JP2006315946A - 導電性酸化物焼結体、これを用いたサーミスタ素子、及びこれを用いた温度センサ - Google Patents

導電性酸化物焼結体、これを用いたサーミスタ素子、及びこれを用いた温度センサ Download PDF

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Abstract

【課題】−40℃の低温下から900℃以上の高温域までの温度範囲において、適切に温度検知ができる導電性酸化物焼結体、これを用いたサーミスタ素子、及び、このサーミスタ素子を用いた温度センサを提供する。
【解決手段】 サーミスタ素子2をなす導電性酸化物焼結体1は、Laを除く3A族元素のうち少なくとも1種の元素をM1とし、2A族元素のうち少なくとも1種の元素をM2とし、Crを除く4A,5A,6A,7A及び8族元素のうち少なくとも1種の元素をM3としたとき、その組成式が、例えば、M1aM2bM3cAldCreOfで表され、a,b,c,d,e,fが、0.600≦a≦1.000,0≦b≦0.400,0.150≦c<0.600,0.400≦d≦0.800,0<e≦0.050,0<e/(c+e)≦0.18,2.80≦f≦3.30を満足する。
【選択図】図1

Description

本発明は、導電性を有し、その抵抗値が温度によって変化する導電性酸化物焼結体、これを用いたサーミスタ素子、さらには、これを用いた温度センサに関する。
従来より、導電性を有し、その抵抗値(比抵抗)が温度によって変化する導電性酸化物焼結体、これを用いて温度測定を行うサーミスタ素子、さらには、このサーミスタ素子を用いた温度センサが知られている(特許文献1,2)。
このうち、特許文献1には、300℃から1000℃の範囲にわたって温度検知ができるサーミスタ素子として、Sr,Y,Mn,Al,Fe及びOを含有し、ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物の各結晶相を含有し、Sr−Al系酸化物及びSr−Fe系酸化物の少なくとも一方の結晶相を含有するサーミスタ素子用焼結体が開示されている。
さらに、特許文献2には、室温から1000℃の範囲にわたって適切な比抵抗値を有する導電性酸化物焼結体として、M1aM2bM3cM4dO3で表され、a,b,c,dが所定の条件式を満足する導電性酸化物焼結体が開示されている。
特開2004−221519号公報 特開2003−183075号公報
サーミスタ素子、温度センサの用途として、自動車エンジンなどの内燃機関からの排ガス温度測定がある。これらの用途では、近年、DPFやNOx還元触媒の保護等のため、サーミスタ素子に対し、900℃付近の高温域における温度検知が要求される。
その一方、OBDシステム(On-Board Diagnostic systems)などにおける温度センサの故障(断線)検知のため、エンジンの始動時やキーオン時など低温下でもその温度を検知可能とすることが望まれている。この場合、特に寒冷地では、始動時の温度が氷点下となる場合もあるため、−40℃でも測温可能なサーミスタ素子が望まれている。
しかしながら、前述の特許文献1,2には、常温あるいは300℃以上から1000℃の範囲で測温可能とするサーミスタ素子あるいは焼結体が開示されており、この温度範囲で、適切な抵抗変化をするように、温度勾配定数(B定数)を4000K程度あるいはそれ以上としている(例えば特許文献2の表4参照)。
このため、これらの焼結体を用いたサーミスタ素子あるいはサーミスタ素子では、温度勾配定数(B定数)が大きく、−40℃の低温下では、サーミスタ素子の抵抗値が高くなりすぎて、その抵抗値測定が困難となるために温度計測が困難となる。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、−40℃の低温下から900℃以上の高温域までの温度範囲において、適切に温度検知ができる導電性酸化物焼結体、これを用いたサーミスタ素子、及び、このサーミスタ素子を用いた温度センサを提供することを目的とする。
その解決手段は、Laを除く3A族元素のうち少なくとも1種の元素をM1とし、2A族元素のうち少なくとも1種の元素をM2とし、Crを除く4A,5A,6A,7A及び8族元素のうち少なくとも1種の元素をM3としたとき、組成式M1aM2bM3cAldCreOfで表記される導電性酸化物焼結体であって、a,b,c,d,e,fが下記条件式を満たす導電性酸化物焼結体である。
0.600≦a≦1.000
0≦b≦0.400
0.150≦c<0.600
0.400≦d≦0.800
0<e≦0.050
0<e/(c+e)≦0.18
2.80≦f≦3.30
