JP5140450B2 - サーミスタ素子及び温度センサ - Google Patents

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この発明は、サーミスタ素子及び温度センサに関し、更に詳しくは、温度に応じてその抵抗値が変化し、特に還元雰囲気下で例えば600℃を超える高温域であっても好適に温度測定をすることのできるサーミスタ素子、及びこのようなサーミスタ素子を用いた温度センサに関する。
従来から、比抵抗値が温度に応じて変化する導電性酸化物からなるサーミスタ部を用いて温度測定を行うサーミスタ素子、さらにはこのサーミスタ素子を用いた温度センサが知られている。
サーミスタ素子又は温度センサを用いて、自動車エンジンなどの内燃機関から排出される排ガスの温度を測定することができる。DPF(Diesel Particulate Filter)及びNOx還元触媒を保護するために、サーミスタ素子に対して例えば900℃付近の高温域における温度検知が要望されている。さらに、OBD(On Board Diagnosis)すなわち車載式故障診断システムに対応するためにも、サーミスタ素子に対して低温での温度検知も要望されている。例えば、一個のサーミスタ素子で、低温域から900℃等の高温域までの広い温度域における温度の検知をすることが、要望されることもある。なお、本発明を含めてこの技術分野においては「低温域」或いは「低温度領域」は、地球上における極地或いは極北地域における気象の温度を意味する。
また、自動車等に使用される温度センサでは、サーミスタ素子に排ガス中に存在する煤が堆積するのを防止し、また、水滴が付着するのを防止する等のために、温度センサにおける検知部に配置されるサーミスタ素子をステンレス合金等からなる金属チューブで覆う構造が採用されることもある。
しかるに、この金属チューブは600℃を超えると熱酸化されやすくなる。例えば900℃程度の高温になると、金属チューブの内表面が酸化されることにより金属チューブ内が還元雰囲気になる。そうすると、金属チューブ内に挿入配置されているサーミスタ素子を形成する酸化物が還元されてしまい、その結果としてサーミスタ素子における抵抗特性が変化してしまう。
このような問題を解消するために、金属チューブに予め熱処理をしておき、その内表面に金属酸化物からなる被膜を形成し、これによって高温下での熱酸化を抑制し、サーミスタ素子が還元されてしまうことによる抵抗特性の変化を防止している。
また、温度のみならず、温度センサが例えば自動車等に装備されていると、振動により金属酸化物の被膜が破れ、或いはその被膜にもともと欠陥が生じていると、そのような破損部分或いは被膜の欠陥部分において金属チューブが熱酸化されてしまい、ひいてはサーミスタ素子が還元されてその抵抗特性が変化してしまう。
このような問題点を解消するための発明が、特許文献1で提案されている。
特許文献1に記載の発明は、「サーミスタ材料からなるサーミスタ部(13)と、このサーミスタ部(13)の表面に形成された耐還元性組成物からなる耐還元性被膜(14)とを有することを特徴とするサーミスタ素子」である(特許文献1の請求項1参照)。
この特許文献1には、Y(Cr,Mn)O・Y、Y(Cr,Mn)O・Al等、ペロブスカイト相と金属酸化物相とを有するサーミスタ部と、その表面を、Y、Al、SiO、YAl12、3Al・2SiO等の耐還元性組成物で被覆した耐還元性被膜とを有するサーミスタ素子が開示されている(特許文献1の段落番号0021、0022等参照)
しかしながら、前記耐還元性被膜を形成するためには、例えば1100〜1300℃(特許文献1の段落番号0044参照)、1200℃以上(特許文献1の段落番号0049、0068参照)もの高温での焼成が必要である。焼成温度が前記高温度であると、サーミスタ部とそれを被覆する被覆層とが反応してしまうので、サーミスタ素子の抵抗値等の特性が変動する。その結果として、設計通りの抵抗値特性を有していないサーミスタ部を有する温度センサで温度測定をすることになって、温度センサの信頼性が失われる。
特開平11−251109号公報
前記特許文献1に記載されたサーミスタ素子は、セラミック膜による被覆層を形成したサーミスタ素子である。このようなサーミスタ素子とは別に、ガラス封止型のサーミスタ素子がある。
特許文献2に記載のガラス封止型のサーミスタ素子は、「Y,Cr,Mn,Caから組成された平板状金属酸化物焼結体の上下両面に電極を形成し、該両電極にそれぞれリード線を接続してなるサーミスタ素子に対して、前記サーミスタ素子と前記リード線の前記サーミスタ素子接続端側部分とを、SiO2 ,CaO,SrO,BaO,Al23 およびSnO2 からなる組成を有し、その線膨張係数が前記金属酸化物焼結体の線膨張係数と同等またはこれよりも小さい封止ガラスによって溶融封止したことを特徴とするワイドレンジ型サーミスタ」である。この特許文献2に記載のワイドレンジ型サーミスタは、「Y,Cr,Mn,Caから組成された平板状金属酸化物焼結体の上下両面に電極を形成し、該両電極にそれぞれリード線を接続してなるサーミスタ素子に対して、前記サーミスタ素子と前記リード線の前記サーミスタ素子接続端側部分とを、SiO2 ,CaO,SrO,BaO,Al23 およびSnO2 からなる組成を有し、その線膨張係数が前記金属酸化物焼結体の線膨張係数と同等またはこれよりも小さい封止ガラスによって溶融封止したことを特徴とする。」(特許文献2の請求項1参照)。
特許文献2に記載のワイドレンジ型サーミスタは、アニール処理をしない場合には、使用可能な最高温度が700℃である(特許文献2の段落番号0026参照)。700℃以上の使用温度に耐えるワイドレンジ型サーミスタとするには、例えば「840℃で10時間保持した後、700℃まで100時間かけて冷却するアニール処理」(特許文献2の段落番号0026参照)が必要になる。
特開2005−294653号公報
