JP2006315946A - 導電性酸化物焼結体、これを用いたサーミスタ素子、及びこれを用いた温度センサ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 サーミスタ素子2をなす導電性酸化物焼結体1は、Laを除く3A族元素のうち少なくとも1種の元素をM1とし、2A族元素のうち少なくとも1種の元素をM2とし、Crを除く4A,5A,6A,7A及び8族元素のうち少なくとも1種の元素をM3としたとき、その組成式が、例えば、M1aM2bM3cAldCreOfで表され、a,b,c,d,e,fが、0.600≦a≦1.000,0≦b≦0.400,0.150≦c<0.600,0.400≦d≦0.800,0<e≦0.050,0<e/(c+e)≦0.18,2.80≦f≦3.30を満足する。
【選択図】図1
Description
このうち、特許文献1には、300℃から1000℃の範囲にわたって温度検知ができるサーミスタ素子として、Sr,Y,Mn,Al,Fe及びOを含有し、ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物の各結晶相を含有し、Sr−Al系酸化物及びSr−Fe系酸化物の少なくとも一方の結晶相を含有するサーミスタ素子用焼結体が開示されている。
さらに、特許文献2には、室温から1000℃の範囲にわたって適切な比抵抗値を有する導電性酸化物焼結体として、M1aM2bM3cM4dO3で表され、a,b,c,dが所定の条件式を満足する導電性酸化物焼結体が開示されている。
その一方、OBDシステム(On-Board Diagnostic systems)などにおける温度センサの故障(断線)検知のため、エンジンの始動時やキーオン時など低温下でもその温度を検知可能とすることが望まれている。この場合、特に寒冷地では、始動時の温度が氷点下となる場合もあるため、−40℃でも測温可能なサーミスタ素子が望まれている。
このため、これらの焼結体を用いたサーミスタ素子あるいはサーミスタ素子では、温度勾配定数(B定数)が大きく、−40℃の低温下では、サーミスタ素子の抵抗値が高くなりすぎて、その抵抗値測定が困難となるために温度計測が困難となる。
0.600≦a≦1.000
0≦b≦0.400
0.150≦c<0.600
0.400≦d≦0.800
0<e≦0.050
0<e/(c+e)≦0.18
2.80≦f≦3.30
0.600≦a<1.000
0<b≦0.400
0.820≦a≦0.950
0.050≦b≦0.180
0.181≦c≦0.585
0.410≦d≦0.790
0.005≦e≦0.050
0<e/(c+e)≦0.18
2.91≦f≦3.27
またa〜fが上述の条件式を満たすこの導電性酸化物焼結体では、a〜fをある数値に特定した導電性焼結体(これを用いたサーミスタ素子)を複数製造する場合にも、各導電性焼結体(サーミスタ素子)の個体間のばらつき、焼成ロット間のばらつきを一層小さくすることができる。
0.850≦b≦0.940
0.060≦b≦0.150
0.181≦c≦0.545
0.450≦d≦0.780
0.005≦e≦0.050
0<e/(c+e)≦0.18
2.92≦f≦3.25
このような結晶構造を有する場合、Aサイトを占める元素M1,M2はイオン半径が近接しており、元素同士で互いに容易に置換できるものであり、これらの元素からなる副生成物の生成が少なく、置換された組成で安定に存在する。同様に、Bサイトを占める元素M3,Al,Crはイオン半径が近接しており、元素同士で互いに容易に置換できるものであり、これらの元素からなる副生成物の生成が少なく、置換された組成で安定に存在する。このため、広い組成範囲で連続的に組成比を変えて、導電性酸化物焼結体の比抵抗値やその温度勾配定数(B定数)を調整することができる。
まず、実施例1〜8及び比較例1,2にかかる導電性酸化物焼結体1及びサーミスタ素子2の製造について説明する。原料粉末として、Y2O3,SrCO3,MnO2,Al2O3,Cr2O3(全て純度99%以上の市販品を用いた。)を用いて、化学式(組成式)YaSrbMncAldCreO3としたときのa,b,c,d,eが、表1に示すモル数となるように、それぞれ秤量し、これらの原料粉末を湿式混合して乾燥することにより原料粉末混合物を調整した。次いで、この原料粉末混合物を大気雰囲気下1400℃で2Hr仮焼し、平均粒径1〜2μmの仮焼粉末を得た。その後、樹脂ポットと高純度Al2O3玉石とを用い、エタノールを分散媒として、湿式混合粉砕を行った。