a,b,c,d,e,fが上述の条件式を満たす本発明の導電性酸化物焼結体は、−40℃〜+900℃の温度範囲における温度勾配定数(B定数)が、2000〜3000Kとなり、このような広い温度範囲において、適切に温度を測定することができる。
なお、導電性酸化物焼結体を構成する結晶粒子の大きさを示す平均粒径は、好ましくは7μm以下、より好ましくは0.1〜7μm、更に好ましくは0.1〜3μmである。結晶粒子の平均粒子径が大きくなりすぎると、狙いとする材料組成にズレを生じた導電性酸化物焼結体が得られることがあり、この焼結体あるいはこれを用いたサーミスタ素子の特性の不安定化を招く傾向があるためである。
さらに、上記の導電性酸化物焼結体であって、前記a,bが下記条件式を満たす導電性酸化物焼結体とすると良い。
0.600≦a<1.000
0<b≦0.400
本発明の導電性酸化物焼結体では、0.600≦a<1.000,及び0<b≦0.400、つまり、a<1.000,b>0としている。即ち、この焼結体は、Laを除く3A族元素のうち少なくとも1種の元素M1のほか、2A族のうち少なくとも1種の元素M2を必須成分として含みつつ、a及びbが上述の条件式を満たす組成を有する。この導電性酸化物焼結体(あるいはこれを用いたサーミスタ素子)では、元素M2を含まない(b=0)のものに比して、これを多数製造する場合にも、各々の導電性酸化物焼結体(サーミスタ素子)の個体間の特性バラツキ、焼成ロット間の特性バラツキを小さくすることができる利点がある。
さらに、上記導電性酸化物焼結体であって、a,b,c,d,e,fが下記の条件式を満たす導電性酸化物焼結体とすると良い。
0.820≦a≦0.950
0.050≦b≦0.180
0.181≦c≦0.585
0.410≦d≦0.790
0.005≦e≦0.050
0<e/(c+e)≦0.18
2.91≦f≦3.27
a〜fが上述の条件式を満たす本発明の導電性酸化物焼結体では、より確実に、−40℃〜900℃の温度範囲におけるB定数を2000〜3000Kの範囲内に調整することができる。
またa〜fが上述の条件式を満たすこの導電性酸化物焼結体では、a〜fをある数値に特定した導電性焼結体(これを用いたサーミスタ素子)を複数製造する場合にも、各導電性焼結体(サーミスタ素子)の個体間のばらつき、焼成ロット間のばらつきを一層小さくすることができる。
さらに、a,b,c,d,e,fが下記の条件式を満たす導電性酸化物焼結体とするのが好ましい。
0.850≦b≦0.940
0.060≦b≦0.150
0.181≦c≦0.545
0.450≦d≦0.780
0.005≦e≦0.050
0<e/(c+e)≦0.18
2.92≦f≦3.25
さらに、上記いずれかに記載の導電性酸化物焼結体であって、前記元素M1がY,Nd,Ybから選ばれる1種またはそれ以上の元素であり、前記元素M2がMg,Ca,Srから選ばれる1種またはそれ以上の元素であり、前記元素M3がMn,Feから選ばれる1種またはそれ以上の元素である導電性酸化物焼結体とすると良い。
本発明の導電性酸化物焼結体では、元素M1をY,Nd,Ybから選ばれる1種またはそれ以上の元素とし、元素M2をMg,Ca,Srから選ばれる1種またはそれ以上の元素とし、元素M3をMn,Feから選ばれる1種またはそれ以上の元素としている。これらの元素を選択することにより、上記した範囲のB定数が安定して得られるものとし易く好ましい。
あるいは、前記いずれかに記載の導電性酸化物焼結体であって、前記元素M1がYであり、前記元素M2がSrであり、前記M3がMnである導電性酸化物焼結体とすると良い。
特に本発明の導電性酸化物焼結体では、元素M1をYとし、元素M2をSrとし、元素M3をMnとしている。これにより、上記した範囲のB定数が安定して得られるものとしやすく好ましい。
さらに、上記いずれか1項に記載の導電性酸化物焼結体であって、ペロブスカイト型結晶構造を有する導電性酸化物焼結体とすると良い。
本発明の導電性酸化物焼結体は、ペロブスカイト型(ABO3)の結晶構造を有している。通常Aサイトが(M1aM2b)、Bサイトが(M3cAldCre)である(M1aM2b)(M3cAldCre)O3で示される組成となる。ただし、a,b,c,d,eは上述の条件を満たす。
このような結晶構造を有する場合、Aサイトを占める元素M1,M2はイオン半径が近接しており、元素同士で互いに容易に置換できるものであり、これらの元素からなる副生成物の生成が少なく、置換された組成で安定に存在する。同様に、Bサイトを占める元素M3,Al,Crはイオン半径が近接しており、元素同士で互いに容易に置換できるものであり、これらの元素からなる副生成物の生成が少なく、置換された組成で安定に存在する。このため、広い組成範囲で連続的に組成比を変えて、導電性酸化物焼結体の比抵抗値やその温度勾配定数(B定数)を調整することができる。
