JP2006318228A - 熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置、作成方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体 - Google Patents

熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置、作成方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】 熱間圧延工場の鋼材加工スケジュール作成において、加熱炉装入・抽出スケジュールを求め、加熱炉燃料コストを最小化するスケジュールを作成する。
【解決手段】 圧延処理プロセスの物流状態及び物流制約を離散事象モデルで表した離散事象系シミュレータにて対象とする事象が発生した際の物流状態の情報を基に、離散事象系シミュレータの初期状態を設定し、処理計画の立案開始日時から予め設定された対象期間の間、着目している物流のスケジュールを作成するのに係わる情報を取り込んで作成された物流プロセスモデル及び鋼材の加熱炉内外における温度の時間変化を表す鋼材温度プロセスモデルとを統合した総合プロセスモデルを評価するための評価関数を設定するとともに、総合プロセスモデルと評価関数設定装置により設定された評価関数とを用いて最適化計算処理を行って前記離散事象系シミュレータに対する物流指示を算出する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置、作成方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関し、特に、鋼材等の熱間圧延工場の加熱炉装入スケジュールや圧延スケジュール作成に利用して好適なものである。
例えば、鉄鋼業の圧延工場において、スラブ等の鋼材を熱間圧延する際には、圧延順に見て隣接する鋼材の有する属性(幅、厚み、硬度等)変化が小さくなるよう鋼材の圧延順序を定めることにより、安定した圧延品質を確保するよう努めている。従来は操業者の経験により圧延順が決められていたが、圧延順にはそれ以外にも加熱炉燃料コスト削減や納期確保の観点から様々な要請があり、昨今では計算機を用いて自動作成される場合がある。
この自動作成を行う熱間圧延工場の物流スケジューリング装置に関しては、特許文献1や特許文献2(以下、先行技術という)等、これまでもいくつか提案されている。特許文献1や特許文献2はスケジュールに組み込む鋼材ありきの前提(人による選択等何らかの方法でスケジュールに組み込む鋼材が予め決められているという前提)で、それらの鋼材に対し、遺伝的アルゴリズムやシミュレーテッド・アニーリング法等のいわゆるヒューリスティック解法(発見的解法)を用いて近似最適解を求めることにより加熱炉装入順番或いは圧延順番を決めるものである。
一方、加熱炉燃料コスト削減という目的に対しては、できるだけ加熱炉への装入待ち時間を短くするよう評価式を設定している程度で、抽出目標温度の異なる鋼材を同一炉帯で加熱する際の、焼き過ぎによる熱ロスまで十分考慮した圧延スケジュールとはなっていない問題があった。
つまり、従来の厳密な最適解法或いはヒューリスティックな手法を用いている場合でさえ、加熱炉燃料コスト削減という観点でスケジュールを作成する際に考慮に入れていることは、上工程である連続鋳造工程から搬入された鋼材をできるだけ温度の高い状態で加熱炉へ装入できるような加熱炉装入スケジュールを作成するという点が主体で、抽出する際の抽出目標温度を揃えるところまで考慮が及ばないのが通例である。
更に、昨今では品質上の制約等からも低温目標での抽出材が増えており、上工程から抽出目標温度が高い高温抽出材と低温抽出材が混在して搬入されるケースでは、装入温度ロスを警戒してそれらを混載して装入した際には、加熱操業は高温抽出材に合わせて加熱炉温度を高めるよう操業せざるを得ず、低温抽出材に対しては大きな焼き過ぎによる熱ロスを発生させることとなる。このようなケースでは、前記のような装入温度ロスを考慮して装入順を決めるべきか、或いは焼き過ぎによる熱ロスを考慮して、装入待ち時間は長くなっても、抽出温度を揃えた順番で装入すべきか容易に判断できない複雑な問題である。
特開平6−304619号公報 特開平10−5831号公報
上述した問題を解決するには、最適なスケジュールを決定するための最適化問題定式化の中で、加熱炉の燃焼制御等を考慮した燃料消費量を最適化問題の決定変数として含むことが不可欠である。
