JP6440641B2 - 導電性酸化物焼結体、これを用いたサーミスタ素子、および、これを用いた温度センサ - Google Patents

導電性酸化物焼結体、これを用いたサーミスタ素子、および、これを用いた温度センサ Download PDF

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Description

本発明は、導電性酸化物焼結体、これを用いたサーミスタ素子、および、これを用いた温度センサに関する。
従来、抵抗値が温度によって変化する導電性酸化物焼結体によって構成されたサーミスタ素子が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。このようなサーミスタ素子の用途として、自動車の排ガス温度測定用の温度センサがある。この用途では、高温環境下において、長時間、精度良く温度を検知することが望まれている。
特許文献1は、ABOで表わされるペロブスカイト型結晶構造を有する導電性酸化物焼結体を開示している。この特許文献1は、高温域を含む温度範囲において適正な温度検出を可能にするために、ペロブスカイト型結晶構造のBサイト元素として、M3(MnおよびFeから選ばれる1種またはそれ以上の元素)、アルミニウム(Al)、およびクロム(Cr)を規定している。
特許第5053563号公報 特表2010−521394号公報
上述の特許文献1に開示されている導電性酸化物焼結体は、ペロブスカイト型結晶構造の元素比から、M3が導電に寄与する主元素であると考えられる。本願発明者らは、M3であるマンガン(Mn)や鉄(Fe)は比較的価数変化を起こし易い元素であるため、特許文献1に開示されている導電性酸化物焼結体を用いても、耐熱性が不十分になる可能性があることを見出した。
一方、内燃機関の排ガス温度測定用の温度センサでは、OBDシステム(On-Board Diagnostics)などにおける温度センサの故障(断線)検知のため、エンジンの始動時やキーオン時などの低温下でも、温度検知を可能にすることが望まれている。この場合、特に寒冷地では、始動時の温度が氷点下となる場合もあるため、例えば−40℃といった低温環境下でも測温可能なサーミスタ素子が望まれている。なお、上述の特許文献2に開示されている導電性酸化物焼結体は、B定数の値が高く、−40℃等の低温環境下でも測定可能なサーミスタ素子を得られない。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、導電性酸化物焼結体が提供される。この導電性酸化物焼結体は、カルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)から選択される1種またはそれ以上の元素をMとしたときに、組成式LaMnAlCrで表記されるペロブスカイト型結晶構造を有する結晶相を含み、前記a,b,c,d,e,fが、
0.600≦a<1.000、
0<b≦0.400、
0≦c<0.150、
0.500<d<0.950、
0.050<e<0.500、
0.50<e/(c+e)≦1.00、
2.80≦f≦3.30、
を満たすことを特徴とする。
この導電性酸化物焼結体では、ペロブスカイト型結晶構造のBサイト元素としてAlおよびCrを含むと共に、さらにMnを含み得るものであり、MnとCrの合計量に対するCrの含有割合e/(c+e)が、0.50より大きく1.00以下の範囲となっており、Crが主に導電性に寄与している。導電性に寄与し得る元素のうち、Crは、MnやFeに比べて価数が安定な元素であるため、導電性に寄与する主要な元素としてCrを含有することにより、熱履歴に対する電気特性の変化を小さくすることができる。そのため、導電性酸化物焼結体のB定数(−40℃と900℃という2点の温度から求めた抵抗変化の大きさを表わすB定数)の値を適正化することができる。その結果、−40℃等の低温環境下でも測温可能なサーミスタ素子を得ることが可能になる。また、ペロブスカイト型結晶構造の主要なAサイト元素として、3族元素の中でイオン半径が最も大きいランタン(La)を含有するため、ペロブスカイト型結晶構造の安定性を高めることができ、導電性酸化物焼結体の耐熱性を高めることができる。
(2)上記形態の導電性酸化物焼結体において、前記c,eが、0.65≦e/(c+e)≦1.00を満たすこととしてもよい。
この構成によれば、導電性酸化物焼結体の耐熱性を向上させる効果を、より高めることができる。
