JP2006232813A - 有機化合物、電荷輸送材料及び有機電界発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた正孔輸送性と電子輸送性を併せ持ち、優れた電気的酸化還元耐久性と高い三重項励起準位を有する有機化合物及び電荷輸送材料と、この有機化合物を用いた、高い発光効率と高い駆動安定性を有する有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表される有機化合物。
Figure 2006232813

(式中、Cz及びCzは、カルバゾリル基を表す。Cz及びCzは同一であっても異なっていても良い。
及びQは、直接結合又は任意の連結基を表す。Q及びQは同一であっても異なっていても良い。
Cz、Cz、Q、Q、環B及び環Bは、それぞれ置換基を有していても良い。)
【選択図】なし

Description

本発明は新規な有機化合物及び電荷輸送材料と、この有機化合物を用いた有機電界発光素子に関するものであり、詳しくは電気的な酸化や還元を繰返し受けても安定な有機化合物及び電荷輸送材料と、この有機化合物を用いた、高い発光効率と高い駆動安定性を有する有機電界発光素子に関するものである。
有機薄膜を用いた電界発光素子の開発が行われている。有機薄膜を用いた電界発光素子、即ち有機電界発光素子は、通常、基板上に、陽極、陰極、及びこれら両極間に設けられた少なくとも発光層を含む有機層を有する。有機層としては、発光層以外にも、正孔注入層(陽極バッファ層)、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等が設けられる。通常、これらの層を陽極と陰極との間に積層することにより有機電界発光素子が構成されている。
従来、有機電界発光素子は、蛍光発光を利用してきたが、素子の発光効率を上げる試みで、蛍光ではなく燐光発光を用いることが検討されている。しかしながら、燐光発光を用いた場合でも、未だ十分な発光効率が得られていないのが現状である。
これまでに開発された燐光発光性分子を用いた有機電界発光素子の多くは、発光層の材料(ホスト材料)として、カルバゾリル基を含む材料を用いることを特徴としており、例えば、非特許文献1ではホスト材料として以下に示すビフェニル誘導体を用いている。
Figure 2006232813
しかしながら、上記ビフェニル誘導体を用いた有機電界発光素子は、電荷の再結合位置が陰極側に偏る傾向があり、バランスが取り辛く、高い発光効率が得られていなかった。
そこで、近年、再結合領域を発光層に集中させる目的で、正孔輸送性と電子輸送性を兼ね備えたホスト材料が提案され、特許文献1には、有機電界発光素子に、以下に示す化合物を用いることが記載されている。
Figure 2006232813
しかしながら、上記化合物は、ピリジン環を1つしか有しておらず、LUMOが1つのピリジン環に局在化しているため、電子輸送能が低く、更に、一電子還元されたときの耐久性に問題がある。このため、該化合物は、高電圧下でしか発光が観測されず、発光輝度、発光効率が不十分である。
また、特許文献2には、有機電界発光素子の材料として、以下に示す化合物などを用いることが提案されている。
Figure 2006232813
しかしながら、これらの化合物は、ピリジン環又はピラジン環を1つしか有しておらず、前述したように、電子輸送能及び一電子還元されたときの耐久性の点で改善の必要がある。更に、窒素原子を同一の環に2つ以上含むピラジン環やピリミジン環などを有する化合物は、ピリジン環を有する化合物に比べて、三重項励起準位が低く、一電子還元されたときの耐久性も低いと考えられるため、ホスト材料としては問題がある。
また、特許文献2及び特許文献3には、有機電界発光素子の材料として、以下に示す化合物などを用いることが提案されている。
Figure 2006232813
これらの化合物は、直接結合された2つのピリジン環(ビピリジル骨格)を有するため、ある程度LUMOが非局在化し、電子輸送能が若干改善されていると考えられる。しかしながら、これらの化合物のピリジン環は、もう一方のピリジン環と直接結合している炭素原子の、両側のオルト位の炭素原子が、全て水素原子又は置換基に結合している。このため、立体障害により、これらの化合物のピビリジル骨格は平面性に乏しく、LUMOの非局在化が未だ不十分であり、電子輸送能に問題がある。更に、ビピリジル骨格は一電子還元されたときに平面性が高くなるため、ビピリジル骨格の平面性が高くなりにくいこれらの化合物は、一電子還元されたときの耐久性に問題があり、実用的な駆動寿命を達成し得ない。
また、特許文献2及び特許文献4には、有機電界発光素子の材料として、以下に示す化合物などを用いることが提案されている。
Figure 2006232813
これらの化合物は、電子輸送能及び一電子還元されたときの耐久性は改善されていることが予想されるものの、カルバゾリル基が一つだけであるため、正孔輸送性に乏しく、有機電界発光素子の発光層の材料としては、正孔輸送性と電子輸送性のバランスが悪く、ホスト材料としては改善が必要である。
特開平6−1972号公報 国際公開第WO03/078541号パンフレット 特開2004−273190号公報 国際公開第WO03/080760号パンフレット Appl.Phys.Lett.,75巻,4頁,1999年
本発明は、優れた正孔輸送性と電子輸送性を併せ持ち、優れた電気的酸化還元耐久性と高い三重項励起準位を有する有機化合物及び電荷輸送材料と、この有機化合物を用いた、高い発光効率と高い駆動安定性を有する有機電界発光素子を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構造を有する有機化合物が、優れた正孔輸送性と電子輸送性を併せ持ち、優れた電気的酸化還元耐久性と高い三重項励起準位を有するため、有機電界発光素子に用いると高い発光効率かつ高い駆動安定性を示すことを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の要旨は、下記式(I)で表される有機化合物(請求項1)、に存する。
本発明の別の要旨は、この有機化合物を含有することを特徴とする電荷輸送材料(請求項7)、に存する。
本発明の更に別の要旨は、基板上に、陽極、陰極、及びこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子において、該陽極と陰極との間に、この有機化合物を含有してなる層を有することを特徴とする有機電界発光素子(請求項8)、に存する。
Figure 2006232813
(式中、Cz及びCzは、カルバゾリル基を表す。Cz及びCzは同一であっても異なっていても良い。
及びQは、直接結合又は任意の連結基を表す。Q及びQは同一であっても異なっていても良い。
Cz、Cz、Q、Q、環B及び環Bは、それぞれ置換基を有していても良い。)
本発明において、上記式(I)は、下記式(I−1)〜(I−3)の何れかであることが好ましい(請求項2〜4)。
Figure 2006232813
(式中、G〜Gは、直接結合又は任意の連結基を表す。G〜Gはそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
環A及び環Aは、それぞれ置換基を有していても良いベンゼン環である。
Cz、Cz、環B及び環Bは、式(I)におけると同義である。)
Figure 2006232813
(式中、Gは、直接結合又は任意の連結基を表す。
Zは、Cz及びCz上の窒素原子同士を共役可能とする任意の連結基を表す。Zは置換基を有していても良い。
Cz、Cz、環B及び環Bは、式(I)におけると同義である。)
Figure 2006232813
(式中、Cz、Cz、Q、Q、環B及び環Bは、式(I)におけると同義である。)
また、上記式(I)の部分構造である下記式(I’)は、下記式(III−1)で表されることが好ましい(請求項5)。
Figure 2006232813
(式中、環B及び環Bは、式(I)におけると同義である。)
また、本発明の有機化合物の分子中に存在する全てのカルバゾリル基は下記式(II)で表されるN−カルバゾリル基であることが好ましい(請求項6)。
Figure 2006232813
本発明の有機化合物は、高い三重項励起順位を有し、優れた電荷輸送性(正孔輸送性、電子輸送性)、電気的酸化還元耐久性を有する。このため、この有機化合物を用いた有機電界発光素子によれば、高輝度・高効率で発光させることが可能となり、かつ素子の安定性、特に駆動安定性が向上し、長寿命化する。
本発明の有機化合物を用いた有機電界発光素子は、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)、車載表示素子、携帯電話表示や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、その技術的価値は大きいものである。
なお、本発明の有機化合物は、本質的に優れた酸化還元安定性を有することから、有機電界発光素子に限らず、電子写真感光体に利用することも有用である。
また、本発明の有機化合物は、電荷輸送材料用としてだけでなく、各種発光材料用、太陽電池材料用、バッテリー材料(電解液、電極、分離膜、安定剤など)用、医療用、塗料材料用、コーティング材料用、有機半導体材料用、トイレタリー材料用、帯電防止材料用、熱電素子材料用などにおいても有用である。
また、本発明の電荷輸送材料は、優れた成膜性、電荷輸送性、発光特性、耐熱性から、素子の層構成に合わせて、正孔注入材料、正孔輸送材料、発光材料、ホスト材料、電子注入材料、電子輸送材料などとしても適用可能である。
以下に本発明の有機化合物、電荷輸送材料及び有機電界発光素子の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定されない。
〔有機化合物〕
本発明の有機化合物は、下記式(I)で表されるものである。
Figure 2006232813
(式中、Cz及びCzは、カルバゾリル基を表す。Cz及びCzは同一であっても異なっていても良い。
及びQは、直接結合又は任意の連結基を表す。Q及びQは同一であっても異なっていても良い。
Cz、Cz、Q、Q、環B及び環Bは、それぞれ置換基を有していても良い。)
[1]構造上の特徴
上記式(I)で表される本発明の有機化合物は、優れた酸化還元耐久性を有し、電子輸送を主として担う部分と、正孔輸送を主として担う部分とがバランス良く存在することを特徴とする。
本発明の有機化合物中の電子輸送を主として担う部分である環B−環Bは、環BのN原子に水素原子又は置換基が結合しておらず、環B、環Bの間での立体障害が小さいため、平面性の高いビピリジル骨格を形成する。このため、環B−環B上に十分にLUMOが非局在化するため、優れた電子輸送能を有し、更に、基底状態と一電子還元された状態との間の構造変化が小さいため、一電子還元されたときの耐久性に優れる。
本発明の有機化合物はこのような特性を有するため、有機電界発光素子としたときの素子駆動電圧が低減され、更に素子駆動安定性が向上する。
また、本発明の有機化合物は、正孔輸送を主として担う部分として、Cz−Q−及びCz−Q−のように、カルバゾリル基が2以上存在するため、優れた正孔輸送能を有することから、有機電界発光素子としたときの素子駆動電圧が低減され、正孔と電子が発光層中で再結合を起こすために必要な正負電荷の供給バランスを取ることが容易になる。
[2]式(I)中の構成要素
〈環B及び環B
環B及び環Bはピリジン環であり、互いに独立にCz−Q−或いはCz−Q−以外にも任意の置換基を有していても良い(なお、環Bは必ずしもCz−Q−が置換しているものではない)。
式(I)の部分構造である、下記式(I’)としては、下記式(III−1)、(III−2)、又は(III−3)があるが、これらのうち、LUMOが非局在化している点から、式(III−1)及び式(III−2)が好ましく、平面性が高く、電子輸送能及び還元耐久性に優れることから、式(III−1)がより好ましい。
Figure 2006232813