なお、本発明の導電性酸化物焼結体を作製する際の焼成条件(酸化、還元等の焼成雰囲気、及び焼成温度など)や、Aサイト及びBサイトにおける元素同士の置換の量比により、酸素の過剰或いは欠損を生じることがある。従って、上述の組成式における酸素原子と(M1aM2b)とのモル比、及び酸素原子と(M3cAldCre)とのモル比は、それぞれ正確に3:1となっていなくても、ペロブスガイト型の結晶構造が維持されていればよい。
さらに、上記いずれか1項に記載の導電性酸化物焼結体を用いてなるサーミスタ素子とすると良い。
本発明のサーミスタ素子は、前述の導電性酸化物焼結体を用いているので、−40〜900℃の広い温度範囲にわたって温度測定が可能な、適切な温度勾配定数を有するサーミスタ素子となる。
さらに、上記のサーミスタ素子を用いてなる温度センサとすると良い。
本発明の温度センサでは、前述の導電性酸化物焼結体を用いたサーミスタ素子を用いてなるので、−40〜900℃の広い温度範囲にわたって温度測定が可能な温度センサとなる。
本発明に係る導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2の実施例を、比較例と対比して説明する。
(実施例1〜8)
まず、実施例1〜8及び比較例1,2にかかる導電性酸化物焼結体1及びサーミスタ素子2の製造について説明する。原料粉末として、Y23,SrCO3,MnO2,Al23,Cr23(全て純度99%以上の市販品を用いた。)を用いて、化学式(組成式)YaSrbMncAldCreO3としたときのa,b,c,d,eが、表1に示すモル数となるように、それぞれ秤量し、これらの原料粉末を湿式混合して乾燥することにより原料粉末混合物を調整した。次いで、この原料粉末混合物を大気雰囲気下1400℃で2Hr仮焼し、平均粒径1〜2μmの仮焼粉末を得た。その後、樹脂ポットと高純度Al23玉石とを用い、エタノールを分散媒として、湿式混合粉砕を行った。
次いで得られたスラリーを80℃で2Hr乾燥し、サーミスタ合成粉末を得た。その後このサーミスタ合成粉末100重量部に対し、ポリビニルブチラールを主成分とするバインダーを20重量部添加して混合、乾燥する。さらに、250μmメッシュの篩を通して造粒し、造粒粉末を得た。
なお、使用しうるバインダーとしては、上述のポリビニルブチラールに特に限定されず、例えばポリビニルアルコール、アクリル系バインダー等が挙げられる。バインダーの配合量は上述の仮焼粉末全量に対し、通常5〜20重量部、好ましくは10〜20重量部とする。
また、バインダーと混合するにあたり、サーミスタ合成粉末の平均粒子径は2.0μm以下としておくのが好ましく、これによって均一に混合することができる。
ついで上述の造粒粉末を用いて、金型成型法にてプレス成形(プレス圧:4500kg/cm3)して、図1に示すように、Pt−Rh合金製の一対の電極線2a,2bの一端側が埋設された六角形板状(厚さ1.24mm)の未焼成成形体を得る。その後、大気中1500℃で2Hr焼成し、実施例1〜8のサーミスタ素子2を製造した。なお、比較例1,2に係るサーミスタ素子も、同様にして製造した。
サーミスタ素子2の各寸法は、一辺1.15mmの六角形状で、厚み1.00mm、電極線2a,2bの径φ0.3mm、電極中心間距離0.74mm(ギャップ0.44mm)、電極挿入量1.10mmである。
ついで、本実施例1〜8のサーミスタ素子について、以下のようにしてB定数(温度勾配定数)を測定した。即ち、まず、サーミスタ素子2を、T(-40)=233K(=-40℃)の環境下に放置し、その状態でのサーミスタ素子2の初期抵抗値R(-40)を測定した。ついで、サーミスタ素子2を、T(900)=1173K(=900℃)の環境下に放置し、その状態でのサーミスタ素子2の初期抵抗値R(900)を測定した。そして、B定数:B(-40〜900)を、以下の式(1)に従って算出した。
B(-40〜900)=ln[R(900)/R(-40)]/[1/T(900)−1/T(-40)] …(1)
なお、R(-40):−40℃におけるサーミスタ素子の抵抗値(kΩ)、R(900):900℃におけるサーミスタ素子の抵抗値(kΩ)である。
さらに、実施例3に係るサーミスタ素子2について、後述するようにして温度センサ100に組み込み、この温度センサ100の状態でのサーミスタ素子2の初期抵抗値R(-40)及びR(900)を測定した。ついで、大気中で1050℃×50Hr保持し、その後、上述と同様にして、−40℃及び900℃におけるサーミスタ素子の熱処理後抵抗値R'(-40)、R'(900)をそれぞれ測定した。その上で、−40℃における初期抵抗値R(-40)と熱処理後抵抗値R'(-40)との比較から、熱処理による抵抗変化の温度変化換算値CT(-40)(単位:deg)を、下記式(2)により算出した。900℃における初期抵抗値R(900)と熱処理後抵抗値R'(900)との比較からも、同様の式(3)により温度変化換算値CT(900)を算出した。その上で、温度変化換算値CT(-40)とCT(900)うち大きい方を、温度変化換算値CT(deg)として表1に示した。
