JP2006151727A - 焼成体の製造方法 - Google Patents

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弘司 福井
Tetsunari Iwade
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Abstract

【課題】低温でセラミックグリーンシート中のバインダー樹脂の脱脂処理とセラミック材料の焼成処理とが可能な焼成体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】セラミック粉末、及び、アクリル系ポリマー鎖とポリオキシアルキレン鎖とを有するバインダー樹脂を含有するセラミックスラリーを用いてセラミックグリーンシートを製造し、複数の前記セラミックグリーンシートを積層した積層体を300℃以下で焼成する焼成体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、低温でセラミックグリーンシート中のバインダー樹脂の脱脂処理とセラミック材料の焼成処理とが可能な焼成体の製造方法に関する。
近年、バインダー樹脂組成物中にセラミック粉末やガラス粉末等の無機粉末を分散させたペースト状体を成形した後、焼成することにより、セラミックやガラスからなる精密な成形体を得ることが行われている。
例えば、積層セラミックコンデンサは、一般に次のような工程を経て製造される。
まず、バインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック原料粉末を加え、ボールミル等により均一に混合し、脱泡後に一定粘度を有するセラミックスラリー組成物を得る。得られたスラリー組成物をドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム又はSUSプレート等の支持体面に流延成形する。これを加熱等により溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
次いで、得られたセラミックグリーンシート上に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等により塗布したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を得る。このとき用いる導電ペーストは、主に電極を構成するパラジウムやニッケル等の金属材料と塗布するセラミックグリーンシート表面に適合する有機溶剤と、エチルセルロース等のバインダー樹脂とで構成される。
最後に、積層体中に含まれるバインダー成分(セラミックグリーンシート及び導電ペースト中に含まれる)等を熱分解して除去する処理、いわゆる脱脂処理を行った後、硬化させるために1000℃程度で焼成することにより得られるセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結する工程を経て積層セラミックコンデンサが得られる。
このように従来の積層セラミックコンデンサを製造する際には、1000℃程度まで加熱することから、導電ペーストとしては、例えば、タングステン(W)やモリブデン(Mo)等の高融点金属が用いられてきた。
しかしながら、WやMoは、導電抵抗が高く、信号伝播遅延時間が長く、超高速化の障害となっていた。
そこで、導電ペーストとしてAu、Ag、Cu等の導電抵抗の低い金属材料を用いることが検討されている。
ところが、これらの金属材料は、低融点のため、低温焼成可能なセラミックグリーンシート材料(セラミック材料やバインダー樹脂等)を用いることが必要である。なかでもCuは、導電抵抗が低く安価であるため注目されているが、300℃以上の加熱により酸化されるという問題がある。このため、導電ペーストに用いる金属材料としてCuを用いる場合、300℃以下という極めて低い温度でセラミックグリーンシートの脱脂処理及び焼成処理を行う必要がある。
このような積層セラミックコンデンサの製造の用途に用いるバインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等を主成分とするものが検討され、使用されていた。しかしこれらのバインダー樹脂は、熱分解温度が高いため、これらのバインダー樹脂を用いたセラミックグリーンシートを300℃以下という低温で焼成すると、焼結体にバインダー樹脂の分解残渣分が残ることがあるという問題があった。
また、特許文献1には、アルキル(メタ)アクリレート、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート単量体、その他共重合性単量体からなるアクリル樹脂組成物が開示されている。このアクリル樹脂組成物は、比較的低温で焼成可能であるとされている。しかしながら、実際には、従来のエチルセルロールやポリビニルブチラールに比べれば低温で焼成ができるものの、脱脂処理に適した温度が450℃と依然高温であり、現在検討されている焼成温度の低い焼成条件では良好な脱脂処理が難しく、300℃以下という低温で脱脂処理を行うと、焼成時において残渣が残ることがあるという問題点があった。
特開2001−49070号公報
