JP2008081767A - 電子部品用チタン銅 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Tiを2.0〜4.0重量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる銅合金において、断面検鏡にて観察される第二相粒子の数密度又は面積率の変動係数が0.30以下であることを特徴とする電子部品用銅合金(ここで“数密度”を単位面積10000μm2(1視野)あたりに観察される面積0.01μm2以上の第二相粒子の数として定義し、“面積率”を単位面積10000μm2(1視野)中に占める面積0.01μm2以上の第二相粒子の総面積の割合として定義する。変動係数は20視野以上の標準偏差を平均値で除した値とする。)。
【選択図】図1
Description
そして、そのようなチタン銅を得るためには、950℃以上で1時間以上(実施例では980℃×24時間としている。)の均質化焼鈍を行うことや、最終冷間圧延前の溶体化処理では少なくとも600℃までは昇温速度を20℃/秒以上とすること、該溶体化処理はTiの固溶限が添加量よりも大きくなる温度まで加熱すること、時効処理は420℃で200分程度が好ましい等が記載されている。
つまり小さなコネクタ程、嵌合したときにピン同士の遊び代が少ないので、正確な寸法精度が要求されるのである。現在ではピンピッチが0.4mm未満そしてピン幅が0.2mm未満のコネクタが必要とされており、そのような狭幅のピンを極めて限られた空間内で折り曲げるという状況下において、その加工寸法のばらつきは重要な問題となる。どんなに強度及び曲げ加工性の高いコネクタが得られても安定した寸法精度が得られなければ、量産できないので意味がないといえる。この点について上記文献には全く言及されていない。
ここで、内部応力分布が不均一になるのは、通常の水冷槽の中を高温に熱せられた材料が通過すると、材料表面に気泡が生じるからである。気体は液体に比べて、固体との接触面での熱伝達係数が低いので、気泡がついた材料表面は、気泡がつかなかった部分に比べて、冷却速度が緩やかになる。つまり、気泡の発生によって、材料表面の冷却速度にばらつきが生じるために、歪が生じるのである。
また、冷却速度が遅い部分ほど、第二相粒子の析出量が多くなるが、このときに生じる第二相粒子は、熱膨張係数が母相のそれと異なっているために、その差によっても内部歪が生じてしまう。
すなわち、精密プレス加工での寸法安定性が必要とされる素材を得るには、気泡の発生を極力抑制する工夫が水冷において必要である。気泡は、材料表面から供給される大量の熱によって、冷却水が気化したものであるから、材料表面からの熱がその近傍で滞留しないよう、材料表面に接触する冷却水の流速を速くすれば、気泡の発生を抑制することができる。
従来技術において、チタン銅の溶体化処理は、十分な冷却速度を得るために水冷しさえすればよいとされ、気泡の発生による内部応力分布の不均一化は、無視されていた。事実、従来製造されていたコネクタ端子は、素材中の僅かな残留歪がもたらす寸法精度への影響は、無視できるものであった。しかし、近年電子部品市場から要求されているコネクタは、著しく小型化されたものであり、それは素材の残留歪の不均一さがもたらす僅かな寸法変動も問題視するほど、精密な寸法安定性を必要とする。
Tiを2.0〜4.0重量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる銅合金において、断面検鏡にて観察される第二相粒子の数密度の変動係数が0.30以下であることを特徴とする電子部品用銅合金である。ここで“数密度”とは、単位面積10000μm2(1視野)あたりに観察される第二相粒子の数として定義し、面積0.01μm2以上の第二相粒子をカウントするものとする。そして変動係数とは、20視野以上の観察結果に基づいた標準偏差を平均値で除した値とする。