環B及び/又は環Bが有しても良い置換基としては、例えば、アルキル基、芳香族炭化水素基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ハロゲン原子、アリールアミノ基、アルキルアミノ基、芳香族複素環基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環、カルバゾール環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の1価の基、或いは、それらが複数個連結されて形成された1価の基(例えば、ビフェニル基、ターフェニル基など)であり、更に好ましくは、フェニル基、4−ビフェニル基、3−カルバゾリルフェニル基、4−カルバゾリルフェニル基、N−カルバゾリル基である。
環B及び/又は環Bが置換基を有する場合、もう一方のピリジン環と直接結合している炭素原子のメタ位又はパラ位に置換基を有することが好ましい。例えば、環Bが置換基を有する場合には、4位、5位、6位の何れかに置換基を有することが好ましい。
即ち、環B及び環Bには、Cz−Q−及びCz−Q−も含め、それぞれ最大で合計5つの置換基が置換可能であるが、もう一方のピリジン環と直接結合している炭素原子のオルト位に置換基を有する場合、置換基を有さない(水素原子を有する)場合に比べ、立体障害が大きく、電子輸送能及び還元耐久性が低下するため、環B及び環Bに、もう一方のピリジン環と直接結合している炭素原子のオルト位に置換基を有さないことが好ましい。
ただし、環B及び環Bは、Cz−Q−及びCz−Q−以外に置換基を有さないこと、或いは、環B及び/又は環Bがフェニル基、3−カルバゾリルフェニル基を置換基として有することが好ましく、最も好ましくは、環B及び環BがCz−Q−及びCz−Q−以外に置換基を有さないことである。
即ち、環B及び/又は環Bに、Cz−Q−及びCz−Q−以外の置換基を有する場合、Cz−Q−及びCz−Q−のみしか置換基を有さない場合に比べ、一電子還元された際に、負電荷が遮蔽されて電子輸送能が低下するため、環B及び/又は環Bに、Cz−Q−及びCz−Q−以外に置換基を有さないこと、特に、環B及び環BがCz−Q−及びCz−Q−以外に置換基を有さないことが好ましい。
〈Cz及びCz
Cz及びCzは、それぞれカルバゾリル基を表す。
Cz及びCzは、同一であっても異なっていても良い。
Cz及びCzとしては、N−カルバゾリル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基が挙げられる。高い三重項励起準位、優れた電気化学的安定性の観点から、N−カルバゾリル基又は2−カルバゾリル基が好ましく、N−カルバゾリル基が最も好ましい。
式(I)におけるCz及びCzがN−カルバゾリル基である場合の式(I)を、下記式(I−4)に示す。
Figure 2006232813
Cz及びCzは、各々独立に、任意の置換基を有していても良い。
該置換基として好ましくは、アルキル基、芳香族炭化水素基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ハロゲン原子、アリールアミノ基、アルキルアミノ基、芳香族複素環基であり、より好ましくはアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基である。
高い三重項励起準位の観点、電荷分布の偏りに伴う電気的耐性の低下を避ける観点から、この置換基は、好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の1価の基、或いは、それらが複数個連結されて形成された1価の基(例えば、ビフェニレニル基、ターフェニレニル基など)である。
Cz及びCzそれぞれの置換基は、合計で分子量500以下が好ましく、250以下が更に好ましい。最も好ましくはCz及びCzは無置換であることである。
尚、本発明の有機化合物は、分子中に存在する全てのカルバゾリル基が下記式(II)で表されるN−カルバゾリル基であることが好ましい。
Figure 2006232813
〈Q及びQ
及びQは、直接結合或いは任意の連結基を表す。
及びQは同一であっても異なっていても良い。
任意の連結基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の2価の連結基、或いは、それらが複数個連結されて形成された2価の連結基(例えば、ビフェニレン基、ターフェニレン基など)が好ましく挙げられる。Q及びQとして、好ましくは、直接結合又は、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基などのベンゼン環を1〜8個連結してなる2価の連結基である。
及びQが任意の連結基である場合、Q及びQは、各々独立に、任意の置換基を有していても良く、該置換基としては好ましくは、アルキル基、芳香族炭化水素基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ハロゲン原子、アリールアミノ基、アルキルアミノ基、芳香族複素環基であり、より好ましくはアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基であり、特に好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環などの、6員環の単環又は2〜5縮合環由来の1価の基、或いは、それらが複数個連結されて形成された1価の基(例えば、ビフェニレニル基、ターフェニレニル基など)である。
及びQは、それぞれ、分子量が1000以下であることが好ましく、500以下であることが更に好ましい。
及びQは、特に、それぞれ、直接結合又は−(Ph)−であることが好ましい。ここで、Phは置換基を有していても良いフェニレン基を表す。また、pは1〜8の整数を表し、好ましくは1〜3の整数である。フェニレン基の置換基としては、上記Q及びQの置換基として例示したものと同様である。
尚、式(I)において、Qは、環B、環B、Q及びCzのいずれに連結しても良いことを示す。
〈Cz−Q−及びCz−Q−〉
Cz、Cz、Q及びQについては前述したが、CzとQ及びCzとQの好ましい組み合わせについて以下に説明する。
Cz−Q−及びCz−Q−の好ましい態様としては、次の[1]〜[3]が挙げられる。
[1] Cz−Q−及びCz−Q−は、それぞれ下記式(IV−1)で表されることが好ましい。以下、Cz−Q−及びCz−Q−を総称して、Cz−Q−という。
Figure 2006232813
(式中、Czは、Cz或いはCzを表す。
環Aは、ベンゼン環を表す。環Aは置換基を有していても良い。
G及びG’は、それぞれ直接結合或いは任意の連結基を表す。G及びG’は同一であっても異なっていても良い。G及びG’は置換基を有していても良い。
Cz−Q−が式(IV−1)で表されること、即ち、正孔輸送を主として担う部分(カルバゾリル基)と電子輸送を主として担う部分(ビピリジル骨格)がベンゼン環を介してメタ位で結合することにより、ベンゼン環の有する優れた耐熱性、優れた電気化学的安定性、高い三重項励起準位によって、本発明の有機化合物の特長である優れた電気化学的安定性、優れた耐熱性、高い三重項励起準位が損なわれないこと、また、m−連結型のベンゼン環は、電子受容性と電子供与性の両方を併せ持つため、カルバゾリル基が酸化された場合には、必要に応じて正電荷の一部を受容し、環B,Bが還元された場合には、必要に応じて負電荷の一部を受容することができるという作用機構で、本発明の有機化合物の酸化還元耐久性を更に向上させるという効果が奏される。
式(IV−1)におけるG及びG’は、式(I)におけるQの一部分であり、好ましい例及び有しても良い置換基の例は、式(I)におけるQ,Qについて前述したものと同様である。
式(IV−1)における環Aは、式(I)におけるQ,Qの一部分であり、有しても良い置換基の例は、式(I)におけるQ,Qについて前述したものと同様である。
式(IV−1)で表される部分構造の分子量としては、好ましくは2000以下、更に好ましくは1000以下である。
Cz−Q−及びCz−Q−が上記式(IV−1)で表される場合、本発明の有機化合物は、下記式(I−1)であることが好ましい。
Figure 2006232813
(式中、G〜Gは、式(IV−1)のG或いはG’と同義であり、直接結合又は任意の連結基を表す。G〜Gはそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
環A及び環Aは、式(IV−1)の環Aと同義であり、ベンゼン環を表す。環A及び環Aは、それぞれ置換基を有していても良い。
Cz、Cz、環B及び環Bは、式(I)におけると同義である。)
[2] Cz−Q−及びCz−Q−は、結合して、下記式(IV−2)で表される部分構造となることが好ましい。
Figure 2006232813
(式中、Cz及びCzは、式(I)におけると同義である。
は、直接結合又は任意の連結基を表す。
Zは、Cz及びCz上の窒素原子同士を共役可能とする任意の連結基を表す。
及びZは、それぞれ置換基を有していても良い。)
Cz及びCzは上記式(IV−2)で表される、即ち、連結基Zを介して二つのカルバゾリル基上の窒素原子同士が共役可能であることが重要である。
即ち、同一の芳香族炭化水素基(この芳香族炭化水素基には、複数の環が連結されたもの(例えば、ビフェニル基)を含む)上に複数のカルバゾリル基が連結されている場合、互いの窒素原子同士が非共役であると、電気的酸化を受けたとき、該芳香族炭化水素基上に過剰の正電荷が集中し、或いは、カルバゾリル基のN,1,3,6,8−位の少なくとも一カ所への正電荷の局在化が強まり、該電気的酸化に対する耐久性が著しく低下してしまうため、好ましくない。
他方、同一の芳香族炭化水素基(この芳香族炭化水素基には、複数の環が連結されたもの(例えば、ビフェニル基)を含む)上に2つのカルバゾリル基が連結されている場合、互いの窒素原子同士が共役可能であると、該芳香族炭化水素基及び2つのカルバゾリル基上に正電荷が比較的均等に分布し、一電子酸化されたときの耐久性に優れるため、好ましい。
ここで、窒素原子同士が共役可能であるとは、窒素原子同士が、
Figure 2006232813
(cis-,trans-のいずれでも可)又はこれらを組み合わせてなる部分構造で連結されていることと同義(ただし、G,G,Gは各々独立に、水素原子又は任意の置換基を表すか、或いは、芳香族炭化水素環や芳香族複素環の一部を構成する。)である。
連結基Z上には、Cz及びCzを含めて、好ましくは、合計で2〜5つ、より好ましくは2又は4つ、最も好ましくは2つである。
式(IV−1)におけるZは、式(I)におけるQ,Qの一部分であるので、具体例及び有しても良い置換基の例は、式(I)におけるQ,Qについて前述したものと同様である。但し、ZはCz及びCz上の窒素原子同士を共役可能とする任意の連結基である。
Zを含めた部分構造式(IV−2)としては以下のものが挙げられる。
Figure 2006232813
Figure 2006232813
Figure 2006232813
Figure 2006232813
上記例示のうち、中でも、V−1,2,4〜15,17〜21,27,28がより好ましく、V−1,6〜9,11〜15が更に好ましく、V−1が最も好ましい。
式(IV−2)におけるGは、式(I)におけるQ,Qの一部分であり、好ましい例及び有しても良い置換基の例は、式(I)におけるQ,Qについて前述したものと同様である。
なお、式(IV−2)で表される部分構造の分子量としては、好ましくは3000以下、更に好ましくは1500以下である。
Cz−Q−及びCz−Q−が上記(IV−2)で表される場合、本発明の有機化合物は下記式(I−2)で表されることが好ましい。
Figure 2006232813
(Gは、上記式(IV−2)のGと同義であり、直接結合又は任意の連結基を表す。
Zは、上記式(IV−2)のZと同義であり、Cz及びCz上の窒素原子同士を共役可能とする任意の連結基を表す。Zは置換基を有していても良い。
Cz、Cz、Q、環B及び環Bは、式(I)におけると同義である。)
[3] Cz−Q−及びCz−Q−は、それぞれ環B及びBに直接結合することが好ましい。
この場合、本発明の有機化合物は、下記式(I−3)で表されることが、一電子酸化されたとき、正電荷がより広く分布するため、より優れた正孔輸送能を有し、ビピリジル骨格の優れた電子輸送能とのバランスを取ることが容易になる点で好ましい。
Figure 2006232813
(式中、Cz、Cz、Q、Q、環B及び環Bは、式(I)におけると同義である。)
[3]分子量
