JP4226208B2 - 微細結晶により強化されたAl−Mn−Mg系合金焼鈍板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は微細結晶により強化されたAl−Mn−Mg系合金焼鈍板およびその製造方法に関するものであり、得られた板は5μm未満の結晶粒径を持ち強度と延性のバランスに優れ、自動車用成形部品や、電子機器筐体等の素材として有用なものとなる。
【0002】
【従来の技術】
従来、3004合金(1.0〜1.5%Mn−0.8〜1.3%Mg)に代表されるAl−Mn−Mg合金は、成形加工性や耐食性等に優れることから多く用いられてきた。しかし、Al−Mn−Mg合金の焼鈍材(O材)は、機械的強度が十分に高いとは言えず、自ずと使用される範囲の制限がある。
【0003】
Al−Mn−Mg合金において成形加工性や耐食性等の利点を損なわずに、より高強度化が可能となれば、自動車用成形部品や、電子機器筐体等としてさらに有用な材料となる。特に、板厚が0.6〜1.5mm程度のものが、これらの用途向けの素材として重要である。強度向上により、用途によってはAl−高Mg系の合金を代替することが考えられ、これが可能となればAl−高Mg系の合金の弱点である耐SCC性の点でもすぐれた特性が期待できる。
【0004】
多結晶の金属材料において、結晶粒微細化により強度向上が可能なことは良く知られるところであり、この微細結晶による強化方法は、他の強化方法、例えば加工硬化や析出強化で見られるような延性、成形性あるいは耐食性の低下を伴わないことが特徴である。結晶粒微細化により強度を向上させたAl−Mn−Mg系合金材の製造技術として、特開2000−80543号公報に、Mg:0.2〜2.0%、Mn:0.3〜1.5%、Cu:0.05〜0.4%、Ti:0.001〜0.1%を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金を冷却速度180℃/秒以上で鋳造し、得られたインゴットを保持温度500〜580℃、保持時間8〜24時間で均質化処理し、これを圧下率90%以上で冷間圧延し、さらに昇温速度10〜250℃/秒、焼鈍温度350〜450℃、保持時間5〜60秒、冷却速度20〜200℃/秒で最終焼鈍することにより、結晶粒径が小さくて強度、成形性ともに優れたアルミニウム合金箔を得ることが開示されている。
【0005】
さらに具体的には、最終焼鈍工程後の結晶粒の最大寸法が、実質的に8μm以下であることが規定され、最終焼鈍前の不溶性金属問化合物の最大寸法が実質的に4μm以下で、寸法が0.4〜4μm範囲にある不溶性金属間化合物の分布密度が35000個/mm2 以上であることが規定されている。この先願特許は、JISで厚さの上限が0.2mmと規定されている箔を対象としており、このような薄厚まで圧延することは結晶粒微細化には有利に働く。これは、冷間圧延時に圧延表面から導入される歪、特に剪断歪が後の焼鈍時に表面近傍の結晶粒微細化をもたらすが、箔やおよそ0.5mm以下の薄い板では、この表面の影響域がほぼ材料板厚全領域をカバーするためである。
【0006】
これに対し、板厚0.6mm以上の材料では、板厚方向での結晶粒径に差違が生じる問題が生じやすく、上記のような従来技術の援用では均一な微細結晶組織を実現し、それにより、優れた特性を持つAl−Mn−Mg合金を得ることは困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記したように、元来、耐食性に優れるAl−Mn−Mg合金において、自動車用成形部品や、電子機器筐体等種々の用途の素材として有用な0.6mm以上の板厚で、板厚の全領域で微細結晶粒を有し、この微細結晶粒強化により強度と延性のバランスに優れた焼鈍板を得ることを技術的課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、特に主にAlとMnとからなる析出物の分布状態を制御することにより、0.6mm以上の板厚のAl−Mn−Mg合金においても、板厚全体に均一な微細結晶組織を持たせることが可能であることを見出し、これにより強度と延性のバランスに優れ耐食性にも優れる材料が得られることから本発明に至った。
【0009】
