JP4307152B2 - サーミスタ素子用焼結体及びその製造方法、並びにサーミスタ素子、温度センサ - Google Patents

サーミスタ素子用焼結体及びその製造方法、並びにサーミスタ素子、温度センサ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、広い温度範囲において優れた温度検知性能を有するサーミスタ素子用焼結体を用いたサーミスタ素子、及び、温度センサに関する。更に詳しくは、検出温度の上限が1000℃程度であり、下限が好ましくは300℃以下であり、個体間のばらつきが小さいサーミスタ素子用焼結体を用いたサーミスタ素子、温度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子機器の温度補償や温度を検出する用途において、サーミスタ素子が広く用いられている。サーミスタ素子を温度検出に用いる場合、サーミスタ素子を構成するサーミスタ素子用焼結体に求められる性能としては、(1)B定数が小さいこと、(2)熱履歴に対して抵抗変化が小さいこと、そして、(3)抵抗値のばらつき及びB定数のばらつきが小さいことである。ここでB定数とは、所定の温度範囲に対する抵抗変化を示す指標であり、その値が小さいほど、温度変化に対する抵抗変化が小さいことを意味する。そして、上述した性能を有するサーミスタ素子用焼結体から形成されるサーミスタ素子は、(1)検知温度範囲が広く、(2)耐熱性に優れ、(3)温度検知精度が優れたものとなる。
【0003】
サーミスタ素子用焼結体としては、300〜1000℃の温度領域において安定した抵抗温度特性を示す、(Y,Sr)(Cr,Fe,Ti)Oを主成分とする焼結体が開示されている(例えば、特許文献1等)。この特許文献1に開示されているサーミスタ素子用焼結体の抵抗温度特性は、300℃で約100kΩ、900℃で約80Ωの抵抗値を示し、300〜900℃におけるB定数が約8000Kである。しかし、焼結体の構成元素としてTiを含有するためにB定数が大きくなる傾向にあり、200℃以下の温度では抵抗値はMΩ台と大きく、絶縁抵抗との識別がつかず、温度検知ができない抵抗温度特性となっている。
尚、上記組成を構成する元素の含有割合を変化させることによって、例えば、100℃付近の温度が検知できるように100℃における抵抗値を、絶縁抵抗と識別可能な500kΩ以下とすることも可能ではある。しかし、構成成分であるCr元素は揮発しやすいため、その揮発量の多少により素子(サーミスタ焼結体)個体間のB定数がばらつくといった問題点があった。
【0004】
また、Y(Cr,Mn)O+Yを主成分とするサーミスタ素子用焼結体も開示されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。これらの焼結体にはCrを含有しているために、焼結体個体間のB定数のばらつきは避けられない。
このように、300℃以下、好ましくは100〜1000℃程度の温度範囲において優れた温度検知性能を有し、個体間のB定数のばらつきが小さいサーミスタ素子用焼結体が求められている。
【0005】
【特許文献1】
特許第3254595号公報
【特許文献2】
特開平11−251108号公報
【特許文献3】
特開2002−124403号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の問題点を解決するものであり、個体間のB定数のばらつきが小さく、300℃付近から1000℃程度までの温度検知を可能とするサーミスタ素子用焼結体、更には、構成元素の含有量を所定量とすることによって検出温度の下限を100℃程度とし、熱履歴の前後において抵抗値の変化が小さく、且つ、耐久性に優れるサーミスタ素子用焼結体を用いてなるサーミスタ素子、更には温度センサを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の通りである。
[1] Sr、Y、Mn、Al、Fe及びOを含有するサーミスタ素子用焼結体であって、Srのモル数をx、Yのモル数を1−x、Mnのモル数をy、Alのモル数をz、Feのモル数を1―y−zとすると、0.090≦x≦0.178、0.090≦y≦0.178、z≧0.275、及び1−y−z≧0.025の各範囲にあり、ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物の各結晶相を含有すると共に、上記ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物以外の酸化物の結晶相として、Sr−Al系酸化物及びSr−Fe系酸化物の少なくとも一方の結晶相を含有するサーミスタ素子用焼結体を用いてなることを特徴とするサーミスタ素子。
[2] 上記サーミスタ素子用焼結体は、更に、Siを含有する上記[1]に記載のサーミスタ素子
[3] 上記サーミスタ素子用焼結体は、粉末X線回折分析により、上記ペロブスカイト型酸化物として、FeYO及び/又はAlYOが同定され、上記ガーネット型酸化物として、YAl12、AlFe12及びAlFe12酸から選ばれる少なくとも1種が同定される上記[1]又は[2]に記載のサーミスタ素子
[4] 上記ペロブスカイト型酸化物及び/又は上記ガーネット型酸化物のYサイトにはSrが、AlサイトにはMn及び/又はFeが、FeサイトにはAl及び/又はMnがそれぞれ固溶している上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のサーミスタ素子
