JP2004231985A - 曲げ性に優れた高強度銅合金 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Tiを2.0〜4.0質量%含有し、第3元素群としてFe、Co、Ni、Si、Cr、V、Zr、BおよびPの中から1種類以上を0.01〜0.50質量%含有し、断面検鏡によって観察される面積0.01μm2以上の第2相粒子の面積率Afを1.0%以下とする。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コネクタ材等に使用する銅合金に係り、特に、優れた曲げ性と強度とを同時に実現することができる銅合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
チタンを含有する銅合金(以下、「チタン銅」と称する。)は、コネクタ材等に使用され、近年その需要は益々増大の傾向にある。この傾向に対処すべく、チタン銅の析出硬化に関する研究開発が種々行われている。従来のチタン銅には、例えば、NiおよびAlが添加されているものや(例えば、特許文献1参照)AlおよびMgが添加されているもの(例えば、特許文献2参照)、Sn、NiおよびCoが添加されているものもある(例えば、特許文献3参照)。また近年においては、Cr、Zr、NiおよびFeを添加した銅合金も提案されている(例えば、特許文献4参照)。また、結晶粒の微細化に関する技術も提案されて(例えば、特許文献5参照)、さらには、Zn、Cr、Zr、Fe、Ni、Sn、In、PおよびSiを添加する技術も提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭50−53228号公報(第1,2頁)
【特許文献2】
特開昭50−110927号公報(第1,2頁)
【特許文献3】
特開昭61−223147号公報(第1−3頁)
【特許文献4】
特開平6−248375号公報(第2−8頁)
【特許文献5】
特開平2001−303158号公報(第2−4頁)
【特許文献6】
特願平2002−31219号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
チタン銅は、溶体化処理によって過飽和固溶体を形成させ、その状態から低温時効を施すと、初期段階より準安定相である変調構造が形成される。変調構造が十分に発達した領域では著しく硬化するが、過時効域になると安定相であるTiCu3が析出し、この相が増えると逆に軟化し曲げ性も劣化してしまう。よって、変調構造が十分に発達し、TiCu3相が十分に少ない状態の時に、強度が最大となる。この一連の時効過程において、高い強度をもたらす変調構造は、不安定な過飽和固溶体から起こり得る変化であり、安定相であるTiCu3相から準安定相である変調構造へは変化し得ない。一方、溶体化処理が不十分であった場合、母相中に固溶仕切れなかったチタンは、TiCu3として析出したままの状態で残ることになる。よって、時効での硬化を最大限に引き出すには、その前工程の溶体化処理でTiCu3相を完全に無くす、言い換えればチタンを完全に母相中に固溶させる必要があり、そのためには、チタンの固溶限がチタン含有量を超える温度まで加熱する必要がある。例えば、銅にチタンを3%含有させた場合には、チタンを完全に固溶させるには、800℃以上の温度で溶体化処理をする必要がある。また、一般的に知られているように、最終の焼鈍工程において結晶粒を微細化することでも耐力を向上させることができるが、チタン銅の場合、溶体化処理がこれに相当するため、この溶体化処理中に結晶粒の微細化をいかに実現するかが耐力向上の要因となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、チタンが完全に固溶する温度領域では、結晶粒が粗大化し易いので、結晶粒の微細化により耐力向上を実現するには、それより低温側で溶体化処理をしなければならない。例えば、銅にチタンを3%含有させた合金においては、前記800℃では結晶粒が微細化しないので、750〜775℃溶体化処理をすることにより、結晶粒を微細化させているのである。このため、上記各特許文献に記載された従来技術では、チタン銅の結晶粒を微細化させたものは、チタンの固溶が十分でなく、安定相であるTiCu3が析出してしまう。前述したように、この時点で粒界に析出したTiCu3は、後工程の時効で硬化に寄与しないばかりか、曲げ性を悪化させるという欠点があった。