Tiを2.0〜4.0重量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる銅合金において、断面検鏡にて観察される第二相粒子の面積率の変動係数が0.30以下であることを特徴とする電子部品用銅合金である。ここで“面積率”とは、単位面積10000μm2(1視野)中に占める第二相粒子の総面積の割合として定義し、面積0.01μm2以上の第二相粒子を対象とする。そして変動係数とは、20視野以上の観察結果に基づいた標準偏差を平均値で除した値とする。
第3元素として、更にMn、Fe、Co、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、Si、B及びPの中から1種以上を合計で0.50重量%以下含有する電子部品用銅合金である。適切な熱処理工程を加えたものは、一層強度が向上する。
前記インゴットを、900〜970℃にて3〜24時間均質化焼鈍する工程と、
次いで、元厚から加工度が90%となるまでのパスを900℃以上とし、1パス当たりの圧下量を10〜20mmとして960℃以下で熱間圧延する工程と、
次いで、加熱時間を850〜900℃で2〜10分として溶体化処理する工程と、
次いで、加工度70%〜99%で冷間圧延する工程と、
次いで、730〜840℃のTiの固溶限が添加量よりも大きくなる温度で0.5〜1.5分の加熱後に水冷する最終の溶体化処理工程(ここで、該水冷時には水冷槽に入った材料表面に気泡が発生するのを抑制するために水冷槽中で材料表面に水流を与える。)と、
次いで、10〜50%の加工度で冷間圧延する工程と、
次いで、360〜420℃で3〜24時間時効処理する工程と、
を含む銅合金の製造方法である。
本発明では、Tiを2〜4質量%としているが、Tiが2質量%未満では、電子部品として使用するのに必要な強度が得られず、逆に4質量%を超えると析出物が粗大化し易いので曲げ加工性が劣化する。Tiの最も好ましい範囲は、2.5〜3.5質量%である。
本発明においては、1視野(10000μm2)あたりに存在する面積0.01μm2以上の第二相粒子の数を数えて、これを1視野分の面積で除したものを第二相粒子の数密度と定義した。そして20視野以上(典型的には30視野分)の数密度を求めて、その標準偏差σ1から平均値μ1を除したものを第二相粒子の数密度の変動係数(σ1/μ1)と定義した。隣接する視野の中心間の距離は、200μmとする(図4参照)。
そして、本発明の一実施形態では、数密度の変動係数は0.30以下であり、好ましくは0.20以下であり、更により好ましくは0.15以下である。但し、変動係数を0にすることは実際上困難であり、本発明で達成可能な変動係数の最小値は0.10程度である。
同様に第二相粒子の面積率については、1視野(10000μm2)あたりに存在する面積0.01μm2以上の第二相粒子の総面積を求め、これを1視野分の面積で除したものを第二相粒子の面積率と定義した。そして20視野以上(典型的には30視野分)の面積率を求めて、その標準偏差σ2から平均値μ2を除したものを第二相粒子の数密度の変動係数(σ2/μ2)と定義した。隣接する視野の中心間の距離は、200μmとする(図4参照)。
そして、本発明の一実施形態では、面積率の変動係数は0.30以下であり、好ましくは0.20以下であり、更により好ましくは0.15以下である。但し、変動係数を0にすることは実際上困難であり、本発明で達成可能な変動係数の最小値は0.10程度である。
強度や曲げ性に影響を及ぼさない程度の微細な析出物については、場所によって偏りがなく均等に分散していれば全く問題ないものの、分布に偏りがあると、精密プレス加工するうえで寸法安定性に支障をきたす。それは、母相と第二相とでは機械的性質や熱膨張率が異なるために、部分的にその存在比率がばらつくと、同じ金型で加工しても、成型のされかたもばらつくのである。
ここで、第二相粒子とは母相の成分組成とは異なる組成の粒子を指し、本発明で制御の対象としているのは、熱処理中に析出して母相と境界を形成するCuとTiを主成分とした粒子のことで、具体的にはTiCu3粒子、又は第3元素群の構成要素X(具体的にはMn、Fe、Co、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、Si、B及びPの何れか)を含むCu−Ti−X系粒子として現れる。Cu−Ti−X系粒子は溶体化処理時又は溶体化処理前に形成させることができ、溶体化処理時の再結晶の成長を抑制する働きをもつ。