[5] 上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のサーミスタ素子を用いてなることを特徴とする温度センサ。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のサーミスタ素子用焼結体は、Sr、Y、Mn、Al、Fe及びOを含有するサーミスタ素子用焼結体であって、ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物の各結晶相を含有すると共に、Sr−Al系酸化物及びSr−Fe系酸化物の少なくとも一方の結晶相を含有するものである。つまり、本発明のサーミスタ素子用焼結体は、Ti元素、更には揮発し易いCr元素を含有しない構成であるため、B定数を小さくすることができ、且つ量産した場合にサーミスタ素子用焼結体(ひいてはサーミスタ素子)の個体間におけるB定数のばらつきを小さくすることができる。その結果、少なくとも300℃付近から1000℃程度までの範囲内で温度検知が可能なサーミスタ素子用焼結体とすることができる。尚、Cr元素、Ti元素は、全く含有されないことが望ましいが、製造に用いる原料に不純物として含まれる場合や製造時に混入される場合等で不可避的に含まれることがある。そのため、サーミスタ素子用焼結体をEDSによる面分析(例えば、日本電子社製走査型電子顕微鏡「JED−2110型」を用いて加速電圧20kVで測定した場合)で実施したときにCr元素、Ti元素が検出されなければ、本明細書において「含有しない」ものと定義する。また、本発明のサーミスタ素子用焼結体は、Si元素を含有して形成することもできる。但し、本発明のサーミスタ素子用焼結体は、Si元素を含有せずとも形成することもできる。尚、このSi元素についても、製造に用いる原料に不純物として含まれる場合等で不可避的に含まれることがある。従って、本発明においては、サーミスタ素子用焼結体の化学分析を行ったときに検出されるSi元素を酸化物換算したときに、その量が0.3質量%以上でない場合には、Si元素は「実質的に無含有」であるものと定義する。
【0009】
上記ペロブスカイト型酸化物は、Y及び/又はSrが配置するサイトと、Al、Mn及びFeから選ばれる少なくとも1種が配置するサイトとから構成される酸化物であり、具体的には、FeYO、AlYO、MnYO、YFeO、YAlO、YMnO等が挙げられる。また、上記ペロブスカイト型酸化物は、それぞれのサイトにイオン半径が近い2種類以上の元素が固溶されることがあり、その場合には、Y(Fe,Al)O、Y(Fe,Mn)O、Y(Mn,Al)O、Y(Fe,Mn,Al)O、(Y、Sr)FeO、(Y、Sr)AlO、(Y,Sr)MnO、(Y、Sr)(Fe,Al)O、(Y,Sr)(Fe,Mn)O、(Y,Sr)(Mn,Al)O、(Y,Sr)(Fe,Mn,Al)O等の化学式によってペロブスカイト型酸化物を表すことができる。本発明のサーミスタ素子用焼結体には、ペロブスカイト型酸化物の結晶相として上記に例示した酸化物が1種単独で含まれていてもよいし、2種以上の組み合わせで含まれていてもよい。尚、上記Y(Fe,Al)Oにおいて、「(Fe,Al)」は、1つのサイトを占めるFe及びAlのいずれか一方に、他方が固溶していることを示す。以下も同じである。
【0010】
また、上記ガーネット型酸化物は、Y及び/又はSrが配置されるサイトと、Al、Mn及びFeから選ばれる少なくとも1種が配置されるサイトとから構成される酸化物であり、具体的には、YFe12、YAl12、YMn12等が挙げられる。また、上記ガーネット型酸化物は、それぞれのサイトにイオン半径が近い2種類以上の元素が固溶されることがあり、その場合には、AlFe12、AlFe12等を含む(Al,Fe)12、Y(Fe,Mn)12、Y(Mn,Al)12、Y(Fe,Mn,Al)12、(Y,Sr)Fe12、(Y,Sr)Al12、(Y,Sr)Mn12、(Y,Sr)(Fe,Al)12、(Y,Sr)(Fe,Mn)12、(Y,Sr)(Mn,Al)12、(Y,Sr)(Fe,Mn,Al)12等の化学式によってガーネット型酸化物を表すことができる。本発明のサーミスタ素子用焼結体には、ガーネット型酸化物の結晶相として上記に例示した酸化物が1種単独で含まれていてもよいし、2種以上の組み合わせで含まれていてもよい。
尚、サーミスタ素子用焼結体において、ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物の結晶相が生成されていることは、粉末X線回折分析により、JCPDSカードを用いて同定することができる。即ち、上記化学式は、JCPDSカードが存在する化合物の結晶ピークデータと照合して、その存在を確認することができる。従って、ペロブスカイト型酸化物として上記したFeYO及びAlYOの結晶相、ガーネット型酸化物として上記したYAl12、AlFe12、AlFe12の結晶相についても、粉末X線回折分析によって同定することができる。また、各サイトへの2種類以上の元素の固溶は、粉末X線回折パターン上に目的とする結晶構造以外の出発物質のピークがないことや、目的とする結晶構造の粉末X線回折パターンのピークシフトにより確認することができる。
【0011】
本発明のサーミスタ素子用焼結体には、上記例示した酸化物の結晶相以外に、Sr系酸化物の結晶相が含有している。このSr系酸化物としては、Sr−Al系酸化物、Sr−Fe系酸化物等が挙げられる。これらは1種単独で含まれてもよいし、2種以上の組み合わせで含まれてもよい。尚、本明細書において、「Sr−Al系酸化物」、「Sr−Fe系酸化物」とは、それぞれ、Sr元素とAl元素とを含む酸化物、Sr元素とFe元素とを含む酸化物の総称を指すものであって、Sr−Al−Fe系酸化物やSr−Al−Fe−Mn系酸化物等を含むものである。本明細書では、サーミスタ焼結体に対しEDSによる面分析を行ったとき、Sr元素及びAl元素の平均濃度がその両元素を除く他の元素の平均濃度よりも多く検出されれば、「Sr−Al系酸化物の結晶相」を含有するものとみなすことにする。Sr−Fe系酸化物についても同様とする。