またチタン銅に第3元素(Ni,Al,Mg,Sn,Co,Cr,Zr,Fe,Zn,In,Mn,P,Si)を添加し、それらの成分を含んだ第2相粒子の析出による析出硬化を狙った上記各特許文献に記載された従来技術では、析出硬化が十分得られるだけの添加量を確保すると、変調構造の形成が阻害されるという欠点があった。またそれらの元素の析出硬化を最大限に引き出す溶体化条件及び時効条件と、チタン銅本来の変調構造による強化を最大限引き出す溶体化条件及び時効条件との間にずれが生じているため、第3元素の析出硬化とチタンの変調構造の発達とを十分に両立することができなかった。したがって、チタン銅の優れた強度特性をそのまま生かした上で、さらなる強度を得る技術の開発が要請されていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、TiCu3の析出を抑制して優れた曲げ性を実現するとともに、チタン銅の強化機構の本質を尊重し、その優れた特性を十分に確保することでさらなる強度を向上図ることを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の銅合金は、Tiを2.0〜4.0質量%含有し、第3元素群としてFe、Co、Ni、Si、Cr、V、Zr、BおよびPの中から1種類以上を0.01〜0.50質量%含有し、断面検鏡によって観察される面積0.01μm2以上の第2相粒子の面積率Afが1.0%以下であることを特徴としている。
【0008】
本発明では、Tiの含有量を2.0〜4.0質量%としている。Tiの含有量が2.0%未満の場合には、チタン銅本来の変調構造の形成による強化機構を十分に得ることができず、チタン銅の優れた強度を得ることができない。また4.0質量%を超える場合には、TiCu3が析出し易くなり、曲げ性を悪化させる。本発明ではTiの含有量を上記のように適正化することで、優れた曲げ性および強度をともに実現することができる。なお、上記曲げ性および強度をさらに高いレベルで両立させるべく、Tiの含有量は2.5〜3.5質量%とするのが望ましい。
【0009】
本発明は、第2相粒子を形成させるために第3元素を添加しているが、この第2相粒子は従来技術のような析出硬化を目的としているのではなく、結晶粒の成長を抑制する目的で形成させるのである。よって、本発明で規定した第3元素群は、析出硬化性の高い粒子ではなく、結晶粒の成長を抑制する効果の高い粒子を形成させる元素を探求すべく実験を重ねた末に厳選したものである。ここで、第2相粒子とは、CuとTiとを主成分とし、第3元素群の構成要素X(具体的にはFe、Co、Ni、Si、Cr、V、Zr、B、P)を含有した場合に生成されるCu−Ti−X系粒子をいう。このCu−Ti−X系粒子は、溶体化処理中または溶体化処理前に焼鈍を施した場合でも形成することができ、再結晶後の粒成長の抑制に寄与する。なお、本発明で規定された第3元素群によって形成されるCu−Ti−X系粒子は熱的に安定なため、溶体化処理後は、製品までの残りの工程で冷延・時効が施されても、その形態はほとんど変化しない。Fe、Co、Ni、Si、Cr、V、Zr、BおよびPの合計含有量が0.01質量%未満の場合には、十分な量の第2相粒子を析出しないため、溶体化処理時に結晶粒の成長を抑制する効果が小さく、優れた曲げ性を実現することができない。また、Feなどの合計含有量が0.50質量%を超えた場合には、溶体化処理中に第2相粒子が粗大化しやすくなり、これが曲げ性を悪化させるという副作用を生じる。本発明では上記第3元素群の添加量の適正化を図ることにより、優れた曲げ性を得ることができる。
【0010】
ただし、上記第3元素群の含有量が適正であっても、過時効をしてしまうと第2相粒子が過度に析出し、曲げ性が悪化するので、第2相粒子の析出量についても制限する必要がある。本発明では、断面検鏡によって観察される面積0.01μm2以上の第2相粒子の面積率Afを1.0%以下としている。ここで、上記面積率Afとは、単位面積当たりの第2相粒子の合計面積の割合であり、より具体的には、対象物である第2相粒子の面積の合計値の、チタン銅の測定視野面積に占める割合を意味する。この面積率Afは、実際には供試材断面をSEM等により観察し、画像処理によって測定することができる。この面積率Afの値が1.0%を超えた場合には、第2相粒子が過度に析出した状態となり、曲げ性を悪化させる。本発明では上記面積率Afの適正化を図ることにより、特に優れた曲げ性を得ることができる。
【0011】
以上に示したように、本発明によれば、Tiの含有量を規定するとともに、第3元素群の含有量および第2相粒子の面積率Afを組成を規定することで、優れた曲げ性と強度とを同時に実現する銅合金を提供することができる。
