など)が2価の基を介して結合した形態としては、前述のような、ビニル基が2価の基を介して結合した形態に対応した結合形態を例示できる。また、不飽和結合反応性基としてのメルカプト基が2価の基を介して結合した形態としては、前記の不飽和結合反応性基としてのエチレン性不飽和結合含有基が2価の基を介して結合した形態として例示の結合形態に対応した結合形態(例えば、メルカプトアルキル基、メルカプト−(アルキル)−アリール基、メルカプト−(アルキル)−シクロアルキル基等)などが挙げられる。
本発明では、化合物(C)としての反応性シリル基含有化合物としては、不飽和結合反応性基としてのビニル基が、2価の有機基を介して又は介さずに、前記式(8b)で表される反応性シリル基における珪素原子に結合しているエチレン性不飽和化合物(ビニル基含有シランカップリング剤)や、不飽和結合反応性基としてのメルカプト基が、2価の有機基を介して又は介さずに、前記式(8b)で表される反応性シリル基における珪素原子に結合しているメルカプト系化合物(メルカプト基含有シランカップリング剤)を好適に用いることができる。
ビニル基含有シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基が、2価の有機基を介さずに、直接、反応性シリル基における珪素原子に結合している場合、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン;ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、ビニルメチルジイソプロポキシシラン、ビニルメチルジブトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、ビニルエチルジプロポキシシラン、ビニルエチルジイソプロポキシシラン、ビニルエチルジブトキシシラン、ビニルプロピルジメトキシシラン、ビニルプロピルジエトキシシラン、ビニルプロピルジプロポキシシラン、ビニルプロピルジイソプロポキシシラン、ビニルプロピルジブトキシシラン等の(ビニル)アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(ビニル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
また、ビニル基含有シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基が、2価の有機基を介して、反応性シリル基における珪素原子に結合している場合、2価の有機基の種類に応じて、前述のような、ビニル基が、2価の有機基を介さずに、直接、反応性シリル基における珪素原子に結合している場合に対応したものが挙げられる。具体的には、ビニル基含有シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基が、2価の有機基を介して、反応性シリル基における珪素原子に結合しており、且つ前記2価の有機基がアルキレン基である場合、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリプロポキシシラン、β−ビニルエチルトリイソプロポキシシラン、β−ビニルエチルトリブトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシラン等のビニルアルキルトリアルコキシシラン;β−ビニルエチルメチルジメトキシシラン、β−ビニルエチルメチルジエトキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルメチルジブトキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジメトキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジエトキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルエチルジブトキシシラン等の(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(ビニルアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
さらにまた、ビニル基含有シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基が、2価の有機基を介して、反応性シリル基における珪素原子に結合しており、且つ前記2価の有機基がカルボニルオキシアルキレン基である場合、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリプロポキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリイソプロポキシシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリブトキシシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリブトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリアルコキシシラン;(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジプロポキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジイソプロポキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジブトキシシラン等の(メタ)アクリロイルオキシアルキル−アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
また、メルカプト基含有シランカップリング剤としては、前記例示のビニル基含有シランカップリング剤(特に、ビニル基が、2価の有機基を介して、反応性シリル基における珪素原子に結合しており、且つ前記2価の有機基がアルキレン基である場合として例示のビニル基含有シランカップリング剤)に対応したもの等が挙げられる。具体的には、メルカプト基含有シランカップリング剤としては、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、β−メルカプトエチルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルトリエトキシシラン、β−メルカプトエチルトリプロポキシシラン、β−メルカプトエチルトリイソプロポキシシラン、β−メルカプトエチルトリブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリブトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシラン;β−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、β−メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルエチルジプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルエチルジイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルエチルジブトキシシラン等の(メルカプトアルキル)アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(メルカプトアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
なお、前記式(8a)で表される反応性シリル基を含有する化合物と、前記式(8b)で表される反応性シリル基を含有する化合物とに、同一の反応性シリル基を含有する化合物が包含される場合があるが、その場合は、式(8a)又は式(8b)のうちいずれか一方の式で表される反応性シリル基を含有する化合物に適宜分類することができる。
(加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物(D))
加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物(D)(「シラン系化合物(D)」と称する場合がある)としては、加水分解性珪素原子含有基に対する反応性官能基を分子中に少なくとも1つ有するシラン系化合物であれば特に制限されない。シラン系化合物(D)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。シラン系化合物(D)において、加水分解性珪素原子含有基としては、前記と同様に、加水分解性シリル基が好ましく、なかでもアルコキシシリル基が好適である。アルコキシシリル基におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基などのC1-4アルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(なかでもメトキシ基、エトキシ基)が好適である。もちろん、炭素数が5以上のアルコキシ基であってもよい。このようなアルコキシ基は、1つの珪素原子に、通常、1〜3個(好ましくは2又は3個)結合している。なお、アルコキシ基は単独で又は2種以上組み合わせられていてもよい。すなわち、1つの珪素原子には、同一のアルコキシ基が結合していてもよく、異なるアルコキシ基が2種以上組み合わせられて結合していてもよい。
シラン系化合物(D)としては、例えば、下記式(9)で表される加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物を用いることができる。
[式(9)において、R
12は水素原子又は炭化水素基を示す。]
前記式(9)におけるR12としての炭化水素基としては、前記式(8)におけるR10の炭化水素基と同様の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基など)が挙げられる。R12としては、脂肪族炭化水素基等の炭化水素基(特に、アルキル基)が好適である。具体的には、R12における脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜20程度のアルキル基などが挙げられる。R12の脂肪族炭化水素基としては、なかでも炭素数1〜10(さらに好ましくは1〜6、特に1〜4)程度のアルキル基を好適に用いることができる。なお、R12の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。また、該置換基等を介して、R12の炭化水素基は、他の炭化水素基と結合して環(芳香族性環や非芳香族性環)を形成していてもよい。
このようなシラン系化合物(D)としては、1つの珪素原子に、加水分解性を発揮する「−OR
12」基を少なくとも1つ有していればよい。なお、1つの珪素原子に結合可能な「−OR
12」基の数は1個、2個、3個又は4個である。また、1つの珪素原子に複数の「−OR
12」基が結合している場合、「−OR
12」基は、すべて同一であってもよく、すべて又は部分的に異なっていてもよい。なお、1つの珪素原子に、「−OR
12」基が1個、2個又は3個結合している場合、1個、2個又は3個の水素原子又は炭化水素基などが珪素原子に結合していてもよい。具体的には、シラン系化合物(D)としては、下記式(9a)、(9b)や(9c)で表される加水分解性珪素原子含有基を含有するシラン系化合物を用いることができる。
[式(9a)、(9b)、(9c)において、R
13は水素原子又は炭化水素基を示す。R
12は前記に同じである。q
1は1又は2である。q
2は1、2又は3である。q
3は1、2、3又は4である。なお、R
12、R
13は、それぞれ、同一又は異なる珪素原子に結合しているR
12又はR
13と結合していてもよい。]
前記式(9a)、(9b)や(9c)において、R13の炭化水素基としては、R11の炭化水素基と同様の炭化水素基(例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基など)を用いることができる。R13としては、脂肪族炭化水素基等の炭化水素基(特に、アルキル基)が好適である。なお、R13の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。もちろん、R12も前述のように置換基を有していてもよい。また、該置換基等を介して、R12やR13の炭化水素基は、他の炭化水素基(例えば、他の珪素原子に結合しているR12やR13の炭化水素基など)と結合して環(芳香族性環や非芳香族性環)を形成していてもよい。また、R12は、同一の又は異なる珪素原子に結合しているR12又はR13と結合していてもよく、R13は、同一の又は異なる珪素原子に結合しているR12又はR13と結合していてもよい。R25やR13が、異なる珪素原子に結合しているR12又はR13と結合している場合、前記珪素原子は、同一の分子中の珪素原子であってもよく、異なる分子中の珪素原子であってもよい。互いに結合しているR12やR13の珪素原子が、同一の分子中にある場合は、環を構成することになり、異なる分子中にある場合は、架橋構造を構成することになる。
q1は1又は2であり、好ましくは2である。なお、q1が2の場合は、R13が存在せず、式(9a)中の珪素原子に2つの「−OR12」基が結合していることを意味している。また、q2は1、2又は3であり、好ましくは2又は3である。なお、q2が3の場合は、R13が存在せず、式(9b)中の珪素原子に3つの「−OR12」基が結合していることを意味している。さらにまた、q3は1、2、3又は4であり、好ましくは2、3又は4である。なお、q3が4の場合は、R13が存在せず、式(9c)中の珪素原子に4つの「−OR12」基が結合していることを意味している。
なお、シラン系化合物(D)としては、その加水分解性珪素原子含有基が、前記式(9a)で表される加水分解性珪素原子含有基である場合、前記式(9a)で表される加水分解性珪素原子含有基を繰り返し単位又は繰り返し単位の一部として含有していてもよく、あるいは、繰り返し単位(又は繰り返し単位の一部)ではなく、単一の2価の基として含有していてもよい。なお、前記式(9a)で表されるシラン系化合物(D)と、前記式(9b)で表されるシラン系化合物(D)と、前記式(9c)で表されるシラン系化合物(D)とに、同一のシラン系化合物(D)が包含される場合があるが、その場合は、式(9a)、式(9b)又は式(9c)のうちいずれか一方の式で表されるシラン系化合物(D)に適宜分類することができる。
このように、シラン系化合物(D)は、分子中に、前記式(9)で表される加水分解性珪素原子含有基を少なくとも1つ有していればよい。シラン系化合物(D)としては、例えば、下記式(10a)で表されるシラン系化合物(D)や、下記式(10b)で表されるシラン系化合物(D)を好適に用いることができる。
[式(10a)において、R
14、R
15は、同一又は異なって、水素原子または炭化水素基を示す。rは1又は2である。sは1以上の整数である。R
12、R
13は前記に同じ。]
[式(10b)において、R
16はOR
12又はR
13を示し、R
17は有機基を示す。tは1以上の整数である。R
12、R
13、rは前記に同じ。]