本発明の有機化合物の分子量は、通常4000以下、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下であり、また通常200以上、好ましくは300以上、より好ましくは400以上である。
本発明の有機化合物の分子量がこの上限値を超えると、昇華性が著しく低下して電界発光素子を制作する際に蒸着法を用いる場合において支障を来したり、不純物の高分子量化によって精製が困難となる場合があり、またこの下限値を下回ると、ガラス転移温度及び、融点、気化温度などが低下するため、耐熱性が著しく損なわれるおそれがある。
[4]物性
本発明の有機化合物は、通常50℃以上のガラス転移温度を有するが、有機電界発光素子に使用する際には、その耐熱性の観点から、ガラス転移温度は90℃以上であることが好ましく、110℃以上であることが更に好ましい。ガラス転移温度の上限は通常400℃程度である。
本発明の有機化合物は、常圧下で通常800℃以下の気化温度を有するが、有機電界発光素子に使用する際には、その蒸着製膜工程の安定性の観点から、気化温度は700℃以下であることが好ましく、600℃以下であることが更に好ましい。気化温度の下限は通常300℃程度である。
本発明の有機化合物は、通常100℃以上の融点を有するが、有機電界発光素子に使用する際には、その耐熱性の観点から、融点は150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることが更に好ましい。融点の上限は通常500℃程度である。
[5]具体例
以下に、本発明の有機化合物として好ましい具体的な例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の例示構造式中、−N−Czは、N−カルバゾリル基を示す。
Figure 2006232813
Figure 2006232813
Figure 2006232813
Figure 2006232813
Figure 2006232813
Figure 2006232813
Figure 2006232813
Figure 2006232813
[6]合成法
本発明の有機化合物は、目的とする化合物の構造に応じて原料を選択し、公知の手法を用いて合成することができる。
(1) まず、直接結合された2つのピリジン環(ビピリジル骨格)の導入方法としては、次のA)ないしE)に記載の方法を採用することができる。
A)Synthesis,1-24;1976やその引用文献などで開示されている、アルデヒドとピリジルアセチリドとを、硫酸などの強酸存在下で酢酸、アルコール、ニトロベンゼンなどの芳香族溶媒などの単独又は混合溶媒中で反応させて、或いは水酸化ナトリウムなどの強塩基存在下でアルコール及び/又は水溶媒中で加熱条件下反応させて、中間体(−CH=CR−CO−)を得、これを酢酸、メタノールなどの溶媒中、加熱条件下、酸素存在下、アシルピリジニウム塩と酢酸アンモニウムを作用させて合成する方法。
Figure 2006232813
B)Synthesis,1-24;1976やその引用文献、Journal of the American Chemical Society,126,4958-4971;2004、Inorganic Chemistry,42,2908-2918;2003、European Journal of Inorganic Chemistry,1019-1029;2001などで開示されている、アルデヒドとアセチリドとを、硫酸などの強酸存在下で酢酸、アルコール、ニトロベンゼンなどの芳香族溶媒などの単独又は混合溶媒中で反応させて、或いは水酸化ナトリウムなどの強塩基存在下でアルコール及び/又は水溶媒中で加熱条件下反応させて、中間体(−CH=CR−CO−)を得、これを酢酸、メタノールなどの溶媒中、加熱条件下、酸素存在下、ピリダシルピリジニウム塩と酢酸アンモニウムを作用させて合成する方法。
Figure 2006232813
C)Synthesis,1-24;1976やその引用文献、Inorganic Chemistry,42,367-378;2002、Polyhedron,22,93-108;2003などで開示されている、アルデヒドと1,2−ジケトンとを、硫酸などの強酸存在下で酢酸、アルコール、ニトロベンゼンなどの芳香族溶媒などの単独又は混合溶媒中で反応させて、或いは水酸化ナトリウムなどの強塩基存在下でアルコール及び/又は水溶媒中で加熱条件下反応させて、中間体(−CH=CR−CO−)2を得、これを酢酸、メタノールなどの溶媒中、加熱条件下、酸素存在下、アシルピリジニウム塩と酢酸アンモニウムを作用させて合成する方法。
Figure 2006232813
D)Journal of Organic Chemistry,67,443-449;2002、Inorganic Chemistry,42,367-378;2002などに開示されている、ハロゲン化ピリジンをパラジウム、ニッケルなどの遷移金属触媒下でジスタナン、ジボランなどと反応させて、或いはハロゲン化ピリジンをブチルリチウムなどの有機リチウム試薬と反応させた後、クロロスタナン、トリアルコキシボランなどと反応させて、有機スズ試薬、有機ホウ素試薬、有機亜鉛試薬などの有機金属試薬を得、これをパラジウム、ニッケルなどの遷移金属触媒下でハロゲン化ピリジンと反応させて合成する方法。
Figure 2006232813
E)Tetrahedron,43,895-904;1987、Synthesis,321-324;1998、Organic Letters,2,803-805;2000、Journal of Organic Chemistry,67,443-449;2002などに開示されているラネーニッケル、パラジウムカーボン、ブチルリチウム、三フッ化ボロンエーテル錯体などを用いて、ピリジンを二量化する方法。
(2) 次に、カルバゾリル基の導入方法としては、その結合位置により次のような方法を採用することができる。
(2−1) N−カルバゾリル基の導入方法としては、次のa)〜c)に記載の方法を採用することができる。
a)ビピリジル骨格を有する芳香族2又は2以上置換フッ化物(F−Ar−F)と、置換又は無置換のカルバゾールと水素化ナトリウム、tert−ブトキシカリウム、n−ブチルリチウムなどの強塩基とを反応させたもの(フッ素原子に対して1.1〜10当量程度)とを、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エーテル、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶液中で加熱還流下、1〜60時間撹拌する方法。
Figure 2006232813
b)ビピリジル骨格を有する芳香族2又は2以上置換ハロゲン化物(X−Ar−X、好ましくはX=Br,I)と、置換又は無置換のカルバゾールとを、銅粉末、銅線、ハロゲン化銅(CuX(X=Cl、Br、I))、酸化銅(CuO)などの銅触媒(ハロゲン原子に対して0.1〜5当量程度)及び、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、リン酸カリウム、炭酸セシウム、tert−ブトキシナトリウムなど塩基性物質(ハロゲン原子に対して1〜10当量程度)の存在下、不活性ガス気流下、無溶媒又は、ニトロベンゼンなどの芳香族溶媒、テトラグライム、ポリエチレングリコールなどの溶媒中、20〜300℃の温度範囲で、1〜60時間撹拌混合する方法。
Figure 2006232813
c)ビピリジル骨格を有する芳香族2又は3置換ハロゲン化物(X−Ar−X、好ましくはX=Cl,Br,I)と、置換又は無置換のカルバゾールとを、Pd(dba)(Pd=パラジウム、dba=ジベンジリデンアセトン)、Pd(dba)、酢酸パラジウムなどの2価のパラジウム触媒と、BINAP(=2,2’-ビス(ジフェニルフォスフィノ-1,1’-ビナフチル)、トリ(tert−ブチル)フォスフィン、トリフェニルフォスフィン、1,2−ビス(ジフェニルフォスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルフォスフィノ)プロパン、1,3−ビス(ジフェニルフォスフィノ)ブタン、dppf(=1,1’-ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン)などのリガンド類の組合せ、或いはPd(PPh(PPh=トリフェニルフォスフィン)などの0価のパラジウム錯体、或いはPdCl(dppf)などのパラジウム塩化物錯体などの触媒(ハロゲン原子に対して0.001〜1当量程度)と、tert-ブトキシカリウム、tert-ブトキシナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミンなどの塩基性物質(通常、ハロゲン原子に対して、1.1〜10当量)存在下、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、キシレン、トルエン、トリエチルアミンなどの溶媒中、30〜200℃で1〜60時間かけて撹拌する方法。
Figure 2006232813
(2−2) 2〜8−カルバゾリル基の導入方法としては、連結基Qが連結される位置に、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子を有するカルバゾールとアリールボレートとのカップリング反応、若しくは、ハロゲン化アリールとカルバゾリルボレートとのカップリング反応を利用可能であり、具体的には、公知のカップリング手法(「Palladium in Heterocyclic Chemistry:A guide for the Synthetic Chemist」(第二版、2002、Jie Jack Li and Gordon W.Gribble、Pergamon社)、「遷移金属が拓く有機合成 その多彩な反応形式と最新の成果」(1997年、辻二郎、化学同仁社)、「ボルハルト・ショアー現代有機化学 下」(2004年、K.P.C.Vollhardt、化学同人社))などに記載又は引用されている環同士の結合(カップリング)反応)を用いることができる。
(3) また、上述した合成手法例に限らず、本発明におけるカルバゾリル基と、ビピリジル骨格とを繋ぐ連結基(即ち、Q,Q)の形成には、必要に応じて、公知のカップリング手法(「Palladium in Heterocyclic Chemistry:A guide for the Synthetic Chemist」(第二版、2002、Jie Jack Li and Gordon W.Gribble、Pergamon社)、「遷移金属が拓く有機合成 その多彩な反応形式と最新の成果」(1997年、辻二郎、化学同仁社)、「ボルハルト・ショアー現代有機化学 下」(2004年、K.P.C.Vollhardt、化学同人社))などに記載又は引用されている環同士の結合(カップリング)反応)を用いることができる。
(4) 化合物の精製方法としては、「分離精製技術ハンドブック」(1993年、(財)日本化学会編)、「化学変換法による微量成分及び難精製物質の高度分離」(1988年、(株)アイ ピー シー発行)、或いは「実験化学講座(第4版)1」(1990年、(財)日本化学会編)の「分離と精製」の項に記載の方法をはじめとし、公知の技術を利用可能である。具体的には、抽出(懸濁洗浄、煮沸洗浄、超音波洗浄、酸塩基洗浄を含む)、吸着、吸蔵、融解、晶析(溶媒からの再結晶、再沈殿を含む)、蒸留(常圧蒸留、減圧蒸留)、蒸発、昇華(常圧昇華、減圧昇華)、イオン交換、透析、濾過、限外濾過、逆浸透、圧浸透、帯域溶解、電気泳動、遠心分離、浮上分離、沈降分離、磁気分離、各種クロマトグラフィー(形状分類:カラム、ペーパー、薄層、キャピラリー。移動相分類:ガス、液体、ミセル、超臨界流体。分離機構:吸着、分配、イオン交換、分子ふるい、キレート、ゲル濾過、排除、アフィニティー。)などが挙げられる。
(5) 生成物の確認や純度の分析方法としては、ガスクロマトグラフ(GC)、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、高速アミノ酸分析計(AAA)、キャピラリー電気泳動測定(CE)、サイズ排除クロマトグラフ(SEC)、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、交差分別クロマトグラフ(CFC)質量分析(MS、LC/MS,GC/MS,MS/MS)、核磁気共鳴装置(NMR(HNMR,13CNMR))、フーリエ変換赤外分光高度計(FT−IR)、紫外可視近赤外分光高度計(UV.VIS,NIR)、電子スピン共鳴装置(ESR)、透過型電子顕微鏡(TEM−EDX)電子線マイクロアナライザー(EPMA)、金属元素分析(イオンクロマトグラフ、誘導結合プラズマ−発光分光(ICP−AES)原子吸光分析(AAS)蛍光X線分析装置(XRF))、非金属元素分析、微量成分分析(ICP−MS,GF−AAS,GD−MS)等を必要に応じ、適用可能である。