【0012】
また本発明の他の銅合金は、Tiを2.0〜4.0質量%含有する銅基合金であって、第3元素群としてFe、Co、Ni、Si、Cr、V、Zr、BおよびPの中から1種類以上を0.01〜0.50質量%含有し、断面検鏡によって観察される面積0.01μm2以上の第2相粒子に関し、下記式で定義する均等分散度Eが0.8以下であることを特徴とするものである。
【0013】
【数2】
【0014】
di:i番目の第2相粒子から一番近い第2相粒子までの距離
A0:測定視野面積
NA:測定視野面積中に確認された第2相粒子の個数
【0015】
本発明の銅合金は、上述した銅合金と同様に、Tiの含有量の適正化、第3元素群の含有量の適正化を図ることにより、優れた曲げ性の実現と強度向上の達成を同時に実現することができることが必要条件となっている。ただし、上記第3元素群の含有量が適正であっても、それによって形成される第2相粒子が均質に分散していなければ、再結晶焼鈍中の粒成長を効果的に抑制することができず、優れた曲げ性が実現できない。また、第2相粒子が均質に分散していなければ、組織は混粒になりやすい。組織が混粒となったものに曲げ変形や引張りなどの塑性加工を施すと、組織内の変形量が均一にならず、個所によって差異が生じる。具体的には、大きな粒ほどそして第2相粒子密度が少ない部分ほど変形しやすく、逆の場合は変形しにくい。すなわち、マクロ的に加工をしても、部分的な変形量は変形しやすい個所に集中し、そこから亀裂が発生し伝播していくので、大きな粒と小さな粒とが混ざった混粒の組織となったものは、平均結晶粒径が小さくても、同じ粒径の整粒の組織に比べて曲げ性および強度に劣る。本発明では、断面検鏡によって観察される面積0.01μm以上の第2相粒子に関する均等分散度Eを0.8以下としている。この均等分散度Eは、その値が0に近いほど第2相粒子が均等に分散されていることを示し、逆にその値が大きいほど分散に偏りがあることを示す。ここで均等分散度Eとは、本発明者らが見出した全く新しい統計値である。これまで、第2相粒子の分布が結晶粒の分布や機械的性質に及ぼす影響について定量評価した例はなく、第2相粒子の分布の均等性自体を定量評価した例もなかった。しかし本発明者らは、種々の試験材の結晶組織と機械的性質を調査していく過程で、特に第2相粒子の分布状況に注目し丹念に観察し続けた結果、第2相粒子の総数や面積率が同じでも、分布状況が異なれば、組織や機械的性質が異なってくることに気がついた。そして第2相粒子の分布形態と組織や機械的性質との関係を、更に様々な角度から詳細な研究を重ねた末その結果、第2相粒子が均等に分散している状態ほど、結晶粒が整粒となり、曲げ性も良好でより高い耐力値が得られる傾向にあること突き止めるに至った。そこで、粒子の分布の均等性について定量評価できないか検討した結果、その妥当性を見出した統計値が均等分散度Eであり、この値が0.8を超える場合には、第2相粒子の分布に相当の偏りがあることとなり、優れた曲げ性および強度が実現できないことが実験データより明らかとなった。本発明では上記均等分散度Eの適正化を図ることにより、特に優れた曲げ性および強度を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の銅合金をその製造工程にしたがって順次説明する。なお、以下に示す工程からなる製造方法は、本発明の銅合金の一製造例を示すものである。
インゴット製造工程
所定量のCuに第3元素群としてFe、Co、Ni、Si、Cr、V、Zr、BおよびPの中から1種以上を0.01〜0.50質量%添加し、十分保持した後にTiを2.0〜4.0質量%添加する。この際、保持時間は原料の種類及び量にもよるが、1時間以上とすることが望ましい。第3元素群を第2相粒子として有効に作用させるためには、このインゴット製造工程で第3元素群の溶け残りをなくさねばならない。このためには第3元素群を添加後に十分保持する必要がある。なお、TiはCu中に溶け易いため、第3元素群の添加後に添加すればよい。
【0017】
