JP2006306700A - 水素発生材料、水素製造装置および燃料電池 - Google Patents

水素発生材料、水素製造装置および燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 低温で簡便に水素を発生することのできる水素発生材料、該水素発生材料を用いた水素製造装置および燃料電池を提供する。
【解決手段】 アルミニウム、マグネシウムおよびそれらの合金よりなる群から選択される少なくとも1種の金属材料を含有し、水との反応により水素を発生する水素発生材料であって、上記金属材料が、60μm以下の粒径の粒子を80質量%以上含有していることを特徴とする水素発生材料と、該水素発生材料を水素発生源とする水素製造装置および燃料電池である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水との反応により水素を発生し得る水素発生材料と、それを用いた水素製造装置および燃料電池に関するものである。
近年、パソコン、携帯電話などのコードレス機器の普及に伴い、その電源である二次電池はますます小型化、高容量化が要望されている。現在、エネルギー密度が高く、小型軽量化が図れる二次電池としてリチウムイオン二次電池が実用化されており、ポータブル電源として需要が増大している。しかし、使用されるコードレス機器の種類によっては、このリチウム二次電池では未だ十分な連続使用時間を保証する程度までには至っていない。
このような状況の中で、上記要望に応え得る電池の一例として、固体高分子型燃料電池が検討されている。電解質に固体高分子電解質、正極活物質に空気中の酸素、負極活物質に燃料(水素、メタノールなど)を用いる固体高分子型燃料電池は、リチウムイオン二次電池よりも高エネルギー密度化が期待できる電池系として注目されている。燃料電池は、燃料および酸素の供給さえ行えば、連続的に使用することが可能である。
燃料電池に用いる燃料に関しては、いくつかの候補が挙げられているが、それぞれ種々の問題点を有しており、最終的な決定が未だなされていない。燃料としてメタノールを用い、直接電極で反応させる直接メタノール型燃料電池は、小型化が容易であり将来のポータブル電源として期待されているが、メタノールのクロスオーバーによる電圧の低下の問題を抱えており、期待されるエネルギー密度が得られていない。
一方、燃料として水素を用いる場合には、例えば、高圧タンク或いは水素吸蔵合金タンクに蓄えた水素を供給する方法が一部で実用化されているが、体積および重量が大きくなり、エネルギー密度が低下するためポータブル電源として適さない。また、燃料として炭化水素系燃料を用い、それを改質して水素を取り出す方法もある。しかし、改質装置が必要となり、改質装置への熱の供給および断熱などの問題が生じるため、やはりポータブル電源としては適さないものである。
このような状況下において、100℃以下の低温で化学反応により水素を発生させて燃料として用いる方法が提案されている。これらの方法は、例えば、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、亜鉛など水と反応して水素を発生する金属を水素源とするものである(特許文献1〜5)。
アルミニウムとアルカリまたは酸とを反応させる上記特許文献1〜3に記載の方法によれば、化学的に簡便に水素が発生するが、アルミニウムに見合う当量のアルカリまたは酸を添加する必要があり、水素源以外の材料の比率が高くなることによるエネルギー密度の減少の問題が生じる。また、反応生成物である酸化物または水酸化物が上記金属の表面に皮膜を形成して、内部の金属と水とが接触できなくなり、酸化反応が上記金属の表面のみで停止するという問題が生じやすい。このため、特許文献3の技術では、アルミニウムの割合を85重量%以下として水素発生材料を構成している。
一方、機械的に表面皮膜を取り除くことにより上記問題を回避しようとする特許文献4の技術では、表面皮膜を取り除くための機械的設備が必要になるなど装置が大型化するという問題を生じる。特許文献5の技術では、上記水酸化物の皮膜を形成しにくくするための触媒としてアルミナを添加して、50℃という低温で水素を発生させている。しかし、アルミニウムだけでは水素が発生せず、一定量の触媒を添加する必要があるため、アルミニウムの含有量が低下するという問題がある。