〔電荷輸送材料〕
本発明の有機化合物は、優れた電荷輸送性を有するため、電荷輸送材料として有用である。本発明の有機化合物を含有する電荷輸送材料は、優れた成膜性、電荷輸送性、発光特性及び耐熱性を有する。
〔有機電界発光素子〕
次に、上述のような本発明の有機化合物を用いる本発明の有機電界発光素子について説明する。
本発明の有機電界発光素子は、基板上に、陽極、陰極、及びこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子において、該陽極と陰極との間に、この有機化合物を含有してなる層を有するものであって、好ましくは本発明の有機化合物を有機発光層に含有し、特に好ましくは有機発光層において、本発明の有機化合物をホスト材料とし、このホスト材料に対して、有機金属錯体がドープされてなるものである。
本発明の有機化合物を、このように有機電界発光素子の有機発光層のホスト材料として用いる場合、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
以下に、本発明の有機電界発光素子の構造の一例について、図面を参照しながら説明するが、本発明の有機電界発光素子の構造は以下の図示のものに限定されるものではない。
図1〜3は本発明の有機電界発光素子の構造例を模式的に示す断面図であり、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層(陽極バッファ層)、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は陰極を各々表す。
(基板)
基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂の板又はフィルムが好ましい。合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。基板のガスバリア性が小さすぎると、基板を通過した外気により有機電界発光素子が劣化することがあるので好ましくない。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
(陽極)
基板1上には陽極2が設けられる。陽極2は正孔輸送層4への正孔注入の役割を果たすものである。陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。陽極2は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより形成されることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などで陽極2を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液中に分散させて、基板1上に塗布することにより形成することもできる。更に、導電性高分子で陽極2を形成する場合には、電解重合により基板1上に直接重合薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすること
も可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、所望により金属で形成して基板1を兼ねても良い。
(正孔輸送層)
図1に示す構成の素子において、陽極2の上には正孔輸送層4が設けられる。正孔輸送層の材料に要求される条件としては、陽極2からの正孔注入効率が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが必要である。そのためには、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、しかも正孔移動度が大きく、更に安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが要求される。また、発光層5に接するために発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させないことが求められる。上記の一般的要求以外に、車載表示用の応用を考えた場合、素子には更に耐熱性が要求される。従って、ガラス転移温度として85℃以上の値を有する材料が望ましい。
このような正孔輸送材料としては、発光層5のホスト材料に用いられる正孔輸送性材料と同様に、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4''−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J. Lumin., 72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem. Commun.,2175頁、1996年)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth. Metals, 91巻、209頁、1997年)、4,4'−N,N'−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール誘導体等が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いても良いし、必要に応じて複数種混合して用いても良い。
上記の化合物以外に、正孔輸送層4の材料として、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym. Adv. Tech., 7巻、33頁、1996年)等の高分子材料が挙げられる。
正孔輸送層4は、スプレー法、印刷法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法などの通常の塗布法や、インクジェット法、スクリーン印刷法など各種印刷法等の湿式成膜法や、真空蒸着法などの乾式成膜法で形成することができる。
塗布法の場合は、正孔輸送材料の1種又は2種以上に、必要により正孔のトラップにならないバインダー樹脂や塗布性改良剤などの添加剤を添加し、適当な溶剤に溶解して塗布溶液を調製し、スピンコート法などの方法により陽極2上に塗布し、乾燥して正孔輸送層4を形成する。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は添加量が多いと正孔移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、通常、正孔輸送層中の含有量で50重量%以下が好ましい。
真空蒸着法の場合には、正孔輸送材料を真空容器内に設置されたルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、ルツボを加熱して、正孔輸送材料を蒸発させ、ルツボと向かい合って置かれた、陽極2が形成された基板1上に正孔輸送層4を形成させる。
正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。この様に薄い膜を一様に形成するためには、一般に真空蒸着法がよく用いられる。
(発光層)
図1に示す素子において、正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入されて正孔輸送層4を移動する正孔と、陰極から注入されて正孔阻止層6を移動する電子との再結合により励起されて強い発光を示す発光物質により形成される。通常、発光層5には、発光物質であるドーパント材料とホスト材料が含まれる。なお、本明細書では、ドーパント材料やホスト材料等、発光層に含まれる材料を発光層材料という。
発光層5に用いられる発光層材料としては、安定な薄膜形状を有し、固体状態で高い発光(蛍光又は燐光)量子収率を示し、正孔及び/又は電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。更に電気化学的かつ化学的に安定であり、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくい化合物であることが要求される。
更に、本発明においては、後述の正孔阻止層の説明の項にも記載するように、正孔阻止材料の、サイクリックボルタンメトリー測定において得られる第一酸化電位よりも第一酸化電位が小さい発光物質、とりわけ
(正孔阻止材料の酸化電位)−(発光層材料の酸化電位)≧0.1V
(正孔阻止材料の還元電位)≧(発光物質の還元電位)
を満たす発光層材料を用いることが好ましい。ただし、上記式では、発光層5がホスト材料とドーパント材料を含んでいる場合には、発光層材料の酸化或いは還元電位は、ホスト材料の酸化或いは還元電位である。
このような条件を満たし、蛍光を発する発光層を形成する材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体(特開平6−322362号公報)、ビススチリルベンゼン誘導体(特開平1−245087号公報、同2−222484号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2−247278号公報)、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールの金属錯体(特開平8−315983号公報)、シロール誘導体、等が挙げられる。これらの発光層材料は、通常は真空蒸着法により正孔輸送層上に積層される。また、前述の正孔輸送層材料のうち、発光性を有する芳香族アミン系化合物も発光層材料として用いることができる。
素子の発光効率を向上させるとともに発光色を変える目的で、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体をホスト材料として、クマリン等のレーザー用蛍光色素をドープすること(J.Appl.Phys.,65巻,3610頁,1989年)等が行われている。このドーピング手法は、発光層5にも適用でき、ドープ用材料としては、クマリン以外にも各種の蛍光色素が使用できる。青色発光を与える蛍光色素としては、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン及びそれらの誘導体等が挙げられる。緑色蛍光色素としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体等が挙げられる。黄色蛍光色素としては、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。赤色蛍光色素としては、DCM系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
上記のドープ用蛍光色素以外にも、ホスト材料に応じて、レーザー研究,8巻,694頁,803頁,958頁(1980年);同9巻,85頁(1981年)、に列挙されている蛍光色素などが発光層用のドープ材料として使用することができる。
ホスト材料に対して上記蛍光色素がドープされる量は、10-3重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また10重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。この下限値を下回ると素子の発光効率向上に寄与できない場合があり、上限値を越えると濃度消光が起き、発光効率の低下に至る可能性がある。
ただし、本発明の有機化合物は、前述の如く、正孔輸送を主として担う部分と電子輸送を主として担う部分の両方を有し、このため、優れた正孔輸送性と電子輸送性を併せ持ち、また、優れた電気的酸化還元耐久性と高い三重項励起準位を有するものであることから、この有機化合物は、有機電界発光素子の有機発光層のホスト材料として好適であり、従って、本発明の有機電界発光素子の有機発光層は、本発明の有機化合物をホスト材料とし、このホスト材料に後述の理由から発光物質として好適な有機金属錯体がドープされていることが好ましい。
本発明において、発光層に使用されるドーパント材料として、好ましくは、周期表7ないし11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。該金属錯体のT1(励起三重項準位)はホスト材料として使用する本発明の有機化合物のT1より低いことが発光効率の観点から好ましい。更にドーパント材料において発光が起こることから、酸化還元などの化学的安定成も要求される。
周期表7ないし11族から選ばれる金属を含む燐光性有機金属錯体における、該金属として好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、及び金が挙げられる。これらの有機金属錯体として、好ましくは下記一般式(V)又は一般式(VI)で表される化合物が挙げられる。
MLk-jL’j (V)
(式中、Mは金属、kは該金属の価数を表す。L及びL’は二座配位子を表す。jは0又は1又は2を表す。)
Figure 2006232813
(式中、M7は金属、Tは炭素又は窒素を表す。Tが窒素の場合はR14、R15は無く、Tが炭素の場合はR14、R15は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
12、R13は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、互いに連結して環を形成しても良い。)
一般式(V)中の二座配位子L及びL’はそれぞれ以下の部分構造を有する配位子を示す。
Figure 2006232813
(環E1及び環E1’は各々独立に、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、置換基を有していても良い。環E2及び環E2’は含窒素芳香族複素環基を表し、置換基を有していても良い。R21、R22及びR23はそれぞれハロゲン原子;アルキル基;アルケニル基;アルコキシカルボニル基;メトキシ基;アルコキシ基;アリールオキシ基;ジアルキルアミノ基;ジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アシル基;ハロアルキル基又はシアノ基を表す。)
一般式(V)で表される化合物として、更に好ましくは下記一般式(Va)、(Vb)(Vc)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2006232813
(式中、M4は金属、kは該金属の価数を表す。環E1は置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を表し、環E2は置換基を有していても良い含窒素芳香族複素環基を表す。)
Figure 2006232813
(式中、M5は金属、kは該金属の価数を表す。環E1は置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、環E2は置換基を有していても良い含窒素芳香族複素環基を表す。)
Figure 2006232813
(式中、M6は金属、kは該金属の価数を表し、jは0又は1又は2を表す。環E1及び環E1’は各々独立に、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し、環E2及び環E2’は各々独立に、置換基を有していても良い含窒素芳香族複素環基を表す。)
一般式(Va)、(Vb)、(Vc)で表される化合物の環E1及び環E1’として、好ましくは、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、チエニル基、フリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、又はカルバゾリル基が挙げられる。
環E2及び環E2’として、好ましくは、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、又はフェナントリジル基が挙げられる。
一般式(Va)、(Vb)及び(Vc)で表される化合物が有していても良い置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基等が挙げられ、これらは互いに連結して環を形成しても良い。
なお、環E1が有する置換基と環E2が有する置換基が結合、又は環E1’が有する置換基と環E2’が有する置換基が結合して、一つの縮合環を形成しても良く、このような縮合環としては7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。
環E1、環E1’、環E2及び環E2’の置換基として、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ジアリールアミノ基、又はカルバゾリル基が挙げられる。
式(Va)、(Vb)におけるM4ないしM5として好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられる。式(VI)におけるM7として好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
前記一般式(V)、(Va)、(Vb)及び(Vc)で示される有機金属錯体の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定されるわけではない。
Figure 2006232813
Figure 2006232813
前記一般式(V)、(Va)、(Vb)及び(Vc)で表される有機金属錯体の中でも、特に配位子L及び/又はL’として2−アリールピリジン系配位子(2−アリールピリジン、これに任意の置換基が結合したもの、又はこれに任意の気が縮合してなるもの)を有する化合物が好ましい。
前記一般式(VI)で表わされる有機金属錯体の具体例を以下に示すが、下記の化合物に限定されるわけではない(以下において、Meはメチル基、Etはエチル基を示す。)。
Figure 2006232813
このような燐光性ドーパント材料の分子量は、通常4000以下、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下であり、また通常200以上、好ましくは300以上、より好ましくは400以上である。分子量がこの上限値を超えると、昇華性が著しく低下して電界発光素子を制作する際に蒸着法を用いる場合において支障を来したり、或いは有機溶媒などへの溶解性の低下や、合成工程で生じる不純物成分の増加に伴って、材料の高純度化(即ち劣化原因物質の除去)が困難になる場合があり、また分子量が上記下限値を下回ると、ガラス転移温度及び、融点、気化温度などが低下するため、耐熱性が著しく損なわれるおそれがある。
これらのドーパント材料を2種類以上使用する場合は、正孔阻止層中の正孔阻止材料の酸化電位が、複数種のドーパント材料の中で一番大きな酸化電位を有するものよりも大きいことが好ましい。
このような有機金属錯体をドーパント材料として用いた、燐光発光を示す発光層に使用されるホスト材料としては、本発明の有機化合物の1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。また、本発明の有機化合物と共に、蛍光発光を示す発光層に使用されるホスト材料として前述した材料や、4,4´−N,N´−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール誘導体(WO 00/70655号公報)、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(USP 6,303,238号公報)、2,2´,2´´−(1,3,5−ベンゼントリル)トリス[1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール](Appl.Phys.Lett.,78巻,1622頁,2001年)、ポリビニルカルバゾール(特開2001−257076号公報)等の1種又は2種以上を併用しても良い。発光層中に、本発明の有機化合物以外のホスト材料を含む場合、その含有量は、本発明の有機化合物に対して50重量%以下であることが好ましい。
発光層中にドーパント材料として含有される有機金属錯体の量は、0.1重量%以上が好ましく、また30重量%以下が好ましい。この下限値を下回ると素子の発光効率向上に寄与できない場合があり、上限値を上回ると有機金属錯体同士が2量体を形成する等の理由で濃度消光が起き、発光効率の低下に至る可能性がある。
燐光発光を示す発光層におけるドーパント材料の量は、従来の蛍光(1重項)を用いた素子において、発光層に含有される蛍光性色素の量より、若干多い方が好ましい傾向がある。また、燐光性ドーパント材料と共に蛍光色素が発光層中に含有される場合、該蛍光色素の量は、0.05重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また10重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。
発光層5の膜厚は、通常3nm以上、好ましくは5nm以上であり、また通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
発光層5も正孔輸送層4と同様の方法で形成することができる。
ドーパント材料としての上述の蛍光色素及び/又は燐光色素(燐光性ドーパント材料)を発光層のホスト材料としての本発明の有機化合物にドープする方法を以下に説明する。
塗布の場合は、本発明の有機化合物と、ドーパント材料、更に必要により、電子のトラップや発光の消光剤とならないバインダー樹脂や、レベリング剤等の塗布性改良剤などの添加剤を添加し溶解した塗布溶液を調製し、スピンコート法などの方法により正孔輸送層4上に塗布し、乾燥して発光層5を形成する。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は添加量が多いと正孔/電子移動度を低下させるので、少ない方が望ましく、発光層中の含有量で50重量%以下が好ましい。
真空蒸着法の場合には、本発明の有機化合物を真空容器内に設置されたルツボに入れ、ドーパント材料を別のルツボに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、各々のルツボを同時に加熱して蒸発させ、ルツボと向かい合って置かれた基板上に層を形成する。また、他の方法として、上記の材料を予め所定比で混合したものを同一のルツボを用いて蒸発させても良い。
上記各ドーパント材料が発光層5中にドープされる場合、発光層の膜厚方向において均一にドープされるが、膜厚方向において濃度分布があっても構わない。例えば、正孔輸送層4との界面近傍にのみドープしたり、逆に、正孔阻止層6界面近傍にドープしても良い。
発光層5も正孔輸送層4と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
なお発光層5は、本発明の性能を損なわない範囲で上記以外の成分を含んでいても良い。
(正孔阻止層)
図1に示す素子において、正孔阻止層6は発光層5の上に、発光層5の陰極側の界面に接するように積層される。
正孔阻止層6は、正孔輸送層4から移動してくる正孔が陰極8に到達するのを阻止することができ、かつ、陰極8から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成されることが好ましい。従って、正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いことが必要とされる。正孔阻止層6は正孔と電子を発光層5内に閉じこめて、発光効率を向上させる機能を有する。
本発明の有機電界発光素子に設けられる正孔阻止層6のイオン化ポテンシャルは、発光層5のイオン化ポテンシャル(発光層5がホスト材料とドーパント材料を含んでいる場合にはホスト材料のイオン化ポテンシャル)より0.1eV以上大きいことが好ましい。イオン化ポテンシャルは物質のHOMO(最高被占分子軌道)レベルにある電子を真空準位に放出するのに必要なエネルギーで定義される。イオン化ポテンシャルは光電子分光法で直接定義されるか、電気化学的に測定した酸化電位を基準電極に対して補正しても求められる。後者の方法の場合、例えば飽和甘コウ電極(SCE)を基準電極として用いたとき、下記式で定義される(“Molecular Semiconductors”,Springer−Verlag,1985年、98頁)。