すなわち請求項1記載の微細結晶により強化されたAl−Mn−Mg系合金焼鈍板は、Mn2.1〜2.9%およびMg0.8〜2.9%を含み、不純物のFeを0.3%未満およびSiを0.3%未満とし、残部アルミニウムおよび不可避不純物とからなる板厚0.6mm以上のAl−Mn−Mg系合金の焼鈍板であって、Mn固溶量が0.4%未満で、マトリックス中に円相当径0.5〜1μmの大きさのMnを含む金属間化合物粒子が1×105 個/mm2 以上分散しており、板厚全体が平均結晶粒径5μm未満の微細結晶組織からなることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の微細結晶により強化されたAl−Mn−Mg系合金焼鈍板は、請求項1において、前記Al−Mn−Mg系合金が、さらにCu0.05〜0.5%を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の微細結晶により強化されたAl−Mn−Mg系合金焼鈍板の製造方法は、上記化学組成を有するアルミニウム合金を、凝固時冷却速度150〜800℃/秒で板状に連続鋳造し、480〜580℃にて2〜30h保持する条件で均質化析出処理を施した後、圧下率80%以上の冷間圧延を加えて板厚0.6mm以上とし、5℃/秒以上の昇温速度で290〜420℃まで加熱し、直ちにあるいは600秒までの保持ののち冷却する焼鈍を行うことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明内容について詳細に説明する。
〈合金組成〉
Mn:Mnは本発明合金中で析出物して金属間化合物粒子を形成し、均一な結晶粒微細化と強度向上に寄与する主添加元素であり、2.1〜2.9%添加される。ここで言う金属間化合物粒子は主にAl6Mnである。Mn添加量が2.1%未満であると、金属間化合物粒子の分布密度が小さくなるため、十分に結晶粒微細化されず結晶粒径の均一性が損なわれ、機械的強度等の特性も十分に向上できない。Mnが2.9%を超えて添加されると、鋳造時に健全な板状鋳塊が得られないか、Mnを含む粗大晶出物の形成が抑えられず結果として均一で微細な結晶粒組織が得られないので不適当である。
【0013】
Mg:Mgは0.8〜2.9%添加されるよう規定されている。MgはAl−Mn−Mg合金の固溶強化に寄与すると共に、圧延加工時の歪蓄積と変形帯の形成を促進して不連続再結晶による均一な微細結晶組織の形成に寄与する。そこで、Mgが0.8%未満であると、機械的強度の向上が十分達成されず、また結晶粒の均一性が不十分となる。Mgが1.9%を超えて添加されると、鋳造時に割れや粗大晶出物の形成が抑えられず、健全な板状鋳塊が得られないため不適当である。また、一般に(引張強さ−耐力)値が大きいほど成形性の点で有利となるが、Mgは加工硬化能を上げて(引張強さ−耐力)値を向上する。この効果を十分に働かせるためには、Mgは1.5%を超えて添加されることが望ましい。
【0014】
Cu:CuはMgとともに強度向上に寄与する添加元素であり、0.05〜0.5%添加することが請求項2に記述されている。0.05%未満では特段の効果が無く、0.5%以上添加すると、鋳造時に粗大な晶出物が生じやすく、結果として組織の均一性を損なうので不適当である。
【0015】
Fe、Si:両者ともアルミニウム合金中の不可避的不純物元素であるが、各々0.3%未満に制御する必要がある。これらが、0.3%以上含有されると鋳造時に粗大な晶出物が生じ、結果として均一で微細な結晶粒組織が得られないので不適当である。この点で、Fe、Siとも各々0.15%未満に制御することがさらに望ましい。
【0016】
その他の成分:アルミニウム合金の鋳造で一般的に用いられる微細化剤を用いることは差し支えなく、このための元素としてTi0.1%以下、B0.03%以下を含んでもよい。上記化学成分の残部は、アルミニウムと他の不可避的不純物からなるものとする。
【0017】
〈固溶Mn量〉 本発明のAl−Mn−Mg合金板中の固溶Mn量は0.4%未満に制御される。固溶Mn量が0.4%より高いことは焼鈍時にも多くの固溶Mnが存在することになる。このことにより、再結晶の過度の遅滞が起こり、未再結晶組織となるか一部で粗大結晶粒が形成されるため不適当である。また、固溶Mn量が多いことは、結晶粒微細化に効果の有るMnを含む金属間化合物の量が減ることにも繋がる。よって、固溶Mn量は0.4%未満に制御するが、0.2%以下がさらに望ましい。この固溶Mn量は、フェノール抽出分析法にて測定されるものとする。