【0012】
本発明のサーミスタ素子用焼結体を構成する元素の組成範囲は、Srのモル数をx、Yのモル数を1−x、Mnのモル数をy、Alのモル数をz、Feのモル数を1―y−zとすると、0.090≦x≦0.178、0.090≦y≦0.178、z≧0.275、及び1−y−z≧0.025である。x<0.090且つy<0.090では、100℃における初期抵抗が大きくなり、絶縁に近い状態となる傾向にあり、一方、x>0.178且つy>0.178では、素子の内部が空隙の多い組織となり導電特性を阻害し、特性が不安定になる傾向にある。また、z<0.275では、素子の結晶粒子が粒成長して大きくなり過ぎて、初期抵抗のばらつきが大きくなる傾向にある。1−y−z<0.025では、熱履歴に対して抵抗変化が大きくなる傾向がある。
つまり、上記元素の含有量を所定範囲とすることにより、300℃における焼結体の抵抗値を500kΩ以下とすることができ、また、900℃における抵抗値を35kΩ以上とすることができる。上記のような抵抗値を有すれば、上限が1000℃程度、下限が300℃程度までの範囲内にて、良好な温度検知性能を有するサーミスタ素子用焼結体とすることができる。また、上記元素の含有量を所定範囲とすることにより、熱履歴に対しても安定で、耐久性に優れるサーミスタ素子用焼結体とすることができる。
尚、上記説明した各含有量は、Siが含有する場合であっても成り立つ。
【0013】
上記各元素のより好ましい含有量は、0.120≦x≦0.166、0.120≦y≦0.166、0.494≦z≦0.793、0.080≦1−y−z、且つz/(1−y)≧0.55である。この範囲であれば、100℃における焼結体の抵抗値を500kΩ以下とすることができ、900℃における抵抗値を50Ω以上とすることができる。上記のような抵抗値を有すれば、上限が1000℃程度、下限が100℃程度までの範囲内にて、良好な温度検知性能を有するサーミスタ素子用焼結体とすることができる。更に、熱履歴に対しても安定で、耐久性に優れるサーミスタ素子用焼結体とすることができる。
【0014】
本発明のサーミスタ素子用焼結体を構成する結晶粒子の平均粒子径は、好ましくは7μm以下、より好ましくは0.1〜7μm、更に好ましくは0.1〜3μmである。結晶粒子の平均粒子径が大きくなり過ぎると、狙いとする材料組成に対しズレを生じたサーミスタ焼結体が得られることがあり、特性の不安定化を招く傾向がある。
【0015】
第1のサーミスタ素子を構成するサーミスタ素子用焼結体の製造方法は、Sr、Y、Mn、Al及びFeの各元素を含む各原料粉末を混合し、仮焼して仮焼粉末とし、その後、この仮焼粉末と、少なくともSi元素を含む焼結助剤と、を混合したサーミスタ合成粉末を成形する。そして、このようにして得られた成形体を焼成することで、ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物の各結晶相を含有すると共に、Sr−Al系酸化物及びSr−Fe系酸化物の少なくとも一方の結晶相を含有するサーミスタ素子用焼結体を得るのである。
【0016】
まず、出発原料としての原料粉末、即ち、Y、Sr、Fe、Mn及びAlの各元素を含む各化合物、例えば酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の粉末、好ましくは酸化物あるいは炭酸塩の粉末を、湿式混合等の方法で混合、乾燥した後、仮焼した後、仮焼粉末とする。その後、この仮焼粉末と焼結助剤とを混合し、粉砕して「サーミスタ合成粉末」を得る。尚、硫酸塩、硝酸塩を用いる場合には、水に溶解・混合した後に、加熱・重合し、乾燥させたものを仮焼して仮焼粉末とする手法が採用される。
【0017】
仮焼条件は特に限定されないが、好ましくは1100〜1500℃、より好ましくは1150〜1450℃の温度で、通常、1時間以上、好ましくは1.5時間以上である。また、仮焼雰囲気は特に限定されないが、通常、大気である。
【0018】
上記焼結助剤としては、Si元素を含むものを用いるものとし、例えば、SiO、CaSiO、SrSiO等が挙げられる。これらのうち、SiOが好ましい。また、これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。このSi元素を含む焼結助剤の配合量は、仮焼粉末全体を100質量部とした場合、通常、0.3〜10質量部、好ましくは0.3〜5質量部、更に好ましくは0.3〜3質量部である。かかる範囲とすることにより、低温による焼成が可能となり、強度が大きく、高温安定性に優れた素子用焼結体とすることができる。
【0019】
また、サーミスタ素子用焼結体を形成するために必要な上記原料粉末及び焼結助剤粉末の平均粒子径は特に限定されないが、通常、0.5〜2.0μm、好ましくは0.5〜1.5μmである。粒子径が大きすぎると均一に混合されないことがあり、サーミスタ素子特性のばらつきが大きくなる要因となる。
【0020】
また、仮焼粉末に少なくともSi元素を含む焼結助剤を混合し、粉砕することで得られるサーミスタ合成粉末は、更にバインダー及び溶剤又は水と混合される。バインダーとしては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。上記バインダーの配合量は、上記粉末成分全量に対して、通常、5〜20質量%、好ましくは10〜20質量%である。尚、上記バインダーと混合する際の上記サーミスタ合成粉末の平均粒子径は、2.0μm以下であることが好ましく、これによって、均一に混合することができる。
