JP2006283142A - 曲げ加工性に優れた高強度銅合金 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Tiを2.0〜4.0質量%含有する銅合金において、他の不純物元素が合計で0.01質量%以下であり、X線回折パターン上に見られるβ相(TiCu3)の回折ピークが最大のものでも(111)の回折ピークの1/10未満であることを特徴とする銅合金。
【選択図】 図1
Description
しかしながら、チタン銅は、時効処理において、準安定相が発達し過ぎる状態、いわゆる過時効の状態となると、最終的には、準安定相は安定相であるTiCu3がになってしまし、この相が増えると逆に軟化してしまう。一旦析出した安定相のTiCu3相から準安定相である変調構造へは変化し得ない。よって時効での硬化を最大限に引き出すには、その前工程の溶体化処理でβ相(TiCu3)を完全に無くす必要があり、そのために、チタンの固溶限がチタン含有量を超える温度まで加熱する必要がある。例えば、銅にチタンを3%含有させた場合には、チタンを完全に固溶させるには、800℃以上の温度まで加熱して溶体化処理をする必要がある。
本発明は、上記要請に鑑みてなされたものであり、TiCu3の析出を抑制して優れた曲げ加工性を実現するとともに、チタン銅の強化機構の本質を尊重し、その優れた特性を十分に確保することでさらなる強度向上図ることを目的とするものである。
(1)Tiを2.0〜4.0質量%含有する銅合金において、他の不純物元素が合計で0.01質量%以下であり、X線回折パターン上に見られるβ相(TiCu3)の回折ピークが最大のものでも(111)の回折ピークの1/10未満であることを特徴とする曲げ加工性に優れた銅合金。
(2)Tiを2.0〜4.0質量%及びFeを0.05〜0.50質量%含有する銅基合金において、他の不純物元素が合計で0.01質量%以下であり、X線回折パターン上に見られる第2相の回折ピークが最大のものでも(111)の回折ピークの1/10未満であることを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度銅合金。
(4)Tiを2.0〜4.0質量%及びZrを0.02〜0.20質量%含有する銅基合金において、X線回折パターン上に見られる第2相の回折ピークが最大のものでも(111)の回折ピークの1/10未満であることを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度銅合金。
(6)Tiを2.0〜4.0質量%及びCrを0.10〜0.30質量%含有する銅基合金において、X線回折パターン上に見られる第2相の回折ピークが最大のものでも(111)の回折ピークの1/10未満であることを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度銅合金。
(8)Co、Si、Ni、Nb、V、Pのなかから1種以上を合計で0.05〜0.30質量%含有することを特徴とする上記(4)〜(7)記載の銅合金。
本発明では、Tiを2〜4質量%としているが、Tiが2質量%未満では、十分な強度が得られず、逆に4質量%を超えると析出物が粗大化し易いので曲げ加工性が劣化する。Tiの最も好ましい範囲は、2.5〜3.5質量%である。
そして本発明では、第3元素を添加した場合の添加量を規定しているが、これらの元素の効果は微量の添加によりTiが十分に固溶する温度で溶体化処理をしても結晶粒が容易に微細化することである。チタン銅においてこの効果が最も高いのがFeである。そして、Co、Ni、Si、Cr、V、Nb、Zr、B、Pにおいても、Feに順じた効果が期待でき、単独の添加でも効果が見られるが、2種以上を複合添加してもよい。これらの元素のうちCrは、母相に対して比較的整合性の高い第2相粒子を微細かつ均一に形成させる。またZrは、溶体化処理時の再結晶粒の成長を抑制する効果の他に、安定相であるβ相の出現及び成長を抑制する効果もある。その一方で、Zrはチタン銅の熱間加工性を低下させるという一面もあるが、Bの添加によって著しく改善される。これらの元素は、0.01質量%以上含有するとその効果が現れだすが、あまり添加しすぎるとTiの固溶限を狭くし、粗大な第2相粒子を析出し易くなり、強度は向上するが、曲げ加工性が劣化する。0.5質量%を超えるとこの弊害が顕著になる。これら第3元素のより好ましい範囲は、Feにおいて0.17〜0.23質量%であり、Cr、Co、Ni、Cr、Si、V、Nbにおいて0.15〜0.25質量%、Zr、B、Pにおいて0.05〜0.10質量%である。
