従来より、読み出し専用半導体記憶装置として、マスクROMが知られている。マスクROMは、データをあらかじめ回路として作成しておくので、PROMやEEPROMとは異なり、すぐに読み出しができ、書き込み回路などが不要な分コストが安い。このためマスクROMは、システム上で書き込みを行わない固定データの記憶が必要とされる機器、例えば家庭用ゲーム機のプログラムカセットや大量生産される家電製品などにおいて、一般に広く使われている。
マスクROMの方式には、(1)メモリトランジスタをビット線に接続するか否かを拡散層マスク切り換え方式、(2)メモリトランジスタの導通状態をそのチャネル領域にイオン注入がされているか否かにより切り替えるイオン注入マスク切り換え方式、(3)コンタクトの有無によりメモリトランジスタをビット線に接続するか否かを切り換えるコンタクトマスク切り換え方式などがある。
図6は、従来例に係るコンタクトマスク切り換え方式によるマスクROMの回路図である。
図6に示すように、複数のワード線WLi(i=1,・・・,m)と複数のビット線BLj(j=1,・・・,n)が、互いに交差して配置されている。ワード線WLj及びビット線BLjの本数は、必要なメモリ容量に応じて適宜選択することができる。これら複数のワード線WLi及び複数のビット線BLjの各交差点に対応して、複数のメモリトランジスタMTijが配置されている。
この複数のメモリトランジスタMTijの各ソースには電源電位Vddが供給されている。また、メモリトランジスタMTijはドレインがビット線BLjに接続されるか否かに応じてデータを記憶するものであるため、ドレインが対応するビット線BLjに接続されているものと接続されていないものとがある。なお、上記ドレインとビット線BLjとの接続は、不図示のコンタクトホールに埋め込まれた電極を介して行われる。
各ゲートはそれぞれ対応するワード線WLiに接続されている。そして、複数のワード線WLiは、アドレス信号ADDRに応じて所定のワード線WLiを選択するワード線選択回路WSに接続されている。複数のビット線BLjには、それぞれビット線選択用トランジスタSTjが接続されている。これらのビット線選択用トランジスタSTjのゲートにはビット線選択回路BSからのビット線選択信号φsが印加される。
そして、各ビット線選択用トランジスタSTjは、初期設定線ILを介して、初期設定回路PHに接続されている。この初期設定回路PHは、ビット線選択回路BSによって接続されたビット線BLjをプリチャージ電位Vp(例えば接地電位)に初期設定するものであり、かつ当該プリチャージ電位Vpを持続的に保持する保持回路を有するものである。
また、初期設定線ILには読み出し回路RCが接続されている。この読み出し回路RCは、各ビット線BLjの電位を、所定のしきい値Vthを基準として「0」または「1」のプログラムデータとして判定するものである。
次に、上記構成のマスクROMの動作を、図7に示す動作タイミング図を参照して説明する。なお、以下の説明では、メモリトランジスタMTijは、全てNチャネル型MOSトランジスタであるとする。ここでは、例えば、図7(a)に示すような所定のアドレス信号ADDRに応じたワード線選択回路WS及びビット線選択回路BSによって、メモリトランジスタMT21が選択されたとする。
この場合、最初に、図7(b)に示すように、初期設定回路PHにハイレベルの初期設定信号φpが所定期間にわたり入力されて、初期設定線ILにプリチャージ電位Vp(例えば接地電位、すなわちロウレベル)が継続的に供給される。
そして、図7(c)に示すように、ビット線選択回路BSから、ビット線選択用トランジスタST1のゲートにハイレベルのビット線選択信号φsが入力される。これにより、ビット線BL1に対応するビット線選択トランジスタST1がオン状態となり、ビット線BL1及びメモリトランジスタMT21が選択され、図7(e)に示すように当該ビット線BL1はプリチャージ電位Vpに初期設定される(時点t0参照)。
その後、ワード線選択回路WSによって、ワード線WL2が選択されることにより、図7(d)に示すようにワード線WL2の電位がハイレベルとなる。これにより、ワード線WL2に接続された全てのメモリトランジスタMT2jがオン状態となる。