従来の溶体化処理ラインでは、加熱炉から出た材料が、水を貯めただけの水冷槽に入り込むだけのものであった(図2参照)。水冷槽中の水の対流は少ないので、材料近傍の水温は常に高く、高温の材料が水冷槽に浸漬したとき、気化熱を受けて発生した気泡が材料表面に付着してしまう。気体は液体に比べて固体に対する熱伝達係数が低いので、気泡が材料に付着している間、その部分の冷却速度が低下する。冷却速度が遅いと、第二相粒子が析出し易いので、部分的に冷却速度が異なると第二相粒子の存在密度にばらつきが生じるようになるのである(図3参照)。
しかし、従来チタン銅が使用されていたコネクタは、このようなミクロな組織のばらつきの影響を拾うほどの精密なプレス加工を必要としてはいなかった。よって、本発明で着眼した第二相粒子の存在比率のばらつきは、近年の著しい小型化志向によって、初めて焦点が当てられることになったのである。
連続焼鈍ラインの冷却において、静水を貯めただけの水槽中に、材料が連続的に浸漬する場合、材料近傍に暖かいお湯の層が生じ、気泡の発生が生じ易い状態となる。つまり、材料に接触した冷却水は、対流による熱伝達が間に合わないので、材料から受けた熱を気化熱として吸収することによって解放するほうが、熱伝達の効率が高いからである。
一方、水流がある場合は、材料表面に低温の新液が常に供給されるため、気化するまでもなく、熱交換が十分に行われる。つまり、水流があると材料表面に接触する冷却水の量が多くなるので、言い換えると材料表面近傍の冷却水の単位体積当たりに受ける熱量が少なくなるので、その量が気化するのに必要な熱量に達しなければ、気化するには至らないのである。
また、材料表面に平行な水流があると、多少気泡が生じても材料表面に附着することはなく、瞬間的に洗い流されるであろう。一般に、固体が流体に接触する面での熱伝達係数は、流体の流速に比例するので、水流は速いほど材料の冷却速度が速くなり、溶体化処理として理想的である。ここで、水流の流速と圧力にムラが生じないようにノズルの形や配置にも工夫が必要である。具体的には小さなノズルを高い密度で多数配置するのが好ましい。
高い強度を得るためには、結晶粒の微細化がまず必要となるが、これは基本的に最終の溶体化処理時に達成される。結晶粒を微細化させるために通常行われる手法は、このときの溶体化温度を下げることであるが、チタン銅の場合、結晶粒が容易に微細化するようになるまで溶体化温度を下げると、粗大な析出物が析出してしまい、強度と曲げ加工性を低下させてしまう。そこで粗大な第二相粒子が析出しないように、α相のみの領域とα相とβ相の混合領域の境界線の温度まで急速に加熱し、更に保持時間を短くすることによって、結晶粒を微細化させることができるが、実操業ラインで安定して制御することは難しい。
しかし本発明で規定した第3元素群を規定量添加すれば、Tiが固溶する温度で溶体化処理をしても結晶粒が容易に微細化する。例えば、Tiを3.2wt%含有するチタン銅の場合、800℃に加熱すれば、Tiをほぼ固溶させることができるが、2分程度の加熱時間で、結晶粒径が20μm程度に成長してしまう。それに対して、Feを0.2wt%添加したチタン銅の場合は、同じ条件で溶体化処理を行っても、結晶粒径が10μm以下となる。
チタン銅においてこの効果が最も高いのがFeである。最終の溶体化処理において、Feは、Cu−Ti−Fe系の第二相粒子として微細析出し、再結晶粒の成長を抑制する。このとき、微細析出した第二相粒子は、母相との整合性も高く、非常に微細なために、強度と曲げ加工性に悪影響を及ぼすことはなく、むしろ強度と曲げ加工性を向上させる。そして、Co、Ni、Cr、Si、V、Nb、Zr、B、Pにおいても、Feに準じた効果が期待でき、単独の添加でも効果が見られるが、2種以上を複合添加してもよい。
なお、本発明でいう第3元素の添加は、析出硬化を狙った第3元素の積極的な添加ではなく、特定元素の微量添加により結晶粒の微細化を効果的に狙った点において従来技術とは異なる点に注意すべきである。