【0021】
次いで、これらの混合物を乾燥、造粒して金型プレス成形に適した流動性の良好な成形用粉末を得る。そして、この成形用粉末を用いて、所定の形状に成形する。その後、この成形体を焼成することにより、ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物の各結晶相を含有すると共に、Sr−Al系酸化物及びSr−Fe系酸化物の少なくとも一方の結晶相を含有するサーミスタ素子用焼結体を得ることができる。焼成条件は特に限定されないが、好ましい温度は1400〜1700℃、より好ましくは1400〜1650℃、更に好ましくは1400〜1600℃である。かかる範囲とすることにより、著しい結晶粒成長を抑制することができ、特性のばらつきを低減することができる。焼成時間は、通常、1〜5時間、好ましくは1〜2時間である。また、焼成雰囲気は特に限定されないが、通常、大気である。
【0022】
また、第2のサーミスタ素子用焼結体の製造方法は、Si元素が実質的に無含有であるとともに、Sr、Y、Mn、Al及びFeの各元素を含む各原料粉末を混合し、仮焼して仮焼粉末とし、その後、この仮焼粉末を粉砕して得られるサーミスタ合成粉末を成形し、次いで、得られた成形体を焼成することにより、ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物の各結晶相を含有すると共に、Sr−Al系酸化物及びSr−Fe系酸化物の少なくとも一方の結晶相を含有し、且つSiを実質的に無含有とするサーミスタ素子用焼結体を得るのである。
【0023】
上記仮焼粉末を得るまでの工程は、Si元素を含む焼結助剤を添加しない点を除き、上記第1のサーミスタ素子用焼結体の製造方法における説明と同様である。第2の製造方法においては、上記仮焼粉末を粉砕することによって、サーミスタ合成粉末とする。
その後、このサーミスタ合成粉末に、上記第1のサーミスタ素子用焼結体の製造方法と同様にして、バインダー及び溶剤又は水と混合し、得られる混合物の乾燥、造粒によって成形用粉末を得る。次いで、この成形用粉末を用いて成形し、上記と同様にして熱処理を行い、サーミスタ素子用焼結体を得る。
尚、出発原料としての原料粉末の平均粒子径等についても、上記第1のサーミスタ素子用焼結体の製造方法と同様である。
【0024】
また、上記第1及び第2のサーミスタ素子用焼結体の製造方法に関わる上記成形用粉末を用いてサーミスタ素子とする場合には、この成形用粉末及び一対の電極(この電極を構成する材料としては、耐熱性に優れたPt、Pt/Rh合金等が好ましい。)を用いて、所定の形状に成形する。その後、この一体化した成形体を焼成することにより、サーミスタ素子を得ることができる。焼成温度等は上記と同様であり、かかる範囲とすることにより、電極を構成する材料の劣化を抑制することもできる。
上記焼成は、サヤ内に素子を敷き詰めて蓋をして行うことで、特定成分の揮発を抑制することができ、また、Pt、Pt/Rh合金等の材料からなる板をサヤの底に敷いたり、焼結体と同じ材質からなるサヤを使用する等によってサヤへの成分の拡散を防止することができる。
【0025】
本発明のサーミスタ素子用焼結体あるいは上記サーミスタ素子は、上記焼成の後、必要に応じて、更に熱処理を行うことができる。その条件としては、例えば、800〜1100℃、好ましくは850〜1100℃、更に好ましくは900〜1100℃の温度で、30時間以上、好ましくは100時間以上、更に好ましくは200時間以上である。かかる温度及び処理時間で熱処理を行うことにより、サーミスタ素子用焼結体の抵抗温度特性を更に安定化することができる。また、熱処理を行う場合の雰囲気は、大気雰囲気でも、大気以外の特別な雰囲気でもよい。更に、上記焼成処理を終えてからこの熱処理を行うまでの時間についても特に限定はなく、焼結体の温度が室温まで低下した後に行うことが好ましい。
【0026】
本発明のサーミスタ素子用焼結体を用いて得られるサーミスタ素子の一例を図1に示す。サーミスタ素子2は、サーミスタ素子用焼結体1及び一対の電極9からなり、それぞれの電極9の一端側は、サーミスタ素子用焼結体1の内部に埋没している。素子の形状としては特に限定されず、ビード型以外に、ディスク型、ロッド型、ワッシャー型等のいずれであってもよい。
【0027】
本発明の温度センサは、上記サーミスタ素子用焼結体を用いてなるものである。また、サーミスタ素子用焼結体に電極が配設されたサーミスタ素子を用いてなるものであってもよい。温度センサの一例を図2に示す。図2は、自動車の排気ガス通路に設けられて排気ガス温度を検出するための温度センサの構造を示す部分破断側面図である。この温度センサは、サーミスタ素子2を有底筒状の金属チューブ3の内部に収容したものである。金属チューブ3は、その先端側3aが閉塞し、後端側3bが開放される。金属チューブ3の基端側3bには、フランジ4がアルゴン溶接される。フランジ4上には、六角ナット部5及びネジ部5bを有するナット5が回動自在に挿通される。フランジ4の基端側4aには、継手6がアルゴン溶接される。金属チューブ3、フランジ4及び継手6の内部には、一対のシース芯線7を内包するシース8が配置される。金属チューブ3の内部においてシース8の先端側8aへ突出するシース芯線7には、サーミスタ素子2がPt/Rh合金線9を介して接続される。金属チューブ3の先端側3aの内部には、酸化ニッケル製のペレット10が配置される。また、サーミスタ素子2の周囲にはセメント11が充填される。継手6の内部においてシース8の基端側8bへ突出するシース芯線7には、端子12を介して一対のリード線13が接続される。これらリード線13は、耐熱ゴム製の補助リング14に内包される。シース芯線7及びリード線13は互いにかしめ端子12により接続される。