CT(-40)=[(B(-40〜900)×T(-40))/[ln(R'(-40)/R(-40))×T(-40)+B(-40〜900)]]−T(-40) …(2)
CT(900)=[(B(-40〜900)×T(900))/[ln(R'(900)/R(900))×T(900)+B(-40〜900)]]−T(900) …(3)
なお、温度センサ100のうち、金属チューブ3の内周面及びシース部材8を構成する金属製の外筒には、予め酸化皮膜が形成されている。これにより、この温度センサ100のサーミスタ素子2近傍を高温とした場合でも、金属チューブ3やシース8の外筒の酸化が抑制され、この金属チューブ3内の雰囲気が還元雰囲気となることが防止されている。従って、センサ素子2が還元されて、その抵抗値が変化することが防止されている。
さらに、各実施例及び比較例に係るサーミスタ素子2(単体)について、繰り返し温度変化を与えた場合の抵抗変化を評価した。具体的には、室温(25℃)から−40℃まで、-80deg/Hrの降温速度で冷却し、−40℃環境下に2.5Hr放置後、サーミスタ素子の抵抗値R1(-40)を測定する。その後、900℃まで+300deg/Hrの昇温速度で昇温させ、900℃環境下に2Hr保持し、抵抗値R1(900)を測定する。ついで再び、−40℃まで-80deg/Hrの降温速度で冷却し、−40℃環境下に2.5Hr保持し、サーミスタ素子の抵抗値R2(-40)を測定する。その後さらに、900℃まで+300deg/Hrの昇温速度で昇温させ、900℃環境下に2Hr保持し、抵抗値R2(900)を測定する。
その上で、−40℃における抵抗値R1(-40)と抵抗値R2(-40)との比較から、繰り返し温度変化による抵抗変化の温度変化換算値DT(-40)(単位:deg)を、下記式(4)により算出した。また、900℃における抵抗値R1(900)と抵抗値R2(900)との比較からも、同様の式(5)により温度変化換算値DT(900)を算出した。その上で、温度変化換算値DT(-40)とDT(900)うち大きい方を、温度変化換算値DT(deg)として表1に示した。
DT(-40)=[(B(-40〜900)×T(-40))/[ln(R2(-40)/R1(-40))×T(-40)+B(-40〜900)]]−T(-40) …(4)
DT(900)=[(B(-40〜900)×T(900))/[ln(R2(900)/R1(900))×T(900)+B(-40〜900)]]−T(900) …(5)
これらの結果を、表1に示す。
Figure 2006315946
この表1によれば、組成式YaSrbMncAldCreOfの値a,b,c,d,e,fが、下記の条件式を満たす、実施例1〜8の組成を有する導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2では、B定数:B(-40〜900)が、B(-40〜900)=2000〜3000Kという、従来に比して相対的に低い値の導電性酸化物焼結体1(サーミスタ素子2)となる。このような導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2では、−40℃の低温下から900℃の高温までの広い範囲にわたり、適切な抵抗値を有し、適切に温度測定が可能となる。
値fについては、表1に記載していないが、蛍光X線分析を用いたY,Sr,Mn,Al,Cr,Oの各元素の組成比から、f=2.80〜3.30の範囲内であることを確認している。これは、後述する実施例9〜17における導電性酸化物焼結体1(サーミスタ素子2)についても同様である。
0.600≦a≦1.000
0≦b≦0.400
0.150≦c<0.600
0.400≦d≦0.800
0<e≦0.050
0<e/(c+e)≦0.18
2.80≦f≦3.30
なお、実施例8では、Srを含まない導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2を示したが、Yのほか、Srを含む導電性酸化物焼結体1(サーミスタ素子2)を用いるのが好ましい。
即ち、実施例1〜7に示すように、a<1.000,b>0とするのが好ましい。Sr(2A族の元素M2)を含まない(b=0)実施例8にかかる焼結体1では、この焼結体1(サーミスタ素子2)を多数製造すると、各個体間の特性バラツキや焼成ロット間の特性ばらつきが大きくなり易い傾向がある。これに比して、Y(3A族の元素M1)のほかにSr(2A族の元素M2)を含む、例えば実施例1〜7の焼結体1では、相対的に、個体間の特性バラツキや焼成ロット間の特性ばらつきが小さくできる。