このインゴット製造工程後には、950℃以上で10時間以上の均質化焼鈍を行うことが望ましい。偏析をなくし、後述する溶体化処理において、第2相粒子の析出を微細かつ均一に分散させるためであり、最終的には混粒の防止にも効果がある。すなわち、この均質化焼鈍が十分行われれば、上述した均等分散度Eを0.8以下とすることができる。このため、第2相粒子を所期したとおりに均質に分散させることができ、特に優れた曲げ性を実現することができる。また、十分な均質化焼鈍を行うことで、後の溶体化処理において第2相粒子が粗大な析出物として析出することを防止することができる。換言すれば第2相粒子を所期したとおりに微細に分散させることができ、混粒の防止が可能となる。この均質化焼鈍の後熱間圧延を行い、冷延と焼鈍を繰り返して溶体化処理を行なう。途中の焼鈍は温度が低いと第2相粒子が形成されるので、この第2相粒子が完全に固溶する温度で行う。第3元素群を添加していない通常のチタン銅であれば、その温度は800℃でよいが、第3元素群を添加したチタン銅はその温度を900℃以上とすることが望ましい。さらに、溶体化処理直前の冷間圧延においては、その加工度が高いほど、溶体化処理における第2相粒子の析出が均一かつ微細なものになる。なお、溶体化処理前に微細な第2相粒子を析出させるために、前述の冷延後、低温で焼鈍を行なってもよいが、効果が小さいので工程増によるコストアップを考慮すると得策とはいえない。もし上記の目的で、溶体化処理前に低温焼鈍を行う場合には、結晶粒の粗大化が起こらない450℃以下の温度で行うことが望ましい。
【0018】
溶体化工程
上記インゴット製造工程後に溶体化を行う。ここで注意すべき点は、Tiの固溶限が添加量よりも大きくなる温度(Tiの添加量が2〜4質量%の範囲では730〜840℃であり、例えばTiの添加量が3質量%では800℃)以上まで加熱する必要があり、その昇温過程においてTiCu3が最も析出しやすい温度領域を素早く通過するために、少なくとも600℃までは昇温速度を20℃/秒以上とすることである。この昇温速度の適正化により、安定相であるTiCu3の析出を抑制して曲げ性を向上させることができるとともに、再結晶粒の成長に対して抑制効果が高い第2相粒子、すなわち第3元素を主成分とした微細かつ均一な第2相粒子を形成させることができる。また上記昇温速度と加熱時間の適正化により、断面検鏡によって観察される面積0.01μm2以上の第2相粒子の面積率Afを1.0%以下とすることができる。これにより、第2相粒子が過度に析出することなく、特に優れた曲げ性を得ることができる。
【0019】
冷間圧延工程・時効処理工程
上記溶体化工程後、冷間圧延処理および時効処理を順次行う。これらの処理は銅合金の用途に応じて通常の方法、条件で行うことができる。例えば、銅合金をコネクタ材等として使用する場合には、冷間圧延処理については、溶体化処理後の材料に5〜50%の冷間圧延を施すことが望ましい。また時効処理については、例えば350〜450℃のArガスなどの不活性雰囲気中で100〜1000分程度の時効処理を施すことが望ましい。
【0020】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明する。
本発明の銅合金を製造するに際しては、活性金属であるTiを第2成分として添加することに鑑み溶製には真空溶解炉を用い、坩堝にはグラファイト製のものを用いた。また、本発明で規定した元素以外の不可避的不純物元素の混入による副作用の発生を未然に防止するため、原料は比較的純度の高いもの(電気銅および純チタン)を使用した。
【0021】
まず、実施例1〜10および比較例11〜20について、Cuに、表1に示す組成のFe、Co、Ni、Si、Cr、V、Zr、BおよびPを所定量それぞれ添加した後、同表に示す組成に相当する量のTiをそれぞれ添加した。添加元素の溶け残りがないよう添加後の保持時間にも十分に配慮した後に、これらをAr雰囲気で鋳型に注入して、それぞれ約2kgのインゴットを製造した。
【0022】
上記インゴットに酸化防止剤を塗布して24時間の常温乾燥後、980℃×12時間の加熱(均質化焼鈍)により熱間圧延を施し、板厚10mmの熱延板を得た。次にこの熱延板に再び酸化防止剤を塗布し、980℃×2時間の加熱を施しその後水冷した。これは、偏析を更に低減させるための措置であり、第2相粒子の析出を均等に分散させる上で最も有効な手段である。ここで酸化防止材を塗布したのは、粒界酸化および表面から進入してきた酸素が添加元素成分と反応して介在物化する内部酸化を可能な限り防止するためである。また水冷したのは、冷却速度が遅いと第2相粒子が過度に析出してしまうので、溶体化後の冷却速度を速くするためである。各加熱後の熱延板を、それぞれ機械研磨および酸洗による脱スケール後、適度な冷延と焼鈍とを繰り返し、板厚0.2mmまで冷間圧延した。その後、この冷間圧延材を急速加熱が可能な焼鈍炉に挿入して、昇温速度50℃/秒でTiの固溶限が添加量よりも大きくなる温度(Ti添加量3%では800℃)まで加熱し、1分間保持後水冷した。この際、平均結晶粒径(GS)を切断法により測定した。その後、酸洗による脱スケール後冷間圧延して板厚0.14mmの圧延材を得た。これを不活性ガス雰囲気中で400℃×3時間の加熱をして各実施例および各比較例の試験片とした。これら実施例1〜10および比較例11〜20の試験片の湿式定量分析値を表1に示す。なお、表1に示す値に関する単位は、すべて質量%である。