(3)上記形態の導電性酸化物焼結体において、前記a,b,c,d,e,fが、
0.700≦a<1.000、
0<b≦0.300、
0≦c<0.14、
0.600≦d<0.950、
0.050<e≦0.400、
0.65<e/(c+e)≦1.00、
2.80≦f≦3.30、
を満たすこととしてもよい。
この構成によれば、導電性酸化物焼結体の耐熱性を向上させる効果、および、導電性酸化物焼結体のB定数を適正化して−40℃等の低温環境下でも測温可能にする効果を、さらに高めることができる。
本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、導電性酸化物焼結体を用いたサーミスタ素子、あるいはサーミスタ素子を用いた温度センサなどの各種の装置、および、導電性酸化物焼結体やサーミスタ素子の製造方法等の形態で実現することができる。
本発明の一実施形態としてのサーミスタ素子を示す斜視図。 本発明の一実施形態としての温度センサの一例を示す部分破断断面図。 サーミスタ素子の製造方法の一例を示すフローチャート。 各種サンプルの組成と特性値を示す図。 サンプルS6の導電性酸化物焼結体のX線回折結果を示す図。
A.導電性酸化物焼結体:
本発明の一実施形態としての導電性酸化物焼結体は、以下の組成式である(1)式を満たすペロブスカイト型酸化物結晶構造を有する結晶相を含む酸化物焼結体である。
LaMnAlCr … (1)
ここで、Mは、カルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)から選択される1種またはそれ以上の元素である。また、係数a〜fは、以下の関係を満たす。
0.600≦a<1.000、 … (2a)
0<b≦0.400、 … (2b)
0≦c<0.150、 … (2c)
0.500<d<0.950、 … (2d)
0.050<e<0.500、 … (2e)
0.50<e/(c+e)≦1.00、 … (2f)
2.80≦f≦3.30、 … (2g)
ペロブスカイト型結晶構造は、一般に組成式ABOで表記される。上記(1)式では、LaおよびMがAサイト元素であり、Mn、Al、およびCrがBサイト元素である。上記(1)式の組成を有する結晶が典型的なペロブスカイト型結晶構造を取る場合には、a+b=1,c+d+e=1が成立することが好ましい。酸素(O)の係数fに関しては、ペロブスカイト型結晶構造においては理論上はf=3となる。ただし、ペロブスカイト型酸化物に含まれる各金属元素の割合や、環境温度あるいは雰囲気に応じて、酸素原子の量が量論組成からずれることがある。そのため、(1)式では、典型的な例としてfの範囲を2.80≦f≦3.30と規定している。なお、これらの関係は、温度特性に影響が生じない範囲で多少変動してもよい。
上記のように、(1)式および(2a)〜(2g)式を満たす組成を有する導電性酸化物焼結体は、ペロブスカイト型結晶構造のBサイト元素としてAlおよびCrを含むと共に、さらにMnを含み得るものであり、MnとCrの合計量に対するCrの含有割合e/(c+e)が、0.50より大きく1.00以下の範囲となっている((2f)式)。従って、この導電性酸化物焼結体では、Mnではなく、Crが主に導電性に寄与していると考えられる。導電性に寄与し得る元素のうち、Crは、MnやFeに比べて価数が安定な元素であるため、本実施形態の導電性酸化物焼結体では、導電性に寄与する主要な元素としてCrを含有することにより、熱履歴に対する電気特性の変化を小さくすることができる。そのため、導電性酸化物焼結体のB定数(具体的には、例えば−40℃と900℃という2点の温度から求めた抵抗変化の大きさを表わすB定数)の値を適正化することができる。以下では、上記の含有割合e/(c+e)を「Cr含有比e/(c+e)」とも呼ぶ。
また、上記導電性酸化物焼結体では、ペロブスカイト型結晶構造のBサイト元素におけるAlの割合によって、導電性酸化物焼結体のB定数を調節することが可能になる。導電性酸化物焼結体のB定数は、Alの割合を小さくする(MnおよびCrの割合を大きくする)ことにより小さくなる傾向がある。本実施形態では、Alの割合である係数dが(2d)式を満たすことにより、導電性酸化物焼結体のB定数を適正化することができる。
