JP6438538B2 - 無機微粒子分散ペースト組成物、無機微粒子分散シート及び無機微粒子分散シートの製造方法 - Google Patents

無機微粒子分散ペースト組成物、無機微粒子分散シート及び無機微粒子分散シートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱劣化が起こりにくく、低温分解性に優れ、かつ、機械的強度の高いシートを得ることが可能な無機微粒子分散ペースト組成物、無機微粒子分散シート及び無機微粒子分散シートの製造方法に関する。
近年、導電性粉末、セラミック粉末、ガラス粒子等の無機微粒子をバインダー樹脂に分散させた無機微粒子分散ペースト組成物が、様々な形状の焼成体を得るために用いられている。例えば、導電性粉末として金属微粒子を分散させたペースト組成物は、回路形成やコンデンサーの製造等に用いられ、セラミック粉末やガラス粒子を分散させたセラミックペーストやガラスペーストは、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPともいう)の誘電体層の製造や積層セラミックコンデンサの製造等に用いられている。
積層セラミックコンデンサ等の積層型の電子部品は、例えば、特許文献1に開示されているように、一般に次のような工程を経て製造される。
まず、バインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック原料粉末を加える。次いで、ボールミル等により均一に混合し脱泡を行って一定粘度を有するセラミックスラリー組成物を得る。得られたセラミックスラリー組成物をドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム又はステンレス鋼プレート等の支持体面で流延成形する。次いで、加熱等により有機溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
得られたセラミックグリーンシート上に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等により塗工したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を製造する。この積層体中に含まれるバインダー樹脂成分等を熱分解させて除去する処理(いわゆる「脱脂処理」)を行った後、焼成して得られたセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結によって形成させる工程を経て、積層セラミックコンデンサが得られる。
近年、積層セラミックコンデンサ等の電子部品に対しては、軽量小型化及び価格の低廉化が強く求められている。従って、これらを製造する際に必要となるセラミック積層体においては一層当たりのシート厚みを薄くしたり、さらなる多層化を推し進めたりすることが行われている。一方、その内部電極を形成するにあたっては高価なPt、Pd、Ag等に代わる安価な卑金属材料、例えば、Niや高周波特性に優れたCu等を主成分として含む導電性ペーストを使用することが行われている。
このような卑金属材料を主成分とする導電性ペーストを用いて内部電極を形成する場合、製造工程の途中で、積層素体の脱バインダー処理及び焼成処理を非酸化性雰囲気中で行う必要がある。しかし、特に、導電性ペーストがCuを主成分とするものである場合には、酸素含有雰囲気中で高温加熱すると、良質の絶縁体である酸化物が形成されてしまうため、非酸化性雰囲気中で焼成温度を低くして焼成する必要がある。
しかしながら、非酸化性雰囲気中での焼成を行った際には、グリーンシート中のバインダーが炭素として残存し、炭素の存在に起因して発生した気孔(ポア)が焼成体中に残ることになるため、製造後の電子部品における特性上の不都合が生じていた。
そこで、低温分解性に優れるアクリル樹脂をバインダーとして用いることが検討されている。即ち、アクリル樹脂は低温下においても解重合(重合体が単量体に分解する化学反応)を起こし得るから、グリーンシート中における炭素の残存率(以下、残炭率という)を低下させることが可能であると考えられるからである。例えば、特許文献2には、高温残留重量が極めて少ないアクリル系樹脂を用いる方法が開示されている。
しかし、特許文献2に記載の発明では、焼結温度が高温条件の場合に対応したものであり、400℃以下の低温分解のプロセスには対応していないものであった。
また、アクリル樹脂は、例えば、非特許文献1に記載のように、ITO等の透明電極にも使用されているが、300℃以上の高温に曝されることで抵抗値が上昇したり、一部の焼結磁石でも400℃の高温で磁性の低下が顕著になったりする等のように、バインダー脱脂プロセスで無機材料が熱劣化する問題が発生していた。
特公平3−35762号公報 特開2001−307548号公報
フジクラ技報 2004年4月 第106号 57ページ
本発明者らは、上記現状に鑑み、熱劣化が起こりにくく、低温分解性に優れ、かつ、機械的強度の高いシートを得ることが可能な無機微粒子分散ペースト組成物、無機微粒子分散シート及び無機微粒子分散シートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、無機微粒子、バインダー用メタアクリル共重合体及び有機溶剤を含有し、前記無機微粒子は、リチウム元素を含んだガラス又は酸化リチウム化合物を含有し、前記バインダー用メタアクリル共重合体は、3種以上のメタアクリルモノマーから形成され、メタクリル酸nブチルに由来するセグメントを有し、前記メタクリル酸nブチルに由来するセグメントの含有量が10〜60重量%であり、前記メタアクリルモノマーは、メタアクリル酸エステル置換基にグリシジル基を有するモノマーを含み、かつ、前記メタアクリル酸エステル置換基にグリシジル基を有するモノマーに由来するセグメントの含有量が1〜10重量%であり、前記メタアクリルモノマーは、メタクリル酸エステル置換基に分岐構造を有する置換基を有し、かつ、前記分岐構造を有する置換基の主鎖の炭素数が3以上であるモノマーを含み、前記メタクリル酸エステル置換基に分岐構造を有する置換基を有し、かつ、前記分岐構造を有する置換基の主鎖の炭素数が3以上であるモノマーに由来するセグメントの含有量が40重量%以上であり、かつ、ガラス転移温度が10〜35℃、重量平均分子量が10万〜300万である無機微粒子分散ペースト組成物である。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、メタクリル酸nブチルを含む3種以上のメタアクリルモノマーを共重合成分とするメタアクリル共重合体のガラス転移温度及び重量平均分子量を所定の範囲内とした場合、熱による劣化を最小限に止めつつ、低温分解性に優れ、かつ、機械的強度の高いシートを得ることが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記バインダー用メタアクリル共重合体は、3種以上のメタアクリルモノマーを共重合成分とする。メタアクリルモノマーから重合されるポリマーは、そのモノマー固有の天井温度と言われる温度で分解を開始する。例えば、メタクリル酸メチルの天井温度は200℃未満だが、真空中30分間加熱した時のポリマー重量損失が50%になる温度は327℃と天井温度と隔たりがある。これは天井温度以上の領域でも分解と再重合反応の平衡反応であるため、環境温度が上昇するに従い分解反応が優先されるためである。メタアクリルモノマーの天井温度はモノマー毎に大きく異なるため、複数のモノマーを組み合わせることによって、ある温度域で発生する分解モノマーの量を少なくすることで再結合する確率を低くすることができる。即ち、複数のモノマーと組み合わせることによって、天井温度と実際の分解温度との隔たりを小さくすることが出来る。
上記バインダー用メタアクリル共重合体は、メタクリル酸nブチルに由来するセグメントを有する。
上記セグメントを有することで、低温分解性に優れ、かつ、機械的強度の高いシートを得ることが可能となる。
メタクリル酸nブチルに由来するセグメントは焼結時に煤になることを防ぐ。同様の効果はメタクリル酸メチルでも得られるが、メタクリル酸メチルを用いた場合、セグメントのTgが高く、樹脂が脆くなりやすく、分解終了温度が高くなりやすい。その為、メタクリル酸メチルセグメントを導入するには後述するメタクリル酸エステル置換基に分岐構造を有するモノマーを多く導入しなければならない。その為、メタクリル酸メチルと合わせて用いることが望ましいセグメント成分が、メタクリル酸イソブチルである。
上記メタクリル酸nブチルに由来するセグメントは、セグメントのTgが適当であり、樹脂のTgが10〜30℃の樹脂組成を形成しやすくなることから、シートを強靱にすることが可能となる。
上記メタクリル酸nブチルに由来するセグメントの含有量の下限は10重量%、上限は60重量%である。上記メタクリル酸nブチルに由来するセグメントの含有量が10重量%未満であると、焼成後の有機残渣が多くなり、60重量%を超えると、低温分解化させにくくなる。好ましい下限は30重量%、好ましい上限は50重量%である。
上記メタアクリルモノマーとしては、メタクリル酸nブチル以外に、メタクリル酸エステル置換基に分岐構造を有する置換基を有し、かつ、前記分岐構造を有する置換基の主鎖の炭素数が3以上であるモノマーを用いることが好ましい。このようなモノマーとメタクリル酸nブチルとを組み合わせた場合、350℃という低温条件でも分解可能なバインダー用メタアクリル共重合体が得られる。
上記メタクリル酸エステル置換基に分岐構造を有する置換基を有し、かつ、前記分岐構造を有する置換基の主鎖の炭素数が3以上であるモノマーに由来するセグメントの含有量の好ましい下限は40重量%、好ましい上限は80重量%である。上記メタクリル酸エステル置換基に分岐構造を有する置換基を有し、かつ、前記分岐構造を有する置換基の主鎖の炭素数が3以上であるモノマーに由来するセグメントの含有量が40重量%未満であると、低温分解化させられなくなることがあり、80重量%を超えると、焼成後の有機残渣が多くなることがある。より好ましい下限は45重量%、より好ましい上限は70重量%、特に好ましい上限は60重量%である。
上記メタクリル酸エステル置換基に分岐構造を有する置換基を有し、かつ、前記分岐構造を有する置換基の主鎖の炭素数が3以上であるモノマーとしては、例えば、イソブチルメタクリレート、セクブチルメタクリレート、イソペンタンメタクリレート、イソペンチルメタクリレート、ネオペンタンメタクリレート、ネオペンチルメタクリレート、ターシャリーペンチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート等が挙げられる。
なかでも、イソデシルメタクリレートは、後述するガラス転移温度を低下させることが可能となることから、好ましく用いることができる。
上記メタアクリルモノマーとしては、さらに、メタクリル酸エステル置換基に炭素数が3以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数が6以下の環状のアルキル基を有し、かつ、ホモポリマーでのガラス転移温度が65℃以上であるモノマーが好ましい。
上記構造を有し、かつ、ホモポリマーでのガラス転移温度が65℃以上であるモノマーを用いることによって、バインダー用メタアクリル共重合体全体のガラス転移温度が低くても、バインダー用メタアクリル共重合体の弾性を高めて降伏点を持たせることが出来る。そのため、得られたバインダー用メタアクリル共重合体を含有する無機微粒子分散ペースト組成物を、無機微粒子分散シートに加工する際のハンドリング性が向上し、加工を容易にすることができる。
上記メタアクリルモノマーのホモポリマーでのガラス転移温度の好ましい上限は、110℃である。
上記、メタクリル酸エステル置換基に炭素数が3以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数が6以下の環状のアルキル基を有し、かつ、ホモポリマーでのガラス転移温度が65℃以上であるメタアクリルモノマーとしては、特に限定されない。具体的には、例えば、メチルメタクリレート(ホモポリマーでのガラス転移温度105℃、以下同じ)、エチルメタクリレート(65℃)、シクロヘキシルメタクリレート(66℃)、イソプロピルメタクリレート(81℃)からなる群より選択される少なくとも1種からなるメタアクリルモノマーが好ましい。
これらのなかでは、焼結時の残渣を少なくするためにも、単量体の分子量が小さく、分解時に揮発性が高い、メチルメタクリレートが特に好ましい。
上記、メタクリル酸エステル置換基に炭素数が3以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数が6以下の環状のアルキル基を有し、かつ、ホモポリマーでのガラス転移温度が65℃以上であるメタアクリルモノマーに由来するセグメントの含有量の好ましい下限は15重量%、好ましい上限は60重量%である。上記メタアクリルモノマーに由来するセグメントの含有量が、15重量%未満であると、バインダー用メタアクリル共重合体の弾性を高める効果が低くなることがあり、60重量%を超えると、バインダー用メタアクリル共重合体全体のTgが高くなりすぎ、無機微粒子分散ペースト組成物を用いた無機微粒子分散シートが脆くなる可能性がある。より好ましい下限は20重量%、より好ましい上限は50重量%、特に好ましい上限は40重量%である。
上記メタアクリルモノマーとしては、さらに、メタアクリル酸エステル置換基に極性基を有するモノマーが好ましい。メタアクリル酸エステル置換基に極性基を有するモノマーを用いることによって、バインダー用メタアクリル共重合体中に水素結合またはイオン相互作用による強固な相互作用を形成することが出来、強度をさらに高めることが出来る。上記メタアクリル酸エステル置換基中の極性基としては、特に限定されないが、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられる。
上記メタアクリル酸エステル置換基に極性基を有するモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート等が挙げられる。中でも、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレートはバインダー用メタアクリル共重合体のTgを下げることが出来るため、好ましい。
上記メタアクリル酸エステル置換基に極性基を有するモノマーに由来するセグメントの含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は10重量%である。上記メタアクリル酸エステル置換基に極性基を有するモノマーに由来するセグメントの含有量が、1重量%未満であると、相互作用の効果が低くなることがあり、10重量%を超えると、低温での熱分解性が損なわれたり、無機微粒子に付着する煤が多くなり、焼結体の残留炭素が多くなったりすることがある。より好ましい下限は3重量%、より好ましい上限は8重量%である。
上記メタクリルモノマーは、メタアクリル酸エステル置換基にグリシジル基を有するモノマーを含むことが好ましい。特に、上記グリシジル基を有することで、例えば、極性基を有するモノマーと併用した場合、グリシジル基と極性基とが乾燥プロセスにおいて化学結合を形成し、積層体を作製する際に、溶剤等で侵されにくくすることが可能となる。
上記バインダー用メタアクリル共重合体において、上記メタアクリル酸エステル置換基にグリシジル基を有するモノマーに由来するセグメントの含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は10重量%である。上記メタアクリル酸エステル置換基にグリシジル基を有するモノマーに由来するセグメントの含有量が、1重量%未満であると、相互作用の効果が低くなることがあり、10重量%を超えると、低温での熱分解性が損なわれたり、無機微粒子に付着する煤が多くなり、焼結体の残留炭素が多くなったりすることがある。より好ましい下限は3重量%、より好ましい上限は8重量%である。
上記メタアクリルモノマーとしては、その一部又は全部のエステル置換基にポリテトラメチレンオキシドのセグメントを含むモノマーが好ましい。このようなエーテル鎖を有するグラフトモノマーを用いることによって、より分解温度を低温化させることができ、バインダー樹脂のTgを飛躍的に下げることが出来る為、メタクリル樹脂の脆さを改善することができる。中でもポリテトラメチレングリコールのセグメントを有するモノマーは低残炭性と両立化させることが出来る為、好適に用いることが出来る。
上記ポリテトラメチレンオキシドのグラフトモノマーとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート、ポリ(エチレングリコール・ポリテトラメチレングリコール)モノメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノメタクリレート、プロピレングリコール・ポリブチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール・ポリテトラメチレングリコール)モノメタクリレート、メトキシポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノメタクリレート、メトキシプロピレングリコール・ポリブチレングリコールモノメタクリレート等を用いることができる。
上記ポリテトラメチレンオキシドのグラフトモノマーに由来するセグメントの含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は20重量%である。上記ポリテトラメチレンオキシドのグラフトモノマーに由来するセグメントの含有量が1重量%未満であると、低温分解化効果が低くなることがあり、20重量%を超えると、ペースト化した際に無機粉の分散性が悪くなることがある。より好ましい下限は2重量%、より好ましい上限は10重量%である。
上記ポリテトラメチレンオキシドのテトラメチレンオキシドの繰り返し数の好ましい下限は2、好ましい上限は20である。上記テトラメチレンオキシドの繰り返し数が2未満であると、低Tg化によるメタクリル樹脂の脆さを改善する効果が低くなることがあり、20を超えると、重合した際にゲル化を起こしやすくなることがある。
上述したメタアクリルモノマーの組み合わせとしては、メタクリル酸nブチルと、メタクリル酸エステル置換基に分岐構造を有する置換基を有し、かつ、前記分岐構造を有する置換基の主鎖の炭素数が3以上であるモノマーとの組み合わせが好ましい。また、メタクリル酸nブチルと、メタクリル酸エステル置換基に分岐構造を有する置換基を有し、かつ、前記分岐構造を有する置換基の主鎖の炭素数が3以上であるモノマーと、エステル置換基にポリテトラメチレンオキシドのセグメントを含むモノマーとの組み合わせが好ましい。
また、これらに、極性基を有するメタアクリルモノマーやエステル置換基の炭素数が1〜3のメタアクリルモノマーを加える組み合わせも好ましい。
具体的には、メタクリル酸nブチルとメタクリル酸イソブチルとメタクリル酸イソデシルとの組み合わせ、及び、メタクリル酸nブチルとメタクリル酸イソブチルとポリテトラメチレングリコールのセグメントを有するメタクリル系グラフトモノマーとの組み合わせが好ましい。
また、メタクリル酸nブチルとメタクリル酸イソブチルと2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの組み合わせ、及び、メタクリル酸nブチルとメタクリル酸メチルとメタクリル酸イソブチルとの組み合わせも好ましい。
更に、4種以上のメタアクリルモノマーを組み合わせてもよい。このようなメタアクリルモノマーとしては、メタクリル酸イソデシル、イソプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールのセグメントを有するメタクリル系グラフトモノマー、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
上記バインダー用メタアクリル共重合体は、ポリスチレン換算による重量平均分子量の下限が10万、上限が300万である。上記重量平均分子量が10万未満であると、強度の低下や、ペースト作製時に粘度が充分に得られず貯蔵安定性が悪くなったり、シート化した際の強度が著しく低くなったりする。上記重量平均分子量が300万を超えると、得られる無機微粒子分散ペースト組成物の糸曳性や溶媒への溶解性に問題が生じる。好ましい下限は10万、好ましい上限は100万である。
なお、ポリスチレン換算による重量平均分子量の測定は、カラムとして例えばSHOKO社製カラムLF−804等を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行うことで得ることができる。
上記バインダー用メタアクリル共重合体は、ガラス転移温度の好ましい下限が10℃、好ましい上限が35℃である。上記ガラス転移温度が10℃未満であると、無機粉末とバインダーからなるシートに成形した際に柔らかすぎて取り扱い性に劣ることがある。上記ガラス転移温度が35℃を超えると、得られるシートが脆くなり、取り扱い性が悪くなることがある。より好ましい下限は15℃、より好ましい上限は30℃である。
なお、上記バインダー用メタアクリル共重合体のガラス転移温度は、メタアクリルモノマーの組成と、構成モノマーをホモポリマーとした場合のガラス転移温度とから概算することが可能である。具体的には、上記バインダー用メタアクリル共重合体のガラス転移温度は、構成モノマーをホモポリマーとした場合のガラス転移温度に、それぞれの割合を掛けたものの合計として計算される。
メタアクリルモノマーのホモポリマーとした場合のガラス転移温度は以下の通りである。
メチルメタクリレート(MMA):105℃、エチルメタクリレート(EMA):65℃、イソプロピルメタクリレート(iPMA):81℃、n−ブチルメタクリレート(BMA):20℃、イソブチルメタクリレート(iBMA):53℃
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):55℃、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA):26℃、イソデシルメタクリレート(IDMA):−41℃、グリシジルメタクリレート(GMA):41℃
上記バインダー用メタアクリル共重合体は、90%分解温度が350℃以下であることが好ましく、より好ましくは90%分解温度が300℃以下である。90%分解温度が350℃を超えると、焼成時に無機粉が熱劣化することがある。なお、上記90%分解温度は、熱重量測定装置TG−DTAによって測定することができる。
上記バインダー用メタアクリル共重合体を製造する方法としては特に限定されず、例えば、メタクリル酸nブチルを所定量含む3種以上のメタアクリルモノマーを原料モノマーとし、連鎖移動剤及び有機溶剤等を含有するモノマー混合液を調製した後、該モノマー混合液に重合開始剤を添加し、上記原料モノマーを共重合させる方法が挙げられる。
また、上記バインダー用メタアクリル共重合体の分子末端のみに水素結合性官能基を導入する方法としては、例えば、水素結合性官能基を有する連鎖移動剤や、水素結合性官能基を有する重合開始剤のもとで、メタクリル酸nブチルを所定量含む3種以上のメタアクリルモノマーからなる原料モノマーを従来公知の方法で共重合する方法が挙げられる。なお、これらの方法は併用してもよい。
上記従来公知の方法としては、フリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等が挙げられる。
また、バインダー用メタアクリル共重合体の分子末端のみに水素結合性官能基が導入されたことは、例えば、13C−NMRにより確認することができる。
上記水素結合性官能基を有する連鎖移動剤としては、特に限定されず、例えば、水素結合性官能基として水酸基を有するメルカプトプロパンジオール、水素結合性官能基としてカルボキシル基を有するチオグリセロール、メルカプトコハク酸、メルカプト酢酸、水素結合性官能基としてアミノ基を有するアミノエタンチオール等が挙げられる。
上記水素結合性官能基を有する重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、P−メンタンヒドロペルオキシド(日油社製「パーメンタH」)、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド(日油社製「パークミルP」)、1,2,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド(日油社製「パーオクタH」)等が挙げられる。また、上記水素結合性官能基を有する重合開始剤として、クメンヒドロペルオキシド(日油社製「パークミルH−80」)、t−ブチルヒドロペルオキシド(日油社製「パーブチルH−69」)、過酸化シクロヘキサノン(日油社製「パーヘキサH」)等が挙げられる。更に、上記水素結合性官能基を有する重合開始剤として、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、t−アミルヒドロパーオキサイド、Disuccinic acid peroxide(パーロイルSA)等が挙げられる。
また、上記バインダー用メタアクリル共重合体と、有機溶剤と、無機微粒子とを用いて無機微粒子分散ペースト組成物を作製することができる。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、上記バインダー用メタアクリル共重合体、有機溶剤、及び、無機微粒子を含有する。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、無機微粒子を含有する。
上記無機微粒子は、リチウム元素を含んだガラス又は酸化リチウム化合物を含有する。
上記リチウム元素を含んだガラスとしては、LiO・Al・SiO系無機ガラス、LiS−M(M=B、Si、Gc、P)等のリチウム硫黄系ガラスが挙げられる。上記リチウム硫黄系ガラスとしては、例えば、LiS−P系ガラスが用いられる。
上記酸化リチウム化合物としては、LiCoO等のリチウムコバルト複合酸化物やLiMnO等のリチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムバナジウム複合酸化物、リチウムジルコニウム複合酸化物、リチウムハフニウム複合酸化物、ケイリン酸リチウム(Li.5SiO.5PO.5O)、リン酸チタンリチウム(LiTi(PO)、チタン酸リチウム(LiTi12)、リン酸ゲルマニウムリチウム(LiGe(PO)、LiO−SiO、LiO−V−SiO、LiO−P−B、LiO−GeOBaなどが挙げられる。
その他の無機微粒子の成分としては特に限定されず、例えば、ITO、FTO、銅、銀、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス等の低融点ガラス、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化タングステン、MgAl1017:Eu、ZnSiO:Mn、(Y、Gd)BO:Eu等の蛍光体、種々のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属錯体等が挙げられる。
なお、上記無機微粒子の平均粒子径は0.05〜50μmが好ましい。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物における上記無機微粒子の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限が10重量%、好ましい上限が90重量%である。10重量%未満であると、粘度が充分に得られないことがあり、塗工性が低下することがあり、90重量%を超えると、無機微粒子を分散させることが困難になることがある。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、有機溶剤を含有する。
上記有機溶剤としては特に限定されず、例えば、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテートテキサノール、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、フェニルプロピレングリコール、クレゾール等が挙げられる。なかでも、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノールが好ましく、テルピネオール、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテートがより好ましい。なお、これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物におけるバインダー用メタアクリル共重合体の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限が5重量%、好ましい上限が30重量%である。上記バインダー用メタアクリル共重合体の含有量が、上記範囲内であると、低温で焼成しても脱脂可能な無機微粒子分散ペースト組成物を作製することができる。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物における上記有機溶剤の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は60重量%である。この範囲を外れると、塗工性が低下したり、無機微粒子を分散させることが困難となったりすることがある。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、密着促進剤を含有してもよい。
上記密着促進剤としては、特に限定されないが、アミノシラン系シランカップリング剤が好適に用いられる。
上記アミノシラン系シランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
アミノシラン系シランカップリング剤以外にも、グリシジルシラン系シランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、その他シランカップリング剤であるジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等も好適に用いることができ、これらを複数用いても良い。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、塗工後のレベリングを促進させる目的でノニオン系界面活性剤を含有することが好ましい。
上記ノニオン系界面活性剤としては特に限定されないが、HLB値が10以上20以下のノニオン系界面活性剤であることが好ましい。ここで、HLB値とは、界面活性剤の親水性、親油性を表す指標として用いられるものであって、計算方法がいくつか提案されており、例えば、エステル系の界面活性剤について、鹸化価をS、界面活性剤を構成する脂肪酸の酸価をAとし、HLB値を20(1−S/A)等の定義がある。具体的には、脂肪鎖にアルキレンエーテルを付加させたポリエチレンオキサイドを有するノニオン系界面活性剤が好適であり、具体的には例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等が好適に用いられる。なお、上記ノニオン系界面活性剤は、熱分解性がよいが、大量に添加すると無機微粒子分散ペースト組成物の熱分解性が低下することがあるため、含有量の好ましい上限は5重量%である。
また、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物では、更に、添加剤として、可塑剤、粘着付与剤、保存安定剤、消泡剤、熱分解促進剤、酸化防止剤等を含有させてもよい。これらの添加剤は、特に限定されるものではなく、この分野で通常用いられるものを適宜選択することができる。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物の製造方法としては特に限定されず、従来公知の方法が挙げられ、各成分をボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法等が挙げられる。
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、無機微粒子としてリチウム元素を含んだガラスを用いた場合、ガラスペースト組成物として好適に使用することができる。
無機微粒子として、更にセラミックス粉末を用いることで、グリーンシートの材料として好適に使用することができる。また、リチウム元素を含んだガラスシートの製造にも好適に用いることが出来る。これらの用途で本発明の無機微粒子分散ペースト組成物(以下、グリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物ともいう)を用いることで、低温での脱脂が可能となり、焼結時における無機微粒子の焼結中の酸化や熱履歴を最低限度に抑えることが可能となる。
上記グリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物に用いられる溶剤としては、特にトルエンや酢酸ブチル、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン等が好ましい。また、上記溶剤の添加量は用いる塗工プロセスによって適宜選択することが望ましく、特に限定されるものではない。更に、上記グリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物における上記無機微粒子及び無機微粒子の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限が50重量%、好ましい上限が95重量%である。50重量%未満であると、樹脂分が多く焼結性に問題が発生する可能性があり95重量%を超えると、無機微粒子等を分散させることが困難でシート化できないことがある。
上記グリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物を、片面離型処理を施した支持フィルム上に塗工し、溶剤を乾燥させ、シート状に成形することで、無機微粒子分散シートを製造することができる。このような無機微粒子分散シートもまた本発明の1つである。
本発明の無機微粒子分散シートの製造方法としては、例えば、上記バインダー用メタアクリル共重合体を溶剤に溶解させ、界面活性剤や分散剤、可塑剤等を添加し、攪拌、均一なビヒクルを作成した後、無機微粒子を添加し、ボールミルの分散装置を用いて均一に分散させる。得られた無機微粒子分散ペースト組成物をロールコーター、ダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーター等の塗工方式によって支持フィルム上に均一に塗膜を形成する方法等が挙げられる。
本発明の無機微粒子分散シートを製造する際に用いる支持フィルムは、耐熱性及び耐溶剤性を有すると共に可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。支持フィルムが可撓性を有することにより、ロールコーター、ブレードコーターなどによって支持フィルムの表面にグリーンシート形成用無機微粒子分散ペースト組成物を塗布することができ、得られるグリーンシート形成フィルムをロール状に巻回した状態で保存し、供給することができる。
上記支持フィルムを形成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレン等の含フッ素樹脂、ナイロン、セルロース等が挙げられる。
上記支持フィルムの厚みは、例えば、20〜100μmが好ましい。
また、支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましく、これにより、転写工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。
なお、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物を用いて得られる無機微粒子分散シートもまた本発明の1つである。
本発明によれば、熱劣化が起こりにくく、低温分解性に優れ、かつ、機械的強度の高いシートを得ることが可能な無機微粒子分散ペースト組成物、無機微粒子分散シート及び無機微粒子分散シートの製造方法を提供することができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
(1)バインダー樹脂、無機微粒子分散ペースト組成物の調製
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラプルフラスコに、メタクリル酸nブチル(n−BMA)45重量部、イソブチルメタクリレート(iBMA)25重量部、イソデシルメタクリレート(iDMA)30重量部、有機溶剤として酢酸ブチル100重量部とを混合し、モノマー混合液を得た。
得られたモノマー混合液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し攪拌しながら湯浴が沸騰するまで昇温した。重合開始剤を酢酸ブチルで希釈した溶液を加えた。また重合中に重合開始剤を含む酢酸ブチル溶液を数回添加した。
重合開始から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させた。これにより、メタアクリル樹脂の酢酸ブチル溶液を得た。得られた重合体について、カラムとしてSHOKO社製カラムLF−804を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による重量平均分子量は表1のとおりであった。
このようにして得られたメタアクリル樹脂の酢酸ブチル溶液50重量部に、無機粉体としてLiS−P系ガラス(平均粒子径2.0μm)50重量部を添加し、高速攪拌機で混練し、無機微粒子分散ペースト組成物を得た。
(2)シートの作製
得られた無機微粒子分散ペースト組成物を、予め離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる支持フィルム(幅400mm,長さ30m,厚さ38μm)上にブレードコーターを用いて塗布した。次いで、形成された塗膜を100℃で10分間乾燥することにより溶剤を除去することにより、厚さ50μmの無機粉体含有樹脂層を支持フィルム上に形成した。次いで、前記無機粉体含有樹脂層上に、予め離型処理したPETよりなるカバーフィルム(幅400mm,長さ30m,厚さ25μm)を貼り付けることにより、グリーンシートを製造した。
(実施例2〜8、比較例1〜3)
実施例1におけるアクリルモノマー混合液の組成を表1に記載の内容に変更し、実施例1と同じ方法で無機微粒子分散ペースト組成物、シートを作製した。
表1中、BMAはメタクリル酸nブチル(n−BMA)、iBMAはイソブチルメタクリレート、iDMAはイソデシルメタクリレート、PTMOMAはポリテトラメチレングリコールのセグメントを有するメタクリル系グラフトモノマー(ブレンマー(登録商標)55PET−800、日油社製)である。また、2−HPMAは2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、GMAはグリシジルメタクリレート、iPMAはイソプロピルメタクリレート、HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、MMAはメチルメタクリレートである。
iBMA、iDMAは、メタクリル酸エステル置換基に分岐構造を有する置換基を有し、かつ、前記分岐構造を有する置換基の主鎖の炭素数が3以上であるモノマー(表1中、モノマーAとする。)である。MMA、iPMAは、メタクリル酸エステル置換基に炭素数が3以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数が6以下の環状のアルキル基を有し、かつ、ホモポリマーでのガラス転移温度が65℃以上であるモノマー(表1中、モノマーBとする。)である。GMA、HEMA、2−HPMAは、メタアクリル酸エステル置換基に極性基またはグリシジル基を有するモノマー(表1中、モノマーCとする。)である。
