JP2006240283A - 弾性樹脂版 - Google Patents

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Abstract

【課題】強度的に強くて劣化寿命が長く、かつ、マージナル現象も発生せず、周縁部分においても中央部分と等しく均一な膜厚の配向膜等を形成することのできる弾性樹脂版を提供する。
【解決手段】印刷部1aに所定の印刷パターンで設けた塗工液を被剛性平板状印刷体に転写し印刷するために用いるフレキソ印刷用の弾性樹脂版であり、上記印刷パターンに対応する上記印刷部1aの部分に、上記塗工液を収容するための多数の凹部2がそれぞれ非連続で形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、フレキソ印刷に用いられ、液晶表示素子用基板の基板表面等に均一な膜厚の配向膜等を形成することのできる弾性樹脂版に関するものである。
従来から、印刷用凸部の表面に多数の微小凸部が均一に分布形成された樹脂凸版が、フレキソ印刷等の凸版印刷方式の種々の印刷に用いられている。特に、近年では、液晶表示装置を作製する際に、その液晶表示素子用基板の基板表面に、配向層を形成する配向膜を印刷により形成するため、樹脂凸版を用いたフレキソ印刷が多用されている。具体的には、ガラス基板等の液晶表示素子用基板の電極形成面(基板表面)に、ポリイミド樹脂からなる配向膜をフレキソ印刷により形成するために、光硬化性樹脂を用いて作製した樹脂凸版が汎用されている。そして、上記樹脂凸版を用いて、ポリイミド樹脂からなる配向膜が印刷形成されたガラス基板が、上記両ポリイミド樹脂材配向膜同士が対向するようにして積層され、ポリイミド樹脂材配向膜の間隙に液晶が注入されて液晶表示装置が作製されている。
上記配向膜は、例えば、つぎのような工程を経由することにより印刷形成される。すなわち、まず、印刷用凸部の表面全体に均一な量の塗工液を保持するための溝部が形成された樹脂凸版を準備する。上記溝部は、上記印刷用凸部の表面に微小凸部をそれぞれ均一な大きさおよび分布密度で突設することにより、これら各微小凸部間に形成されたものである。つぎに、印刷用凸部の表面全体にポリイミド樹脂の塗工液を塗布して印刷用凸部の表面に塗工液を保持させ、この塗工液をガラス基板の基板表面に転写し、この転写後、乾燥させて溶媒を除去して焼成することを行う。これにより、上記ガラス基板上に、印刷用凸部の表面に対応する位置と領域のポリイミド樹脂材の配向膜が形成される。
このようにしてガラス基板上に印刷形成されるポリイミド樹脂材配向膜は均一な膜厚であることが要求されている。すなわち、最近では、液晶表示装置がより高い階調表示や高コントラストを実現するために、配向膜自身についても極めて高い均一性が要求されており、上記ポリイミド樹脂材配向膜の厚みが均一でなく僅かな厚みの変化でもあれば、ギャップ不良や閾値電圧の変化,表示色の色むらが発生するという問題が生じる。
上記樹脂凸版として、例えば、図17および図18に示すような、その表面に、略同じ大きさに形成された多数の円柱形状の微小凸部22が所定のピッチpで整列配置された弾性凸版21が、よく用いられている(例えば、特許文献1参照)。図18において、23は印刷ロール(図示せず)の回転軸の配置方向で、24は微小凸部22の配列方向で、θは印刷ロールの回転軸と微小凸部22の配列とが凸版表面でなす角度である。
特開2001−277690
しかしながら、上記のように、印刷用凸部の表面に多数の微小凸部が均一に分布形成された樹脂凸版を用いてフレキソ印刷をする場合には、つぎの問題がある。すなわち、通常、フレキソ印刷では、印刷機版胴(ドラム)の表面に樹脂凸版を装着し、これに塗工液を供給し所定の回転速度および押し込み圧により上記ガラス基板に塗工液を転写しているため、このガラス基板の基板表面に上記樹脂凸版の各微小凸部が点接触状に押し付けられる際に、上記樹脂凸版の各微小凸部に上記押し込み圧が作用する。このとき、上記樹脂凸版の印刷用凸部の表面中央部分の各微小凸部に対しては、その周囲を取り囲む各微小凸部で上記押し込み圧を受け止めることができ、各微小凸部の先端部分が磨耗したり、欠けたりすることがほとんどないものの、上記樹脂凸版の印刷用凸部の表面周縁部分の各微小凸部に対しては、その外周部に微小凸部が少ない、もしくは全くないため、上記表面中央部分の各微小凸部に作用するよりも大きな押し込み圧が作用し、上記表面周縁部分の各微小凸部の先端面が磨耗したり、欠けたりしやすく、強度的に弱くて劣化寿命が短い。しかも、上記樹脂凸版により印刷形成されたポリイミド樹脂材配向膜は、その中央領域に比べて、周辺領域の厚みが厚くなるという現象が生起している。これは、つぎのような理由によるものである。すなわち、上記塗工液の転写時に、印刷機版胴の回転に応じて、上記樹脂凸版の印刷用凸部の表面中央部分に保持している塗工液が印刷用凸部の表面周縁部分側に移動して滞留し、この表面周縁部分で塗工液量が多くなって液溜まりが生じ、その結果、得られる配向膜の周縁部分の厚みが厚くなるという現象が生じるのである(以下「マージナル現象」という)。例えば、厚み300〜900Åとなるよう形成されるべき配向膜が、その周縁部分では1200〜3000Å程度にまで厚く形成される。しかも、上記表面周縁部分に液溜まりが生じるため、上記点接触時に、上記表面周縁部分の各微小凸部に大きな反力が加わり、さらに上記先端面が磨耗したり、欠けたりしやすくなる。このような不具合を解消するため、従来から、印刷用凸部のパターン形状の設計工夫や、印刷ステージ走査速度や塗工液濃度の自動調整等による印刷機の改良等種々の方法が試みられているが、未だ解決されていないのが実情である。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、強度的に強くて劣化寿命が長く、かつ、マージナル現象も発生せず、周縁部分においても中央部分と等しく均一な膜厚の配向膜等を形成することのできる弾性樹脂版の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明の弾性樹脂版は、印刷部に所定の印刷パターンで設けた塗工液を被剛性平板状印刷体に転写し印刷するために用いるフレキソ印刷用の弾性樹脂版であって、上記印刷パターンに対応する上記印刷部の部分に、上記塗工液を収容するための多数の凹部がそれぞれ非連続で形成されているという構成をとる。
すなわち、本発明者らは、強度的に強くて劣化寿命が長く、かつ、マージナル現象も発生せず、周縁部分においても中央部分と等しく均一な膜厚の配向膜等を形成することのできる樹脂凸版を得るために一連の研究を重ねた。そして、まず、マージナル現象の生起する原因について研究を重ねた結果、先に述べたような理由によるものであることを突き止め、上記塗工液の転写時に、樹脂凸版の印刷用凸部の表面中央部分に滞留している塗工液が印刷用凸部の表面周縁部分側に移動して滞留しないようにすることを中心にさらに研究を重ねた。その結果、従来のように、印刷用凸部の表面に多数の微小凸部が均一に分布形成された樹脂凸版を用い、上記各微小突起間に形成される溝部に塗工液を充填するのでは、上記塗工液の移動を防ぐことができないのではないかと考え、上記樹脂凸版を用いるのではなく、上記樹脂凸版とは全く異なる新しい樹脂版を用いることについてさらに研究を重ね、印刷用凸部等の印刷部に所定の印刷パターンで設けた塗工液を被剛性平板状印刷体に転写し印刷するために用いるフレキソ印刷用の弾性樹脂版であって、上記印刷パターンに対応する上記印刷部の部分に、上記塗工液を収容するための多数の凹部がそれぞれ非連続で形成されている弾性樹脂版を用いると、この弾性樹脂版自体が強度的に強くて劣化寿命が長く、かつ、この弾性樹脂版を用いてフレキソ印刷をすると、マージナル現象も発生せず、均一な膜厚の配向膜等が得られることを見出し本発明に到達した。
本発明の弾性樹脂版では、その印刷部に多数の凹部を形成しているものの、これら各凹部はそれぞれ非連続で形成されているため、これら各凹部が形成されていない部分(すなわち、上記塗工液の転写時に、被剛性平板状印刷体に押し付けられる印刷部の部分であって、非印刷部分)は、その中央部分と周縁部分とが面状に繋がっている。したがって、上記塗工液の転写時に、弾性樹脂版の印刷部の非印刷部分が被剛性平板状印刷体に面接触状に押し付けられており、この押し込み圧を上記非印刷部分の中央部分と周縁部分とで略均等に受け止めることができ、上記非印刷部分の周縁部分が磨耗したり、欠けたりすることがほとんどなく、強度的に強くて劣化寿命が長くなる。しかも、上記印刷部の各凹部はそれぞれ非連続で形成されているため、上記塗工液の転写時に上記各凹部に収容される塗工液が上記印刷部の中央部分から周縁部分に移動するということがなく、マージナル現象の発生がなくなる。しかも、上記各凹部の大きさを適宜設定し、上記各凹部に収容する塗工液量を制御することにより、上記各凹部で保持する塗工液量を従来と同等の保持量に設定すれば、その周縁部分においても中央部分と等しく均一な膜厚の配向膜等を得ることができる。しかも、半透過型の(例えば、被剛性平板状印刷体の表面に外光用反射膜を形成した反射部分と、被剛性平板状印刷体の表面をそのまま露呈させた透過部分とを備えた)被剛性平板状印刷体では、上記半透過型の部分において、外光用反射膜の厚みの分だけ段差ができるが、本発明の弾性樹脂版は、凹部に保持された塗工液が移動することなくスポット転写されるため、上記半透過型の部分に対しても、良好なフレキソ印刷を行うことができる。
また、上記各凹部がハニカム構造状に位置決めされていると、上記記印刷部に各凹部を密に形成して上記非印刷部分の面積が小さくすることができ、塗布むらが生じなくなる。なお、本発明において、「ハニカム構造状(いわゆる蜂の巣構造状)」とは、上記各凹部がそれぞれ所定の方向に多数列状に平行配設されているとともに、上記所定の方向に沿って等間隔で配設され、隣り合う列同士では、ある列の凹部と凹部との間に、隣接する列の凹部が位置し、かつ、上記ある列の両凹部間の中央に、上記隣接する凹部の中心線が通るように位置決めされている状態を示している。このような「ハニカム構造状」では、上記ある列の両凹部と、これら両凹部間に配設される上記隣接する凹部との間に形成される隙間を大幅に狭くし、上記記印刷部に各凹部を密に形成することができる。
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、これに限定されるものではない。
図1および図2は本発明の弾性樹脂版の一実施の形態を示している。これらの図において、1は平板状の樹脂版本体で、1aは上記樹脂版本体1の一側面に設けた1つもしくは複数(この実施の形態では、4つ)の印刷部で、それぞれ上記樹脂版本体1の一側面に突設された平板状の印刷用凸部からなる。2は上記樹脂版本体1の各印刷部1aの表面に多数形成された塗工液収容用の凹部(図2では図示せず。図3参照)で、3は上記樹脂版本体1の各印刷部1aの表面のうち、上記各凹部2が形成されていない部分(非印刷部分)である。図1および図2において、1bは版胴取り付け時の曲げ用溝部で、1cは治具取り付け固定部である。
本発明の弾性樹脂版の基本構成は、光硬化性樹脂製の樹脂版本体1からなり、その印刷部1aには、上記光硬化性樹脂を硬化させることによって形成された非印刷部分3と、上記光硬化性樹脂の未硬化部分(上記硬化の際に、硬化させなかった部分)を除去することによって形成された多数の凹部2とが形成されている。そして、これら各凹部2に印刷パターン作製用の塗工液(図示せず)が収容され、これら収容された塗工液が被剛性平板状印刷体(図示せず)に転写され印刷される。
上記樹脂版本体1は、通常、四角形状平板体に作製されているが、これに限定されるものではなく、各種の形状に作製することができる。また、上記樹脂版本体1は、ガラス基板等の被剛性平板状印刷体に密着状に当接し、その表面に均一な膜厚の配向膜等を形成するため、所定の弾性を有する必要がある。例えば、被剛性平板状印刷体がガラス基板である場合には、上記樹脂版本体1の印刷部1aの弾性率は、ゴム硬度(ショアA硬さ)で30〜80度程度の範囲内であればよい。また、上記樹脂版本体1の印刷部1aは、上記樹脂版本体1の一側面の全面に形成されていてもよいし、図1に示すように、上記樹脂版本体1の一側面に平板状の印刷用凸部を突設することにより、形成されていてもよい。
上記各凹部2の形状は適宜決定されるが、一般的には、円柱形状もしくは下側にいくほど小径となる円錐台形状のもの(図4および図5参照)や角柱形状のものが好ましい。上記角柱形状のものとしては、例えば、断面形状が正方形状や長方形状等の四角柱形状のもの(図6および図7参照。これらの図では、断面形状が正方形状のものを示す)や、断面形状が正六角形状や正八角形状等の正n角形状[nは6以上の偶数]の多角柱形状のもの(図8および図9参照。これらの図では、断面形状が正六角形状のものを示す)が好ましい。また、上記各凹部2の大きさも適宜決定されるが、一般的には、それぞれが略同じ大きさ(すなわち、略同じ容積)に形成されており、このため上記各凹部2に収容される塗工液量:セルボリューム(単位面積当たりに保持しうる塗工液)(cm3 /m2 )も略同じに設定されている。
上記樹脂版本体1の印刷部1aに均一に分布形成される各凹部2の印刷パターン(すなわち、各凹部2の配列パターン)としては、特に限定するものではなく、例えば、上記各凹部2が一直線状に略等間隔(上記各凹部2間のピッチは35〜130μm程度の範囲内であればよい)で一列に配設されてなる凹部群2a(図3参照)が、それぞれ多数並列状に略等間隔(上記各凹部群2aの列間のピッチは35〜130m程度の範囲内であればよい)で、所定の角度を持たせて多数配列されていることが好ましい。この場合、標準的には、上記両ピッチは同じである。
また、上記の多数並列状に配設される凹部群2aにおいて、各凹部2がハニカム構造状に位置決めされていると、各凹部2を密に配設することができ、さらに好ましい。より詳しく説明すると、上記凹部群2aにおいて、隣り合う両凹部群2aのうち、一方の凹部群2aの凹部2とその隣りの凹部2との間に、隣接する他方の凹部群2aの凹部2が位置するように位置決めされ、かつ、上記一方の凹部群2aの(隣り合う)両凹部2間の中央に他方の凹部群2aの凹部2の中心線が位置するように位置決めされている(すなわち、ハニカム構造状に位置決めされている)と、上記各凹部2を密に配設して上記非印刷部分の面積を小さくすることができ、さらに好ましい。この場合に、上記各凹部2として、断面形状が正六角形状のものを用いるだけでなく、円形状のものや正n角形状のものを用いることができる。そして、上記各凹部2の中心線(断面形状が正n角形状のものでは、相対向する角部同士を結ぶ線)を、上記(隣り合う)両凹部2間の中央に位置させるようにする。
また、上記各凹部2が円柱形状である場合の、上記各凹部2の上面開口の直径D1 (μm),深さH1 (μm)、および上記各凹部2が円錐台形状である場合の、上記各凹部2の上面開口の直径D2 (μm),底面の直径D 3(μm),深さH2 (μm)、ショルダー角θ(°)(図4参照)は、特に限定されるものではなく、適宜決定される。すなわち、これらの寸法は、転写し印刷形成される配向膜等の厚みにより適宜に設定されるものである。例えば、標準的なポリイミド塗工液(固形分濃度3〜6%)であれば、直径D1 は6〜150μm程度、直径D2 は16〜130μm程度、直径D 3は9〜40μm程度の範囲内であればよい。また、深さH1 は2〜43μm程度、深さH2 は2.5〜33μm程度の範囲内であればよい。また、ショルダー角θは5〜73°程度の範囲内であればよい。また、セルボリュームは0.4〜12.9cm3 /m2 程度の範囲内であればよい。また、上記樹脂版本体1の開口率、すなわち、上記樹脂版本体1の印刷部に占める、上記全凹部2の上面開口の面積割合は15〜60%の範囲内に設定されている。
また、上記各凹部2が多角柱形状である場合の、上記各凹部2の各辺の長さL1 (μm),深さH3 (μm)は、特に限定されるものではなく、適宜決定される。すなわち、これらの寸法は、転写し印刷形成される配向膜等の厚みにより適宜に設定されるものである。例えば、断面形状が正方形状の四角柱形状の場合、上記標準的なポリイミド塗工液であれば、一辺の長さL1 は6〜150μm程度、深さH3 は2〜43μm程度の範囲内であればよい。また、セルボリュームは0.4〜12.9cm3 /m2 程度の範囲内で、樹脂版本体1の開口率は15〜70%の範囲内であればよい。一方、正六角形状の多角柱形状(すなわち、ハニカム構造)である場合、上記標準的なポリイミド塗工液であれば、一辺の長さL2 は15〜60μm程度、深さH4 は2〜43μm程度の範囲内であればよい。また、セルボリュームは0.4〜12.9cm3 /m2 程度の範囲内で、樹脂版本体1の開口率は15〜70%の範囲内であればよい。
また、上記隣り合う両凹部群2aのうち、一方の凹部群2aの両凹部2間の中央に他方の凹部群2aの凹部2の中心線が位置している場合において、上記各凹部2が円柱形状であるときの、上記一方の凹部群2aの両凹部2間の距離R1 は8〜70μm程度、一方の凹部群2aの両凹部2と他方の凹部群2aの凹部2間の距離R2 (この距離R2 として、近接する3つの凹部2の中心線の交点と各凹部2の外周面間の距離を測定する)は8〜45μm程度の範囲内であればよい(図10参照)。また、上記各凹部2が四角柱形状であるときの、上記距離R1 は8〜70μm程度、上記距離R2 (この距離R2 として、近接する4つの凹部2の角部のうち、相対向する2つの角部を結ぶ線の交点と各角部間の距離を測定する)は8〜45μm程度の範囲内であればよい(図11参照)。また、上記各凹部2が六角柱形状であるときの、上記距離R1 は6〜65μm程度、上記距離R2 (この距離R2 として、各凹部2の中心線の交点と各凹部2の角部間の距離を測定する)は6〜43μm程度の範囲内であればよい(図12参照)。
なお、上記の多数並列状に配設される凹部群2aにおいて、各凹部2を直交する状態に配設する場合には、上記各凹部2が円柱形状であるときの、上記距離R1 は8〜78μm程度、上記距離R2 (この距離R2 として、4つの凹部2のうち、相対向する凹部2の中心同士を結ぶ線と各凹部2の外周面間の距離を測定する)は8〜60μm程度の範囲内であればよい(図13参照)。なお、図10〜図13において、実際に形成される各凹部2の形状は、完全な円柱形状や多角柱形状にはならない。
上記各凹部2の形状が、円柱形状,円錐台形状や、断面形状が正方形状,正六角形状の多角柱形状であると、形状再現性が良好である。また、断面形状が正方形状の四角柱形状の場合には、上記距離R2 が小さくセルボリュームが増加する。また、円柱形状,円錐台形状の場合には、上記隣り合う両凹部群2aのうち、一方の凹部群2aの両凹部2間の中央に他方の凹部群2aの凹部2の中心線を位置させることで、凹部密度が上がりセルボリュームが増加する。
このような樹脂版本体1を、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、樹脂版本体1の印刷部1aに対面する領域のうち、非印刷部分3(図1参照)に対応する部分5aが透明で、各凹部2(図1,図4および図5参照)に対応する円5bの内側部分が黒色になっているネガフィルム5を準備する(図14参照)。ついで、図15に示すように、上記ネガフィルム5をガラス板6の表面に積層した後、そのネガフィルム5の表面に液状光硬化性樹脂7を一定の厚みとなるように塗布し、その液状光硬化性樹脂7からなる層の表面に透明なベースフィルム(図示せず)を積層し、そのベースフィルムの表面にガラス板8を積層する。つぎに、ランプ9を用いて、上記上側のガラス板8およびベースフィルムを介して紫外線等の光を照射し、上記下側のガラス板6,ネガフィルム5を介して紫外線等の光を照射する。これにより、上記液状光硬化性樹脂7からなる層の上面全体から入った光と、上記ネガフィルム5のうち透明な部分から入った光とが届いた部分(図15の斜線部分S)が硬化される。このとき、上記光が届く深さを、照射する光の強度と時間で調節する。つぎに、上記上下のガラス板8,6、ネガフィルム5を取り除き、ネガフィルム5の黒色部分のために光が届かずに未硬化となった部分を洗浄して除去する。そして、硬化した部分を乾燥し、さらに紫外線等の光を照射(後露光)することにより樹脂材内層部を確実に硬化させる。このようにして、図1および図2に示すような樹脂版本体1を製造することができる。
なお、本発明の弾性樹脂版としては、上記のようにして得られた樹脂版本体1の印刷部1aの凹部形成面とは反対面(裏面)側に、ベースフィルム層、感圧型接着剤等からなる接着剤層、金属板または合成樹脂板の順で積層されたものを用いてもよい。このような構成の弾性樹脂版を用いることにより、カッピング現象(樹脂材の光硬化重合収縮による反り)が軽減され、結果、マージナル現象の発生を効果的に抑制することが可能となる。
上記液状光硬化性樹脂としては、従来公知のものであれば特に限定するものではなく、例えば、不飽和ポリエステル樹脂やポリブタジエン等に光増感剤や熱安定剤等を添加したもの、あるいはアクリル,ウレタン,エポキシ,ポリエステル等のプレポリマーに不飽和基を導入した不飽和樹脂に光増感剤や熱安定剤等を添加したものが使用される。さらに、光硬化性樹脂としては、上記のような液状に限定されるものではなく、プレート状のような固体を示すものであってもよい。具体的には、液状のものとしては、APR(旭化成社製)等があげられ、固体状を示すものとしては、サイレル(デュポン社製),AFP(旭化成社製),テビスタ(帝人社製)等があげられる。
上記樹脂版本体1の印刷部1aにおける、上記各凹部2の印刷パターン形成には、上記ネガフィルム5における非印刷部分3に対応する透明部分と、各凹部2に対応する黒色部分とを、適宜調整することによって所望の印刷パターンを形成することができる。このようなネガフィルム5は、例えば、フィルム露光用イメージセッター(画像処理装置)等を用いて所望のパターンに形成して作製することができる。
このようにして得られた弾性樹脂版を用いての薄膜である配向膜等の形成は、つぎのようにして行われる。すなわち、上記弾性樹脂版の樹脂版本体1の印刷部1aに配向膜等形成用の塗工液を塗布し、上記各凹部2を保持させたのち、被剛性平板状印刷体上に上記塗工液を転写する。そして、塗工液転写後、乾燥させて溶媒を除去し焼成することにより、被剛性平板状印刷体上に上記印刷部1aに対応する位置と領域の配向膜等を形成することが行われる。
上記塗工液が転写される被剛性平板状印刷体としては、特に限定するものではなく、従来公知のもの、例えば、ガラス基板,金属箔,金属板,アクリル基板等の合成樹脂板,合成樹脂製フィルム,合成樹脂製シート基板等があげられる。なかでも、転写された塗工液が吸収されにくいという点から、ガラス板,金属板が好ましく用いられる。
また、上記塗工液は、特に限定するものではなく、ガラス基板の基板表面に配向膜を形成する場合には、ポリイミド樹脂,ポリアミック酸等の各種の液状インキが用いられ、ガラス基板等の基板表面に絶縁材層等を形成する場合には、アクリル絶縁材,絶縁ハードコート材等の各種の液状インキが用いられる。
また、本発明の弾性樹脂版は、液晶パネルにおけるカラーフィルター,ガラス基板間の配向膜,ガラス基板の絶縁材層,レジスト材層,シーリング材層等の薄膜層や、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)における有機発光層を印刷するために用いられる。また、テレビ,パソコン等、屋内で使用される各種装置に用いられる液晶パネル等だけではなく、屋外でも使用される携帯電話等に用いられる液晶パネル等にも用いられる。そして、屋外使用の液晶パネル等では、外光(太陽光)が当たっても画面に良好な画像を映し出す必要があるために、半透過型の被剛性平板状印刷体がよく用いられているが、上記したように、被剛性平板状印刷体の半透過型の部分に対しても、本発明の弾性樹脂版は良好なフレキソ印刷を行うことができる。
つぎに、実施例について説明する。
〔実施例1〜8〕
〔弾性樹脂版の作製〕
まず、製版機の下側ガラス板上にネガフィルムを載置し、さらにネガフィルム上に、液状光硬化性樹脂(旭化成社製、APR)を一定の厚みとなるようにナイフコーターを用いて塗布した。そののち、上記液状光硬化性樹脂表面にベースフィルムを介して上側ガラス板を載置した。そして、この上側ガラス板,ベースフィルムを介して光照射を行い、つぎに下側ガラス板,ネガフィルムを介して光照射を行うことにより非印刷部分を形成するとともに、この非印刷部分に多数の凹部を形成した。そして、未硬化樹脂を洗浄し除去したのち、乾燥してさらに光照射により露光(後露光)を行うことにより樹脂版本体を作製した。このようにして作製した5種類の樹脂版本体の各凹部(円錐台形状)の各寸法および印刷部における全凹部の開口率を、下記の表1に示し、1種類の樹脂版本体の各凹部(四角柱形状の直交配設)の各寸法および上記開口率を、2種類の樹脂版本体の各凹部(円錐台形状および六角柱形状のハニカム構造状配設)の各寸法および上記開口率を、下記の表2に示す。
なお、上記樹脂版本体の作製において用いたネガフィルムは、一般的な印刷機等にも使用されているフィルム露光用イメージセッターを用いて作製したものである。
つぎに、上記製法で得られた樹脂版本体の凹部形成面と反対面に離型紙付き感圧接着剤(ポリアクリル酸エステル系接着剤、接着剤厚み0.03mm)を用いて、厚み0.15μmのPETシートを貼着した。この全ての工程は、常温下で行い、弾性樹脂版を作製した。
Figure 2006240283
Figure 2006240283
〔比較例1,2〕
つぎに、従来の方法により、印刷用凸部の表面に多数の微小凸部が均一に分布形成されこれら各微小凸部間に溝部が形成された2種類の樹脂凸版を作製した。これら各樹脂凸版の各微小凸部(円錐台形状)の各寸法および印刷用凸部における微小凸部の開口率を、下記の表3に示す。
Figure 2006240283