【0018】
〈金属間化合物粒子〉 本発明のAl−Mn−Mg合金板の結晶粒を微細にし、優れた特性を付与するために、Mnを含む金属間化合物の分布の制御が重要である。そこで、本発明者等は、特に円相当径0.5〜1.0μmの範囲大きさの粒子が密に分布する場合に、結晶粒微細化が達成されることを見出した。この金属間化合物は、主に均質化析出処理時に形成された析出物Al6 Mnである。これらの粒径範囲の粒子は、周囲が再結晶粒の形成位置(再結晶核サイト)となることと、効率的に結晶粒粗大化を抑える作用の両方に対して有効であり、このことが微細結晶組織の成因と考えられる。
【0019】
具体的には、円相当径0.5〜1.0μmの大きさのMnを含む金属間化合物粒子が1×105 個/mm2 以上分散していることが必要で、これより低い分散密度であると結晶粒微細化が十分に達成されない。この金属間化合物粒子の分散状態の規定は便宜上、焼鈍材の組織中のものとしているが、このことにより実質的に焼鈍時の金属間化合物分布を制御していることになる。金属間化合物粒子の分散密度は、倍率5000倍程度のSEMおよび画像解析装置を使用して測定するのが適当である。なお、後述するように板厚全領域において微細な結晶粒を得るのが本発明の特徴であるので、この金属間化合物の分布状態の規制も板厚全領域の領域で満たす必要がある。
【0020】
金属間化合物粒子で特に微細なもの、例えば0.2μm以下の径の粒子が特に多いと、回復および再結晶を過度に遅滞させ、未再結晶組織となるか、あるいは局部的に粗大結晶粒が形成される原因となるため望ましくない。本発明の組成範囲合金では、前記の0.5〜1.0μm範囲の粒子分布の規定を満たすよう制御すれば、自ずと実質的に0.2μm以下の粒子が悪影響を及ぼさない量となるよう制限されることとなる。また、粗大な金属間化合物粒子が存在すると、局部的な粗大結晶粒の形成および不均一組織につながるため望ましくない。そこで、実質的に6μm以上の粗大金属間化合物粒子が存在しないことが望ましい。
【0021】
〈結晶組織〉 本発明のAl−Mn−Mg合金焼鈍板は、0.6mm以上の板厚全領域において、平均結晶粒径5μm未満の微細結晶組織を持つものとする。平均結晶粒径が5μm以上であると、十分な強度向上が達成されない。平均結晶粒径は3.5μm未満とすれば、さらに望ましい。特性のばらつきの少ない材料とするため、0.6mm以上の板厚全領域で均一な微細結晶組織を持つことが重要で、具体的には圧延方向断面において表面近傍(便宜上、表面から板厚1/4までの部分とする)の領域と、板厚中心(便宜上、板厚の3/8〜5/8の部分とする)の領域の双方で平均結晶粒径5μm未満であることが必要で、両領域での平均結晶粒径の差が0.7μm以内であることが望ましい。正確な平均結晶粒径を求めるため、おのおの領域で境界部2カ所(「表面近傍」領域であれば、表面を含んで領域の内側と板厚1/4の箇所を含んで領域の内側。「板厚中心」領域であれば、板厚の3/8の箇所を含んで領域の内側と5/8の箇所を含んで領域の内側)と、その領域内の中央部を含む3カ所以上で測定し、その平均値をそれぞれの領域の平均結晶粒径とする。
【0022】
平均結晶粒径は、圧延方向縦断面においてSEM−EBSP(Electron BackScatterdiffraction Pattern) 装置により測定するのが適当である。この測定方法としては、SEM倍率は2000倍、EBSPの1視野内での測定ポイント間隔は0.3μmとし、15°以上の傾角の粒界で囲まれた4ポイント以上の大きさのものを結晶粒とみなしその結晶粒数と測定面積とから円相当径を求めることが適当である。
【0023】
〈製造方法〉 以下に、本発明のAl−Mn−Mg合金の製造工程について説明する。
鋳造方法:凝固時冷却速度150〜800℃/秒で板状に連続鋳造する。ここで、凝固時冷却速度が150℃/秒未満であると、粗大な晶出物が形成されるため結果として均質な微細結晶組織を得ることを阻害するため不適当である。また、冷却速度800℃/秒以上とするには、極端に鋳造板厚を薄くするか鋳造速度を上げる必要があり、本願発明の対象の0.6mm以上の最終板厚を有する圧延用素材として健全な鋳造板が得られない。鋳造方法としては、双ロールキャスターを利用するのが適当である。
