JP2006236799A - 燃料電池システムおよび燃料電池システムの運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 燃料電池システムにおいて特段の設計上の制限を課すことなく、燃料電池に供給される燃料ガス圧の過剰上昇を防止する。
【解決手段】 燃料電池22を備える燃料電池システム10は、燃料電池22に対して水素を含有する燃料ガスを供給する水素供給路60と、水素供給路60内の圧力を検出する第1の圧力センサ52と、閉状態となることで水素供給路60を閉塞するシャットバルブ61と、圧力センサ52が検出する水素供給路60内の圧力が、第1の基準値を超えたときに、シャットバルブ61を閉状態とする供給停止制御部とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】 燃料電池22を備える燃料電池システム10は、燃料電池22に対して水素を含有する燃料ガスを供給する水素供給路60と、水素供給路60内の圧力を検出する第1の圧力センサ52と、閉状態となることで水素供給路60を閉塞するシャットバルブ61と、圧力センサ52が検出する水素供給路60内の圧力が、第1の基準値を超えたときに、シャットバルブ61を閉状態とする供給停止制御部とを備える。
【選択図】 図1
Description
この発明は、燃料電池を備える燃料電池システムおよびその運転方法に関する。
燃料電池を用いて発電を行なう際には、アノードに対して水素を含有する燃料ガスを供給するが、このような燃料ガスの供給部においては、一般に、種々の安全対策が施されている。特に、高圧の水素含有ガス供給源(例えば水素タンク)から燃料ガスを供給する場合のように、燃料電池に対して非常に圧力の高い燃料ガスが供給され得る場合には、燃料電池内部に導入される燃料ガスの圧力調節に問題が生じた場合のための対策が重要である。過剰な圧力の燃料ガスが燃料電池に供給されると、燃料電池が損傷を受ける可能性があるためである。このような対策の一つとして、燃料電池に水素ガスを供給する供給路に、所定圧で開弁するリリーフ弁を設け、水素ガスの圧力が所定値を超えるときには、リリーフ弁から水素ガスを流路外に排出する構成が知られている(例えば、特開2002−216812号公報)。
しかしながら、このようなリリーフ弁を設けて水素含有ガスを外部に排出する場合には、可燃性ガスである水素が外部に排出される際の濃度ができる限り低く抑えられるように、リリーフ弁を含む水素ガスの排出部全体の形状を設定する必要があった。すなわち、外部に排出される水素が拡散しやすいように、リリーフ弁に接続する流路の配管長さや、リリーフ弁およびリリーフ弁に接続する流路の配設位置、あるいは、外部へ水素ガスを排出する排出口の向きなどの全体形状を、排出水素の拡散を促す形状となるように設定する必要があった。特に、燃料電池システムを車両などの移動体の駆動用電源として用いる場合には、燃料電池システムの搭載スペースに限りがあるため、水素の排出に関わる配管などの形状が制限される可能性があった。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池システムにおいて特段の設計上の制限を課すことなく、燃料電池に供給される燃料ガス圧の過剰上昇を防止することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、燃料電池を備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池に対して水素を含有する燃料ガスを供給する水素供給路と、
前記水素供給路内の圧力を検出する第1の圧力センサと、
閉状態となることで前記水素供給路を閉塞するシャットバルブと、
前記第1の圧力センサが検出する前記水素供給路内の圧力が、第1の基準値を超えたときに、前記シャットバルブを閉状態とする供給停止制御部と
を備えることを要旨とする。
前記燃料電池に対して水素を含有する燃料ガスを供給する水素供給路と、
前記水素供給路内の圧力を検出する第1の圧力センサと、
閉状態となることで前記水素供給路を閉塞するシャットバルブと、
前記第1の圧力センサが検出する前記水素供給路内の圧力が、第1の基準値を超えたときに、前記シャットバルブを閉状態とする供給停止制御部と
を備えることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の燃料電池システムによれば、水素供給路における圧力が第1の基準値を超えるとシャットバルブを閉じるため、燃料電池に過剰な圧力が加えられることに起因する燃料電池の耐久性低下を防止することができる。また、燃料ガスの圧力超過に対応するために、燃料電池システムにおいて設計上の制限が課されることもない。
