JP2006265362A - アクリル系低温焼成バインダー - Google Patents

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【課題】スクリーン印刷時の版離れ性の良いアクリル系低温焼成バインダーを提供することである。
【解決手段】
ポリオキシアルキレンからなる構造を有し、かつ水酸基と水素結合をすることができる官能基を有する(メタ)アクリレート100重量部、水酸基を有する有機化合物20〜200重量部及び炭素数8以上長鎖(メタ)アクリレートを1〜30重量部を含有する混合物の(メタ)アクリレートを重合して得られる組成物を含有するアクリル系低温焼成バインダー。
【選択図】 なし

Description

本発明は、スクリーン印刷性に優れ、特にスクリーン印刷に用いて連続印刷した時、版離れの良いペースト状組成物に用いられるアクリル系低温焼成バインダーに関する。
導電性粉末やセラミック粉末を樹脂バインダーに分散させて得られるペースト状組成物やそれから得られるシート状成形体は、様々な形状の焼結体を得るために用いられている。
すなわち、ペースト状組成物を所定の形状に加工した後、焼成することで様々な形状の焼結体とすることができる。ペースト状組成物は、スクリーン印刷方法、ドクターブレード等の塗布方法により様々な形状に加工される。特許文献1には、スクリーン印刷方法に用いられるアクリル系バインダーを利用したセラミックペースト状組成物が開示されている。
特開2000−248224号公報
しかしながら、特許文献1のアクリル系焼成バインダーは、スクリーン印刷に用いて、連続印刷を行なうとメッシュと被印刷物の間に残ったビヒクルが乾燥し、粘着性を生じ版離れ不良を起こすという不具合があった。そこで、本発明の目的は、スクリーン印刷時の版離れ性が改善された比較的低温で焼成可能なアクリル系低温焼成バインダーを提供することにある。
本発明は、水酸基と水素結合することができる官能基を有する(メタ)アクリレート100重量部、長鎖(メタ)アクリレート1〜30重量部及び水酸基を3個以上有する有機化合物20〜200重量部を混合した後、上記の(メタ)アクリレートを重合して得られる組成物を含有することを特徴とするアクリル系低温焼成バインダーである。
これにより、スクリーン印刷の連続印刷時の版離れ不良が発生することの少ないアクリル系低温焼成バインダーを提供することができる。
また、好ましくは、上記長鎖(メタ)アクリレートが、炭素数8以上長鎖(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1記載のアクリル系低温焼成バインダーである。
これにより、更に、スクリーン連続印刷時の版離れ不良が発生することの少ないアクリル系低温焼成バインダーを提供することができる。
また、好ましくは、固形分100重量部に対して、沸点150℃以上の有機溶剤100重量部以下を含有することを特徴とする請求項1または2記載のアクリル系低温焼成バインダーである。
これにより、スクリーン連続印刷時の版離れ不良が発生することが少なく、スクリーン印刷等に好適な粘度への調整を容易にすることができる。
また、好ましくは、水酸基と水素結合することができる官能基を有する(メタ)アクリレートが、ポリオキシアルキレン構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル系低温焼成バインダーである。
ポリオキシアルキレン構造を有することにより、スクリーン印刷に用いて連続印刷した時の版離れ不良が発生することが少なく、更に、400℃以下で残渣なく焼成することができるアクリル系低温焼成バインダーとすることができる。
本発明で用いられる水酸基(OH基)と水素結合することができる官能基を有する(メタ)アクリレートの官能基としては、水酸基(OH基)、カルボキシル基(COOH基)、アミノ基(NH基)等が挙げられる。
上記水酸基と水素結合することができる官能基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリセリンモノメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルモノメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
本発明で用いられる水酸基と水素結合することができる官能基を有する(メタ)アクリレートは、ポリオキシアルキレン構造を有することが好ましい。
上記ポリオキシアルキレン構造を有するモノマーとしては、例えば、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、中でも、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等が好適に用いられる。