ここで、選択されたメモリトランジスタMT21は、不図示のコンタクトホールに埋め込まれた電極を介して、ビット線BL1に接続されているため、電源電位VddがメモリトランジスタMT21を通してビット線BL1に出力される。
これにより、ワード線WL1の電位はプリチャージ電位Vpから電源電位Vddに変化する(図7(e)の時点t0乃至t1参照)。なお、このようなメモリトランジスタを、以下、記憶状態「1」のメモリトランジスタと呼ぶことにする。
こうしてプリチャージ電位Vpから電源電位Vddに向けて変化するビット線BL1の電位はビット線選択用トランジスタST1を通して初期設定線ILから読み出し回路RCに伝達される。読み出し回路RCにおいて、ビット線BL1の電位は、所定のしきい値Vthとの比較により、プログラムデータ「1」として判定されて読み出される。
一方、ワード線選択回路WS及びビット線選択回路BSによって、例えば、メモリトランジスタMT22が選択されたとする。この場合、メモリトランジスタMT21の場合と同様の動作に従い、ワード線WL2及びビット線BL2が選択され、メモリトランジスタMT22はオン状態となる。
メモリトランジスタMT22とビット線Bl2とは、コンタクトホールを介して接続されていない。従って、図6(e)に示すように、ビット線BL2の電位は、理想的にはプリチャージ電位Vpのまま、読み出し回路RCに伝達され、所定のしきい値Vthとの比較により、プログラムデータ「0」として判定されて読み出される。なお、このようなメモリトランジスタを、以下、記憶状態「0」のメモリトランジスタと呼ぶことにする。
こうして、各メモリトランジスタMTijのドレインをビット線BLjに接続するか否か、すなわち各メモリトランジスタMTijに、電極が埋め込まれたコンタクトホールを形成するか否かに応じて、「0」もしくは「1」のいずれかのプログラムデータをマスクROMの各アドレスに書き込み、そのデータを読み出すことが可能となる。
なお、本発明に関連する技術文献としては、例えば以下の特許文献が挙げられる。
特開2002−230987号公報
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」と略称する)に係るマスクROMついて図面を参照しながら説明する。なお、既に説明した従来のマスクROMの回路図(図6参照)と同等の部分の説明については省略し、本発明の特徴について詳細に説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係るマスクROMの回路図である。
図1に示すように、本実施形態のマスクROMは、複数のメモリトランジスタMTijが行列状に配置されたメモリセルアレイMAを有している。メモリセルアレイMAは、以下の構成を有している。
各ビット線選択用トランジスタSTjのドレインは、ビット線BLjにそれぞれ対応して接続されており、そのソースは初期設定線ILを介して、初期設定回路PHに接続されている。この初期設定回路PHは、初期設定用トランジスタITにより、ビット線BLjを、第2の電位であるプリチャージ電位Vp(例えば接地電位)に初期設定するものである。
ここで、初期設定用トランジスタITのゲートは、インバータINV1を介して初期設定の開始を制御する初期設定信号φpの入力端となっており、そのソースは、プリチャージ電位Vpである接地電位に接続されている。そのドレインは、初期設定線ILに接続されている。
また初期設定回路PHは、上記初期設定したプリチャージ電位Vp(接地電位)を、所定期間にわたり保持する保持回路を有している。この保持回路は、例えば、インバータINV2と、保持用トランジスタHTと、高インピーダンスの抵抗Rから成る。ここで、保持用トランジスタHTのゲートはインバータINV2の出力端と接続し、そのドレインは抵抗Rに接続している。抵抗Rのもう一方の端部は、初期設定線ILに接続されている。
また、初期設定線ILには読出し回路RCが接続されている。この読出し回路RCは、従来例に係るマスクROMに設けられたものと同様の機能、即ち、各ビット線BLjの電位を、所定のしきい値Vthを基準として「0」または「1」のプログラムデータとして判定する機能を有する。