先述したように結晶粒が小さいほど、強度と曲げ性は向上する。しかし極端に小さくなると、応力緩和特性が低下してしまう。チタン銅の優れた応力緩和特性は、変調構造によるものであるが、粒界ではそれが途切れているため、粒界が多いほど、言い換えれば結晶粒が小さいほど応力緩和しやすいのである。しかし、その傾向が見られるのは、結晶粒径が2.0μm未満のときであり、3.0μm以上であれば、応力緩和特性に対する影響は殆どない。チタン銅ではどのような再結晶焼鈍を行っても、2.0μm以下の微細粒を得ることは難しいので、通常の溶体化処理では、可能な限り結晶粒を微細化したほうが良い。本発明では、微量添加した第3元素群を添加することにより通常のチタン銅よりも格段に結晶粒を微細化することができる。本発明に係る銅合金は一実施形態において、2〜15μm、好ましくは3〜12μm、より好ましくは4〜10μmの平均結晶粒径を有することができる。
上述したように、本発明に係る銅合金は精密プレス加工での寸法安定性が高い。そのため、例えば小型のコネクタピンを作製したときにピン毎の寸法の均一性が高くなる。また、本発明で添加する第3元素群は結晶粒の微細化を目的として極微量添加するだけであるので、プレス金型の摩耗を促進させる硬質の析出物はほとんど析出しない。また、剪断加工においては、べリリウム銅のノンミルハードン材でみられるような剪断面を長く引きずる局所伸びは生じないので、プレス金型の凝着摩耗も少ない。よって、連続プレスによって、精密部品を加工する際、頻繁に金型を研磨しなくても、高い寸法精度を維持できるものと考えられる。
本発明の基本工程は、チタンが完全に固溶する温度で溶体化処理を行い、質別を調整するための適度な冷間圧延を行って製品板厚とし、安定相が発達しにくい比較的低温で時効処理を行うということである。溶体化処理温度が高いほど、析出物が固溶する速度も速いので、十分な溶体化処理を行うには、溶体化処理温度が高いほど望ましいといえる。しかし溶体化処理温度が高すぎると、再結晶粒を微細化させるための第3元素群が添加されている場合においても、その量は極微量であり、あまり高温で行うと結晶粒が粗大化し、最終的に強度の高い製品が得られない。
「インゴットの製造→短時間の均質化焼鈍→十分な加工度及び加工温度での熱間圧延→上工程での十分な溶体化処理(第1次溶体化処理)→冷延(中間圧延)→第二相粒子成分の固溶限より僅かに高い温度での溶体化処理(最終の溶体化処理)→調質冷間圧延(最終冷間圧延)→時効」
である。第1次溶体化処理までは、規定の成分に溶製後、鋳造し、熱延を経て、冷延、焼鈍を適当に繰り返せばよく、熱延後すぐに第1次溶体化処理を行っても良い。
1)インゴット製造工程
溶解及び鋳造によるインゴットの製造は、基本的に真空中又は不活性ガス雰囲気中で行う。溶解において添加元素の溶け残りがあると、強度の向上に対して有効に作用しない。よって、溶け残りをなくすため、FeやCr等の高融点の添加元素は、添加してから十分に攪拌したうえで、一定時間保持する必要がある。一方、TiはCu中に比較的溶け易いので第3元素群の溶解後に添加すればよい。従って、溶製に関しては、適当量のCuに第3元素群としてMn、Fe、Co、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、Si、B及びPの中から1種以上を合計で0.01〜0.50質量%添加し、十分保持した後にTiを2〜4質量%添加する。
インゴット製造工程後には950℃で3〜5時間の均質化焼鈍を行う。次いで熱間圧延を所定条件、すなわち、加熱温度について、熱延前及び熱延中は960℃以下とし、且つ、元厚から全体の加工度が90%までのパスは900℃以上とする。そして、板厚が50mmまでは、パスごとの圧下量を10mm以上とし、板厚が50mm以下からは、1パス当たりの加工度が20%以上となるようなパススケジュールで行う。1パスあたりの圧下量は10〜15mmとする。この段階で凝固偏析や鋳造中に発生した晶出物をできるだけ無くすことが望ましい。後の溶体化処理において、第二相粒子の析出を微細かつ均一に分散させるためにも大切な工程である。