なお、使用しうるバインダーとしては、上述のポリビニルブチラールに特に限定されず、例えばポリビニルアルコール、アクリル系バインダー等が挙げられる。バインダーの配合量は上述の仮焼粉末全量に対し、通常5〜20重量部、好ましくは10〜20重量部とする。
また、バインダーと混合するにあたり、サーミスタ合成粉末の平均粒子径は2.0μm以下としておくのが好ましく、これによって均一に混合することができる。
サーミスタ素子2の各寸法は、一辺1.15mmの六角形状で、厚み1.00mm、電極線2a,2bの径φ0.3mm、電極中心間距離0.74mm(ギャップ0.44mm)、電極挿入量1.10mmである。
B(-40〜900)=ln[R(900)/R(-40)]/[1/T(900)−1/T(-40)] …(1)
なお、R(-40):−40℃におけるサーミスタ素子の抵抗値(kΩ)、R(900):900℃におけるサーミスタ素子の抵抗値(kΩ)である。
CT(-40)=[(B(-40〜900)×T(-40))/[ln(R'(-40)/R(-40))×T(-40)+B(-40〜900)]]−T(-40) …(2)
CT(900)=[(B(-40〜900)×T(900))/[ln(R'(900)/R(900))×T(900)+B(-40〜900)]]−T(900) …(3)
なお、温度センサ100のうち、金属チューブ3の内周面及びシース部材8を構成する金属製の外筒には、予め酸化皮膜が形成されている。これにより、この温度センサ100のサーミスタ素子2近傍を高温とした場合でも、金属チューブ3やシース8の外筒の酸化が抑制され、この金属チューブ3内の雰囲気が還元雰囲気となることが防止されている。従って、センサ素子2が還元されて、その抵抗値が変化することが防止されている。
その上で、−40℃における抵抗値R1(-40)と抵抗値R2(-40)との比較から、繰り返し温度変化による抵抗変化の温度変化換算値DT(-40)(単位:deg)を、下記式(4)により算出した。また、900℃における抵抗値R1(900)と抵抗値R2(900)との比較からも、同様の式(5)により温度変化換算値DT(900)を算出した。その上で、温度変化換算値DT(-40)とDT(900)うち大きい方を、温度変化換算値DT(deg)として表1に示した。
DT(-40)=[(B(-40〜900)×T(-40))/[ln(R2(-40)/R1(-40))×T(-40)+B(-40〜900)]]−T(-40) …(4)
DT(900)=[(B(-40〜900)×T(900))/[ln(R2(900)/R1(900))×T(900)+B(-40〜900)]]−T(900) …(5)
これらの結果を、表1に示す。
値fについては、表1に記載していないが、蛍光X線分析を用いたY,Sr,Mn,Al,Cr,Oの各元素の組成比から、f=2.80〜3.30の範囲内であることを確認している。これは、後述する実施例9〜17における導電性酸化物焼結体1(サーミスタ素子2)についても同様である。
0.600≦a≦1.000
0≦b≦0.400
0.150≦c<0.600
0.400≦d≦0.800
0<e≦0.050
0<e/(c+e)≦0.18
2.80≦f≦3.30
即ち、実施例1〜7に示すように、a<1.000,b>0とするのが好ましい。Sr(2A族の元素M2)を含まない(b=0)実施例8にかかる焼結体1では、この焼結体1(サーミスタ素子2)を多数製造すると、各個体間の特性バラツキや焼成ロット間の特性ばらつきが大きくなり易い傾向がある。これに比して、Y(3A族の元素M1)のほかにSr(2A族の元素M2)を含む、例えば実施例1〜7の焼結体1では、相対的に、個体間の特性バラツキや焼成ロット間の特性ばらつきが小さくできる。
また、比較例としては示していないが、組成によっては(例えば、Alのモル比を示すdが上述の条件式の範囲(d≧0.400)を下回る場合などには)、B定数が2000Kを下回ることもある。この場合には、サーミスタ素子の抵抗変化が小さくなりすぎて、−40℃〜900℃の温度範囲全域に亘っての抵抗測定は可能であるが、抵抗値の測定精度が低下することにより、適切な温度測定が困難となる。
なお、この表1における比較例2は、特許文献2において実施例20として示されているものに相当する。
なお、他の実施例1,2,4〜8の焼結体については、温度変化換算値CTの測定結果を明示していない。
この温度変化換算値DTついても、当該焼結体1(サーミスタ素子2)が熱履歴に対する抵抗変化が少ない特性を有するものか否かを判断する目安が、温度変化換算値DTが±10degであると考えられる。各実施例1〜8の焼結体1(サーミスタ素子2)は、この目安の範囲に含まれており、本実施例1〜8のサーミスタ素子2は、いずれも熱履歴に対する抵抗変化が小さく、実用上問題なく使用可能な焼結体(サーミスタ素子)であることが判る。特に、本実施例1〜7では、いずれも温度変化換算値DTが±0degとなったことから、特に本実施例1〜7で用いた元素及び組成比において、良好な熱履歴に対する抵抗変化、温度特性の高温耐久性を有していることが判る。
一方、シース部材8から後端側に突き出した芯線7は、加締め端子11を介して一対のリード線12に接続されている。芯線7同士及び加締め端子11同士は、絶縁チューブ15により互いに絶縁されている。
ついで、Nd2O3,SrCO3,Fe2O3,Al2O3,Cr2O3(全て純度99%以上の市販品)を用いて、化学式(組成式)NdaSrbFecAldCreO3としたときのa,b,c,d,eが、表2の実施例9に示すモル数となる導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2について、B(-40〜900)の測定結果を表2に示す。
なお、実施例9に示す組成を有する導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2も、原料が異なる以外は、前述した実施例1等と同様にして作成する。また、B(-40〜900)の測定方法も同様である。
なお、実施例9について、温度変化換算値CTの測定結果を明示していないが、温度変化換算値DTについては、DT=−10degとなり、前述の目安である±10deg以内となっている。このことから、本実施例9の焼結体1(サーミスタ素子2)も熱履歴に対する抵抗変化が小さく、実用上問題なく使用可能な焼結体(サーミスタ素子)であることが判る。
さらに、Y2O3,SrCO3,CaCO3,MnO2,Al2O3,Cr2O3(全て純度99%以上の市販品を用いた。)を用いて、化学式(組成式)YaSrb1Cab2MncAldCreO3としたときのa,b(=b1+b2),c,d,eが、表3の実施例10,11に示すモル数となる導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2について、B(-40〜900)、及び温度変化換算値CTの測定結果を表3に示す。
なお、実施例10,11に示す組成を有する導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2も、原料が異なる以外は、前述した実施例1等と同様にして作成する。また、B(-40〜900)及び温度変化換算値CTの測定方法も前述と同様である。
なお、具体的な温度変化換算値CTの測定結果を明示していないが、温度変化換算値DTについては、DT=±0degであり、実施例11の焼結体1(サーミスタ素子2)も、実施例10と同様熱履歴に対する抵抗変化が小さく、実用上問題なく使用可能な焼結体(サーミスタ素子)であることが判る。
さらに、Y2O3,SrCO3,MgO,MnO2,Al2O3,Cr2O3(全て純度99%以上の市販品を用いた。)を用いて、化学式(組成式)YaSrb1Mgb2MncAldCreO3としたときのa,b(=b1+b2),c,d,eが、表4の実施例12〜14に示すモル数となる導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2について、B(-40〜900)の測定結果を、表4に示す。