米国特許第6506360号公報 特許第2566248号公報 特開2004−231466号公報 特開2001−31401号公報 特表2004−505879号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温で簡便に水素を発生することのできる水素発生材料、該水素発生材料を用いた水素製造装置および燃料電池を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の水素発生材料は、アルミニウム、マグネシウムおよびそれらの合金よりなる群から選択される少なくとも1種の金属材料を含有し、水との反応により水素を発生する水素発生材料であって、上記金属材料が、60μm以下の粒径の粒子を80質量%以上含有していることを特徴とするものである。
また、本発明には、少なくとも、本発明の水素発生材料を収容し、かつ水素の排出口を備えている反応容器と、上記反応容器内の上記水素発生材料に水を供給して水素を発生させる機構を有する水素製造装置も含まれる。
更に、本発明には、本発明の水素発生材料を水素燃料源とする燃料電池も包含される。
本発明の水素発生材料を燃料源とすることにより、低温で簡便に効率的に水素を製造することができるため、燃料電池に水素を供給する水素発生装置を小型で携帯可能なものとすることができ、燃料電池の小型化、発電効率の向上を実現することができる。
すなわち、本発明の水素発生材料を水素源とする本発明の水素製造装置および燃料電池は、簡便で小型のものとすることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の水素発生材料は、少なくとも、水との反応により水素を発生するアルミニウム、マグネシウムおよびそれらの合金からなる群より選択される少なくとも1種の金属材料を含有することを特徴とする。上記水素発生材料は、水と接触させることにより、その中に含まれる金属材料と水とが反応して水素を発生することができる。
上記金属材料は、通常は、表面に安定な酸化皮膜を形成するため、板あるいはブロックなどバルクの状態では、水との反応がほとんど進行せず、加熱された場合でも水素ガスの発生源となりにくいものであるが、微小な粒子になった場合は、水との反応を生じて水素を発生するようになり、特に、加熱された場合に、反応が加速されて優れた水素発生源として利用できる。一方、水と反応させないときは、上記酸化皮膜が存在するため、上記金属材料の空気中での取り扱いは比較的容易である。
例えば、上記金属材料がアルミニウムを含有する場合、水と反応して水素および酸化生成物を生成する反応は、下記式(1)〜(3)のいずれかで示される。
2Al+6HO→Al・3HO+3H (1)
2Al+4HO→Al・HO+3H (2)
2Al+3HO→Al+3H (3)
上記反応において、アルミニウムは表面に酸化皮膜を形成して安定化するが、上記反応は発熱反応であるため、反応時の温度が上昇して水との反応が生じやすくなり、水素発生反応が継続することになる。ただし、アルミニウムの粒径が大きすぎる場合は、反応が途中で進行しなくなることもあるため、アルミニウムの粒径をできるだけ小さくし、反応面積を大きくすることが望まれる。このことは、アルミニウム合金、マグネシウムおよびその合金の場合も同様である。
上記アルミニウム合金およびマグネシウム合金としては、その組成などは特に限定はされないが、水素発生に関係するアルミニウムあるいはマグネシウムの含有量が多い方が望ましく、これらの含有量が80質量%以上であるのがよく、85質量%以上であるのがより好ましい。すなわち、上記アルミニウム合金およびマグネシウム合金では、添加元素の含有量が、20質量%以下であるのが好ましく、15質量%以下であるのがより好ましい。一方、添加元素の種類にもよるが、その作用を充分に発揮させるためには、添加元素の含有量が2質量%以上であるのが好ましい。
アルミニウム合金における添加元素(合金元素)としては、例えば、ケイ素、鉄、銅、マンガン、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、チタン、鉛、スズ、およびクロムなどが挙げられ、これらの合金元素を2種以上含有しても構わない。中でも、ケイ素、マグネシウムまたは銅が特に好ましく、ケイ素の含有量は4〜13質量%、マグネシウムの含有量は2〜10質量%、銅の含有量は3〜6質量%であることが好ましい。ただし、これらの合金元素を2種以上含有する場合には、ケイ素、マグネシウムおよび銅を含む合金元素の合計量が、上記の好適値を満足するように調整することが推奨される。このような組成のアルミニウム合金であれば、純アルミニウムよりも硬度を高めることができ(例えば、ブリネル硬さで55〜95HB)、後述する表面酸化皮膜除去のための処理に好適な硬さとすることができる。また、水との反応性が高まって、水素発生量を増大させることも期待される。