【0028】
【実施例】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
〔1〕サーミスタ素子の製造
実施例1〜31
粉末(純度99.9%以上、平均粒子径1.1μm)、SrCO粉末(純度99.0%以上、平均粒子径0.5μm)、Fe粉末(純度99.2%以上、平均粒子径0.9μm)、MnO粉末(純度99.0%以上、平均粒子径1.2μm)、及びAl粉末(純度99.5%以上、平均粒子径0.6μm)、を用いて、Srのモル数をx、Yのモル数を1−x、Mnのモル数をy、Alのモル数をz、Feのモル数を1−y−zとした場合に、x、y及びzが表1〜3に示される値となるように秤量し、湿式混合した。その後、乾燥して粉末状とし、大気中、1400℃で2時間仮焼した。次いで、この仮焼粉末100質量部に対して1質量部の焼結助剤(SiO粉末、平均粒子径1.5μm)、を更に添加して、湿式粉砕、乾燥し、サーミスタ合成粉末を得た。
その後、このサーミスタ合成粉末100質量部に対して主成分をポリビニルブチラールとするバインダーを20質量部添加して混合、乾燥し、整粒して、造粒粉末を得た。
次いで、この造粒粉末を用いて、金型成型法にてプレス成形(プレス圧;4500kg/cm)して図1に示す一対の電極の一端側が埋設された六角形状(厚さ1.24mm)の成形体を得て、大気中、1550℃で1時間焼成して、実施例1〜31のサーミスタ素子を製造した。
【0029】
実施例32、33
粉末(純度99.9%以上、平均粒子径1.1μm)、SrCO粉末(純度99.0%以上、平均粒子径0.5μm)、Fe粉末(純度99.2%以上、平均粒子径0.9μm)、MnO粉末(純度99.0%以上、平均粒子径1.2μm)、及びAl粉末(純度99.5%以上、平均粒子径0.6μm)、を用いて、Srのモル数をx、Yのモル数を1−x、Mnのモル数をy、Alのモル数をz、Feのモル数を1−y−zとした場合に、x、y及びzが表3に示される値となるように秤量し、湿式混合した。その後、乾燥して粉末状とし、大気中、1400℃で2時間仮焼した。次いで、この仮焼粉末を湿式粉砕し、乾燥してサーミスタ合成粉末を得た。
その後、このサーミスタ合成粉末100質量部に対して主成分をポリビニルブチラールとするバインダーを20質量部添加して混合、乾燥し、整粒して、造粒粉末を得た。
次いで、この造粒粉末を用いて、金型成型法にてプレス成形(プレス圧;4500kg/cm)して図1に示す一対の電極の一端側が埋設された六角形状(厚さ1.24mm)の成形体を得て、大気中、1550℃で1時間焼成して、実施例32及び33のサーミスタ素子を製造した。尚、この実施例32及び33は、原料粉末において不可避的にSi元素が極微量含まれるものもあったが、上記実施例1〜31とは異なり、SiO粉末よりなる焼結助剤は添加していないものである。従って、得られるサーミスタ素子(サーミスタ素子用焼結体)には、Si元素が実質的に無含有の状態になっている。尚、Si元素が実質的に無含有であると判断するにあたり、本明細書では、得られたサーミスタ素子用焼結体の化学分析を行ったときに検出されるSi元素を酸化物換算したときに、その量が0.3質量%以上でない場合には、Si元素は「実質的に無含有」であるものとした。
【0030】
比較例1
粉末(純度99.9%以上、平均粒子径1.1μm)、SrCO粉末(純度99.0%以上、平均粒子径0.5μm)、Cr粉末(純度99.3%以上、平均粒子径0.5μm)、Fe粉末(純度99.2%以上、平均粒子径0.9μm)、及びTiO粉末(純度99.2%以上、平均粒子径1.8μm)、を用いて、Srのモル数をx、Yのモル数を1−x、Feのモル数をy、Tiのモル数をz、Crのモル数を1−y−zとした場合に、x、y及びzが表3に示される値となるように秤量した以外は、実施例1と同様にしてサーミスタ素子を得た。
【0031】
〔2〕サーミスタ素子の評価
2−1.組織観察
実施例1〜33で得られたサーミスタ素子を構成するサーミスタ焼結体の組織観察を、日本電子社製走査型電子顕微鏡「JED−2110型」を用いて加速電圧20kV、倍率2000倍で行った。この観察から、結晶の平均粒子径を算出した。その結果を表1〜表3に示す。また、得られた組織の反射電子像の例を実施例4及び18について図4及び図5に示す。
【0032】
2−2.結晶相の分析
実施例1〜33で得られたサーミスタ素子を構成するサーミスタ焼結体の粉末X線回折分析、及びEDS分析し、各焼結体に存在する結晶相を求めた。その結果を表1〜表3に併記した。また、得られたX線回折パターンの例を実施例4、18及び33について図6、図7及び図8に示す。検出ピークの同定は、JCPDSカードを用いて行った。
【0033】
【表1】
Figure 0004307152
【0034】
【表2】
Figure 0004307152
【0035】
【発明の効果】
本発明のサーミスタ素子によれば、所定の元素(Sr、Y、Mn、Al、Fe及びO)を含有するサーミスタ素子用焼結体は、Srのモル数をx、Yのモル数を1−x、Mnのモル数をy、Alのモル数をz、Feのモル数を1―y−zとすると、0.090≦x≦0.178、0.090≦y≦0.178、z≧0.275、及び1−y−z≧0.025の各範囲にあり、ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物の各結晶相を含有すると共に、上記ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物以外の酸化物の結晶相として、Sr−Al系酸化物及びSr−Fe系酸化物の少なくとも一方の結晶相を含有することで、個体間のB定数のばらつきが小さく、少なくとも300℃付近から1000℃程度までの範囲内で温度検知が可能なものとすることができる。焼結体を構成する元素として、Siを更に含む場合も同様である。