前記式(10a)において、R14、R15の炭化水素基としては、R12の炭化水素基と同様の炭化水素基が挙げられ、R14、R15の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基が好適であり、さらに好ましくはR14、R15とは、同一の又は異なるアルキル基が挙げられる。また、R14やR15は、R12と同一の炭化水素基であってもよく、異なる炭化水素基であってもよい。
rは1又は2であり、好ましくは2である。なお、rが2の場合は、R13が存在せず、式(12a)中の珪素原子に2つの「−OR12」基が結合していることを意味している。sは1以上の整数である。前記式(10a)で表されるシラン系化合物(D)は、sが1の場合は、単量体であることを意味しており、sが2以上の整数の場合は、オリゴマー又はポリマー等の多量体であることを意味している。
前記式(10a)で表されるシラン系化合物(D)において、単量体の形態のシラン系化合物(D)としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシランや、メトキシトリエトキシシラン等のアルコキシトリアルコキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等のジアルコキシジアルコキシシランなどが挙げられる。また、多量体の形態のシラン系化合物(D)としては、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエトキシシラン、ポリテトラプロポキシシラン、ポリテトライソプロポキシシラン、ポリテトラブトキシシラン等のポリテトラアルコキシシラン;ポリ(メトキシエトキシシラン)等のポリ(アルコキシアルコキシシラン);ポリ(メトキシシラン)、ポリ(エトキシシラン)、ポリ(プロポキシシラン)、ポリ(イソプロポキシシラン)、ポリ(ブトキシシラン)等のポリ(アルコキシシラン);ポリ(メトキシメチルシラン)、ポリ(メトキシエチルシラン)、ポリ(エトキシメチルシラン)等のポリ(アルコキシアルキルシラン)などが挙げられる。
一方、前記式(10b)において、R16はOR12又はR13であり、同一の珪素原子に結合している複数のOR12やR13は、同一であってもよく、異なっていてもよい。R17の有機基としては、例えば、炭化水素基や、該炭化水素基の主鎖中に炭素原子以外の原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子など)を有するヘテロ原子含有基などが挙げられる。R17に係る炭化水素基やヘテロ原子含有基は、1価又は多価のいずれの形態を有していてもよい。R17の有機基としては、1価の炭化水素基を好適に用いることができる。該炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基などの脂肪族炭化水素基;シクロアルキル基などの脂環式炭化水素基;アリール基などの芳香族炭化水素基などが挙げられ、脂肪族炭化水素基が好ましい。具体的には、R17に係る脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6、特に1〜4)程度のアルキル基や、該アルキル基に対応するアルケニル基(例えば、ビニル基、イソプロペニル基、1−エチルビニル基等の1−アルキルビニル基の他、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜20程度のアルケニル基など)、アルカジエニル基、アルキニル基などが挙げられる。また、R17に係る脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基などの環を構成する炭素数が5〜10程度のシクロアルキル基の他、多環式炭化水素環(例えば、ノルボルナンにおける炭化水素環等の橋かけ環など)を有する基などが挙げられる。R17に係る芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基やナフチル基などのアリール基などが挙げられ、該芳香族炭化水素基における芳香族性環としては、ベンゼン環や縮合炭素環(例えば、ナフタレン環等の2〜10個の4〜7員炭素環が縮合した縮合炭素環など)が挙げられる。R17に係る炭化水素基やヘテロ原子含有基は、単数又は複数の置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、他の炭化水素基[例えば、脂肪族炭化水素基(ビニル基、イソプロペニル基、1−エチルビニル基等の1−アルキルビニル基;アルキル基など)、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基など]、メルカプト基、置換オキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、エポキシ基、エポキシ−オキシ基(グリシドキシ基)、エポキシ−アルコキシ基、エポキシ−アリールオキシ基、エポキシ−シクロアルキルオキシ基、イソシアネート基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、オキソ基、アシル基、アシルオキシ基、置換オキシ基、複素環含有基などが挙げられる。置換基は、1種のみであってもよく、2種以上組み合わせられていてもよい。なお、2種以上の置換基が組み合わされている場合は、該2種以上の置換基は、それぞれ、同一又は異なる原子(炭素原子など)に結合していてもよく、いずれか1つの置換基が必要に応じて他の基を介して他の置換基に結合していてもよい。
従って、R17としては、ビニル基やメルカプト基等のエチレン性不飽和反応性基の他、ビニル基−有機基、メルカプト−有機基等のエチレン性不飽和反応性基−有機基などであってもよい。すなわち、R17としては、ビニル基やメルカプト基等のエチレン性不飽和反応性基が、2価の有機基を介して又は介さずに、加水分解性珪素原子含有基における珪素原子に結合している形態の基であってもよい。具体的には、R17としては、例えば、ビニル基、メルカプト基の他、ビニル−アルキル基、ビニル−(アルキル)−アリール基、ビニル−(アルキル)−シクロアルキル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(ビニル−カルボニルオキシアルキル基)、(メタ)アクリロイルオキシアリール基、メルカプト−アルキル基、メルカプト−(アルキル)−アリール基、メルカプト−(アルキル)−シクロアルキル基などが挙げられる。
tは1以上の整数であれば特に制限されないが、好ましくは1〜4の整数(さらに好ましくは1又は2、特に1)である。なお、tが2以上の整数である場合、R17の有機基に、2つ以上の加水分解性珪素原子含有基が結合していることを意味している。なお、R17が多価の有機基である場合、通常、tは2以上の整数であり、例えば、R17が多価の有機基で且つtが2の場合は、R17の多価の有機基の両末端に、加水分解性珪素原子含有基を有するシラン系化合物が挙げられる。
前記式(10b)で表されるシラン系化合物(D)としては、具体的には、R17がアルキル基である場合は、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリブトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシランや、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン等のジアルキルジアルコキシシランの他、これらに対応するトリアルキルアルコキシシランなどが挙げられる。
前記式(10b)で表されるシラン系化合物(D)としては、R17がビニル基やメルカプト基等のエチレン性不飽和反応性基や、ビニル−有機基やメルカプト−有機基等のエチレン性不飽和反応性基−有機基である場合、前記式(10b)で表されるシラン系化合物(D)としては、前記化合物(C)として例示のビニル基含有シランカップリング剤やメルカプト基含有シランカップリング剤などが挙げられる。すなわち、前記式(10b)で表されるシラン系化合物(D)には、化合物(C)が含まれる。具体的には、例えば、前記式(10b)で表されるシラン系化合物(D)としては、R17がビニル基である場合は、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン等のビニルトリアルコキシシランの他、これらに対応するビニルアルキルジアルコキシシランなどが挙げられる。また、R17がビニル−アルキル基である場合は、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリプロポキシシラン、β−ビニルエチルトリイソプロポキシシラン、β−ビニルエチルトリブトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシラン等のビニルアルキルトリアルコキシシランの他、これらに対応するビニルアルキルアルキルジアルコキシシランなどが挙げられる。さらに、R30がメルカプト−アルキル基である場合は、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、β−メルカプトエチルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルトリエトキシシラン、β−メルカプトエチルトリプロポキシシラン、β−メルカプトエチルトリイソプロポキシシラン、β−メルカプトエチルトリブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリブトキシシラン等のメルカプトアルキルトリアルコキシシランの他、これらに対応するメルカプトアルキルアルキルジアルコキシシランなどが挙げられる。
また、R17が置換基を有するアルキル基である場合、具体的には、置換基がグリシドキシ基である場合は、例えば、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン等のグリシドキシアルキルトリアルコキシシランや、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン等のグリシドキシアルキルアルキルジアルコキシシランの他、これらに対応するグリシドキシアルキルジアルキルアルコキシシランが挙げられる。また、イソシアネート基である場合は、例えば、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリプロポキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリブトキシシラン等のイソシアネートアルキルトリアルコキシシランや、これらに対応するイソシアネートアルキルアルキルジアルコキシシランやイソシアネートアルキルジアルキルアルコキシシランが挙げられる。さらに、アミノ基である場合は、例えば、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、β−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン等のアミノアルキルトリアルコキシシランや、β−アミノエチルメチルジメトキシシラン、β−アミノエチルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジプロポキシシラン等の(アミノアルキル)アルキルジアルコキシシランの他、これらに対応するアミノアルキルジアルキルアルコキシシランなどが挙げられる。他の置換基(置換オキシカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、エポキシ基、エポキシ−アルコキシ基、エポキシ−アリールオキシ基、エポキシ−シクロアルキルオキシ基、イソシアネート基、シアノ基、他の炭化水素基、カルボニル基、オキソ基、アシル基、アシルオキシ基、置換オキシ基、複素環含有基など)を有するシラン系化合物(D)としては、前記例示のシラン系化合物(D)に対応するものが挙げられる。
なお、前記式(10a)や(10b)で表されるシラン系化合物(D)には、前記例示のアルコキシ基含有シラン系化合物のアルコキシ基が、ヒドロキシル基に変換されたものに相当するヒドロキシル基含有シラン系化合物も含まれる。また、前記式(10a)で表されるシラン系化合物(D)と前記式(10b)で表されるシラン系化合物(D)とに、同一のシラン系化合物(D)が包含される場合があるが、その場合は、式(10a)又は式(10b)のうちいずれか一方の式で表されるシラン系化合物(D)に適宜分類することができる。
さらにまた、前記式(10b)で表されるシラン系化合物(D)が、ビニル基含有シランカップリング剤やメルカプト基含有シランカップリング剤である場合、該ビニル基含有シランカップリング剤やメルカプト基含有シランカップリング剤は、化合物(C)としても利用することができる。すなわち、本発明では、ビニル基含有シランカップリング剤やメルカプト基含有シランカップリング剤は、シラン系化合物(D)や化合物(C)の何れかの成分として用いられていてもよく、シラン系化合物(D)および化合物(C)の両者の成分として用いられていてもよい。なお、シランカップリング剤やメルカプト基含有シランカップリング剤をシラン系化合物(D)、またはシラン系化合物(D)及び化合物(C)として利用する場合、該シランカップリング剤やメルカプト基含有シランカップリング剤としては、ビニル−(アルキル)−トリアルコキシシラン、ビニル−(アルキル)−アルキルジアルコキシシラン、メルカプトアルキル−トリアルコキシシラン、メルカプトアルキル−アルキルジアルコキシシラン等のように、1つの珪素原子に、アルコキシ基等の加水分解性を有する基が複数(2又は3)個結合している形態を有していることが重要である。
本発明では、シラン系化合物(D)としては、エチレン性不飽和結合含有基に対する反応性官能基(エチレン性不飽和反応性基)を有するシラン系化合物と、エチレン性不飽和反応性基を有していないシラン系化合物との組み合わせであってもよい。シラン系化合物(D)として、エチレン性不飽和反応性基を有するシラン系化合物と、エチレン性不飽和反応性基を有していないシラン系化合物とを組み合わせて用いる場合、エチレン性不飽和反応性基を有するシラン系化合物と、エチレン性不飽和反応性基を有していないシラン系化合物との割合としては、例えば、前者/後者(重量部)=1/99〜99/1の範囲から選択することができる。なお、エチレン性不飽和反応性基を有するシラン系化合物は、前述のように、化合物(C)としても利用可能な化合物である。
(製造方法)
アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体の製造方法としては、アクリル系重合体鎖部とウレタン系重合体鎖部とが、シリコーン系重合体鎖部を介して結合している形態のアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を製造することができる方法であれば特に制限されず、例えば、下記の工程(X)を具備するとともに、下記の工程(Y1)、工程(Y2)および工程(Y3)から選択された少なくとも一種の工程を具備している製造方法などが挙げられる。
工程(X):ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液を調製する工程