本発明で用いられる長鎖(メタ)アクリレートとしては、特に鎖長、即ち炭素数には特に制限は無いが、例えば、炭素数8以上の長鎖アルキル鎖を有するメタクリル酸エステルモノマー、例えば、2エチルヘキシルメタクリレート、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソミリスチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ベヘニル等が好ましい。
本発明のアクリル系低温焼成バインダーは水酸基と水素結合することができる官能基を有する(メタ)アクリレート及び長鎖(メタ)アクリレートと他の(メタ)アクリレート混合し、共重合したものを含有するものとしても良い。他の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等が好ましく、1種または2種類以上を混合して用いてもよく、重合体とした時のガラス転移温度が30℃以上になるものが好ましい。
本発明は、水酸基と水素結合することができる官能基を有する(メタ)アクリレート100重量部、長鎖(メタ)アクリレート1〜30重量部及び水酸基を3個以上有する有機化合物20〜200重量部を混合した後、上記の(メタ)アクリレートを重合して得られる組成物を含有することを特徴とするアクリル系低温焼成バインダーである。
本発明で用いられる長鎖(メタ)アクリレートの混合量は、少なくなると版離れ性が低下し、多くなると、スクリーン印刷性が低下するので、水酸基と水素結合することができる官能基を有する(メタ)アクリレート100重量部に対して、1〜30重量部とされる。
本発明で用いられる(メタ)アクリレートを(共)重合して得られる重合体の分子量は、特に限定されないが、数平均分子量で20万以下であることが好ましく、更に、好ましくは5000〜100000である。
本発明で用いられる(メタ)アクリレートを(共)重合して得られる重合体の製造方法としては、特に限定されず、(メタ)アクリレートを重合して重合体を製造する通常の方法が用いられ、例えば、フリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等が挙げられる。
本発明で用いられる水酸基(OH基)が3個以上の有機化合物としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、メソ−エリスリトール、L−スレイトール、D−スレイトール、DL−スレイトール、2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,1,1−トリヒドロキシメチルエタン、1,2,4ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。
本発明で用いられる水酸基を3個以上有する有機化合物の混合量は、水酸基と水素結合することができる官能基を有する(メタ)アクリレート100重量部に対して、20〜200重量部である。この範囲で、スクリーン印刷した時の版離れ不良が発生することの少ないアクリル系低温焼成バインダーを提供することができる。好適には30〜150重量部であり、この範囲で、スクリーン印刷した時の版離れ不良が発生することが更に少ないアクリル系低温焼成バインダーとなる。
本発明のアクリル系低温焼成バインダーは、水酸基と水素結合することができる官能基を有する前記(メタ)アクリレート100重量部に対して、長鎖(メタ)アクリレートを1〜30重量部、及び水酸基を3個以上有する有機化合物20〜200重量部を含有する混合物とした後、混合物中の(メタ)アクリレートを(共)重合して重合体を製造する。
上記水酸基を3個以上有する有機化合物は、予め(メタ)アクリレートを重合した後添加しても、重合時共存させてアクリル系低温焼成バインダーとしてもよい。
本発明のアクリル系低温焼成バインダーには、さらに有機溶剤を加えたものであってもよい。有機溶剤としては、例えば、ターピネオール、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、フェニルプロピレングリコール、クレゾール等が挙げられ、沸点150℃以上で、常温で液状であるものが好適である。
本発明では、固形分100重量部に対して、有機溶剤100重量部以下を添加してアクリル系低温焼成バインダーとすることが好ましいく、更に好ましくは有機溶剤を30〜80重量部とする。なお固形分とは、有機溶剤を除く重合体成分である。
本発明のアクリル系低温焼成バインダーを用いてペースト状組成物を製造するために用いられる焼結用粉体としては、例えば、銅、銀、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、珪酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス、LiO・Al・SiO系無機ガラスの低融点ガラス等が好ましい。
上記焼結用粉体の含有量は、例えば、水酸基と水素結合することができる官能基を有する(メタ)アクリレート、長鎖(メタ)アクリレート、その他の(メタ)アクリレートからなる(メタ)アクリレートを(共)重合して得られる重合体100重量部に対して、330重量部以下とすることが好ましい。
