[式(1)で表されるラクトン化合物]
式(1)で表されるラクトン化合物(バイラクトン化合物)において、Ra、Ra'、Rb、Rb'は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環式基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換若しくは無置換カルバモイル基、シアノ基、アシル基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、又は置換若しくは無置換アミノ基を示す。前記カルボキシル基、硫黄酸基、ヒドロキシル基、メルカプト基は保護基で保護されていてもよい。保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子が挙げられる。炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが複数結合した基が挙げられる。脂肪族炭化水素基として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ビニル、アリル、エチニル、1−プロピニル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜8)程度の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アルキニル基)などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロドデシル、ノルボルニル、アダマンチル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基などの炭素数3〜20(好ましくは3〜15)程度の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基、橋架け炭素環式基等)などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14程度の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基として、例えば、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、4−メチルシクロヘキシル、ノルボルナン−1−イルメチル、ノルボルナン−2−イルメチル、ノルボルネン−1−イルメチル、アダマンタン−1−イルメチル、2−(アダマンタン−1−イル)エチル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−1−イルメチル、2−(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−1−イル)エチル基などが挙げられる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基として、例えば、ベンジル、2−フェニルエチル、1−フェニルエチル、3−フェニルプロピル等のアラルキル基;2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル基などが挙げられる。
これらの炭化水素基は1又は2以上の置換基を有していてもよい。該置換基として、例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)、複素環式基(窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を含む3〜20員程度の複素環式基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、ブトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシ−カルボニル基;シクロヘキシルオキシカルボニル基等のシクロアルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基など)、置換若しくは無置換カルバモイル基(カルバモイル基;メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル基等のモノ又はジ−炭化水素基置換カルバモイル基など)、シアノ基、アシル基(ホルミル、アセチル、プロピオニル基等の脂肪族アシル基;シクロヘキサンカルボニル基等の脂環式アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基;アセトアセチル基など)、ニトロ基、硫黄酸基(スルホン酸基、スルフィン酸基)、硫黄酸エステル基(スルホン酸エステル基、スルフィン酸エステル基)、ヒドロキシル基、置換オキシ基(メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ基等のC1-6アルコキシ基;シクロヘキシルオキシ基等のシクロアルキルオキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基など)、メルカプト基、置換チオ基(メチルチオ、エチルチオ基等のC1-6アルキルチオ基;シクロヘキシルチオ基等のシクロアルキルチオ基;フェニルチオ基等のアリールチオ基;アセチルチオ基等のアシルチオ基など)、置換若しくは無置換アミノ基(アミノ基;メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ基等のモノ又はジC1-6アルキルアミノ基;1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、モルホリノ基等の環状アミノ基など)、これらが複数結合した基などが挙げられる。前記カルボキシル基、硫黄酸基、ヒドロキシル基、メルカプト基は保護基で保護されていてもよい。保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
Ra、Ra'、Rb、Rb'における複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリンなどの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマンなどの縮合環など)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールなどの5員環、4−オキソ−4H−チオピランなどの6員環、ベンゾチオフェンなどの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾールなどの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジンなどの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリンなどの縮合環など)などが挙げられる。これらの複素環式基は、置換基(例えば、前記炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の基)を有していてもよい。
Ra、Ra'、Rb、Rb'における置換オキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、ブトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシ−カルボニル基;シクロヘキシルオキシカルボニル基等のシクロアルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基などが挙げられる。置換若しくは無置換カルバモイル基としては、例えば、カルバモイル基;メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル基等のモノ又はジ−炭化水素基置換カルバモイル基などが挙げられる。アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル基等の脂肪族アシル基(C1-7脂肪族アシル基等);シクロヘキサンカルボニル基等の脂環式アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基;アセトアセチル基などが挙げられる。硫黄酸基として、スルホン酸基、スルフィン酸基が挙げられる。硫黄酸エステル基として、スルホン酸エステル基(スルホン酸C1-4アルキルエステル基等)、スルフィン酸エステル基(スルフィン酸C1-4アルキルエステル基等)が挙げられる。置換オキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ基等のC1-6アルコキシ基;シクロヘキシルオキシ基等のシクロアルキルオキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基(C1-7アシルオキシ基等)などが挙げられる。置換チオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ基等のC1-6アルキルチオ基;シクロヘキシルチオ基等のシクロアルキルチオ基;フェニルチオ基等のアリールチオ基;アセチルチオ基等のアシルチオ基(C1-7アシルチオ基等)などが挙げられる。また、置換若しくは無置換アミノ基としては、例えば、アミノ基;メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ基等のモノ又はジC1-6アルキルアミノ基;1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、モルホリノ基等の環状アミノ基などが例示される。