工程(Y1):ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、シラン系化合物(D)の加水分解または縮合を行った後、さらに、アクリル系単量体(B)を重合させ、且つ、前記加水分解又は縮合の反応前、前記加水分解又は縮合の反応時、前記加水分解又は縮合の反応後乃至前記重合の反応前、前記重合の反応時、および前記重合の反応後のうち少なくともいずれか1種以上の過程で、化合物(C)を用いてアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製する工程
工程(Y2):ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、シラン系化合物(D)の加水分解または縮合に並行して、アクリル系単量体(B)を重合させ、且つ、前記加水分解又は縮合や前記重合の反応前、前記加水分解又は縮合や前記重合の反応時、および前記加水分解又は縮合や前記重合の反応後のうち少なくともいずれか1種以上の過程で、化合物(C)を用いてアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製する工程
工程(Y3):ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、アクリル系単量体(B)を重合させた後、シラン系化合物(D)の加水分解または縮合を行い、且つ、前記重合の反応前、前記重合の反応時、前記重合の反応後乃至前記加水分解又は縮合の反応前、前記加水分解又は縮合の反応時、および前記加水分解又は縮合の反応後のうち少なくともいずれか1種以上の過程で、化合物(C)を用いてアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製する工程
このように、ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、アクリル系単量体(B)を重合させ、且つ化合物(C)とシラン系化合物(D)とを、それぞれ同時に又は別に、前記重合の反応前、前記重合の反応時、および前記重合の反応後のうち少なくともいずれか1種以上の過程で用いて、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製することができる。なお、加水分解反応性基として加水分解性珪素原子含有基を有し且つ不飽和結合反応性基を有する化合物は、その使用目的により、化合物(C)や、シラン系化合物(D)として、適宜分類することができる。例えば、シリコーン系重合体鎖部を有するウレタン系ポリマー(A)と、アクリル系重合体とを連結させることを主目的として用いられる場合は、化合物(C)として分類することができ、一方、シリコーン系重合体鎖部を形成することを主目的として用いられる場合は、化合物(C)を化合物(D)として分類することができる。すなわち、加水分解反応性基として加水分解性珪素原子含有基を有し且つ不飽和結合反応性基を有する化合物は、化合物(C)としてのみ分類されていてもよく、シラン系化合物(D)としてのみ分類されていてもよく、化合物(C)及びシラン系化合物(D)として分類されていてもよい。従って、前記工程(Y1)〜工程(Y3)では、シラン系化合物(D)の加水分解または縮合には、不飽和結合反応性基を有していないシラン系化合物(D)の加水分解または縮合だけでなく、不飽和結合反応性基を有しているシラン系化合物(D)[すなわち、シラン系化合物(D)として分類される化合物(C)]の加水分解または縮合も含まれる。従って、シリコーン系重合体鎖部の構成単位として、化合物(C)に由来する構成単位が含まれている場合がある。
前記工程(Y1)では、シラン系化合物(D)の加水分解又は縮合により、シラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基同士の間や、シラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基と、ウレタン系ポリマー(A)の加水分解性珪素原子含有基との間で、反応(加水分解反応又は縮合反応)が生じて、加水分解性珪素原子含有基を有しているシリコーン系重合体鎖部を有するウレタン系ポリマーが生成する。この加水分解性珪素原子含有基を有しているシリコーン系重合体鎖部を有するウレタン系ポリマーと、シラン系化合物(D)の加水分解又は縮合を行う前の加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)とは、加水分解性珪素原子含有基を有していることが共通しているが、加水分解性珪素原子含有基と、ウレタン系重合体鎖部との間に、シリコーン系重合体鎖部を有しているかいないかが異なっていること、また、加水分解性珪素原子含有基の種類も異なっている場合があることが相違している。そして、加水分解性珪素原子含有基を有しているシリコーン系重合体鎖部を有するウレタン系ポリマーを得た後、さらに、アクリル系単量体(B)を重合させており、該重合により、アクリル系単量体(B)の重合反応が生じている。また、前記加水分解又は縮合の前や後、前記加水分解又は縮合と並行して(同時に)、前記重合の前や後、前記重合と並行して(同時に)、またはこれらの組み合わせで、化合物(C)を用いた反応を行っており、これにより、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基と、アクリル系単量体(B)に由来するエチレン性不飽和結合との反応(付加反応又は重合反応など)、および化合物(C)に由来する加水分解反応性基と、加水分解性珪素原子含有基を有しているシリコーン系重合体鎖部を有するウレタン系ポリマーにおける加水分解性珪素原子含有基との反応(加水分解反応又は縮合反応など)などが生じ、さらに、必要に応じて該化合物(C)同士の反応や化合物(C)とシラン系化合物(D)との反応などが生じている。前記アクリル系単量体(B)の重合反応により、アクリル系重合体鎖部が形成されることになる。さらにまた、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基と、アクリル系単量体(B)に由来するエチレン性不飽和結合との反応、および化合物(C)に由来する加水分解反応性基と、加水分解性珪素原子含有基を有しているシリコーン系重合体鎖部を有するウレタン系ポリマーにおける加水分解性珪素原子含有基との反応により、アクリル系重合体鎖部とシリコーン系重合体鎖部とが結合されることになる。また、化合物(C)同士の反応や化合物(C)とシラン系化合物(D)との反応により、シリコーン系重合体鎖部の鎖長が長くなる場合がある。従って、この工程(Y1)により、シリコーン系重合体鎖部を介してアクリル系重合体鎖部とウレタン系重合体鎖部とが結合しているアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が得られる。
また、前記工程(Y2)では、シラン系化合物(D)の加水分解または縮合と、アクリル系単量体(B)の重合とを並行して(同時に)行っており、また、これらの反応と並行して(同時に)又はこれらの反応の前や後に、化合物(C)を用いた反応を行っている。これにより、シラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基同士の間や、シラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基と、ウレタン系ポリマー(A)の加水分解性珪素原子含有基との間で、反応(加水分解反応又は縮合反応)が生じているとともに、アクリル系単量体(B)の重合反応が生じている。また、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基と、アクリル系単量体(B)に由来するエチレン性不飽和結合との反応(付加反応又は重合反応など)、およびシラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基と、化合物(C)に由来する加水分解反応性基との間の反応(加水分解反応又は縮合反応など)が生じ、さらに、必要に応じて該化合物(C)同士の反応や化合物(C)とシラン系化合物(D)との反応などが生じている。前記シラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基同士の間の反応により、シリコーン系重合体鎖部が形成されることになり、アクリル系単量体(B)の重合反応により、アクリル系重合体鎖部が形成されることになる。また、シラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基と、ウレタン系ポリマー(A)の加水分解性珪素原子含有基との間の反応により、シリコーン系重合体鎖部とウレタン系重合体鎖部とが結合されることになる。さらにまた、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基と、アクリル系単量体(B)に由来するエチレン性不飽和結合との反応、およびシラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基と、化合物(C)に由来する加水分解反応性基との間の反応により、アクリル系重合体鎖部とシリコーン系重合体鎖部とが結合されることになる。また、化合物(C)同士の反応や化合物(C)とシラン系化合物(D)との反応により、シリコーン系重合体鎖部の鎖長が長くなる場合がある。従って、この工程(Y2)により、シリコーン系重合体鎖部を介してアクリル系重合体鎖部とウレタン系重合体鎖部とが結合しているアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が得られる。
さらに、前記工程(Y3)では、アクリル系単量体(B)の重合により、アクリル系単量体(B)による重合体又は重合物(アクリル系重合体)が生成し、ウレタン系ポリマー(A)と、アクリル系重合体とを含有する混合物が得られる。さらに、この混合物中で、シラン系化合物(D)の加水分解または縮合を行っている。また、前記重合の前や後、前記重合と並行して(同時に)、前記加水分解又は縮合の前や後、前記加水分解又は縮合と並行して(同時に)、またはこれらの組み合わせで、化合物(C)を用いた反応を行っている。これにより、シラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基同士の間や、シラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基と、ウレタン系ポリマー(A)の加水分解性珪素原子含有基との間で、反応(加水分解反応又は縮合反応など)が生じている。また、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基と、アクリル系単量体(B)に由来するエチレン性不飽和結合との反応(付加反応又は重合反応など)、およびシラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基と、化合物(C)に由来する加水分解反応性基との間の反応(加水分解反応又は縮合反応など)が生じ、さらに、必要に応じて該化合物(C)同士の反応や化合物(C)とシラン系化合物(D)との反応などが生じている。前記シラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基同士の間の反応により、シリコーン系重合体鎖部が形成されることになる。また、シラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基と、ウレタン系ポリマー(A)の加水分解性珪素原子含有基との間の反応により、シリコーン系重合体鎖部とウレタン系重合体鎖部とが結合されることになる。さらにまた、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基と、アクリル系単量体(B)に由来するエチレン性不飽和結合との反応、およびシラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基と、化合物(C)に由来する加水分解反応性基との間の反応により、アクリル系重合体鎖部とシリコーン系重合体鎖部とが結合されることになる。また、化合物(C)同士の反応や化合物(C)とシラン系化合物(D)との反応により、シリコーン系重合体鎖部の鎖長が長くなる場合がある。従って、この工程(Y3)により、シリコーン系重合体鎖部を介してアクリル系重合体鎖部とウレタン系重合体鎖部とが結合しているアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が得られる。
前記工程(Y1)〜(Y3)において、化合物(C)を用いる過程としてはシラン系化合物(D)の加水分解又は縮合の反応時や該反応後の過程が好ましい。例えば、前記工程(Y1)では、化合物(C)は、シラン系化合物(D)の加水分解又は縮合の反応時、シラン系化合物(D)の加水分解又は縮合の反応後乃至アクリル系単量体(B)の重合の反応前、アクリル系単量体(B)の重合の反応時、アクリル系単量体(B)の重合の反応後に用いることが好ましい。前記工程(Y2)では、化合物(C)は、シラン系化合物(D)の加水分解又は縮合やアクリル系単量体(B)の重合の反応時、シラン系化合物(D)の加水分解又は縮合やアクリル系単量体(B)の重合の反応後に用いることが好ましい。前記工程(Y3)では、化合物(C)は、シラン系化合物(D)の加水分解又は縮合の反応時、シラン系化合物(D)の加水分解又は縮合の反応後に用いることが好ましい。
なお、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基としては、その反応系内の成分に応じて、化合物(C)における不飽和結合反応性基、化合物(C)とウレタン系ポリマー(A)との反応により得られたポリマーにおける不飽和結合反応性基、化合物(C)とエチレン性不飽和単量体(B)との反応により得られた化合物(重合体を含む)における不飽和結合反応性基、化合物(C)とシラン系化合物(D)との反応により得られた化合物(重合体を含む)における不飽和結合反応性基、化合物(C)とシラン系化合物(D)とウレタン系ポリマー(A)との反応により得られたポリマーにおける不飽和結合反応性基、化合物(C)とアクリル系単量体(B)とシラン系化合物(D)との反応により得られた化合物(重合体を含む)における不飽和結合反応性基などが挙げられる。一方、化合物(C)に由来する加水分解反応性基としては、その反応系内の成分に応じて、化合物(C)における加水分解反応性基、化合物(C)とウレタン系ポリマー(A)との反応により得られたポリマーにおける加水分解反応性基、化合物(C)とアクリル系単量体(B)との反応により得られた化合物(重合体を含む)における加水分解反応性基、化合物(C)とシラン系化合物(D)との反応により得られた化合物(重合体を含む)における加水分解反応性基、化合物(C)とシラン系化合物(D)とウレタン系ポリマー(A)との反応により得られたポリマーにおける加水分解反応性基、化合物(C)とアクリル系単量体(B)とシラン系化合物(D)との反応により得られた化合物(重合体を含む)における加水分解反応性基などが挙げられる。化合物(C)同士の反応には、化合物(C)における不飽和結合反応性基同士の反応や、化合物(C)における加水分解反応性基同士の反応の他、化合物(C)における不飽和結合反応性基と、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基との反応、化合物(C)における加水分解反応性基と、化合物(C)に由来する加水分解反応性基との反応などが含まれる。