しかしながら、従来、加熱炉装入・抽出(すなわち圧延)スケジュールを作成する際には、前記のように物流や加熱・圧延制約などを考慮した組合せ最適化問題或いは整数計画問題として定式化しており、燃料消費量のようなプロセス制御量を直接考慮することはできなかった。また、複数の加熱炉をもつ場合には対象鋼材の加熱炉への振り分けも必要となるが、従来は装入温度に応じて予め振り分ける方法が取られており、この点でも燃料消費量からみて必ずしも最適な振り分けがなされているとは言い難い状況であった。
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、鋼材等の熱間圧延工場の鋼材加工スケジュール作成において、加熱炉装入・抽出(すなわち圧延)スケジュールを求め、加熱炉燃料コストを最小化するスケジュールを作成することを目的とする。更には、複数の加熱炉を持つプロセスのスケジュールをつくるケースでは、抽出目標温度まで加熱するのに必要とされる燃料投入量のレベルに応じ鋼材を適切な加熱炉へ振り分けることも可能となり、複数炉への鋼材の最適な振り分けまで含んだ装入スケジュールを作成することを目的とする。
(1).単数又は複数の加熱炉と圧延機により構成される圧延処理プロセスの鋼材加熱順序及び圧延順序を含む処理計画を作成するための熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置において、
前記圧延処理プロセスの物流状態及び物流制約を離散事象モデルで表した離散事象系シミュレータと、
前記離散事象系シミュレータにて対象とする事象が発生した際の物流状態の情報を基に、前記離散事象系シミュレータの初期状態を設定するスケジュール対象鋼材情報処理装置と、
前記処理計画の立案開始日時から予め設定された対象期間(計画作成期間)の間、前記圧延処理プロセスの物流状態と物流制約とを数式で表現した数式モデルであって、着目している物流のスケジュールを作成するのに係わる情報を取り込んで作成された物流プロセスモデル及び鋼材の加熱炉内外における温度の時間変化を表す鋼材温度プロセスモデルとを統合した総合プロセスモデルを保持する数式モデル保持装置と、
前記数式モデル保持装置により保持された数式モデルを評価するための評価関数を設定する評価関数設定装置と、
前記数式モデル保持装置により保持された総合プロセスモデルと、前記評価関数設定装置により設定された評価関数とを用いて最適化計算処理を行って前記離散事象系シミュレータに対する物流指示を算出する最適化計算装置とを有することを特徴とする熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
(2).前記数式モデル保持装置に保持されている総合プロセスモデルと、前記評価関数設定装置により設定された評価関数とを前記最適化計算装置に与えて、前記最適化計算装置による最適化計算処理を行うことにより、前記立案開始日時から所定の区切られた範囲で設定された対象期間(指示算出期間)分について物流指示を算出して、前記算出した最適物流指示を前記離散事象系シミュレータに与えて、予め選択された対象期間(シミュレーション期間)分だけシミュレーションを実行した結果を処理計画として確定し、前記確定した期間の直後の日時を新たな立案開始日時として設定して処理計画を立案するという処理を繰り返すことにより、スケジュール対象鋼材の熱延到着状態及び加熱炉における物流進捗状態に応じた最適なスケジュールを作成することを特徴とする(1)に記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
(3).前記数式モデル保持装置は、前記離散事象系シミュレータからの将来の物流状態予測情報に基づき、製鋼工程から圧延工程までの物流制約を、状態方程式(一階連立差分方程式)及び一次不等式で表した物流プロセスモデル、並びに、加熱炉内外にある鋼片の温度プロセス動的モデルを離散時間状態方程式(一階連立差分方程式)で表した温度プロセス制約式を統合した総合プロセスモデルを保持することを特徴とする(1)又は(2)に記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
(4).前記総合プロセスモデルは、前記物流プロセスモデルにおける決定変数の全部又は一部が、前記温度プロセスモデルに含まれることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