なお、B定数の範囲は、好ましくは、B(-40〜900)=2000〜2900Kとなるようにすると良く、さらに好ましくは、B(-40〜900)=2000〜2800Kとなるようにすると良い。
一方、比較例1,2を見ると理解できるように、本発明の範囲を外れると、B定数:B(-40〜900)が、B(-40〜900)=2000〜3000Kに範囲を外れることが判る。具体的には、dの値が上述の条件式の範囲(d≦0.800)を超えている比較例1の場合、及びe/(c+e)の値が上述の条件式の範囲(e/(c+e)≦0.18)を超えている比較例2の場合のいずれの場合にも、B定数が3000Kを越えることが判る。この場合には、−40℃〜900℃の温度範囲における、サーミスタ素子の抵抗変化が大きくなりすぎて、この温度範囲全域に亘っての適切な抵抗測定が困難となり、適切な温度測定が困難となる。
また、比較例としては示していないが、組成によっては(例えば、Alのモル比を示すdが上述の条件式の範囲(d≧0.400)を下回る場合などには)、B定数が2000Kを下回ることもある。この場合には、サーミスタ素子の抵抗変化が小さくなりすぎて、−40℃〜900℃の温度範囲全域に亘っての抵抗測定は可能であるが、抵抗値の測定精度が低下することにより、適切な温度測定が困難となる。
なお、この表1における比較例2は、特許文献2において実施例20として示されているものに相当する。
さらに、実施例3の導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2において、温度変化換算値CT(deg)が+5degとなった。当該焼結体1(サーミスタ素子2)が熱履歴に対する抵抗変化が少ない特性を有するものか否かを判断する目安が、温度変化換算値CTが±10degであると考えられる。実施例3の焼結体1(サーミスタ素子2)は、この目安の範囲に含まれており、比較例2の焼結体とも遜色のない、良好な温度特性の高温耐久性を示し、熱履歴に対する抵抗変化が小さい焼結体1、及びこれを用いたサーミスタ素子2となることが判る。
なお、他の実施例1,2,4〜8の焼結体については、温度変化換算値CTの測定結果を明示していない。
但し、前述の方法で測定した温度変化換算値DTについては、いずれの実施例及び比較例についても測定してある。いずれの実施例でも、この温度変化換算値DTは±0degとなった。
この温度変化換算値DTついても、当該焼結体1(サーミスタ素子2)が熱履歴に対する抵抗変化が少ない特性を有するものか否かを判断する目安が、温度変化換算値DTが±10degであると考えられる。各実施例1〜8の焼結体1(サーミスタ素子2)は、この目安の範囲に含まれており、本実施例1〜8のサーミスタ素子2は、いずれも熱履歴に対する抵抗変化が小さく、実用上問題なく使用可能な焼結体(サーミスタ素子)であることが判る。特に、本実施例1〜7では、いずれも温度変化換算値DTが±0degとなったことから、特に本実施例1〜7で用いた元素及び組成比において、良好な熱履歴に対する抵抗変化、温度特性の高温耐久性を有していることが判る。
ついで、本実施例に係るサーミスタ素子2を用いた温度センサ100の構成について、図2を参照して説明する。この温度センサ100は、サーミスタ素子2を感温素子として用いるものであり、この温度センサ100を自動車の排気管の取付部に装着して、サーミスタ素子2を排気ガスが流れる排気管内に配置させて、排気ガスの温度検出に使用するものである。
温度センサ100のうち、軸線に沿う方向(以下、軸線方向ともいう)に延びる金属チューブ3は、先端部31側(図2中、下方)が閉塞した有底筒状をなしており、この先端部31の内側に本実施例のサーミスタ素子2を収納してなる。この金属チューブ3は、予め熱処理が施されており、その外側面及び内側面が酸化されて酸化皮膜に覆われている。金属チューブ3の内側でサーミスタ素子2の周囲には、セメント10が充填されて、サーミスタ素子2を固定している。金属チューブ3の後端32は開放されており、この後端32部分は、フランジ部材4の内側に圧入、挿通されている。
フランジ部材4は、軸線方向に延びる筒状の鞘部42と、この鞘部42の先端側(図2中、下方)に位置し、この鞘部42よりも大きい外径を有して径方向外側に突出するフランジ部41とを備えている。フランジ部41の先端側には、排気管の取付部とシールを行うテーパ状の座面45を有している。また、鞘部42は、先端側に位置する先端側鞘部44とこれよりも径小の後端側鞘部43とからなる二段形状をなしている。