イオン化ポテンシャル=酸化電位(vs.SCE)+4.3eV
更に、本発明の有機電界発光素子に設けられる正孔阻止層6の電子親和力(EA)は、発光層5の電子親和力(発光層5がホスト材料とドーパント材料を含んでいる場合にはホスト材料の電子親和力)と比較して同等以上であることが好ましい。電子親和力もイオン化ポテンシャルと同様に真空準位を基準として、真空準位にある電子が物質のLUMO(最低空分子軌道)レベルに落ちて安定化するエネルギーで定義される。電子親和力は、上述のイオン化ポテンシャルから光学的バンドギャップを差し引いて求められるか、電気化学的な還元電位から下記の式で同様に求められる。
電子親和力=還元電位(vs.SCE)+4.3eV
従って、本発明の有機電界発光素子に設けられる正孔阻止層6は、酸化電位と還元電位を用いて、
(正孔阻止材料の酸化電位)−(発光層材料の酸化電位)≧0.1V
(正孔阻止材料の還元電位)≧(発光層材料の還元電位)
と表現することもできる。
更に後述の電子輸送層7を有する素子の場合には、正孔阻止層6の電子親和力は電子輸送層7の電子親和力と比較して同等以下であることが好ましい。従って、
(電子輸送材料の還元電位)≧(正孔阻止材料の還元電位)≧(発光層材料の還元電位)
であることが好ましい(ここで、電子輸送材料、正孔阻止材料或いは発光層材料が、それぞれ複数用いられている場合には、最も小さい還元電位のものを比較に使用する。また、発光層5がホスト材料とドーパント材料を含んでいる場合には、ホスト材料のうち、最も小さい還元電位のものを比較に使用する。)。
このような条件を満たす正孔阻止材料として、好ましくは、下記一般式(VII)で表される混合配位子錯体が挙げられる。
Figure 2006232813
(式中、R101〜R106は、各々独立に水素原子又は任意の置換基を表す。Mはアルミニウム、ガリウム、インジウムから選ばれる金属原子を表す。Lは以下に示す一般式(VIIa)、(VIIb)、(VIIc)のいずれかで表される。
Figure 2006232813
(式中、Ar51〜Ar55は、各々独立に置換基を有していても良い芳香族炭化水素基又は置換基を有していても良い芳香族複素環基を表し、Zはシリコン又はゲルマニウムを表す。)
前記一般式(VII)において、R101〜R106は各々独立に水素原子又は任意の置換基を表すが、好ましくは水素原子;塩素、臭素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ベンジル基等のアラルキル基;ビニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;シアノ基;アミノ基;アシル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基;カルボキシル基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基などのジアラルキルアミノ基;トリフルオロメチル基等のα−ハロアルキル基;水酸基;置換基を有していても良いフェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;置換基を有していても良いチエニル基、ピリジル基等の芳香族複素環基を表す。
前記芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基が有しうる置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基等が挙げられる。
101〜R106としてより好ましくは各々独立に水素原子、アルキル基、ハロゲン原子又はシアノ基が挙げられる。またR104としては、シアノ基が特に好ましい。
前記一般式(VIIa)、(VIIb)、(VIIc)中、Ar51〜Ar55として、具体的には、各々独立に、置換基を有していても良いフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基又はチエニル基、ピリジル基等の芳香族複素環基が挙げられる。
前記一般式(VII)で表される化合物の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。
Figure 2006232813
Figure 2006232813
なお、これらの化合物は正孔阻止層6中に、1種を単独で用いても良いし、必要に応じて2種以上を混合して用いても良い。
正孔阻止材料としては、前記一般式(VII)で表される混合配位子錯体の他に、以下の構造式で示される1,2,4−トリアゾール環残基を少なくとも1個有する化合物を用いることもできる。
Figure 2006232813
上記構造式で表される1,2,4−トリアゾール環残基を少なくとも1個有する化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。
Figure 2006232813
正孔阻止材料として、更に、以下の構造式で示されるフェナントロリン環を少なくとも1個有する化合物が挙げられる。
Figure 2006232813
上記構造式で表されるフェナントロリン環を少なくとも1個有する化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。
Figure 2006232813
正孔阻止材料としてはまた、一分子内に、2,4,6−位に置換基を有するピリジン環を有する化合物を使用することが好ましい。具体例としては以下のものが挙げられる。
Figure 2006232813
正孔阻止層6の膜厚は、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上であり、また通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
正孔阻止層も6正孔輸送層4と同様の方法で形成することができるが、通常は真空蒸着法が用いられる。
ただし、本発明において用いる有機化合物は、有機電界発光素子の発光層のホスト材料として優れたものであり、後述の実施例に示すように、本発明においては、正孔阻止層を設けなくても十分に良好な特性を得ることができる。
(陰極)
陰極8は、正孔阻止層6を介して発光層5に電子を注入する役割を果たす。陰極8として用いられる材料は、前記陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率よく電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、セシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
陰極8の膜厚は通常、陽極2と同様である。
低仕事関数金属から成る陰極8を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層することは素子の安定性を増す。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。
更に、陰極8と発光層5又は後述の電子輸送層7との界面にLiF、MgF、LiO等の極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Appl. Phys. Lett.,70巻,152頁,1997年;特開平10−74586号公報;IEEE Trans. Electron. Devices,44巻,1245頁,1997年)。
(電子輸送層)
素子の発光効率を更に向上させることを目的として、図2及び図3に示すように、正孔阻止層6と陰極8の間に電子輸送層7が設けられることが好ましい。電子輸送層7は、電界を与えられた電極間において陰極8から注入された電子を効率よく正孔阻止層6の方向に輸送することができる化合物より形成される。
このような条件を満たす材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体な
どの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−又は5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第 5,645,948号)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
また、上述のような電子輸送材料に、アルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100482号公報、特開2002−100478号公報などに記載)ことにより、電子輸送性が向上するため好ましい。
このような電子輸送層7を形成する場合、正孔阻止層6の電子親和力は電子輸送層7の電子親和力と比較して同等以下であることが好ましい。
また、発光層5中の発光層材料、正孔阻止層6の正孔阻止材料及び電子輸送層に用いられる電子輸送材料の還元電位は、下記関係を満たすことが、発光領域を調整し、駆動電圧を下げるという観点から好ましい。
(電子輸送材料の還元電位)≧(正孔阻止材料の還元電位)≧(発光層材料の還元電位)
ここで、電子輸送材料、正孔阻止材料或いは発光層材料が、それぞれ複数用いられている場合には、最も小さい還元電位のものを比較に使用する。ただし、発光層5がホスト材料とドーパント材料を含んでいる場合には、ホスト材料のうち最も還元電位の小さいものを比較に使用する。
なお、前述の正孔阻止材料はこの電子輸送層7に使用しても良い。その場合、前述の正孔阻止材料を単独で使用して電子輸送層7を形成しても良いし、複数併用しても良い。
電子輸送層6の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常200nm以下、好ましくは100nm以下である。
電子輸送層7は、正孔輸送層4と同様にして塗布法或いは真空蒸着法により正孔阻止層6上に積層することにより形成されるが、通常は、真空蒸着法が用いられる。
(正孔注入層)
正孔注入の効率を更に向上させ、かつ、有機層全体の陽極2への付着力を改善させる目的で、図3に示すように、正孔輸送層4と陽極2との間に正孔注入層3を挿入することも行われている。正孔注入層3を挿入することで、初期の素子の駆動電圧が下がると同時に、素子を定電流で連続駆動した時の電圧上昇も抑制される効果がある。
正孔注入層3に用いられる材料に要求される条件としては、陽極2とのコンタクトがよく均一な薄膜が形成でき、熱的に安定であることが挙げられ、融点及びガラス転移温度が高く、融点としては300℃以上、ガラス転移温度としては100℃以上であることが好ましい。更に、イオン化ポテンシャルが低く陽極2からの正孔注入が容易なこと、正孔移動度が大きいことが挙げられる。
この目的のために、正孔注入層3の材料として、これまでにポルフィリン誘導体やフタロシアニン化合物(特開昭63-295695号公報)、ヒドラゾン化合物、アルコキシ置換の芳香族ジアミン誘導体、p-(9-アントリル)-N,N'-ジ-p-トリルアニリン、ポリチエニレンビニレンやポリ-p-フェニレンビニレン、ポリアニリン(Appl.Phys.Lett.,64巻、1245頁,1994年)、ポリチオフェン(OpticalMaterials,9巻、125頁、1998年)、スターバスト型芳香族トリアミン(特開平4-308688号公報)等の有機化合物や、スパッタ・カーボン膜(Synth.Met.,91巻、73頁、1997年)や、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、モリブデン酸化物等の金属酸化物(J.Phys.D,29巻、2750頁、1996年)が報告されている。
また、正孔注入・輸送性の低分子有機化合物と電子受容性化合物を含有する層(特開平11−251067号公報、特開2000−159221号公報等に記載)や、芳香族アミノ基等を含有する非共役系高分子化合物に、必要に応じて電子受容性化合物をドープしてなる層(特開平11−135262号公報、特開平11−283750号公報、特開2