また、アクリル系単量体(B)に由来するエチレン性不飽和結合としては、その反応系内の成分に応じて、アクリル系単量体(B)におけるエチレン性不飽和結合、アクリル系単量体(B)と化合物(C)との反応により得られた化合物(重合体を含む)におけるエチレン性不飽和結合の他、アクリル系単量体(B)と化合物(C)とウレタン系ポリマー(A)との反応により得られたポリマーにおけるエチレン性不飽和結合、アクリル系単量体(B)と化合物(C)とシラン系化合物(D)との反応により得られた化合物(重合体を含む)におけるエチレン性不飽和結合などが挙げられる。
さらにまた、ウレタン系ポリマー(A)に由来する加水分解性珪素原子含有基としては、その反応系内の成分に応じて、ウレタン系ポリマー(A)における加水分解性珪素原子含有基、ウレタン系ポリマー(A)と化合物(C)との反応により得られたポリマーにおける加水分解性珪素原子含有基の他、ウレタン系ポリマー(A)と化合物(C)とアクリル系単量体(B)との反応により得られたポリマーにおける加水分解性珪素原子含有基、ウレタン系ポリマー(A)とシラン系化合物(D)と化合物(C)との反応により得られたポリマーにおける加水分解性珪素原子含有基などが挙げられる。
さらに、シラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基としては、その反応系内の成分に応じて、シラン系化合物(D)における加水分解性珪素原子含有基、シラン系化合物(D)とウレタン系ポリマー(A)との反応により得られたポリマーにおける加水分解性珪素原子含有基の他、シラン系化合物(D)と化合物(C)との反応により得られた化合物(重合体を含む)における加水分解性珪素原子含有基、シラン系化合物(D)とウレタン系ポリマー(A)と化合物(C)との反応により得られたポリマーにおける加水分解性珪素原子含有基などが挙げられる。
本発明では、特に、工程(X)としては、下記の工程(X1)であることが好ましい。
工程(X1):アクリル系単量体(B)を溶媒としてウレタン系ポリマー(A)を調製した反応混合物を、水に分散又は溶解させることにより、アクリル系単量体(B)を含んでいる、ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液を調製する工程
このように、ウレタン系ポリマー(A)を調製する際に、アクリル系単量体(B)を溶媒として用いると、従来のように溶媒の除去を行う必要がなく、より一層優れた効率で、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を製造することができるようになる。また、従来では、ウレタン系ポリマー(A)の調製の際に用いられる溶媒として、メチルエチルケトンなどの有機溶媒が用いられているが、前記工程(X1)を採用することにより、このような有機溶媒を廃液として処分しなくてもよくなり、環境的な観点からも優れており、また、コストを低減させることが可能である。
(工程(X))
工程(X)は、前述のように、ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液を調製する工程であり、例えば、ウレタン系ポリマー(A)[特に、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)]を、水に分散又は溶解させることにより、ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液を調製することができる。このような分散又は溶解の方法としては、特に制限されない。例えば、必要に応じて塩基性化合物や分散剤(乳化剤、界面活性剤など)などを用いて、ウレタン系ポリマー(A)と水とを混合することにより、ウレタン系ポリマー(A)を水に分散又は溶解させる方法が好適である。なお、アクリル系単量体(B)を溶媒としてウレタン系ポリマー(A)を調製した場合、前記調製により得られた反応混合物を、水に入れ、必要に応じて塩基性化合物や分散剤(乳化剤、界面活性剤など)の他、酸などを用いて、ウレタン系ポリマー(A)と水とを混合することにより、ウレタン系ポリマー(A)を水に分散又は溶解させることができる。
水としては、水道水、イオン交換水や純水などを用いることができる。水の使用量としては、ウレタン系ポリマー(A)100質量部に対して65〜900質量部(好ましくは100〜400質量部)程度の範囲から選択することができる。
本発明では、ウレタン系ポリマー(A)が、親水性基としてアニオン性基を有している場合、具体的には、親水性基がアニオン性基であるアニオン性基含有加水分解性シリル化ウレタン系ポリマー[特に、親水性基がアニオン性基であり且つ加水分解性シリル基がアルコキシシリル基であるアニオン性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー]である場合、水への分散又は溶解に際して、塩基性化合物を用いることが好ましい。このような塩基性化合物としては、塩基性無機化合物、塩基性有機化合物のいずれであってもよい。塩基性化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。より具体的には、塩基性無機化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属酢酸塩などのアルカリ金属化合物や、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩などのアルカリ土類金属化合物の他、アンモニアを好適に用いることができる。一方、塩基性有機化合物としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、塩基性含窒素複素環化合物などのアミン系化合物を好適に用いることができる。脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリs−ブチルアミン、トリt−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミンなどのトリアルキルアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミンなどのジアルキルアミン;メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミンなどのモノアルキルアミン;トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリイソペンタノールアミン、トリヘキサノールアミンなどのトリアルコールアミン;ジメタノールアミン、ジエタノールアミンなどのジアルコールアミン;メタノールアミン、エタノールアミンなどのモノアルコールアミンなどの他、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどが挙げられる。芳香族アミンには、例えば、N,N−ジメチルアニリンなどが含まれる。塩基性含窒素複素環化合物としては、例えば、モルホリン、ピペリジン、ピロリジンなどの環状アミンの他、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、N−メチルモルホリンなどが挙げられる。塩基性化合物としては、アンモニアやアミン系化合物を好適に用いることができる。アミン系化合物の中でも、トリアルキルアミンやトリアルコールアミンなどの第三級アミン化合物が好適である。
このように、ウレタン系ポリマー(A)における親水性基がアニオン性基であるアニオン性基含有加水分解性シリル化ウレタン系ポリマー[特に、親水性基がアニオン性基であり且つ加水分解性シリル基がアルコキシシリル基であるアニオン性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー]を水に分散又は溶解させる際に、塩基性化合物を用いると、親水性基としてアニオン性基を含有するアニオン性基含有加水分解性シリル化ウレタン系ポリマーにおけるアニオン性基が塩基性化合物により部分的に又は全体的に中和されて塩となり、アニオン性基含有加水分解性シリル化ウレタン系ポリマーが水に分散又は溶解するようになる。また、ウレタン系ポリマー(A)における親水性基がカチオン性基やノニオン性基である場合も、アニオン性基である場合と同様の機構を利用することにより、親水性基含有加水分解性シリル化ウレタン系ポリマーが水に分散又は溶解するようになる。
なお、ウレタン系ポリマー(A)[特に、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)]の水分散液又は水溶液において、ウレタン系ポリマー(A)は、水との反応(加水分解反応)により加水分解性珪素原子含有基(加水分解性シリル基など)が加水分解されて、該加水分解性珪素原子含有基が、部分的に又は全体的にシラノール基及び/又はシロキサン結合となっていてもよい。すなわち、ウレタン系ポリマー(A)における加水分解性珪素原子含有基(特に、アルコキシシリル基)のうち少なくとも1つの加水分解性珪素原子含有基(アルコキシル基など)が水との加水分解反応の影響を受けていてもよい。なお、シラノール基とは、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する珪素原子からなる基のことを意味しており、アルコキシ基などの置換基を有していてもよい。
このように、ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液は、ウレタン系ポリマー(A)と、水と、必要に応じて用いられる塩基性化合物などとの混合による水分散物又は水溶解物であってもよく、または、該混合により、ウレタン系ポリマー(A)と、水および塩基性化合物とが反応した反応生成物を含む反応混合物であってもよい。なお、ウレタン系ポリマー(A)がアニオン性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマーである場合、アニオン性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマーと、水および塩基性化合物とが反応した反応生成物としては、前述のように、アニオン性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマーにおけるアニオン性基が塩基性化合物により中和されてアニオン性基の塩となっており、且つ末端のアルコキシシリル基が部分的に又は全体的に水により加水分解されてシラノール基及び/又はシロキサン結合となっている水性シラノール化ウレタンプレポリマーが挙げられる。
塩基性化合物を用いる場合、塩基性化合物の使用量としては、例えば、ウレタン系ポリマー(A)としてアニオン性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマーが用いられている場合、アニオン性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー中のアニオン性基に対して50〜120モル%(好ましくは80〜110モル%)であることが望ましい。
本発明では、水や塩基性化合物などは、ウレタン系ポリマー(A)[特に、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)]を水に分散又は溶解させる際に用いられてもよいが、ウレタン系ポリマー(A)を調製する際に予め、該調製過程の任意の時に用いられていてもよい。例えば、塩基性化合物、分散剤や酸などは、ウレタン系ポリマー(A)を調製する際の任意の反応時や反応後で用いることができる。具体的には、例えば、ウレタン系ポリマー(A)において、親水性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマー(A1)として、アニオン性基含有アルコキシシリル化ウレタン系ポリマーを調製する場合、イソシアネート反応性化合物(A1-a)、イソシアネート反応性化合物(A1-b)、及びポリイソシアネート(A1-c)の反応生成物と、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)とを反応させる際に、塩基性化合物を加えることにより、塩基性化合物の存在下、前記反応を行うことができる。
(工程(Y1)〜(Y3))
工程(Y1)〜(Y3)では、前述のように、ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、アクリル系単量体(B)を重合させており、また化合物(C)およびシラン系化合物(D)を用いてアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製している。具体的には、工程(Y1)を利用してアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製する方法としては、(Y1-a)ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、シラン系化合物(D)の加水分解または縮合を行って、前記シラン系化合物(D)の重合体を調製するとともに、前記ウレタン系ポリマー(A)における主鎖又は骨格のウレタン系重合体部からなるウレタン系重合体鎖部と、前記シラン系化合物(D)の重合体における主鎖又は骨格のシリコーン系重合体部からなるシリコーン系重合体鎖部とを連結させて、加水分解性珪素原子含有基を有するシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマーを調製した後、さらに、アクリル系単量体(B)を重合させて、アクリル系重合体を調製し、さらにその後、化合物(C)を用いて、該化合物(C)が関する反応を行うことにより、前記加水分解性珪素原子含有基を有するシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマーにおけるシリコーン系重合体鎖部と、前記アクリル系重合体における主鎖又は骨格のアクリル系重合体部からなるアクリル系重合体鎖部とを連結させて、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製する方法、(Y1-b)ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、シラン系化合物(D)の加水分解または縮合を行って、前記シラン系化合物(D)の重合体を調製するとともに、前記ウレタン系ポリマー(A)における主鎖又は骨格のウレタン系重合体部からなるウレタン系重合体鎖部と、前記シラン系化合物(D)の重合体における主鎖又は骨格のシリコーン系重合体部からなるシリコーン系重合体鎖部とを連結させて、加水分解性珪素原子含有基を有するシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマーを調製した後、さらに、アクリル系単量体(B)の重合に並行して、化合物(C)を用いて、該化合物(C)が関する反応を行うことにより、アクリル系重合体の調製とともに、該アクリル系重合体における主鎖又は骨格のアクリル系重合体部からなるアクリル系重合体鎖部と、前記加水分解性珪素原子含有基を有するシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマーにおけるシリコーン系重合体鎖部とを連結させて、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製する方法、(Y1-c)ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、シラン系化合物(D)の加水分解または縮合を行って、前記シラン系化合物(D)の重合体を調製するとともに、前記ウレタン系ポリマー(A)における主鎖又は骨格のウレタン系重合体部からなるウレタン系重合体鎖部と、前記シラン系化合物(D)の重合体における主鎖又は骨格のシリコーン系重合体部からなるシリコーン系重合体鎖部とを連結させて、加水分解性珪素原子含有基を有するシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマーを調製した後、さらに、化合物(C)を用いて、該化合物(C)と、前記加水分解性珪素原子含有基を有するシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマーとの反応を行って、不飽和結合反応性基を有し且つシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマーを調製し、さらにその後、アクリル系単量体(B)の重合を行うことにより、アクリル系重合体の調製とともに、該アクリル系重合体における主鎖又は骨格のアクリル系重合体部からなるアクリル系重合体鎖部と、不飽和結合反応性基を有し且つシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマーにおけるシリコーン系重合体鎖部とを連結させて、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製する方法、(Y1-d)ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、シラン系化合物(D)の加水分解または縮合に並行して、化合物(C)を用いて、該化合物(C)が関する反応を行うことにより、前記シラン系化合物(D)及び/又は前記化合物(C)をモノマー成分とする重合体を調製するとともに、前記ウレタン系ポリマー(A)における主鎖又は骨格のウレタン系重合体部からなるウレタン系重合体鎖部と、前記シラン系化合物(D)及び前記化合物(C)をモノマー成分とする重合体における主鎖又は骨格のシリコーン系重合体部からなる不飽和結合反応性基を有するシリコーン系重合体鎖部とを連結させて、不飽和結合反応性基を有し且つシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマーを調製した後、さらに、アクリル系単量体(B)の重合を行うことにより、アクリル系重合体の調製とともに、該アクリル系重合体における主鎖又は骨格のアクリル系重合体部からなるアクリル系重合体鎖部と、不飽和結合反応性基を有し且つシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマーにおけるシリコーン系重合体鎖部とを連結させて、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製する方法や、これらの方法を組み合わせた方法などの各種の調製方法を採用することができる。
また、工程(Y2)を利用してアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製する方法としては、(Y2-a)ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、シラン系化合物(D)の加水分解または縮合に並行して、アクリル系単量体(B)の重合を行うことにより、シラン系化合物(D)の重合体を調製するとともに、前記ウレタン系ポリマー(A)における主鎖又は骨格のウレタン系重合体部からなるウレタン系重合体鎖部と、前記シラン系化合物(D)の重合体における主鎖又は骨格のシリコーン系重合体部からなるシリコーン系重合体鎖部とを連結させて、加水分解性珪素原子含有基を有するシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマーを調製し、且つアクリル系単量体(B)の重合体(アクリル系重合体)を調製し、さらにその後、化合物(C)を用いて、該化合物(C)が関する反応を行うことにより、前記加水分解性珪素原子含有基を有するシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマーにおけるシリコーン系重合体鎖部と、前記アクリル系重合体における主鎖又は骨格のアクリル系重合体部からなるアクリル系重合体鎖部とを連結させて、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製する方法、(Y2-b)ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、シラン系化合物(D)の加水分解または縮合に並行して、アクリル系単量体(B)の重合を行い、且つ化合物(C)を用いて、該化合物(C)が関する反応を行うことにより、シラン系化合物(D)の重合体を調製するとともに、アクリル系単量体(B)の重合体(アクリル系重合体)を調製し、且つ前記ウレタン系ポリマー(A)における主鎖又は骨格のウレタン系重合体部からなるウレタン系重合体鎖部と、前記シラン系化合物(D)の重合体における主鎖又は骨格のシリコーン系重合体部からなるシリコーン系重合体鎖部とを連結させるとともに、前記シラン系化合物(D)の重合体における主鎖又は骨格のシリコーン系重合体部からなるシリコーン系重合体鎖部と、前記アクリル系重合体における主鎖又は骨格のアクリル系重合体部からなるアクリル系重合体鎖部とを連結させて、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製する方法や、これらの方法を組み合わせた方法などの各種の調製方法を採用することができる。
さらにまた、工程(Y3)を利用してアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製する方法としては、(Y3-a)ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、アクリル系単量体(B)を重合させて、アクリル系重合体を調製した後、さらに、シラン系化合物(D)の加水分解または縮合を行って、前記シラン系化合物(D)の重合体を調製するとともに、前記ウレタン系ポリマー(A)における主鎖又は骨格のウレタン系重合体部からなるウレタン系重合体鎖部と、前記シラン系化合物(D)の重合体における主鎖又は骨格のシリコーン系重合体部からなるシリコーン系重合体鎖部とを連結させて、加水分解性珪素原子含有基を有するシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマーを調製し、さらにその後、化合物(C)を用いて、該化合物(C)が関する反応を行うことにより、前記加水分解性珪素原子含有基を有するシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマーにおけるシリコーン系重合体鎖部と、前記アクリル系重合体における主鎖又は骨格のアクリル系重合体部からなるアクリル系重合体鎖部とを連結させて、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製する方法、(Y3-b)ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中で、アクリル系単量体(B)を重合させて、アクリル系重合体を調製した後、さらに、シラン系化合物(D)の加水分解または縮合に並行して、化合物(C)を用いて、該化合物(C)が関する反応を行うことにより、シラン系化合物(D)の重合体を調製するとともに、前記ウレタン系ポリマー(A)における主鎖又は骨格のウレタン系重合体部からなるウレタン系重合体鎖部と、前記シラン系化合物(D)の重合体における主鎖又は骨格のシリコーン系重合体部からなるシリコーン系重合体鎖部とを連結させ、且つ前記シラン系化合物(D)の重合体における主鎖又は骨格のシリコーン系重合体部からなるシリコーン系重合体鎖部と、前記アクリル系重合体における主鎖又は骨格のアクリル系重合体部からなるアクリル系重合体鎖部とを連結させて、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を調製する方法や、これらの方法を組み合わせた方法などの各種の調製方法を採用することができる。
なお、前記工程(Y1-b)を利用する調製方法では、アクリル系単量体(B)の重合反応と、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基に関する反応と、化合物(C)に由来する加水分解反応性基に関する反応とは、それぞれの間で並行して行われていてもよく、順々に行われていてもよい。また、前記工程(Y2-b)を利用する調製方法では、アクリル系単量体(B)の重合反応と、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基に関する反応と、化合物(C)に由来する加水分解反応性基に関する反応と、シラン系化合物(D)の加水分解反応や縮合反応(縮合による重合反応)とは、それぞれの間で並行して行われていてもよく、順々に行われていてもよい。さらにまた、前記工程(Y3-b)を利用する調製方法では、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基に関する反応と、化合物(C)に由来する加水分解反応性基に関する反応と、シラン系化合物(D)の加水分解反応や縮合反応(縮合による重合反応)とは、それぞれの間で並行して行われていてもよく、順々に行われていてもよい。
アクリル系単量体(B)の重合方法としては、特に制限されず、公知乃至慣用のアクリル系単量体の重合方法を利用することができ、例えば、重合開始剤、連鎖移動剤などを用いて重合を行う方法を利用することができる。重合開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチル−4−トリメトキシシリルペントニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチル−4−メチルジメトキシシリルペントニトリル)、2,2´−アゾビス(2−N−ベンジルアミジノ)プロパン塩酸塩等のアゾ化合物系重合開始剤;t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、過酸化水素等の過酸化物系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系重合開始剤;酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等の還元剤を併用したレドックス系重合開始剤などを用いることができる。また、連鎖移動剤としては、例えば、メルカプタン類(例えば、ラウリルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン等のアルキルメルカプタンや、アリールメルカプタンなど)、チオカルボン酸(例えば、チオ酢酸、チオ安息香酸など)、スルフィド類(例えば、ジブチルジスルフィド、ジアセチルジスルフィドなど)、チオアルコール類(例えば、2−メルカプトエタノール、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール、チオ−β−ナフトール、チオフェノールなど)、グリシジルメルカプタン、メルカプトシラン類(例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなど)、γ−トリメトキシシリルプロピルジスルフィドなどを用いることができる。なお、重合の際の温度としては、アクリル系単量体(B)の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、20〜100℃(特に、40〜90℃)程度であってもよい。また、重合の際の反応時間は、特に制限されず、例えば、数時間〜数十時間であってもよい。
アクリル系単量体(B)が、溶媒として、ウレタン系ポリマー(A)の調製に際して予め用いられていない場合又は一部しか用いられていない場合、ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中に、アクリル系単量体(B)又は残部のアクリル系単量体(B)を、一括的に加えて重合を行う方法、一部を加えた後、残部を滴下しながら重合を行う方法、すべてを滴下しながら重合を行う方法等を利用して、アクリル系単量体(B)の重合を行うことができる。この際の滴下方法としては、特に制限されず、例えば、連続的な滴下方法や、間欠的な滴下方法などいずれの滴下方法であってもよい。アクリル系単量体(B)を滴下しながら重合する際には、界面活性剤や乳化剤などの分散剤が用いられていてもよい。すなわち、アクリル系単量体(B)を界面活性剤等により乳化又は分散させてエマルションを調製し、該エマルションを滴下することにより、ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中に、アクリル系単量体(B)を滴下させることも可能である。
シラン系化合物(D)の加水分解反応又は縮合反応(縮合重合)の方法としては、特に制限されず、公知乃至慣用のシリコーン系化合物の加水分解反応方法又は縮合反応方法を利用することができ、例えば、30℃以上に加温する方法などが挙げられる。なお、シラン系化合物(D)の加水分解反応又は縮合反応に際しては、該反応を促進するための触媒が用いられていてもよく、このような触媒としては、公知の触媒を適宜選択して用いることができる。シラン系化合物(D)の加水分解反応又は縮合反応における加温時の温度としては、30℃以上であれば特に制限されないが、好ましくは35℃以上(特に38℃以上)である。なお、この加温時の温度の上限としては、特に制限されないが、例えば、70℃以下(好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下、特に45℃以下)である。この反応温度は、反応性を調整するために、一定又はほぼ一定で保持されていることが好ましい。従って、一定又はほぼ一定の温度が保持されるように加温又は冷却を行ってもよい。この反応[シラン系化合物(D)の加水分解反応又は縮合反応]は、窒素気流下で行うことが好ましい。また、前記反応の反応時間としては、特に制限されず、例えば、10分〜1日の範囲から選択することができ、好ましくは30分〜5時間程度である。