式(1)において、RaとRb、Ra'とRb'は、それぞれ、互いに結合して、隣接する炭素原子とともに環を形成していてもよい。このような環としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロペンテン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、デカリン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、アダマンタン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは4〜12員、特に5〜8員)程度の非芳香族性炭素環(シクロアルカン環、シクロアルケン環、橋かけ炭素環)などが挙げられる。これらの環は、置換基(例えば、前記炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の基)を有していてもよく、また他の環(非芳香族性環又は芳香族性環)が縮合していてもよい。
好ましいRa、Ra'、Rb、Rb'には、水素原子、置換基(例えば、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基、C1-4アルコキシ−カルボニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等)を有していてもよいC1-12脂肪族炭化水素基(C1-8アルキル基など)、置換基(例えば、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基、C1-4アルコキシ−カルボニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等)を有していてもよい脂環式炭化水素基[C3-15シクロアルキル基、C3-15シクロアルケニル基、橋架け炭素環式基(ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基等)など]、置換基(例えば、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基、C1-4アルコキシ−カルボニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等)を有していてもよい芳香族炭化水素基(C6-14アリール基など)、これらが複数結合した基[例えば、ノルボルナン−1−イルメチル、ノルボルナン−2−イルメチル、ノルボルネン−1−イルメチル、アダマンタン−1−イルメチル、2−(アダマンタン−1−イル)エチル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−1−イルメチル、2−(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−1−イル)エチル基等]などが含まれる。また、RaとRb、Ra'とRb'が互いに結合して隣接する炭素原子と共に3〜15員(特に4〜12員)程度の非芳香族性炭素環(シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等のシクロアルカン環;ノルボルナン環、ノルボルネン環、アダマンタン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環等の橋架け炭素環)を形成するのも好ましい。該非芳香族性炭素環に置換基(例えば、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基、C1-4アルコキシ−カルボニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等)を有しているものも好ましい。
式(1)で表されるラクトン化合物(バイラクトン化合物)の代表的な例として下記の化合物が挙げられる。
[式(2)で表されるラクトン化合物]
式(2)で表されるラクトン化合物(β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン化合物)において、Ra、Ra'、Rb、Rb'、Rcは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環式基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換若しくは無置換カルバモイル基、シアノ基、アシル基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基、又は置換若しくは無置換アミノ基を示す。前記カルボキシル基、硫黄酸基、ヒドロキシル基、メルカプト基は保護基で保護されていてもよい。
前記ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環式基、置換オキシカルボニル基、置換若しくは無置換カルバモイル基、アシル基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、置換オキシ基、置換チオ基、置換若しくは無置換アミノ基は、前記式(1)のRa、Ra'、Rb、Rb'におけるハロゲン原子等と同様のものが挙げられる。
式(2)において、RaとRb、Ra'とRb'は、それぞれ、互いに結合して、隣接する炭素原子とともに環を形成していてもよい。このような環としては、前記式(1)において、RaとRb、Ra'とRb'が結合して形成する環と同様のものが挙げられる。
好ましいRcには、水素原子、ハロゲン原子、C1-4アルキル基、ハロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル基等のC1-4ハロアルキル基など)、C2-4アルケニル基、C2-4アルキニル基、アリール基(フェニル、ナフチル基等)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等のC1-4アルコキシ−カルボニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基など)、置換若しくは無置換カルバモイル基、シアノ基、アシル基(アセチル、プロピオニル、ベンゾイル基等のC1-7アシル基など)、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、ヒドロキシル基、C1-4アルコキシ基、C1-7アシルオキシ基などが含まれる。これらの中でも、特に、C1-4ハロアルキル基、アリール基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、置換若しくは無置換カルバモイル基、シアノ基、アシル基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基などの電子吸引基が好ましい。
式(2)で表されるラクトン化合物(β−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン化合物)の代表的な例として下記の化合物が挙げられる。
[ラクトン化合物の製造]
本発明のラクトン化合物の製造法では、前記式(3)で表されるアセチレンカルボン酸誘導体と前記式(4)で表されるアルコールと酸素とを反応させる。
[式(3)で表されるアセチレンカルボン酸誘導体]
式(3)におけるRcは前記式(2)におけるRcと同様である。Rdは、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよい複素環式基を示す。
Rdにおける置換基を有していてもよい炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環式基としては、Ra等における置換基を有していてもよい炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環式基と同様のものが挙げられる。好ましいRdには、水素原子;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル基等のC1-4アルキル基;ビニル、アリル基等のC2-4アルケニル基;フェニル基等のアリール基などが含まれる。これらの中でも、Rdとして、水素原子、メチル基やエチル基等のC1-4アルキル基が特に好ましい。
式(3)で表されるアセチレンカルボン酸誘導体の代表的な例として、プロピオール酸メチル、プロピオール酸エチル等のプロピオール酸エステル;アセチレンジカルボン酸ジメチル、アセチレンジカルボン酸ジエチル等のアセチレンジカルボン酸ジエステル;3−シアノプロピオール酸メチル等の3−シアノプロピオール酸エステル;3−ニトロプロピオール酸メチル等の3−ニトロプロピオール酸エステル;3−トリフルオロメチルプロピオール酸メチル等の3−トリフルオロメチルプロピオール酸エステル;3−スルホプロピオール酸メチル等の3−スルホプロピオール酸エステル;3−メトキシスルホニルプロピオール酸メチル等の3−アルコキシスルホニルプロピオール酸エステルなどが挙げられる。
[式(4)で表されるアルコール]