そして、フランジ部材4内に圧入された金属チューブ3は、その外周面が後端側鞘部43と周方向全周に亘り部位L1でレーザー溶接されることで、フランジ4に強固に固定されている。また、フランジ部材4の先端側鞘部44には、概略円筒形状の金属カバー部材6が圧入され、周方向全周に亘り部位L2でレーザ溶接されて、気密状態で接合されている。
また、フランジ部材4及び金属カバー部材6の周囲には、六角ナット部51およびネジ部52を有する取り付け部材5が回動自在に嵌挿されている。本実施例の温度センサ100は、排気管(図示しない)の取付部にフランジ部材4のフランジ部41の座面45を当接させ、ナット5を取付部に螺合させることにより、排気管に固定する。
金属チューブ3、フランジ部材4および金属カバー部材6の内側には、一対の芯線7を内包するシース部材8が配置されている。このシース部材8は、金属製の外筒と、導電性の一対の芯線7と、外筒内に充填され外筒と各芯線7のと間を絶縁しつつ芯線7を保持する絶縁粉末とから構成されている。なお、このシース8の外筒にも熱処理により、予め酸化皮膜が形成されている。金属チューブ3の内部においてシース部材8の外筒の先端から(図中下方に)突出する芯線7には、サーミスタ素子2の電極線2a,2bがレーザ溶接により接続されている。
一方、シース部材8から後端側に突き出した芯線7は、加締め端子11を介して一対のリード線12に接続されている。芯線7同士及び加締め端子11同士は、絶縁チューブ15により互いに絶縁されている。
この一対のリード線12は、金属カバー部材6の後端部内側に挿入された弾性シール部材13のリード線挿通孔を通って、金属カバー部材6の内側から外部に向かって引き出され、外部回路(図示しない。例えば、ECU)と接続するためのコネクタ21の端子部材に接続されている。これにより、サーミスタ素子2の出力は、シース部材8の芯線7からリード線12、コネクタ21を介して図示しない外部回路に取り出され、排気ガスの温度が検出される。リード線12には、飛石等の外力から保護するためのガラス編組チューブ20が被せられており、このガラス編組チューブ20は、自身の先端部が弾性シール部材13と共に金属カバー部材6に加締め固定されている。
このような構造を有する温度センサ100では、前述の導電性酸化物焼結体1からなるサーミスタ素子2を用いているので、自動車エンジンの排気ガスの温度について、−40℃の低温下から900℃の高温までの広い領域に亘り、適切に温度を測定することができる温度センサとなる。
(実施例9)
ついで、Nd23,SrCO3,Fe23,Al23,Cr23(全て純度99%以上の市販品)を用いて、化学式(組成式)NdaSrbFecAldCreO3としたときのa,b,c,d,eが、表2の実施例9に示すモル数となる導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2について、B(-40〜900)の測定結果を表2に示す。
なお、実施例9に示す組成を有する導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2も、原料が異なる以外は、前述した実施例1等と同様にして作成する。また、B(-40〜900)の測定方法も同様である。
Figure 2006315946
この表2によれば、実施例9の導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2でも、同様に、B定数を、B(-40〜900)=2000〜3000K、具体的には、B(-40〜900)=2740Kにすることができることが判る。従って、このような導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2では、−40℃の低温下から900℃の高温までの広い範囲にわたり、適切な抵抗値を有し、適切に温度測定が可能となる。
なお、実施例9について、温度変化換算値CTの測定結果を明示していないが、温度変化換算値DTについては、DT=−10degとなり、前述の目安である±10deg以内となっている。このことから、本実施例9の焼結体1(サーミスタ素子2)も熱履歴に対する抵抗変化が小さく、実用上問題なく使用可能な焼結体(サーミスタ素子)であることが判る。
(実施例10,11)
さらに、Y23,SrCO3,CaCO3,MnO2,Al23,Cr23(全て純度99%以上の市販品を用いた。)を用いて、化学式(組成式)YaSrb1Cab2MncAldCreO3としたときのa,b(=b1+b2),c,d,eが、表3の実施例10,11に示すモル数となる導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2について、B(-40〜900)、及び温度変化換算値CTの測定結果を表3に示す。