なお、この反応では、シラン系化合物(D)は、反応系内に[ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中に]、一括的に加えてもよく、一部を加えた後、残部を滴下しながら加えてもよく、さらには、すべてを滴下しながら加えてもよい。また、この際の滴下方法としても、連続的な滴下方法や、間欠的な滴下方法などいずれの滴下方法であってもよい。シラン系化合物(D)を反応系内[ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中に]導入する際には、界面活性剤や乳化剤などの分散剤が用いられていてもよい。すなわち、シラン系化合物(D)を界面活性剤等により乳化又は分散させてエマルションを調製し、該エマルションを用いることにより、シラン系化合物(D)を反応系内に導入することができる。このように、シラン系化合物(D)をエマルションの形態で反応系内に導入する際には、例えば、シラン系化合物(D)及びアクリル系単量体(B)を含むエマルション、シラン系化合物(D)及び化合物(C)を含むエマルション、シラン系化合物(D)、アクリル系単量体(B)及び化合物(C)を含むエマルションを調製して、シラン系化合物(D)を、アクリル系単量体(B)や化合物(C)と一緒に反応系内に導入(特に、滴下により導入)してもよい。また、シラン系化合物(D)を含むエマルションと、アクリル系単量体(B)や化合物(C)を含むエマルションとを別々に調製して、シラン系化合物(D)を、アクリル系単量体(B)や化合物(C)と別々に又は同時に反応系内に導入(特に、滴下により導入)してもよい。もちろん、シラン系化合物(D)の一部を、アクリル系単量体(B)や化合物(C)の一部や全部とともに、エマルションを調製して、シラン系化合物(D)の一部をアクリル系単量体(B)や化合物(C)の一部又は全部と一緒に反応系内に導入(特に、滴下により導入)し、シラン系化合物(D)の残部を、前記一部の導入前又は導入後に、アクリル系単量体(B)や化合物(C)と別に反応系内に導入してもよい。
また、化合物(C)が関する反応には、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基に関する反応と、化合物(C)に由来する加水分解反応性基に関する反応とが含まれる。化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基に関する反応としては、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基と、アクリル系単量体(B)に由来するエチレン性不飽和結合との反応や、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基同士の反応があり、この反応方法としては、特に制限されず、アクリル系単量体(B)の重合方法と同様の方法を利用することができる。なお、化合物(C)に由来する不飽和結合反応性基には、化合物(C)中の不飽和結合反応性基や、化合物(C)と加水分解性珪素原子含有基を有するウレタン系ポリマー(A)との反応により得られた、不飽和結合反応性基を有するウレタン系ポリマー中の不飽和結合反応性基が含まれる。また、アクリル系単量体(B)に由来するエチレン性不飽和結合には、アクリル系単量体(B)中のエチレン性不飽和結合や、アクリル系単量体(B)の重合体中のエチレン性不飽和結合などが含まれる。
化合物(C)に由来する加水分解反応性基に関する反応としては、化合物(C)に由来する加水分解反応性基とシラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基との反応、化合物(C)に由来する加水分解反応性基とウレタン系ポリマー(A)の加水分解性珪素原子含有基との反応や、化合物(C)に由来する加水分解反応性基同士の反応があり、この反応方法としては、前記シラン系化合物(D)の加水分解反応又は縮合反応の方法と同様の方法を利用することができる。なお、化合物(C)に由来する加水分解反応性基には、化合物(C)中の加水分解反応性基や、化合物(C)とアクリル系単量体(B)又はその重合体との反応により得られた、加水分解反応性基を有する化合物(加水分解反応性基を有するアクリル系重合体など)中の加水分解反応性基、化合物(C)とシラン系化合物(D)との反応により得られた化合物中の加水分解反応性基、化合物(C)とシラン系化合物(D)とウレタン系ポリマー(A)との反応により得られたポリマー中の加水分解反応性基などが含まれる。また、シラン系化合物(D)に由来する加水分解性珪素原子含有基には、シラン系化合物(D)中の加水分解性珪素原子含有基や、シラン系化合物(D)とウレタン系ポリマー(A)との反応により得られた、加水分解性珪素原子含有基を有するシリコーン系重合体鎖部を有しているウレタン系ポリマー中の加水分解性珪素原子含有基、シラン系化合物(D)と化合物(C)との反応により得られた化合物中の加水分解性珪素原子含有基、シラン系化合物(D)とウレタン系ポリマー(A)と化合物(C)との反応により得られたポリマー中の加水分解性珪素原子含有基などが含まれる。
化合物(C)が関する反応において、化合物(C)を反応系内に[ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中に]導入する方法としては、特に制限されず、化合物(C)を、反応系内に[ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中に]、一括的に加えてもよく、一部を加えた後、残部を滴下しながら加えてもよく、さらには、すべてを滴下しながら加えてもよい。また、この際の滴下方法としても、連続的な滴下方法や、間欠的な滴下方法などいずれの滴下方法であってもよい。化合物(C)を反応系内に[ウレタン系ポリマー(A)の水分散液又は水溶液中に]導入する際には、界面活性剤や乳化剤などの分散剤が用いられていてもよい。すなわち、化合物(C)を界面活性剤等により乳化又は分散させてエマルションを調製し、該エマルションを用いることにより、化合物(C)を反応系内に導入することができる。このように、化合物(C)をエマルションの形態で反応系内に導入する際には、例えば、化合物(C)及びアクリル系単量体(B)を含むエマルション、化合物(C)及びシラン系化合物(D)を含むエマルションまたは化合物(C)、アクリル系単量体(B)及びシラン系化合物(D)を含むエマルションを調製して、化合物(C)を、アクリル系単量体(B)やシラン系化合物(D)と一緒に反応系内に導入(特に、滴下により導入)してもよい。また、化合物(C)を含むエマルションと、アクリル系単量体(B)やシラン系化合物(D)を含むエマルションとを別々に調製して、化合物(C)を、アクリル系単量体(B)やシラン系化合物(D)と別々に又は同時に反応系内に導入(特に、滴下により導入)してもよい。もちろん、化合物(C)の一部を、アクリル系単量体(B)やシラン系化合物(D)の一部又は全部とともに、エマルションを調製して、化合物(C)の一部をアクリル系単量体(B)やシラン系化合物(D)の一部又は全部と一緒に反応系内に導入(特に、滴下により導入)し、化合物(C)の残部を、前記一部の導入前又は導入後に、アクリル系単量体(B)やシラン系化合物(D)と別に反応系内に導入してもよい。
アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体において、ウレタン系ポリマー(A)、アクリル系単量体(B)、化合物(C)およびシラン系化合物(D)の各成分の割合としては特に制限されない。例えば、ウレタン系ポリマー(A)と、シラン系化合物(D)との割合としては、ウレタン系ポリマー(A)における加水分解性珪素原子含有基/シラン系化合物(D)における加水分解性珪素原子含有基(SiO基/SiO基)(当量比)が、0.001以上(例えば0.001〜10)、好ましくは0.008〜5となるような範囲から選択することができる。SiO基/SiO基が0.001未満であると、効率的に3元共重合体を形成することが困難になり、期待される効果が得られない場合がある。ウレタン系ポリマー(A)における加水分解性珪素原子含有基/シラン系化合物(D)における加水分解性珪素原子含有基(SiO基/SiO基)(当量比)が増加するに伴い、シリコーン系重合体鎖部の鎖長が短くなる傾向がある。
また、化合物(C)と、シラン系化合物(D)との割合としては、化合物(C)における加水分解反応性基/シラン系化合物(D)における加水分解性珪素原子含有基(SiO反応性基/SiO基)(当量比)が、0.0001以上(例えば0.002〜100)、好ましくは0.01〜10となるような範囲から選択することができる。SiO基/SiO基が0.0001未満であると、効率的に3元共重合体を形成することが困難になり、期待される効果が得られない場合がある。化合物(C)と、シラン系化合物(D)との割合としては、化合物(C)における加水分解反応性基/シラン系化合物(D)における加水分解性珪素原子含有基(SiO反応性基/SiO基)(当量比)が増加するに伴い、シリコーン系重合体鎖部の鎖長が短くなる傾向がある。
さらにまた、アクリル系単量体(B)と、化合物(C)との割合としては、アクリル系単量体(B)におけるエチレン性不飽和結合/化合物(C)における不飽和結合反応性基(C=C不飽和基/C=C不飽和反応性基)(当量比)が、0.2〜2500(好ましくは0.6〜500、さらに好ましくは1〜100)となるような範囲から選択することができる。C=C不飽和基/C=C不飽和反応性基が0.2未満であると、化合物(C)由来の加水分解性珪素原子同士の縮合により系の安定性が低下する。一方、C=C不飽和基/C=C不飽和反応性基が2500を超えると、効率的にアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を形成することが困難になり、期待される効果が得られない場合がある。
本発明におけるアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、ビニル系重合体鎖部と、シリコーン系重合体鎖部と、ウレタン系重合体鎖部とを有しており、優れた耐水性および耐熱性を有する層(硬化物や、皮膜など)を形成することができる。特に、ビニル系重合体鎖部と、シリコーン系重合体鎖部とは、相互溶解性が低いにもかかわらず、優れた透明性を有する層(硬化物や、皮膜など)を形成することができる。これは、ビニル系重合体鎖部とシリコーン系重合体鎖部とが結合しており、しかも、シリコーン系重合体鎖部の他方の端部がビニル系重合体鎖部と結合している形態を有しているためであると思われる。このように、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、ビニル系重合体鎖部と、ウレタン系重合体鎖部と、シリコーン系重合体鎖部とが結合された形態を有しているので、それぞれの鎖部の特性を効果的に発揮することができるだけでなく、さらに、これらの鎖部が結合されていることによる特性も有効に発揮することができる。従って、それぞれの鎖部の不満足な特性が相互に補完され、それぞれの鎖部の重合体が単に混合されている混合物とは異なって、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体として優れた特性を発揮することができる。
また、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体において、ウレタン系重合体鎖部には加水分解性珪素原子含有基が残存しており、水の蒸発や揮発等により、系中の水が減少すると、前記ウレタン系重合体鎖部の加水分解性珪素原子含有基による硬化反応(特に、縮合反応)が生じて硬化し、硬化物又は被膜としての層を形成することができる。アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を含む層は、表面が硬く、耐スティッキング性(耐擦過性)が優れている。
アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、感熱記録材料で用いられる層の種類に応じて、充填材、可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤(顔料や染料など)、防かび剤、濡れ促進剤、粘性改良剤、香料、各種タッキファイヤー、カップリング剤、光硬化触媒、乳化剤、界面活性剤、エマルジョンやラテックス、架橋剤、保湿剤、消泡剤、シリカ粒子などの各種添加剤又は成分、溶剤などとともに用いられていてもよい。
前記シリカ粒子としては、公知のシリカ粒子(二酸化珪素による粒子)から適宜選択することができ、親水性基を含有するシリカ粒子(「親水性基含有シリカ」と称する場合がある)が好適である。親水性基含有シリカにおける親水性基としては、特にヒドロキシル基が好適である。親水性基含有シリカは、シリカ粒子単独の形態(例えば、粉末状の形態など)で用いられていてもよく、水に分散された形態(例えば、水中にコロイド状に分散されたコロイド状の形態)で用いられていてもよい。すなわち、親水性基含有シリカは、乾式、湿式のいずれの形態を有していてもよい。このような親水性基含有シリカとしては、公知の親水性基を含有するシリカ粒子(例えば、親水性基含有シリカが粉末状の形態の親水性基含有シリカである場合、親水性フュームドシリカや、親水性微粉末シリカ等として公知の親水性基含有シリカ、また、親水性基含有シリカがコロイド状の形態の親水性基含有シリカである場合、コロイダルシリカや、珪酸コロイド等として公知の親水性基含有シリカなど)から適宜選択することができる。
親水性基含有シリカのうち、例えば、粉末状の形態の親水性基含有シリカとしては、例えば、日本アエロジル株式会社製の商品名「AEROSIL」のシリーズ(例えば、商品名「AEROSIL 50」、商品名「AEROSIL 90G」、商品名「AEROSIL 130」、商品名「AEROSIL 200」、商品名「AEROSIL 200V」、商品名「AEROSIL 200CF」、商品名「AEROSIL 200FAD」、商品名「AEROSIL 300」、商品名「AEROSIL 300CF」、商品名「AEROSIL 380」など)等の市販品を用いることができる。また、親水性基含有シリカのうち、例えば、コロイド状の形態の親水性基含有シリカとしては、例えば、旭電化工業株式会社製の商品名「アデライト AT」シリーズ(例えば、商品名「アデライト AT−20」、商品名「アデライト AT−30」、商品名「アデライト AT−40」、商品名「アデライト AT−50」、商品名「アデライト AT−20N」など)や、日産化学株式会社製の商品名「スノーテックス」シリーズ(例えば、商品名「スノーテックス20」、商品名「スノーテックス30」、商品名「スノーテックス40」、商品名「スノーテックスN」、商品名「スノーテックスNS」、商品名「スノーテックスNXS」など)等の市販品を用いることができる。
なお、シリカ粒子として親水性基含有シリカを用いると、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、硬化の際に、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体中に残存している加水分解性珪素原子含有基(シリル基)が、親水性基含有シリカ中の親水性基(特に、親水性基含有シリカによるシリカ粒子の表面上の親水性基)と反応することにより、より強固な層(硬化物、皮膜)を形成することができ、層の耐熱性を大きく向上させることができる。
このようなアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、感熱発色層に熱的な負担がかからないような硬化条件(例えば、110℃で30秒間程度の硬化条件など)で迅速に硬化して、耐水性および耐熱性が優れた層を形成することができるので、感熱記録材料で用いられる重合体として有用である。従って、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、感熱記録材料を構成する層のうち、少なくともいずれか1層中で好適に用いることができ、特に、感熱発色層上に形成された保護層中で好適に用いることができる。