また、構成元素の含有量を上記の範囲内に設定することにより、300℃における焼結体の抵抗値が500kΩ以下、好ましくは100℃における抵抗値が500kΩ以下、900℃における抵抗値が35kΩ以上、好ましくは50kΩ以上となるサーミスタ素子用焼結体とすることができ、その結果、検出温度の上限が1000℃程度であり、従来(300℃以上)よりも低い温度(300℃未満、100℃付近まで)で温度検知が可能で、熱履歴に対する抵抗変化が小さいサーミスタ素子用焼結体とすることができる。
そして、このサーミスタ素子用焼結体を用いて得られるサーミスタ素子、更には温度センサによれば、広い温度範囲において優れた温度検知性能を有するものとして有用である。
【0036】
2−3.性能試験(抵抗値の測定、B定数及びB定数のばらつきの測定)
実施例1〜33及び比較例1で得られたサーミスタ素子50個の抵抗値(kΩ)を、100、300、600及び900℃において初期抵抗値として測定した。そして、得られた抵抗値に基づいて、下記式(1)によりB定数(K)を算出した。表に記載の数値は50個のデータの中央値に相当する素子の特性で、その実施例の代表値として示している。
B定数=ln(R/R)/(1/T−1/T) ・・・(1)
R;絶対温度T(K)のときの抵抗値(kΩ)
;絶対温度T(K)のときの抵抗値(kΩ)
尚、TはTより高い絶対温度である。
また、100〜900℃の範囲で見たB定数のばらつきを、50個のデータの3σがB定数の平均値に対して、どの程度のばらつきを有するかを下記式(2)により算出した。
B定数のばらつき(%)=3σ/平均値 ・・・(2)
以上の結果を表4〜表6に示す。また、各試料を組成別にプロットした3成分系状態図を図3に示す。各プロット近辺に付した数字は、100℃及び900℃の初期抵抗値である。尚、実施例32及び33のプロットは、図3には未表示である。
【0037】
【表4】
Figure 0004307152
【0038】
【表5】
Figure 0004307152
【0039】
【表6】
Figure 0004307152
【0040】
また、耐久性を調べるために、上記サーミスタ素子を大気中、1000℃で150時間熱処理し、上記と同様にして耐久後抵抗値として測定し、100、300、600及び900℃における耐久後抵抗値を用い、上記と同様にしてB定数を算出し、表4〜表6に併記した。
更に、上記熱処理後の抵抗変化率(%)を下記式(3)により求めた。
抵抗変化率={(R’−R)/R}×100 ・・・(3)
;熱処理前の絶対温度Tにおける抵抗値(kΩ)
’;熱処理後の絶対温度Tにおける抵抗値(kΩ)
また、上記抵抗変化率の温度換算値(℃)を下記式(4)により求めた。
温度換算値=〔(B×T)/{ln(R’/R)×T+B}〕−T・・・(4)
B;絶対温度Tにおける初期のB定数
以上の結果を表7に示す。
【0041】
【表7】
Figure 0004307152
【0042】
〔3〕実施例の効果
表1〜表3より、Sr、Y、Mn、Al、Fe、Si及びOを含有する実施例1〜31、並びに、Sr、Y、Mn、Al、Fe及びOを含有し、Siが実質的に無含有である実施例32及び33は、ペロブスカイト型酸化物(FeYO又はAlYO)、ガーネット型酸化物(YAl12又はAlFe12)を含有していると共に、Sr−Al系酸化物及びSr−Fe系酸化物の少なくとも一方を含有していることが分かる。また、実施例1〜33では、Sr−Y−OあるいはSr−Si−Y−O等も存在し得ることが分かる。
実施例4のサーミスタ素子(サーミスタ素子用焼結体)の粉末X線回折パターン(図6参照)からは、ペロブスカイト型構造のFeYO(JCPDSカードNo.39−1489)、ガーネット型構造のAlFe12(JCPDSカードNo.44−0227)、Sr−Fe系酸化物の存在を確認することができる。ここで、実施例4のサーミスタ素子においてSr−Al系酸化物が生成されていることは、微量であるため粉末X線回折では検出することができないが、EDSによる面分析を行うことによってその存在を確認することができる。尚、本明細書では、EDSによるサーミスタ焼結体の面分析を行ったとき、Sr元素及びAl元素の平均濃度がその両元素を除く他の元素の平均濃度よりも多く検出されれば、「Sr−Al系酸化物の結晶相」を含有するものとみなしている。また、図4に示す実施例4の反射電子像から、このサーミスタ素子を構成するサーミスタ焼結体の結晶粒子は角状で、平均粒子径は7μm程度と大きいことが分かる。
実施例18のサ−ミスタ素子(サーミスタ素子用焼結体)の粉末X線回折パターン(図7参照)からは、ペロブスカイト型構造のAlYO(JCPDSカードNo.33−0041)、ガーネット型構造のYAl12(JCPDSカードNo.09−0310)、Sr−Al系酸化物(SrAl;JCPDSカードNo.34−0379、SrAl;JCPDSカードNo.10−0065)、及びSi酸化物(SrSiO;JCPDSカードNo.39−1256)の存在を確認することができる。尚、図5に示す実施例18の反射電子像から、このサーミスタ素子を構成するサーミスタ焼結体の結晶粒子は小さく、緻密に構成されていることが分かる。
更に、実施例33のサーミスタ素子(サーミスタ素子用焼結体)の粉末X線回折パターン(図8参照)からは、ペロブスカイト型構造のAlYO、ガーネット型構造のYAl12、Sr−Al系酸化物(SrAl)、及びAl(JCPDSカードNo.34−0368又は14−0475)の存在を確認することができる。