また、マグネシウム合金における添加元素(合金元素)としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウム、ケイ素、鉄、銅、マンガン、ニッケルまたは希土類元素などを挙げることができ、これらの合金元素を2種以上含有しても構わない。特に、アルミニウム、亜鉛、およびジルコニウムよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有するのが好ましい。添加元素の種類によって、含有量の好適な範囲は異なり、例えば、アルミニウムの場合は4〜12質量%、亜鉛の場合は1〜8質量%、ジルコニウムの場合は0.2〜4質量%が、より好ましい含有量となる。ただし、これらの合金元素を2種以上含有する場合にはアルミニウム、亜鉛またはジルコニウムを含む合金元素の合計量が、上記の好適値を満足するように調整することが推奨される。上記元素の添加により、アルミニウム合金の場合と同様に、硬度を高めたり(例えば、ブリネル硬さで55〜95HB)、水素発生量を増大させたりすることが期待される。
金属材料の製造方法や形状は、特に限定されず、機械的粉化法やアトマイズ法などにより作製された、鱗片状、略球状、紡錘状、液滴状またはじゃがいも状など様々な形状の金属材料を用いることができるが、アトマイズ法のような急冷凝固法により形成された金属材料が好ましく用いられる。すなわち、急冷凝固法により上記金属材料を形成することにより、結晶粒が微細化して活性点となる粒界が増加し、水との反応が進行しやすくなることが期待される。また、急冷凝固法による金属材料では、水との濡れ性が比較的高いため、反応を生じやすいことも期待される。
アトマイズ法では、金属の溶湯を細い溶湯流として、ガスや回転ディスクなどのアトマイズによりせん断力を与えて分散して粉状(粒状)とする。ガスの場合の分散媒は、空気、または窒素やアルゴンなどの不活性ガスを使用することができ、分散媒体によって分散された溶体粒子が凝固時に吹き付けられる液体または気体によって急冷処理され、金属粉体が得られる。上記冷却媒体としての液体または気体には、水、液体窒素、空気、窒素、アルゴンなどが用いられる。
一方、機械的粉化法により得られた金属材料の場合、乾式での工程では、表面が潤滑剤で覆われることにより水との濡れ性が悪くなり、微粒子であっても反応が進行しにくいことがある。そのような場合は、後述する表面処理により濡れ性を高めてやればよい。
本発明の水素発生材料を構成する上記金属材料の形態としては、全金属材料粒子中に、60μm以下の粒径の粒子を80質量%以上含有している。このような形態の金属材料で構成される水素発生材料であれば、例えば40℃程度の穏和な条件で水素を発生させることができる。
また、低温でも水との反応をより効率よく生じさせるためには、上記金属材料は、全てが100μm以下の粒径の粒子であることが好ましく、全てが50μm以下の粒径の粒子であることがより好ましい。また、上記金属材料の平均粒径は、30μm以下であることが好ましく、特に、平均粒径を20μm以下とした場合には、反応効率をより一層向上させることが可能となる。
一方、金属材料の粒径が小さいほど、水素発生速度が増加するが、0.1μmより粒径が小さくなると、空気中での安定性が低下して取り扱いが困難になり、更に、嵩密度が小さくなって水素発生材料の充填密度が低下することから、金属材料の粒径は0.1μm以上とすることが好ましい。
上記金属材料の粒径は、例えば、レーザ回折・散乱法により測定することができる。具体的には、水などの液相に分散させた測定対象物質にレーザ光を照射することによって検出される散乱強度分布を利用した粒子径分布の測定方法であり、その測定装置としては、例えば、日機装株式会社製「マイクロトラックHRA」などを用いることができる。より簡便には、篩による粒子の分級で目的とする粒度を有する金属材料を得ることができ、例えば、目開きが50μmの篩で金属材料を分級することにより、粒径が50μm以下の粉末を得ることができる。なお、本発明における平均粒径は、体積基準の積算分率における50%径の値を意味している。
本発明の水素発生材料は、上記金属材料と共に、常温で水と反応して発熱する発熱材料を含有していることが好ましい。上記発熱材料は、水と反応して発熱し、金属材料と水との反応を促進する働きを有している。よって、上記発熱材料を含有する水素発生材料であれば、常温の水を供給しても、その反応系内において、水素発生速度を高め得る程度に昇温しつつ、水と上記金属材料との反応が進行するため、より簡便かつ効率的に水素を発生させることができる。
上記発熱材料としては、水との反応により水酸化物となったり、水和することにより発熱する化合物、例えば、アルカリ金属の酸化物(酸化リチウムなど)、アルカリ土類金属の酸化物(酸化カルシウム、酸化マグネシウムなど)、アルカリ土類金属の塩化物(塩化カルシウム、塩化マグネシウムなど)、アルカリ土類金属の硫酸化合物(硫酸カルシウムなど)などが挙げられる。
なお、鉄粉のように酸素と反応して発熱するものも知られているが、水素発生反応時に、発熱反応のための酸素を導入しなければならず、本発明の水素発生材料のように、水素発生源である金属材料と、発熱材料とが同一の反応系内に置かれる場合には、導入した酸素によって発生する水素の純度が低下し、また、導入した酸素によって金属材料酸化されて水素発生量が低下するなどの問題を生じることがある。よって、本発明では、発熱材料を用いる場合には、上述したように、水との反応により発熱する材料が好適に用いられる。
本発明の水素発生材料に係る金属材料は、上記のように微小な粒径を有していることから、発熱材料と均一に混合することにより、金属材料全体が加熱されて水と効率よく反応して水素を発生するようになるため、発熱材料の割合を減らして、水素発生源となる金属材料を多く含有させることが可能である。一方、金属材料として上記のように微小な粒子を用いる場合、発熱材料の割合が多いと、反応が急速に進みすぎて発熱が激しくなり、水素発生反応を制御できなくなる虞が生じる。よって、水素発生材料における金属材料と発熱材料の総量中、発熱材料の割合は、20質量%以下にすることが好ましく、15質量%未満にすることがより好ましく、10質量%以下にすることが更に好ましい。すなわち、水素発生材料における金属材料と発熱材料の総量中、金属材料の割合は、80質量%以上にすることが好ましく、85質量%より多くすることがより好ましく、90質量%以上にすることが更に好ましい。
ただし、水素発生材料が発熱材料を含まない場合、室温付近の低温では水素発生反応を開始しないか、反応開始までかなりの時間を要する。そのため、本発明の水素発生材料には、発熱材料を、金属材料と発熱材料の総量中の割合で1質量%以上含有させることが好ましく、3質量%以上含有させることがより好ましい。すなわち、水素発生材料における金属材料と発熱材料の総量中、金属材料の割合は、99質量%以下とすることが好ましく、97質量%以下とすることがより好ましい。水素発生材料に上記発熱材料を含有させない場合は、外部から加熱して反応を促進させることが望まれる。
発熱材料の含有量により、反応時の温度や水素発生速度をある程度制御することができるが、反応時の温度があまり高くなりすぎると、水素発生反応が急激に進行して制御できなくなるため、反応温度が120℃以下になるように発熱材料の添加量を調整することが好ましく、反応に用いる水が蒸発して失われるのを防ぐため、反応温度が100℃以下になるように発熱材料の添加量を調整することがより好ましい。一方、水素発生反応の効率の点からは、反応温度が40℃以上となることが好ましい。
上記発熱材料を含有する水素発生材料は、上記金属材料と上記発熱材料を混合することにより得ることができる。なお、金属材料と発熱材料との混合の際には、金属材料のみが1mm以上の凝集体にならないようにすることが好ましい。例えば、金属材料と発熱材料を撹拌混合することにより、金属材料が凝集するのを抑制しつつ、水素発生材料を作製することができる。また、金属材料の表面に発熱材料をコーティングして複合化し、水素発生材料としてもよい。
なお、上記金属材料はそのまま用いてもよいが、発熱材料と混合する前に、上記金属材料の表面酸化皮膜など反応を阻害する皮膜を除去したり、表面を腐食させて親水性を向上させることなどにより、金属材料の表面の反応性を向上させる表面処理を行うと、水素発生速度が向上するので好ましい。表面処理の具体的手段は特に限定されないが、後記の化学的処理または機械的処理などが好ましく用いられる。
上記化学的処理としては、アルカリ水溶液(pH=9〜14の水溶液)で金属材料の表面を溶解する処理などが挙げられる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、またはアンモニアの水溶液などを用いることができる。また、上記機械的処理としては、不活性ガス雰囲気中または溶媒(水;トルエン、エタノール、アセトンなどの有機溶媒;など)中で機械的に撹拌する処理などが挙げられる。