さらに、本実施形態の導電性酸化物焼結体は、上記したようにペロブスカイト型結晶構造のAサイト元素としてLaを含むと共に、Laの含有割合に係る係数aが(2a)式を満たすため、Laが、主要なAサイト元素となっている。導電性酸化物焼結体は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイト元素として、例えばLa以外の3族元素を含むこともできる。しかしながら、Laは、3族元素の中で最もイオン半径が大きい。そのため、本実施形態の導電性酸化物焼結体は、主要なAサイト元素としてLaを含有することにより、ペロブスカイト型結晶構造の安定性を高めることができ、導電性酸化物焼結体の耐熱性を高めることができる。なお、本明細書において3族元素とは、スカンジウム(21Sc)、イットリウム(39Y)、ランタノイド(57La〜71Lu)、およびアクチノイド(89Ac〜103Lr)で構成される元素群を意味する。
係数a〜fが上記(2a)〜(2g)式の関係を満たす導電性酸化物焼結体において、Cr含有比e/(c+e)が、上記(2f)式の代わりに以下の(3f)式を満たすことがさらに好ましい。こうすれば、導電性酸化物焼結体の耐熱性を向上させる効果を、より高めることができる。
0.65≦e/(c+e)≦1.00 … (3f)
また、上記係数a〜fとして、上記(2a)〜(2g)の代わりに以下を満たすことがさらに好ましい。
0.700≦a<1.000、 … (4a)
0<b≦0.300、 … (4b)
0≦c<0.14、 … (4c)
0.600≦d<0.950、 … (4d)
0.050<e≦0.400、 … (4e)
0.65<e/(c+e)≦1.00、 … (4f)
2.80≦f≦3.30、 … (4g)
このような構成とすれば、Aサイト元素であるLaの含有割合を増加させ、さらに、Cr含有比e/(c+e)を大きくすることにより、導電性酸化物焼結体の耐熱性を向上させる効果を、より高めることができる。また、Bサイト元素であるAlの割合によって導電性酸化物焼結体のB定数を適正化する効果を、さらに高めることができる。
B.サーミスタ素子:
図1は、上記した実施形態の導電性酸化物焼結体を用いたサーミスタ素子202の外観を示す斜視図である。このサーミスタ素子202は、六角形の平面形状を有する板状のサーミスタ部203と、2本の素子電極線204とを備えている。サーミスタ部203は、既述した実施形態の導電性酸化物焼結体で形成されている。このように、耐熱性に優れた導電性酸化物焼結体によってサーミスタ部203を構成することにより、サーミスタ素子202全体の耐熱性を高めることができる。また、適切なB定数を示す実施形態の導電性酸化物焼結体によってサーミスタ素子202を構成することにより、低温域から高温域までの広い温度範囲(例えば、−40℃から900℃)において、適切に温度検知することが可能になる。
なお、素子電極線204は、例えば貴金属により形成することができる。本実施形態では、素子電極線204をPt−Rh合金によって形成しているが、Pt−Rh合金の他、例えば、PtまたはPt−Rh合金にSrを含有させた合金や、Pt−Ir合金、あるいはPt以外の他の貴金属を主にした合金を用いてもよい。
C.温度センサ:
図2は、上記した実施形態の導電性酸化物焼結体を用いた温度センサ200の一例を示す部分破断断面図である。本実施形態の温度センサ200は、感温素子としての既述したサーミスタ素子202と、このサーミスタ素子202を先端に取り付けるシース部材206と、シース部材206とサーミスタ素子202とを収納すると共に先端側(図2中、下側)が閉塞した有底筒状をなす金属チューブ212と、金属チューブ212の後端側(図2中、上側)に溶接された取付部材240と、取付部材240に先端側が溶接された筒状部材260と、この筒状部材260に回動自在に外嵌されたナット部材250と、を備えている。なお、金属チューブ212の内側には、サーミスタ素子202およびシース部材206の揺動を防止するためにセラミック製のセメント(図示せず)が充填されている。サーミスタ素子202の2本の素子電極線204は、シース部材206内の芯線を介して、温度センサ200の後端に配置されるリード線に電気的に接続される。この温度センサ200は、例えば、内燃機関の排気管に装着されて使用される。温度センサ200の先端側に設けられたサーミスタ素子202は、排ガスが流れる排気管内に配置され、排ガスの温度を検出する。
なお、温度センサ200において、金属チューブ212およびシース部材206は、予め熱処理が施されており、その外側面および内側面が酸化されて酸化皮膜に覆われている。したがって、温度センサ200のサーミスタ素子202近傍を高温とした場合でも、金属チューブ212やシース部材206の酸化が抑制され、金属チューブ212内の雰囲気が還元雰囲気となることを抑えることができる。これにより、サーミスタ素子202が還元されてその抵抗値が変化することが、防止されている。