【0024】
均質化析出処理:均質化析出処理は、均一で適正な金属間化合物粒子分布を得るために必要な処理で、480〜580℃にて2〜30h保持する条件で行うものとする。この均質化析出処理は鋳造後に行うか、鋳造後に圧下率50%までの熱間、温間あるいは冷間圧延を加えた後に実施しても構わない。規定範囲より均質化析出処理温度が低いか時間が短い場合、析出および析出物の成長が十分に進まず適切な金属間化合物分布が得られないため不適当である。また、この範囲より均質化析出処理温度が高いか時間が長い場合、析出物の過度な粗大化が起こり、この場合も適切な金属間化合物分布が得られないため不適当である。
【0025】
熱間圧延:均質化析出処理と冷間圧延との間に、熱間圧延を施しても良いが必須の工程ではない。
【0026】
冷間圧延:均質化析出処理後、圧下率80%以上の冷間圧延を加え、材料を0.6mm以上の最終使用板厚とする。この冷間圧延では、目的の板厚を得ることの他に、加工歪の蓄積、加工組織の均一化および再結晶核サイトの増大をはかることが重要で、これらによって最終的な微細結晶組織の達成につながる。圧下率80%未満では、加工歪の蓄積および組織の均一化が不十分で均一な微細結晶組織が得られないため不適当である。なお、圧下率の上限は定めないが、目的とする最終板厚を得るためには、圧下率95%程度までが現実的に使用できる範囲と言える。
【0027】
焼鈍:焼鈍は5℃/秒以上の昇温速度で290〜420℃まで加熱し、直ちにあるいは600秒までの保持ののち冷却する焼鈍を行うこととする。昇温は5℃/秒以上の急速加熱で行うが、これは蓄積された加工歪を駆動力として遅滞無く再結晶を起こさせ微細結晶組織を得るために必要な条件である。規定の焼鈍温度範囲より低い温度は、回復・再結晶が不十分となるため不適当であり、逆に高い場合は結晶粒の粗大化が起こるため不適当である。焼鈍の保持時間を600秒以上とすることは、結晶粒粗大化の恐れがあるため不適当である。焼鈍の冷却も5℃/秒以上で行うことが望ましい。なお、この焼鈍は、小規模には塩浴炉などで行うことができるが、量産に適した形態としては連続焼鈍ライン(CAL)を用いてコイルを連続処理することが可能である。
【0028】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。
【実施例】
表1に示す化学組成範囲の合金を、表2に示す製造工程・条件で処理して、板厚0.7mmあるいは1.2mmの焼鈍板を作製した。表1の化学組成範囲(1) 〜(4) と表2の製造工程・条件A 〜D とを組み合わせた本発明例(実施例)1〜8のAl−Mn−Mg合金焼鈍板と、化学組成範囲と製造工程・条件の何れかまたは両方がこれらから外れる比較例1〜14について材料特性他の測定値を表3に示す。なお、固溶Mn量、金属間化合物粒子分布、平均結晶粒径の測定は前述の方法で行った。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
発明例はいずれも、SEM−EBSPによる測定による圧延方向縦断面の結晶粒径が板厚全領域において5μm以下であり、しかも、表面近傍と板厚中心の両領域での平均結晶粒径の差が0.2μm以下と非常に小さくなっていて、均一な微細結晶組織が得られている。これにより21〜25%の良好な伸びを有しながら、機械的強度が向上しており、強度と延性のバランスに優れた材料となっている。(引張強さ−耐力)の値は、発明例ではすべて80MPa以上となっており、Mg1.5%を超える組成の実施例2、3、8では、100MPaを超えている。なお、表には示さないが発明例では何れも6μm以上の粗大金属間化合物粒子は存在しなかった。
【0033】
比較例1、2はMn添加量が低い場合の例であり、0.5〜1μmの金属間化合物分布が規定より少ないため、結晶粒径が5μm未満の微細組織とはならず、表面と板厚中心付近での結晶粒径の差も大きい。これにより、耐力も低い値となっている。
【0034】
比較例3は、Mn添加量が本発明範囲を超える例であるが、板連続鋳造時に数十μm以上の粗大な晶出物が形成されるため、均一な組織となりえない。比較例4は、Mg添加量が低い場合であり、引張強さが低く、(引張強さ−耐力)値が低くなっている。
【0035】