上記の表面処理によって表面皮膜を除去した金属材料は、再び表面が酸化されないように不活性ガス雰囲気で発熱材料と混合することが好ましい。
本発明の水素発生材料の形状は特に限定されないが、例えば、充填密度を高くするために、ペレット状に圧縮成形したり、顆粒状に圧縮成形したりすることも可能である。
本発明の水素発生材料には、親水性酸化物(アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、ゼオライト、酸化亜鉛など)、炭素、吸水性高分子(カルボキシメチルセルロースなどのセルロース類、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸など)などの反応促進剤を添加してもよい。上記添加剤(反応促進剤)により、金属材料と水との接触が良好になる;金属材料が水と反応することにより生成した反応生成物と、未反応の金属材料とが凝結するのを防ぐ;水素発生材料をペレットにした場合には、ペレット内部まで水が浸透しやすくなる;などの効果があると考えられる。
本発明の水素発生材料は、反応容器中で水と反応させて、燃料電池の燃料源となる水素を取り出すことができる。このとき、水素発生材料に反応させる水の供給を制御することにより、発生水素量を制御することができる。すなわち、本発明の水素発生材料は、水素の排出口を備えており、かつ水素発生源を収容している反応容器(水素発生源と水とを反応させるための反応容器)と、該反応容器内へ水を供給する手段を有する水素製造装置において、水素発生源として用いることができる。
上記反応容器は、水素発生材料を収容可能であれば、その材質や形状は特に限定されないが、水および水素を透過しにくく、かつ100℃程度に加熱しても容器が破損しない材質が好ましい。例えば、アルミニウム、鉄などの金属;ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂;耐熱ガラス;などを好適に用いることができる。また、上記水供給手段も特に限定されず、反応容器の外部から水を供給する場合には、例えば、反応容器に水の供給口を設けて、ポンプなどを接続して容器内に水を供給できるようにすればよい。
ここで、水素発生材料を内部に収容した反応容器、すなわち水素製造装置は、電子機器本体や燃料電池本体に着脱可能なカートリッジとすることもできる。この場合、携帯に便利なように、反応容器内部に水を貯蔵する貯蔵部を設けておいてもよく、この貯蔵部から水素発生材料に水を供給できるような構成とすることにより、上記水の供給口やポンプなどを省き、少なくとも水素の排出口を反応容器に設けておくだけで、水素製造装置を構成することも可能になる。このため、容器の外部から水を供給する水素製造装置に比べて、装置の簡略化や小型化が容易となり、携帯用燃料源としてより好ましい構成とすることができる。
なお、反応容器内に設ける上記水の貯蔵部は、例えば、ポリエチレンフィルムなどの樹脂フィルムなどで構成された袋に水を封入することにより構成することができ、袋に穴を開けるなどの簡便な手段により、貯蔵部内の水を水素発生材料に接触させてやれば、水素の発生が可能となり、水素製造装置として機能させることができる。
本発明の水素発生材料を用いて発生させた水素は、炭化水素系燃料の改質で製造する水素で問題にされているCOおよびCOを含まないため、100℃以下で作動する固体高分子型燃料電池に用いても、上記気体による被毒が生じない。また、水素発生反応に水が関与するため、発生する水素ガスは適度な水分を含んでおり、水素を燃料とする燃料電池における水素供給源として、非常に有用である。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
ガスアトマイズ法により作製された平均粒径:3μmのアルミニウム粉末(ただし、粒径が60μm以下の粒子の割合:100質量%)と酸化カルシウム粉末とを、表1に示す割合で、乳鉢で混合して、水素発生材料を作製した。
この水素発生材料1gをサンプル瓶に入れ、水を4g加えて48時間放置し、その間に発生する水素を捕集した。試験は室温で行い、捕集した水素の体積を測定して水素発生量とした。結果を表1に示す。なお、発熱材料を1質量%含む水素発生材料では、試験中の水素発生材料の反応温度は、最高で89℃に達した。
実施例2