この発明が解決しようとする課題は、還元雰囲気下で600℃を超える高温度領域であっても、正確に温度測定をすることができ、特性変動が極力抑制されたサーミスタ素子を提供し、また、このようなサーミスタ素子を用いた温度センサを提供することである。
前記課題を解決するための手段として、
請求項1に記載の手段は、
サーミスタ組成物からなるサーミスタ部と、上記サーミスタ部を被覆する被覆層とを備えるサーミスタ素子であって、
前記サーミスタ部は、導電性を有し、ペロブスカイト型結晶構造を有するペロブスカイト相を含み、
前記被覆層は、SiO、CaO、及びMgOを、SiOについては前記被覆層の合計質量に対して40〜65質量%、CaOについては前記被覆層の合計質量に対して15〜40質量%、MgOについては前記被覆層の合計質量に対して5〜30質量%の範囲の中から、SiO、CaO、及びMgOの合計が90質量%〜100質量%になるように、選択される含有割合で含有してなり、Bを実質的に無含有である結晶化ガラスであり、電気絶縁体であるディオプサイドの析出結晶を有して成ることを特徴とするサーミスタ素子であり、
請求項に記載の手段は、
前記サーミスタ部は、ABO(但し、AはSr及び/又はYを含み、BはAlを含む。)で示されるペロブスカイト相を含む前記請求項に記載のサーミスタ素子であり、
請求項に記載の手段は、
前記ABOにおけるBが更にCr、Mn及びFeの内の少なくとも一種の金属を含む前記請求項に記載のサーミスタ素子であり、
請求項に記載の手段は、
前記サーミスタ部は、このサーミスタ部に含まれる前記ペロブスカイト相よりも低導電性であって、前記ペロブスカイト相を形成する金属元素から選択される少なくとも一種の金属元素をMeとする場合に、組成式MeOxで表記される金属酸化物の少なくとも一種を含有する金属酸化物相を含む前記請求項2又は3に記載のサーミスタ素子であり、
請求項に記載の手段は、
前記金属酸化物相に含まれる金属酸化物がSrAlである前記請求項に記載のサーミスタ素子である。
請求項に記載の手段は、
前記請求項1〜5のいずれか一項に記載のサーミスタ素子を有する温度センサであり、
求項に記載の手段は、
有底筒状の金属管を有し、前記請求項に記載のサーミスタ素子における前記被覆層が前記金属管の内周面に非接触の状態で、前記サーミスタ素子が前記金属管の内部に収容されてなる前記請求項に記載の温度センサである。
この発明に係るサーミスタ素子は、サーミスタ組成物からなるサーミスタ部を被覆する被覆層を備える。したがって、このサーミスタ素子を温度センサとして使用すると、例えばこのサーミスタ素子を収容する金属部材例えば金属管が高熱等により酸化されることにより、このサーミスタ素子の雰囲気が還元性雰囲気になったとしても、この発明における被覆層が存在し、サーミスタ部を保護するため、サーミスタ部が変質し難い。そのために、この発明に係るサーミスタ素子は、被覆層に被覆されているサーミスタ部を還元性雰囲気の影響を受け難くなる。
さらに具体的にいうと、この発明に係るサーミスタ素子は、その被覆層が特定組成を有する結晶化ガラスである。したがって、このサーミスタ素子を製造するに際し、比較的に低温であっても緻密な結晶化ガラスが形成されることができる。例えば、焼き付け温度が1000℃以下の低温であっても結晶化ガラスからなる緻密な被覆層を形成することができるので、被覆層を形成する際に、サーミスタ部及び被覆層の組成変動が生じ難く、サーミスタ部の抵抗値及びその特性の変動が生じにくい。
また、この発明に係るサーミスタ素子における被覆層ではディオプサイドの結晶が析出しているので、この発明に係るサーミスタ素子が600℃以上の高温に長時間にわたって曝されても、被覆層の成分がサーミスタ部へ移動し難く、したがって、組成変動が少ない。したがって、この発明に係るサーミスタ素子は、高温領域においても、特性が安定している。
この発明に係るサーミスタ素子は、被覆層には実質的にBを含有していないので、サーミスタ部が長時間に亘って高温に曝されても、被覆層を形成する成分がサーミスタ部へ移動し難く、したがって、サーミスタ部における組成変動が生じにくい。そうするとこの発明に係るサーミスタ素子は、抵抗に関する特性が安定である。
この発明に係るサーミスタ素子は、そのサーミスタ部に含まれるペロブスカイト相を、一般式ABOで示すことができる。そして、ペロブスカイト相を一般式ABOで示す場合に、結晶格子中のAサイトにSr及び/又はYを含み、BサイトにAlを含むペロブスカイト相を有するサーミスタ部を備えたサーミスタ素子は、さらに好適に、低温領域から600℃を超える高温度領域までに亘る広い温度範囲における温度検知をすることができる。
さらに、この発明に係るサーミスタ素子は、そのサーミスタ部に含まれるペロブスカイト相を一般式ABOで示す場合に、結晶格子中のAサイトにSr及び/又はYを含み、BサイトにAlとCr、Mn、及びFeの内の少なくとも一種を含むサーミスタ部を有すると、さらに好適に且つ長期間安定して、低温領域から600℃を超える高温度領域までに亘る広い温度範囲における温度検知をすることができる。
この発明に係るサーミスタ素子は、そのサーミスタ部がそれに含まれる導電性ペロブスカイト相よりも低導電性の金属酸化物(MeOx)を含有する金属酸化物相を有すると、その金属酸化物の含有量を調整することにより、検知対象とする温度範囲における温度勾配係数(B定数)を維持しつつ、サーミスタ素子の抵抗値を所望の値にシフトさせることができる。
前記金属酸化物相に含まれる金属酸化物がSrAlであると、このサーミスタ素子を高温下で使用する場合には、サーミスタ部におけるペロブスカイト相との反応が困難になるので、抵抗に関する特性が変動し難いサーミスタ素子となる。
上記のように優れた作用を有するサーミスタ素子を有する温度センサは、還元性雰囲気下で600℃を超える高温領域下に長時間に亘って曝されても、特性変動が抑制されているので正確な温度測定をすることができる。
故に、この発明によると、還元雰囲気下で600℃を超える高温度領域であっても、正確に温度測定をすることができ、特性変動が極力抑制されたサーミスタ素子を提供し、また、このようなサーミスタ素子を用いた温度センサを提供することができる。