比較例5、6、7はMg量、Cu量、Fe、Si量の多いもので、板連続鋳造時にいずれも数十μm以上の粗大な晶出物が形成されるため、均一な組織となりえない。比較例8は、本発明組成の合金(1) をDC鋳造した場合であるが、これも鋳造時の冷却速度が小さいため数十μm以上の粗大な晶出物が形成される。よって、比較例3、5、6、7、8については後工程を行わなかった。
【0036】
比較例9、10は均質化析出処理を行わないか低温の場合で、固溶Mn量が多く、0.5〜1μmの金属間化合物分布が規定より少ないため、再結晶が抑えられた未再結晶組織で、O材となってらず、伸びが低く、(引張強さ−耐力)も低い。なお、これらを、さらに高温で焼鈍すると、一部から粗大に圧延方向に伸びた結晶粒が生じ、いずれにしても微細結晶組織は得られない。比較例11は、高温で長時間の均質化析出処理を施した場合で、結晶粒径が微細にならず、その分、耐力が低くなっている。
【0037】
比較例12は、冷間圧下率が小さい場合で、結晶粒径が微細にならず、耐力が低くなっている。比較例13は、焼鈍が低温の場合であり、一部が未再結晶の不均一な組織となり、伸びが低く、(引張強さ−耐力)が小さい。比較例14は、昇温速度が低いバッチ焼鈍で高温、長時間焼鈍した場合で結晶粒径が微細にならず、耐力が低くなっている。
【0038】
【表4】
【0039】
比較のため、表4に比較例15、16としてDC鋳造法で量産された3004合金(表1、合金(12))および5083合金(表1、合金(13))の焼鈍板の特性を示す。表3の本発明例1〜8のAl−Mn−Mg合金は何れも焼鈍されたO材の状態で、通常用いられる3004合金より高い耐力を持つだけでなく、4.5%Mgを含むAl−Mg系の5083合金と同等か、これを超える耐力を持っていることがわかる。この点から5083合金のようなAl−高Mg系の合金を代替することが可能となり、その場合にはAl−高Mg系合金と比べ耐SCC性が格段に改善される。
【0040】
【表5】
【0041】
表5には発明例8のAl−Mn−Mg合金と、比較例16の5083合金を電流付加引張式のSCC試験で比較した結果を示す。なお、この試験は、促進試験として1.2mm厚のO材を、30%冷間圧延し、120℃×7日の加熱でいわゆる増感処理を行い、25℃の3.5%NaCl中で4mA/cm2 の電流を付加しながら変更部幅6mmの引張型試験片に所定引張応力を加えて破断時間を求めたものである。本発明例が比較例の5083合金と比べ、耐SCC性において格段に優れていることが明らかである。
【0042】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明は0.6mm以上の板厚のAl−Mn―Mg合金焼鈍板の板厚全体に5μm未満の微細結晶組織を形成することを可能とし、この微細結晶による強化により、強度と延性のバランスに優れた材料となり、もともとの良好な耐食性と相まって、今まで使用が不可能だった自動車用成形部品や電子機器筐体等としての用途も拡大する。
Claims (3)
- Mn2.1〜2.9%(mass%、以下同じ)およびMg0.8〜2.9%を含み、不純物のFeを0.3%未満およびSiを0.3%未満とし、残部アルミニウムおよび不可避不純物とからなる板厚0.6mm以上のAl−Mn−Mg系合金の焼鈍板であって、Mn固溶量が0.4%未満で、マトリックス中に円相当径0.5〜1μmの大きさのMnを含む金属間化合物粒子が1×105 個/mm2 以上分散しており、板厚全体が平均結晶粒径5μm未満の微細結晶組織からなることを特徴とする微細結晶により強化された以上のAl−Mn−Mg系合金焼鈍板。
- 前記Al−Mn−Mg系合金に、さらにCu0.05〜0.5%を含むことを特徴とする請求項1に記載の微細結晶により強化されたAl−Mn−Mg系合金焼鈍板。
- 請求項1あるいは請求項2に記載の化学組成を有するアルミニウム合金を、凝固時冷却速度150〜800℃/秒で板状に連続鋳造し、480〜580℃にて2〜30h保持する条件で均質化析出処理を施した後、圧下率80%以上の冷間圧延を加えて板厚0.6mm以上とし、5℃/秒以上の昇温速度で290〜420℃まで加熱し、直ちにあるいは600秒までの保持ののち冷却する焼鈍を行うことを特徴とする微細結晶により強化されたAl−Mn−Mg系合金焼鈍板の製造方法。
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