[感熱記録材料]
本発明の感熱記録材料は、加熱により発色する感熱発色層を有していれば、その層構成は特に制限されないが、感熱発色層は支持体上に形成されていることが好ましい。具体的には、感熱記録材料の層構成としては、例えば、
支持体/感熱発色層の層構成
支持体/感熱発色層/保護層の層構成
支持体/アンダーコート層/感熱発色層の層構成
支持体/アンダーコート層/感熱発色層/保護層の層構成
支持体/感熱発色層/中間層/保護層の層構成
支持体/中間層/感熱発色層/保護層の層構成
支持体/中間層/感熱発色層/中間層/保護層の層構成
支持体/アンダーコート層/感熱発色層/中間層/保護層の層構成
支持体/アンダーコート層/中間層/感熱発色層/保護層の層構成
支持体/アンダーコート層/中間層/感熱発色層/中間層/保護層の層構成
バックコート層/支持体/感熱発色層/保護層の層構成
バックコート層/支持体/アンダーコート層/感熱発色層/保護層
バックコート層/支持体/感熱発色層/中間層/保護層の層構成
バックコート層/支持体/中間層/感熱発色層/保護層の層構成
バックコート層/支持体/中間層/感熱発色層/中間層/保護層の層構成
バックコート層/支持体/アンダーコート層/感熱発色層/中間層/保護層の層構成
バックコート層/支持体/アンダーコート層/中間層/感熱発色層/保護層の層構成
バックコート層/支持体/アンダーコート層/中間層/感熱発色層/中間層/保護層の層構成
これらの層構成において、何れかの層間に又は最表層としてインク層が形成された層構成
などが挙げられる。
本発明の感熱記録材料では、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、例えば、前述の層のうち少なくとも何れか1層中(特に保護層中)に含まれている。
(感熱発色層)
感熱発色層(感熱記録層)は、熱エネルギーが加えられることにより発色することが可能な層であれば特に制限されないが、通常、無色乃至淡色を呈している染料前駆体(または色素前駆体)と、該染料前駆体と接触することにより、染料前駆体を発色させるための顕色剤との組み合わせによる発色性組成物(発色剤)を含有しているが、他の組み合わせによる発色性組成物を含有していてもよい。
無色乃至淡色を呈している染料前駆体(単に「染料前駆体」と称する場合がある)としては、通常、電子供与性及び/又は塩基性を有している化合物が用いられる。染料前駆体としては、特に、ロイコ染料を好適に用いることができる。ロイコ染料としては、特に制限されず、用途、発色する色などに応じて、公知のロイコ染料の中から適宜選択して用いることができる。ロイコ染料としては、発色する色は、特に制限されず、例えば、赤系色、黄系色、緑系色、青系色、黒系色などが挙げられる。ロイコ染料等の染料前駆体は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
具体的には、ロイコ染料としては、例えば、トリアリールメタン系ロイコ染料、ジアリールメタン系ロイコ染料、フルオラン系ロイコ染料、フルオレン系ロイコ染料、ビニルフタリド系ロイコ染料、ローダミン−ラクタム系ロイコ染料、キサンテン系ロイコ染料、チアジン系ロイコ染料、ピリジン系ロイコ染料、ピラジン系ロイコ染料、スピロ系ロイコ染料、スピロピラン系ロイコ染料、ペンタジエン系ロイコ染料、オーラミン系ロイコ染料、インドリノフタリド系ロイコ染料、トリアゼン系ロイコ染料などが挙げられる。
ロイコ染料等の染料前駆体の使用量としては、特に制限されず、公知の感熱記録材料の感熱発色層における染料前駆体の使用量の範囲から適宜選択することができる。
顕色剤としては、通常、電子受容性及び/又は酸性を有している化合物が用いられる。顕色剤としては、顕色作用を発揮する化合物であれば特に制限されず、公知の顕色剤の中から適宜選択して用いることができる。顕色剤としては、不可逆的に染料前駆体を発色させることが可能な顕色剤(不可逆的に染料前駆体の色調変化を生じさせることが可能な顕色剤)、可逆的に染料前駆体を発色および消色させることが可能な顕色剤(可逆的に染料前駆体の色調変化を生じさせることが可能な顕色剤)のいずれであってもよい。顕色剤は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
顕色剤としては、染料前駆体を発色させることや、発色の不可逆性や可逆性などの観点から、染料前駆体の種類、染料前駆体による発色の不可逆性や可逆性などに応じて、公知の顕色剤の中から適宜選択して用いることが重要である。具体的には、顕色剤としては、酸性の基(フェノール性ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基など)を有する酸性化合物、アミド結合部位(−NHCO−)を有する化合物、有機酸の金属塩などが挙げられる。
顕色剤において、酸性化合物としては、フェノール性ヒドロキシル基を有する酸性化合物、カルボキシル基を有する酸性化合物、リン酸基を有する酸性化合物などが挙げられる。フェノール性ヒドロキシル基を有する酸性化合物としては、分子内に少なくとも1個のフェノール性ヒドロキシル基を有するフェノール誘導体であれば特に制限されず、例えば、フェノール性化合物、チオフェノール性化合物などが挙げられる。また、カルボキシル基を有する酸性化合物としては、分子内に少なくとも1個のカルボキシル基を有するカルボン酸又はその誘導体(例えば、エステル化物、アミド化物など)であれば特に制限されず、例えば、芳香族カルボン酸又はその誘導体(特に、ヒドロキシ基を含有する芳香族カルボン酸又はその誘導体)、脂肪族カルボン酸又はその誘導体などが挙げられる。さらにまた、リン酸基を有する酸性化合物としては、分子内に少なくとも1個のリン酸基を有するリン酸又はその誘導体(例えば、エステル化物など)であれば特に制限されず、ホスホン酸又はその誘導体などが挙げられる。さらに、酸性化合物としては、無機の酸性物質(例えば、酸性白土、活性白土、アタパルジャイト、コロイダルシリカ、ゼオライト、タルク、ベンナイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウムなど)を用いることもできる。
また、アミド結合部位を有する化合物としては、分子内に、アミド結合部位を含む基を有している化合物であれば特に制限されず、例えば、ウレア基(−NHCONH−)を有する尿素誘導体、チオウレア基(−NHCONH−S−)を有するチオ尿素誘導体、スルホニルウレア基(−NHCONH−SO2−)を有するスルホニルウレア誘導体、ウレア基とウレタン基(−NHCOO−)とを有する尿素ウレタン誘導体(ウレアウレタン化合物)などが挙げられる。
さらに、有機酸の金属塩における有機酸としては、芳香族カルボン酸(特に、ヒドロキシ基を含有する芳香族カルボン酸)、脂肪族カルボン酸などが挙げられる。また、有機酸の金属塩における塩を構成するための金属原子としては、亜鉛原子、マグネシウム原子、カルシウム原子、アルミニウム原子、マンガン原子、チタン原子、ニッケル原子、スズ原子、銅原子、鉛原子等の多価の金属原子が挙げられる。
なお、顕色剤としては、顕色作用と、減色作用とを有する顕減色剤を用いることもできる。このような顕減色剤としては、例えば、酸性基および塩基性基を有する化合物などが挙げられ、具体的には、アミノ基を有する芳香族カルボン酸、アミノ基を有するフェノール性化合物などを用いることができる。
顕色剤の使用量としては、特に制限されず、公知の感熱記録材料の感熱発色層における顕色剤の使用量の範囲から適宜選択することができる。
感熱発色層中には、染料前駆体および顕色剤の他に、増感剤又は感度向上剤(熱可融性物質)、バインダー成分(又は結合剤)、充填剤、保存性向上剤、画像安定剤、滑剤、界面活性剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤(顔料、染料、蛍光染料など)、ワックス類、金属石鹸、レベリング剤、粘度調整剤、分散剤、耐水化剤、発色安定化剤、消色促進剤、架橋剤などの各種成分が含まれていてもよい。これらの各成分は、感熱発色層中に含有される成分として公知のものから適宜選択して用いることができる。また、これらの各成分の使用量も、公知の使用量の範囲から適宜選択することができる。
なお、感熱発色層中には、前記アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が含まれていてもよい。アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、感熱発色層中に含まれている場合、通常、バインダー成分として用いられているが、バインダー成分としての機能以外の機能を有する成分として用いられていてもよい。なお、感熱発色層において、バインダー成分としてアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が用いられている場合、バインダー成分は、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体のみにより構成されていてもよく、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体および他の1種又は2種以上のバインダー成分により構成されていてもよい。
このように、感熱発色層中にアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が含まれている場合、感熱発色層中におけるアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体の割合としては、特に制限されず、公知の感熱記録材料の感熱発色層におけるバインダー成分の使用量の範囲から適宜選択することができる。
また、感熱発色層中には、照射された光(特にレーザー光)による光エネルギーを熱エネルギーに変換することが可能な成分(エネルギー変換成分)を含有していてもよい。このように、感熱発色層中にエネルギー変換成分が含有されていると、光の照射によっても、感熱発色層を発色させることが可能となる。
なお、本発明では、染料前駆体や顕色剤は、マイクロカプセルに内包された状態で用いることもできる。
なお、感熱発色層は、単層、多層のいずれの形態を有していてもよい。感熱発色層の厚さとしては、特に制限されず、用途などに応じて適宜選択することができ、例えば、0.1〜30μm(好ましくは1〜20μm)の範囲から適宜選択することができる。
感熱発色層の形成方法は、特に制限されず、例えば、感熱発色層を形成するための組成物を含む塗液を塗布する方法、感熱発色層を形成するための組成物を含むインクを印刷する方法などが挙げられる。塗液の塗布に際しては、公知の塗工機(例えば、エアナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーターなど)を用いることができる。また、インクの印刷に際しては、公知の印刷方法(例えば、平版印刷方法、凸版印刷方法、凹版印刷方法、フレキソ印刷方法、グラビア印刷方法、スクリーン印刷方法など)を利用することができる。
なお、感熱発色層を形成するための組成物を含む塗液やインクの塗布量としては、乾燥後の質量で1〜15g/m2(好ましくは2〜10g/m2)の範囲から適宜選択することができる。
(保護層)
本発明では、感熱発色層上に、感熱発色層を保護するための保護層(オーバーコート層)が形成されていてもよい。保護層は、その組成は特に制限されず、通常、樹脂成分を主成分として含有している。本発明の感熱記録材料では、感熱記録材料の耐水性、耐スティッキング性、耐地肌かぶり特性、および耐熱画像安定性を向上させる観点から、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、保護層中に含有されていることが好ましい。そのため、保護層を形成するための樹脂成分としては、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が用いられていることが好ましい。
保護層が、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を含む樹脂成分により形成されている場合、樹脂成分は、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体のみにより構成されていてもよく、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体および他の1種又は2種以上の樹脂成分により構成されていてもよい。すなわち、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、保護層中に、樹脂成分として単独で用いられていてもよく、他の樹脂成分と併用した形態で用いられていてもよい。アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体と併用することができる樹脂成分としては、保護層を形成するための樹脂成分として公知の樹脂成分の中から適宜選択して用いることができる。
なお、保護層中にアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が含有されていない場合、保護層中には、樹脂成分として公知の樹脂成分を用いることができる。
このような公知の樹脂成分としては、例えば、ポリビニルアルコール又はその変性体(例えば、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、スルホン酸基変性ポリビニルアルコール等の各種の変性ポリビニルアルコールなど)、デンプン又はその誘導体、ゼラチン、カゼイン、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はその塩など)、アクリル系樹脂(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体など)、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなど)、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体又はその塩など)、ポリスチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体又はその塩、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体など)、ジエン系樹脂(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレンなど)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、ユリア樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、アミノ樹脂、アリル樹脂、トリアジン系樹脂などが挙げられる。このような公知の樹脂成分は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、樹脂成分は、架橋された形態を有していてもよい。
保護層中には、樹脂成分の他、充填剤、滑剤、界面活性剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤(顔料、染料、蛍光染料など)、ワックス類、金属石鹸、レベリング剤、粘度調整剤、分散剤、架橋剤などの各種成分が含まれていてもよい。これらの各成分は、保護層中に含有される成分として公知のものから適宜選択して用いることができる。また、これらの各成分の使用量も、公知の使用量の範囲から適宜選択することができる。