【0043】
また、表4〜表6より、実施例1〜33は、Ti元素を含有しないサーミスタ素子であるため、初期特性が比較例1と比べてB定数が極めて小さく、更に揮発し易いCr元素を含有しないことからB定数のばらつきが比較例1と比べて小さく、2.0%以下であることが分かる。このようにTi元素、Cr元素を含有せず、ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物の結晶相を含有すると共に、Sr−Al系酸化物及びSr−Fe系酸化物の少なくとも一方の結晶相を含有する実施例1〜33のサーミスタ素子は、比較例1のそれよりもB定数のばらつきが小さく、且つ特性ばらつきが小さいため、優れた特性を有していることが分かる。実施例32及び33のように、Siを含有しない場合であっても同様に優れた性能を示す。
【0044】
表7より、実施例1及び2は、z<0.275であるため、また、実施例8〜10、26、28、29及び30は、x及びyが上記の好ましい範囲外であるため、更には、実施例31は、1−y−z<0.025であるため、抵抗変化率及び温度換算値がともにやや大きくなり、熱履歴に対してやや不安定な特性を示した。
一方、0.090≦x≦0.178、0.090≦y≦0.178、z≧0.275及び1−y−z≧0.025の範囲で組成比を変えて得られる実施例3〜7、11〜25、27、32及び33は、100、300、600及び900℃における温度換算値は全て10℃以内であり、熱履歴に対して安定な特性を示し、高い耐久性を有することが分かる。特に、0.126≦x≦0.166、0.126≦y≦0.166、z≧0.494、1−y−z≧0.080であり、且つAl/(Al+Fe)比の高い実施例13〜15及び17〜25は、100℃における抵抗値が500kΩ以下、且つ900℃における抵抗値が50Ω以上と小さくなり過ぎることなく、更に、温度換算値が全て8℃以内であり、広い温度範囲において優れた温度検知性能を有するとともに、熱履歴に対して非常に安定な特性を示すことが分かる。このように、特定の構成元素の割合を所定範囲内に設定することで、優れた温度検知性能を有するサーミスタ素子を提供可能なことが分かる。
【0045】
尚、参考例として、室温〜1000℃程度、少なくとも100〜1000℃程度の温度範囲において優れた温度検知性能を有し、熱履歴の前後において抵抗値の変化の小さいサーミスタ素子用焼結体を提供することを目的として、Sr、Y、Mn、Al、Fe及びOを含有し、Crを含有しないサーミスタ素子用焼結体であって、Srのモル数をx、Yのモル数を1−x、Mnのモル数をy、Alのモル数をz、Feのモル数を1−y−zとすると、0.090≦x≦0.178、0.090≦y≦0.178、z≧0.275、1−y−z≧0.025の各範囲にあるサーミスタ素子用焼結体を挙げることができる。このサーミスタ素子用焼結体を構成するSr、Y、Mn、Al、Fe及びOを含有する化合物は、Y - SrFe1−y−zMnAlδで表される。その結晶構造は、好ましくはペロブスカイト型(ABO)であり、例えば、Aサイトが(Y1−xSr)、Bサイトが(Fe1−y−zMnAl)である(Y1−xSr)(Fe1−y−zMnAl)Oで示される組成である。
【0046】
上記組成では、Aサイトを占めるYとSr、及びBサイトを占めるFeとMnとAlのイオン半径がそれぞれ近い値であるため、組成比を自由に変化させて、素子の抵抗値やB定数を容易に調整することができる。
また、Bサイトを占めるMnの酸化物は導電性が高く、一方、Alの酸化物は絶縁性が高いため、Mn及びAlの組成比を変化させることによって、目的のバルク導電特性を備えるサーミスタ素子とすることができる。更に、Feの酸化物は半導体的性質があるため、Feが含有されることによってバルク導電特性に一層変化を与えることができる。
【0047】
このサーミスタ素子用焼結体は、更に、焼結助剤由来成分を含有するものとすることができる。この焼結助剤由来成分としては、上記において例示した焼結助剤をそのまま適用することができる。
【0048】
ここで、上記x、y及びzの各モル数は、好ましくは0.095≦x≦0.175、0.095≦y≦0.175、z≧0.291及び1−y−z≧0.040であり、特に好ましくは0.126≦x≦0.166、0.126≦y≦0.166、z≧0.494及び1−y−z≧0.080である。
【0049】
また、上記目的を達成するために、Sr、Y、Mn、Al及びFeの各元素を含む原料粉末を混合し、仮焼した粉末に焼結助剤を添加したサーミスタ合成粉末を成形し、得られた成形体を焼成して得られ、Srのモル数をx、Yのモル数を1−x、Mnのモル数をy、Alのモル数をz、Feのモル数を1−y−zとすると、0.090≦x≦0.178、0.090≦y≦0.178、z≧0.275、1−y−z≧0.025の各範囲にあるサーミスタ素子用焼結体であるものとすることもできる。
【0050】
ここで、この製造方法は、上記第1において説明した製造方法をそのまま適用することができる。また、上記x、y及びzの各モル数は、上記において示した好ましい数値範囲をそのまま適用することができる。
【0051】
上記説明における具体例としては、上記実施例1〜31及び比較例1において説明することができる。即ち、表1〜表3におけるx、y、z及び1−y−zの各モル数を有する化合物からなるサーミスタ素子用焼結体は、表4〜表6に示した100、300、600及び900℃の各温度における抵抗値と、これらの抵抗値を求めて得られる100〜300℃、300〜600℃及び600〜900℃の各範囲におけるB定数と、から評価することができる。また、抵抗変化率及び温度換算値についても表7を適用することができる。