(5).前記総合プロセスモデルは、離散値の決定変数及び連続値の決定変数からなる数式により表されており、前記評価関数設定装置は、該離散値の決定変数及び連続値の決定変数を評価することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
(6).前記最適化計算装置は、前記総合プロセスモデルと、前記評価式とにより、数理計画問題として定式化された最適化問題の解として最適な熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュールを算出することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
(7).前記離散事象モデルは、ペトリネットモデルであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
(8).前記温度プロセスモデルは、その決定変数の中に加熱炉燃料消費量を含み、前記評価関数設定装置は、その加熱炉燃料消費量を評価する評価式を有し、前記最適化計算装置は、その加熱炉燃料消費量の時間積算値を最小化するとともに、複数の加熱炉を持つ場合には、加熱炉燃料消費量の加熱炉全体の合計値を評価する評価値を有することにより、その効用として対象鋼材の最適な装入炉の振り分けをも含んだ解としての加熱・圧延スケジュールを作成することを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
(9).(1)〜(8)のいずれかに記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置を用いて、単数又は複数の加熱炉と圧延機により構成される圧延処理プロセスの鋼材加熱順序及び圧延順序を含む処理計画を作成することを特徴とする熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成方法。
(10).(9)に記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
(11).(10)に記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
本発明によれば、熱間圧延工場における鋼材加工のためのスケジュール作成において、各装置が適切に連動することにより、従来の物流や品質制約のみならず、加熱炉燃料原単位最小化を実現し得る最適なスケジュールを自動作成することが可能となる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明を適用した加熱・圧延スケジュール作成装置及び熱間圧延工場の全体構成を示す概略図である。図1において、スケジュール作成装置2は、スケジュール作成指示を受けたタイミングで、連続鋳造工程から熱延工程に及ぶ実プロセススケジュール実績管理を行うスケジュール対象鋼材情報処理装置1より現時刻のスケジュール対象鋼材の物流状態に関する情報である現在物流状態8を受信し、それを物流シミュレータ3の初期状態データに変換する。
物流シミュレータ3は、その初期状態を起点として既に確定済みのスケジュールが存在する場合にはそれに従いシミュレーションを実行する。確定済みのスケジュールが存在しない場合、或いは、存在していた確定スケジュールまでシミュレータが進行した場合には、物流シミュレータ3は、そのシミュレーション時刻(確定済みのスケジュールがなくなった時刻)の物流状態(未来物流状態)9を数式モデル保持装置4に送る。
数式モデル保持装置4は未来物流状態9を基に物流・温度プロセス統合モデル5に基づき、最適化のための物流プロセス、温度プロセスに関する制約式を作成する。そして、ここで構成された制約式と、評価関数設定装置6により設定された評価関数とを用いて、混合整数計画問題等の数理計画問題として定式化を行う。
そして、このように定式化された問題を最適化計算装置7により解き最適解である最適スケジュール10を作成し、それを物流シミュレータ3へ送る。物流シミュレータ3は、その最適スケジュール10に基づきシミュレーションを続行して、時間を付与した厳密なスケジュール指示11を作成した後、実プロセス13に対しスケジュール指示11を出す。スケジュール指示11を基に操業が行われ、その実績データ12が前記スケジュール対象鋼材情報処理装置1に送られ、実績管理が行われる。このループの繰り返しにより随時スケジュールが自動作成されて、熱間圧延工場の実プロセスが続行される。