また、この発明にかかる温度センサは、サーミスタ素子の被覆層が金属管の内周面に非接触となるように、サーミスタ素子を金属管内に収容しているので、被覆層が金属管の内周面に当接した状態で温度センサに振動がかかった際に、被覆層に割れ等の破損が生じるのを確実に防止することができ、長期間にわたって被覆層が奏する効果を持続させ得る温度センサとすることができる。
図1及び図2に示されるように、この発明に係る、一例としてのサーミスタ素子2は電極線2a,2bを有し、この電極線2a,2bはそれらの一端をサーミスタ部1aに埋設し、サーミスタ部1aの表面は被覆層1bで被覆されている。
前記サーミスタ部2は、導電性であり、ペロブスカイト型結晶構造を有するペロブスカイト相を含有する。好適なペロブスカイト相としては、組成式(M1aM2)(M3M4)Oeの値a、b、c、d、eが、下記の条件式を満たす導電性のペロブスカイト相を挙げることができる。
0≦a≦0.400
0.600≦b≦1.000
0.200≦c≦0.600
0.400≦d≦0.800
2.80≦e≦3.30
前記組成式において、M1はペロブスカイト相のAサイトに位置する第2族元素のうち少なくとも1種の元素を示し、M2はペロブスカイト相のAサイトに位置する、Laを除く第3族元素のうち少なくとも1種の元素を示し、M3は第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族及び第12族元素のうち少なくとも1種の元素を示し、M4は第13族元素のうち少なくとも1種の元素を示す。なお、この発明において、「周期律表」は「無機化学命名法 −IUPAC1990年勧告−、G.J.LEIGH編、山崎一雄訳・著」に記載された周期律表に従う。なお、値eについては、蛍光X線分析を用いたM1、M2、M3、M4の各元素の組成比から、e=2.80〜3.30の範囲内にあるか否かを確認することができる。
この発明におけるサーミスタ部に含まれる更に好適なペロブスカイト相は、組成式SrFec1Mnc2Crc3Alで示すことができる。この組成式における値a、b、c1、c2、c3、d、eが、下記の条件式を満たす。なお、Fe、Mn、Crについてはそれらの少なくとも1種が含有されればよく、全ての元素が必須ではない。また、この発明におけるより一層好適なサーミスタ部は、前記組成式で示される導電性のペロブスカイト相と、このペロブスカイト相よりも導電性の低い金属酸化物相例えばSrAlとからなる。
0≦a≦0.400
0.600≦b≦1
0.200≦(c1+c2+c3)≦0.600
0≦c3/(c1+c2+c3)≦0.18
0.400≦d≦0.800
2.80≦e≦3.30
なお、値eについては、蛍光X線分析を用いたY、Sr、Fe、Mn、Al、Cr、Oの各元素の組成比と、後述する方法で算出した面積分率、または、粉末X線回折分析により同定した結晶相の存否及び存在比から、e=2.80〜3.30の範囲内にあるか否かを確認することができる。この発明においては、具体的には、ペロブスカイト相と金属酸化物相例えばSrAlの存在比とを特定し、各金属元素の量をペロブスカイト相と金属酸化物相とに振り分ける。ついで、金属酸化物相(SrAl24)に含まれるOの数が4であると定めた上で、つまり、SrAl24については、酸素の欠損はないとして、金属酸化物相に用いられているOの量を算出することで、ペロブスカイト相におけるOの数eを算出することができる。
また、サーミスタ部が上記ペロブスカイト相及び上記金属酸化物相のそれぞれを含む場合、当該サーミスタ部の断面積Sに対するペロブスカイト相の総面積PS占める割合(面積分率)については、サーミスタ素子の抵抗値の調整の観点から、0.20≦SP/S≦0.80とすることが好ましい。なお、ここでいう面積分率は、次のようにして算出することができる。まず、サーミスタ部又はサーミスタ部と同じ組成の焼結体を樹脂に埋め込み、3μmのダイヤペーストを用いたバフ研磨処理を行って断面を研磨した試料を作成する。その後、走査型電子顕微鏡(JEOL社製 商品名:JSM-6460LA)により、断面を倍率3000倍で写真撮影する。撮影した組織写真のうち、40μm×30μmの視野を画像解析装置にて解析し、視野(断面積S)に対するペロブスカイト相の総面積SPの占める割合(面積分率)SP/Sを求めることができる。
また、サーミスタ部を形成するペロブスカイト相は、一般式ABOで示すこともできる。前記ペロブスカイト相におけるAサイト及びBサイトを占める元素を適切に選択すると、このサーミスタ部は、適度の導電性を有し、低温度例えば−40℃〜600℃を超える高温度までの温度領域において温度を検知することができるようになる。この発明において好適なサーミスタ部を形成する好適なペロブスカイト相は、そのAサイトがSr及び/又はYを含み、BサイトはAlを含む。サーミスタ部がこのようなペロブスカイト型結晶構造を有するペロブスカイト相を含有すると、例えば−40℃から例えば1000℃までの温度領域において温度を検知することができる。更に好適なペロブスカイト相は、そのAサイトがSr及び/又はYを含み、BサイトはAlと、Cr、Mn及びFeから選択される少なくとも一種の元素を含む。BサイトにAlとその他の前記特定の元素とが存在するペロブスカイト型結晶構造を有するペロブスカイト相を含有するサーミスタ部を備える温度センサは、低温度領域例えば−40℃から高温度領域例えば1000℃までの広範囲な温度領域における温度の検知をすることができる。
この発明における好適なサーミスタ部は、組成式中のa、b、c、d、eが上記条件式を満たし、ペロブスカイト型結晶構造を有する導電性のペロブスカイト相と、上記ペロブスカイト相よりも導電性が低く、上記ペロブスカイト相を構成する金属元素から選択された少なくとも1種の金属元素をMeとしたとき、組成式MeOXで表記される結晶構造を有する少なくとも1種の金属酸化物相と、を含む導電性酸化物焼結体である。
この金属酸化物相は、サーミスタ部における前記導電性ペロブスカイト相に含まれる金属元素から選択される少なくとも一種の金属元素の酸化物(組成式MeO)を含有する。この金属元素は、サーミスタ部におけるペロブスカイト相に含まれる金属元素と同じ種類の金属元素である。金属酸化物相を形成する金属酸化物は、複酸化物であってもよい。金属酸化物相を形成する金属酸化物としては、例えばペロブスカイト相が(Y,Sr)(Mn,Al,Cr)Oで示されるときには組成式SrY、SrY、SrAl、YAlO、YAl12を挙げることができ、これらの中でもSrAlが金属酸化物相を形成する金属酸化物として好適である。この金属酸化物相がSrAlを含んでいると、高温下にこのサーミスタ素子が曝されても、ペロブスカイト相にSr及び/又はAlが移行してこれらがペロブスカイト相と反応することがなく、したがって、サーミスタ部の温度による特性変化が抑制される。
この発明におけるサーミスタ部は、以下のようにして製造することができる。
先ず、導電性ペロブスカイト相を含む仮焼粉末を調製する。導電性ペロブスカイト相を含む仮焼粉末を調製する際の原料としては、ペロブスカイト相を組成式M1aM2bM3cM4dとしたときのa、b、c、d、eが前記した範囲内にあるように、M1、M2,M3、M4の炭酸塩又は酸化物が好適例として挙げられる。なお、元素M1としては周期律表第2族の元素即ちMg、Ca、Sr、Baから選択される少なくとも1種以上の元素が挙げられ、Mg、Ca、及びSrから選ばれる1種またはそれ以上の元素が好適であり、元素M2としてはLaを除く第3族の元素即ちY、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Yb、Scから選択される少なくとも1種以上の元素が挙げられ、Y、Nd、及びYbから選ばれる1種またはそれ以上の元素が好適であり、元素M3としては周期律表第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族の元素即ちTi、Zr、Hf(以上、第4族)、V、Nb、Ta(以上、第5族)、Cr、Mo、W(以上、第6族)、Mn(第7族)、Fe(第8族)、Co(第9族)、Ni(第10族)、Cu(第11族)並びにZn(第12族)から選択される少なくとも1種以上の元素が挙げられ、Mn、Fe及びCrから選ばれる1種またはそれ以上の元素が好適である。また、元素M4としては周期律表第13族の元素即ちAl、Ga、Inから選択される少なくとも1種以上の元素が挙げられ、Al及びGaから選ばれる1種またはそれ以上の元素が好適である。より具体的には、前記原料として、SrCO、Y、Nd、Yb、MgO、CaCO、Cr、MnO、Fe、Al、Ga等を挙げることができる。なお、これら原料は、99%以上の純度を有する市販品を使用することができる。
これら原料が混合され、湿式混合のときには更に乾燥されて原料粉末混合物が得られる。この原料粉末混合物は、仮焼され、平均粒径が例えば1〜2μmである仮焼粉末に調製される。前記仮焼を行う仮焼温度として、通常の場合、1000〜1500℃を挙げることができ、その仮焼温度で仮焼する時間としては、通常の場合、1〜10時間を挙げることができる。
また、金属酸化物相(MeO)が含まれる場合は、金属酸化物相を含む仮焼粉末を調製する際の原料としては、Meの炭酸塩又は酸化物が好適例として挙げられる。なお、元素MeとしてはY、Sr、Alから選ばれる1種またはそれ以上の元素が好適であり、具体的には、前記原料として、Y、SrCO、Al等を挙げることができる。
これら原料が混合され、湿式混合のときには更に乾燥されて原料粉末混合物が得られる。この原料粉末混合物は、仮焼され、平均粒径が例えば1〜2μmである仮焼粉末に調製される。前記仮焼を行う仮焼温度として、通常の場合、1000〜1500℃を挙げることができ、その仮焼温度で仮焼する時間としては、通常の場合、1〜10時間を挙げることができる。
前記仮焼粉末は分散媒例えば水、メタノール、エタノール等の水性分散媒中で湿式混合粉砕処理されスラリーに調製される。湿式混合粉砕に用いられる容器としては通常の場合、樹脂製の容器を挙げることができ、混合には玉石例えば高純度アルミナ玉石を使用することができる。
前記したところのスラリーを乾燥してサーミスタ部用粉末を得る。このサーミスタ部用粉末とバインダーとを混合し、次いで乾燥し、分級することにより所定粒径の造粒粉末を得る。前記バインダーとして、例えばポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、アクリル系バインダー等のポリマーを挙げることができ、このようなポリマー以外にもこの技術分野において使用される公知のバインダーを使用することができる。
上記のようにして得られたサーミスタ部用粉末を所定の金型に装填し、加圧成形することにより、例えば図1及び図2に示されるように、Pt−Rh合金製の一対の電極線2a,2bの一端側が埋設され、他端側が平行に突出するように前記電極線2a,2bを備えた所定形状例えば六角形板状の未焼成サーミスタ部成形体を製造する。
その後に、この未焼成サーミスタ部成形体を、例えば大気雰囲気中で、1400〜1600℃で焼成することにより、サーミスタ部1aを製造することができる。なお、図1に示されるサーミスタ部の形状は、この発明に係るサーミスタ素子におけるサーミスタ部の形状の一例を示すのであって、この発明に係るサーミスタ素子におけるサーミスタ部の形状は用途等に応じて種々の形状が採用される。
この発明に係るサーミスタ素子は、前記サーミスタ部の表面を次述する被覆層で被覆してなる。
前記被覆層は、SiO、CaO、及びMgOを、SiOについては前記被覆層の合計質量に対して40〜65質量%、CaOについては前記被覆層の合計質量に対して15〜40質量%、MgOについては前記被覆層の合計質量に対して5〜30質量%の範囲の中から、SiO、CaO、及びMgOの合計が90質量%〜100質量%になるように、選択される含有割合で含有してなり、Bを実質的に無含有である結晶化ガラスである。
なお、この被覆層は、SiO、CaO、及びMgOの合計が90質量%以上であれば、サーミスタ部の特性変動を抑える効果を奏することができる。被覆層におけるSiO、CaO、及びMgOの合計が90質量%以上100質量%未満である場合には、被覆層における残部の成分は、この発明の目的を阻害しない限り、B以外の成分例えばAl等を含有していてもよい。
被覆層におけるSiOの含有量が前記下限値を下回るとガラスの軟化点が低くなり耐熱性が低下するといった不都合を生じ、また、前記上限値を超えるとガラスが軟化し難くなり流動性が悪化し即ち被覆が困難となるといった不都合を生じて、この発明の目的を達成することができない。被覆層におけるCaOの含有量が前記下限値を下回ると熱膨張率が小さくなり過ぎ、サーミスタ部との不一致が生じ易い傾向となり、被覆層に割れ等を生じるといった不都合を生じ、また、前記上限値を超えると耐熱性が低下するといった不都合を生じて、この発明の目的を達成することができない。被覆層におけるMgOの含有量が前記下限値を下回ると所望の結晶を析出させることが困難であるといった不都合を生じ、また、前記上限値を超えるとガラスの流動性が悪化し、成形が困難になるといった不都合を生じて、この発明の目的を達成することができない。
また、この被覆層は実質的にBを含有していない。「実質的に含有しない」とはICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析によってもBが検出ないし同定することができないことを意味する。被覆層内にBが検出されるほどにBが被覆層に含有されていると、サーミスタ素子が高温に曝されると被覆層の成分、この場合Bがサーミスタ部に移動してしまい、そうするとサーミスタ部の特性が変動してしまってこの発明の目的を達成することができない。
この被覆層は、ディオプサイドを含む電気絶縁体の結晶化ガラスとなっているのが、好ましい。電気絶縁体であるディオプサイドを含有する結晶化ガラスで被覆層が形成されていると、この発明に係るサーミスタ素子が高温に曝されても被覆層中の成分がサーミスタ部へ移動することが抑制され、その結果としてサーミスタ部の特性変動が極めて小さくなる。
被覆層は、次のようにしてサーミスタ部の表面に形成することができる。
被覆層を形成するための原料粉末すなわちSiO、CaO及びMgOとバインダーと分散媒とを混練することにより、被覆層用スラリーが先ず調製される。この調製に際し、前記バインダーとして例えばエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を、又はこれらを主成分とする組成物を挙げることができる。分散媒としては水、メチルアルコール、エチルアルコール、ターピネオール、アセトン、ケトン、メチルエチルケトン等を挙げることができる。バインダー及び分散媒の配合量は、適宜に決定することができる。バインダーの配合量は、通常の場合、原料粉末全量に対し、5〜20重量部、好ましくは10〜20重量部である。
得られた被覆層用スラリーにサーミスタ部を浸漬することにより所謂ディップコーティングをする。サーミスタ部の表面に付着する被覆層用スラリーを乾燥し、所定の温度で焼き付けると、この発明に係るサーミスタ素子を得ることができる。
被覆層の厚みは通常の場合、0.5〜500μmが好適である。
かくして、図2に示されるように、導電性酸化物焼結体であるサーミスタ部1aの表面に被覆層1bが被覆され、前記サーミスタ部1aに一端が電極2a,2bが埋設されてなるサーミスタ素子が、形成される。
なお、図1及び図2に示されるサーミスタ部1aの形状が六角形板状体として表現されているが、サーミスタ部1aの形状は温度センサの形状及び構造等にあわせて設計される。
この発明に係る温度センサはこの発明に係るサーミスタ素子を有する。図3にこの発明に係る温度センサの一例が示され。図3に示される温度センサ100は、サーミスタ素子2を感温素子として用いる。この温度センサ100は、自動車の排気管の取付部に装着され、サーミスタ素子2が排気ガスの流れる排気管内に位置させることにより排気ガスの温度を検出することができる。
この温度センサ100のうち、軸線に沿う方向(以下、軸線方向ともいう。)に延在する金属管3は、先端部31側つまり図3における下方側が閉塞した有底筒状に、形成される。この先端部31の内部空間にこの発明の一例であるサーミスタ素子2が収納されて成る。この金属管3は、従来の金属管におけるように予め熱処理を施す必要がなく、したがって、その外側面及び内側面を酸化することにより酸化皮膜を形成する必要がない。なぜならば、この発明に係るサーミスタ素子2は、雰囲気が還元雰囲気になっても被覆層の存在によってサーミスタ部の特性変動を生じにくいので、サーミスタ素子2を取り巻く雰囲気が還元状態になることを防止する必要がなくなり、それでもって金属管3の表面を酸化被膜にする必要がないからである。なお、この発明に係るサーミスタ素子2をこの金属管3の中に挿入配置するときには、金属管3の内側でサーミスタ素子2の周囲には、セメント10が充填されて、サーミスタ素子2を保持している。金属管3の後端32は開放されており、この後端32部分は、フランジ部材4の内側に圧入、挿通されている。
また、この発明に係る温度センサでは、サーミスタ素子2の被覆層1bが金属管3の内周面に非接触となるような寸法関係を有しており、サーミスタ素子2の被覆層1bと金属管3の内周面との間にはセメント10が介在し、温度センサの使用時において被覆層1bと金属管3の内周面とが直に接触するのを確実に防止する構造となっている。
フランジ部材4は、軸線方向に延びる筒状の鞘部42と、この鞘部42の先端側すなわち図3における下方に位置し、この鞘部42よりも大きい外径を有して径方向外側に突出するフランジ部41とを備えている。フランジ部41の先端側には、排気管の取付部とシールを行うテーパ状の座面45を有している。また、鞘部42は、先端側に位置する先端側鞘部44とこれよりも径小の後端側鞘部43とからなる二段形状をなしている。