平均粒径:3μmのアルミニウム粉末に代えて、平均粒径:30μmのアルミニウム粉末(ただし、粒径が60μm以下の粒子の割合:100質量%)を表2に示す量で混合した以外は、実施例1と同様にして水素発生材料を作製し、水素発生量を求めた。結果を表2に示す。
実施例3
酸化カルシウム粉末に代えて、塩化カルシウム粉末を用いた以外は、実施例2と同様にして水素発生材料を作製し、水素発生量を求めた。結果を表2に併せて示す。
実施例4
平均粒径:3μmのアルミニウム粉末に代えて、篩により選別した粒径45μm以下のマグネシウム粉末を用いた以外は、実施例1と同様にして水素発生材料を作製し、水素発生量を求めた。結果を表2に示す。
比較例1
平均粒径:3μmのアルミニウム粉末に代えて、平均粒径:150μmのアルミニウム粉末(ただし、粒径が60μm以下の粒子の割合:16質量%)を用いた以外は実施例1と同様にして水素発生材料を作製し、水素発生量を求めた。結果を表2に示す。
比較例2
平均粒径:3μmのアルミニウム粉末に代えて、平均粒径:150μmのマグネシウム粉末(ただし、粒径が60μm以下の粒子の割合:12質量%)を用いた以外は実施例1と同様にして水素発生材料を作製し、水素発生量を求めた。結果を表2に示す。
比較例3
平均粒径:3μmのアルミニウム粉末に代えて、平均粒径:5μmのケイ素粉末を用いた以外は実施例1と同様にして水素発生材料を作製し、水素発生量を求めた。結果を表2に示す。
比較例4
平均粒径:3μmのアルミニウム粉末に代えて、平均粒径:7μmの亜鉛粉末を用いた以外は実施例1と同様にして水素発生材料を作製し、水素発生量を求めた。結果を表2に示す。
Figure 2006306700
Figure 2006306700
水素発生材料中の金属材料の粒径を小さくし、60μm以下の粒子の割合を80質量%以上とした実施例1〜4の水素発生材料では、同じ金属材料で比較した場合、大きな粒径の材料を用いた比較例1または比較例2の水素発生材料よりも、水素発生量を多くすることができ、反応の効率化を図ることができた。このため、発熱材料の割合を15質量%未満に低減しても、金属材料と水との反応を継続させることができ、発熱材料の割合が少ない方が、むしろ反応効率が高くなることが分かった。
特に、金属材料の平均粒径を3μmとした実施例1では、発熱材料の割合がわずか1質量%であっても、水素発生量の理論値(Al:1g当たり約1.3リットル)の約70%に相当する水素ガスを得ることができ、100℃以下の穏和な条件下でも、水素発生反応を効率よく進行させることができた。
また、金属材料としてケイ素および亜鉛を用いた比較例3および比較例4の水素発生材料では、平均粒径が10μm以下の微小粒子を用いたにも関わらず、水素発生量が少なかったことから、水素発生源となる金属材料としては、アルミニウムまたはマグネシウムが他の金属材料よりも好適であることが分かった。
なお、比較例1の水素発生材料では、60μm以下の粒子を16質量%しか含まないアルミニウム粉末を用いたにも関わらず、ある程度の量の水素ガスを発生させることができたが、これは、ガスアトマイズ法により作製されたアルミニウム粉末を用いたことにより、水との反応性が高まったためと考えられる。
実施例5
実施例1と同様にして作製した水素発生材料[アルミニウム:酸化カルシウム=85:15(質量比)のもの]1gを、40MPaの圧力で加圧成形することにより、12mmφのペレットを作製した。このペレットを用い、実施例1と同様の方法により水素発生量を求めた。結果を表3に示す。
実施例6
実施例1と同様にして作製したアルミニウム粉末と酸化カルシウム粉末との混合物[アルミニウム:酸化カルシウム=85:15(質量比)のもの]1gに、更に平均粒径:1μmのアルミナ0.05gを加え、乳鉢で混合して水素発生材料を作製した以外は、実施例5と同様にしてペレット状の水素発生材料を形成し、水素発生量を求めた。結果を表3に示す。
Figure 2006306700
上記実施例5および実施例6の結果より、本発明の水素発生材料は、成形された状態でも水素発生反応を生じることが確認された。また、アルミナを添加することにより、反応効率が向上することも確認された。
実施例7
実施例1で用いたものと同じアルミニウム粉末のみからなる水素発生材料1gと、水2gとを、外側に加熱用の抵抗体を配置したサンプル瓶に入れ、抵抗体に通電することにより容器を種々の温度で加熱して、水素発生材料を水と反応させ、発生した水素を水上置換法により捕集して、実験開始から20時間にわたり水素発生量および生成速度を測定した。この間の水素発生量(総量)と水素の最大生成速度を表4に示す。なお、加熱を止めて水素発生材料および水を放冷すると、数分後に水素発生が止まることを確認した。