次に、スケジュール作成装置2における具体的なスケジュール作成方法を説明する。まず、数式モデル保持装置4が保持する物流・温度プロセス統合モデル5は物流プロセス系及び温度プロセス制御系を総合的に最適化するためのモデル(この場合最適化を行うための制約式)で、物流プロセス系モデル(制約式)とその物流プロセス系モデルにおける決定変数を含むことを特徴とする温度プロセス制御系モデル(制約式)から成る。
具体的には、例えば物流プロセス系モデルが、図2(a)のようにペトリネットで表された場合について説明する。図2(a)は加熱炉が1基であり三つの帯(1帯、2帯、3帯を備える)の場合の圧延工程においてスケジュール対象となる鋼材或いは同種の鋼材を集めた鋼材グループ(以降は鋼材グループとする。ペトリネットではこれをカラーという概念で識別する)毎の対象鋼材の所在を表すモデルで、プレース0は対象鋼材が加熱炉への装入可能な状態となり、装入を待っている状態を表すプレースで、トランジション0は装入待ち状態の鋼材を加熱炉1帯へ装入する操作に対応するトランジションでこのトランジションの発火が装入を表す。また、プレース1、2、3は対象鋼材がそれぞれ加熱炉内の1帯、2帯、3帯に存在することを表しており、トランジション1は1帯から2帯への鋼材の移動を、トランジション2は2帯から3帯への鋼材の移動を、トランジション3は3帯から加熱炉外への搬出を、それぞれ表現している。そして、この物流モデルを状態方程式で表現すると、(1)式のようになる。
Figure 2006318228
ここで、x[i][k][c]は時刻kにおけるカラー(鋼材グループ)cのプレースiのトークン数を表す状態変数で、u[j][k][c]は時刻kにおけるカラー(鋼材グループ)cのトランジションjの発火可否を表す操作変数で、両変数ともここで定式化し最適化を行う問題において評価式を最適化(ここでは最小化)するために決定すべき変数で、通常当該技術分野において「決定変数」と称されており、本明細でもそのように称するものとする。また、(1)式のFin[k][c]は当該カラー(鋼材グループ)cが装入可能な状態となった時刻のみ1、それ以外の時刻では0とする。
更に、(2)式はプレース4に対応する状態変数に関する制約式で、プレース4は加熱炉から抽出された鋼材グループが蓄積されるプレースで、このプレースに溜まった鋼材グループ数、すなわち圧延実施可能鋼材グループ数が時刻kにおける圧延実施予定鋼材グループ数Fout[k](所与の関数)となることを要請する制約式である。もし、加熱炉が複数基ある場合には、例えば2基の場合は図2(b)のように表すことができ同様の対応が可能となる。また、ここではトークンは鋼材"グループ"としたが、鋼材1本1本と考えても、全く同様の扱いが可能である。
Figure 2006318228
次に、図3を用いて温度プロセス制御系モデルについて説明する。図3はスケジュール対象となる鋼材グループ(カラー)毎及び炉帯毎の温度プロセス制御系モデルで、当該鋼材グループが炉外にある時、すなわちx[f][k][c]=0(ただしfは図2(a)で示したようにf=1,2,3がそれぞれ1帯、2帯、3帯に対応する)の場合には空冷により指数関数的に温度下降が起こり、鋼材温度(26)y[k][c]は(3)式のように表される。
Figure 2006318228
なお、同式中のΔTは時刻kの計算周期で、k時刻と(k+1)時刻との間隔に該当する。
また、TSLは鋼材の温度時定数である。そして、x[i][k][c],u[j][k][c]の決定変数はx[4][k][c]以外は1,0変数であることに注意しておく。
一方この鋼材グループcが、加熱炉内に装入されている状態では、x[f][k][c]=1となり、加熱炉内温度が鋼材温度に伝播し、更に当該鋼材グループcの鋼材温度(26)y[k][c]がフィードバックされ、目標温度(25)T_ref[c][f]との偏差を基に、制御装置21により当該炉帯fに対する投入燃料(27)fuel[k][f]を求める。ここでは制御方法を積分制御としているが、任意の制御法が可能である。そして、制御法に基づき算出された投入燃料に応じ、加熱炉帯温度特性に従って加熱炉帯温度(28)z[k][f]が変化し鋼材温度(26)y[k][c]が目標値に近づくよう変化する(fuel[k][f]:時刻kにおける加熱炉帯fでの投入燃料、z[k][f]:時刻kにおける加熱炉帯fの炉帯温度)。このように鋼材が炉内にある場合の関係を式により表現すると、(4)式となる。