本発明の燃料電池システムにおいて、さらに、
前記水素供給路に設けられ、前記燃料電池に供給される前記燃料ガスの圧力を調整する圧力調整部を備え、
前記第1の圧力センサは、前記圧力調整部の配設部位よりも下流側における前記水素供給路内の圧力を検出することとしても良い。
前記水素供給路に設けられ、前記燃料電池に供給される前記燃料ガスの圧力を調整する圧力調整部を備え、
前記第1の圧力センサは、前記圧力調整部の配設部位よりも下流側における前記水素供給路内の圧力を検出することとしても良い。
このような構成とすれば、圧力調整部における不具合に起因して燃料電池に過剰な圧力が加えられることを防止し、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
本発明の燃料電池システムにおいて、さらに、
前記シャットバルブが閉状態にされた後に、前記燃料電池に連通する前記水素供給路内で水素を消費させる制御を行なう水素消費制御部を備えることとしても良い。
前記シャットバルブが閉状態にされた後に、前記燃料電池に連通する前記水素供給路内で水素を消費させる制御を行なう水素消費制御部を備えることとしても良い。
このような構成とすれば、シャットバルブを閉じた後に水素を消費させることで、水素供給流路内の圧力が低下する。従って、燃料電池内部におけるアノード側流路とカソード側流路との間の圧力差を減少させることができ、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
このような本発明の燃料電池システムにおいて、
前記第1の圧力センサは、前記シャットバルブの配設部位よりも下流側における前記水素供給路内の圧力を検出し、
前記水素消費制御部は、前記第1の圧力センサが検出する前記水素供給路内の圧力が、前記第1の基準値よりも小さな第2の基準値以下に低下すると、前記水素供給路内の水素を消費させる制御を停止することとしても良い。
前記第1の圧力センサは、前記シャットバルブの配設部位よりも下流側における前記水素供給路内の圧力を検出し、
前記水素消費制御部は、前記第1の圧力センサが検出する前記水素供給路内の圧力が、前記第1の基準値よりも小さな第2の基準値以下に低下すると、前記水素供給路内の水素を消費させる制御を停止することとしても良い。
あるいは、本発明の燃料電池システムにおいて、
前記第1の圧力センサは、前記シャットバルブの配設部位よりも上流側における前記水素供給路内の圧力を検出し、
前記燃料電池システムは、さらに、
前記シャットバルブの配設部位よりも下流側における前記水素供給路内の圧力を検出する第2の圧力センサを備え、
前記水素消費制御部は、前記第2の圧力センサが検出する前記水素供給路内の圧力が、前記第1の基準値よりも小さな第2の基準値以下に低下すると、前記水素供給路内の水素を消費させる制御を停止することとしても良い。
前記第1の圧力センサは、前記シャットバルブの配設部位よりも上流側における前記水素供給路内の圧力を検出し、
前記燃料電池システムは、さらに、
前記シャットバルブの配設部位よりも下流側における前記水素供給路内の圧力を検出する第2の圧力センサを備え、
前記水素消費制御部は、前記第2の圧力センサが検出する前記水素供給路内の圧力が、前記第1の基準値よりも小さな第2の基準値以下に低下すると、前記水素供給路内の水素を消費させる制御を停止することとしても良い。
これらの構成により、燃料電池内部におけるアノード側と流路とカソード側流路との間の圧力差を、より的確に小さくすることが可能となる。
本発明の燃料電池システムにおいて、さらに、
前記供給停止制御部により前記シャットバルブが閉状態にされたときに、前記水素供給路で圧力超過が生じたことを報知する報知部を備えることとしても良い。
前記供給停止制御部により前記シャットバルブが閉状態にされたときに、前記水素供給路で圧力超過が生じたことを報知する報知部を備えることとしても良い。
これにより、使用者は、水素供給路で圧力超過が生じたことを知ることができ、適切に対処することが可能となる。
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、燃料電池システムの運転方法、あるいは、本発明の燃料電池システムを駆動用電源として搭載する移動体などの形態で実現することが可能である。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.システムの全体構成:
B.水素ガス圧過剰上昇防止の動作:
C.変形例:
A.システムの全体構成:
B.水素ガス圧過剰上昇防止の動作:
C.変形例:
A.システムの全体構成:
図1は、本発明の実施例である燃料電池システム10における燃料電池の発電に関わる部分の構成の概略を表わすブロック図である。本実施例の燃料電池システム10は、車両に搭載され、車両の駆動用電源として用いられる。燃料電池システム10は、発電の本体である燃料電池22と、燃料電池22に供給する水素を貯蔵する水素タンク23と、燃料電池22に圧縮空気を供給するためのエアコンプレッサ24と、を備えている。燃料電池22としては種々の種類の燃料電池を用いることが可能であるが、本実施例では、燃料電池22として固体高分子型燃料電池を用いている。この燃料電池22は、複数の単セルを積層したスタック構造を有している。
図1は、本発明の実施例である燃料電池システム10における燃料電池の発電に関わる部分の構成の概略を表わすブロック図である。本実施例の燃料電池システム10は、車両に搭載され、車両の駆動用電源として用いられる。燃料電池システム10は、発電の本体である燃料電池22と、燃料電池22に供給する水素を貯蔵する水素タンク23と、燃料電池22に圧縮空気を供給するためのエアコンプレッサ24と、を備えている。燃料電池22としては種々の種類の燃料電池を用いることが可能であるが、本実施例では、燃料電池22として固体高分子型燃料電池を用いている。この燃料電池22は、複数の単セルを積層したスタック構造を有している。
水素タンク23は、例えば、高圧水素を貯蔵する水素ボンベである。あるいは、水素吸蔵合金を内部に備え、水素吸蔵合金に吸蔵させることによって水素を貯蔵するタンクとしても良い。水素タンク23に貯蔵された水素ガスは、水素タンク23に接続する水素供給路60に放出された後、圧力調整弁62によって所定の圧力に調整(減圧)されて、燃料ガスとして燃料電池22を構成する各単セルのアノードに供給される。燃料電池22のアノードから排出されるアノード排ガスは、アノード排ガス路63に導かれて再び水素供給路60に流入する。このように、アノード排ガス中の残余の水素は、水素供給路60の一部とアノード排ガス路63と燃料電池22内の流路とから成る流路(以下、循環流路と呼ぶ)内を循環して再度電気化学反応に供される。電気化学反応による消費量に相当する水素は、圧力調整弁62を介して水素タンク23から循環流路へと補充される。循環流路内でアノード排ガスを循環させるために、アノード排ガス路63には水素ポンプ65が設けられている。
ここで、水素供給路60には、圧力調整弁62の上流側に、シャットバルブ61が設けられている。このシャットバルブ61は、燃料電池の発電を停止する際には閉状態へと駆動され、水素タンク23から燃料電池22への水素ガス供給を遮断する。さらに本実施例では、燃料電池22に供給される燃料ガス圧が過剰に上昇するときにも、シャットバルブ61を閉じる制御が行なわれる。燃料ガス圧に基づく制御については、後に詳しく説明する。シャットバルブ61としては、例えば、直動式シャットバルブ、あるいはパイロット式シャットバルブを用いることができる。さらに水素供給路60には、シャットバルブ61の上流側に、水素供給路60内の圧力を検出するための圧力センサ50が設けられている。また、水素供給路60には、圧力調整弁62の下流側にも圧力センサ52が設けられており、アノード排ガス路63にも、圧力センサ54が設けられている。
さらに、アノード排ガス路63には、気液分離器27が設けられている。電気化学反応の進行に伴ってカソードでは水が生じるが、生じた水は、燃料電池22の電解質膜を介して、アノード側に供給される燃料ガス内にも導入される。気液分離器27は、このようなアノード排ガス中に含まれる水蒸気を凝縮させて、アノード排ガスから除去する。
気液分離器27には、バルブ27aが設けられている。このバルブ27aを開状態とすることで、気液分離器27内で凝縮された水が、バルブ27aに接続する排ガス排出路64を介して外部に排出される。なお、バルブ27aが開状態になると、上記凝縮水と共に、アノード排ガス路63内を流れるアノード排ガスの一部も外部に排出される。燃料電池22の運転時には、アノード側を流れるガスにおいては、既述したように電解質膜を介して、カソード側から水が導入されると共に、カソードに供給される空気中の窒素なども導入される。従って、燃料電池による発電を継続していると、循環流路内を循環する水素含有ガスにおいては、窒素などの不純物濃度が上昇する。本実施例の燃料電池システム10では、所定のタイミングでバルブ27aを開状態にすることによって、上記循環する水素含有ガスの一部を外部に排出して、水素含有ガス中の不純物濃度の上昇を抑えている。
ここで、排ガス排出路64は、排ガス排出路64よりも断面積が大きい容器である希釈器26に接続されている。この希釈器26は、アノード排ガスを外部に排出する際に、排出に先立って、アノード排ガス中の水素を後述するカソード排ガスによって希釈するための構造である。
エアコンプレッサ24は、加圧した空気を酸化ガスとして酸化ガス供給路67を介して燃料電池22のカソードに供給する。エアコンプレッサ24が空気を圧縮する際には、エアクリーナ28を介して外部から空気を取り込む。カソードから排出されるカソード排ガスは、カソード排ガス路68に導かれて外部に排出される。ここで、酸化ガス供給路67およびカソード排ガス路68は、加湿モジュール25を経由している。加湿モジュール25では、水蒸気透過性の膜によって酸化ガス供給路67とカソード排ガス路68とが隔てられており、水蒸気を含有するカソード排ガスを用いて、カソードに供給する加圧空気の加湿を行なっている。また、カソード排ガス路68は、カソード排ガスを外部に導くのに先立って、既述した希釈器26を経由している。そのため、排ガス排出路64を介して希釈器26に流入したアノード排ガスは、希釈器26においてカソード排ガスと混合されることによって希釈された後に、外部に排出される。
さらに、燃料電池システム10は、燃料電池システム10の各部の動きを制御する制御部70を備えている。制御部は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成され、詳しくは、予め設定された制御プログラムに従って所定の演算などを実行するCPUと、CPUで各種演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御データ等が予め格納されたROMと、同じくCPUで各種演算処理をするのに必要な各種データが一時的に読み書きされるRAMと、各種の信号を入出力する入出力ポート等を備える。この制御部70は、既述した圧力センサ50,52,54等の各種センサの検出信号や、燃料電池22に対する負荷要求に関する情報などを取得する。また、燃料電池システム10が備える圧力調整弁62、エアコンプレッサ24、水素ポンプ65、あるいはバルブ61,27aなど、燃料電池22の発電に関わる各部に駆動信号を出力する。
図2は、本実施例の燃料電池システム10を搭載する電気自動車15の構成の概略を表わすブロック図である。図2に示すように、車両の駆動用電源である燃料電池システム10は、発電の本体である燃料電池22に加えて、さらに、2次電池40を備えている。なお、図2では、燃料電池22に係る電気的な接続状態を中心に表わしており、燃料電池22におけるガスの給排に関わる流路等の記載は省略している。
電気自動車15は、燃料電池システム10から電力を供給される負荷として、駆動インバータ30を介して燃料電池システム10に接続される駆動モータ32と、補機類44とを備えている。これらの負荷と燃料電池システム10との間には、配線48が設けられており、この配線48を介して、燃料電池システム10と負荷との間で電力がやり取りされる。ここで、2次電池40は、DC/DCコンバータ42を介して上記配線48に接続されており、DC/DCコンバータ42と燃料電池22とは、上記配線48に対して並列に接続されている。
2次電池40としては、鉛蓄電池や、ニッケル−カドミウム蓄電池、ニッケル−水素蓄電池、リチウム2次電池など種々の2次電池を用いることができる。この2次電池40は、燃料電池システム10の始動時に、燃料電池システム10の各部を駆動するための電力を供給したり、燃料電池システム10の暖機運転が完了するまでの間、各負荷に対して電力を供給する。また、燃料電池22が定常状態で発電を行なうときにも、負荷が所定の値よりも大きくなる場合には、2次電池40によって電力を補うこととしても良い。
DC/DCコンバータ42は、出力側の目標電圧値を設定することによって、配線48における電圧を調節し、これによって燃料電池22からの出力電圧を調節して燃料電池22の発電量を制御する。なお、DC/DCコンバータ42は、2次電池40と配線48との接続状態を制御するスイッチとしての役割も果たしており、2次電池40において充放電を行なう必要のないときには、2次電池40と配線48との接続を切断する。
負荷の一つである駆動モータ32は、同期モータであって、回転磁界を形成するための三相コイルを備えており、駆動インバータ30を介して燃料電池システム10から電力の供給を受ける。駆動インバータ30は、上記駆動モータ32の各相に対応してスイッチング素子としてのトランジスタを備えるトランジスタインバータである。駆動モータ32の出力軸36は、減速ギヤ34を介して車両駆動軸38に接続している。
他の負荷である補機類44には、既述したエアコンプレッサ24や水素ポンプ65など、燃料電池22が発電する際に駆動する必要のある燃料電池補機が含まれている。なお、補機類44のうち、駆動電圧がより低いバルブ類は、図示しない降圧DC/DCコンバータによって降圧された電力が供給される。さらに、補機類44としては、燃料電池補機に含まれるものの他に、例えば電気自動車15が備える空調装置(エアコン)等の車両補機が含まれる。
なお、制御部70は、燃料電池システム10が備えるものとして説明したが、本実施例の電気自動車15では、制御部70によって車両全体の制御が行なわれている。したがって、制御部70は、補機類44やDC/DCコンバータ42の他、駆動インバータ30に対しても駆動信号を出力する。
B.水素ガス圧過剰上昇防止の動作:
図3は、制御部70において実行される水素圧超過監視処理ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンは、燃料電池システム10の稼働中に実行される処理である。本ルーチンが起動されると、制御部70は、まず、水素供給路60内のガス圧を取得する(ステップS100)。本実施例では、圧力調整弁62の下流に設けられた圧力センサ52の検出信号を取得している。
図3は、制御部70において実行される水素圧超過監視処理ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンは、燃料電池システム10の稼働中に実行される処理である。本ルーチンが起動されると、制御部70は、まず、水素供給路60内のガス圧を取得する(ステップS100)。本実施例では、圧力調整弁62の下流に設けられた圧力センサ52の検出信号を取得している。
次に、制御部70は、ステップS100で取得したガス圧が、第1の基準値を超えているか否かを判断する(ステップS110)。ここで、第1の基準値とは、燃料電池22の発電中における循環流路内の圧力として許容できる範囲を超える値として、予め設定された値である。ステップS100で取得したガス圧が第1の基準値を超えていない場合には、循環流路内の圧力は許容範囲内に保たれていると判断して、制御部70は、上記ステップS100およびS110の工程を繰り返し実行する。
ステップS110において、取得したガス圧が第1の基準値を超えていると判断された場合には、制御部70は、シャットバルブ61を閉じると共に、所定の低電流値で燃料電池22の発電を継続させ、さらに、所定の報知部を駆動する(ステップS120)。すなわち、制御部70は、取得したガス圧に基づいてシャットバルブ61を閉じる制御を行なう供給停止制御部として機能する。また、制御部70は、燃料電池22の発電を継続させる制御を行なう水素消費制御部として機能する。なお、ステップS120で燃料電池22の発電を継続させる際には、シャットバルブ61を閉じることによって発電に利用可能な水素は限られた少量に制限されるため、上記のように所定の低電流値で発電させることで、発電状態の安定化を図っている。
ここで、シャットバルブ61を閉じるには、例えばシャットバルブ61として非通電時に閉状態となるタイプのバルブを用いる場合には、シャットバルブ61に対する電力供給を遮断すればよい。
また、燃料電池22の発電継続を行なうには、エアコンプレッサ24を駆動し続け、燃料電池22に対する酸化ガスの供給を続行すればよい。ここで、上記のようにシャットバルブ61を閉じて、水素タンク23からの水素供給を遮断した場合には、燃料電池22は、循環流路内に残留する水素のみを利用可能となる。シャットバルブ61を閉じた後に行なわれる発電は、このような循環流路内に残留する水素を消費するためのものであり、得られる電力は限られたものとなる。ステップS120において燃料電池22による発電で得られる電力は、何らかの負荷に接続して消費することも可能であるが、本実施例では2次電池40を充電するために用いている。2次電池40を充電する際には、例えば、図2に示したDC/DCコンバータ42において配線48の電圧を充分に高く設定すればよい。シャットバルブ61を閉じた後の発電量は極めて少ないため、このように充分に高い電圧を設定するだけで、2次電池40の残存容量などを特に考慮することなく、容易に2次電池40を充電することができる。このように、燃料電池22から得られる電力により2次電池40が充電されるようにDC/DCコンバータ42等を制御することにより、制御部70は、充電制御部として機能する。なお、シャットバルブ61を閉じた後は発電可能時間が短いため、ステップS120における燃料電池22の発電時には、水素ポンプ65は駆動しなくても良い。
また、本実施例の車両は、水素圧超過が起こって水素供給が遮断されたことを使用者に知らせる報知部72を備えており(図1参照)、ステップS120ではこの報知部72が制御部70によってさらに駆動される。報知部72としては、例えば、電気自動車15の運転席近傍(例えばインストルメントパネル)に設けた表示部とすることができる。ステップS120では、この表示部において所定の形状の表示を点灯させればよい。あるいは、報知部72によって、水素供給圧超過を告げる音声や、所定の警報音を発する構成としても良い。
ステップS120を実行すると、制御部70は、シャットバルブ61の下流側における循環流路内の圧力を取得する(ステップS130)。本実施例では、圧力センサ52の検出信号を取得している。あるいは、燃料電池22の下流側に設けた圧力センサ54の検出信号を取得しても良い。
次に、制御部70は、ステップS130で取得したガス圧が、第2の基準値以下であるか否かを判断する(ステップS140)。ここで、第2の基準値とは、循環流路内のガスの圧力が充分に低い状態であることを示す基準となる圧力として予め設定された値である。ステップS130で取得したガス圧が第2の基準値以下でない場合には、循環流路内の圧力が許容できる程度には低下していないと判断して、制御部70は、上記ステップS130およびS140の工程を繰り返し実行する。このとき、燃料電池22は発電を継続しているため、循環流路内の水素は消費され続け、ステップS130で検出される圧力は、やがて第2の基準値以下となる。
ステップS140において循環流路内の圧力が第2の基準値以下であると判断されると、制御部70は、燃料電池22の発電を停止させ(ステップS150)、本ルーチンを終了する。燃料電池22の発電を停止させる動作は、具体的には、エアコンプレッサ24などの燃料電池補機を停止させると共に、燃料電池22と、それまで燃料電池22から電力を供給されていた2次電池40との間の接続を切断するものである。
なお、このように水素供給路60における圧力超過が検出されて燃料電池22への水素供給が停止されるときには、電気自動車15の駆動モータ32は、2次電池40から電力を得て車両走行を継続することができる。これにより、例えば適当な待避行動を取ることが可能となる。
以上のように構成された本実施例の燃料電池システム10を備える電気自動車15によれば、水素供給路60における圧力が第1の基準値を超えるとシャットバルブ61が閉じられるため、燃料電池22に過剰な圧力が加えられることに起因する燃料電池22の耐久性低下を防止することができる。ここで、本実施例では、水素供給路60における圧力超過に対応するために、水素供給路60に設けられたシャットバルブ61を利用しているため、燃料電池システム10の形状が複雑化したり、設計の自由度が低下することがない。特に本実施例では、燃料電池22における通常の発電停止時に水素ガスの流通を遮断するために用いるシャットバルブを利用しているため、部品点数が新たに増加することもない。
水素供給路60内の圧力超過に対応する他の方法としては、例えば、水素供給路60において所定の圧力で開弁するリリーフ弁を設け、圧力超過時にはリリーフ弁から水素ガスを排出する構成も考えられる。しかしながら、このような場合には、排出水素の拡散を促す目的から、電気自動車内における各部の配置や配管設計における自由度が制限され、システム全体の構造が複雑化する可能性がある。本実施例では、水素供給路60に設けられたバルブを用いるだけであるため、そのような問題は生じない。さらに、上記リリーフ弁が外部と連通する場合には、リリーフ弁において異物の噛み込みなどの不具合が生じ、水素圧の過剰上昇を防止する効果を充分に得られなくなる可能性がある。本実施例によれば、外部に開放されていない水素供給路60に設けられたバルブを用いるだけであるため、このような問題が生じることが無く、水素供給路60内の圧力超過に対応する動作の信頼性を、より高めることができる。
また、本実施例の燃料電池システム10によれば、水素供給路60内の圧力が第1の基準値を超えたときには、シャットバルブ61を閉じた後に、発電により循環流路内の水素を消費させて、循環流路内の圧力を低減した後に燃料電池22を停止させている。したがって、発電停止後に、燃料電池22内部でアノード側に過剰な圧力がかかることがない。すなわち、燃料電池22内部で、アノード側とカソード側との間の電解質膜を介した圧力差を低減し、圧力差に起因する燃料電池22の損傷を防止することができる。なお、本実施例では、燃料電池22の発電停止時にエアコンプレッサ24が停止されると、燃料電池22内のカソード側流路は略大気圧となる。
さらに、水素供給路60の圧力超過が検出されてシャットバルブ61を閉じた後に、燃料電池22から得られる電力を用いて2次電池40を充電する場合には、燃料電池システム10全体のシステム効率を向上させる効果が得られる。
また、本実施例の燃料電池システム10によれば、水素供給路60の圧力超過が検出されてシャットバルブ61を閉じたときには報知部72を駆動するため、使用者は、いかなる不具合によるシステム停止であるかを的確に認識し、適切な処置をとることが可能となる。本実施例では、圧力調整弁62の下流側における圧力に基づいて不具合発生を判断しているため、不具合発生部が圧力調整弁62である可能性が高いと判断することができる。
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
C1.変形例1:
水素供給路60におけるバルブの配置や圧力センサの配置は、図1に示した配置に限るものではない。例えば、シャットバルブ61を、圧力調整弁62の上流ではなく下流に設けることも可能である。また、ステップS100でガス圧を取得するために用いる圧力センサは、シャットバルブ61の上流側に配置しても下流側に配置しても良い。シャットバルブ61を閉じるまでは、シャットバルブ61の上流であるか下流であるかにかかわらず、水素供給路60内の異なる場所で検出した圧力同士は互いに相関するためである。いずれの場合にも、ステップS130でガス圧を取得するために用いる圧力センサとして、圧力調整弁62よりも下流に配設された圧力センサを用いれば、圧力調整弁62による圧力調整に不具合が生じたときに、これを検出することができる。
水素供給路60におけるバルブの配置や圧力センサの配置は、図1に示した配置に限るものではない。例えば、シャットバルブ61を、圧力調整弁62の上流ではなく下流に設けることも可能である。また、ステップS100でガス圧を取得するために用いる圧力センサは、シャットバルブ61の上流側に配置しても下流側に配置しても良い。シャットバルブ61を閉じるまでは、シャットバルブ61の上流であるか下流であるかにかかわらず、水素供給路60内の異なる場所で検出した圧力同士は互いに相関するためである。いずれの場合にも、ステップS130でガス圧を取得するために用いる圧力センサとして、圧力調整弁62よりも下流に配設された圧力センサを用いれば、圧力調整弁62による圧力調整に不具合が生じたときに、これを検出することができる。
C2.変形例2:
実施例とは異なる構成の燃料電池システムにおいて本発明を適用することとしても良い。例えば、実施例の燃料電池システム10では、燃料電池22に供給される水素ガスは循環流路内を循環するが、アノード排ガス路を設けず、燃料電池からアノード排ガスを排出させない構成(いわゆるデッドエンド型)としても良い。このような構成では、水素の循環は行なわれないが、発電で消費された水素量に対応する量の水素が新たに燃料電池内に供給される。したがって、燃料電池に新たに供給される水素量の調節において不具合が生じて圧力超過を起こす際に、本発明を適用することができる。
実施例とは異なる構成の燃料電池システムにおいて本発明を適用することとしても良い。例えば、実施例の燃料電池システム10では、燃料電池22に供給される水素ガスは循環流路内を循環するが、アノード排ガス路を設けず、燃料電池からアノード排ガスを排出させない構成(いわゆるデッドエンド型)としても良い。このような構成では、水素の循環は行なわれないが、発電で消費された水素量に対応する量の水素が新たに燃料電池内に供給される。したがって、燃料電池に新たに供給される水素量の調節において不具合が生じて圧力超過を起こす際に、本発明を適用することができる。
あるいは、純度の高い水素を貯蔵する水素タンクを備える構成に代えて、改質器を設け、炭化水素系燃料を改質して得られる改質ガスを、燃料ガスとして燃料電池に供給することとしても良い。この場合にも、燃料電池に供給される燃料ガス圧を検出し、燃料ガス圧が過剰となった時には、燃料ガス流路に設けたシャットバルブを閉じて燃料電池に対する燃料ガスの供給を遮断すればよい。
また、燃料電池システムは、実施例のように移動体の駆動用電源とする他、定置型の発電装置として用いる場合であっても、本発明を適用可能である。
いずれの場合にも、燃料電池に供給される燃料ガスの圧力超過時に、燃料電池に対する過剰圧の印加を防止する同様の効果を得ることができる。特に、燃料電池に供給する燃料ガスの圧力を調整する圧力調整部(圧力調整弁を複数有するシステムでは、燃料電池に直近の圧力調整弁)の下流における圧力を検出してシャットバルブの閉じ制御を行なう場合には、このような圧力調整部に生じる不具合に起因する圧力超過に対応することができる。
10…燃料電池システム
15…電気自動車
22…燃料電池
23…水素タンク
24…エアコンプレッサ
25…加湿モジュール
26…希釈器
27…気液分離器
27a…バルブ
28…エアクリーナ
30…駆動インバータ
32…駆動モータ
34…減速ギヤ
36…出力軸
38…車両駆動軸
40…2次電池
42…DC/DCコンバータ
44…補機類
46…電圧センサ
48…配線
50,52,54…圧力センサ
60…水素供給路
61…シャットバルブ
62…圧力調整弁
63…アノード排ガス路
64…排ガス排出路
65…水素ポンプ
67…酸化ガス供給路
68…カソード排ガス路
70…制御部
72…報知部
15…電気自動車
22…燃料電池
23…水素タンク
24…エアコンプレッサ
25…加湿モジュール
26…希釈器
27…気液分離器
27a…バルブ
28…エアクリーナ
30…駆動インバータ
32…駆動モータ
34…減速ギヤ
36…出力軸
38…車両駆動軸
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42…DC/DCコンバータ
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46…電圧センサ
48…配線
50,52,54…圧力センサ
60…水素供給路
61…シャットバルブ
62…圧力調整弁
63…アノード排ガス路
64…排ガス排出路
65…水素ポンプ
67…酸化ガス供給路
68…カソード排ガス路
70…制御部
72…報知部
Claims (7)
- 燃料電池を備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池に対して水素を含有する燃料ガスを供給する水素供給路と、
前記水素供給路内の圧力を検出する第1の圧力センサと、
閉状態となることで前記水素供給路を閉塞するシャットバルブと、
前記第1の圧力センサが検出する前記水素供給路内の圧力が、第1の基準値を超えたときに、前記シャットバルブを閉状態とする供給停止制御部と
を備える燃料電池システム。 - 請求項1記載の燃料電池システムであって、さらに、
前記水素供給路に設けられ、前記燃料電池に供給される前記燃料ガスの圧力を調整する圧力調整部を備え、
前記第1の圧力センサは、前記圧力調整部の配設部位よりも下流側における前記水素供給路内の圧力を検出する
燃料電池システム。 - 請求項1または2記載の燃料電池システムであって、さらに、
前記シャットバルブが閉状態にされた後に、前記燃料電池に連通する前記水素供給路内で水素を消費させる制御を行なう水素消費制御部を備える
燃料電池システム。 - 請求項3記載の燃料電池システムであって、
前記第1の圧力センサは、前記シャットバルブの配設部位よりも下流側における前記水素供給路内の圧力を検出し、
前記水素消費制御部は、前記第1の圧力センサが検出する前記水素供給路内の圧力が、前記第1の基準値よりも小さな第2の基準値以下に低下すると、前記水素供給路内の水素を消費させる制御を停止する
燃料電池システム。 - 請求項3記載の燃料電池システムであって、
前記第1の圧力センサは、前記シャットバルブの配設部位よりも上流側における前記水素供給路内の圧力を検出し、
前記燃料電池システムは、さらに、
前記シャットバルブの配設部位よりも下流側における前記水素供給路内の圧力を検出する第2の圧力センサを備え、
前記水素消費制御部は、前記第2の圧力センサが検出する前記水素供給路内の圧力が、前記第1の基準値よりも小さな第2の基準値以下に低下すると、前記水素供給路内の水素を消費させる制御を停止する
燃料電池システム。 - 請求項1ないし5いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、
前記供給停止制御部により前記シャットバルブが閉状態にされたときに、前記水素供給路で圧力超過が生じたことを報知する報知部を備える
燃料電池システム。 - 燃料電池を備える燃料電池システムの運転方法であって、
(a)前記燃料電池に対して水素を含有する燃料ガスを供給する水素供給路内の圧力を検出する工程と、
(b)前記(a)工程で検出した前記圧力が、所定の基準値を超えたときに、前記水素供給路に設けたシャットバルブによって前記水素供給路内の燃料ガスの流通を遮断する工程と
を備える燃料電池システムの運転方法。
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