その後、冷延と焼鈍を適宜繰り返してから溶体化処理を行う。途中の焼鈍でも温度が低いと第二相粒子が形成されるので、この第二相粒子が完全に固溶する温度で行う。第1次溶体化処理は加熱温度を850〜900℃とし、3〜10分間行えばよい。そのときの昇温速度及び冷却速度においても極力速くし、第二相粒子が析出しないようにする。それは、第二相粒子が完全に固溶した状態から後の最終の溶体化処理を行った方が、微細で均質な組織が得られるからである。
最終の溶体化処理前の中間圧延における加工度を高くするほど、最終の溶体化処理における第二相粒子が均一かつ微細に析出する。それは、集積した加工ひずみが再結晶の核生成サイトとなるので、加工度を高くしてひずみをためた方が、多数の再結晶核が生成するため、結晶粒が微細化するのである。但し、加工度をあまり高くして最終の溶体化処理を行うと、再結晶集合組織が発達して、塑性異方性が生じ、プレス整形性を害することがある。従って、中間圧延の加工度は好ましくは70〜99%である。
この工程は、強度と曲げ加工性に影響を与える結晶粒の微細化と、精密プレス加工したときの寸法安定性に影響を与える第二相粒子密度のばらつきを左右するので、本発明において最も重要な工程といえる。
まず、加熱条件であるが、加熱速度が高いほど結晶粒は微細化する。そして溶体化という目的においては、析出物を完全に固溶させることが望ましいが、完全に無くすまで高温に加熱すると、結晶粒が粗大化するので、加熱温度は第二相粒子組成の固溶限付近の温度とする(Tiの添加量が2.0〜4.0質量%の範囲でTiの固溶限が添加量と等しくなる温度は730〜840℃であり、例えばTiの添加量が3質量%では800℃程度)。そしてこの温度まで急速に加熱し、冷却速度も速くすれば粗大な第二相粒子の発生が抑制される。また、固溶温度での加熱時間は短い程、結晶粒が微細化する。加熱時間は例示的には30〜60秒である。この時点で発生した第二相粒子は微細かつ均一に分散していれば、強度と曲げ加工性に対してほとんど無害である。しかし粗大なものは最終の時効で更に成長する傾向にあるので、この時点での第二相粒子はなるべく少なく、小さくしなければならない。
次に、冷却条件であるが、冷却速度が速いほど、粗大な第二相粒子の発生が抑制される。通常この目的のためだけなら、材料が炉からでた後、水冷槽中に浸漬する構造の溶体化処理ラインであれば、十分に目的を達成できる。しかし、本発明では、微細なものも含めた第二相粒子の分布密度のばらつきを問題視しており、それを抑制するには、水冷中、気泡の発生を防止する必要がある。そこで、水冷槽中の材料表面を洗い流すような水流をつくり、冷却水を循環させる。
上記溶体化処理工程後、最終の冷間圧延及び時効処理を行う。最終の冷間加工によってチタン銅の強度を高めることができる。この際、加工度が10%未満では充分な効果が得られないので加工度を10%以上とするのが好ましい。但し、加工度が高いほど次の時効処理で粒界析出が起こり易いので、加工度を50%以下、より好ましくは25%以下とする。時効処理については、低温ほど粒界への析出を抑制することができる。同じ強度が得られる条件であっても、高温短時間側より低温長時間側の方が、粒界析出を抑制できるのである。従来技術において適正範囲とされていた420〜450℃では、時効が進むにつれて強度は向上するが、粒界析出が生じやすく、僅かな過時効でも安定相であるCuTi3が発生して曲げ加工性を低下させてしまう。従って、添加元素によっても適正な時効条件は異なってくるが、通常は360〜420℃で1〜24時間であり、380〜400℃で12時間〜24時間とするのが好ましい。390〜400℃では12〜18時間とし、380℃〜390℃では18〜24時間とするのがより好ましい。例えば400℃×12h、380℃×24hとすることができる。
本発明例の銅合金を製造するに際しては、活性金属であるTiが第2成分として添加されるから、溶製には真空溶解炉を用いた。また、本発明で規定した元素以外の不純物元素の混入による予想外の副作用が生じることを未然に防ぐため、原料は比較的純度の高いものを厳選して使用した。