D.サーミスタ素子の製造方法:
図3は、本発明の一実施形態におけるサーミスタ素子の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態では、導電性酸化物焼結体を固相反応法によって形成している。固相反応法とは、酸化物、炭酸塩、あるいは硝酸塩など、構成金属元素を含む化合物である原料粉末を、作製すべき酸化物の組成に応じて、上記原料粉末中の金属元素が所定の割合となるように秤量、混合した後、熱処理(焼成)を行って、所望の酸化物を合成する周知の方法である。
導電性酸化物焼結体を製造する際には、まず、原料粉末を秤量し、混合する(工程T110)。本実施形態では、原料粉末を秤量した後、湿式混合して乾燥することにより、原料粉末混合物を調整する。原料粉末としては、例えば、Laを含む原料粉末(La(OH)等)と、元素Mを含む原料粉末(CaCO、SrCO等)と、その他の元素Mn、Al、Crを含む原料粉末(MnO、Al、Cr等)のうちから選択された粉末材料を用いることができる。これらの原料粉末としては、すべて純度99%以上のものを用いることが好ましい。
その後、得られた原料粉末混合物を仮焼して、仮焼粉末を得る(工程T120)。仮焼は、例えば、大気雰囲気下、1400℃で2時間行なうことができる。
仮焼の後、工程T130では、仮焼粉末の粉砕と造粒を行う。具体的には、工程T130では、例えば、仮焼粉末を分散媒(例えばエタノール)と共に樹脂ポットに投入し、ジルコニア玉石を用いて湿式混合粉砕してスラリーを得る。そして、得られたスラリーを湯煎乾燥して、合成粉末を得る。その後、この合成粉末にバインダを添加して、混合・乾燥する。さらに、目開き250μmの篩を通して造粒することで、造粒粉末が得られる。
なお、工程T130で用いるバインダとしては、例えば、ポリビニルブチラールや、ポリビニルアルコールや、アクリル系バインダ等の種々のバインダを利用可能である。本実施形態では、ポリビニルブチラールを主成分とするバインダを用いている。また、バインダの添加量は、合成粉末100重量部に対して、通常は5〜20重量部であり、10〜20重量部とすることが好ましい。本実施形態では、合成粉末100重量部に対し、20重量部としている。また、バインダと混合するにあたり、合成粉末の平均粒子径は2.0μm以下としておくことが好ましい。これによって均一に混合することができる。なお、合成粉末の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法を用いて測定される球相当径である。
工程130の後、得られた造粒粉末を成形する(工程T140)。成形は、例えば、金型成型法にてプレス成形(プレス圧:4500kg/cm)すればよく、図1に示したように一対の素子電極線204の一端側が埋設された六角形板状の成形体を得られればよい。続く工程T150では、大気中1500℃〜1600℃で2〜4時間焼成することによって、サーミスタ素子202を作製する。本実施形態では、工程T150において、1550℃にて3時間焼成を行なっている。
本実施形態では、製造の過程において、原料粉末中の金属元素が失われることがほとんどないため、得られる導電性酸化物焼結体に含まれる各金属元素の比率は、工程T110において混合した原料粉末中の各金属元素の比率と実質的に一致する。なお、導電性酸化物焼結体が、(1)式により規定する組成比を満たすか否かは、蛍光X線分析により確認することができる。
E.変形例:
・変形例1:
上記実施形態では、サーミスタ素子を利用した装置の例として、内燃機関の排ガス温度測定用の温度センサを説明したが、本発明によるサーミスタ素子は、これ以外の任意の装置に利用可能である。
・変形例2:
温度センサ200において、サーミスタ素子202を金属チューブ212に収納するにあたり、サーミスタ素子202の周囲をガラス封止した状態で、サーミスタ素子202およびシース部材206を金属チューブ212の内側に収納して温度センサを構成するようにしてもよい。