このようにして得られた各弾性樹脂版10もしくは従来の各樹脂凸版を用い、従来の方法にて薄膜を形成した。すなわち、図16に示すように、表面に上記弾性樹脂版10もしくは各樹脂凸版を装着した印刷ロール(印刷機版胴)11を準備するとともに、印刷ステージ(定盤)12上にガラス基板13を載置した。そして、パターン印刷を行う際のニップ幅、つまりインキロール14と印刷ロール11との間は6〜8mm、また印刷ロール11とガラス基板13との間は10〜11.5mm(押し込み量は0.16mm)とした。なお、印刷ロール11の真円度,フレともに0.015mm以内であり、かつガラス基板13の表面は0.050mm以内の平滑度である。図16において、15はインキ供給装置であり、16はインキロール14上の余剰インキをかきとるドクターである。また、3本の矢印はそれぞれ印刷ロール11の回転方向,インキロール14の回転方向および印刷ステージ12の進行方向を示している。
以上の条件により、上記弾性樹脂版10もしくは従来の各樹脂凸版に保持された塗工液をガラス基板13上に転写した。ついで、ガラス基板13上に転写された塗工液を、500℃×30分の酸化還元雰囲気下で焼成することによりポリイミド樹脂材薄膜層を形成した。
このようにして得られた薄膜層の実施例3,5〜8および比較例1,2の中央部分と周辺部分の厚みをテンコールジャパン社製表面粗さ計(Profiler P-1)を用いて測定した。これらの結果を下記の表4および表5に示す。この表4の結果から明らかなように、実施例品は全て薄膜層の周辺部分の膜厚が中央部分の膜厚に比べて同程度の厚みとなるよう形成されており、比較例品と比べ、カッピング現象が軽減されており、マージナル現象の発生を効果的に抑制することができる。しかも、上記表5から、実施例6〜8では、特に薄膜層の膜厚ばらつき(周辺部分と中央部分の膜厚の差)が極めて小さく、周辺部分を含めて厚みが均一であることが判る。
Figure 2006240283
Figure 2006240283
本発明の弾性樹脂版の一実施の形態を模式的に示す平面図である。 上記弾性樹脂版の断面図である。 上記弾性樹脂版の要部の平面図である。 上記弾性樹脂版の要部の断面図である。 上記弾性樹脂版の要部の斜視図である。 上記弾性樹脂版の要部の平面図である。 上記弾性樹脂版の要部の斜視図である。 上記弾性樹脂版の要部の平面図である。 上記弾性樹脂版の要部の斜視図である。 各凹部間の寸法の説明図である。 上記各凹部間の寸法の説明図である。 上記各凹部間の寸法の説明図である。 上記各凹部間の寸法の説明図である。 ネガフィルムの要部の平面図である。 樹脂版本体の製造方法を示す断面図である。 上記弾性樹脂版を用いた薄膜形成の製造工程を示す説明図である。 従来例を示す斜視図である。 上記従来例の要部の説明図である。
符号の説明
1a 印刷部
2 凹部

Claims (4)

  1. 印刷部に所定の印刷パターンで設けた塗工液を被剛性平板状印刷体に転写し印刷するために用いるフレキソ印刷用の弾性樹脂版であって、上記印刷パターンに対応する上記印刷部の部分に、上記塗工液を収容するための多数の凹部がそれぞれ非連続で形成されていることを特徴とする弾性樹脂版。
  2. 上記各凹部がハニカム構造状に位置決めされている請求項1記載の弾性樹脂版。
  3. 上記被剛性平板状印刷体が、ガラス基板,樹脂製フィルムもしくは樹脂製シート基板である請求項1または2記載の弾性樹脂版。
  4. 上記各凹部が、円柱形状もしくは下側にいくほど小径となる円錐台形状に形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の弾性樹脂版。
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