【0052】
このようなサーミスタ素子用焼結体によれば、所定の構成元素(Y、Sr、Fe、Mn、Al及びO)を含有する化合物の組成を所定の範囲内で設定することで熱履歴に対する抵抗変化が小さいサーミスタ素子用焼結体を得ることができる。また、更に限定された範囲内に設定することにより、従来(300℃以上)よりも低い温度(300℃未満、100℃付近まで)で使用可能で、熱履歴に対する抵抗変化が小さいサーミスタ素子用焼結体を得ることができる。また、上記のようにして製造されたサーミスタ素子用焼結体には、製造時にCr元素のような、易揮発成分がないために、特性のばらつきが小さい素子用焼結体とすることができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明のサーミスタ素子用焼結体によれば、所定の元素(Sr、Y、Mn、Al、Fe及びO)を含有する焼結体は、ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物の結晶相を含有すると共に、Sr−Al系酸化物及びSr−Fe系酸化物の少なくとも一方の結晶相を含有することで、個体間のB定数のばらつきが小さく、少なくとも300℃付近から1000℃程度までの範囲内で温度検知が可能なものとすることができる。焼結体を構成する元素として、Siを更に含む場合も同様である。
また、構成元素の含有量を、更に限定された範囲内に設定することにより、300℃における焼結体の抵抗値が500kΩ以下、好ましくは100℃における抵抗値が500kΩ以下、900℃における抵抗値が35Ω以上、好ましくは50Ω以上となるサーミスタ素子用焼結体とすることができ、その結果、検出温度の上限が1000℃程度であり、従来(300℃以上)よりも低い温度(300℃未満、100℃付近まで)で温度検知が可能で、熱履歴に対する抵抗変化が小さいサーミスタ素子用焼結体とすることができる。
本発明のサーミスタ素子用焼結体の製造方法によれば、ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物の結晶相を含有すると共に、Sr−Al系酸化物及びSr−Fe系酸化物の少なくとも一方の結晶相を含有するサーミスタ素子用焼結体を効率良く製造することができる。
本発明のサーミスタ素子用焼結体を用いて得られるサーミスタ素子、更には温度センサによれば、広い温度範囲において優れた温度検知性能を有するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】サーミスタ素子の一例を示す概略説明図である。
【図2】温度センサの一例を示す概略説明図である。
【図3】実施例1〜33のサーミスタ素子用焼結体の組成を3成分系状態図の形態で示す。中心から左下に向かってFeのモル数を、右下に向かってAlのモル数を、上に向かってSr又はMnのモル数を示す。
【図4】実施例4で得られた焼結体の組織のSEM像(反射電子像)を示す説明図である。
【図5】実施例18で得られた焼結体の組織のSEM像(反射電子像)を示す説明図である。
【図6】実施例4で得られた焼結体の粉末X線回折パターンを示す説明図である。
【図7】実施例18で得られた焼結体の粉末X線回折パターンを示す説明図である。
【図8】実施例33で得られた焼結体の粉末X線回折パターンを示す説明図である。
【符号の説明】
1;サーミスタ素子用焼結体、2;サーミスタ素子、3;金属チューブ、3a;金属チューブの先端側、3b;金属チューブの基端側、4;フランジ、4a;フランジの基端側、5;ナット、5a;六角ナット部、5b;ネジ部、6;継手、7;シース芯線、8;シース、8a;シースの先端側、8b;シースの基端側、9;電極、10;酸素濃度低下抑制用ペレット、11;セメント、12;かしめ端子、13;リード線、14;補助リング。

Claims (5)

  1. Sr、Y、Mn、Al、Fe及びOを含有するサーミスタ素子用焼結体であって、Srのモル数をx、Yのモル数を1−x、Mnのモル数をy、Alのモル数をz、Feのモル数を1―y−zとすると、0.090≦x≦0.178、0.090≦y≦0.178、z≧0.275、及び1−y−z≧0.025の各範囲にあり、ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物の各結晶相を含有すると共に、上記ペロブスカイト型酸化物及びガーネット型酸化物以外の酸化物の結晶相として、Sr−Al系酸化物及びSr−Fe系酸化物の少なくとも一方の結晶相を含有するサーミスタ素子用焼結体を用いてなることを特徴とするサーミスタ素子。
  2. 上記サーミスタ素子用焼結体は、更に、Siを含有する請求項1に記載のサーミスタ素子
  3. 上記サーミスタ素子用焼結体は、粉末X線回折分析により、上記ペロブスカイト型酸化物として、FeYO及び/又はAlYOが同定され、上記ガーネット型酸化物として、YAl12、AlFe12及びAlFe12酸から選ばれる少なくとも1種が同定される請求項1又は2に記載のサーミスタ素子
  4. 上記ペロブスカイト型酸化物及び/又は上記ガーネット型酸化物のYサイトにはSrが、AlサイトにはMn及び/又はFeが、FeサイトにはAl及び/又はMnがそれぞれ固溶している請求項1乃至3のいずれかに記載のサーミスタ素子
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載のサーミスタ素子を用いてなることを特徴とする温度センサ。
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