000−36390号公報、特開2000−150168号公報、特開平2001−223084号公報、及びWO97/33193号公報など)、又はポリチオフェン等の導電性ポリマーを含む層(特開平10−92584号公報)なども挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記正孔注入層3の材料としては、低分子・高分子いずれの化合物を用いることも可能である。
低分子化合物のうち、よく使用されるものとしては、ポルフィン化合物又はフタロシアニン化合物が挙げられる。これらの化合物は中心金属を有していても良いし、無金属のものでも良い。これらの化合物の好ましい例としては、以下の化合物が挙げられる。
ポルフィン、
5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィン、
5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィンコバルト(II)、
5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィン銅(II)、
5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィン亜鉛(II)、
5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィンバナジウム(IV)オキシド、
5,10,15,20-テトラ(4-ピリジル)-21H,23H-ポルフィン、
29H,31H-フタロシアニン、
銅(II)フタロシアニン、
亜鉛(II)フタロシアニン、
チタンフタロシアニンオキシド、
マグネシウムフタロシアニン、
鉛フタロシアニン、
銅(II)4,4'4'',4'''-テトラアザ-29H,31H-フタロシアニン
正孔注入層3も、正孔輸送層4と同様にして薄膜形成可能であるが、無機物の場合には、更に、スパッタ法や電子ビーム蒸着法、プラズマCVD法が用いられる。
以上の様にして形成される正孔注入層3の膜厚は、低分子化合物を用いて形成される場合、下限は通常3nm、好ましくは10nm程度であり、上限は通常100nm、好ましくは50nm程度である。
正孔注入層3の材料として、高分子化合物を用いる場合は、例えば、前記高分子化合物や電子受容性化合物、更に必要により正孔のトラップとならない、バインダー樹脂やレベリング剤等の塗布性改良剤などの添加剤を添加し溶解した塗布溶液を調製し、スプレー法、印刷法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法などの通常のコーティング法や、インクジェット法等により陽極2上に塗布し、乾燥することにより正孔注入層3を薄膜形成することができる。バインダー樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル等が挙げられる。バインダー樹脂は該層中の含有量が多いと正孔移動度を低下させる虞があるので、少ない方が望ましく、正孔注入層3中の含有量で50重量%以下が好ましい。
また、フィルム、支持基板、ロール等の媒体に、前述の薄膜形成方法によって予め薄膜を形成しておき、媒体上の薄膜を、陽極2上に熱転写又は圧力転写することにより、薄膜形成することもできる。
以上のようにして、高分子化合物を用いて形成される正孔注入層3の膜厚の下限は通常5nm、好ましくは10nm程度であり、上限は通常1000nm、好ましくは500nm程度である。
(層構成)
本発明の有機電界発光素子は、図1とは逆の構造、即ち、基板1上に陰極8、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、陽極2の順に積層することも可能であり、既述したように少なくとも一方が透明性の高い2枚の基板の間に本発明の有機電界発光素子を設けることも可能である。同様に、図2又は図3に示した前記各層構成とは逆の順に積層することも可能である。また、図1〜3のいずれの層構成においても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述以外の任意の層を有していても良く、また上記複数の層の機能を併有する層を設けることにより、層構成を簡略化する等、適宜変形を加えることが可能である。
或いはまた、トップエミッション構造や陰極・陽極共に透明電極を用いて透過型とすること、更には、図1に示す層構成を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その際には段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合はその2層)の代わりに、例えばV等を電荷発生層(CGL)として用いると段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
本発明は、有機電界発光素子が、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[有機化合物の合成例]
本発明の有機化合物及び本発明の電荷輸送材料として使用可能な有機化合物の合成例を、以下の合成例に示す。なお、以下において、ガラス転移温度(Tg)はDSC測定、気化温度はTG−DTA測定、融点はTG−DTA測定によりそれぞれ求めた。
(合成例1)
(i) 目的物1の合成
Figure 2006232813
窒素気流中、カルバゾール(7.00g)、3−ブロモヨードベンゼン(14.2g)、銅粉末(2.66g)、炭酸カリウム(5.79g)、及びテトラグライム(10ml)を、140℃に加熱下、5時間撹拌し、室温まで放冷した。反応終了後、反応液にクロロホルムを加え、不溶物を濾別した。濾液に含まれるクロロホルムを減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/トルエン=4/1)で精製した。減圧乾燥することにより、目的物1(10.5g、収率78%)を無色粘調液体として得た。
(ii) 目的物2の合成
Figure 2006232813
窒素気流中、目的物1(10.5g)、ビス(ピナコラートジボロン)(9.93g)、酢酸カリウム(10.9g)、及び脱水ジメチルスルホキシド(DMSO)(190ml)を、60℃に加熱下、15分間撹拌し、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン錯体(0.799g)を加え、80℃に加熱下、9時間撹拌した。室温まで放冷した後、反応液に水(250ml)、及びトルエン(500ml)を加え、攪拌した。水層をトルエンで2回再抽出した後、有機層を合わせ、硫酸マグネシウム及び活性白土を加えた。硫酸マグネシウム及び活性白土を濾別し、トルエンを減圧留去した。析出した結晶を冷メタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより、目的物2(9.86g、収率80%)を白色結晶として得た。
(iii) 目的物3の合成
Figure 2006232813
窒素気流中、6,6’−ジブロモ−2,2’−ビピリジル(1.50g)、目的物2(4.23g)、炭酸カリウム(3.96g)、エチレングリコールジメチルエーテル(18ml)、及び水(6ml)を、60℃に加熱下、15分間撹拌し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.277g)を加え、加熱還流下、8時間撹拌した。室温まで放冷した後、反応液にメタノール(100ml)を加え、攪拌した。析出物を濾過により回収し、メタノール/水混合液で洗浄した後、減圧乾燥した。得られた結晶を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン=2/1)で精製した。更に、塩化メチレン/メタノール混合液で洗浄し、減圧乾燥することにより、目的物3(1.63g、収率53%)を白色結晶として得た。この白色結晶1.51gを昇華精製したところ、白色固体1.41gが回収された。
DEI−MS(m/z=638(M+))より、目的物3であることを確認した。
このもののガラス転移温度は115℃、融点は252℃、気化温度は508℃であった。
(合成例2)
(i) 目的物4の合成
Figure 2006232813
窒素気流中、6,6’−ジブロモ−2,2’−ビピリジル(2.00g)、2,5−ジフルオロフェニルボロン酸(2.41g)、炭酸カリウム(4.40g)、エチレングリコールジメチルエーテル(25ml)、及び水(13ml)を、60℃に加熱下、15分間撹拌し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.368g)を加え、加熱還流下、6時間撹拌した。室温まで放冷した後、反応液にメタノール(100ml)を加え、攪拌した。析出物を濾過により回収し、メタノール/水混合液で洗浄した後、減圧乾燥した。得られた結晶をクロロホルム(150ml)に溶解させた溶液に活性白土を加え、加熱還流下、1時間攪拌した。濾過により不溶物を濾別し、濾液を濃縮した。析出した結晶をメタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより、目的物4(2.16g、収率89%)を白色結晶として得た。
(ii) 目的物5の合成
Figure 2006232813
窒素気流中、水素化ナトリウム(55%,1.65g)の脱水N,N−ジメチルホルムアミド(100ml)懸濁液にカルバゾール(6.33g)を添加し、80℃に加熱下、1時間撹拌した後、目的物4(1.80g)を添加し、加熱還流下で9時間撹拌した。これに氷冷下、水(70ml)、及びメタノール(70ml)を加えて、析出した沈殿を濾別し、メタノール洗浄し、減圧乾燥した。得られた結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製した。更に、酢酸エチル及びクロロホルム/メタノール混合液で洗浄し、減圧乾燥することにより、目的物5(2.15g、収率47%)を白色結晶として得た。この白色結晶1.77gを昇華精製したところ、白色固体1.20gが回収された。
DEI−MS(m/z=968(M+))より、目的物5であることを確認した。
このもののガラス転移温度は180℃、結晶化温度は288℃、融点は364℃、気化温度は553℃であった。
(合成例3)
(i) 目的物6の合成
Figure 2006232813
窒素気流中、2,5−ジブロモピリジン(3.00g)、ビス(トリブチルチン)(3.54ml)、及び脱水キシレン(100ml)を、60℃に加熱下、15分間撹拌し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.351g)を加え、加熱還流下、8時間撹拌した。室温まで放冷した後、反応液にクロロホルム(100ml)を加え、攪拌した後、不溶物を濾別し、濾液に含まれるキシレン及びクロロホルムを減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/ヘキサン=1/5〜1/1)で精製し、メタノールで洗浄後、減圧乾燥することにより、目的物6(0.51g、収率25%)を白色結晶として得た。
(ii) 目的物7の合成
Figure 2006232813
窒素気流中、目的物6(0.48g)、カルバゾール(1.02g)、銅粉末(0.29g)、炭酸カリウム(1.06g)、及びテトラグライム(4ml)を、200℃に加熱下、8時間撹拌し、室温まで放冷した。反応終了後、反応液にクロロホルム(200ml)を加え、不溶物を濾別した。濾液に含まれるクロロホルムを減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/塩化メチレン=1/1)で精製した。酢酸エチル及びメタノールで洗浄後、減圧乾燥することにより、目的物6(0.42g、収率57%)を薄黄色結晶として得た。この薄黄色結晶0.42gを昇華精製したところ、薄黄色固体0.22gが回収された。
DEI−MS(m/z=486(M+))より、目的物7であることを確認した。
このものの融点は323℃、気化温度は443℃であった。
(合成例4)
(i) 目的物8の合成
Figure 2006232813