図4は、サーミスタ素子の複数のサンプルについて、その導電性酸化物焼結体の組成と各種の特性値とを示す図である。図4のサンプルS1〜S13は実施例であり、サンプルS14〜S18は比較例である。これらのサンプルS1〜S18は、図3の工程に従って作製した。図4に示した各元素の係数a〜eは、工程T110(図3)の材料混合時における原料粉末中の各金属元素のモル比を示している。なお、図4には係数fの値を記載していないが、蛍光X線分析を用いた各元素の組成比の測定結果から、2.80≦f≦3.30の範囲内であることを確認した。
図4に示す表の右端の2つの列には、各サンプルについての各種の特性値の実験結果を示している。ここでは、B定数:B(−40〜900)と、高温耐久試験前後の指示温度変化量の換算値CT(900)とを示している。各サンプルの評価方法は、以下の通りである。
<B定数の導出>
B定数(温度勾配係数)は、以下のように測定した。まず、各サンプルのサーミスタ素子202を−40℃(絶対温度T(−40)=233K)の環境下に放置し、その状態での素子電極線204間の初期抵抗値Rs(−40)を測定した。次いで、サーミスタ素子202を、900℃(絶対温度T(900)=1173K)の環境下に放置し、その状態での素子電極線204間の初期抵抗値Rs(900)を測定した。B定数:B(−40〜900)は、以下の式に従って算出した。
B(−40〜900)=ln[Rs(900)/Rs(−40)]/[1/T(900)−1/T(−40)] …(5)
<耐久試験による抵抗変化の温度変化換算値CTの導出>
高温耐久試験前後の抵抗変化の温度変化換算値CT(900)は、以下のように測定した。まず、各サンプルのサーミスタ素子202を、温度センサ200に組み込んだ。そして、高温耐久試験前の各サンプルの温度センサ200を900℃の環境下に放置し、その状態でのサーミスタ素子202の初期抵抗値Rs(900)を測定した。その後、高温耐久試験として、大気中にて1050℃×50時間保持した。その後、上述と同様にして高温耐久試験後の抵抗値Ra(900)を測定した。そして、高温耐久試験前の初期抵抗値Rsと高温耐久試験後の抵抗値Raから、高温耐久試験による抵抗変化の指示温度変化量の換算値CT(900)を、下記(6)式に従って算出した。以下では、この換算値CT(900)を、「温度変化換算値CT(900)」とも呼ぶ。なお、表4では、算出した温度変化換算値CT(900)の絶対値を示している。
CT(900)=[(B(−40〜900)×T(100))/[ln(Ra(900)/Rs(900))×T(900)+B(−40〜900)]]−T(900)
… (6)
図4のサンプルS1〜S13は、いずれも既述した(1)、(2a)〜(2g)式で与えられる組成を満たしている。これらのサンプルS1〜S13は、B定数が2000K〜3000Kの好ましい範囲内にある。このような導電性酸化物焼結体を用いたサーミスタ素子202では、−40℃〜900℃にわたる広い温度範囲において、適切な抵抗値を有するので、適正に温度測定を行うことが可能である。また、サンプルS1〜S13では、温度変化換算値CT(900)の絶対値がすべて3.0deg以下であり、十分に小さい点で非常に良好である。この結果から、サンプルS1〜S13のサーミスタ素子202は、900℃を越える高温域までの広い範囲にわたり、長期的に安定した温度測定が可能であることが分かる。
比較例のサンプルS14〜S18では、実施例のサンプルとは異なり、(2a)〜(2g)式のうちの少なくともいずれかの式を満たさないことにより、温度変化換算値CT(900)の絶対値が3.0degを超えているか、または、B定数が2000K〜3000Kの範囲を外れている。
より具体的に言えば、係数a,bが上記(2a),(2b)式の範囲を外れているサンプルS14と、係数cが上記(2c)式の範囲を外れているサンプルS15では、温度変化換算値CT(900)の絶対値が3.0degよりも大きい。この場合には、900℃以上の高温域にサーミスタ素子202が長時間曝された際の抵抗変化が大きくなり、温度センサに対して近年高まっている耐熱性要求を満足できないおそれがある。
また、Cr含有比e/(c+e)の値が上記(2f)式の範囲を外れているサンプルS16は、B定数が3000Kを超えている。この場合には、−40℃〜900℃の温度範囲におけるサーミスタ素子202の抵抗変化が過度に大きくなるので、この温度範囲の全域にわたっての適切な抵抗測定が困難となり、適切な温度測定が困難となる。なお、各実施例に関する実験結果に基づくと、Cr含有比e/(c+e)の値が(2f)式に加えてさらに上記(3f)式を満たすことにより、B定数を適正化すると共に、温度変化換算値CT(900)の絶対値を十分に小さくする効果を、より高めることができると考えられる。