本発明のアクリル系低温焼成バインダーを用いる場合焼成温度は250〜400℃以下であることが好ましい。
本発明では、水酸基と水素結合することができる官能基を有する(メタ)アクリレート100重量部、長鎖(メタ)アクリレート1〜30重量部及び水酸基を3個以上有する有機化合物20〜200重量部を含有する混合物の(メタ)アクリレートを重合して得られる重合体を含有することを特徴とするアクリル系低温焼成バインダーとしたことにより、スクリーン印刷性に優れ、特に、スクリーン印刷の連続印刷時の版離れ不良が発生することが少ないアクリル系低温焼成バインダーを提供することができる。
(実施例1〜4及び比較例1〜4)
攪拌機、冷却器、温度計、及び窒素ガス導入口を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、イソブチルメタクリレート(IBMA)、長鎖(メタ)アクリレートとしてステアリルメタクリレート(SMA)、ポリオキシアルキレン側鎖を有する(メタ)アクリレートとしてポリプロピレングリコールモノメタクリレート(PPGMA)(日本油脂製、ブレンマーPP1000)、水酸基と水素結合することができる官能基を有する(メタ)アクリレートとしてグリセロールメタクリレート(GLM)及び連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン(DDM)、有機溶剤としてテルピネオールを表1に記載の通り投入して、モノマー混合溶液を得た。
Figure 2006265362
得られたモノマー混合溶液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることによって溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し攪拌しながら還流に達するまでに昇温した。還流後、重合開始剤0.024gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を重合系に投入した。さらに重合中に数回重合開始剤溶液を追加投入した。重合開始から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させた。これにより、ポリエーテル側鎖を有する重合体のテルピネオール溶液を得た。
得られた各実施例の重合体について、ゲルパーミエションクロマトグラフィーによる分析を行なったところ、ポリスチレン換算による数平均分子量は表1の通りであった。
比較例は、表1の比較例に示すとおりの配合とした以外は実施例と同様にして重合体のテルピネオール溶液を得た。
得られた各実施例、比較例の重合体に対し表1の配合量のトリメチロールプロパンを加え、高速分散機で分散してバインダーとして、得られたバインダーの固形分50重量部に対しガラス粉末50重量部を混合し、ボールミルで充分にガラス粉末を分散させてガラスペーストを調整した。
評価結果
(1)粘度比
得られたガラスペーストを、B型粘度計を用いて、回転数を5rpmと30rpmにした常温時の粘度の測定結果から粘度比(30rpmでの粘度/5rpmでの粘度)を算出した。
この粘度比が1.5以上であればスクリーン印刷性が良好と判断した。
1.5以上で良好
1.5未満で不良
(2)版離れ性
スクリーン印刷を連続で1000回行った時の被印刷物から印刷スクリーンの版離れやすさを官能評価した。
○:版からスムーズに離れる
△:版からスムーズに離れない
実施例の配合範囲、長鎖(メタ)アクリレートであるステアリルメタクリレート(SMA)1〜30重量部では、各評価共に良好な評価である。これに対し比較例1ではSMAが少ないため版離れ性が悪い。比較例2ではSMAが少ないため版離れ性が悪い。比較例3ではSMAが多いため、粘度比が低下し、スクリーン印刷性が悪くなる。比較例4ではSMAが多いため、粘度比が低下し、スクリーン印刷性が悪くなる。

Claims (4)

  1. 水酸基と水素結合することができる官能基を有する(メタ)アクリレート100重量部、長鎖(メタ)アクリレート1〜30重量部及び水酸基を3個以上有する有機化合物20〜200重量部を混合した後、(メタ)アクリレートを重合して得られる組成物を含有することを特徴とするアクリル系低温焼成バインダー。
  2. 上記長鎖(メタ)アクリレートが、炭素数8以上の長鎖(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1記載のアクリル系低温焼成バインダー。
  3. 固形分100重量部に対し、沸点150℃以上の有機溶剤100重量部以下を含有することを特徴とする請求項1または2記載のアクリル系低温焼成バインダー。
  4. 水酸基と水素結合することができる官能基を有する(メタ)アクリレートが、ポリオキシアルキレン構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル系低温焼成バインダー。
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