最終の溶体化処理後の平均結晶粒径は切断法により求めた。結晶粒径の測定は、圧延方向に直角な断面の組織を、エッチング(水(100mL)−FeCl3(5g)−HCl(10mL))により現出させ、切断法(JISH0501)に準拠して行った。ここでは、板幅方向の結晶粒径の平均値を平均結晶粒径とした。
Claims (9)
- Tiを2.0〜4.0重量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる銅合金において、断面検鏡にて観察される第二相粒子の数密度又は面積率の変動係数が0.30以下であることを特徴とする電子部品用銅合金(ここで“数密度”を単位面積10000μm2(1視野)あたりに観察される面積0.01μm2以上の第二相粒子の数として定義し、“面積率”を単位面積10000μm2(1視野)中に占める面積0.01μm2以上の第二相粒子の総面積の割合として定義する。変動係数は20視野以上の観察結果に基づいた標準偏差を平均値で除した値とする。)。
- Tiを2.0〜4.0重量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる銅合金において、断面検鏡にて観察される第二相粒子の数密度及び面積率の変動係数が0.30以下であることを特徴とする電子部品用銅合金(ここで“数密度”を単位面積10000μm2(1視野)あたりに観察される面積0.01μm2以上の第二相粒子の数として定義し、“面積率”を単位面積10000μm2(1視野)中に占める面積0.01μm2以上の第二相粒子の総面積の割合として定義する。変動係数は20視野以上の観察結果に基づいた標準偏差を平均値で除した値とする。)。
- 更に、Mn、Fe、Co、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、Si、B及びPの中から1種以上を合計で0.50重量%以下含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電子部品用銅合金。
- 2〜15μmの平均結晶粒径を有する請求項1〜3の何れか一項に記載の銅合金。
- 請求項1〜4の何れか一項に記載の銅合金を用いた伸銅品。
- 請求項1〜4の何れか一項に記載の銅合金を用いて作製した電子部品。
- 請求項1〜4の何れか一項に記載の銅合金を用いて作製したコネクタ。
- 最終の溶体化処理における冷却段階では、水冷槽に入った材料表面に気泡が発生するのを抑制するために水冷槽中で材料表面に水流を与えることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の銅合金の製造方法。
- CuにTiを2.0〜4.0質量%含有するように添加してインゴットを製造する工程(Tiの添加前に、Mn、Fe、Co、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、Si、B及びPよりなる群から選択される1種又は2種以上を合計で0.50質量%以下含有するように随意に添加してもよい。)と、
前記インゴットを、900〜970℃にて3〜24時間均質化焼鈍する工程と、
次いで、元厚から加工度が90%となるまでのパスを900℃以上とし、1パス当たりの圧下量を10〜20mmとして960℃以下で熱間圧延する工程と、
次いで、加熱時間を850〜900℃で2〜10分として溶体化処理する工程と、
次いで、加工度70%〜99%で冷間圧延する工程と、
次いで、730〜840℃のTiの固溶限が添加量よりも大きくなる温度で0.5〜1.5分の加熱後に水冷する最終の溶体化処理工程(ここで、該水冷時には水冷槽に入った材料表面に気泡が発生するのを抑制するために水冷槽中で材料表面に水流を与える。)と、
次いで、10〜50%の加工度で冷間圧延する工程と、
次いで、360〜420℃で3〜24時間時効処理する工程と、
を含む請求項1〜4の何れか一項に記載の銅合金の製造方法。
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