Figure 2006318228
(4)式は鋼材グループcが炉内(炉帯f)にある場合の鋼材温度y[k][c]を更新する式で、加熱炉帯f内にあることから第2項の加熱炉帯fの温度z[k][f]の影響が加わることがわかる。そして、物流プロセス系モデル(制約式)の決定変数であるx[f][k][c](時刻kにおいて鋼材グループcが炉帯fにある場合1、ない場合0となる変数)を用いて、(3)式及び(4)式により表される炉内外での温度ダイナミックスを統一的に表現すると(5)式となる。
Figure 2006318228
加熱炉外にある場合はx[f+1][k][c]=0となり第2項が0となるので(3)式となる。また、加熱炉内にある場合はx[f+1][k][c]=1となり第2項の加熱炉温度の影響が加わり、(4)式となることがわかる。また、同様に、時刻kにおける加熱炉帯fでの投入燃料fuel[k][f]及び炉帯温度z[k][f]を更新する式はそれぞれ(6)式及び(7)式となる。
Figure 2006318228
Figure 2006318228
まず、(6)式は積分制御により燃焼制御を行う場合の炉帯fの投入燃料fuel[k][f]を更新する式で、時刻kにおいて炉帯fに鋼材グループc が存在する場合はx[f][k][c]=1となり、鋼材温度y[k][c]がフィードバックされるので、鋼材グループcの炉帯f抽出目標温度T_ref[c][f]との偏差に応じて、投入燃料fuel[k][f]が更新される。また、(7)式は(6)式によって定まる投入燃料fuel[k][f]を入力とする一次遅れ系として炉帯温度z[k][f]が決まることを表している。
このように、数式モデル保持装置4は(1)式、(2)式、(5)式、(6)式、及び(7)式を、最適化計算装置7に、最適計算を行う際の制約式とし、提供する。この際、決定変数は離散(1-0)変数であるx[i][k][c],u[j][k][c]と連続変数であるy[k][c],fuel[k][f],z[k][f]より成る。
また、評価関数設定装置は、今回のように燃料原単位を最小化したい場合には、投入燃料に対応する決定変数であるfuel[k][f]の時間、炉帯に関する総和を取りΣ_kΣ_f[fuel[k][f]]のように設定し、先と同様、最適化計算装置7に、最適計算を行う際の評価関数とし、提供する。
そして、前記制約式と前記評価関数より最適解を求める。例えば、混合整数計画問題として、最適化計算装置7にて、前記評価関数を最小化する最適な決定変数を求めることができるが、他の数理計画法の適用が可能である。
なお、(5)式及び(6)式には、z[k][f]・x[f][k][c]及びy[k][c]・x[f][k][c]の離散変数と連続変数との積の項が現れる非線形の式となっているが、これに対しては非線形計画問題として解くか或いは非線形項を線形化する等の対応をとる。
次に、実施例として簡単な例で、前記した定式化をいくつか組合せ、前記した解法により最適解を求め、それらが有効に機能することを示す。ここでの問題として表1に示す鋼材グループを、どのような順で装入すれば燃料原単位を最小化する装入順スケジュールを作成できるかを考える。
Figure 2006318228
この表で、「装入可能時刻」はある時点を基準とした相対時刻で、当該鋼材グループが圧延工程に到着し装入可能な状態となる時刻を意味する。この基準でみた時刻が800[分]において装入を開始し、5つの鋼材グループを装入するスケジュールをつくるものとする。そして1つの鋼材グループを装入するのに要する時間を60[分]とする。したがって、装入開始時刻800[分]から60×5=300[分]後の1100[分]に完了するスケジュールということになる。もちろん、装入時刻において圧延工程未到着の鋼材グループを装入することはできない。また、ここでの、計算時間単位を10[分]とする。以下、本実施例での物流モデル及び温度モデルについて説明する。
まず、物流モデルの中心となる加熱炉は1基で、1帯とし、鋼材グループがこれを通過するに要する時間を60[分]、すなわち6単位時間(=60÷10)とする。したがって、物流モデルは図4のようになり、本図においてプレース1からプレース6までが炉内に対応している。なお、炉内には鋼材グループは1つしか入れないものとする。したがって、鋼材グループをトークンとすれば、任意の時刻において、プレース1からプレース6までのトークンの総和は高々1となる。時刻k(単位10[分])における鋼材グループcのプレースiにおけるトークン数をx[i][k][c]とし、時刻kにおける鋼材グループcのトランジションjにおける発火可否(発火時:1、非発火時:0)をu[j][k]c]とすると、この炉内容量制約条件は(8)式のように表すことができる。なお、この例での制御周期ΔTはΔT=1[単位時間](=10[分])とする。
Figure 2006318228
そして、k=0より装入を開始し途切れることなく5つの鋼材グループを装入する必要があることから、プレース7のトークン数条件として、(9)式のように、通過所要時間(6)の倍数時刻にトークンが1つずつ加算されるよう設定する。
Figure 2006318228
なお、"floor(*)"は()内の数値の小数部分を切り捨てた整数値を表すものとする。更に物流モデルに関する制約式として、状態遷移制約である(10)式と(11)式が必要となる。(10)式はx[i][k][c],u[j][k]c]を時刻kについて更新する遷移方程式で、(11)式は入力プレースにトークンがなければトランジションは発火できないことを表す制約式である。以上がこの実施例における物流制約式であるが、他の制約条件を考慮する必要がある場合等は適宜それに対応する制約式を追加すれば良い。
Figure 2006318228
Figure 2006318228
続いて、温度プロセスモデルに関する制約式について説明する。加熱炉燃焼制御方式を、本実施例では例えば積分制御と仮定すると、鋼材を昇温するための投入燃料は(12)式のように表すことができる。積分制御では、制御周期毎に更新される操作量である投入燃料の差分値がその時点での目標温度であるT_ref[c](本事例では目標温度は抽出目標温度に固定されているものとする。)と実績温度であるy[k][c]との制御偏差に比例することになる。(12)式の第2項ではi,cに関する総和を求めているが、先の物流制約式(8)式より、当該時刻kにおいて総和を求めている(i,c)の範囲でx[i][k][c]=1になることは高々1ケースであることから、この項が時刻kに加熱炉にある鋼材グループcの制御偏差となっていることがわかる。またg[i][k][c]は(13)式に示すごとく非線形項なので線形化を行うものとする。
Figure 2006318228
Figure 2006318228
そして、炉内外にある鋼材グループcの温度y[k][c]の時間変化をあらわしたものが(13)式である。ここでは投入燃料Fuel[k]から一次遅れにより鋼材温度y[k][c]が変化すると仮定した。したがって、(14)式の第2項は鋼材グループcが時刻kにおいて炉内にある場合にはその時刻での投入燃料Fuel[k]となり、鋼材グループcが時刻kにおいて炉内にない場合には0となり、炉外にあることを表す。またh[i][k][c]は(15)式のように非線形項なので、g[i][k][c]と同様線形化を行う。
Figure 2006318228
Figure 2006318228
最後に、抽出"見込み"温度が抽出"目標"温度以上であることを要請する制約式を(16)式の様に設定する。
Figure 2006318228
この条件でスケジュールを以下の二通りの方法で作成する。
方法1:温度プロセスモデルを評価関数に用いず装入待ち時間を評価関数として最適化を行う。
方法2:本発明による物流モデル及び温度プロセス総合モデルを基に投入燃料を評価関数として最適化を行う。
なお、方法1での評価関数は(17)式とする。
Figure 2006318228
ここでq[k][c]は鋼材グループcが時刻kに装入された場合の装入待ち時間を表し、表1における「装入可能時刻」と「装入予定時刻」との時間差により予め求めることができる。また、方法2での評価関数は温度プロセスモデルを考慮していることのメリットを生かし、加熱炉投入燃料の総和を表す(18)式を用いることとする。本来スケジュールに要請される評価仕様は燃料消費に付随するコスト関連以外にも納期的評価や品質的評価等様々考えられるが、ここでは本発明の効果を明確化する目的で、燃料消費量に限定した。したがって、実際に利用する場合には必要に応じ他の評価項目を追加すれば良い。
Figure 2006318228
この二つの方法により、燃料消費量を比較した結果を表2に示す。燃料消費量の欄に示すように通常燃料消費量を抑制できると考えられている装入待ち時間最小化スケジュール(方法1)より、本発明による物流モデルと温度プロセスモデルとのハイブリッドモデルによる最適化手法(方法2)を用いることにより、この例題の様にわずか5グループのスケジュールにもかかわらず6%程度更に燃料消費を抑制できることがわかる。
Figure 2006318228
以上のように極簡単な例ではあるが、本発明による加熱・圧延スケジュール作成装置を用いることにより、厳密に燃料原単位を評価し最小化するスケジュールが作成可能なことが示された。つまり、この加熱・圧延スケジュール作成装置により、最適解を導出することにより、物流制約等を満たしかつ、燃料効率の良いスケジュールの自動作成が可能となる。
(他の実施形態)
前述した本発明の実施の形態における物流シミュレータ、数式モデル保持装置、評価関数設定装置、最適化計算装置等の各装置、並びに熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成方法の各ステップは、コンピュータのRAMやROM等に記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本発明に含まれる。
具体的に、前記プログラムは、例えばCD−ROMのような記録媒体に記録し、或いは各種伝送媒体を介し、コンピュータに提供される。前記プログラムを記録する記録媒体としては、CD−ROM以外に、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、不揮発性メモリカード等を用いることができる。他方、前記プログラムの伝送媒体としては、プログラム情報を搬送波として伝搬させて供給するためのコンピュータネットワーク(LAN、インターネットの等のWAN、無線通信ネットワーク等)システムにおける通信媒体(光ファイバ等の有線回線や無線回線等)を用いることができる。
また、コンピュータが供給されたプログラムを実行することにより前述した実施の形態における各機能が実現されるだけでなく、そのプログラムがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)或いは他のアプリケーションソフト等と共同して前述した実施の形態の各機能が実現される場合や、供給されたプログラムの処理の全て或いは一部がコンピュータの機能拡張ボードや機能拡張ユニットにより行われて前述した実施の形態における各機能が実現される場合も、かかるプログラムは本発明に含まれる。
本発明を適用した加熱・圧延スケジュール作成装置及び熱間圧延工場の全体構成を示す概略図である。 物流・温度プロセス総合モデル5における物流プロセスモデルの例の図であり、(a)は加熱炉1基の場合を表す図で、(b)は加熱炉2基の場合を表す図である。 物流・温度プロセス総合モデル5における温度制御系プロセスモデルの例の図である。 実施例における物流モデルの図である。
符号の説明
1:スケジュール対象鋼材情報処理装置
2:スケジュール作成装置
3:物流シミュレータ
4:数式モデル保持装置
5:物流・温度プロセス総合モデル
6:評価関数設定装置
7:最適化計算装置
8:現在物流状態
9:未来物流状態
10:最適スケジュール
11:スケジュール指示
12:スケジュール実績
13:実プロセス
21:制御装置
22:加熱炉帯(f)温度特性
23:鋼材温度特性
24:x[f][k][c]
25:鋼材目標温度T_ref[c][f]
26:鋼材温度y [k][c]
27:投入燃料fuel[k][f]
28:炉帯温度z[k][f]

Claims (11)

  1. 単数又は複数の加熱炉と圧延機により構成される圧延処理プロセスの鋼材加熱順序及び圧延順序を含む処理計画を作成するための熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置において、
    前記圧延処理プロセスの物流状態及び物流制約を離散事象モデルで表した離散事象系シミュレータと、
    前記離散事象系シミュレータにて対象とする事象が発生した際の物流状態の情報を基に、前記離散事象系シミュレータの初期状態を設定するスケジュール対象鋼材情報処理装置と、
    前記処理計画の立案開始日時から予め設定された対象期間(計画作成期間)の間、前記圧延処理プロセスの物流状態と物流制約とを数式で表現した数式モデルであって、着目している物流のスケジュールを作成するのに係わる情報を取り込んで作成された物流プロセスモデル及び鋼材の加熱炉内外における温度の時間変化を表す鋼材温度プロセスモデルとを統合した総合プロセスモデルを保持する数式モデル保持装置と、
    前記数式モデル保持装置により保持された数式モデルを評価するための評価関数を設定する評価関数設定装置と、
    前記数式モデル保持装置により保持された総合プロセスモデルと、前記評価関数設定装置により設定された評価関数とを用いて最適化計算処理を行って前記離散事象系シミュレータに対する物流指示を算出する最適化計算装置とを有することを特徴とする熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
  2. 前記数式モデル保持装置に保持されている総合プロセスモデルと、前記評価関数設定装置により設定された評価関数とを前記最適化計算装置に与えて、前記最適化計算装置による最適化計算処理を行うことにより、前記立案開始日時から所定の区切られた範囲で設定された対象期間(指示算出期間)分について物流指示を算出して、前記算出した最適物流指示を前記離散事象系シミュレータに与えて、予め選択された対象期間(シミュレーション期間)分だけシミュレーションを実行した結果を処理計画として確定し、前記確定した期間の直後の日時を新たな立案開始日時として設定して処理計画を立案するという処理を繰り返すことにより、スケジュール対象鋼材の熱延到着状態及び加熱炉における物流進捗状態に応じた最適なスケジュールを作成することを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
  3. 前記数式モデル保持装置は、前記離散事象系シミュレータからの将来の物流状態予測情報に基づき、製鋼工程から圧延工程までの物流制約を、状態方程式(一階連立差分方程式)及び一次不等式で表した物流プロセスモデル、並びに、加熱炉内外にある鋼片の温度プロセス動的モデルを離散時間状態方程式(一階連立差分方程式)で表した温度プロセス制約式を統合した総合プロセスモデルを保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
  4. 前記総合プロセスモデルは、前記物流プロセスモデルにおける決定変数の全部又は一部が、前記温度プロセスモデルに含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
  5. 前記総合プロセスモデルは、離散値の決定変数及び連続値の決定変数からなる数式により表されており、前記評価関数設定装置は、該離散値の決定変数及び連続値の決定変数を評価することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
  6. 前記最適化計算装置は、前記総合プロセスモデルと、前記評価式とにより、数理計画問題として定式化された最適化問題の解として最適な熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュールを算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
  7. 前記離散事象モデルは、ペトリネットモデルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
  8. 前記温度プロセスモデルは、その決定変数の中に加熱炉燃料消費量を含み、前記評価関数設定装置は、その加熱炉燃料消費量を評価する評価式を有し、前記最適化計算装置は、その加熱炉燃料消費量の時間積算値を最小化するとともに、複数の加熱炉を持つ場合には、加熱炉燃料消費量の加熱炉全体の合計値を評価する評価値を有することにより、その効用として対象鋼材の最適な装入炉の振り分けをも含んだ解としての加熱・圧延スケジュールを作成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成装置を用いて、単数又は複数の加熱炉と圧延機により構成される圧延処理プロセスの鋼材加熱順序及び圧延順序を含む処理計画を作成することを特徴とする熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成方法。
  10. 請求項9に記載の熱間圧延工場の加熱・圧延スケジュール作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
  11. 請求項10に記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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