そして、フランジ部材4内に圧入された金属管3は、その外周面が後端側鞘部43と周方向全周に亘り部位L1でレーザー溶接されることで、フランジ4に強固に固定されている。また、フランジ部材4の先端側鞘部44には、概略円筒形状の金属カバー部材6が圧入され、周方向全周に亘り部位L2でレーザー溶接されて、気密状態で接合されている。
また、フランジ部材4及び金属カバー部材6の周囲には、六角ナット部51およびネジ部52を有する取り付け部材5が回動自在に嵌挿されている。図1に示される温度センサ100は、排気管(図示しない)の取付部にフランジ部材4のフランジ部41の座面45を当接させ、ナット5を取付部に螺合させることにより、排気管に固定する。
金属管3、フランジ部材4および金属カバー部材6の内側には、一対の芯線7を内包するシース部材8が配置されている。このシース部材8は、金属製の外筒と、導電性の一対の芯線7と、外筒内に充填され外筒と各芯線7との間を絶縁しつつ芯線7を保持する絶縁粉末とから構成されている。なお、従来の温度センサにあってはこのシース部材8の外筒にも熱処理により予め酸化皮膜を形成しておく必要があるが、この発明に係るサーミスタ素子2を装備する温度センサ100にあってはシース部材8の外筒に酸化被膜を形成する必要はない。
金属管3の内部においてシース部材8の外筒の先端から、つまり図中の下方に突出する芯線7には、サーミスタ素子2の電極線2a,2bがレーザー溶接により接続されている。
一方、シース部材8の後端側に突き出ている芯線7は、加締め端子11を介して一対のリード線12に接続されている。芯線7同士及び加締め端子11同士は、絶縁チューブ15により互いに絶縁されている。
この一対のリード線12は、金属カバー部材6の後端部内側に挿入された弾性シール部材13のリード線挿通孔を通って、金属カバー部材6の内側から外部に向かって引き出され、外部回路(図示しない。例えば、ECU)と接続するためのコネクタ21の端子部材に接続されている。これにより、サーミスタ素子2の出力は、シース部材8の芯線7からリード線12、コネクタ21を介して図示しない外部回路に取り出され、排気ガスの温度が検出される。リード線12には、飛石等の外力から保護するためのガラス編組チューブ20が被せられており、このガラス編組チューブ20は、自身の先端部が弾性シール部材13と共に金属カバー部材6に加締め固定されている。
このような構造を有する温度センサ100では、前述の導電性酸化物焼結体からなるサーミスタ素子2を用いているので、自動車のエンジンの排気ガスの温度について、−40℃の低温下から約1000℃の高温までの広い領域に亘り、適切に温度を測定することができる温度センサとなる。
(実施例1、2、比較例1)
実施例1、2及び比較例1におけるサーミスタ素子の製造について説明する。
SrCO、Y、Cr、MnO、Fe、Alを用いて、組成式が(M1aM2)(M3M4)Oとしたときのa、b、c、dが表1に示されるモル数となるように、純度99%以上の市販品を秤量した。
Figure 0005140450
秤量された前記原料粉末を湿式混合して乾燥することにより、ペロブスカイト相用の原料粉末混合物を調製した。次いで、この原料粉末混合物を大気雰囲気下で1400℃で2時間仮焼し、平均粒径1〜2μmのペロブスカイト相用の仮焼粉末をそれぞれ得た。
次いで、実施例1に対応する仮焼粉末を分散媒であるエタノールと共に樹脂製ポットに投入し、高純度アルミナ玉石を用いて湿式混合粉砕を行い、実施例1に係るサーミスタ素子におけるサーミスタ部を形成するためのスラリー(以下において、第1スラリーと称することがある。)を調製した。
一方、実施例2及び比較例1に係る金属酸化物相用の仮焼粉末を以下のようにして調製した。すなわち、原料粉末として、純度99%以上の市販品であるSrCO及びAlを、組成式SrAlとなるように、それぞれ秤量し、湿式混合して乾燥した。これにより、金属酸化物相用の原料粉末混合物を調製した。次いで、この金属酸化物相用の原料粉末混合物を大気雰囲気下1200℃で2時間仮焼し、平均粒径1〜2μmの金属酸化物相用の仮焼粉末を得た。
ついで、既述した実施例2、比較例1に対応するそれぞれのペロブスカイト相用の仮焼粉末と前記金属酸化物相用の仮焼粉末とを秤量し、これらの仮焼粉末と分散媒であるエタノールとを樹脂製ポットに投入し、高純度Al玉石とを用いて湿式混合粉砕を行うことにより、実施例2及び比較例1に用いるスラリー(以下において第2スラリーと称することがある。)を調製した。
次いで、前記第1スラリーを80℃で2時間乾燥して実施例1で用いるサーミスタ部用合成粉末を得た。また、前記第2スラリーを80℃で2時間乾燥して、実施例2及び比較例1で用いるサーミスタ部用合成粉末を得た。その後、これらのサーミスタ部用合成粉末100重量部に対し、ポリビニルブチラールを主成分とするバインダーを20重量部添加して混合、乾燥した。さらに、250μmメッシュの篩を通して造粒し、サーミスタ部用の造粒粉末を得た。
次いで、上述のサーミスタ部用の造粒粉末を、金型成型法にてプレス成形(プレス圧:4500kg/cm)して、図1に示すように、Pt−Rh合金製の一対の電極線2a,2bの一端側が埋設された六角形板状(厚さ1.24mm)の未焼成サーミスタ部用成形体を得た。
その後、大気中で1450℃〜1550℃で前記未焼成サーミスタ部用成形体を2時間焼成した。これにより、一対の電極線2a,2bとこの一端側が埋設されるとともに他端側が平行に突出する六角形板状のサーミスタ部を製造した。
実施例1におけるサーミスタ部のX線回折図を、図4に示し、実施例2及び比較例1におけるサーミスタ部のX線回折図を、図5に示した。
なお、図1に示されるように、サーミスタ素子2の各寸法は、一辺1.78mmの六角形状で、厚み1.00mm、電極線2a,2bの径φ0.3mm、電極中心間距離0.85mm(ギャップ0.55mm)、電極挿入量1.36mmである。