実施例8
添加する水の量を10gとし、加熱温度を50℃とし、表5に示す種々の平均粒径のアルミニウム粉末を用いた以外は、実施例7と同様にして水素発生量および生成速度を測定した。結果を表5に示す。
比較例5
比較例1で用いたものと同じアルミニウム粉末をそのまま用いた以外は、実施例8と同様にして水素発生量および生成速度を測定した。結果を表5に併せて示す。
比較例6
平均粒径が55μmのアルミニウム粉末(ただし、粒径が60μm以下の粒子の割合:70質量%)を用いた以外は、実施例8と同様にして水素発生量および生成速度を測定した。結果を表5に併せて示す。
実施例9
比較例6で用いた平均粒径:55μmのアルミニウム粉末を、250メッシュの篩を用いて篩い分けした。篩を通過したアルミニウム粉末は、60μm以下の粒子を87質量%含んでいた。この篩いを通過したアルミニウム粉末1gを用いて、実施例8と同様にして水素発生量および生成速度を測定した。結果を表5に併せて示す。
Figure 2006306700
Figure 2006306700
本発明の水素発生材料に含まれる金属材料は、表4に示すように、30℃以下の温度では水との反応を生じにくいため、実施例1に示すような発熱材料を含まない場合、外部から加熱するなどの方法により反応を開始させることが望ましい。この場合、40℃程度の穏和な条件下でも反応が進行するので、少なくとも40℃以上に加熱されれば、充分な反応効率が得られるものと考えられる。従って、簡易な加熱設備でも水素を生成させることができ、燃料源の小型化・簡素化が要求される小型の燃料電池用の水素源として好適に用いることができる。
また、表5の結果より明らかなように、金属材料として、粒径の小さな粒子のみ選別して用いることにより、水素発生反応を生じやすくすることができ、特に、平均粒径を20μm以下とした場合に、反応効率を著しく向上させることが可能となる。
実施例10
JIS規格 ADC6合金(切削屑)を水中で機械的に撹拌して、平均粒径が10μmのアルミニウム合金粉末(Al含有量:97質量%、Mg含有量:2.5質量%、粒径が60μm以下の粒子の割合:100質量%)を作製した。上記金属材料と酸化カルシウム(アルドリッチ製)とを、表6に示す割合で乳鉢を用いて混合し、水素発生材料を作製した。以下、実施例1と同様にして水素発生量を測定した。結果を表6に示す。なお、発熱材料を1質量%含む水素発生材料では、試験中の水素発生材料の反応温度は、最高で87℃となっていた。
実施例11
アルミニウム合金粉末の平均粒径を50μm(ただし、粒径が60μm以下の粒子の割合:82質量%)とし、表6に示す割合で酸化カルシウムと混合した以外は、実施例10と同様にして水素発生材料を作製し、水素発生量の測定を行った。結果を表6に示す。
実施例12
アルミニウム合金粉末を、ADC3合金(Al含有量:88質量%、Si含有量:10質量%、Mg含有量:0.5質量%)、ADC1合金(Al含有量:85質量%、Si含有量:12質量%)、AC4B合金(Al含有量:80質量%、Si含有量:10質量%、Cu含有量:4質量%)にそれぞれ変更した以外は、実施例11と同様にして3種類の水素発生材料を作製し、水素発生量の測定を行った。結果を表6に示す。
実施例13
アルミニウム合金に代えて、マグネシウム合金[JIS規格 MC10合金(切削屑、Mg含有量:94質量%、Zn含有量:4質量%、Zr含有量:0.8質量%)]を用いた以外は、実施例11と同様にして水素発生材料を作製し、水素発生量の測定を行った。結果を表7に示す。なお、発熱材料を1質量%含む水素発生材料では、試験中の水素発生材料の反応温度は、最高で80℃となっていた。
実施例14
マグネシウム合金粉末の平均粒径を50μm(ただし、粒径が60μm以下の粒子の割合:82質量%)とし、表7に示す割合で酸化カルシウムと混合した以外は、実施例13と同様にして水素発生材料を作製し、水素発生量の測定を行った。結果を表7に示す。
実施例15
マグネシウム合金粉末を、MC12合金(Mg含有量:92質量%、Zr含有量:0.8質量%)、MDC1B合金(Mg含有量:90質量%、Al含有量:8.5質量%)、MC3合金(Mg含有量:87質量%、Al含有量:9.5質量%、Zn含有量:2質量%)にそれぞれ変更した以外は、実施例14と同様にして3種類の水素発生材料を作製し、水素発生量の測定を行った。結果を表7に示す。