式(4)におけるRa、Rbは前記式(1)、式(2)におけるRa、Rbと同様である。式(4)で表されるアルコールには広範囲の第1級又は第2級アルコールが含まれる。代表的な第1級アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ヘキサデカノール、2−ブテン−1−オール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ペンタエリスリトールなどの炭素数1〜30(好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第1級アルコール;シクロペンチルメチルアルコール、シクロヘキシルメチルアルコール、2−シクロヘキシルエチルアルコール、1−アダマンタンメタノール、2−(アダマンタン−1−イル)エタノール、1−ノルボルネンメタノール、1−ノルボルナンメタノール、2−(ノルボルナン−1−イル)エタノール、1−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンメタノール、2−(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−1−イル)エタノールなどの飽和又は不飽和脂環式第1級アルコール;ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、桂皮アルコールなどの芳香族第1級アルコール;2−ヒドロキシメチルピリジンなどの複素環式アルコールが挙げられる。
代表的な第2級アルコールとしては、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−ヒドロキシブタン酸メチル(1−メトキシカルボニル−2−プロパノール)、s−ブチルアルコール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−オクタノール、4−デカノール、2−ヘキサデカノール、2−ペンテン−4−オール、1,2−プロパンジオール、2,3−ブタンジオールや2,3−ペンタンジオールなどのビシナルジオール類などの炭素数3〜30(好ましくは3〜20、さらに好ましくは3〜15)程度の、置換基(例えば、C1-4アルコキシ基、C1-4アルコキシ−カルボニル基など)を有していてもよい飽和又は不飽和脂肪族第2級アルコール;1−シクロペンチルエタノール、1−シクロヘキシルエタノール、α−メチル−1−アダマンタンメタノール、α−メチル−1−ノルボルネンメタノール、α−メチル−1−ノルボルナンメタノール、α−メチル−1−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンメタノールなどの、ヒドロキシル基の結合した炭素原子に脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基、橋架け炭化水素基など)とが結合している第2級アルコール;シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、シクロドデカノール、2−シクロヘキセン−1−オール、2−アダマンタノール、2−ヒドロキシノルボルナン、8−ヒドロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは4〜12員、特に5〜8員)程度の飽和又は不飽和脂環式第2級アルコール(橋かけ環式第2級アルコールを含む);1−フェニルエタノール、1−フェニルプロパノール、1−フェニルメチルエタノール、ジフェニルメタノールなどの芳香族第2級アルコール;1−(2−ピリジル)エタノールなどの複素環式第2級アルコールなどが含まれる。
好ましいアルコールには、第2級アルコール(例えば、2−プロパノール、s−ブチルアルコールなどの置換基を有していてもよい脂肪族第2級アルコール;1−シクロヘキシルエタノール、α−メチル−1−アダマンタンメタノールなどのヒドロキシル基の結合した炭素原子に脂肪族炭化水素基(例えば、C1-4アルキル基、C6-14アリール基など)と非芳香族性炭素環式基(例えば、C3-15シクロアルキル基、C3-15シクロアルケニル基、橋架け炭化水素基など)とが結合している第2級アルコール;シクロペンタノール、シクロヘキサノール、2−アダマンタノールなどの3〜15員程度の脂環式第2級アルコール;1−フェニルエタノールなどの芳香族第2級アルコール)が含まれる。
本発明では2種のアルコールを反応に用いてもよい。この場合、式(1a)、式(2a)で表される化合物において、それぞれ1分子中の2つのRa、2つのRbが互いに異なった化合物が生成しうる。
[酸素]
酸素としては分子状酸素を使用できる。分子状酸素は特に制限されず、純粋な酸素を用いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスで希釈した酸素や空気、希釈空気を使用してもよい。酸素は系内で発生させてもよい。操作性及び安全性、経済性の点から、空気を使用するのが好ましい。酸素の使用量は、基質であるアセチレンカルボン酸誘導体の種類等に応じて適宜選択できるが、通常、アセチレンカルボン酸誘導体1モルに対して、0.5モル以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜100モル、さらに好ましくは2〜50モル程度である。アセチレンカルボン酸誘導体に対して過剰モルの酸素を使用する場合が多い。
[窒素原子含有環状化合物]
本発明の製造法では、前記式(i)で表される骨格を環の構成要素として含む窒素原子含有環状化合物及び/又は金属化合物の存在下で反応を行ってもよい。式(i)中、2つの炭素原子から左方に延びる線は結合手を示す。窒素原子含有環状化合物及び/又は金属化合物を触媒として使用することにより、反応速度や反応の選択性が向上する。窒素原子含有環状化合物、金属化合物の何れか一方のみを用いてもよいが、両者を併用することにより反応速度が大きく促進される。
式(i)において、窒素原子とXとの結合は単結合又は二重結合である。前記窒素原子含有環状化合物は、分子中に、式(i)で表される骨格を複数個有していてもよい。また、この窒素原子含有環状化合物は、前記Xが−OR基であり且つRがヒドロキシル基の保護基である場合、式(i)で表される骨格のうちRを除く部分が複数個、Rを介して結合していてもよい。
式(i)中、Rで示されるヒドロキシル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用のヒドロキシル基の保護基を用いることができる。このような保護基として、例えば、アルキル基(例えば、メチル、t−ブチル基などのC1-4アルキル基など)、アルケニル基(例えば、アリル基など)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基など)、アリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基など)、アラルキル基(例えば、ベンジル、2,6−ジクロロベンジル、3−ブロモベンジル、2−ニトロベンジル、トリフェニルメチル基など);置換メチル基(例えば、メトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基など)、置換エチル基(例えば、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、1−イソプロポキシエチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−メトキシエチル基など)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、1−ヒドロキシアルキル基(例えば、1−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシヘキシル、1−ヒドロキシデシル、1−ヒドロキシヘキサデシル、1−ヒドロキシ−1−フェニルメチル基など)等のヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基など;アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル基などのC1-20脂肪族アシル基等の脂肪族飽和又は不飽和アシル基;アセトアセチル基;シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル基などのシクロアルカンカルボニル基等の脂環式アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などの芳香族アシル基など)、スルホニル基(メタンスルホニル、エタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル、ナフタレンスルホニル基など)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル基など)、無機酸(硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸など)からOH基を除した基、ジアルキルホスフィノチオイル基(例えば、ジメチルホスフィノチオイル基など)、ジアリールホスフィノチオイル基(例えば、ジフェニルホスフィノチオイル基など)、置換シリル基(例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル基など)などが挙げられる。
また、Xが−OR基である場合において、式(i)で表される骨格のうちRを除く部分(N−オキシ環状イミド骨格)が複数個、Rを介して結合する場合、該Rとして、例えば、オキサリル、マロニル、スクシニル、グルタリル、アジポイル、フタロイル、イソフタロイル、テレフタロイル基などのポリカルボン酸アシル基;カルボニル基;メチレン、エチリデン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、ベンジリデン基などの多価の炭化水素基(特に、2つのヒドロキシル基とアセタール結合を形成する基)などが挙げられる。
好ましいRには、例えば、水素原子;ヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール基を形成可能な基;カルボン酸、スルホン酸、炭酸、カルバミン酸、硫酸、リン酸、ホウ酸などの酸からOH基を除した基(アシル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基等)などの加水分解により脱離可能な加水分解性保護基などが含まれる。
前記窒素原子含有環状化合物には、例えば、式(I)で表されるN−置換環状イミド骨格を有する環状イミド系化合物が含まれる。前記環状イミド系化合物は、分子中に、式(I)で表されるN−置換環状イミド骨格を複数個有していてもよい。また、この環状イミド系化合物は、前記Xが−OR基であり且つRがヒドロキシル基の保護基である場合、N−置換環状イミド骨格のうちRを除く部分(N−オキシ環状イミド骨格)が複数個、Rを介して結合していてもよい。
式(I)において、nは0又は1を示す。すなわち、式(I)は、nが0の場合は5員のN−置換環状イミド骨格を表し、nが1の場合は6員のN−置換環状イミド骨格を表す。
前記環状イミド系化合物の代表的な例として、下記式(6)
[式中、nは0又は1を示す。Xは酸素原子又は−OR基(Rは水素原子又はヒドロキシル基の保護基を示す)を示す。R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を示し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のうち少なくとも2つが互いに結合して、環状イミド骨格を構成する炭素原子又は炭素−炭素結合と共に、二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。前記R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、又はR
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のうち少なくとも2つが互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、下記式(a)
(式中、n、Xは前記に同じ)
で表されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個以上形成されていてもよい]
で表される化合物が挙げられる。
式(6)で表されるイミド化合物において、置換基R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素原子が含まれる。アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル基などの炭素数1〜30程度(特に、炭素数1〜20程度)の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含まれる。
アリール基には、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル基などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが含まれる。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、オクタデシルオキシ基などの炭素数1〜30程度(特に、炭素数1〜20程度)のアルコキシ基が含まれる。
置換オキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニル、ヘキサデシルオキシカルボニル基などのC1-30アルコキシ−カルボニル基(特に、C1-20アルコキシ−カルボニル基);シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニル基(特に、3〜20員シクロアルキルオキシカルボニル基);フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル基などのアリールオキシカルボニル基(特に、C6-20アリールオキシ−カルボニル基);ベンジルオキシカルボニル基などのアラルキルオキシカルボニル基(特に、C7-21アラルキルオキシ−カルボニル基)などが挙げられる。
アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル基などのC1-30脂肪族アシル基(特に、C1-20脂肪族アシル基)等の脂肪族飽和又は不飽和アシル基;アセトアセチル基;シクロペンタンカルボニル、シクロヘキサンカルボニル基などのシクロアルカンカルボニル基等の脂環式アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などの芳香族アシル基などが例示できる。
アシルオキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ、バレリルオキシ、ピバロイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、オクタノイルオキシ、デカノイルオキシ、ラウロイルオキシ、ミリストイルオキシ、パルミトイルオキシ、ステアロイルオキシ基などのC1-30脂肪族アシルオキシ基(特に、C1-20脂肪族アシルオキシ基)等の脂肪族飽和又は不飽和アシルオキシ基;アセトアセチルオキシ基;シクロペンタンカルボニルオキシ、シクロヘキサンカルボニルオキシ基などのシクロアルカンカルボニルオキシ基等の脂環式アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ基などの芳香族アシルオキシ基などが例示できる。
前記置換基R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なっていてもよい。また、前記式(6)において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して、環状イミド骨格を構成する炭素原子又は炭素−炭素結合と共に、二重結合、または芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭化水素環である場合が多い。このような環には、例えば、非芳香族性脂環式環(シクロヘキサン環などの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族環(縮合環を含む)が含まれる。前記環は、芳香族環で構成される場合が多い。前記環は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
前記R1、R2、R3、R4、R5、R6、又はR1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、前記式(a)で表されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個以上形成されていてもよい。例えば、R1、R2、R3、R4、R5又はR6が炭素数2以上のアルキル基である場合、このアルキル基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。また、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して、環状イミド骨格を構成する炭素−炭素結合と共に二重結合を形成する場合、該二重結合を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。さらに、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも2つが互いに結合して、環状イミド骨格を構成する炭素原子又は炭素−炭素結合と共に、芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成する場合、該環を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。
好ましいイミド化合物には、下記式で表される化合物が含まれる。
(式中、R
11〜R
16は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を示す。R
17〜R
26は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。R
17〜R
26は、隣接する基同士が結合して、式(6c)、(6d)、(6e)、(6f)、(6h)又は(6i)中に示される5員又は6員のN−置換環状イミド骨格を形成していてもよい。式(6f)中、Aはメチレン基又は酸素原子を示す。Xは前記に同じ)
置換基R11〜R16におけるハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基としては、前記R1〜R6における対応する基と同様のものが例示される。
置換基R17〜R26において、アルキル基には、前記例示のアルキル基と同様のアルキル基、特に炭素数1〜6程度のアルキル基が含まれ、ハロアルキル基には、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜4程度のハロアルキル基、アルコキシ基には、前記と同様のアルコキシ基、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基、置換オキシカルボニル基には、前記と同様の置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)が含まれる。また、アシル基としては前記と同様のアシル基(脂肪族飽和又は不飽和アシル基、アセトアセチル基、脂環式アシル基、芳香族アシル基等)などが例示され、アシルオキシ基としては前記と同様のアシルオキシ基(脂肪族飽和又は不飽和アシルオキシ基、アセトアセチルオキシ基、脂環式アシルオキシ基、芳香族アシルオキシ基等)などが例示される。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子が例示できる。置換基R17〜R26は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。
好ましいイミド化合物のうち5員のN−置換環状イミド骨格を有する化合物の代表的な例として、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α−メチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,α−ジメチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ジメチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,α,β,β−テトラメチルコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、α,β−ジアセトキシ−N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ビス(プロピオニルオキシ)コハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ビス(バレリルオキシ)コハク酸イミド、N−ヒドロキシ−α,β−ビス(ラウロイルオキシ)コハク酸イミド、α,β−ビス(ベンゾイルオキシ)−N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシ−4−メトキシカルボニルフタル酸イミド、4−クロロ−N−ヒドロキシフタル酸イミド、4−エトキシカルボニル−N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4−ペンチルオキシカルボニルフタル酸イミド、4−ドデシルオキシ−N−ヒドロキシカルボニルフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4−フェノキシカルボニルフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4,5−ビス(メトキシカルボニル)フタル酸イミド、4,5−ビス(エトキシカルボニル)−N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4,5−ビス(ペンチルオキシカルボニル)フタル酸イミド、4,5−ビス(ドデシルオキシカルボニル)−N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシ−4,5−ビス(フェノキシカルボニル)フタル酸イミドなどの式(6)におけるXが−OR基で且つRが水素原子である化合物;これらの化合物に対応する、Rがアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基である化合物;N−メトキシメチルオキシフタル酸イミド、N−(2−メトキシエトキシメチルオキシ)フタル酸イミド、N−テトラヒドロピラニルオキシフタル酸イミドなどの式(6)におけるXが−OR基で且つRがヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール結合を形成可能な基である化合物;N−メタンスルホニルオキシフタル酸イミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)フタル酸イミドなどの式(6)におけるXが−OR基で且つRがスルホニル基である化合物;N−ヒドロキシフタル酸イミドの硫酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステル又はホウ酸エステルなどの式(6)におけるXが−OR基で且つRが無機酸からOH基を除した基である化合物などが挙げられる。
好ましいイミド化合物のうち6員のN−置換環状イミド骨格を有する化合物の代表的な例として、例えば、N−ヒドロキシグルタルイミド、N−ヒドロキシ−α,α−ジメチルグルタルイミド、N−ヒドロキシ−β,β−ジメチルグルタルイミド、N−ヒドロキシ−1,8−デカリンジカルボン酸イミド、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−デカリンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド(N−ヒドロキシナフタル酸イミド)、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(6)におけるXが−OR基で且つRが水素原子である化合物;これらの化合物に対応する、Rがアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基である化合物;N−メトキシメチルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ビス(メトキシメチルオキシ)−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(6)におけるXが−OR基で且つRがヒドロキシル基とアセタール又はヘミアセタール結合を形成可能な基である化合物;N−メタンスルホニルオキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ビス(メタンスルホニルオキシ)−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなどの式(6)におけるXが−OR基で且つRがスルホニル基である化合物;N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド又はN,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドの硫酸エステル、硝酸エステル、リン酸エステル又はホウ酸エステルなどの式(6)におけるXが−OR基で且つRが無機酸からOH基を除した基である化合物などが挙げられる。
前記窒素原子含有環状化合物には、上記環状イミド系化合物の他に、前記式(II)で表される環状アシルウレア骨格[−C(=O)−N−C(=O)−N−]を有する環状アシルウレア系化合物が含まれる。前記環状アシルウレア系化合物は、分子中に、式(II)で表される環状アシルウレア骨格を複数個有していてもよい。また、この環状アシルウレア系化合物は、式(II)で表される環状アシルウレア骨格のうちRを除く部分(N−オキシ環状アシルウレア骨格)が複数個、Rを介して結合していてもよい。前記環状アシルウレア骨格を構成する原子G、及び該Gに結合している窒素原子は各種置換基を有していてもよく、また、前記環状アシルウレア骨格には非芳香族性又は芳香族性環が縮合していてもよい。さらに、前記環状アシルウレア骨格は環に二重結合を有していてもよい。
式(II)で表される環状アシルウレア骨格には、下記の式(IIa)で表される3−ヒドロキシ(又は3−置換オキシ)ヒダントイン骨格、式(IIb)で表される4−ヒドロキシ(又は4−置換オキシ)−1,2,4−トリアゾリジン−3,5−ジオン骨格[4−ヒドロキシ(又は4−置換オキシ)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン骨格を含む]、式(IIc)で表されるヒドロ−3−ヒドロキシ(又は3−置換オキシ)−1,3−ジアジン−2,4−ジオン骨格[ヘキサヒドロ−1−ヒドロキシ(又は1−置換オキシ)−1,3−ジアジン−2,4,6−トリオン骨格、ヘキサヒドロ−1,3−ジヒドロキシ(又は1,3−ビス置換オキシ)−1,3−ジアジン−2,4,6−トリオン骨格、3−ヒドロキシ(又は3−置換オキシ)ウラシル骨格を含む]、式(IId)で表されるヒドロ−4−ヒドロキシ(又は4−置換オキシ)−1,2,4−トリアジン−3,5−ジオン骨格、式(IIe)で表されるヒドロ−1−ヒドロキシ(又は1−置換オキシ)−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン骨格、及び式(IIf)で表されるヒドロ−5−ヒドロキシ(又は5−置換オキシ)−1,2,3,5−テトラジン−4,6−ジオン骨格が含まれる。
(式中、Rは前記に同じ)
前記環状アシルウレア系化合物の代表的な例として、下記式(7)
(式中、R
7、R
10は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、又はアシル基を示し、R
8、R
9は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基又はアシルオキシ基を示す。R
7、R
8、R
9、R
10のうち少なくとも2つが互いに結合して、式中の環を構成する原子とともに二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよく、R
8とR
9は一体となってオキソ基を形成してもよい。Rは前記に同じ)
で表されるヒドロ−1−ヒドロキシ(又は1−置換オキシ)−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン化合物が挙げられる。
式(7)中、R7、R10におけるアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基としては、上記R1〜R6におけるアルキル基等と同様のものが例示される。ヒドロキシル基の保護基としては、前記のものが挙げられる。
カルボキシル基の保護基としては、有機合成の分野で慣用の保護基、例えば、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシなどのC1-6アルコキシ基など)、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基など)、トリアルキルシリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基など)、置換基を有していてもよいアミノ基(例えば、アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基などのモノ又はジC1-6アルキルアミノ基など)などが挙げられる。
R8、R9におけるハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基としては、上記R1〜R6におけるアルキル基等と同様のものが例示される。
式(7)において、R7、R8、R9、R10のうち少なくとも2つが互いに結合して、式中に示される環を構成する原子(炭素原子及び/又は窒素原子)とともに二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよく、R8、R9は一体となってオキソ基を形成してもよい。好ましい芳香族性又は非芳香族性環としては前記と同様のものが例示される。
好ましい環状アシルウレア系化合物の代表的な例として、例えば、3−ヒドロキシヒダントイン、1,3−ジヒドロキシヒダントイン、3−ヒドロキシ−1−メチルヒダントイン、3−アセトキシヒダントイン、1,3−ジアセトキシヒダントイン、3−アセトキシ−1−メチルヒダントイン、3−ベンゾイルオキシヒダントインなどの式(IIa)で表される骨格を有する化合物;4−ヒドロキシ−1,2,4−トリアゾリジン−3,5−ジオン、4−ヒドロキシ−1,2−ジメチル−1,2,4−トリアゾリジン−3,5−ジオン、4−アセトキシ−1,2,4−トリアゾリジン−3,5−ジオン、4−アセトキシ−1,2−ジメチル−1,2,4−トリアゾリジン−3,5−ジオン、4−ヒドロキシ−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン、4−アセトキシ−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオンなどの式(IIb)で表される骨格を有する化合物;ヘキサヒドロ−3−ヒドロキシ−1,3−ジアジン−2,4−ジオン、ヘキサヒドロ−1,3−ジヒドロキシ−1,3−ジアジン−2,4−ジオン、ヘキサヒドロ−3−ヒドロキシ−1−メチル−1,3−ジアジン−2,4−ジオン、3−アセトキシ−ヘキサヒドロ−1,3−ジアジン−2,4−ジオン、1,3−ジアセトキシ−ヘキサヒドロ−1,3−ジアジン−2,4−ジオン、3−アセトキシ−ヘキサヒドロ−1−メチル−1,3−ジアジン−2,4−ジオン、、ヘキサヒドロ−1−ヒドロキシ−1,3−ジアジン−2,4,6−トリオン、1−アセトキシ−ヘキサヒドロ−1,3−ジアジン−2,4,6−トリオン、ヘキサヒドロ−1,3−ジヒドロキシ−1,3−ジアジン−2,4,6−トリオン、1,3−ジアセトキシ−ヘキサヒドロ−1,3−ジアジン−2,4,6−トリオン、3−ヒドロキシウラシル、3−アセトキシウラシルなどの式(IIc)で表される骨格を有する化合物;ヘキサヒドロ−4−ヒドロキシ−1,2,4−トリアジン−3,5−ジオン、ヘキサヒドロ−4−ヒドロキシ−1,2−ジメチル−1,2,4−トリアジン−3,5−ジオン、4−アセトキシ−ヘキサヒドロ−1,2,4−トリアジン−3,5−ジオン、4−アセトキシ−ヘキサヒドロ−1,2−ジメチル−1,2,4−トリアジン−3,5−ジオンなどの式(IId)で表される骨格を有する化合物;ヘキサヒドロ−1,3,5−トリヒドロキシ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、1,3,5−トリアセトキシ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(メトキシメチルオキシ)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、ヘキサヒドロ−1−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン、ヘキサヒドロ−1−ヒドロキシ−3,5−ジメチル−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン、1−アセトキシ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオン、1−アセトキシ−ヘキサヒドロ−3,5−ジメチル−1,3,5−トリアジン−2,6−ジオンなどの式(IIe)で表される骨格を有する化合物[例えば、式(7)で表される化合物];ヘキサヒドロ−5−ヒドロキシ−1,2,3,5−テトラジン−4,6−ジオン、ヘキサヒドロ−5−ヒドロキシ−1,2,3−トリメチル−1,2,3,5−テトラジン−4,6−ジオン、5−アセトキシ−ヘキサヒドロ−1,2,3,5−テトラジン−4,6−ジオン、5−アセトキシ−ヘキサヒドロ−1,2,3−トリメチル−1,2,3,5−テトラジン−4,6−ジオンなどの式(IIf)で表される骨格を有する化合物が挙げられる。
前記窒素原子含有環状化合物のうち、Xが−OR基で且つRが水素原子である化合物(N−ヒドロキシ環状化合物)は、公知の方法に準じて、又は公知の方法の組み合わせにより製造することができる。また、前記窒素原子含有環状化合物のうち、Xが−OR基で且つRがヒドロキシル基の保護基である化合物は、対応するRが水素原子である化合物(N−ヒドロキシ環状化合物)に、慣用の保護基導入反応を利用して、所望の保護基を導入することにより調製することができる。
具体的には、前記環状イミド系化合物のうち、Xが−OR基で且つRが水素原子である化合物(N−ヒドロキシ環状イミド化合物)は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンとを反応させ、酸無水物基の開環及び閉環を経てイミド化する方法により得ることができる。例えば、N−アセトキシフタル酸イミドは、N−ヒドロキシフタル酸イミドに無水酢酸を反応させたり、塩基の存在下でアセチルハライドを反応させることにより得ることができる。また、これ以外の方法で製造することも可能である。
特に好ましいイミド化合物は、脂肪族多価カルボン酸無水物(環状無水物)又は芳香族多価カルボン酸無水物(環状無水物)から誘導されるN−ヒドロキシイミド化合物(例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド、N−ヒドロキシグルタルイミド、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド、N,N′−ジヒドロキシ−1,8;4,5−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドなど);及び該N−ヒドロキシイミド化合物のヒドロキシル基に保護基を導入することにより得られる化合物などが含まれる。
前記環状アシルウレア系化合物のうち、例えば、1,3,5−トリアセトキシ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン(=1,3,5−トリアセトキシイソシアヌル酸)は、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリヒドロキシ−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン(=1,3,5−トリヒドロキシイソシアヌル酸)に無水酢酸を反応させたり、塩基の存在下でアセチルハライドを反応させることにより得ることができる。
式(i)で表される骨格を環の構成要素に含む窒素原子含有環状化合物は、反応において、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。例えば、式(I)で表される環状イミド骨格を有する環状イミド系化合物と、式(II)で表される環状アシルウレア骨格を有する環状アシルウレア系化合物などとを併用することもできる。窒素原子含有環状化合物触媒は反応系内で生成させてもよい。窒素原子含有環状化合物触媒は担体に担持した形態で用いてもよい。担体としては、活性炭、ゼオライト、シリカ、シリカ−アルミナ、ベントナイトなどの多孔質担体を用いる場合が多い。窒素原子含有環状化合物の担体への担持量は、担体100重量部に対して、例えば0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部程度である。
窒素原子含有環状化合物触媒の使用量は、広い範囲で選択でき、例えば、アセチレンカルボン酸誘導体1モルに対して0.0001〜1モル、好ましくは0.001〜0.5モル、さらに好ましくは0.01〜0.3モル程度である。
[金属化合物]
触媒として用いる金属化合物を構成する金属元素としては、特に限定されないが、周期表2〜15族の金属元素を用いる場合が多い。なお、本明細書では、ホウ素Bも金属元素に含まれるものとする。好ましい金属元素には、遷移金属元素(周期表3〜12族元素)が含まれる。なかでも、Mn、Co、Zr、Ce、Fe、V、Moなどが好ましく、特に、Mn、Coが好ましい。金属元素の原子価は特に制限されず、例えば0〜6価程度である。
金属化合物としては、前記金属元素の単体、水酸化物、酸化物(複合酸化物を含む)、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、オキソ酸塩(例えば、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩など)、イソポリ酸の塩、ヘテロポリ酸の塩などの無機化合物;有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、青酸塩、ナフテン酸塩、ステアリン酸塩など)、錯体などの有機化合物が挙げられる。前記錯体を構成する配位子としては、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合物、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが挙げられる。