なお、実施例10,11に示す組成を有する導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2も、原料が異なる以外は、前述した実施例1等と同様にして作成する。また、B(-40〜900)及び温度変化換算値CTの測定方法も前述と同様である。
Figure 2006315946
この表3によれば、実施例10,11の導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2でも、同様に、B定数を、B(-40〜900)=2000〜3000K、具体的には、B(-40〜900)=2913K(実施例10)、あるいは2814K(実施例11)にすることができることが判る。従って、このような導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2では、−40℃の低温下から900℃の高温までの広い範囲にわたり、適切な抵抗値を有し、適切に温度測定が可能となる。
さらに、実施例10の焼結体(サーミスタ素子)は、温度変化換算値CT=±5degであり、実施例3と同等の良好な温度特性の高温耐久性を有していることが判る。同様に温度変化換算値DTもDT=±0degという良好な値となった。
なお、具体的な温度変化換算値CTの測定結果を明示していないが、温度変化換算値DTについては、DT=±0degであり、実施例11の焼結体1(サーミスタ素子2)も、実施例10と同様熱履歴に対する抵抗変化が小さく、実用上問題なく使用可能な焼結体(サーミスタ素子)であることが判る。
(実施例12〜14)
さらに、Y23,SrCO3,MgO,MnO2,Al23,Cr23(全て純度99%以上の市販品を用いた。)を用いて、化学式(組成式)YaSrb1Mgb2MncAldCreO3としたときのa,b(=b1+b2),c,d,eが、表4の実施例12〜14に示すモル数となる導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2について、B(-40〜900)の測定結果を、表4に示す。
なお、実施例12〜14に示す組成を有する導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2も、原料が異なる以外は、前述した実施例1等と同様にして作成する。また、B(-40〜900)の測定方法も前述と同様である。
Figure 2006315946
この表4によれば、実施例12〜14の導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2でも、同様に、B定数を、B(-40〜900)=2000〜3000K、具体的には、B(-40〜900)=2950K(実施例12)、2920K(実施例13)、あるいは2688K(実施例14)にすることができることが判る。従って、このような導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2では、−40℃の低温下から900℃の高温までの広い範囲にわたり、適切な抵抗値を有し、適切に温度測定が可能となる。
なお、実施例12〜14では、具体的な温度変化換算値CTの測定結果を明示していないが、温度変化換算値DTについては、実施例12,13ではDT=+10degと、また実施例14ではDT=+8degになり、前述の目安である±10deg以内となっている。このことから、本実施例12〜14の焼結体1(サーミスタ素子2)も熱履歴に対する抵抗変化が小さく、実用上問題なく使用可能な焼結体(サーミスタ素子)であることが判る。
(実施例15〜17)
さらに、Y23,Yb23,SrCO3,MnO2,Al23,Cr23(全て純度99%以上の市販品を用いた。)を用いて、化学式(組成式)Ya1Yba2SrbMncAldCreO3としたときのa(=a1+a2),b,c,d,eが、表5の実施例15〜17に示すモル数となる導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2について、B(-40〜900)の測定結果を、表5に示す。
なお、実施例15〜17に示す組成を有する導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2も、原料が異なる以外は、前述した実施例1等と同様にして作成する。また、B(-40〜900)の測定方法も前述と同様である。
Figure 2006315946
この表5によれば、実施例15〜17の導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2でも、同様に、B定数を、B(-40〜900)=2000〜3000K、具体的には、B(-40〜900)=2734K(実施例15)、2401K(実施例16)、あるいは2438K(実施例17)にすることができることが判る。従って、このような導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2では、−40℃の低温下から900℃の高温までの広い範囲にわたり、適切な抵抗値を有し、適切に温度測定が可能となる。