次いで、被覆層用のスラリーを以下のようにして調製した。すなわち、原料粉末として表2に示される組成の市販の結晶化ガラス粉末と、エチルセルロースを主成分とするバインダーと分散媒であるターピオネール及びアセトンとをミキサーで混練し、被覆層用のスラリーを調製した。なお、表2に示す数値は質量%である。
Figure 0005140450
その後、前記実施例1,2及び比較例1用に用意したサーミスタ部それぞれを、前記被覆層用のスラリーに、浸漬することにより、サーミスタ部に被覆層用のスラリーをディップコーティングした。次いで、これを乾燥した後に1000℃で焼成することにより、サーミスタ部及びこれを被覆する緻密な被覆層を有するサーミスタ素子を製造した。
実施例1及び実施例2におけるサーミスタ素子における被覆層のX線回折図を図6に示した。また、比較例1におけるサーミスタ素子における被覆層のX線回折図を図7に示した。
ついで、実施例1,2及び比較例1に係るサーミスタ素子について、以下のようにしてB定数(温度勾配定数)を測定した。
すなわち、まず、サーミスタ素子を、絶対温度T(100)=373K(=100℃)の環境下に放置し、その状態でのサーミスタ素子の初期抵抗値R(100)を測定した。ついで、サーミスタ素子を、絶対温度T(300)=573K(=300℃)の環境下に放置し、その状態でのサーミスタ素子の初期抵抗値R(300)を測定した。同様に、R(600)及びR(900)についても測定した。そして、B定数:B(100〜900)を、以下の式(1)に従って算出し、初期抵抗値R(100)、R(300)、R(600)、R(900)及びB定数:B(100−900)を表3に示した。
B(100−900)=ln[R(900)/R(100)]/[1/T(900)−1/T(100)] ・・・(1)
次いで、被覆層を形成する前と後とにおけるサーミスタ素子の抵抗変化を確認するために、前記と同様にして100℃、300℃、600℃及び900℃におけるサーミスタ素子の被覆層形成後の抵抗値すなわち被覆層形成後抵抗値Rs(100)、Rs(300)、Rs(600)、Rs(900)をそれぞれ測定した。その上で、100℃における初期抵抗値R(100)と被覆層形成後抵抗値Rs(100)との比較から、被覆層形成処理による抵抗変化の温度変化換算値DT(100)(単位:deg.C)を、下記(2)により算出した。同様にして式(3)、式(4)、及び式(5)により温度変化換算値DT(300)、DT(600)、DT(900)をそれぞれ算出し、表3に示した。
DT(100)=[(B(100−900)×T(100))/[ln(Rs(100)/R(100))×T(100)+B(100−900)]]−T(100) ・・・(2)
DT(300)=[(B(100−900)×T(300))/[ln(Rs(300)/R(300))×T(300)+B(100−900)]]−T(300) ・・・(3)
DT(600)=[(B(100−900)×T(600))/[ln(Rs(600)/R(600))×T(600)+B(100−900)]]−T(600) ・・・(4)
DT(900)=[(B(100−900)×T(900))/[ln(Rs(900)/R(900))×T(900)+B(100−900)]]−T(900) ・・・(5)
さらに、実施例1,2及び比較例1用に用意したサーミスタ素子について、後述するようにして図3に示される温度センサに組み込み、この温度センサの状態でのサーミスタ素子の初期抵抗値Rt(100)、Rt(300)、Rt(600)、Rt(900)を測定した。ついで、大気中で900℃にて500時間保持し、その後、上述と同様にして、100℃、300℃、600℃及び900℃における温度センサの状態におけるサーミスタ素子の熱処理後抵抗値Rt'(100)、Rt'(300)、Rt'(600)、Rt'(900)をそれぞれ測定した。その上で、900℃における初期抵抗値Rt(100)と熱処理後抵抗値Rt'(100)との比較から、熱処理による抵抗変化の温度変化換算値CT(100)(単位:(単位:deg.C)を、下記式(6)により算出した。同様にして、式(7)、式(8)、式(9)により、温度変化換算値CT(300)、CT(600)、CT(900)を算出した。その結果を表3に示した。
CT(100)=[(B(100−900)×T(100))/[ln(Rt'(100)/Rt(100))×T(100)+B(100−900)]]−T(100) ・・・(6)
CT(300)=[(B(100−900)×T(300))/[ln(Rt'(300)/Rt(300))×T(300)+B(100−900)]]−T(300) ・・・(7)
CT(600)=[(B(100−900)×T(600))/[ln(Rt'(600)/Rt(600))×T(600)+B(100−900)]]−T(600) ・・・(8)
CT(900)=[(B(100−900)×T(900))/[ln(Rt'(900)/Rt(900))×T(900)+B(100−900)]]−T(900) ・・・(9)
Figure 0005140450
なお、図3に示される、実施例1、2及び比較例1に係る温度センサは、金属管の表面及びシース部材を構成する金属製の外筒に、予め酸化皮膜を形成しておかなかった。なぜならば、この温度センサのサーミスタ素子近傍を高温にし、金属管やシース部材の外筒が酸化され、この金属管内の雰囲気が還元雰囲気となった場合でも、実施例1、2に係る温度センサにあっては、サーミスタ部が還元されて特性が変動することがないからである。したがって、実施例1、2に係る温度センサにあっては、後述するように、サーミスタ素子が還元されることによりその抵抗値が変化することが防止されていた。
表3に示される結果から、実施例1、2のサーミスタ素子は、被覆層形成後の抵抗変化温度換算値DT(100)、DT(300)、DT(600)、DT(900)が、いずれも低い値であり、具体的にいうと、高々±0.3℃の範囲に納まった。すなわち、実施例1、2のサーミスタ素子では、各温度における抵抗値が安定しており、被覆層を形成した後でも、その抵抗値の変化量が少ないことが判る。このようなサーミスタ素子では、熱履歴に拘わらずに安定して抵抗値測定ができ、正確な温度を測定することができる。