金属化合物の具体例としては、例えば、コバルト化合物を例にとると、水酸化コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルトなどの無機化合物;酢酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルトなどの有機酸塩;コバルトアセチルアセトナトなどの錯体等の2価又は3価のコバルト化合物などが挙げられる。また、バナジウム化合物の例としては、水酸化バナジウム、酸化バナジウム、塩化バナジウム、塩化バナジル、硫酸バナジウム、硫酸バナジル、バナジン酸ナトリウムなどの無機化合物;バナジウムアセチルアセトナト、バナジルアセチルアセトナトなどの錯体等の2〜5価のバナジウム化合物などが挙げられる。他の金属元素の化合物としては、前記コバルト又はバナジウム化合物に対応する化合物などが例示される。金属化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。特に、コバルト化合物とマンガン化合物とを組み合わせると反応速度が著しく向上することが多い。また、価数の異なる複数の金属化合物(例えば、2価の金属化合物と3価の金属化合物)を組み合わせて用いるのも好ましい。
金属化合物の総使用量は、例えば、アセチレンカルボン酸誘導体1モルに対して0.000001〜0.1モル、好ましくは0.0005〜0.05モル程度である。
本発明では、触媒としてルイス酸を用いることもできる。ルイス酸を用いることにより、反応速度や反応の選択性が向上する場合がある。ルイス酸としては、例えば、ZnCl2、AgBF4、FeBr3、FeCl3、AlBr3、AlCl3、PF5、PF3、SbCl5などが挙げられる。ルイス酸の使用量は、例えば、アセチレンカルボン酸誘導体1モルに対して、0.001〜1モル、好ましくは0.05〜0.3モル程度である。
本発明では、また、触媒として、少なくとも1つの有機基が結合した周期表15族又は16族元素を含む多原子陽イオン又は多原子陰イオンとカウンターイオンとで構成された有機塩を用いることもできる。触媒として前記有機塩を用いることにより、反応速度や反応の選択性を向上させることができる。周期表15族元素には、N、P、As、Sb、Biが含まれる。周期表16族元素には、O、S、Se、Teなどが含まれる。好ましい元素としては、N、P、As、Sb、Sが挙げられ、特に、N、P、Sなどが好ましい。前記有機塩の代表的な例として、テトラブチルアンモニウムクロリド等の有機アンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムクロリド等の有機ホスホニウム塩、トリエチルスルホニウムイオジド等の有機スルホニウム塩などの有機オニウム塩が挙げられる。
本発明では、また、触媒として、強酸(例えば、pKa2(25℃)以下の化合物)を使用することもできる。好ましい強酸には、例えば、ハロゲン化水素、ハロゲン化水素酸、硫酸、ヘテロポリ酸などが含まれる。
本発明では、さらに、触媒として、電子吸引基が結合したカルボニル基を有する化合物を用いることもできる。電子吸引基が結合したカルボニル基を有する化合物の代表的な例として、ヘキサフルオロアセトン、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロフェニルケトン、ペンタフルオロフェニルケトン、安息香酸などが挙げられる。この化合物の使用量は、反応成分(基質)1モル(仕込み基準)に対して、例えば0.0001〜3モル程度である。
また、本発明では、系内に、ラジカル発生剤やラジカル反応促進剤を存在させてもよい。このような成分として、例えば、ハロゲン(塩素、臭素など)、過酸(過酢酸、m−クロロ過安息香酸など)、過酸化物(過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)等のヒドロペルオキシドなど)、硝酸又は亜硝酸若しくはそれらの塩、二酸化窒素、ベンズアルデヒド等のアルデヒドなどが挙げられる。これらの成分を系内に存在させると、反応が促進される場合がある。
[反応]
反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。溶媒としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸などの有機酸(特に、脂肪族飽和カルボン酸);アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類;クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼン、ニトロメタンなどのニトロ化合物;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;これらの混合溶媒などが挙げられる。溶媒としては、酢酸、プロピオン酸などの有機酸;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;トリフルオロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;酢酸エチルなどのエステル類などを用いる場合が多い。
反応温度は、原料として用いるアセチレンカルボン酸誘導体やアルコールの種類等に応じて適宜選択でき、例えば20〜200℃、好ましくは30〜150℃、さらに好ましくは40〜100℃程度である。反応は、常圧又は加圧下で行うことができる。加圧下で反応させる場合には、通常、0.1〜10MPa、好ましくは0.2〜5MPa程度である。反応時間は、反応温度及び反応圧力に応じて、例えば10分〜48時間、好ましくは1〜24時間程度の範囲から選択できる。反応は、酸素の存在下又は酸素の流通下、回分式、半回分式、連続式等の慣用の方式で行うことができる。
本発明の方法では、反応により、用いた原料に対応する前記式(5)、(2a)及び(1a)から選択された少なくとも1種のラクトン化合物が生成する。この反応は下記反応スキームに従って進行するものと考えられる。系内で生成した式(4)で表されるアルコールに対応するα−ヒドロキシ炭素ラジカルが、式(3)で表されるアセチレンカルボン酸誘導体に付加して対応する式(8)で表されるアクリル酸誘導体が生成し、このアクリル酸誘導体が環化して式(5)で表されるγ−ブチロラクトン化合物が生成し、該γ−ブチロラクトン化合物にさらに式(4)で表されるアルコールと酸素とが反応して式(2a)で表されるβ−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン化合物が生成する。この時、R
cがカルボキシル基又は置換オキシカルボニル基(例えば、C
1-4アルコキシ−カルボニル基、アリールオキシカルボニル基等)の場合には、環化が起こり、式(1a)で表されるバイラクトン化合物が生成する。
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段やこれらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
アセチレンジカルボン酸ジメチル1ミリモル、及び2−プロパノール20ミリモルの混合物を、酸素雰囲気下(1気圧=0.1MPa)、75℃で15時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、下記式(9)で表される化合物が収率43.2%、下記式(10)で表される化合物が収率18.9%で生成していた。アセチレンジカルボン酸ジメチルの転化率は99%以上であった。
[式(9)で表される化合物のスペクトルデータ]
1H-NMR(CDCl
3) δ:1.47(s, 6H), 3.92(s, 6H), 6.08(s, 1H)
[式(10)で表される化合物のスペクトルデータ]
13C-NMR(DMSO-d6) δ:23.6, 24.6, 24.6, 30.1, 56.5, 82.1, 83.0, 85.9, 170.4, 172.7
[式(10)で表される化合物の元素分析]
C(55.91)、H(6.42)
実施例2
さらにN−ヒドロキシフタルイミドを0.1ミリモル用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、前記式(9)で表される化合物が収率35.5%、前記式(10)で表される化合物が収率18.5%、下記式(11)で表される化合物が収率0.2%で生成していた。アセチレンジカルボン酸ジメチルの転化率は99%以上であった。
[式(11)で表される化合物のスペクトルデータ]
13C-NMR(CDCl
3) δ:17.5, 27.6, 51.0, 60.0, 66.4, 83.7, 87.1, 176.0
実施例3
アセチレンジカルボン酸ジメチル1ミリモル、2−プロパノール20ミリモル、コバルトアセチルアセトナト(II)0.005ミリモル、コバルトアセチルアセトナト(III)0.01ミリモル、及び無水塩化亜鉛0.05ミリモルの混合物を、酸素雰囲気下(1気圧=0.1MPa)、75℃で15時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、前記式(9)で表される化合物が収率33.7%、前記式(10)で表される化合物が収率42.8%で生成していた。アセチレンジカルボン酸ジメチルの転化率は99%以上であった。