そして、ビット線BLjには、それぞれビット線電位固定回路BFCとしての第1及び第2のビット線電位固定用トランジスタPT1j、PT2jが形成されている。ビット線電位固定回路BFC、即ち第1及び第2のビット線電位固定用トランジスタPT1j、PT2jは、ビット線選択回路BSによって選択されたビット線BLjが上記初期設定回路PHによりプリチャージ電位Vp(接地電位)に設定される前に、全てのビット線BLjの電位をハイレベル(電源電位Vdd)に設定して固定する機能を有している。
第1のビット線電位固定用トランジスタPT1jのゲートは、それぞれビット線選択回路BSに接続され、ビット線選択信号φsが印加されている。そして、ソースは第1の電位であるハイレベルの電位(電源電位Vdd)を供給する不図示の電源線に共通に接続されており、ドレインは第2のビット線電位固定用トランジスタPT2jのソースに接続されている。
第2のビット線電位固定用トランジスタPT2jのゲートは、それぞれインバータINV1を介しての初期設定信号φpが印加されている。そして、前述の通りソースは第1のビット線電位固定用トランジスタPT1jのドレインと接続されており、ドレインはそれぞれ対応するビット線BLjに接続されている。すなわち、第1及び第2のビット線電位固定用トランジスタPT1j、PT2jはハイレベルの電位(電源電位Vdd)とビット線BLjとの間に直列接続されている。
なお、本実施形態において第1及び第2のビット線電位固定用トランジスタPT1j,PT2jは、例えば、Pチャネル型MOSトランジスタから成り、複数のメモリトランジスタMTij,ビット線選択トランジスタSTj,初期設定用トランジスタIT,保持用トランジスタHTは、例えば、Nチャンネル型MOSトランジスタから成るが本発明はこれに限定されない。
次に、上記構成のマスクROMの動作を、図1に示した本実施形態に係るマスクROMの回路図、及び図2に示した動作タイミング図を参照して説明する。
まず最初に、図2(c)に示すように、各ビット線選択用トランジスタSTjのゲート及び第1のビット線電位固定用トランジスタPT1jのゲートには、ロウレベルのビット線選択信号φsが印加されている。これにより、Pチャネル型MOSトランジスタである第1のビット線電位固定用トランジスタPT1jはオン状態となり、Nチャネル型MOSトランジスタであるビット線選択用トランジスタSTjはオフ状態である。
そして、図2(b)に示すようなハイレベルの初期設定信号φpがインバータINV2によって反転されて、ロウレベルの信号として初期設定回路PH及び第2のビット線電位固定用トランジスタPT2jのゲートに印加されている。従って、初期設定回路PHはオフ状態であり、Pチャネル型MOSトランジスタである第2のビット線電位固定用トランジスタPT2jはオン状態である。
以上より、第1及び第2のビット線電位固定用トランジスタPT1j,PT2j、すなわちビット線電位固定回路BFCはオン状態であるため、第1のビット線電位固定用トランジスタPT1jのソースの電位Vddが全てのビット線BLjに供給される。そして、全てのビット線BLjの電位がハイレベルの電位(電源電位)に固定される。
ここで、図2(a)に示すようなアドレス信号ADDRに応じたワード線選択回路WS及びビット線選択回路BSによって、例えば、記憶状態「0」のメモリトランジスタMT22が選択された場合を説明する。
この場合、最初に初期設定回路PHにハイレベルの信号(図2(b)に示すようなロウレベルの初期設定信号φpがインバータINV1により反転された信号)が所定期間にわたり入力される。この初期設定信号φpが反転された信号(ハイレベルの信号)は、初期設定用トランジスタITのゲートに入力され、これにより、当該初期設定用トランジスタITはオン状態となる。同時に、第2のビット線電位固定用トランジスタPT2jはオフ状態となる。
そうすると、初期設定用トランジスタITはオン状態であるため、初期設定用トランジスタITのソースの接地電位が、ロウレベルであるプリチャージ電位Vpとして、初期設定線ILに出力される。
そして、プリチャージ電位Vpは、保持回路内のインバータINV2により反転されてハイレベルの電位となるため、インバータINV2に接続したPチャンネル型の保持用トランジスタHTがオン状態となる。これにより、保持用トランジスタHTのソース電位である接地電位が、プリチャージ電位Vpとしてドレイン及び抵抗Rを通して初期設定線ILに出力される。従って、初期設定用トランジスタITがオフした後も、保持用トランジスタHTのドレイン及び初期設定線ILに接続した高インピーダンスの抵抗Rにより、ビット線BLjの電位はプリチャージ電位Vp(接地電位)に保持される。
次に、図2(c)に示すように、ビット線選択回路BSからビット線選択トランジスタST2をオン状態にするためのハイレベルのビット線選択信号φsがビット線選択トランジスタST2のゲートに入力される。これにより、Nチャネル型MOSトランジスタであるビット線選択用トランジスタST2がオン状態となり、逆にPチャネル型MOSトランジスタである第1のビット線電位固定用トランジスタPT1jはオフ状態となる。そうすると、図2(f)に示すように、当ビット線選択回路BSによって選択されたビット線BL2の電位は、ビット線電位固定回路BFCによって固定されていた電位(電源電位Vdd)からプリチャージ電位Vp(接地電位)に設定される(時点t0参照)。
次に、図2(d)に示すように、ワード線選択回路WSによってメモリトランジスタMT22に接続されたワード線WL2の電位がハイレベルとなる。これにより、ワード線WL2に接続されたすべてのメモリトランジスタMT2jがオン状態になる。
ここで、選択されたビット線BL2に隣接する非選択のビット線BL1,BL3の電位は、ビット線電位固定回路BFCによって予めハイレベルの電位(電源電位Vdd)に固定されている。そのため、従来例のマスクROMにみられたような(図7(f)参照)、プリチャージ電位Vp(接地電位)から電源電位Vddへのビット線の電位の変化は生じず、プリチャージ電位Vp(接地電位)のままである。従って、ビット線BL2と、それに隣接するビット線BL1,BL3との間には、寄生容量Cpが存在しても、従来例のマスクROMにみられたようなカップリング現象は生じていない。
即ち、選択されたビット線の電位を示す図2(f)の破線にみられたような、隣接するビット線の変化に伴う電位の上昇は生じず、図2(f)の実線に示したように、プリチャージ電位Vp(接地電位)を読出し回路RCに伝達する。この際、選択されたビット線から読出し回路RCに伝達された電位は、プログラムデータ「1」または「0」を判定するためのしきい値Vthを超える恐れはない。
これにより、上昇した当該電位が保持回路によって元の電位に戻される時点t2を待たずに、読出し時点t1において、選択されたビット線の電位をプログラムデータ「0」として判定することが可能となる。従って、プログラムデータの読出しの信頼性を低下させることなく、マスクROMの動作速度を高速化することが可能となる。
一方、選択されるメモリトランジスタMTijが、記憶状態「1」のメモリトランジスタである場合、それに対応するビット線BLjの電位は、図2(e)に示すようにロウレベルの電位(接地電位)からハイレベルの電位(電源電位Vdd)に変化し、読み出し回路RCにおいてプログラムデータ「1」として判定される。
以上が、本発明の第1の実施形態に係るマスクROMの回路動作である。
また、上述したマスクROMの回路はかかる回路構成単体で用いられることもあるが、通常は上述したマスクROMを一つの構成単位(以下、メモリブロックと呼ぶことにする)として、かかるメモリブロックが図3に示すように複数個配置されている。
それぞれのメモリブロックに対応するメモリブロック選択信号線SELk(k=1,・・・X)からメモリブロック選択信号BSELk(k=1,・・・X)が入力された場合のみマスクROMの読み出し動作を行うこととしている。すなわち、メモリブロック1〜Xはそれぞれ図1のマスクROMと同じ回路構成を有しており、本実施形態においてメモリブロック選択信号BSELkが図1の初期設定信号φpに相当している。
そして、メモリブロック選択信号BSELk(初期設定信号)がロウレベルに固定されたメモリブロックについては上記の読み出し動作は行わない。かかる構成によれば、選択されたメモリブロックについてのみ読み出し動作が行われるため効率的に消費電力を低く抑えることができる。
次に、本発明に係る第2の実施形態について図4及び図5を参照して説明する。なお、既に説明した従来のマスクROMの回路図(図6参照)及び第1の実施形態(図1参照)と同等の部分の説明については省略し、本実施形態の特徴について詳細に説明する。図4は第2の実施形態に係るマスクROMの回路図である。
各ビット線選択用トランジスタSTjのドレインは、ビット線BLjにそれぞれ対応して接続されており、そのソースは初期設定線ILを介して、初期設定回路PHに接続されている。この初期設定回路PHは、ビット線BLjを、第2の電位であるプリチャージ電位Vp(例えば接地電位)に初期設定するものである。
そして、ビット線BLjには、それぞれビット線電位固定回路BFCとしての第1及び第2のビット線電位固定用トランジスタPT1j,PT2jが形成されている。第1及び第2のビット線電位固定用トランジスタPT1j、PT2jは、ワード線選択回路WSによって読み出し動作を行うメモリトランジスタがオン状態になる前、すなわちマスクROMの読み出し動作を行う前に、ビット線選択回路BSによって選択されるビット線BLjに隣接するビット線BL(j−1),BL(j+1)のみの電位をハイレベル(電源電位Vdd)に設定して固定する機能を有している。
また、本実施形態のマスクROMにはナンド回路10が配置されており、ナンド回路10の第1入力端子には複数のメモリブロックのうち図3のような所定のメモリブロックを選択するメモリブロック選択信号BSELkが印加さている。また、メモリブロック選択信号BSELkはインバータ11を介して第1のビット線電位固定用トランジスタPT1jのゲートに印加されている。したがって、メモリブロック選択信号BSELkは本実施形態においては第1のビット線電位固定用トランジスタPT1jのオンオフも制御している。
また、不図示のクロックドライバーから第2入力端子にはインバータ11を介して第1のクロック信号CLK1が初期設定回路PHに印加されている。そして、ナンド回路10の出力端子からは、初期設定回路PHを制御する初期設定信号φp´が初期設定回路PHに印加されている。
また、第2のビット線電位固定用トランジスタPT2jの各ゲートはそれぞれ対応するプリチャージトランジスタPCTのドレイン及びディスチャージトランジスタDCTのドレインに接続されている。
プリチャージトランジスタPCTは第2のビット電位線固定用トランジスタPT2jに対応して配置されており、ゲートに印加される第2のクロック信号CLK2に応じて第2のビット線電位固定用トランジスタPT2jのゲートにハイレベルの信号を送出する機能、すなわち第2のビット線電位固定用トランジスタPT2jをオフ状態にする機能を有している。プリチャージトランジスタPCTのソースは電源電位Vddに接続され、ゲートには不図示のクロックドライバーから第2のクロック信号CLK2が印加されている。
また、ディスチャージトランジスタDCTはビット線選択信号φs[j]に応じて、第2のビット線固定用トランジスタ2jに隣接する第2のビット線電位固定用トランジスタPT2(j−1),PT2(j+1)のゲートにロウレベルの信号を送出する機能、すなわち第2のビット線電位固定用トランジスタPT2jのうち、PT2(j−1)及びPT2(j+1)のみをオン状態にする機能を有している。
ディスチャージトランジスタDCTのソースにはロウレベルの電位(接地電位)が供給されており、ドレインは第2のビット線電位固定用トランジスタPT2jのソースに接続されており、ゲートにはビット線選択回路BSからビット線選択信号φs[j]が印加されている。
また、プリチャージトランジスタPCTとディスチャージトランジスタDCTとが同時にオン状態になることを防止するための制御回路16がビット線選択回路BSとディスチャージトランジスタDCTの各ゲートの間にそれぞれ配置されている。この制御回路16は例えば、図4に示すようなインバータ13,ソースにロウレベルの電位(接地電位)が供給され、ドレインがビット線選択回路BSとディスチャージトランジスタDCTの各ゲートとを接続する配線間に接続されたNチャネル型MOSトランジスタ14,及びスイッチ素子15(Pチャネル型MOSトランジスタとNチャネル型MOSトランジスタとを組み合わせたトランスミッション型スイッチ)から構成されている。