また、係数d,eが上記(2d),(2e)式の範囲を外れているサンプルS17、および、さらに係数cが上記(2c)式の範囲を外れているサンプルS18では、B定数が2000Kよりも小さい。この場合には、−40℃〜900℃の温度範囲全域にわたっての抵抗測定は可能であるが、サーミスタ素子202の抵抗変化が過度に小さくなるため、抵抗値の測定精度が低下してしまい、適切な温度測定が困難となる。サンプルS17およびサンプルS18では、さらに、温度変化換算値CT(900)の絶対値が3.0degよりも大きいので、高耐熱性要求を満足できないおそれがある。
なお、実施例のサンプルS1〜S13のうち、サンプルS12は、温度変化換算値CT(900)の絶対値が1.8degであり、他の実施例のサンプルよりもやや大きい。このサンプルS12は、上記(4c)式および(4f)式から外れており、他のサンプルS1〜S11,S13は、上記(4a)〜(4g)式をすべて満足している。従って、上記(4a)〜(4g)式をすべて満足する組成とすれば、さらに高い耐熱性を有する導電性酸化物焼結体およびサーミスタ素子を提供できることが理解できる。
また、実施例のサンプルS1〜S13のうち、サンプルS6、S8、およびS9は、係数a〜fの値が共通しているが、元素Mが、それぞれCaのみ、CaおよびSr、Srのみ、である点で互いに異なる。これら3つのサンプルにおいて、温度変化換算値CT(900)の絶対値は、サンプルS6が0.4であり、サンプルS8が0.6であり、サンプルS9が0.7となっている。したがって、耐熱性の観点からは、元素MをCaおよびSrから選択される1種またはそれ以上の元素によって構成することが好ましく、元素Mとして少なくともCaを含むことがより好ましく、その際にはCaの含有割合が大きいほど好ましく、Caのみで構成することが最も好ましいと考えられる。
図5は、実施例のサンプルS6のX線回折結果を示す図である。図5に示すように、サンプルS6の導電性酸化物焼結体は、ペロブスカイト型結晶構造を有する単層の複合酸化物によって構成されることが確認された。図5では、一例としてサンプルS6の結果を示すが、他の実施例のサンプルの導電性酸化物焼結体も、ペロブスカイト型結晶構造を有する単層の複合酸化物によって構成されることが確認された(データ示さず)。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
200…温度センサ
202…サーミスタ素子
203…サーミスタ部
204…素子電極線
206…シース部材
212…金属チューブ
240…取付部材
250…ナット部材
260…筒状部材

Claims (5)

  1. 導電性酸化物焼結体において、
    カルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)から選択される1種またはそれ以上の元素をMとしたときに、組成式LaMnAlCrで表記されるペロブスカイト型結晶構造を有する結晶相を含み、前記a,b,c,d,e,fが、
    0.600≦a<1.000、
    0<b≦0.400、
    0≦c<0.150、
    0.500<d<0.950、
    0.050<e<0.500、
    0.50<e/(c+e)≦1.00、
    2.80≦f≦3.30、
    を満たすことを特徴とする導電性酸化物焼結体。
  2. 請求項1に記載の導電性酸化物焼結体であって、
    前記c,eが、
    0.65≦e/(c+e)≦1.00
    を満たすことを特徴とする導電性酸化物焼結体。
  3. 請求項1または請求項2に記載の導電性酸化物焼結体であって、
    前記a,b,c,d,e,fが、
    0.700≦a<1.000、
    0<b≦0.300、
    0≦c<0.14、
    0.600≦d<0.950、
    0.050<e≦0.400、
    0.65<e/(c+e)≦1.00、
    2.80≦f≦3.30、
    を満たすことを特徴とする導電性酸化物焼結体。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性酸化物焼結体で形成されたサーミスタ部を備えることを特徴とするサーミスタ素子。
  5. 請求項4に記載のサーミスタ素子を備えることを特徴とする温度センサ。
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