なお、実施例15〜17では、具体的な温度変化換算値CTの測定結果を明示していないが、温度変化換算値DTについては、実施例15ではDT=±0に、実施例16ではDT=+5degに、また実施例17ではDT=+8degになり、前述の目安である±10deg以内となっている。このことから、本実施例15〜17の焼結体1(サーミスタ素子2)も熱履歴に対する抵抗変化が小さく、実用上問題なく使用可能な焼結体(サーミスタ素子)であることが判る。
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施例9〜17に係るサーミスタ素子2についても、温度センサ100(図2参照)に適用することができ、これにより、自動車エンジンの排気ガスの温度について、−40℃の低温下から900℃の高温までの広い領域に亘り、適切に温度を測定することができる温度センサとなしうる。
また、導電性酸化物焼結体(サーミスタ素子)の製造において、原料粉末としては、各実施例において例示した各元素を含む化合物の粉末を使用することができる。そのほか、酸化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩等の化合物を用いることができる。なお、特に酸化物、炭酸塩を用いるのが好ましい。
また、導電性酸化物焼結体の焼結性、B定数、温度特性の高温耐久性など、導電性酸化物焼結体、サーミスタ素子、あるいは温度センサに要求されると特性を損なわない範囲で、導電性酸化物焼結体に、Na,K,Ga,Si,C,Cl,S等の他の成分を含有していてもよい。
本実施例に係るサーミスタ素子の形状を示す説明図である。 図1のサーミスタ素子を用いた温度センサの構造を示す部分破断断面図である。
符号の説明
1 導電性酸化物焼結体
2 サーミスタ素子
2a,2b 電極線
100 温度センサ

Claims (8)

  1. Laを除く3A族元素のうち少なくとも1種の元素をM1とし、
    2A族元素のうち少なくとも1種の元素をM2とし、
    Crを除く4A,5A,6A,7A及び8族元素のうち少なくとも1種の元素をM3としたとき、
    組成式M1aM2bM3cAldCreOfで表記される導電性酸化物焼結体であって、
    a,b,c,d,e,fが下記条件式を満たす導電性酸化物焼結体。
    0.600≦a≦1.000
    0≦b≦0.400
    0.150≦c<0.600
    0.400≦d≦0.800
    0<e≦0.050
    0<e/(c+e)≦0.18
    2.80≦f≦3.30
  2. 請求項1に記載の導電性酸化物焼結体であって、
    前記a,bが下記条件式を満たす導電性酸化物焼結体。
    0.600≦a<1.000
    0<b≦0.400
  3. 請求項2に記載の導電性酸化物焼結体であって、
    a,b,c,d,e,fが下記条件式を満たす導電性酸化物焼結体。
    0.820≦a≦0.950
    0.050≦b≦0.180
    0.181≦c≦0.585
    0.410≦d≦0.790
    0.005≦e≦0.050
    0<e/(c+e)≦0.18
    2.91≦f≦3.27
  4. 請求項2または請求項3に記載の導電性酸化物焼結体であって、
    前記元素M1がY,Nd,Ybから選ばれる1種またはそれ以上の元素であり、
    前記元素M2がMg,Ca,Srから選ばれる1種またはそれ以上の元素であり、
    前記元素M3がMn,Feから選ばれる1種またはそれ以上の元素である
    導電性酸化物焼結体。
  5. 請求項2または請求項3に記載の導電性酸化物焼結体であって、
    前記元素M1がYであり、
    前記元素M2がSrであり、
    前記M3がMnである
    導電性酸化物焼結体。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電性酸化物焼結体であって、
    ペロブスカイト型結晶構造を有する
    導電性酸化物焼結体。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の導電性酸化物焼結体を用いてなるサーミスタ素子。
  8. 請求項7に記載のサーミスタ素子を用いてなる温度センサ。
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