母相に対して整合性の悪い第2相の体積率が大きくなると、曲げ加工性が低下する。母相に対して非整合な第2相は、母相との間の界面エネルギーが高いので、熱力学的にはその系は、第2相全体の体積あたりの界面の面積を少なくしようとする力が働くために、個々の第2相粒子が粗大化しやすい。第2相が粗大化すると強度の向上に寄与しないばかりか、曲げ加工性も更に低下する。溶体化処理時に結晶粒を微細化させる元素のなかには、母相に対して非整合な第2相粒子を析出させやすい元素もあるので、注意が必要である。上記の元素群のなかで特に注意が必要なのは、Si、Ni、Coである。Siは溶体化処理温度が低いと、Cu−Ti−Si系の安定相を析出させてしまう。また、添加量が多いと、溶体化温度を融点直下まで上げても、溶体化されない。そして、Co、Niは、チタン銅に添加すると、パーライトのような粒界反応型析出を生じさせやすい。よって、これらの元素を添加する場合は、なるべく少なめに添加して、適切な温度で溶体化することが必要である。一方、FeとCrは、母相に対して比較的整合性のよい第2相粒子を、微細かつ均一に析出させる。母相に対して整合性が高い第2相粒子は、曲げ加工を行ったときに、塑性流動は母相に連動しやすいので、過度な応力集中部が起こらず、したがって曲げクラックが生じにくい。更に母相との間の界面エネルギーが低いので、熱処理過程においても粗大化しにくく、均一に微細分散した状態が容易に得られるので、素材の強度向上に大いに貢献する。実際にこのような組織のチタン銅を引張試験にかけてみると、降伏強度を過ぎてからの伸びが著しく改善され、局部的な塑性加工である曲げ加工の耐クラック性に大変有効である。
一方、β’相(TiCu4)は、低温時効時に起こる母相中のTi濃度の変調から、連続的に形成される準安定相であり、母相との整合性が高いので、その存在を示す回折ピークはほとんど観察されない。第3元素を添加した場合に形成される第2相においても、母相と整合性の高いものは、回折ピークがほとんど見られない。SEMやAESによる組織観察では、その組成を1つ1つ分析しない限り、それが曲げ加工性に有害な相かどうかはわからないが、X線回折を行うと、曲げ加工性に有害な相の存在の多さが、簡単に評価できる。
すなわち、チタン銅のX線回折において、第2相の回折ピークが顕著に現れたものは、曲げ加工性が悪く、その目安として、母相の(111)の回折ピークの1/10を超えると、曲げ加工性の低下が無視できないレベルとなる。逆に、これ以下であれば、第2相粒子が曲げ加工性を低下させる効果は少ない。ここで、第2相の回折ピークの比較の対象として(111)の回折ピークを選定したのは、第2相の回折ピークのうち比較的大きなものが、(111)の回折ピークの周囲に現れるからである。
このようにして鋳造したチタン銅インゴットは、均質化焼鈍を十分に行い、熱間圧延の全パスを、溶質原子の拡散速度が十分に速い900℃以上で行うことが望ましい。そうすることにより、熱間圧延の各パスで再結晶が起こり、熱延中の塑性流動を利用した溶質原子の攪拌がなされて、均質な組成の素材が得られる。
したがって、本発明の合金を作りこむための基本工程は、
「凝固組織の微細化させる鋳造→900℃以上での熱間圧延→十分な溶体化処理(第1次溶体化処理)→冷間圧延(中間圧延)→析出させる第2相粒子成分の固溶限の直上での溶体化処理(最終(第2次)溶体化処理)→調質圧延(最終圧延)→低温時効」
である。
「第1次溶体化処理」は、最終圧延前の中間圧延前の溶体化処理をいう。規定の成分に溶製後、鋳造し、熱延を経て、所定の厚みまでになるまで、冷間圧延、焼鈍を適当に繰り返し、第1次溶体化処理を行うが、熱延後すぐに第1次溶体化処理を行っても良い。
また、「第2次溶体化処理」は最終圧延前の溶体化処理をいうが、上述の最終の溶体化処理に該当し、以下においても最終の溶体化処理と表現する。
以下に本発明の実施の形態として、その工程を順次説明する。
適当量のCuに第3元素群としてFe、Co、Ni、Si、Cr、V、Nb、Zr、B、Pの中から1種以上を適正量添加し、十分保持した後にTiを2〜4質量%添加する。
第3元素群を有効に作用させるに溶け残りをなくすため、十分に保持する必要があり、また、Tiは第3元素群よりCu中に溶け易いので第3元素群の溶解後に添加すればよい。
ここで酸化物系の介在物が発生すると、素材の強度及び曲げ加工性にも悪影響を及ぼすので、これを防ぐために、溶解及び鋳造は、真空中または、不活性ガス雰囲気で行うのがよい。
鋳造時の出湯温度は、第3元素を添加しないチタン銅の場合は1200℃を目安とし、第3元素を添加したチタン銅は若干高め(1210〜1230℃)とするのがよい。また、出湯前に樋を十分に加熱し、樋の雰囲気ガス(Ar)の温度は出湯温度にほぼ等しくなるように調整する。また、鋳型と鋳造ノズルには加振機により、超音波振動を与える。これにより、鋳型や鋳造ノズルに溶湯が溶着することが抑制できると共に、微細な凝固組織が得られる。
