JP2006274834A - 内燃機関の過給圧制御装置 - Google Patents

内燃機関の過給圧制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ウエストゲートバルブ等、過給圧制御に関する流量制御弁の基準位置を正しく学習し、ひいては過給圧を適正に制御する。
【解決手段】WGV開度補正量算出部62は、目標過給圧算出部61で算出した目標過給圧と実過給圧との偏差に基づいてWGV開度補正量を算出する。学習値算出部64は、WGV開度補正量算出部62で算出したWGV開度補正量に基づいてWGV全閉学習値を算出するとともに、該学習値の更新を実施する。特にここでは、少なくともエンジンの暖機完了後であることを条件に、全閉学習を実施する。目標WGV開度算出部65は、ベースWGV開度とWGV開度補正量とにより目標WGV開度を算出し、WGV開度制御部66は、目標WGV開度と実WGV開度とに基づいてWGV制御量を算出する。そして、このWGV制御量によりWGVアクチュエータ42が駆動される。
【選択図】 図5

Description

本発明は、内燃機関の過給圧制御装置に関するものである。
従来から、ターボチャージャ等の過給機を設けた内燃機関が種々実用化されており、この過給機の作動により吸気効率が改善され内燃機関の出力向上が図られている。また、こうした過給機付き内燃機関において、過給機の過給状態を調整するための過給状態可変装置を備えた構成が提案されており、その一つとして、排気管に設けた排気タービンを迂回するようにしてバイパス通路を設けるとともに該バイパス通路にウエストゲートバルブを配設した技術がある。このウエストゲートバルブの作動により排気タービンに流れ込む排気流量が調整され、過給圧の過上昇などが抑制されるようになっていた。
ウエストゲートバルブでは長期の使用により経時的な変化が生じると、ウエストゲートバルブの駆動アクチュエータに対して同じ制御量を付与していても現実のウエストゲートバルブ開度に差異が生じる。そのため、その経時変化に応じてウエストゲートバルブの制御量を変更することが考えられている。例えば特許文献1では、エンジン回転速度やエンジン負荷が所定範囲にある場合(すなわち加速モードにある場合)に、ウエストゲートバルの制御信号を学習するようにしていた。
また、特許文献2では、ウエストゲートバルブの開度をデューティ比によりフィードバック制御する構成において、定常運転時にエンジン回転速度に対応して規定される要求デューティ比から適当に高い値を上限ガード値とする一方、所定のエンジン回転速度における要求デューティ比の値を実際の運転状態で学習し、その学習値とあらかじめ設定されたマップから各エンジン回転速度における上限ガード値を演算する。そしてこれにより、フィードバック制御時のオーバーシュートや制御遅れ等を解消するようにしていた。
しかしながら、ウエストゲートバルブ開度の差異は、経時変化等による定常的な要因の他に、ウエストゲートバルブやその駆動系における温度変化などの要因によっても変動する。それ故に、上記従来技術では、ウエストゲートバルブやその駆動系における温度変化などに起因して学習誤差が生じることが考えられ、結果として過給圧が適正に制御できなくなるおそれがあった。
特開平11−218031号公報 特許第3105402号公報
本発明は、ウエストゲートバルブ等、過給圧制御に関する流量制御弁の基準位置を正しく学習し、ひいては過給圧を適正に制御することができる内燃機関の過給圧制御装置を提供することを主たる目的とするものである。
本発明の過給圧制御装置は、排気タービンと吸気コンプレッサとを有してなるターボチャージャを備えた内燃機関に適用され、排気タービンを迂回する通路に設けられた流量制御弁、若しくは吸気コンプレッサを迂回する通路に設けられた流量制御弁の開度を同制御弁の基準位置に基づいて調整する。この流量制御弁の開度調整により、前記通路を流れる排気や吸気の流量が調整され、それにより過給圧が制御される。また、流量制御弁の基準位置を学習する基準位置学習手段を備えており、該基準位置学習手段は、内燃機関の暖機後に前記基準位置の学習を実施する。なお、排気タービンを迂回する通路に設けられた流量制御弁は、一般にウエストゲートバルブ(WGV)と称され、該ウエストゲートバルブによって排気タービンに流入する排気量が調整される。また、吸気コンプレッサを迂回する通路に設けられた流量制御弁は、一般にエアバイパスバルブ(ABV)と称され、該エアバイパスバルブによって吸気コンプレッサに流入する吸気量が調整される。
要するに、内燃機関の暖機完了前と暖機完了後とを比較すると、流量制御弁やその駆動系において温度差が生じ、それに起因して基準位置の学習誤差が生じる。この点、本発明によれば、内燃機関の暖機後に基準位置の学習を実施する構成としたため、流量制御弁やその駆動系における温度差に起因した学習誤差が解消できる。その結果、ウエストゲートバルブ等、過給圧制御に関する流量制御弁の基準位置を正しく学習し、ひいては過給圧を適正に制御することができる。
ここで、都度の過給圧等に依存せず任意に流量制御弁の開度を制御可能とするには、電動機を駆動源とする電動アクチュエータを採用することが考えられる。流量制御弁と電動アクチュエータとはロッド等の連結部材を介して機械的に連結される。かかる場合、電動アクチュエータの機械的構成や連結部材は、温度変化に応じて膨張又は収縮するが、上記のとおり内燃機関の暖機後に基準位置の学習を実施する構成とすることで、連結部材等の膨張や収縮に起因する誤学習が抑制できる。
過給圧制御の手法として、内燃機関の運転状態に応じて設定した目標過給圧とその都度の実過給圧とに基づいて前記流量制御弁の開度補正量を算出し、その開度補正量に基づいて流量制御弁の開度を制御することが考えられる。かかる構成において、前記算出した開度補正量に基づいて前記基準位置の学習を実施すると良い。つまり、流量制御弁やその駆動系において経時変化が生じると、定常的な過給圧偏差が生じ、それが流量制御弁の開度補正量に反映される。故に、流量制御弁の開度補正量に基づいて基準位置の学習が可能となる。
内燃機関の暖機後であることに加え、以下の(1)〜(4)を基準位置学習の実施条件とすると良い。
(1)内燃機関の運転状態に応じて設定した目標過給圧に実過給圧を一致させるようフィードバック制御を実施する過給圧制御手段を備え、該過給圧制御手段によるフィードバック制御の実施中であることを条件に前記基準位置の学習を実施する。過給圧フィードバック制御が実施されている場合には、経時変化等による基準位置のずれがフィードバック制御量として反映され、適正なる基準位置学習が可能となる。
(2)流量制御弁の開度変動量が所定値よりも大きくなることを条件に前記基準位置の学習を実施する。流量制御弁やその駆動系で経時変化等が生じると、流量制御弁の開度変動量が大きくなる。故に、流量制御弁の開度変動量により基準位置学習の要否を判断することができ、適正なる時期に基準位置学習を実施することができる。
(3)吸気通路内の圧力が負圧であるか否かを判定し、吸気通路内の圧力が負圧であると判定された場合に流量制御弁を全閉位置に制御する構成において、吸気通路内の圧力が負圧であることを条件に前記基準位置の学習を実施する。吸気通路内の圧力が負圧(すなわち大気圧以下)になる場合、流量制御弁を全閉としても過過給にはならず、流量制御弁の基準位置として全閉位置の学習が可能となる。
(4)排気タービンの回転が所定の低回転状態にあるか否かを判定し、低回転状態にあると判定された場合に流量制御弁を全閉位置に制御する構成において、排気タービンの回転が低回転状態にあることを条件に前記基準位置の学習を実施する。排気タービンの回転が低回転である場合、流量制御弁を全閉としても過過給にはならず、流量制御弁の基準位置として全閉位置の学習が可能となる。
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、内燃機関である車載多気筒ガソリンエンジンを対象にエンジン制御システムを構築するものであり、当該制御システムのエンジンには過給手段としてのターボチャージャが設けられている。先ずは、図1を用いてエンジン制御システムの全体概略構成図を説明する。
図1に示すエンジン10において、吸気管11には、DCモータ等のスロットルアクチュエータ15によって開度調節される空気量調整手段としてのスロットルバルブ14が設けられている。スロットルアクチュエータ15には、スロットル開度を検出するためのスロットル開度センサが内蔵されている。スロットルバルブ14の下流側にはサージタンク16が設けられ、このサージタンク16にはスロットル下流側の吸気圧を検出する吸気圧センサ17が設けられている。また、サージタンク16には、エンジン10の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド18が接続されており、吸気マニホールド18において各気筒の吸気ポート近傍には燃料を噴射供給する電磁駆動式の燃料噴射弁19が取り付けられている。
エンジン10の吸気ポート及び排気ポートにはそれぞれ吸気バルブ21及び排気バルブ22が設けられており、吸気バルブ21の開動作により空気と燃料との混合気が燃焼室23内に導入され、排気バルブ22の開動作により燃焼後の排ガスが排気管24に排出される。エンジン10のシリンダヘッドには各気筒毎に点火プラグ25が取り付けられており、点火プラグ25には、点火コイル等よりなる図示しない点火装置を通じて、所望とする点火時期において高電圧が印加される。この高電圧の印加により、各点火プラグ25の対向電極間に火花放電が発生し、燃焼室23内に導入した混合気が着火され燃焼に供される。
エンジン10のシリンダブロックには、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ26と、エンジン10の回転に伴い所定クランク角毎に(例えば30°CA周期で)矩形状のクランク角信号を出力するクランク角度センサ27とが取り付けられている。
吸気管11と排気管24との間にはターボチャージャ30が配設されている。ターボチャージャ30は、吸気管11に設けられたコンプレッサインペラ(吸気コンプレッサ)31と、排気管24に設けられたタービンホイール(排気タービン)32とを有し、それらが回転軸33にて連結されている。タービンホイール32を挟んで排気管24の上流部と下流部との間にはバイパス通路36が設けられており、このバイパス通路36にはウエストゲートバルブ(WGV)37が設けられている。
ウエストゲートバルブ37には連結部材としてのロッド41を介してモータ(電動機)付きアクチュエータ42(以下、WGVアクチュエータという)が接続されており、WGVアクチュエータ42を駆動することによりウエストゲートバルブ37が開閉動作し、それに伴いバイパス通路36の開口面積、すなわちバイパス通路36を流れる排気流量が可変調整される。この場合、ウエストゲートバルブ37は過給状態可変手段として機能し、任意の状態で過給圧の調整が可能な構成となっている。
図2は、WGVアクチュエータ42の機械的構成を模式的に示す図面である。WGVアクチュエータ42のケース(図示略)にはモータ43が配設されており、モータ回転軸43aの先端部にはモータギア44が取り付けられている。モータギア44には平ギア45が噛み合っており、その平ギア45の軸部にはウォーム46が連結されている。また、ウォーム46に噛み合うようにしてヘリカルギア47が設けられており、ヘリカルギア47は軸部48を中心に回動可能となっている。軸部48にはヘリカルギア47と一体回転するアーム49が設けられており、アーム49の一端にはロッド41を介してウエストゲートバルブ37が連結されている。また、ヘリカルギア47を囲むケース(図示略)には、当該ギア47の回転位置を検出することでWGV開度を検出するWGV開度センサ50が設けられている。
上記構成のWGVアクチュエータ42では、モータ43が通電されることでモータギア44が正逆いずれかの方向に回転し、その回転が平ギア45及びウォーム46を介してヘリカルギア47に伝達される。そして、ヘリカルギア47が回転することに伴いロッド41が連動し、結果としてウエストゲートバルブ37が開閉動作する。
従来の正圧式アクチュエータを用いた構成では、過給圧に応じてWGV開度が制御されるが、上記のように電動式のWGVアクチュエータ42を用いることで、過給圧に依存せずにWGV開度を任意に設定できるようになっている。
図1の説明に戻り、ターボチャージャ30では、タービンホイール32に供給される排気によって同タービンホイール32が回転し、その回転力が回転軸33を介してコンプレッサインペラ31に伝達される。そして、コンプレッサインペラ31により、吸気管11内を流れる吸入空気が圧縮されて過給が行われる。このとき、その都度のエンジン運転状態等に基づいてウエストゲートバルブ37が開閉されることにより、所望とする過給圧が実現できるようになっている。
ターボチャージャ30にて過給された空気は、インタークーラ38によって冷却された後、その下流側に給送される。インタークーラ38によって吸入空気が冷却されることで、吸入空気の充填効率が高められる。
また、本制御システムでは、ドライバによるアクセルペダルの踏み込み操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ51が設けられている。
ECU(電子制御ユニット)60は、周知の通りCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、その都度のエンジン運転状態に応じてエンジン10の各種制御を実施する。すなわち、ECU60には、前述した各種センサから各々検出信号が入力される。そして、ECU60は、随時入力される各種の検出信号に基づいて燃料噴射量や点火時期等を演算し、燃料噴射弁19や点火装置等の駆動を制御する。
また、ECU60は、各種検出信号に基づいて目標スロットル開度を演算し、その目標スロットル開度に基づいてスロットルアクチュエータ15を駆動することで所望とする空気量制御を実施する。この場合特に、アクセル開度等に基づいて目標空気量を算出するとともに、該目標空気量をパラメータとして目標スロットル開度を算出し、この目標スロットル開度を基にスロットル開度を制御する。更に、ECU60は、スロットル開度制御に並行して、その都度要求されるWGV開度となるようWGV開度制御を実施する。上述したスロットル開度制御とWGV開度制御により、ドライバが要求する要求トルクが実現できるようになる。
ところで、スロットル開度、WGV開度及びエンジン10の出力トルクは図3に示す関係を有しており、同図によれば等トルク線L1〜L4が図示のように規定されている。等トルク線は、トルクが小さいものから順にL1,L2,L3,L4となっている。
例えば等トルク線L2上においてP1,P2の各点でトルク制御を実施した場合の違いを述べる。点P1でのトルク制御は従来制御に相当し、点P2でのトルク制御は本実施の形態の制御に相当する。なお、点P1では、WGV開度=a1(ほぼ全閉値)、スロットル開度=b1であり、点P2では、WGV開度=a2、スロットル開度=b2である。
点P1,P2での各トルク制御を比較すると、点P2でのトルク制御の方がスロットル開度が大きくなっている。これにより、図4のP−V線図(圧力容積図)に示すように、排気圧力が低くなり、結果としてポンプ損失の低減が図られる。なお図4において、二点鎖線はWGV開度を略全閉とした状態の特性を示し、実線はWGV開度を所定開度に開放した状態での特性を示す。したがって、点P2でのトルク制御により燃費向上効果が得られる。本実施の形態では、所定の全閉領域を除く中間開度でWGV開度を制御することとしており、具体的には、エンジン10の通常運転時において20〜100%の範囲内(望ましくは50〜80%の範囲内)でWGV開度を制御する。
ただし、加速操作が行われる場合を想定すると、点P1から加速時には、図3の矢印X1に示すようにスロットル開度を大きくすることでトルクアップが可能となる。これに対し、点P2からの加速時において、トルクアップを図るには、図3の矢印X2に示すようにスロットル開度を大きくすることに加え、WGV開度を小さくする必要が生じる。すなわち、本実施の形態では、従来制御に比べてウエストゲートバルブ37の開閉操作量が多くなる。故に、WGVアクチュエータ42の応答遅れ等を考えると、過給圧の応答が遅れ、トルク制御の応答性にも影響が及ぶこととなる。
そこで本実施の形態では、過給圧応答を改善すべく、目標過給圧と実過給圧との差である過給圧偏差に基づいて目標WGV開度を設定するとともに、実WGV開度を目標WGV開度に一致させるようにして過給圧フィードバック制御を実施する。このとき、ウエストゲートバルブ37の全閉位置を基準としてWGV開度が制御される。
一方、上記のとおりウエストゲートバルブ37を電動式のWGVアクチュエータ42で制御する場合、これらを長期にわたって使用することでバルブ端面等に煤(デポジット)が堆積したり、錆等が発生したりし、結果としてウエストゲートバルブ37の全閉位置(基準位置)にずれが生じると考えられる。そこで本実施の形態では、経時変化によるウエストゲートバルブ37の全閉位置ずれが生じても適正なるWGV開度制御を継続するべく、該全閉位置を随時学習し、その学習結果を、ECU60内に設けたEEPROM等の不揮発性メモリに記憶保持することとする。
ウエストゲートバルブ37の全閉位置ずれの要因としては、上述した経時変化の他に、ウエストゲートバルブ37とWGVアクチュエータ42とを連結するロッド41や、同アクチュエータ42を構成するケース等の熱膨張(又は収縮)が考えられる。この場合、経時変化による全閉位置ずれは定常的なものであるのに対し、熱膨張による全閉位置ずれは部材温度や周囲温度に依存して変化する。定常的な全閉位置ずれを学習するには、熱膨張による要因を排除することが望ましいと考えられるため、本実施の形態では、エンジンの暖機完了後であることを条件に、前記全閉位置の学習を実施する。
ここで、上記のとおり実WGV開度を目標WGV開度に一致させるようにWGV開度をフィードバック制御する構成では、全閉位置ずれにより実WGV開度(センサ検出値)と目標WGV開度との偏差が定常的に発生し、その際過給圧偏差も定常的に発生する。故に、過給圧偏差に基づいて算出されるWGV開度補正量によりWGV全閉学習値を算出し、該学習値を反映してWGV開度を制御する。
次に、ECU60により実現される制御内容について詳しく説明する。図5は、過給圧制御に関し、ECU60による制御機能の概要を示す制御ブロック図である。図5では、ECU60内のCPUにより実現される演算機能をブロックごとに示している。なお本実施の形態では、スロットル下流側の吸気管圧力を「過給圧」と称し、吸気圧センサ17により検出される圧力を「実過給圧PM」として説明を進めることとする。
図5において、目標過給圧算出部61は、例えば図6の(a)に示すマップを用い、その都度のスロットル開度TAとエンジン回転速度NEとをパラメータとして目標過給圧PMTGを算出する。上記マップによれば、エンジン回転速度NEが大きいほど、又はスロットル開度TAが大きいほど、目標過給圧PMTGとして大きい値が算出される。
WGV開度補正量算出部62は、前記算出した目標過給圧PMTGと、吸気圧センサ17により検出した実過給圧PMとの偏差ΔPMを算出するとともに(ΔPM=PMTG−PM)、周知のフィードバック手法を用いてWGV開度補正量を算出する。具体的には、例えばPID手法を用い、過給圧偏差ΔPM等に基づいてWGV開度補正量を算出する。
また、ベースWGV開度算出部63は、例えば図6の(b)に示すマップを用い、その都度のスロットル開度TAとエンジン回転速度NEとをパラメータとしてベースWGV開度を算出する。上記マップによれば、エンジン回転速度NEが大きいほど、又はスロットル開度TAが大きいほど、ベースWGV開度として大きい値が算出される。この場合特に、ベースWGV開度は50〜80%の範囲内で設定される。
学習値算出部64は、WGV開度補正量算出部62で算出したWGV開度補正量に基づいてWGV全閉学習値を算出するとともに、該学習値の更新を実施する。特にここでは、少なくともエンジンの暖機完了後であることを条件に、全閉学習を実施する。
目標WGV開度算出部65は、ベースWGV開度とWGV開度補正量とWGV全閉学習値により目標WGV開度を算出する(目標WGV開度=ベースWGV開度+WGV開度補正量+WGV全閉学習値)。
WGV開度制御部66は、前記算出した目標WGV開度と、WGV開度センサ50により検出した実WGV開度とに基づいてWGV制御量を算出する。そして、WGV開度算出部66で算出したWGV制御量が駆動回路67に出力され、該駆動回路67によってWGVアクチュエータ42が駆動される。
図7は、WGV開度制御処理を示すフローチャートであり、本処理はECU60により所定の時間周期で繰り返し実行される。
図7において、まずステップS101では、本処理に必要なパラメータ(エンジン回転速度NE、スロットル開度TA、実過給圧PM)を読み込む。また、ステップS102では、WGV開度マップ(例えば図6の(b))を参照してベースWGV開度を算出し、続くステップS103では、目標過給圧マップ(例えば図6の(a))を参照して目標過給圧PMTGを算出する。
その後、ステップS104では、過給圧偏差ΔPMを算出し(ΔPM=PMTG−PM)、続くステップS105では、PID等のフィードバック手法を用い、過給圧偏差ΔPMに基づいてWGV開度補正量を算出する。また、ステップS106では、ウエストゲートバルブ37の全閉位置学習を実施する。ただしその詳細は後述する。
その後、ステップS107では、ベースWGV開度とWGV開度補正量とWGV全閉学習値の加算により目標WGV開度を算出する(目標WGV開度=ベースWGV開度+WGV開度補正量+WGV全閉学習値)。最後に、ステップS108では、目標WGV開度と実WGV開度とに基づいてWGV制御量を算出する。そして、こうして算出されたWGV制御量によりWGVアクチュエータ42(モータ43)の駆動が制御される。
次に、ウエストゲートバルブ37の全閉学習処理(図7のステップS106)を図8に基づいて説明する。
図8において、まずステップS201〜S203では学習実行条件を判定する。具体的には、ステップS201では、エンジン水温Twが所定の判定値Kd(例えば70℃)以上であるか否か、すなわちエンジンの暖機が完了しているか否かを判定する。ステップS202では、経時変化に伴うWGV開度の変動量が所定量を超えたか否か、すなわち目標WGV開度の平均値が所定範囲から外れたか否かを判定する。ステップS203では、過給圧フィードバック制御の実行中であるか否かを判定する。上記ステップS201〜S203のいずれかがNOの場合、後続の全閉学習を実行することなく本処理を終了し、同ステップS201〜S203が全てYESの場合、後続の全閉学習(ステップS204〜S208)を実行する。
そして、全閉学習では、WGV開度補正量が負側にずれているか、正側にずれているかに応じてWGV全閉学習値を更新する。実際には、ステップS204では、WGV開度補正量が所定値α1未満であるか否かを判定し、ステップS205では、同WGV開度補正量が所定α2超過であるか否かを判定する。判定値α1,α2は、α1<0<α2の関係を有するよう設定されている。−α1=α2であっても良い。
WGV開度補正量<α1の場合、ステップS206に進み、WGV全閉学習値の前回値(現在のメモリ値)から所定値βを減算する。また、WGV開度補正量>α2の場合、ステップS207に進み、WGV全閉学習値の前回値(現在のメモリ値)に所定値βを加算する。そして、上記の如くWGV全閉学習値を増減した後、EEPROM内のWGV全閉学習値を今回値にて書き換える。なお、WGV開度補正量がα1〜α2であればWGV全閉学習値の増減を実施しない。
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
エンジン10の暖機後にWGV全閉位置を学習する構成としたため、ウエストゲートバルブ37やその駆動系(ロッド41やWGVアクチュエータ42)における温度差に起因した学習誤差が解消できる。その結果、WGV全閉位置を正しく学習し、ひいては過給圧を適正に制御することができる。
また、エンジン10の暖機後であることに加え、過給圧フィードバック制御の実施中であること、WGV開度の変動量が所定量を超えたことを条件にWGV全閉位置の学習を実施するようにしたため、経時変化に伴うWGV全閉位置の変化を適正に学習することができる。
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
吸気管内圧力が負圧である場合にウエストゲートバルブ37を全閉位置(WGV開度=0%)に制御する構成とする。そしてかかる構成において、吸気管内圧力が負圧であることを条件にWGV全閉位置の学習を実施する。吸気管内圧力が負圧(すなわち大気圧以下)になる場合、ウエストゲートバルブ37を全閉としても過過給にはならず、WGV全閉位置の学習が可能となる。
また、タービン回転速度が所定回転速度以下(すなわちタービン低回転状態)である場合にウエストゲートバルブ37を全閉位置(WGV開度=0%)に制御する構成とする。そしてかかる構成において、タービン回転速度が所定回転速度以下であることを条件にWGV全閉位置の学習を実施する。タービン回転が低回転である場合、ウエストゲートバルブ37を全閉としても過過給にはならず、WGV全閉位置の学習が可能となる。
上記実施の形態では、過給圧偏差に基づいて算出されるWGV開度補正量によりWGV全閉学習値を算出したが、これに代えて、WGV開度偏差(=目標WGV開度−実WGV開度)に基づいて算出されるWGV開度補正量によりWGV全閉学習値を算出することも可能である。
上記実施の形態では、エンジン水温Twが所定の暖機判定値以上であるか否かによりエンジンの暖機判定を実施したが、これに代えて、エンジン油温(エンジン潤滑油の温度)が所定の暖機判定値以上であるか否かによりエンジンの暖機判定を実施しても良い。
流量制御弁として、ウエストゲートバルブ以外に、吸気コンプレッサを迂回する通路に設けたエアバイパスバルブ(ABV)を採用する構成であっても良い。すなわち、図9に示すように、コンプレッサインペラ31を挟んで吸気管11の上流部と下流部との間にはバイパス通路71が設けられており、このバイパス通路71にはエアバイパスバルブ72が設けられている。エアバイパスバルブ72には連結部材としてのロッド73を介してモータ(電動機)付きアクチュエータ74(ABVアクチュエータ)が接続されており、ABVアクチュエータ74を駆動することによりエアバイパスバルブ72が開閉動作し、それに伴いバイパス通路71の開口面積、すなわちバイパス通路71を流れる吸気流量が可変調整される。ABVアクチュエータ74には、ABV開度を検出するためのABV開度センサ75が設けられている。ABVアクチュエータ74の駆動はECU60により制御される。ABVアクチュエータ74の構成は、前記WGVアクチュエータ42の構成に準ずるものであれば良く、ここではその説明を省略する(図2参照)。
かかる場合、ECU60は、目標過給圧と実過給圧との差である過給圧偏差に基づいて目標ABV開度を設定するとともに、実ABV開度を目標ABV開度に一致させるようにして過給圧フィードバック制御を実施する。そして、エンジン10の暖機完了後であることや、それに加えて過給圧フィードバック制御の実施中であること、目標ABV開度の平均値が所定範囲から外れたこと(ABV開度の変動量が所定量を超えたこと)などを条件に、エアバイパスバルブ72の基準位置(全閉位置)の学習を実施する。このとき、過給圧偏差に基づいて算出されたABV開度補正量によりABV全閉位置が学習される。
発明の実施の形態におけるエンジン制御システムの概略を示す構成図である。 WGVアクチュエータの機械的構成を示す図である。 等トルク特性を示す図である。 エンジンのP−V線図である。 過給圧制御に関してECUによる制御機能の概要を示す制御ブロック図である。 (a)は目標過給圧マップを示す図であり、(b)はベースWGV開度マップを示す図である。 WGV開度制御処理を示すフローチャートである。 WGV全閉学習処理を示すフローチャートである。 別の形態におけるエンジン制御システムの概略を示す構成図である。
符号の説明
10…エンジン、11…吸気管、24…排気管、26…水温センサ、30…ターボチャージャ、31…コンプレッサインペラ、32…タービンホイール、36…バイパス通路、37…ウエストゲートバルブ、41…ロッド、42…WGVアクチュエータ、43…モータ、60…ECU、71…バイパス通路、72…エアバイパスバルブ、73…ロッド、74…ABVアクチュエータ。

Claims (7)

  1. 排気通路に設けられた排気タービンと吸気通路に設けられた吸気コンプレッサとを有してなるターボチャージャを備えた内燃機関に適用され、前記排気タービンを迂回する通路に設けられた流量制御弁、若しくは前記吸気コンプレッサを迂回する通路に設けられた流量制御弁の開度を同制御弁の基準位置に基づいて調整する開度調整手段を備え、該開度調整手段による開度調整により過給圧が制御される過給圧制御装置において、
    前記流量制御弁の基準位置を学習する基準位置学習手段を備え、該基準位置学習手段は、前記内燃機関の暖機後に前記基準位置の学習を実施することを特徴とする内燃機関の過給圧制御装置。
  2. 内燃機関の運転状態に応じて設定した目標過給圧とその都度の実過給圧とに基づいて前記流量制御弁の開度補正量を算出する手段を備え、
    前記基準位置学習手段は、前記算出した開度補正量に基づいて前記基準位置の学習を実施することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の過給圧制御装置。
  3. 内燃機関の運転状態に応じて設定した目標過給圧に実過給圧を一致させるようフィードバック制御を実施する過給圧制御手段を備え、
    前記基準位置学習手段は、前記過給圧制御手段によるフィードバック制御の実施中であることを条件に前記基準位置の学習を実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の過給圧制御装置。
  4. 前記基準位置学習手段は、前記流量制御弁の開度変動量が所定値よりも大きくなることを条件に前記基準位置の学習を実施することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関の過給圧制御装置。
  5. 吸気通路内の圧力が負圧であるか否かを判定する手段と、前記吸気通路内の圧力が負圧であると判定された場合に前記流量制御弁を全閉位置に制御する手段とを備え、
    前記基準位置学習手段は、前記吸気通路内の圧力が負圧であることを条件に前記基準位置の学習を実施することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関の過給圧制御装置。
  6. 前記排気タービンの回転が所定の低回転状態にあるか否かを判定する手段と、低回転状態にあると判定された場合に前記流量制御弁を全閉位置に制御する手段とを備え、
    前記基準位置学習手段は、前記排気タービンの回転が低回転状態にあることを条件に前記基準位置の学習を実施することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関の過給圧制御装置。
  7. 前記流量制御弁に連結部材を介して機械的に連結され、電動機を駆動源として当該流量制御弁を駆動する電動アクチュエータを備えた請求項1乃至6のいずれかに記載の内燃機関の過給圧制御装置。
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