第2のクロック信号CLK2は、インバータ13を介してNチャネル型MOSトランジスタ14のゲートとスイッチ素子15を構成するPチャネル型MOSトランジスタのゲートに印加されている。また、第2のクロック信号CLK2は、スイッチ素子15を構成するNチャネル型MOSトランジスタのゲートに印加されている。
なお、当該制御回路16はプリチャージトランジスタPCTとディスチャージトランジスタDCTとが同時にオンにならないように制御するものであれば、他の構成からなる制御回路であっても良い。
また、図4においては便宜上当該制御回路16を一つしか示していないが、ビット線選択回路BSとディスチャージトランジスタDCTのゲートを接続する各配線間において、上記制御回路16がそれぞれ配置されているものとする。
なお、第1及び第2のビット線電位固定用トランジスタPT1j、PT2jはハイレベルの電位(電源電位Vdd)とビット線BLjとの間に直列接続されていることは第1の実施形態と同様である。
次に、上記構成のマスクROMの動作を、図4に示した本実施形態に係るマスクROMの回路図、及び図5に示した動作タイミング図を参照して説明する。ここでは、所定のROMアドレス信号ADDR、ワード線選択回路WS及びビット線選択回路BSによって、メモリトランジスタMT22が選択されるとする。
まず最初に、図5(d)に示すように、ハイレベルのブロック選択信号BSELkが所定のメモリブロックに入力されることで、読み出し動作を行うメモリブロックに係るマスクROMが選択される。そうすると、第1のビット線電位固定用トランジスタPT1jのゲートにはインバータ11で反転されたロウレベルの信号が印加されるため、第1のビット線電位固定用トランジスタPT1jはオン状態になる。
そして、図5(b)に示すように、第1のクロック信号CLK1はハイレベルである。そのためハイレベルの初期設定信号φp´が印加され、初期設定回路PHはオン状態であり、初期設定線ILにプリチャージ電位Vp(例えば接地電位、すなわちロウレベル)が所定期間継続的に供給される。そして、所定期間経過後、第1のクロック信号CLK1はハイレベルからロウレベルとなるため、初期設定回路PHはオフ状態となる。
また、このとき図5(c)に示すように第2のクロック信号CLK2はロウレベルである。そのため、Pチャネル型MOSトランジスタであるプリチャージトランジスタPCTは全てオン状態であり、第2のビット線電位固定用トランジスタPT2jのゲートにはプリチャージトランジスタPCTのソース電位、すなわちハイレベルの電位が入力されている。このため、第2のビット線電位固定用トランジスタPT2jはオフ状態である。
また、第2のクロック信号CLK2がインバータ13を介してNチャネル型MOSトランジスタ14のゲートに印加されているため、Nチャネル型MOSトランジスタ14はオン状態である。そのため、ディスチャージトランジスタDCTの各ゲートにはロウレベル(例えば接地電位)の信号が印加され、ディスチャージトランジスタDCTは全てオフ状態である。
さらにまた、第2のクロック信号CLK2がロウレベルのときスイッチ素子15はオフであるため、ビット線選択回路BSからのビット線選択信号φsの影響は受けず、ディスチャージトランジスタDCTが全てオフ状態になる。従って、制御回路16の働きによってプリチャージトランジスタPCTとディスチャージトランジスタDCTとが同時にオン状態になることはない。
次に、第2のクロック信号CLK2がロウレベルからハイレベルになる。すると、プリチャージトランジスタPCTは全てオフ状態となる。同時に、第2のクロック信号CLK2がインバータ13を介してNチャネル型MOSトランジスタ14のゲートに印加されるため、Nチャネル型MOSトランジスタ14はオフ状態である。また、スイッチ素子15はオン状態である。
そして、ビット線選択回路BSからハイレベルのビット線選択信号φs[2]が入力される。すると、ビット線選択信号φs[2]に係るスイッチ素子15とディスチャージトランジスタDCT間の電位φsDはハイレベルとなり、第2のビット線電位固定用トランジスタPT21,PT23のゲートと接続されたディスチャージトランジスタDCTのみオンし、ディスチャージトランジスタDCTのソース電位、すなわちロウレベルの電位が第2のビット線電位固定用トランジスタPT21,PT23のゲートに入力される。