このインゴット製造工程後には、900℃以上で3時間以上の均質化焼鈍を行うことが望ましい。この時点で凝固偏析や鋳造中に発生した晶出物を完全に無くすことが望ましく、それは、後述する溶体化処理において、第2相粒子の析出を、微細かつ均一に分散させるためであり、混粒の防止にも効果がある。その後、熱間圧延を行い、冷間圧延と焼鈍を繰り返して、溶体化処理を行う。途中の焼鈍でも温度が低いと第2相粒子が形成されるので、この第2相粒子が完全に固溶する温度で行う。第3元素群を添加していない通常のチタン銅であれば、その温度は800℃でよいが、第3元素群を添加したチタン銅はその温度を900℃以上とすることが望ましい。そのときの昇温速度及び冷却速度においても極力速くし、第2相粒子が析出しないようにする。
第2相粒子組成の固溶限の温度まで急速に加熱し、冷却速度も速くすれば粗大な第2相粒子の発生が抑制される。また、固溶温度での加熱時間は短いほうが結晶粒を微細化することができる。この時点で粒界に発生した第2相粒子が最終の時効で成長するので、この時点での第2相粒子はなるべく少なく、小さいほうがよい。
上記溶体化処理後、冷間圧延及び時効処理を行う。冷間圧延については、加工度40%以下とするが、更に好ましくは25%以下とするのがよい。加工度が高いほど次の時効処理で安定相が発達し易いからである。
時効処理については、低温ほど粒界への析出を抑制することができる。同じ強度が得られる条件であっても、高温短時間側より低温長時間側の方が、粒界析出を抑制できるのである。従来技術において適正範囲とされていた420〜450℃では、時効が進むにつれて強度は向上するが、第3元素を添加した場合に安定相が発達しやすく、僅かな過時効でも曲げ加工性を低下させてしまう。添加元素によっても適正な時効条件は異なってくるが、高くとも380℃×3hとし、低い温度であれば、360℃×24hと加熱時間は長くてもよい。これにより、母相に対して整合性の高い第2相のみが発達し、靭性の高い素材が得られる。
本発明例の銅合金を製造するに際しては、活性金属であるTiが第2成分として添加されるから、溶製には真空溶解炉を用いた。また、本発明で規定した元素以外の不純物元素の混入による予想外の副作用が生じることを未然に防ぐため、原料は比較的純度の高いものを厳選して使用した。
供試材の製造条件、第2相のX線回折強度、0.2%耐力と曲げ加工性も表2に示す。
Claims (8)
- Tiを2.0〜4.0質量%含有する銅合金において、他の不純物元素が合計で0.01質量%以下であり、X線回折パターン上に見られるβ相(TiCu3)の回折ピークが最大のものでも(111)の回折ピークの1/10未満であることを特徴とする曲げ加工性に優れた銅合金。
- Tiを2.0〜4.0質量%及びFeを0.05〜0.50質量%含有する銅基合金において、他の不純物元素が合計で0.01質量%以下であり、X線回折パターン上に見られる第2相の回折ピークが最大のものでも(111)の回折ピークの1/10未満であることを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度銅合金。
- Tiを2.0〜4.0質量%及びCo、Si、Ni、Nb、V、Pのなかから1種以上を合計で0.05〜0.50質量%含有する銅基合金において、X線回折パターン上に見られる第2相の回折ピークが最大のものでも(111)の回折ピークの1/10未満であることを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度銅合金。
- Tiを2.0〜4.0質量%及びZrを0.02〜0.20質量%含有する銅基合金において、X線回折パターン上に見られる第2相の回折ピークが最大のものでも(111)の回折ピークの1/10未満であることを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度銅合金。
- Bを0.1〜0.01質量%含有することを特徴とする請求項4記載の曲げ加工性に優れた高強度銅合金。
- Tiを2.0〜4.0質量%及びCrを0.10〜0.30質量%含有する銅基合金において、X線回折パターン上に見られる第2相の回折ピークが最大のものでも(111)の回折ピークの1/10未満であることを特徴とする曲げ加工性に優れた高強度銅合金。
- Crを0.10〜0.30質量%含有することを特徴とする請求項4又は5記載の曲げ加工性に優れた高強度銅合金。
- Co、Si、Ni、Nb、V、Pのなかから1種以上を合計で0.05〜0.30質量%含有することを特徴とする請求項4〜7記載の銅合金。
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Effective date: 20090210 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |