JP5182436B2 - 過給エンジンの制御装置 - Google Patents
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Description
本発明は、ウェイストゲートバルブを有する過給エンジンの制御装置に関する。
現在注目されている過給エンジンの制御技術の一つが、E−VRV(Electronic Vacuum Regulating Valve)等の電動式アクチュエータを用いたウェイストゲートバルブのアクティブ制御である。このアクティブ制御では、ECUからの操作信号によってウェイストゲートバルブを任意の開度に動かし、それによりターボ回転数を能動的に制御することが行われる。これによれば過給圧を任意に調整することが可能であり、燃費性能や排気ガス性能のさらなる向上が期待できる。
ただし、このようなアクティブ制御の実現のためには、ウェイストゲートバルブが実際にどれだけ開いているのかを正しく把握することが必要である。ウェイストゲートバルブを能動的に動作させたとしても、その開度が本来予定している開度からずれている場合にはエンジンの運転に支障が生じてしまうからである。例えば、高負荷状態においてウェイストゲートバルブが予定よりも閉じすぎていると、過剰な過給によってプレイグニッションが発生してしまう。逆に、ウェイストゲートバルブが予定よりも開きすぎていると、過給圧の不足によって所望の加速性能を得ることができなくなる。また、情報としてのウェイストゲートバルブ開度は、筒内空気量を正確に推定するための重要な情報でもある。
ところが、センサ等の計測手段によってウェイストゲートバルブ開度を精度良く実測することは現実的に容易ではない。このため、ウェイストゲートバルブ開度が情報として必要であるならば、ECUがウェイストゲートバルブを操作するときの操作量からウェイストゲートバルブ開度を推定せざるを得ない。具体的には、予め定義された対応関係を用いてウェイストゲートバルブの操作量からウェイストゲートバルブ開度が推定されることになる。しかし、ウェイストゲートバルブの個体差や経時変化により、実際の対応関係と定義されている対応関係との間にずれが生じる可能性がある。その場合、ウェイストゲートバルブ開度の推定値は実際値とは異なったものとなり、ウェイストゲートバルブ開度の推定値を参照して行われるエンジン制御に悪影響を与えてしまう。このようなことから、ウェイストゲートバルブのアクティブ制御を実施する場合には、ウェイストゲートバルブ開度の正確な推定値を得ることのできる技術が併せて必要とされている。
なお、本発明に関連する先行技術としては、以下に列挙する各特許文献に記載の技術を挙げることができる。例えば、特開2004−156525号公報には、実際の吸気弁流量とモデルを用いて計算した推定吸気弁流量との誤差に基づいて誤差要因であるバルブリフト量を補正することについて記載されている。しかし、同公報ではウェイストゲートバルブについては触れられておらず、ましてや、ウェイストゲートバルブ開度の正確な推定値を得るための方法については記載されていない。
以上述べたように、ウェイストゲートバルブ開度を正確に推定できるようにすることは、ウェイストゲートバルブのアクティブ制御を実施する上での重要な課題として位置づけられる。このような課題を達成するためのアプローチとして、本発明では、過給エンジンにおける空気の挙動をモデル化した物理モデルを利用する。そのような物理モデルは、過給エンジンの制御装置において筒内空気量を推定するための計算に用いられている。過給エンジンの物理モデルにより計算される物理量の中には、ウェイストゲートバルブ開度によって値が決まり、かつ、過給エンジンに搭載されるセンサによって計測可能な物理量が含まれている。そのような物理量の計測値と、ウェイストゲートバルブ開度の推定値に基づき物理モデルを用いて計算した当該物理量の推定値とを比較することで、ウェイストゲートバルブ開度の推定値と実際値とのずれを間接的に把握することができる。そして、前記物理量の計測値と推定値との差が無くなるようにウェイストゲートバルブ開度の推定値とウェイストゲートバルブの操作量との対応関係を調整することにより、ウェイストゲートバルブ開度の推定値を実際値に合うように修正することが可能となる。
具体的には、本発明が提供する過給エンジンの制御装置は、物理モデルとしてスロットルモデルと吸気弁モデルとを備えている。スロットルモデルは、スロットル上流圧力とスロットル下流圧力とスロットル開度とスロットル流量との間に成り立つ関係がモデル化されたものである。スロットル上流圧力とは、コンプレッサからスロットルまでの空間の圧力を意味し、スロットル下流圧力とは、スロットルから吸気弁までの空間の圧力を意味する。スロットルを通過する空気の流量は、主としてこれらの差圧と流路面積とによって決まることが知られている。流路面積はスロットル開度により決まる。一方、吸気弁モデルは、スロットル下流圧力とウェイストゲートバルブ開度と吸気弁流量との間に成り立つ関係をモデル化したものである。スロットル下流圧力と吸気弁を通過する空気の流量との間には直線で近似することができる関係があることが知られている。そして、その直線の式の傾きや切片を決定する係数の値にウェイストゲートバルブ開度が関係していることも知られている。これらの物理モデルは何れも数式で表すことが可能であり、何れも処理プログラムの形で本制御装置の記憶部に記憶されている。
また、本制御装置は、ウェイストゲートバルブ開度をウェイストゲートバルブの操作量から推定する機能を備えている。その推定のためには、予め定義されているウェイストゲートバルブの操作量とウェイストゲートバルブ開度との対応関係が用いられる。対応関係はマップデータの形で本制御装置の記憶部に記憶されている。さらに、本制御装置は、スロットル開度、スロットル上流圧力、及び吸気流量の各計測値を取得する機能を備えている。吸気流量とは過給エンジンの吸気通路に吸入される空気の流量を意味する。これらの物理量は過給エンジンに搭載のセンサによって計測することができる。そして、これらの計測値とウェイストゲートバルブ開度の推定値とに基づき、本制御装置は、前述の各物理モデルを用いて以下の計算を実施する。
本発明の第1の形態によれば、本制御装置は、ウェイストゲートバルブ開度の推定値に基づいて、スロットル下流圧力と吸気弁流量との間に成り立つ関係(以下、第1の関係)を吸気弁モデルから導出する。また、本制御装置は、スロットル開度の計測値とスロットル上流圧力の計測値とに基づいて、スロットル下流圧力とスロットル流量との間に成り立つ関係(以下、第2の関係)をスロットルモデルから導出する。次に、本制御装置は、第1の関係及び第2の関係に基づいて吸気弁流量とスロットル流量とが一致する場合の吸気弁流量の推定値を計算する。第1の関係と第2の関係はいずれも方程式で表すことができるので、それらの連立方程式を解くことによって、現在のウェイストゲートバルブ開度の推定値とスロットル上流圧力の計測値とから推定される吸気弁流量を得ることができる。
そして、本制御装置は、上述のようにして得られた吸気弁流量の推定値と吸気流量の計測値とを比較する。定常状態であれば吸気弁流量と吸気流量とは一致することから、吸気弁流量の推定値と吸気流量の計測値とを比較することは、吸気弁流量の推定値と計測値、すなわち、実際値とを比較することと等価である。吸気弁流量の推定値と実際値との間に誤差がある場合、その誤差はウェイストゲートバルブ開度の推定値と実際値との間にずれが生じていることを意味する。吸気弁モデルによれば、吸気弁流量の推定値はウェイストゲートバルブ開度の推定値によってその値が左右されるからである。そこで、本発明の第1の形態によれば、本制御装置は、吸気弁流量の推定値と吸気流量の計測値との比較結果に基づいて、具体的には、吸気弁流量の推定値と吸気流量の計測値とが一致するように、ウェイストゲートバルブ開度の推定値とウェイストゲートバルブの操作量との対応関係を調整する。吸気弁流量の推定値と吸気流量の計測値とが一致するようになれば、ウェイストゲートバルブ開度の推定値の実際値に対するずれも解消されるようになる。
また、本発明の第2の形態によれば、本制御装置は、ウェイストゲートバルブ開度の推定値、及び、吸気流量の計測値に基づいて、吸気弁モデルを用いてスロットル下流圧力の推定値を計算する。定常状態であれば吸気弁流量と吸気流量とは一致することから、吸気流量の計測値は吸気弁モデルにおいて吸気弁流量の実際値として扱うことができる。次に、本制御装置は、吸気弁モデルを用いて計算されたスロットル下流圧力の推定値、スロットル開度の計測値、及び、吸気流量の計測値に基づいて、スロットルモデルを用いてスロットル上流圧力の推定値を計算する。定常状態であれば吸気弁流量とスロットル流量とは一致することから、吸気流量の計測値はスロットルモデルにおいてスロットル流量の実際値として扱うことができる。
そして、本制御装置は、上述のようにして得られたスロットル上流圧力の推定値をその計測値と比較する。スロットル上流圧力の推定値と計測値との間に誤差がある場合、その誤差はウェイストゲートバルブ開度の指示値と実際値との間にずれが生じていることを意味する。スロットルモデル及び吸気弁モデルによれば、ウェイストゲートバルブ開度の推定値に応じてスロットル下流圧力の推定値が決まり、スロットル下流圧力の推定値によってスロットル上流圧力の推定値が決まるからである。そこで、本発明の第2の形態によれば、本制御装置は、スロットル上流圧力の推定値と計測値との比較結果に基づいて、具体的には、スロットル上流圧力の推定値と計測値とが一致するように、ウェイストゲートバルブ開度の推定値とウェイストゲートバルブの操作量との対応関係を調整する。スロットル上流圧力の推定値と計測値とが一致するようになれば、ウェイストゲートバルブ開度の推定値の実際値に対するずれも解消されるようになる。
以上の2つの形態を前提として、本発明は次に述べる第3の形態を採ることもできる。本発明の第3の形態では、第1の形態或いは第2の形態の特徴にさらなる特徴が追加される。その追加された特徴には、本発明が適用される過給エンジンが吸気弁のバルブリフト量を可変にする可変動弁機構を備えたエンジンであることと、吸気弁モデルのパラメータにバルブリフト量が含まれることが含まれる。本発明の第3の形態によれば、スロットル下流圧力と吸気弁流量との関係を示す直線の式の係数の決定にウェイストゲートバルブ開度の推定値に加えてバルブリフト量の推定値が用いられる。バルブリフト量可変のエンジンの場合、バルブリフト量によってスロットル下流圧力と吸気弁流量との関係が変化することは知られている。
吸気弁モデルのバラメータにバルブリフト量が加えられることで、スロットル下流圧力と吸気弁流量との関係はより正確に表される。しかし、その一方でバルブリフト量の推定値と実際値との間にずれがある場合には、目標どおりに筒内空気量を実現することができない。さらに、バルブリフト量の推定値と実際値とのずれは、前述の第1の形態や第2の形態で行われているウェイストゲートバルブ開度の推定値とウェイストゲートバルブの操作量との対応関係の調整にも影響する。モデルによる計算結果はバルブリフト量の推定値によって左右されるからである。本発明の第3の形態は、ウェイストゲートバルブ開度の推定値と実際値とのずれを無くすことに加え、バルブリフト量の推定値と実際値とのずれを無くすことをさらなる課題として創案されたものである。
本発明の第3の形態によれば、本制御装置は、さらなる物理モデルとしてターボ回転数モデルとコンプレッサモデルとを備えている。ターボ回転数モデルは、吸気弁流量とウェイストゲートバルブ開度とターボ回転数との間に成り立つ関係がモデル化されたものである。定常状態における吸気弁流量はタービンに流入するガスの流量と等価であるから、吸気弁流量とウェイストゲートバルブ開度が決まれば、過給機の動作特性からターボ回転数を一義的に特定することができる。一方、コンプレッサモデルは、ターボ回転数とスロットル上流圧力とコンプレッサ流量との間に成り立つ関係がモデル化されたものである。コンプレッサによって送り出される空気の流量は、主としてその前後の圧力差とコンプレッサの回転数とによって決まることが知られている。コンプレッサの上流の圧力は大気圧に略等しく、コンプレッサの回転数はターボ回転数に等しい。本発明の第3の形態によれば、本制御装置は、これらの物理モデルを用いて以下の計算を実施する。
本制御装置は、まず、バルブリフト量を可変動弁機構の操作量から推定する。その推定のためには、予め定義されている可変動弁機構の操作量とバルブリフト量との対応関係が用いられる。また、本制御装置は、ウェイストゲートバルブ開度の推定値、及び、吸気流量の計測値に基づいて、ターボ回転数モデルを用いてターボ回転数の推定値を計算する。定常状態であれば吸気弁流量と吸気流量とは一致することから、吸気流量の計測値はターボ回転数モデルにおいて吸気弁流量の実際値として扱うことができる。次に、本制御装置は、ターボ回転数モデルを用いて計算されたターボ回転数の推定値、及び、スロットル上流圧力の計測値に基づいて、コンプレッサモデルを用いてコンプレッサ流量の推定値を計算する。
そして、本制御装置は、上述のようにして得られたコンプレッサ流量の推定値を吸気流量の計測値と比較する。定常状態であればコンプレッサ流量と吸気流量とは一致することから、コンプレッサ流量の推定値と吸気流量の計測値とを比較することは、コンプレッサ流量の推定値と計測値、すなわち、実際値とを比較することと等価である。コンプレッサ流量の推定値と実際値との間に誤差がある場合、その誤差はウェイストゲートバルブ開度の推定値と実際値との間にずれが生じていることを意味する。ターボ回転数モデル及びコンプレッサモデルによれば、ウェイストゲートバルブ開度の推定値に応じてターボ回転数の推定値が決まり、ターボ回転数の推定値によってコンプレッサ流量の推定値が決まるからである。そこで、本制御装置は、コンプレッサ流量の推定値と吸気流量の計測値とを比較し、その比較結果に基づいてウェイストゲートバルブ開度の推定値とウェイストゲートバルブの操作量との対応関係を調整する。ターボ回転数モデル及びコンプレッサモデルによる計算にはバルブリフト量は用いられないことから、本方法による対応関係の調整結果にはバルブリフト量の推定値と実際値とのずれは影響しない。
次に、本制御装置は、上述の方法によるウェイストゲートバルブ開度の推定値とウェイストゲートバルブの操作量との対応関係の調整結果と、本発明の第1の形態或いは第2の形態による調整結果とを比較する。両者の間にずれがある場合、そのずれはバルブリフト量の推定値と実際値との間にずれが生じていることを意味する。この場合、本制御装置は、上述の方法により調整された対応関係に従ってウェイストゲートバルブ開度の推定値を取得し、当該推定値とバルブリフト量の推定値とに基づいて吸気弁モデルを用いて吸気弁流量の推定値を計算する。そして、吸気弁流量の推定値と吸気流量の計測値とを比較し、その比較結果に基づいてバルブリフト量の推定値と可変動弁機構の操作量との対応関係を調整する。その対応関係の調整によって吸気弁流量の推定値と吸気流量の計測値とが一致するようになれば、バルブリフト量の推定値の実際値に対するずれも解消されるようになる。
実施の形態1.
本発明の実施の形態1について図を参照して説明する。
本発明の実施の形態1について図を参照して説明する。
本実施の形態の制御装置が適用されるエンジンは、ウェイストゲートバルブを有する過給エンジンであり、より詳しくは、スロットルによる空気量の調整によってトルクを制御することのできる4サイクルレシプロエンジンである。図1は、本実施の形態の制御装置が適用される過給エンジンの構成を示す概略図である。本実施の形態にかかる過給エンジンは、吸気通路10に設けられたコンプレッサ32と排気通路20に設けられたタービン34とからなるターボ過給機30を備えている。吸気通路10はエンジン本体2に取り付けられた吸気マニホールド18に接続されている。吸気通路10の入口にはエアクリーナ12が設けられ、その下流であってコンプレッサ32よりも上流には吸気流量を計測するためのエアフローメータ42が配置されている。吸気通路10におけるコンプレッサ32とスロットル16との間にはインタークーラ14が設けられている。インタークーラ14の出口には、スロットル16の上流部の圧力、すなわち、過給圧を測定するための過給圧センサ44が取り付けられている。また、吸気通路10には、コンプレッサ32の下流側から上流側へコンプレッサ32をバイパスして空気を再循環させるためのエアバイパスバルブ36が設けられている。排気通路20はエンジン本体2に取り付けられた排気マニホールド22に接続されている。排気通路20には、タービン34をバイパスして排気ガスを流すためのウェイストゲートバルブ38が設けられている。このウェイストゲートバルブ38はE−VRVによって駆動されるアクティブ制御対応のウェイストゲートバルブである。
本実施の形態の制御装置は、過給エンジンを制御するECU(Electronic Control Unit)40の機能の一部として実現される。ECU40には、エアフローメータ42や過給圧センサ44の他にもスロットル開度センサ46や大気圧センサ48等の各種のセンサから、エンジンの運転状態や運転条件に関する様々な情報や信号が入力される。ECU40は、それら情報や信号に基づいてスロットル16やウェイストゲートバルブ38等の各種のアクチュエータを操作する。ウェイストゲートバルブ38に関しては、ECU40からE−VRVに操作量信号が供給される。その信号に従いE−VRVが作動することにより、ウェイストゲートバルブ38は任意の開度に動かされる。ECU40には、ウェイストゲートバルブ38の操作量であるデューティ比とウェイストゲートバルブ開度の推定値との対応関係を示すマップが記憶されている。
制御装置としてのECU40は、筒内の空気量を推定する機能を有している。ECU40による筒内の空気量の推定には、プログラムされている空気量推定モデルが用いられる。空気量推定モデルは、過給エンジンにおける空気の挙動を物理的にモデル化したものであって、その概要は図2の機能ブロック図によって表される。
図2に示すように、本実施の形態で用いられる空気量推定モデルは、ターボ回転数モデルM1、コンプレッサモデルM2、インタークーラモデルM3、スロットルモデルM4、吸気マニホールドモデルM5、吸気弁モデルM6、及び、ABVモデルM7を含んでいる。以下、空気量推定モデルに含まれる各サブモデルの内容について説明する。ただし、これらのサブモデルに用いることができる数式の例については公知であり、また、それ自体は本発明における特徴点ではないことから、各サブモデルのための具体的な数式については記載を省略する。
ターボ回転数モデルM1は、ターボ過給機30の回転挙動のモデルであって、吸気弁流量とウェイストゲートバルブ開度とターボ回転数との間に成り立つ関係がモデル化されている。ターボ回転数モデルM1は、数式或いは実験データに基づくマップによって構成されている。ターボ回転数モデルM1では、ウェイストゲートバルブ38の操作量から推定されたウェイストゲートバルブ開度(wgv)と、後述する吸気弁モデルM6で算出された吸気弁流量(mc)とが入力され、それらの入力情報からターボ回転数(Ntb)が算出される。
コンプレッサモデルM2は、ターボ過給機30のコンプレッサ32のモデルであって、ターボ回転数と過給圧とコンプレッサ流量との間に成り立つ関係がモデル化されている。コンプレッサモデルM2は、数式或いは実験データに基づくマップによって構成されている。コンプレッサモデルM2では、ターボ回転数モデルM1で算出されたターボ回転数(Ntb)と、後述するインタークーラモデルM3で算出された過給圧(Pic)等の情報が入力され、それらの入力情報からコンプレッサ流量(mcp)が算出される。
ABVモデルM7は、エアバイパスバルブ36によってコンプレッサ32の下流側から上流側に戻される空気の流量を算出するためのモデルである。エアバイパスバルブ36の流量は、その前後の差圧と、エアバイパスバルブ36を動作させるデューティ比から計算することができる。このため、ABVモデルM7では、大気圧センサ48によって計測された大気圧(Pa)、後述するインタークーラモデルM3で算出された過給圧(Pic)、及びECU40からエアバイパスバルブ36に出されるデューティ比(Dabv)が入力され、それらの入力情報からエアバイパスバルブ流量(mabv)が算出される。
インタークーラモデルM3は、吸気通路10におけるインタークーラ14内の空気に関する保存則に基づいて構築された物理モデルである。インタークーラモデルM3としては、具体的にはエネルギー保存則の式と流量保存則の式とが用いられている。インタークーラモデルM3では、コンプレッサモデルM2で算出されたコンプレッサ流量(mcp)、後述するスロットルモデルM4で算出されたスロットル流量(mt)、及びABVモデルM7で算出されたABV流量(mabv)等の情報が入力され、それらの入力情報から過給圧(Pic)が算出される。
スロットルモデルM4は、スロットル16を通過する空気の流量を算出するためのモデルであって、具体的には、スロットル16の前後の差圧、スロットル開度により決まる流路面積、及び流量係数を基本とするオリフィスの流量式が用いられている。スロットルモデルM4では、スロットル開度センサ46で計測されたスロットル開度(TA)、インタークーラモデルM3で算出されたスロットル上流圧力としての過給圧(Pic)、及び後述する吸気マニホールドモデルM5で算出されたスロットル下流圧力としての吸気マニホールド圧(Pm)等の情報が入力され、それらの入力情報からスロットル流量(mt)が算出される。
吸気マニホールドモデルM5は、吸気マニホールド18内の空気に関する保存則に基づいて構築された物理モデルである。吸気マニホールドモデルM5としては、具体的にはエネルギー保存則の式と流量保存則の式とが用いられている。吸気マニホールドモデルM5では、スロットルモデルM4で算出されたスロットル流量(mt)、及び後述する吸気弁モデルM6で算出された吸気弁流量(mc)等の情報が入力され、それらの入力情報から吸気マニホールド圧(Pm)が算出される。
吸気弁モデルM6は、吸気弁流量と吸気マニホールド圧との関係について調べた実験ベースのモデルである。実験で得られた経験則により、吸気弁モデルM6においては吸入空気量と吸気マニホールド圧との関係が直線で近似されている。ただし、その直線の方程式の係数は定数ではなく、ウェイストゲートバルブ38の開度によって決まる変数である。ウェイストゲートバルブ38の開度は背圧に影響し、背圧が変化すれば筒内への空気の入り易さも変化するためである。吸気弁モデルM6では、吸気マニホールドモデルM5で算出された吸気マニホールド圧(Pm)、及びウェイストゲートバルブ38の操作量から推定されたウェイストゲートバルブ開度(wgv)等の情報が入力され、それらの入力情報から吸気弁流量(mc)が算出される。
ECU40は、以上のように構成される空気量推定モデルを用いて吸気弁流量を計算し、吸気弁流量に基づいて筒内空気量を計算する。その計算の過程においては、スロットル開度や過給圧の計測値とともにウェイストゲートバルブ開度の推定値が用いられている。センサによって得られた計測値は、センサが正しく較正されている限りにおいて実際値に等しいとみなすことができる。しかし、ウェイストゲートバルブ開度の推定値に関しては、必ずしも実際値に等しいとは言えない。ウェイストゲートバルブ38の個体差や経時変化によって、マップにおいて定義されているウェイストゲートバルブ開度と操作量との対応関係が実際のものと違ってしまう場合があるからである。この点に関し、ECU40には、以下に述べるように、ウェイストゲートバルブ開度の推定値を実際値に合わせて修正する機能が設けられている。
まず、本実施の形態で採られるウェイストゲートバルブ開度の推定値と実際値とのずれの判定の方法について図3を用いて説明する。なお、ここでは、ウェイストゲートバルブ開度の推定値が実際値よりも小さく見積もられているケースを例にとって説明する。
図3に示すグラフの横軸は吸気マニホールド圧(Pm)であり、縦軸はスロットル流量(mt)及び吸気弁流量(mc)である。グラフ中には2つの直線A、Bと1つの曲線Cが描かれている。直線Aは、ウェイストゲートバルブ開度の推定値に基づいて吸気弁モデルM6から導出される吸気マニホールド圧(Pm)と吸気弁流量(mc)との関係を示す直線である。一方、直線Bは、ウェイストゲートバルブ開度の実際値を吸気弁モデルM6に入力したならば得られるはずの吸気マニホールド圧(Pm)と吸気弁流量(mc)との関係を示す直線である。ただし、ウェイストゲートバルブ開度の実際値は直接計測できないことから、グラフに示す直線Bはあくまでも仮想であって、現実的に導出可能なのは直線Aのみである。曲線Cは、スロットル開度と過給圧の各計測値をスロットルモデルM4に入力することで得られる吸気マニホールド圧(Pm)とスロットル流量(mt)との関係を示している。この曲線Cから分かるように、スロットル開度と過給圧とが一定の場合、スロットル流量(mt)は吸気マニホールド圧(Pm)の増大とともに減少し、吸気マニホールド圧(Pm)の値が過給圧(Picact)に一致するときにスロットル流量(mt)はゼロになる。
定常状態においてはスロットル流量と吸気流量とは一致することから、エアフローメータ42によって計測された吸気流量(mafm)を曲線Cの方程式に代入することにより、現時点における吸気マニホールド圧と過給圧の比を推測することができる。また、定常状態においてはスロットル流量(mt)と吸気弁流量(mc)とは一致することから、過給圧が分かれば曲線Cと直線Aの交点における流量を算出することで、ウェイストゲートバルブ開度の推定値のもとでの吸気弁流量(mcest)を求めることができる。より具体的には、曲線Cと直線Aはそれぞれに方程式で表されることから、その連立方程式を解くことで、ウェイストゲートバルブ開度の推定値のもとでの推定吸気弁流量(mcest)を算出することができる。
本実施の形態では、このようにして得られた吸気弁流量の推定値(mcest)と、エアフローメータ42によって計測された吸気流量(mafm)とを比較する。定常状態であれば吸気弁流量と吸気流量とは一致することから、吸気弁流量の推定値(mcest)と吸気流量の計測値(mafm)とを比較することは、吸気弁流量の推定値(mcest)とその実際値とを比較することと等価である。ウェイストゲートバルブ開度の推定値が実際値に一致するのであれば、吸気弁流量の推定値(mcest)もその実際値に一致する。しかし、ウェイストゲートバルブ開度の推定値が実際値からずれているのであれば、吸気弁流量の推定値(mcest)はその実際値には一致していない。このことから、吸気弁流量の推定値(mcest)と吸気流量の計測値(mafm)との間に誤差(グラフにはDで示している)がある場合には、その誤差の存在をもってウェイストゲートバルブ開度の推定値と実際値との間にずれが生じていると判断することができる。
次に、本実施の形態で採られるウェイストゲートバルブ開度の推定値の修正の方法について説明する。ウェイストゲートバルブ開度の推定値は、マップにおいてウェイストゲートバルブ38の操作量に対応付けられている。本実施の形態では、そのマップのデータを修正することにより、ウェイストゲートバルブ開度と操作量との対応関係の調整が行われる。その調整においては、吸気弁流量の推定値(mcest)が吸気流量の計測値(mafm)よりも小さいのであれば、吸気弁モデルM6で算出される吸気弁流量が増えるように、操作量に対してウェイストゲートバルブ開度はプラス側に修正される。逆に、吸気弁流量の推定値(mcest)が吸気流量の計測値(mafm)よりも大きいのであれば、吸気弁モデルM6で算出される吸気弁流量が減少するように、操作量に対してウェイストゲートバルブ開度はマイナス側に修正される。
図4は、このような修正の方法をECU40により実現するための構成を示している。このブロック図に示すように、ECU40は、吸気弁モデルM6とスロットルモデルM4を利用する。また、ECU40には、操作量から推定されたウェイストゲートバルブ開度(wgv)が取り込まれるとともに、過給圧センサ44により計測された過給圧(Picact)、スロットル開度センサ46により計測されたスロットル開度(TA)、及び、エアフローメータ42により計測された吸気流量(mafm)が取り込まれる。
取り込まれたウェイストゲートバルブ開度(wgv)は吸気弁モデルM6に入力される。吸気弁モデルM6では、ウェイストゲートバルブ開度(wgv)に基づいて、吸気マニホールド圧(Pm)と吸気弁流量(mc)との関係を示す方程式が導出される。スロットルモデルM4では、過給圧(Picact)及びスロットル開度(TA)により特定される方程式と吸気弁モデルM6で得られた方程式との連立方程式を解くことによって吸気弁流量の推定値(mcest)が算出される。
次に、ECU40は、吸気弁流量の推定値(mcest)と吸気流量(mafm)との差分を算出する。そして、その差分値(mcest−mafm)はゼロより大きいかどうか判定される。差分値がゼロより大きい場合、すなわち吸気弁流量の推定値(mcest)が吸気流量(mafm)より大きいときには、ウェイストゲートバルブ開度(wgv)の修正量としてゼロより小さい所定値(-dwgv)が設定される。一方、差分値がゼロより小さい場合、すなわち吸気弁流量の推定値(mcest)が吸気流量(mafm)より小さいときには、ウェイストゲートバルブ開度(wgv)の修正量としてゼロより大きい所定値(dwgv)が設定される。これらの修正量は、差分値の絶対値が所定値(dGA)よりも大きい場合に、ウェイストゲートバルブ開度(wgv)に加算される。差分値の絶対値が所定値(dGA)以下である場合には、差分の有無に係らず修正量はゼロとされる。
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について図を参照して説明する。
次に、本発明の実施の形態2について図を参照して説明する。
本実施の形態の制御装置は、実施の形態1と同様に、図1のように構成される過給エンジンに適用され、過給エンジンを制御するECU40の機能の一部として実現される。また、制御装置としてのECU40は、実施の形態1と同様に、図2に示す空気量推定モデルを用いて筒内空気量を推定する機能を有している。
本実施の形態の制御装置と実施の形態1の制御装置との相違点は、ウェイストゲートバルブ開度の推定値を実際値に合わせて修正する機能の内容にある。まず、本実施の形態で採られるウェイストゲートバルブ開度の推定値と実際値とのずれの判定の方法について図5を用いて説明する。なお、ここでは、ウェイストゲートバルブ開度の推定値が実際値よりも小さく見積もられているものとする。
図5に示すグラフの横軸は吸気マニホールド圧(Pm)であり、縦軸はスロットル流量(mt)及び吸気弁流量(mc)である。グラフに示す直線Aは、ウェイストゲートバルブ開度の推定値を吸気弁モデルM6に入力することで得られる吸気マニホールド圧(Pm)と吸気弁流量(mc)との関係を示す直線である。この直線Aを表す方程式に吸気流量の計測値(mafm)を代入することによって吸気マニホールド圧の推定値(Pmest)が計算される。定常状態であれば吸気弁流量と吸気流量とは一致することから、吸気流量の計測値は吸気弁モデルM6において吸気弁流量の実際値として扱うことができる。
次に、吸気弁モデルM6から算出した吸気マニホールド圧の推定値(Pmest)をスロットル開度と吸気流量の各計測値とともに、スロットルモデルM4に入力する。定常状態であれば吸気弁流量とスロットル流量とは一致することから、吸気流量の計測値はスロットルモデルM4においてスロットル流量の実際値として扱うことができる。グラフに示す曲線Eは、これらの情報をスロットルモデルM4に入力することによって特定される吸気マニホールド圧(Pm)とスロットル流量(mt)との関係を示す曲線である。この曲線Eにおいてスロットル流量(mt)がゼロになるとき、吸気マニホールド圧(Pm)は過給圧に等しくなる。その過給圧の値を曲線Eの方程式を用いて算出することにより、ウェイストゲートバルブ開度の推定値のもとでの推定過給圧(Picest)を得ることができる。
本実施の形態では、このようにして得られた過給圧の推定値(Picest)と、過給圧センサ44によって計測された過給圧(Picact)とを比較する。過給圧の推定値(Picest)と計測値(Picact)との間に誤差がある場合、その誤差はウェイストゲートバルブ開度の指示値と実際値との間にずれが生じていることを意味する。スロットルモデルM4及び吸気弁モデルM6によれば、ウェイストゲートバルブ開度の推定値に応じて吸気マニホールド圧の推定値(Pmest)が決まり、吸気マニホールド圧の推定値(Pmest)によって過給圧の推定値(Picest)が決まるからである。このことから、過給圧の推定値(Picest)と計測値(Picact)との間に誤差(グラフにはFで示している)がある場合には、その誤差の存在をもってウェイストゲートバルブ開度の推定値と実際値との間にずれが生じていると判断することができる。
なお、グラフに示す直線Bは、ウェイストゲートバルブ開度の実際値を吸気弁モデルM6に入力したならば得られるはずの吸気マニホールド圧(Pm)と吸気弁流量(mc)との関係を示す直線である。ただし、ウェイストゲートバルブ開度の実際値は直接計測できないことから、実際には直線Bを特定することはできない。曲線Cは、スロットル開度と過給圧の各計測値をスロットルモデルM4に入力することで得られる吸気マニホールド圧((Pm)とスロットル流量(mt)との関係を示す曲線である。この曲線Cにおいてスロットル流量(mt)がゼロになるときの吸気マニホールド圧(Pm)の値は過給圧の計測値(Picact)に一致する。
次に、本実施の形態で採られるウェイストゲートバルブ開度の推定値の修正の方法について説明する。本実施の形態では、実施の形態1の場合と同じく、ウェイストゲートバルブ開度をウェイストゲートバルブ38の操作量に対応付けるマップのデータを修正することにより、ウェイストゲートバルブ開度と操作量との対応関係の調整が行われる。その調整においては、グラフに示すように過給圧の推定値(Picest)が計測値(Picact)よりも大きいのであれば、操作量に対してウェイストゲートバルブ開度はプラス側に修正される。逆に、過給圧の推定値(Picest)が計測値(Picact)よりも小さいのであれば、操作量に対してウェイストゲートバルブ開度はマイナス側に修正される。
図6は、このような修正の方法をECU40により実現するための構成を示している。このブロック図に示すように、ECU40は、吸気弁モデルM6とスロットルモデルM4を利用する。また、ECU40には、操作量から推定されたウェイストゲートバルブ開度(wgv)が取り込まれるとともに、過給圧センサ44により計測された過給圧(Picact)、スロットル開度センサ46により計測されたスロットル開度(TA)、及び、エアフローメータ42により計測された吸気流量(mafm)が取り込まれる。
取り込まれたウェイストゲートバルブ開度(wgv)は吸気流量(mafm)とともに吸気弁モデルM6に入力される。吸気弁モデルM6では、ウェイストゲートバルブ開度(wgv)と吸気流量(mafm)とに基づいて吸気マニホールド圧の推定値(Pmest)が算出される。吸気弁モデルM6で算出された吸気マニホールド圧の推定値(Pmest)は、吸気流量(mafm)とスロットル開度(TA)とともにスロットルモデルM4に入力される。スロットルモデルM4では、それら入力情報に基づいて過給圧の推定値(Picest)が算出される。
次に、ECU40は、過給圧の推定値(Picest)と計測値(Picact)との差分を算出する。そして、その差分値(Picest−Picact)はゼロより大きいかどうか判定される。差分値がゼロより大きい場合、すなわち過給圧の推定値(Picest)が計測値(Picact)より大きいときには、ウェイストゲートバルブ開度(wgv)の修正量としてゼロより大きい所定値(dwgv)が設定される。一方、差分値がゼロより小さい場合、すなわち過給圧の推定値(Picest)が計測値(Picact)より小さいときには、ウェイストゲートバルブ開度(wgv)の修正量としてゼロより小さい所定値(-dwgv)が設定される。これらの修正量は、差分値の絶対値が所定値(dGA)よりも大きい場合に、ウェイストゲートバルブ開度(wgv)に加算される。差分値の絶対値が所定値(dGA)以下である場合には、差分の有無に係らず修正量はゼロとされる。
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について図を参照して説明する。
次に、本発明の実施の形態3について図を参照して説明する。
本実施の形態の制御装置は、実施の形態1、2と同様に、図1のように構成される過給エンジンに適用される。ただし、本実施の形態では、図示しない可変動弁機構が吸気弁に設けられている。この可変動弁機構は、吸気弁のバルブタイミングとバルブリフト量を可変にする装置である。本実施の形態の制御装置はこのような過給エンジンを制御するECU40の機能の一部として実現される。
制御装置としてのECU40は、実施の形態1、2と同様に、図2に示す空気量推定モデルを用いて筒内空気量を推定する機能を有している。ただし、本実施の形態では、吸気弁モデルM6においてバルブタイミングとバルブリフト量がパラメータとして加えられる。具体的には、吸入空気量と吸気マニホールド圧との関係を近似する直線の方程式において、その係数の決定にウェイストゲートバルブ開度に加えてバルブタイミングとバルブリフト量が参照される。それらのパラメータと各係数との対応関係は試験を行って決定される。なお、吸気弁モデルM6において用いられるバルブタイミングは計測値であるのに対し、バルブリフト量は推定値が用いられる。バルブリフト量はウェイストゲートバルブ開度と同様に直接計測することが難しいためである。ECU40には可変動弁機構の操作量とバルブリフト量との対応関係を示すマップが記憶されている。そのマップを参照することによって、可変動弁機構の操作量に対応するバルブリフト量の推定値が取得される。
また、制御装置としてのECU40は、マップで定義されているウェイストゲートバルブ開度とウェイストゲートバルブの操作量との対応関係を調整する機能を有している。その機能においては、調整の方法として2つの方法を採ることができる。一方の調整方法は、実施の形態1で採られている調整方法と共通している。ただし、本実施の形態の特徴として、吸気弁モデルM6を用いた計算においてバルブタイミングの計測値とバルブリフト量の推定値とが用いられる。もう一方の調整方法は、本実施の形態に特有の調整方法である。以下、実施の形態1と共通の調整方法を第1の調整方法と呼び、本実施の形態に特有の調整方法を第2の調整方法と呼ぶ。
まず、第2の調整方法にかかるウェイストゲートバルブ開度の推定値と実際値とのずれの判定の方法について図7及び図8を用いて説明する。なお、ここでは、ウェイストゲートバルブ開度の推定値が実際値よりも小さく見積もられているものとする。
図7に示すグラフの横軸はターボ回転数(Ntb)であり、縦軸は吸気流量(GA)である。このグラフに示す曲線Gは、ウェイストゲートバルブ開度の推定値をターボ回転数モデルM1に入力することで得られるターボ回転数(Ntb)と吸気流量(GA)との関係を示す曲線である。この曲線Gを表す方程式に吸気流量の計測値(mafm)を代入することによってターボ回転数の推定値(Ntbest)が計算される。定常状態であれば吸気弁流量と吸気流量とは一致することから、吸気流量の計測値はターボ回転数モデルM1において吸気弁流量の実際値として扱うことができる。一方、曲線Hは、ウェイストゲートバルブ開度の実際値をターボ回転数モデルM1に入力したならば得られるはずのターボ回転数(Ntb)と吸気流量(GA)との関係を示す曲線である。この曲線Hと吸気流量の計測値(mafm)とによって特定されるターボ回転数が真のターボ回転数である。ただし、ウェイストゲートバルブ開度の実際値は直接計測できないことから、グラフに示す曲線Hはあくまでも仮想であって、現実的に導出可能なのは曲線Gのみである。
次に、ターボ回転数モデルM1から算出したターボ回転数の推定値(Ntbest)を過給圧と大気圧の各計測値とともに、コンプレッサモデルM2に入力する。図8に示すグラフの横軸は過給圧(Pic)と大気圧(Pa)との比であり、縦軸はコンプレッサ流量(mcp)である。このグラフに示す曲線Jは、ターボ回転数の推定値(Ntbest)をコンプレッサモデルM2に入力することで得られる圧力比(Pic/Pa)とコンプレッサ流量(mcp)との関係を示す曲線である。この曲線Jを表す方程式に過給圧の計測値(Picact)と大気圧の計測値(Paact)との比を代入することによって、ウェイストゲートバルブ開度の推定値のもとでの推定コンプレッサ流量(mcpest)を得ることができる。
そして、コンプレッサモデルM2から得られたコンプレッサ流量の推定値(mcpest)と、エアフローメータ42による吸気流量の計測値(mafm)とを比較する。定常状態であればコンプレッサ流量と吸気流量とは一致することから、コンプレッサ流量の推定値(mcpest)と吸気流量の計測値(mafm)とを比較することは、コンプレッサ流量の推定値(mcpest)とその実際値とを比較することと等価である。コンプレッサ流量の推定値(mcpest)とその実際値との間に誤差がある場合、その誤差はウェイストゲートバルブ開度の指示値と実際値との間にずれが生じていることを意味する。ターボ回転数モデルM1及びコンプレッサモデルM2によれば、ウェイストゲートバルブ開度の推定値に応じてターボ回転数の推定値(Ntbest)が決まり、ターボ回転数の推定値(Ntbest)によってコンプレッサ流量の推定値(mcpest)が決まるからである。このことから、コンプレッサ流量の推定値(mcpest)と吸気流量の計測値(mafm)との間に誤差(グラフにはLで示している)がある場合には、その誤差の存在をもってウェイストゲートバルブ開度の推定値と実際値との間にずれが生じていると判断することができる。
なお、図8においてグラフに示す曲線Kは、ターボ回転数の実際値をコンプレッサモデルM2に入力したならば得られるはずの圧力比(Pic/Pa)とコンプレッサ流量(mcp)との関係を示す曲線である。圧力比の計測値(Picact/Paact)と吸気流量の計測値(mafm)とで定まる座標はこの曲線Kの上に位置している。ただし、本実施の形態にかかる過給エンジンはターボ回転数の実際値を実測する手段を有していないことから、実際には曲線Kを特定することはできない。
次に、第2の調整方法にかかるウェイストゲートバルブ開度の推定値の修正の方法について説明する。第2の調整方法によれば、第1の調整方法による場合と同じく、ウェイストゲートバルブ開度をウェイストゲートバルブ38の操作量に対応付けるマップのデータを修正することにより、ウェイストゲートバルブ開度と操作量との対応関係の調整が行われる。その調整においては、図8のグラフに示すようにコンプレッサ流量の推定値(mcpest)が吸気流量の計測値(mafm)よりも大きいのであれば、ターボ回転数モデルM1で算出されるターボ回転数の推定値(Ntbest)を減少させるように、操作量に対してウェイストゲートバルブ開度はプラス側に修正される。逆に、コンプレッサ流量の推定値(mcpest)が吸気流量の計測値(mafm)よりも小さいのであれば、ターボ回転数モデルM1で算出されるターボ回転数の推定値(Ntbest)を増大させるように、操作量に対してウェイストゲートバルブ開度はマイナス側に修正される。
図9は、このような修正の方法をECU40により実現するための構成を示している。このブロック図に示すように、ECU40は、ターボ回転数モデルM1とコンプレッサモデルM2を利用する。また、ECU40には、操作量から推定されたウェイストゲートバルブ開度(wgv)が取り込まれるとともに、エアフローメータ42により計測された吸気流量(mafm)、過給圧センサ44により計測された過給圧(Picact)、及び、大気圧センサ48により計測された大気圧(Paact)が取り込まれる。
取り込まれたウェイストゲートバルブ開度(wgv)は吸気流量(mafm)とともにターボ回転数モデルM1に入力される。ターボ回転数モデルM1では、ウェイストゲートバルブ開度(wgv)と吸気流量(mafm)とに基づいてターボ回転数の推定値(Ntbest)が算出される。ターボ回転数モデルM1で算出されたターボ回転数の推定値(Ntbest)は、過給圧(Picact)と大気圧(Paact)とともにコンプレッサモデルM2に入力される。コンプレッサモデルM2では、それら入力情報に基づいてコンプレッサ流量の推定値(mcpest)が算出される。
次に、ECU40は、コンプレッサ流量の推定値(mcpest)と吸気流量(mafm)との差分を算出する。そして、その差分値(mcpest−mafm)はゼロより大きいかどうか判定される。差分値がゼロより大きい場合、すなわちコンプレッサ流量の推定値(mcpest)が吸気流量(mafm)より大きいときには、ウェイストゲートバルブ開度(wgv)の修正量としてゼロより大きい所定値(dwgv)が設定される。一方、差分値がゼロより小さい場合、すなわちコンプレッサ流量の推定値(mcpest)が吸気流量(mafm)より小さいときには、ウェイストゲートバルブ開度(wgv)の修正量としてゼロより小さい所定値(-dwgv)が設定される。これらの修正量は、差分値の絶対値が所定値(dGA)よりも大きい場合に、ウェイストゲートバルブ開度(wgv)に加算される。差分値の絶対値が所定値(dGA)以下である場合には、差分の有無に係らず修正量はゼロとされる。
以上述べた方法により得られるウェイストゲートバルブ開度とウェイストゲートバルブ38の操作量との対応関係の調整結果が第2の調整方法による調整結果である。この第2の調整方法による調整結果(以下、第2の調整結果)は、実施の形態1と同様の方法である第1の調整方法による調整結果(以下、第1の調整結果)とは必ずしも一致しない。なぜなら、第1の調整結果はバルブリフト量の推定値によって左右されるのに対し、第2の調整結果にはバルブリフト量の推定値によっては左右されないからである。ウェイストゲートバルブ開度がそうであるように、バルブリフト量の推定値と実際値との間にはずれが生じている場合がある。その場合、吸気弁モデルM6が利用されている第1の調整結果には、その分の誤差が含まれてしまうことになる。言い換えれば、2つの調整結果の間にずれがある場合、そのずれはバルブリフト量の推定値と実際値との間にずれが生じていることを意味する。
本実施の形態にかかるECU40は、第1の調整結果と第2の調整結果とが一致しない場合、第2の調整結果を基準としてバルブリフト量の推定値を実際値に合わせて修正する。図10は、ECU40により行われるバルブリフト量の推定値の修正のための処理を示すフローチャートである。図11は、本実施の形態で採られるバルブリフト量の推定値と実際値とのずれの判定の方法について説明するための図である。以下、これらの図を用いて、バルブリフト量の推定値を実際値に合わせて修正する方法について説明する。
図10のフローチャートに示すステップS1では、第1の調整結果が反映されたマップを用いてウェイストゲートバルブ開度の推定値(wgv1)が取得される。ステップS2では、第2の調整結果が反映されたマップを用いてウェイストゲートバルブ開度の推定値(wgv2)が取得される。そして、ステップS3では、ウェイストゲートバルブ開度の2つの推定値(wgv1、wgv2)が一致するかどうか判定される。2つの推定値(wgv1、wgv2)が一致するのであれば、バルブリフト量の推定値は実際値に一致していると判断することができる。
一方、2つの推定値(wgv1、wgv2)が一致しない場合には、バルブリフト量の推定値も実際値に一致していないと判断することができる。この場合は、ステップS4−S6の処理が繰り返し行われる。ステップS4では、第2の調整結果によるウェイストゲートバルブ開度の推定値(wgv2)と現在のバルブリフト量の推定値とに基づいて、吸気弁モデルM6を表す直線の方程式が決定される。その直線は図11のグラフにおいて直線Mとして示されている。この直線Mの方程式に現時点における吸気マニホールド圧の推定値(Pmest)が代入されることによって、現在のバルブリフト量の推定値に対応する吸気弁流量の推定値(mcest)が算出される。なお、直線Nは、バルブリフト量の実際値を吸気弁モデルM6に入力したならば得られるはずの吸気マニホールド圧(Pm)と吸気弁流量(mc)との関係を示す直線である。ただし、バルブリフト量の実際値は直接計測できないことから、グラフに示す直線Nはあくまでも仮想であって、現実的に導出可能なのは直線Mのみである。
次のステップS5では、吸気弁流量の推定値(mcest)とエアフローメータ42により計測された吸気流量(mafm)とが比較される。図11に示すように吸気弁流量の推定値(mcest)と吸気流量の計測値(mafm)との間に誤差(グラフにはQで示している)がある場合には、バルブリフト量の推定値と実際値との間にも誤差があると判断することができる。なお、本実施の形態では吸気弁モデルM6のパラメータとしてバルブタイミングも参照されているが、バルブリフト量に比較してバルブタイミングがウェイストゲートバルブ開度の推定精度に与える影響は小さいと考えられる。バルブタイミングに関しては計測値が用いられているからであり、また、仮に計測誤差があったとしてもバルブリフト量の推定値に含まれうる誤差よりは小さいからである。ただし、バルブタイミングの計測誤差の影響を排除したいのであれば、バルブタイミングが最進角位置或いは最遅角位置に固定されている場合に限定してウェイストゲートバルブ開度の推定値の調整を行うようにすればよい。また、吸気マニホールド圧と吸気弁流量との関係には吸気弁に付着したデポジットの量も影響するが、それはバルブリフト量に含まれているとみなすことができる。つまり、本実施の形態におけるバルブリフト量とは、デポジットも含めた実質的なバルブリフト量を意味する。
吸気弁流量の推定値(mcest)と吸気流量の計測値(mafm)との間に誤差がある場合は、次のステップS6において、バルブリフト量を可変動弁機構の操作量に対応付けるマップのデータが修正される。例えば、図11に示すように吸気弁流量の推定値(mcest)が吸気流量の計測値(mafm)よりも小さい場合には、吸気弁モデルM6で算出される吸気弁流量が増えるように、可変動弁機構の操作量に対してバルブリフト量はプラス側に修正される。逆に、吸気弁流量の推定値(mcest)が吸気流量の計測値(mafm)よりも大きい場合には、吸気弁モデルM6で算出される吸気弁流量が減少するように、可変動弁機構の操作量に対してバルブリフト量はマイナス側に修正される。このようにしてバルブリフト量と可変動弁機構の操作量との対応関係の調整が行われる。
ステップS6の処理の後は再びステップS4に戻り、調整された対応関係に従いバルブリフト量の推定値が再計算される。そして、ウェイストゲートバルブ開度の推定値(wgv2)と再計算されたバルブリフト量の推定値とに基づいて吸気弁モデルM6を用いて吸気弁流量の推定値(mcest)が再計算される。そして、ステップS5において再計算された吸気弁流量の推定値(mcest)と吸気流量の計測値(mafm)とが比較される。このような一連の処理はステップS5の判定結果が肯定になるまで繰り返し実施される。これにより、バルブリフト量の推定値の実際値に対するずれは解消されるようになる。
その他.
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、ウェイストゲートバルブ開度とウェイストゲートバルブの操作量との対応関係の調整の方法としては、その対応関係を定義しているマップのデータを修正するのではなく、マップから得られたウェイストゲートバルブ開度の推定値に調整分の補正量を加えることでもよい。
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、ウェイストゲートバルブ開度とウェイストゲートバルブの操作量との対応関係の調整の方法としては、その対応関係を定義しているマップのデータを修正するのではなく、マップから得られたウェイストゲートバルブ開度の推定値に調整分の補正量を加えることでもよい。
実施の形態3では、第1の調整方法として実施の形態1で採られている調整方法を採っているが、実施の形態2で採られている調整方法を第1の調整方法として採ることもできる。実施の形態2の調整方法でも吸気弁モデルM6が利用されることから、その調整結果にはバルブリフト量の推定値と実際値との間のずれ分の誤差が含まれる。したがって、その調整結果と第2の調整方法による調整結果とを比較することで、バルブリフト量の推定値と実際値との間にずれが生じているかどうか判定することができる。
実施の形態1、2にかかる過給エンジンは、バルブタイミングを可変にする可変動弁機構を有していてもよい。その場合、吸気弁モデルでは、ウェイストゲートバルブ開度とバルブタイミングとに基づいて直線の方程式の係数が決定されることになる。バルブタイミングの計測誤差の影響については前述の通りであるが、それを排除したいのであれば、バルブタイミングが最進角位置或いは最遅角位置に固定されている場合に限定してウェイストゲートバルブ開度の推定値の調整を行うようにすればよい。
また、実施の形態1、2にかかる過給エンジンは、バルブリフト量を可変にする可変動弁機構を有していてもよい。その場合、ウェイストゲートバルブ開度の推定値の調整結果にはバルブリフト量の推定値と実際値との間のずれ分の誤差が含まれる可能性はある。しかし、ウェイストゲートバルブ開度の推定誤差はバルブリフト量のそれよりも大きく、ウェイストゲートバルブ開度の推定誤差が筒内空気量の推定精度に与える影響は大きいことから、バルブリフト量の推定誤差が多少影響したとしても、本発明を実施することで得られるメリットがそれにより大きく損なわれることはない。バルブリフト量の推定誤差の影響を排除したいのであれば、バルブリフト量が最大或いは最小に固定されている場合に限定してウェイストゲートバルブ開度の推定値の調整を行うようにすればよい。
本発明の制御装置が適用される過給エンジンにおいては、インタークーラやエアバイパスバルブは必須ではない。逆に、本発明の制御装置が適用される過給エンジンにはEGR装置が設けられていてもよい。その場合、省略する装備や追加する装備に応じて、図2に示す空気量推定モデルの構成を変えればよい。例えば、エアバイパスバルブを有しない過給エンジンであれば、空気量推定モデルからABVモデルを省略すればよい。また、EGR装置を有する過給エンジンであれば、空気量推定モデルにEGRモデルを追加すればよい。
M1 ターボ回転数モデル
M2 コンプレッサモデル
M3 インタークーラモデル
M4 スロットルモデル
M5 吸気マニホールドモデル
M6 吸気弁モデル
M7 ABVモデル
M2 コンプレッサモデル
M3 インタークーラモデル
M4 スロットルモデル
M5 吸気マニホールドモデル
M6 吸気弁モデル
M7 ABVモデル
Claims (3)
- ウェイストゲートバルブを有する過給エンジンの制御装置において、
スロットル上流圧力とスロットル下流圧力とスロットル開度とスロットル流量との間に成り立つ関係がモデル化されたスロットルモデルと、
スロットル下流圧力とウェイストゲートバルブ開度と吸気弁流量との間に成り立つ関係がモデル化された吸気弁モデルと、
予め定義された対応関係に従い前記ウェイストゲートバルブの操作量に対応するウェイストゲートバルブ開度の推定値を取得する手段と、
スロットル開度の計測値を取得する手段と、
スロットル上流圧力の計測値を取得する手段と、
吸気流量の計測値を取得する手段と、
ウェイストゲートバルブ開度の前記推定値に基づいて、スロットル下流圧力と吸気弁流量との間に成り立つ関係(以下、第1の関係)を前記吸気弁モデルから導出する手段と、
スロットル開度の前記計測値とスロットル上流圧力の前記計測値とに基づいて、スロットル下流圧力とスロットル流量との間に成り立つ関係(以下、第2の関係)を前記スロットルモデルから導出する手段と、
前記第1の関係及び第2の関係に基づいて吸気弁流量とスロットル流量とが一致する場合の吸気弁流量の推定値を計算する手段と、
吸気弁流量の前記推定値と吸気流量の前記計測値とを比較し、その比較結果に基づいてウェイストゲートバルブ開度の推定値と前記ウェイストゲートバルブの操作量との対応関係を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする過給エンジンの制御装置。 - ウェイストゲートバルブを有する過給エンジンの制御装置において、
スロットル上流圧力とスロットル下流圧力とスロットル開度とスロットル流量との間に成り立つ関係がモデル化されたスロットルモデルと、
スロットル下流圧力とウェイストゲートバルブ開度と吸気弁流量との間に成り立つ関係がモデル化された吸気弁モデルと、
予め定義された対応関係に従い前記ウェイストゲートバルブの操作量に対応するウェイストゲートバルブ開度の推定値を取得する手段と、
スロットル開度の計測値を取得する手段と、
スロットル上流圧力の計測値を取得する手段と、
吸気流量の計測値を取得する手段と、
ウェイストゲートバルブ開度の前記推定値と吸気流量の前記計測値とに基づいて前記吸気弁モデルを用いてスロットル下流圧力の推定値を計算する手段と、
スロットル下流圧力の前記推定値とスロットル開度の前記計測値と吸気流量の前記計測値とに基づいて前記スロットルモデルを用いてスロットル上流圧力の推定値を計算する手段と、
スロットル上流圧力の前記推定値と前記計測値とを比較し、その比較結果に基づいてウェイストゲートバルブ開度の推定値と前記ウェイストゲートバルブの操作量との対応関係を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする過給エンジンの制御装置。 - 前記過給エンジンは吸気弁のバルブリフト量を可変にする可変動弁機構を備えたエンジンであり、
前記吸気弁モデルはバルブリフト量をパラメータとして含み、
前記制御装置は、
吸気弁流量とウェイストゲートバルブ開度とターボ回転数との間に成り立つ関係がモデル化されたターボ回転数モデルと、
ターボ回転数とスロットル上流圧力とコンプレッサ流量との間に成り立つ関係がモデル化されたコンプレッサモデルと、
予め定義された対応関係に従い前記可変動弁機構の操作量に対応するバルブリフト量の推定値を取得する手段と、
ウェイストゲートバルブ開度の前記推定値と吸気流量の前記計測値とに基づいて前記ターボ回転数モデルを用いてターボ回転数の推定値を計算する手段と、
ターボ回転数の前記推定値とスロットル上流圧力の前記計測値とに基づいて前記コンプレッサモデルを用いてコンプレッサ流量の推定値を計算する手段と、
コンプレッサ流量の前記推定値と吸気流量の前記計測値とを比較し、その比較結果に基づいてウェイストゲートバルブ開度の推定値と前記ウェイストゲートバルブの操作量との対応関係を調整する第2の調整手段と、
前記調整手段による調整結果と前記第2の調整手段による調整結果との間にずれがある場合に、前記第2の調整手段により調整された対応関係に従いウェイストゲートバルブ開度の推定値を取得し、当該推定値とバルブリフト量の前記推定値とに基づいて前記吸気弁モデルを用いて吸気弁流量の推定値を計算する手段と、
吸気弁流量の前記推定値と吸気流量の前記計測値とを比較し、その比較結果に基づいてバルブリフト量の推定値と前記可変動弁機構の操作量との対応関係を調整する手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の過給エンジンの制御装置。
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