本発明は、上記現状に鑑み、低温でセラミックグリーンシート中のバインダー樹脂の脱脂処理とセラミック材料の焼成処理とが可能な焼成体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の焼成体の製造方法は、セラミック粉末、及び、アクリル系ポリマー鎖とポリオキシアルキレン鎖とを有するバインダー樹脂を含有するセラミックスラリーを用いてセラミックグリーンシートを製造し、複数の前記セラミックグリーンシートを積層した積層体を300℃以下で焼成する焼成体の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、低温でセラミックグリーンシートの脱脂処理が可能なバインダー樹脂として、先に特開2004−256788号公報に開示されているような、300℃程度で分解し、消滅するポリオキシアルキレン樹脂を主成分とするバインダー樹脂を開発した。しかし、このバインダー樹脂は、樹脂分子中に存在する酸素原子の割合が高いことから、300℃程度に加熱した際の燃焼速度を制御することが難しく、激しく燃焼することで燃焼クラックが生じることがあった。更に、粘度が低かったため、セラミック材料及び溶媒等と混合して調製したセラミックスラリーを用いてセラミックグリーンシートを作製することが困難であった。
そこで本発明者らは、更に鋭意検討の結果、バインダー樹脂としてアクリル系ポリマー鎖とポリオキシアルキレン鎖とを有するものを用いることで300℃程度の低温での脱脂処理及びその制御が可能であり、更に高粘度とすることも可能であるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の焼成体の製造方法では、まず、セラミック粉末、及び、アクリル系ポリマー鎖とポリオキシアルキレン鎖とを有するバインダー樹脂を含有するセラミックスラリーを製造する。
上記セラミック粉末としては、300℃以下の低温で焼成が可能なものであれば特に限定されないが、例えば、CaO−Al−SiO−B系、MgO−Al−SiO−B系、及び、CaO−MgO−Al−SiO−B系からなる群より選択される少なくとも1種のガラス材料とAlとの混合物であることが好ましい。
上記セラミック粉末のガラス材料におけるCaO及び/又はMgOの含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は55重量%である。
上記セラミック粉末のガラス材料におけるAlの含有量としては特に限定されない
が、好ましい上限は30重量%である。
上記セラミック粉末のガラス材料におけるSiOの含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は45重量%、好ましい上限は75重量%である。
上記セラミック粉末のガラス材料におけるBの含有量としては特に限定されないが、好ましい上限は30重量%である。
上記セラミック粉末に占めるガラス材料とAlとの配合比としては特に限定されないが、重量比で50:50〜65:35であることが好ましい。
上記セラミックスラリーにおける上記セラミック粉末の含有量としては特に限定されないが、後述するアクリル系ポリマー鎖とポリオキシアルキレン鎖とを有するバインダー樹脂100重量部に対して、好ましい下限は5重量部、好ましい上限は50重量部である。5重量部未満であると、充分な強度の焼成体が得られないことがあり、50重量部を超えると、セラミックグリーンシートの成形ができないことがある。
上記バインダー樹脂は、アクリル系ポリマー鎖とポリオキシアルキレン鎖とを有する。
上記アクリル系ポリマー鎖は、上記バインダー樹脂にセラミック粉末等の無機粉末との優れた結着性と、塗膜面をタックフリーにして塵埃の付着を抑えやすくする性質とを付与するものである。
上記アクリル系ポリマー鎖としては特に限定されないが、例えば、メタクリル酸アルキルエステルに由来するものであることが好ましい。
上記メタクリル酸アルキルエステルとしては特に限定されないが、ガラス転移温度が30℃以上のものであることが好ましい。ガラス転移温度が30℃未満であると、塗膜面にタックが出やすくなり、塵埃の付着やブロッキングを起こしやすくなる。より好ましくは40℃以上である。
このようなメタクリル酸アルキルエステルとしては特に限定されず、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロへキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、n−ステアリルアクリレート、ベンジルメタクリレート等が挙げられる。
また、上記アクリル系ポリマー鎖は、ガラス転移温度が30℃以上のメタクリル酸アルキルエステルとガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体との共重合体であることが好ましい。このような共重合体においては、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来するセグメントの含有量を調整することにより、バインダー樹脂の粘度を容易に調整することができる。
上記ガラス転移温度が0℃以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては特に限定されず、例えば、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。なかでも、分解性に優れることから、ラウリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートが好適である。
上記共重合体における上記ガラス転移温度が30℃以上であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来するセグメントと、上記ガラス転移温度が0℃以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来するセグメントとの比としては特に限定されず、必
要に応じて適宜選択されればよいが、重量比で100:0〜50:50であることが好ましい。上記単独重合体のガラス転移温度が30℃以上であるメタクリル酸アルキルエステル単量体に由来するセグメントの比がこれ未満であると、塗膜面にタックが出やすくなり、塵埃の付着やブロッキングを起こしやすくなることがある。より好ましくは100:0〜70:30である。
上記ポリオキシアルキレン鎖は、上記バインダー樹脂全体に占める酸素成分の含有率を上昇させ、焼成の際にバインダー樹脂が炭化残渣として残留するのを防止する役割を果たすものである。
上記バインダー樹脂において、上記アクリル系ポリマー鎖と上記ポリオキシアルキレン鎖とは混合物の状態で存在してもよいし、結合した状態で存在してもよいが、バインダー樹脂の粘度調整等がしやすいことから結合した状態で存在することが好ましい。
上記バインター樹脂において、上記アクリル系ポリマー鎖と上記ポリオキシアルキレン鎖とが結合した状態で存在する場合は、アクリル系ポリマー鎖とポリオキシアルキレン鎖との結合位置は、アクリル系ポリマー鎖の側鎖、末端の何れか、若しくは、両方に共有結合で結合するような位置関係にあってもよく、アクリル系ポリマー鎖とポリオキシアルキレン鎖とが交互ブロック共重合をなしていてもよい。
アクリル系ポリマー鎖とポリオキシアルキレン鎖との結合の態様を示す模式図を図1に示した。繋がり方として、例えば、(A)〜(G)を挙げることができる。なかでも、バインダー樹脂は、(E)〜(G)で示されるようなアクリル系ポリマー鎖にポリオキシアルキレン鎖がグラフト重合されているものであることが好ましい。
上記ポリオキシアルキレン鎖としては特に限定されず、例えば、上記メタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性官能基とポリエーテル構造とを有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、下記一般式(1)〜(18)で表されるポリエーテルの末端に(メタ)アクリロイル基をもつ化合物等が挙げられる。
Figure 2006151727
Figure 2006151727
上記バインダー樹脂における上記ポリオキシアルキレン鎖の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は1重量%、好ましい上限は50重量%である。1重量%未満であると、炭化残渣の残存を抑制できないことがあり、50重量%を超えると、比較的凝集力の弱いポリオキシアルキレン鎖、例えば、ポリプロピレンオキシドセグメントの場合、樹脂に粘着性が発現し、ブロッキングを起こしやすくなり、取扱いが困難となることがある。より好ましい下限は3重量%、より好ましい上限は30重量%である。
上記バインダー樹脂は、側鎖又は末端に架橋性官能基を有していてもよい。上記バインダー樹脂が側鎖又は末端に架橋性官能基を有することで、上記バインダー樹脂は、転写時前又は転写時に架橋させることができ、糸引きを生じることなくスクリーン印刷における優れた転写性を発揮することができる。
本明細書において架橋性官能基とは、光照射及び/又は加熱により架橋反応を生じる基を意味するが、なかでも、紫外線照射等により容易に硬化させることができ、バインダー樹脂に熱履歴等を残す懸念もないことから、光照射により架橋反応を生じる架橋性官能基が好適である。
上記架橋性官能基としては特に限定されないが、例えば、加水分解性シリル基、イソシアネート基、エポキシ基、オキセタニル基、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、重合性不飽和炭化水素基等が挙げられる。なかでも、加水分解性シリル基、イソシアネート基、エポキシ基、オキセタニル基、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、重合性不飽和炭化水素基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、加水分解性シリル基、エポキシ基、オキセタニル基からなる群より選択される少なくとも1種であること
がより好ましく、加水分解性シリル基が更に好ましい。これら架橋性官能基は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記バインダー樹脂の分子量としては特に限定されないが、数平均分子量の好ましい下限は500、好ましい上限は20万である。500未満であると、揮発性が強くなりバインダー樹脂を安定的に扱うことが困難となることがあり、20万を超えると、絡み合い効果により印刷時の糸引きを抑えることが困難となることがある。より好ましい上限は15万である。
上記バインダー樹脂を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記アクリル系ポリマー鎖と上記ポリオキシアルキレン鎖とが結合されている場合、単独重合体のガラス転移温度が30℃以上であるメタクリル酸アルキルエステル、任意に単独重合体のガラス転移温度が0℃以下である重合性モノマー、ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物、及び、任意にメタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性官能基と架橋性官能基とを有する化合物を共重合させる方法;単独重合体のガラス転移温度が30℃以上であるメタクリル酸アルキルエステル、ポリオキシアルキレン鎖、任意に架橋性官能基を有する連鎖移動剤や架橋性官能基を有する重合開始剤、及び、任意に架橋性官能基を有する重合停止剤を共存させて共重合させる方法;単独重合体のガラス転移温度が30℃以上であるメタクリル酸アルキルエステル、ポリオキシアルキレン鎖、任意にメタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性官能基と架橋性官能基とを有する化合物を、任意に架橋性官能基を有する連鎖移動剤や架橋性官能基を有する重合開始剤、任意に架橋性官能基を有する重合停止剤を共存させて共重合させる方法;単独重合体のガラス転移温度が30℃以上であるメタクリル酸アルキルエステル、ポリオキシアルキレン鎖、任意にメタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性官能基と架橋性官能基とを有する化合物と結合を形成する官能基を有する化合物を共重合させて得られた重合体を、任意にメタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性官能基と架橋性官能基とを有する化合物と結合を形成する官能基を有する化合物に由来する官能基と結合を形成する架橋性官能基を有する化合物を反応させる方法等が挙げられる。
上記バインダー樹脂を製造する際には、例えば、フリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等の従来公知の方法を用いることができる。
上記メタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性官能基と架橋性官能基とを有する化合物としては、例えば、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルジメトキシシラン、グリシジルメタクリレート、3−メタクリロイロキシプロピルイソシアネート等が挙げられる。
上記メタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性官能基と架橋性官能基とを有する化合物と結合を形成する官能基を有する化合物としては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル−2−ヒドロキシプロピル−フタル酸等が挙げられる。
上記メタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性官能基と架橋性官能基とを有
する化合物と結合を形成する官能基を有する化合物に由来する官能基と結合を形成する架橋性官能基を有する化合物としては、メタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性官能基と架橋性官能基とを有する化合物と結合を形成する官能基を有する化合物の官能基が水酸基の場合、3−(トリメトキシシリル)プロピルイソシアネート、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート無水マレイン酸等が挙げられる。また、メタクリル酸アルキルエステルと共重合可能な共重合性官能基と架橋性官能基とを有する化合物と結合を形成する官能基を有する化合物の官能基がカルボキシル基の場合、グリシジル(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記セラミックスラリーは、焼成温度を下げる目的で、更に、ポリアルキレンオキシドを含有することが好ましい。
上記ポリアルキレンオキシドとしては特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチル)エチレングリコール、ポリ(ベンジル)エチレングリコール及びこれらの共重合体等が挙げられる。
上記ポリアルキレンオキシドの分子量としては特に限定されず、上記バインダー樹脂の粘度に合わせて適宜選択すればよい。
上記ポリアルキレンオキシドの配合量としては特に限定されないが、上記バインダー樹脂100重量部に対して好ましい上限が100重量部である。100重量部を超えると、ポリアルキレンオキシドによる低温焼成性は発現するものの、バインダー樹脂とポリアルキレンオキシドとの組み合わせによっては相分離しやすくなり、安定した粘度のペーストを得ることが困難なことがある。好ましい上限は50重量部である。
上記セラミックスラリーは、有機溶剤を含有してもよい。上記有機溶剤としては、沸点150℃以上であることが、固形分の安定性、印刷時の粘度安定性から好ましい。このような有機溶剤としては特に限定されず、例えば、ターピネオール、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、フェニルプロピレングリコール、クレゾール等が挙げられる。
上記セラミックスラリーの製造方法としては特に限定されず、例えば、バインダー樹脂にセラミック粉末や有機溶剤等を加え、ボールミル等により均一に混合し、脱泡する方法等が挙げられる。
本発明の焼成体の製造方法においては、次いで、上記セラミックスラリーを用いてセラミックグリーンシートを製造する。
上記セラミックグリーンシートの膜厚としては特に限定されないが、好ましい下限は20μm、好ましい上限は150μmである。20μm未満であると、セラミックグリーンシートに破れが生じることがあり、150μmを超えると、積層した積層体が厚くなりすぎ、現実的でない。
上記セラミックグリーンシートの製造方法としては特に限定されず、例えば、上記セラミックスラリーをドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム又はSUSプレート等の支持体面に流延成形し、これを加熱等により溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離する方法が挙げられる。
上記セラミックグリーンシートには、スルーホール孔を形成してもよい。スルーホール孔を形成することにより、該スルーホール孔に金属等を圧着させ、多層膜コンデンサ等として用いることができる。
上記金属としては特に限定されないが、導電性の高いものが好適に用いられ、例えば、Cu、Ni、Ag、Au、Al等が挙げられる。
本発明の焼成体の製造方法により製造される焼成体は、300℃以下で焼成することが可能であることから、従来、酸化されやすく、使用が困難であったCuをも使用することが可能となった。
本発明の焼成体の製造方法では、次いで、積層体を製造する。
上記積層体の製造方法としては特に限定されず、例えば、上記セラミックグリーンシートを複数枚重ね合わせ、圧縮する方法等が挙げられる。
本発明の焼成体の製造方法では、次いで、上記セラミックグリーンシートを焼成する。焼成を行うことにより、バインダー樹脂や揮発性樹脂を分解させるとともに、セラミックグリーンシートを硬化させることができる。
上記焼成の方法としては特に限定されず、例えば、TGA/DAT(TAインスツルメント社製)を用いて10℃/分で300℃まで昇温させ、焼成する方法が挙げられる。
また、焼成を行う際には、大気中で行ってもよいし、還元雰囲気下等の嫌気下で行ってもよい。
本発明の焼成体の製造方法により得られる焼成体においては、上記バインダー樹脂を用いることにより300℃以下という非常に低温環境下で焼成させることができ、製造時間及び製造コストの面で特に優れたものとなる。
本発明によれば、低温でセラミックグリーンシート中のバインダー樹脂の脱脂処理とセラミック材料の焼成処理とが可能な焼成体の製造方法を提供することができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
撹拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入口を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、イソブチルメタクリレート(日本触媒製)95g、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂製、ブレンマーPP−1000)5g、ラウリルメルカプタン(和光純薬社製)1g及び酢酸エチル100gを投入して混合し、モノマー混合溶液を得た。
得られたモノマー混合溶液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることによって溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し、撹拌しながら環流に達するまでに昇温した。
環流した後、重合開始剤として1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.024gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を、重合系に投入した。1時間後、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.036gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を投入した。更に、重合開始後、2、3及び4時間後に、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド0.048gを1gの酢酸エチルで希釈した溶液を投入した。一回目の重合開始剤投入から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させた。これにより、ポリエーテル側鎖を有するバインダー樹脂の酢酸エチル溶液を得た。
得られたバインダー樹脂について、ゲルパーミエションクロマトグラフィーによる分析を
行ったところ、ポリスチレン換算による数平均分子量は約3万であった
得られたバインダー樹脂の酢酸エチル溶液について、ロータリーエバポレーターで酢酸エチルを除去した後、テルピネオール(ヤスハラケミカル社製、ターピネオール)を加え、溶解させた。得られた溶液にセラミック粉末としてCaO−Al−SiO−B系とAlとの混合物を溶液全体に対して15重量%加え、三本ロールで混練し、ボールミルで48時間混合することによりセラミックスラリーを製造した。
得られたセラミックスラリーを、離型処理したポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚みが約5μmになるように塗布し、常温で1時間風乾し、熱風乾燥機で80℃3時間、続いて120℃2時間乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
セラミックグリーンシートを5cm角の大きさに切断し、これにスクリーン印刷用導電ペーストをスクリーン印刷したものを100枚積重ね、温度70℃、圧力150kg/cm、10分間の熱圧着条件で圧着して、セラミックグリーンシート積層体を得た。
得られたセラミックグリーンシート積層体を昇温速度10℃/分で300℃まで昇温することで、セラミック焼成体を得た。
<評価>
実施例1で得られたセラミック焼成体について、以下の方法により評価した。
(1)糸引き性の評価
ガラス板上に、100mmの間隔で350μmの2本のスペーサーを平行に配したものを準備した。得られたガラスペーストを、スペーサーの間に過剰気味に塗布した後、スクレーパーを用いて塗膜を伸ばし、塗膜端部の糸引きを目視により観察したが確認されなかった。
(2)95%分解温度の測定
TGA/DAT(TAインスツルメント社製)を用い、昇温速度10℃/分、空気雰囲気下で測定を行い、温度と重量の変化とを測定した。初期の重量から95%減少した温度を95%分解温度とすると300℃であった。
本発明によれば、低温でセラミックグリーンシート中のバインダー樹脂の脱脂処理とセラミック材料の焼成処理とが可能な焼成体の製造方法を提供することができる。
バインダー樹脂におけるセグメント間の結合の態様を示す模式図である。

Claims (2)

  1. セラミック粉末、及び、アクリル系ポリマー鎖とポリオキシアルキレン鎖とを有するバインダー樹脂を含有するセラミックスラリーを用いてセラミックグリーンシートを製造し、複数の前記セラミックグリーンシートを積層した積層体を300℃以下で焼成することを特徴とする焼成体の製造方法。
  2. バインダー樹脂は、アクリル系ポリマー鎖にポリオキシアルキレン鎖がグラフト重合されていることを特徴とする請求項1記載の焼成体の製造方法。
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