実施例4
さらにN−ヒドロキシフタルイミドを0.09ミリモル用いた以外は実施例3と同様の操作を行った。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、前記式(9)で表される化合物が収率43.1%、前記式(10)で表される化合物が収率43.4%で生成していた。アセチレンジカルボン酸ジメチルの転化率は99%以上であった。
実施例5
アセチレンジカルボン酸ジメチル1ミリモル、2−プロパノール20ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.1ミリモル、コバルトアセチルアセトナト(II)0.005ミリモル、及びコバルトアセチルアセトナト(III)0.01ミリモルの混合物を、酸素雰囲気下(1気圧=0.1MPa)、75℃で10分撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、前記式(9)で表される化合物が収率33.2%、前記式(10)で表される化合物が収率1.8%、前記式(11)で表される化合物が収率10.2%、下記式(12)で表される化合物が収率25.5%で生成していた。アセチレンジカルボン酸ジメチルの転化率は85.7%であった。
[式(12)で表される化合物のスペクトルデータ]
1H-NMR(CDCl
3) δ:1.62-1.67(m, 6H), 3.89(s, 3H), 6.58(s, 1H)
実施例6
反応時間を1時間にした以外は実施例5と同様の操作を行った。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、前記式(9)で表される化合物が収率39.5%、前記式(10)で表される化合物が収率9.7%、前記式(11)で表される化合物が収率12.6%、前記式(12)で表される化合物が収率3.1%で生成していた。アセチレンジカルボン酸ジメチルの転化率は99.3%であった。
実施例7
反応時間を15時間にした以外は実施例5と同様の操作を行った。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、前記式(9)で表される化合物が収率42.3%、前記式(10)で表される化合物が収率39.5%で生成していた。式(11)及び(12)で表される化合物は検出されなかった。アセチレンジカルボン酸ジメチルの転化率は99%以上であった。
実施例8
反応時間を24時間にした以外は実施例5と同様の操作を行った。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、前記式(9)で表される化合物が収率44.1%、前記式(10)で表される化合物が収率40.9%で生成していた。式(11)及び(12)で表される化合物は検出されなかった。アセチレンジカルボン酸ジメチルの転化率は99%以上であった。
実施例9
アセチレンジカルボン酸ジメチル1ミリモル、2−プロパノール20ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.1ミリモル、コバルトアセチルアセトナト(II)0.005ミリモル、コバルトアセチルアセトナト(III)0.01ミリモル、及び酢酸エチル0.1mlの混合物を、酸素雰囲気下(1気圧=0.1MPa)、75℃で15時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、前記式(9)で表される化合物が収率43.0%、前記式(10)で表される化合物が収率38.6%で生成していた。アセチレンジカルボン酸ジメチルの転化率は99%以上であった。
実施例10
さらに無水塩化亜鉛を0.05ミリモル用いた以外は実施例9と同様の操作を行った。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、前記式(9)で表される化合物が収率43.3%、前記式(10)で表される化合物が収率45.1%で生成していた。アセチレンジカルボン酸ジメチルの転化率は99%以上であった。
実施例11
プロピオール酸メチル1ミリモル、2−プロパノール20ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.1ミリモル、コバルトアセチルアセトナト(II)0.005ミリモル、及びコバルトアセチルアセトナト(III)0.01ミリモルの混合物を、酸素雰囲気下(1気圧=0.1MPa)、75℃で15時間撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、下記式(13)で表される化合物が収率43.1%、下記式(14)で表される化合物が収率24.4%で生成していた。プロピオール酸メチルの転化率は98.7%であった。
実施例12
さらにベンズアルデヒドを0.2ミリモル用いた以外は実施例11と同様の操作を行った。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、前記式(13)で表される化合物が収率49.9%、前記式(14)で表される化合物が収率29.2%で生成していた。プロピオール酸メチルの転化率は99%以上であった。
実施例13
アセチレンジカルボン酸ジメチル1ミリモル、シクロヘキサノール20ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.1ミリモル、コバルトアセチルアセトナト(II)0.005ミリモル、及びコバルトアセチルアセトナト(III)0.01ミリモルの混合物を、酸素雰囲気下(1気圧=0.1MPa)、75℃で10分撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、下記式(15)で表される化合物が収率22.2%、下記式(16)で表される化合物が収率24%で生成していた。
[式(15)で表される化合物のスペクトルデータ]
1H-NMR(CDCl
3) δ:1.4-1.6(m, 20H), 2.0(br, 1H), 2.98(s, 1H)
GC-MS: 294, 278
[式(16)で表される化合物のスペクトルデータ]
1H-NMR(CDCl
3) δ:1.4-1.6(m, 20H), 2.1(br, 2H), 3.01(s, 1H), 3.60(s, 3H)
GC-MS: 326, 295, 278
実施例14
アセチレンジカルボン酸ジメチル1ミリモル、シクロペンタノール20ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.1ミリモル、コバルトアセチルアセトナト(II)0.005ミリモル、及びコバルトアセチルアセトナト(III)0.01ミリモルの混合物を、酸素雰囲気下(1気圧=0.1MPa)、75℃で10分撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、下記式(17)で表される化合物が収率25%、下記式(18)で表される化合物が収率21%で生成していた。
[式(17)で表される化合物のスペクトルデータ]
1H-NMR(CDCl
3) δ:1.5-1.7(m, 16H), 2.0(br, 1H), 2.99(s, 1H)
GC-MS: 266, 249
[式(18)で表される化合物のスペクトルデータ]
1H-NMR(CDCl
3) δ:1.5-1.6(m, 16H), 2.1(br, 2H), 3.10(s, 1H), 3.7(s, 3H)
GC-MS: 298, 267, 250
実施例15
アセチレンジカルボン酸ジメチル1ミリモル、ノルボルネオール20ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.1ミリモル、コバルトアセチルアセトナト(II)0.005ミリモル、及びコバルトアセチルアセトナト(III)0.01ミリモルの混合物を、酸素雰囲気下(1気圧=0.1MPa)、75℃で10分撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、下記式(19)で表される化合物が収率12%、下記式(20)で表される化合物が収率10%で生成していた。
[式(19)で表される化合物のスペクトルデータ]
1H-NMR(CDCl
3) δ:1.4-2.0(m, 20H), 2.2(br, 1H), 3.0(s, 1H)
GC-MS: 318, 301
[式(20)で表される化合物のスペクトルデータ]
1H-NMR(CDCl
3) δ:1.4-1.5(m, 20H), 2.0(br, 2H), 3.1(s, 1H), 3.72(s, 3H)
GC-MS: 350, 319
実施例16
アセチレンジカルボン酸ジメチル1ミリモル、水素化ジシクロペンタジエノール20ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド0.1ミリモル、コバルトアセチルアセトナト(II)0.005ミリモル、及びコバルトアセチルアセトナト(III)0.01ミリモルの混合物を、酸素雰囲気下(1気圧=0.1MPa)、75℃で10分撹拌した。反応液中の生成物をガスクロマトグラフィー分析により調べたところ、下記式(21)で表される化合物が収率13%、下記式(22)で表される化合物が収率9%で生成していた。
[式(21)で表される化合物のスペクトルデータ]
1H-NMR(CDCl
3) δ:1.4-2.0(m, 28H), 2.1(br, 1H), 2.98(s, 1H)
GC-MS: 398, 381
[式(22)で表される化合物のスペクトルデータ]
1H-NMR(CDCl
3) δ:1.4-1.51(m, 28H), 2.0(br, 2H), 3.08(s, 1H), 3.67(s, 3H)
GC-MS: 430, 413