なお、比較例14〜20は後述する条件にて試料を作製した。
【0023】
【表1】
【0024】
次に、各実施例および各比較例について、圧延方向と直角方向(Bad Way)に10mm幅×100mm長さの各種所定の曲げ半径にてJIS3110のW曲げ試験を行い、割れの発生しない最小の曲げ半径(MBR)を求めた。曲げ性はMBRと板厚tの比(MBR/t)で表した。強度は0.2%耐力を測定して実施例の有効性を検証した。ここでMBR/t値は、その値が小さいほど優れた曲げ性を示すものである。また、第2相粒子の確認は、第2相粒子の面積率とAfと平均分散度Eについては、各試験片の表面をSEMで撮影した画像を画像処理ソフトを用いて求めた。表2に各実施例および各比較例のAf、E、結晶粒径(GS)、MBR/t値および0.2%耐力をそれぞれ示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2から明らかなように、各実施例においては、いずれもMBR/t値が1.0以下で0.2%耐力が850MPa以上となっており、優れた曲げ性と強度とを同時に実現していることが判る。特に、実施例No.4〜10はTiがより好ましい範囲(2.5〜3.5質量%)となっているので、0.2%耐力が他の実施例よりもさらに向上し、870MPaとなっている。また実施例No.4〜6は、それぞれFe、Co、Niに加えてPを、実施例No.9〜10はそれぞれV、Zrに対してBを添加しているので、結晶粒がさらに微細化されて0.2%耐力が880MPa以上であり、優れた強度が実現されている。
【0027】
一方、各比較例においては、MBR/t値が1.0を超えるものとなっているか、または0.2%耐力が850MPa未満となっており、優れた曲げ性と強度とを同時に実現し得ないことが判る。具体的に見てみると、比較例No.11は、Tiの含有量が2.0質量%よりも少ないので十分な0.2%耐力すなわち強度が得られていない。比較例No.12は、逆にTiの含有量が逆に4.0質量%を超えているため、MBR/t値が高く、優れた曲げ性が得られていない。比較例No.13は、結晶粒の成長を抑制する第2相粒子を析出させる元素が添加されていないため、結晶粒の微細化が不十分で、優れた強度が得られていない。また比較例No.13は、結晶粒が粗大化しているために優れた曲げ性も実現されない。比較例No.14〜17は、TiCu3が析出し易い温度で行ったものである(溶体化処理温度は、比較例No.14〜17については750℃とし、その他の各実施例および比較例については、800℃とした。)。これらの比較例は、第2相粒子の面積率Afが1.0%を超えているために優れた曲げ性を実現することができない。また第2相粒子の過剰な析出によって母相中のTiが失われ、時効硬化能が低減して0.2%耐力が低く、優れた強度が実現できない。比較例No.18〜20は、十分な均質化焼鈍を行わずに熱間圧延し、空冷後、冷延、焼鈍を繰り返して製造したものである。これらの比較例は、面積率Afは適正範囲値内にあるが、第2相粒子は均等に分布していない。このため、結晶組織が混粒となって優れた曲げ性および強度が得られていない。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、Tiの含有量の適正化、第3元素群の含有量の適正化、および第2相粒子の面積率Afの適正化により、優れた曲げ性の実現と強度向上の達成とを同時に高いレベルで実現することができる。よって本発明は、コネクタ材等に好適な銅合金を製造することができる点で有望である。
Claims (3)
- Tiを2.0〜4.0質量%含有する銅基合金であって、第3元素群としてFe、Co、Ni、Si、Cr、V、Zr、BおよびPの中から1種類以上を0.01〜0.50質量%含有し、断面検鏡によって観察される面積0.01μm2以上の第2相粒子の面積率Afが1.0%以下であることを特徴とする曲げ性に優れた高強度銅合金。
- 請求項1及び請求項2に記載の曲げ性に優れた高強度銅合金。
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