そうすると、第1のビット線電位固定用トランジスタPT11,PT13と第2のビット線電位固定用トランジスタPT21,PT23の両方がオン状態になるため、ビット線BL1,BL3には第1のビット線固定用トランジスタPT11,PT13のソース電位(Vdd)が供給され、ビット線BL1,BL3のみがハイレベルの電位(電源電位)に設定される。
そして、ビット線電位選択信号φs[2]がビット線選択トランジスタST2のゲートに入力されているため、これによりNチャネル型MOSトランジスタであるビット線選択用トランジスタST2がオン状態となる。そうすると、図5(f)に示すように、ビット線BL2の電位は、プリチャージ電位Vpに設定される(時点t0参照)。
なお、本実施形態では、ビット線BL2がプリチャージ電位Vpに設定されることと、前記ビット線BL1,BL3がハイレベルの電位に設定されることとは並行して行われている。
なお、本実施形態では第2のクロック信号CLK2がロウレベルからハイレベルになった後にビット線選択信号φs[2]が入力されているがこの順序については特に限定されない。
次に、図5(d)に示すようにワード線選択回路WSによってメモリトランジスタMT22に接続されたワード線WL2の電位がハイレベルとなる。これにより、ワード線WL2に接続されたすべてのメモリトランジスタMT2jがオン状態になる。
ここで、選択されたビット線BL2に隣接するビット線BL1,BL3の電位は、上述の通りビット線電位固定回路BFC(第1及び第2のビット線電位固定用トランジスタPT11,PT13,PT21,PT23)によってハイレベルの電位(電源電位Vdd)に設定されている。そのため、従来例のマスクROMにみられたような(図7(f)参照)、プリチャージ電位Vp(接地電位)から電源電位Vddへのビット線の電位の変化は生じず、ビット線BL2の電位はプリチャージ電位Vp(接地電位)のままである(図5(h)参照)。
従って、ビット線BL2と、それに隣接するビット線BL1,BL3との間には、寄生容量Cpが存在しても、従来例のマスクROMにみられたようなカップリング現象は生じていない。
この際、選択されたビット線BL2から読出し回路RCに出力された電位は、プログラムデータ「1」または「0」を判定するためのしきい値Vthを超える恐れはない。これにより、第1の実施形態と同様に、プログラムデータの読出しの信頼性を低下させることなく、マスクROMの動作速度を高速化することが可能となる。
一方、選択されるメモリトランジスタMTijが、記憶状態「1」のメモリトランジスタである場合、それに対応するビット線BLjの電位は、図5(g)に示すようにロウレベルの電位(接地電位)からハイレベルの電位(電源電位Vdd)に変化し、読み出し回路RCにおいてプログラムデータ「1」として判定される。
以上が、本発明の第2の実施形態に係るマスクROMの回路動作である。本発明の第2の実施形態によれば、マスクROMの読み出し動作を行う以前に選択されたビット線に隣接するビット線のみをハイレベルの電位(電源電位)に固定するため、読み出し動作の際のカップリング現象を防止する効果に加えて、マスクROMの消費電力を低く抑えることができる。
また、本実施形態において第1及び第2のビット線電位固定用トランジスタPT1j,PT2j,プリチャージトランジスタPCTは、例えば、Pチャネル型MOSトランジスタから成り、複数のメモリトランジスタMTij,ビット線選択トランジスタSTj,ディスチャージトランジスタDCTは、例えば、Nチャンネル型MOSトランジスタから成るが本発明はこれに限定されない。
また、本実施形態では、第1の電位を電源電位Vddとし、第2の電位、即ちプリチャージ電位Vpを接地電位としたが、本発明はこれに限定されない。即ち、マスクROMの読出し動作を正常に実行可能なものであれば、第1及び第2の電位は、それぞれ、上記以外の電位としてもよい。
さらにまた、本実施形態ではコンタクトマスク切り換え方式のマスクROMにおいて、プログラムデータ「0」もしくは「1」を判定して読み出していたが、本発明はこれに限定されず、メモリトランジスタの導通状態をそのチャネル領域にイオン注入がされているか否かにより切り替えるイオン注入マスク切り替え方式等の他の方式であってもよい。