これに対し、比較例1では、実施例の結果に比べて、被覆層形成後の指示温度変化が大きな値となっている。これは、比較例1にあっては、被覆層がこの発明で規定する被覆層の範囲外の構成になっているからであると解される。すなわち、被覆層を焼成する際に、比較例1では、ペロブスカイト相におけるAサイト及びBサイトに位置する金属元素Sr、Y、Mn、Cr及びAlが被覆層に移動し、又は被覆層を形成する元素がサーミスタ部に移動し、サーミスタ部の組成変動を生じてしまい、これによってサーミスタ素子の特性が変動してしまったと理解することができる。
このような理解は、比較例1に係る被覆層形成後のサーミスタ素子を研磨してその切断面を電子顕微鏡写真にて観察したところ、サーミスタ部と被覆層との界面付近に反応層が観察され、サーミスタ部及び被覆層における成分が相互に拡散していることが確認された。
これに対し、実施例1に係るサーミスタ素子においては、被覆層はSiO40〜65質量%、CaO15〜40質量%、及びMgO5〜30質量%の組成を有し、且つBを実質的に含有しない結晶化ガラスで形成されているので、被覆層を形成する際に、ペロブスカイト相におけるAサイト又はBサイトに位置する金属元素が被覆層に移動し、若しくは被覆層を形成する元素がペロブスカイト相に移動することが困難になる。また、このサーミスタ素子が高温度に長時間曝された場合に、ペロブスカイト相中のAサイト又はBサイトに位置するY、Sr、Mn、Fe、Alが被覆層に移行しようとしても、被覆層が結晶化ガラスであるので、これらの金属元素が被覆層中に移行することが抑制される。同様なことが、実施例2についても当てはまる。
更に、実施例1及び実施例2における温度変化換算値CT(100)、CT(300)、CT(600)、CT(900)は、いずれも低い値、具体的には高々±3℃の範囲の値になった。すなわち、この実施例1及び実施例2に係るサーミスタ素子は、各温度における抵抗値が安定しており、高温に長時間曝されることがあってもその抵抗値の変化量が少ない。このようなサーミスタ素子は、熱履歴に拘わらず安定した抵抗値測定を正確に行うことができる。
表3によるとまた、実施例1に係るサーミスタ素子は、B定数[B(100〜900)]が4500K[=B(100〜900)]であり、各温度を精度良く検知することができる。また、実施例2に係るサーミスタ素子は、2400K[=B(100〜900)]という、従来に比して相対的に低い値のサーミスタ素子である。
図1は、この発明の一実施例であるサーミスタ素子を示す斜視図である。 図2は、この発明の一実施例であるサーミスタ素子を示す一部切欠断面図である。 図3は、この発明の一実施例である温度センサを示す一部切欠断面図である。 図4は、この発明の実施例1に係るサーミスタ素子におけるサーミスタ部のX線回折図である。 図5は、この発明の実施例2及び比較例1に係るサーミスタ素子におけるサーミスタ部のX線回折図である。 図6は、この発明の実施例1及び実施例2に係るサーミスタ素子における被覆層のX線回折図である。 図7は、この発明の範囲外である比較例1に係るサーミスタ素子における被覆層のX線回折図である。
符号の説明
1a サーミスタ部
1b 被覆層
2 サーミスタ素子
2a、2b 電極線
3 金属管
4 フランジ部材
5 取り付け部材(ナット)
6 金属カバー部材
7 芯線
8 シース部材
10 セメント
11 加締め端子
12 リード線
13 弾性シール部材
15 絶縁チューブ
21 コネクタ
20 ガラス編組チューブ
31 先端部
32 後端
41 フランジ部
42 鞘部
43 後端側鞘部
44 先端側鞘部
45 座面
51 六角ナット部
52 ネジ部
100 温度センサ

Claims (7)

  1. サーミスタ組成物からなるサーミスタ部と、上記サーミスタ部を被覆する被覆層とを備えるサーミスタ素子であって、
    前記サーミスタ部は、導電性を有し、ペロブスカイト型結晶構造を有するペロブスカイト相を含み、
    前記被覆層は、SiO、CaO、及びMgOを、SiOについては前記被覆層の合計質量に対して40〜65質量%、CaOについては前記被覆層の合計質量に対して15〜40質量%、MgOについては前記被覆層の合計質量に対して5〜30質量%の範囲の中から、SiO、CaO、及びMgOの合計が90質量%〜100質量%になるように、選択される含有割合で含有してなり、Bを実質的に無含有である結晶化ガラスであり、電気絶縁体であるディオプサイドの析出結晶を有して成ることを特徴とするサーミスタ素子。
  2. 前記サーミスタ部は、ABO(但し、AはSr及び/又はYを含み、BはAlを含む。)で示されるペロブスカイト相を含む前記請求項に記載のサーミスタ素子。
  3. 前記ABOにおけるBが更にCr,Mn及びFeの内の少なくとも一種の金属を含む前記請求項に記載のサーミスタ素子。
  4. 前記サーミスタ部は、このサーミスタ部に含まれる前記ペロブスカイト相よりも低導電性であって、前記ペロブスカイト相を形成する金属元素から選択される少なくとも一種の金属元素をMeとする場合に、組成式MeOxで表記される金属酸化物の少なくとも一種を含有する金属酸化物相を含む前記請求項2又は3に記載のサーミスタ素子。
  5. 前記金属酸化物相に含まれる金属酸化物がSrAlである前記請求項に記載のサーミスタ素子。
  6. 前記請求項1〜のいずれか一項に記載のサーミスタ素子を有する温度センサ。
  7. 有底筒状の金属管を有し、前記請求項に記載のサーミスタ素子における前記被覆層が前記金属管の内周面に非接触の状態で、前記サーミスタ素子が前記金属管の内部に収容されてなる前記請求項に記載の温度センサ。
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