なお、実施例12〜14に示す組成を有する導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2も、原料が異なる以外は、前述した実施例1等と同様にして作成する。また、B(-40〜900)の測定方法も前述と同様である。
さらに、Y2O3,Yb2O3,SrCO3,MnO2,Al2O3,Cr2O3(全て純度99%以上の市販品を用いた。)を用いて、化学式(組成式)Ya1Yba2SrbMncAldCreO3としたときのa(=a1+a2),b,c,d,eが、表5の実施例15〜17に示すモル数となる導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2について、B(-40〜900)の測定結果を、表5に示す。
なお、実施例15〜17に示す組成を有する導電性酸化物焼結体1を用いたサーミスタ素子2も、原料が異なる以外は、前述した実施例1等と同様にして作成する。また、B(-40〜900)の測定方法も前述と同様である。
例えば、実施例9〜17に係るサーミスタ素子2についても、温度センサ100(図2参照)に適用することができ、これにより、自動車エンジンの排気ガスの温度について、−40℃の低温下から900℃の高温までの広い領域に亘り、適切に温度を測定することができる温度センサとなしうる。
また、導電性酸化物焼結体(サーミスタ素子)の製造において、原料粉末としては、各実施例において例示した各元素を含む化合物の粉末を使用することができる。そのほか、酸化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩等の化合物を用いることができる。なお、特に酸化物、炭酸塩を用いるのが好ましい。
2 サーミスタ素子
2a,2b 電極線
100 温度センサ
Claims (8)
- Laを除く3A族元素のうち少なくとも1種の元素をM1とし、
2A族元素のうち少なくとも1種の元素をM2とし、
Crを除く4A,5A,6A,7A及び8族元素のうち少なくとも1種の元素をM3としたとき、
組成式M1aM2bM3cAldCreOfで表記される導電性酸化物焼結体であって、
a,b,c,d,e,fが下記条件式を満たす導電性酸化物焼結体。
0.600≦a≦1.000
0≦b≦0.400
0.150≦c<0.600
0.400≦d≦0.800
0<e≦0.050
0<e/(c+e)≦0.18
2.80≦f≦3.30 - 請求項1に記載の導電性酸化物焼結体であって、
前記a,bが下記条件式を満たす導電性酸化物焼結体。
0.600≦a<1.000
0<b≦0.400 - 請求項2に記載の導電性酸化物焼結体であって、
a,b,c,d,e,fが下記条件式を満たす導電性酸化物焼結体。
0.820≦a≦0.950
0.050≦b≦0.180
0.181≦c≦0.585
0.410≦d≦0.790
0.005≦e≦0.050
0<e/(c+e)≦0.18
2.91≦f≦3.27 - 請求項2または請求項3に記載の導電性酸化物焼結体であって、
前記元素M1がY,Nd,Ybから選ばれる1種またはそれ以上の元素であり、
前記元素M2がMg,Ca,Srから選ばれる1種またはそれ以上の元素であり、
前記元素M3がMn,Feから選ばれる1種またはそれ以上の元素である
導電性酸化物焼結体。 - 請求項2または請求項3に記載の導電性酸化物焼結体であって、
前記元素M1がYであり、
前記元素M2がSrであり、
前記M3がMnである
導電性酸化物焼結体。 - 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の導電性酸化物焼結体であって、
ペロブスカイト型結晶構造を有する
導電性酸化物焼結体。 - 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の導電性酸化物焼結体を用いてなるサーミスタ素子。
- 請求項7に記載のサーミスタ素子を用いてなる温度センサ。
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