Figure 2006306700
Figure 2006306700
上記実施例10〜15では、アルミニウム合金あるいはマグネシウム合金を用いたことにより、金属材料の表面処理を容易に行うことができ、水素発生量を増大させることができた。
実施例16
図1に示す収容容器2と蓋3とからなる反応容器1に、実施例5と同様にして作製した水素発生材料6を収容し、チューブポンプ8を用いて、水の供給口4から0.05ml/minの割合で水7を容器内に連続的に供給することにより、水素発生材料6と水7とを反応させて水素を発生させ、これを水素の排出口5を通じて取り出し、酸素を還元する正極と、水素を酸化する負極と、前記正極と負極との間に配置された固体電解質とからなる固体高分子型燃料電池に供給し、燃料電池による発電量を測定した。その結果、室温で200mW/cmの高出力が得られ、燃料電池を駆動する燃料源として充分に機能することが確認された。なお、上記実験においては、チューブポンプ8による水の供給を停止すると、数分後に水素発生が止まることを確認し、水の供給を制御することにより水素発生量を制御できることが確認された。
本発明の水素発生材料を水と反応させて水素を取り出すための水素発生装置を示す模式図である。
符号の説明
1 反応容器
2 収容容器
3 蓋
4 水の供給口
5 水素の排出口
6 水素発生材料
7 水
8 ポンプ

Claims (17)

  1. アルミニウム、マグネシウムおよびそれらの合金よりなる群から選択される少なくとも1種の金属材料を含有し、水との反応により水素を発生する水素発生材料であって、
    上記金属材料が、60μm以下の粒径の粒子を80質量%以上含有していることを特徴とする水素発生材料。
  2. 常温で水と反応して発熱する発熱材料を更に含有する請求項1に記載の水素発生材料。
  3. 上記金属材料と上記発熱材料との総量中、金属材料の割合が、85質量%超で、99質量%以下である請求項2に記載の水素発生材料。
  4. 上記発熱材料が、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよび硫酸カルシウムよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項2または3に記載の水素発生材料。
  5. 上記発熱材料が、酸化カルシウムである請求項2または3に記載の水素発生材料。
  6. 上記金属材料が、アルミニウムまたはアルミニウム合金である請求項1〜5のいずれかに記載の水素発生材料。
  7. 上記金属材料が、アルミニウム合金またはマグネシウム合金であり、合金中の添加元素の含有量が2〜20質量%である請求項1〜6のいずれかに記載の水素発生材料。
  8. 上記アルミニウム合金またはマグネシウム合金の含有する添加元素が、ケイ素、鉄、銅、マンガン、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、チタン、鉛、スズおよびクロムよりなる群から選択される少なくとも1種の元素である請求項7に記載の水素発生材料。
  9. 上記金属材料の粒径が、0.1μm以上である請求項1〜8のいずれかに記載の水素発生材料。
  10. 上記金属材料の平均粒径が、30μm以下である請求項1〜9のいずれかに記載の水素発生材料。
  11. 上記金属材料は、アトマイズ法により作製された粉末である請求項1〜10のいずれかに記載の水素発生材料。
  12. 上記金属材料は、化学的手段または機械的手段により、表面の反応性を向上させる表面処理が行われたものである請求項1〜11のいずれかに記載の水素発生材料。
  13. 上記金属材料は、溶媒中で機械的に撹拌されて表面処理されたものである請求項12に記載の水素発生材料。
  14. ペレット状または顆粒状に成形されている請求項1〜13のいずれかに記載の水素発生材料。
  15. 少なくとも、請求項1〜14のいずれかに記載の水素発生材料を収容し、かつ水素の排出口を備えている反応容器と、上記反応容器内の上記水素発生材料に水を供給して水素を発生させる機構を有することを特徴とする水素製造装置。
  16. 上記反応容器内に、水を貯蔵する貯蔵部を有しており、上記貯蔵部から上記水素発生材料に水を供給する機構を有する請求項15に記載の水素製造装置。
  17. 請求項1〜14のいずれかに記載の水素発生材料を水素燃料源とすることを特徴とする燃料電池。
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