保護層中にアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が含まれている場合、保護層中におけるアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体の割合としては、感熱記録材料の耐水性、耐スティッキング性、耐地肌かぶり特性、および耐熱画像安定性を向上させることができる量であれば特に制限されない。保護層中におけるアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体の割合としては、例えば、保護層中の固形分全量に対して5質量%以上(例えば、5〜100質量%、好ましくは10〜100質量%)の範囲から適宜選択することができる。
なお、保護層は、単層、多層のいずれの形態を有していてもよい。保護層の厚さとしては、特に制限されず、例えば、0.05〜10μm(好ましくは0.5〜5μm、さらに好ましくは1〜5μm)の範囲から適宜選択することができる。
保護層の形成方法としては、特に制限されず、例えば、保護層を形成するための組成物を含む塗液を塗布する方法などが挙げられる。塗液の塗布に際しては、公知の塗工機(例えば、エアナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーターなど)を用いることができる。
なお、塗液を塗布した後、必要に応じて乾燥を行うことができる。乾燥時の温度としては、特に制限されず、塗液の種類などに応じて適宜設定することができるが、感熱発色層に熱的な負担がかからないような硬化条件(例えば、110℃で30秒間程度の硬化条件など)であることが好適である。保護層を構成する樹脂成分として、前記アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を用いると、塗液を塗布した後の乾燥時の温度が、前記範囲の温度であっても、迅速に硬化させて保護層を形成することができ、優れた生産性で感熱記録材料を製造することができる。
(中間層)
本発明では、感熱発色層と支持体との間や、感熱発色層と保護層との間に、中間層が形成されていてもよい。中間層は、感熱発色層と支持体との間や、感熱発色層と保護層との間のうち、いずれか一方の部位のみに設けられていてもよく、両方の部位に設けられていてもよい。中間層は、その組成は特に制限されず、通常、樹脂成分を主成分として含有している。このような樹脂成分としては、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を含む樹脂成分であってもよく、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を含まず、中間層を形成するための樹脂成分として公知の樹脂成分のみにより構成された樹脂成分であってもよい。なお、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、公知の樹脂成分と併用することもできる。
中間層を形成するための公知の樹脂成分としては、例えば、保護層を形成するための公知の樹脂成分として例示の樹脂成分などが挙げられる。
中間層中には、樹脂成分の他、充填剤、滑剤、界面活性剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤(顔料、染料、蛍光染料など)、ワックス類、金属石鹸、レベリング剤、粘度調整剤、分散剤、架橋剤などの各種成分が含まれていてもよい。これらの各成分は、中間層中に含有される成分として公知のものから適宜選択して用いることができる。また、これらの各成分の使用量も、公知の使用量の範囲から適宜選択することができる。
中間層中にアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が含まれている場合、中間層中におけるアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体の割合としては、特に制限されず、公知の感熱記録材料の中間層における樹脂成分の使用量の範囲から適宜選択することができる。
なお、中間層は、単層、多層のいずれの形態を有していてもよい。中間層の厚さとしては、特に制限されず、例えば、0.05〜10μmの範囲から適宜選択することができる。
中間層の形成方法としては、特に制限されず、例えば、中間層を形成するための組成物を含む塗液を塗布する方法などが挙げられる。塗液の塗布に際しては、公知の塗工機(例えば、エアナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーターなど)を用いることができる。
(アンダーコート層)
本発明では、感熱発色層と支持体との間に、アンダーコート層が形成されていてもよい。アンダーコート層は、その組成は特に制限されず、通常、樹脂成分を主成分として含有している。このような樹脂成分としては、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を含む樹脂成分であってもよく、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を含まず、アンダーコート層を形成するための樹脂成分として公知の樹脂成分のみにより構成された樹脂成分であってもよい。なお、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、公知の樹脂成分と併用することもできる。
アンダーコート層を形成するための公知の樹脂成分としては、例えば、保護層を形成するための公知の樹脂成分として例示の樹脂成分などが挙げられる。
アンダーコート層中には、樹脂成分の他、充填剤、滑剤、界面活性剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤(顔料、染料、蛍光染料など)、ワックス類、金属石鹸、レベリング剤、粘度調整剤、分散剤、架橋剤などの各種成分が含まれていてもよい。これらの各成分は、アンダーコート層中に含有される成分として公知のものから適宜選択して用いることができる。また、これらの各成分の使用量も、公知の使用量の範囲から適宜選択することができる。
アンダーコート層中にアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が含まれている場合、アンダーコート層中におけるアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体の割合としては、特に制限されず、公知の感熱記録材料のアンダーコート層における樹脂成分の使用量の範囲から適宜選択することができる。
なお、アンダーコート層は、単層、多層のいずれの形態を有していてもよい。アンダーコート層の厚さとしては、特に制限されず、例えば、0.05〜10μmの範囲から適宜選択することができる。
アンダーコート層の形成方法としては、特に制限されず、例えば、アンダーコート層を形成するための組成物を含む塗液を塗布する方法などが挙げられる。塗液の塗布に際しては、公知の塗工機(例えば、エアナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーターなど)を用いることができる。
(バックコート層)
本発明では、支持体の感熱発色層に対して反対側の面に、バックコート層が形成されていてもよい。バックコート層は、その組成は特に制限されず、通常、樹脂成分を主成分として含有している。このような樹脂成分としては、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を含む樹脂成分であってもよく、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を含まず、バックコート層を形成するための樹脂成分として公知の樹脂成分のみにより構成された樹脂成分であってもよい。なお、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、公知の樹脂成分と併用することもできる。
バックコート層を形成するための公知の樹脂成分としては、例えば、保護層を形成するための公知の樹脂成分として例示の樹脂成分などが挙げられる。
バックコート層中には、樹脂成分の他、充填剤、滑剤、界面活性剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤(顔料、染料、蛍光染料など)、ワックス類、金属石鹸、レベリング剤、粘度調整剤、分散剤、架橋剤などの各種成分が含まれていてもよい。これらの各成分は、バックコート層中に含有される成分として公知のものから適宜選択して用いることができる。また、これらの各成分の使用量も、公知の使用量の範囲から適宜選択することができる。
バックコート層中にアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が含まれている場合、バックコート層中におけるアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体の割合としては、特に制限されず、公知の感熱記録材料のバックコート層における樹脂成分の使用量の範囲から適宜選択することができる。
なお、バックコート層は、単層、多層のいずれの形態を有していてもよい。バックコート層の厚さとしては、特に制限されず、例えば、0.05〜10μmの範囲から適宜選択することができる。
バックコート層の形成方法としては、特に制限されず、例えば、バックコート層を形成するための組成物を含む塗液を塗布する方法などが挙げられる。塗液の塗布に際しては、公知の塗工機(例えば、エアナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーターなど)を用いることができる。
(インク層)
本発明では、何れかの層間に又は最表層としてインク層が形成されていてもよい。インク層は、インク組成物により形成することができ、インク組成物の組成は特に制限されない。インク組成物は、バインダー成分としてアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を含有していてもよく、また、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を含有せず、バインダー成分として公知のバインダー成分のみにより構成されたバインダー成分であってもよい。なお、インク組成物において、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体は、公知のバインダー成分と併用されていてもよい。このような公知のバインダー成分としては、特に制限されず、インク組成物中に含有されるバインダー成分として公知のバインダー成分の中から適宜選択することができる。インク層を形成するための公知のバインダー成分としては、例えば、保護層を形成するための公知の樹脂成分として例示の樹脂成分などが挙げられる。
インク層中には、顔料、染料などの着色剤が含有されている。着色剤としては、特に制限されず、公知の着色剤の中から適宜選択して用いることができる。また、インク層中には、着色剤、バインダー成分の他、充填剤、滑剤、界面活性剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ワックス類、金属石鹸、レベリング剤、粘度調整剤、分散剤、架橋剤などの各種成分が含まれていてもよい。これらの各成分は、インク層中に含有される成分として公知のものから適宜選択して用いることができる。また、これらの各成分の使用量も、公知の使用量の範囲から適宜選択することができる。
インク層中にアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が含まれている場合、インク層中におけるアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体の割合としては、特に制限されず、公知の感熱記録材料のインク層におけるバインダー成分の使用量の範囲から適宜選択することができる。
なお、インク層は、単層、多層のいずれの形態を有していてもよい。また、インク層は、何れかの層間や最表層のうち1つの部位のみに設けられていてもよく、何れかの層間や最表層のうちの別々の2つ以上の部位に設けられていてもよい。
インク層の厚さとしては、特に制限されず、例えば、0.05〜10μmの範囲から適宜選択することができる。
インク層の形成方法としては、特に制限されず、例えば、インク層を形成するためのインク組成物を含む塗液を塗布する方法、インク層を形成するためのインク組成物を含むインクを印刷する方法などが挙げられる。塗液の塗布に際しては、公知の塗工機(例えば、エアナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーターなど)を用いることができる。また、インクの印刷に際しては、公知の印刷方法(例えば、平版印刷方法、凸版印刷方法、凹版印刷方法、フレキソ印刷方法、グラビア印刷方法、スクリーン印刷方法など)を利用することができる。
(支持体)
支持体としては、特に制限されず、公知の支持体の中から適宜選択することができ、例えば、紙製基材(例えば、上質紙、和紙、洋紙、グラシン紙、クラフト紙、クルパック紙、クレープ紙、クレーコート紙、トップコート紙、合成紙、プラスチックラミネート紙、プラスチックコート紙など)、プラスチック製基材(各種プラスチック材によるシートやフィルムなど)、金属製基材などが挙げられる。なお、プラスチック製基材におけるプラスチック材としては、特に制限されず、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体など)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート材、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、セルロース誘導体などが挙げられる。
支持体は単層、多層のいずれの形態を有していてもよく、例えば、紙製基材とプラスチック製基材との積層体であってもよい。また、支持体の表面には、各種の表面処理が施されていてもよい。
支持体の厚みは特に制限されず、感熱記録材料の用途等に応じて適宜設定することができる。
本発明の感熱記録材料では、前述のように、優れた耐水性および耐熱性を有する層を形成することができ且つ感熱発色層に熱的な負担がかからないような硬化条件(例えば、110℃で30秒間程度の硬化条件など)で迅速に硬化することが可能なアクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が用いられているので、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体を含んでいる層は、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体による優れた特性を発揮させることができる。特に、アクリル系−シリコーン系−ウレタン系3元共重合体が、感熱発色層上に形成された保護層中で用いられていると、感熱記録材料は、耐水性、耐スティッキング性、耐地肌かぶり特性、および耐熱画像安定性を大きく向上させることができる。