Figure 0006438538
<評価>
実施例1〜8及び比較例1〜3で得られた重合体、無機微粒子分散ペースト組成物及びシートについて以下の評価を行った。結果を表2に示した。
(1)樹脂のガラス転移温度測定
得られた重合体について、示差走査熱量計(DSC)を用いてガラス転移温度を測定した。
(2)樹脂伸長性
実施例、比較例で作製した重合体の酢酸ブチル溶液を離型処理したPETフィルムにアプリケーターを用いて塗工し、100℃送風オーブンで10分間乾燥させ、樹脂シートを作成した。樹脂シートの厚みは20μであった。方眼紙をカバーフィルムとして用い、はさみで幅1cmの短冊片を作製した。23℃、50RH条件下で島津製作所社製オートグラフAG−ISを用いてチャック間距離3cm、引張速度10mm/minにて引張試験を行い、破断に要した歪みを評価した。
破断歪みが50%以上である場合を「○」、50%未満である場合を「×」とした。
(3)焼結性
実施例、比較例で作製した無機微粒子分散ペースト組成物をTG−DTAのアルミナパンに詰め、10℃/minにて昇温し、溶媒を蒸発、樹脂を熱分解させた。脱脂が終了した(重量が50%を示した)温度を評価した。脱脂が終了した温度は、無機微粒子分散ペースト組成物中に占める無機微粒子以外の割合に相当する重量減少がなされたと推測される温度を、測定結果から読み取った。これは無機微粒子分散ペースト組成物中のメタアクリル共重合体成分が90%以上分解する分解終了温度に相当する。
(4)熱劣化評価
実施例、比較例で作製したシートをマッフル炉にてTG−DTAにて得られたそれぞれの脱脂終了温度で30時間焼成を行った。
得られた試料についてX線回折評価装置(リガク社製、RINT2400)を用いて広角X線回折評価を行った。即ち、焼成された試料に50kV、100mAの条件で発生させた(CuKα)X線を60分照射し、散乱スペクトルを得た。縦軸に散乱強度I、横軸に散乱角を2θプロットし、それぞれの軸を対数表示に変換して2θ=6〜30(deg)付近の散乱ピークあるいはショルダーの有無を確認した。
2θ=27度の熱劣化に起因する結晶性ピークが生じなかった場合を「○」、ピークが見られた場合を「×」とした。
Figure 0006438538
本発明によれば、熱劣化が起こりにくく、低温分解性に優れ、かつ、機械的強度の高いシートを得ることが可能な無機微粒子分散ペースト組成物、無機微粒子分散シート及び無機微粒子分散シートの製造方法を提供することができる。

Claims (6)

  1. 無機微粒子、バインダー用メタアクリル共重合体及び有機溶剤を含有し、
    前記無機微粒子は、リチウム元素を含んだガラス又は酸化リチウム化合物を含有し、
    前記バインダー用メタアクリル共重合体は、3種以上のメタアクリルモノマーから形成され、メタクリル酸nブチルに由来するセグメントを有し、前記メタクリル酸nブチルに由来するセグメントの含有量が10〜60重量%であり、
    前記メタアクリルモノマーは、メタアクリル酸エステル置換基にグリシジル基を有するモノマーを含み、かつ、前記メタアクリル酸エステル置換基にグリシジル基を有するモノマーに由来するセグメントの含有量が1〜10重量%であり、
    前記メタアクリルモノマーは、メタクリル酸エステル置換基に分岐構造を有する置換基を有し、かつ、前記分岐構造を有する置換基の主鎖の炭素数が3以上であるモノマーを含み、前記メタクリル酸エステル置換基に分岐構造を有する置換基を有し、かつ、前記分岐構造を有する置換基の主鎖の炭素数が3以上であるモノマーに由来するセグメントの含有量が40重量%以上であり、
    かつ、ガラス転移温度が10〜35℃、重量平均分子量が10万〜300万である
    ことを特徴とする無機微粒子分散ペースト組成物。
  2. メタアクリルモノマーは、メタクリル酸エステル置換基に炭素数が3以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数が6以下の環状のアルキル基を有し、かつ、ホモポリマーでのガラス転移温度が65℃以上であるモノマーを含み、前記モノマーに由来するセグメントの含有量が15〜50重量%であることを特徴とする請求項1記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
  3. メタアクリルモノマーは、メタアクリル酸エステル置換基に極性基を有するモノマーを含み、かつ、前記メタアクリル酸エステル置換基に極性基を有するモノマーに由来するセグメントの含有量が1〜10重量%であることを特徴とする請求項1たはに記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
  4. メタアクリルモノマーは、その一部又は全部のエステル置換基に、ポリテトラメチレンオキシドのセグメントを有するモノマーがグラフトされていることを特徴とする請求項1、2たは記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
  5. 請求項1、2、3記載の無機微粒子分散ペースト組成物を用いることを特徴とする無機微粒子分散シート。
  6. 請求項1、2、3記載の無機微粒子分散ペースト組成物を支持フィルム上に塗工し、有機溶剤を乾燥させ、シート状に成形することを特徴とする無機微粒子分散シートの製造方法。
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