窒素気流中、2,5−ジブロモピリジン(19.5g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(4.33g)、及びテトラヒドロフラン(THF)(75ml)の混合物を0℃に冷却し、2−ピリジルジンクブロマイドの0.5MのTHF溶液(150ml)を滴下した後、室温まで昇温し、7.5時間攪拌した。反応混合物に、水(400ml)にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)(20g)、及び炭酸ナトリウム(20g)を溶解させた水溶液を加えた後、クロロホルム(300ml)で2回抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/酢酸エチル=1/0〜20/1)で精製することにより、目的物8(7.27g、収率41%)を得た。
(ii) 目的物9の合成
Figure 2006232813
窒素気流中、目的物8(4−ブロモ−2,2’−ビピリジル)(2.40g)、2,5−ジフルオロフェニルボロン酸(2.94g)、炭酸カリウム(4.23g)、エチレングリコールジメチルエーテル(20ml)、及び水(10ml)を、60℃に加熱下、15分間撹拌し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.294g)を加え、加熱還流下、8時間撹拌した。室温まで放冷した後、反応液に水(150ml)を加え、析出物を濾過により回収し、メタノール/水混合液で洗浄した後、減圧乾燥した。得られた結晶をトルエン(150ml)に溶解させた溶液に活性白土を加え、加熱還流下、1時間攪拌した。濾過により不溶物を濾別し、濾液を濃縮した。析出した結晶を冷エタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより、目的物9(0.79g、収率29%)を白色結晶として得た。
(iii) 目的物10の合成
Figure 2006232813
窒素気流中、水素化ナトリウム(55%,0.723g)の脱水N,N−ジメチルホルムアミド(30ml)懸濁液にカルバゾール(2.77g)を添加し、80℃に加熱下、30分撹拌した後、目的物9(4−(2,5−ジフルオロフェニル)−2,2’−ビピリジル)(2.40g)を添加し、加熱還流下で9時間撹拌した。これに氷冷下、水(70ml)、及びメタノール(70ml)を加えて、析出した沈殿を濾別し、メタノール洗浄し、減圧乾燥した。得られた結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/アセトン=1/0〜20/1)で精製した。さらに、エタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより、目的物5(0.322g、収率19%)を白色結晶として得た。
DEI−MS(m/z=562(M+))より、目的物10であることを確認した。
(合成例5)
(i) 目的物11の合成
Figure 2006232813
ベンズアルデヒド(10.6g)、ジアセチル(4.3g)、及びピペリジン(0.5ml)をエタノール(50ml)に溶解し、加熱還流下、2.5時間攪拌した。放冷、冷蔵庫で冷却後、得られた結晶を濾取した。これをメタノールで洗浄後、乾燥し、目的物11(1.39g)を得た。
(ii) 目的物12の合成
Figure 2006232813
4−ブロモ−フェナシルピリジニウムブロミド(3.56g)、目的物11(1.3g)、酢酸アンモニウム(9.7g)、及びエタノール(100ml)を、加熱還流下、4時間攪拌した。放冷後、得られた結晶を濾別しメタノール(100ml)で洗浄した。乾燥後、目的物12(0.98g)を得た。
(iii) 目的物13の合成
Figure 2006232813
目的物12(0.90g)、カルバゾール(0.53g)、及びナトリウム−tert−ブトキシド(0.56g)にトルエン(30ml)を添加し攪拌した。これに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム(0.05g)をトルエン(8ml)に溶解し、トリ−tert−ブチルホスフィン(0.055g)を加えた溶液を添加し、加熱還流下、4時間反応させた。放冷後、得られた結晶を濾取し、メタノールで熱懸洗し、メタノール/水混合溶媒で熱懸洗した。さらに、カラムクロマトグラフィーによって精製し、目的物13(0.65g)を得た。
DEI−MS(m/z=791(M+))から目的物13であることを確認した。
このものの融点は395℃、気化温度は555℃、ガラス転移温度は161℃であった。
(合成例6)
(i) 目的物14の合成
Figure 2006232813
3−ブロモベンズアルデヒド(30.0g)、ジアセチル(6.98g)、及びピペリジン(0.80ml)をエタノール(80ml)に溶解し、加熱還流下、2.5時間攪拌した。放冷後、冷蔵庫で冷却し、得られた結晶を濾取、メタノールで洗浄、乾燥し、目的物14(2.33g)を得た。
(ii) 目的物15の合成
Figure 2006232813
フェナシルピリジニウムブロミド(2.56g)、目的物14(2.00g)、酢酸アンモニウム(9.30g)、及びエタノール(100ml)を、加熱還流下、8時間攪拌した。放冷後、得られた結晶を濾取、メタノール(100ml)で洗浄後、乾燥し、目的物15(1.30g)を得た。
(iii) 目的物16の合成
Figure 2006232813
目的物15(1.2g)、カルバゾール(0.71g)、及びナトリウム−tert−ブトキシド(0.74g)にトルエン(40ml)を添加し攪拌した。これに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム(0.066g)をトルエン(8ml)に溶解し、トリ−tert−ブチルホスフィン(0.051g)を加えた溶液を添加し、加熱還流7時間攪拌した。放冷後、得られた結晶を濾取し、メタノールで熱懸洗し、クロロホルムで熱懸洗を数回繰り返し、昇華精製を行うことにより目的物16(0.91g)を得た。
DEI−MS(m/z=791(M+))から目的物16であることを確認した。
このものの融点は316℃、気化温度は346℃、ガラス転移温度は140℃であった。
(合成例7)
(i) 目的物17の合成
Figure 2006232813
3−ブロモフェナシルピリジニウムブロミド(8.23g)、合成例5で得られた目的物11(3.00g)、酢酸アンモニウム(22.5g)、及びエタノール(200ml)を、加熱還流下、8時間攪拌した。放冷後、得られた結晶を濾取、メタノールで加熱懸洗、乾燥後、目的物17(1.05g)を得た。
(ii) 目的物18の合成
Figure 2006232813
目的物17(1.4g)、カルバゾール(0.94g)、及びナトリウム−tert−ブトキシド(0.86g)にトルエン(70ml)を添加し攪拌した。これに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム(0.087g)をトルエン(8ml)に溶解し、トリ−tert−ブチルホスフィン(0.068g)を加えた溶液を添加し、加熱還流下、7時間攪拌した。放冷後、得られた結晶を濾別し、メタノールで熱懸洗、クロロホルム熱懸洗を数回繰り返し、昇華精製を行うことにより目的物18(0.70g)を得た。
DEI−MS(m/z=791(M+))から目的物18であることを確認した。
このものの融点は317℃、気化温度は540℃、ガラス転移温度は139℃であった。
(合成例8)
(i) 目的物19の合成
Figure 2006232813
窒素気流中、カルバゾール(6.82g)、4−ブロモヨードベンゼン(15.0g)、銅粉末(2.61g)、炭酸カリウム(11.3g)、及びテトラグライム(30ml)を、145℃に加熱下、5時間撹拌し、室温まで放冷した。反応混合物にクロロホルムを加え、不溶物を濾別した。濾液に含まれるクロロホルムを減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/トルエン=4/1)で精製した。減圧乾燥することにより、目的物19(9.08g、収率69%)を白色結晶として得た。
(ii) 目的物20の合成
Figure 2006232813
窒素気流中、目的物19(4.50g)、ビス(ピナコラートジボロン)(4.61g)、酢酸カリウム(4.61g)、及びDMSO(75ml)を、60℃に加熱下、15分間撹拌し、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン錯体(0.343g)を加え、80℃に加熱下、6時間撹拌した。室温まで放冷した後、反応液に水(250ml)、及びトルエン(500ml)を加え、攪拌した。水層をトルエンで2回再抽出した後、有機層を合わせ、硫酸マグネシウム及び活性白土を加えた。硫酸マグネシウム及び活性白土を濾別し、トルエンを減圧留去した。析出した結晶を冷メタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより、目的物20(4.46g、収率86%)を白色結晶として得た。
(iii) 目的物21の合成
Figure 2006232813
合成例7で得られた目的物17(1.20g)、目的物20(1.64g)、及び炭酸カリウム(1.07g)に、エチレングリコールジメチルエーテル(80ml)、及び水(16ml)を添加し攪拌した。これに、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)(0.11g)を添加し、加熱還流下、6時間攪拌した。放冷後、濃縮した後、メタノールを添加し、析出物を各種溶媒で洗浄した後、カラムクロマトグラフィーで精製し、目的物21(1.40g)を得た。
DEI−MS(m/z=942(M+))から目的物21であることを確認した。
このものの融点は369℃、気化温度は574℃、ガラス転移温度は155℃であった。
(合成例9)
(i) 目的物22の合成
Figure 2006232813
2−アセチルピリジン(9.80g)、ベンズアルデヒド(8.57g)、及びピペリジン(0.5ml)をエタノール(20ml)に溶解し、加熱還流下、8時間攪拌した。放冷した後、溶媒を減圧留去し、液体状態として目的物22(17.0g)を得た。
(ii) 目的物23の合成
Figure 2006232813
4−ブロモフェナシルピリジニウムブロミド(7.14g)、目的物22(8.36g)、酢酸アンモニウム(39.0g)、及びエタノール(200ml)を、加熱還流下、8時間攪拌して得られた溶液に、メタノール(50ml)添加して攪拌し、その後析出した沈殿物を濾過した。得られた結晶をメタノール(200ml)で洗浄した。これを濾過して得られた結晶を乾燥し、目的物23(3.35g)を得た。
(iii) 目的物24の合成
Figure 2006232813
目的物23(3.00g)、及び2,5−ジフルオロフェニルボロン酸(1.72g)をエチレングリコールジメチルエーテル(70ml)に溶解し、炭酸カリウム3.22gを水10mlに溶解した水溶液を脱気した後、系内に添加、系内全体を脱気、窒素置換し、加熱攪拌した。これに、内温60℃で、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)(0.36g)を添加後、加熱還流下、4時間攪拌した。放冷後、濃縮し、メタノールで懸洗した後、メタノールにて再結晶後、乾燥して目的物24(2.42g)を得た。
(iv) 目的物25の合成
Figure 2006232813
水素化ナトリウム55%(0.62g)を脱水ジメチルホルムアミド50mlに懸濁攪拌し、カルバゾール(2.38g)を少しづつ系内に添加した。添加終了後、80℃まで昇温し、目的物24(1.5g)を添加した。加熱還流下、12時間攪拌し、放冷後、メタノール(200ml)、及び水(40ml)に注いだ。得られた結晶を濾取し、メタノールで熱懸洗した後、塩化メチレン/メタノールで再結晶後、カラムクロマトグラフィーで精製し、目的物25(0.81g)を得た。
DEI−MS(m/z=714(M+))から目的物25であることを確認した。
このものの融点は282℃、気化温度は508℃、ガラス転移温度は152℃であった。
[有機電界発光素子の作製例]
以下に、本発明の有機電界発光素子の作製例を示す。
なお、以下において、作製した有機電界発光素子の一部については、下記の駆動寿命試験を行った。
〈駆動寿命試験〉
温度:室温
駆動方式:直流駆動(DC駆動)
初期輝度:2,500cd/m
定電流で連続発光させ、駆動開始から1,000時間後の輝度及び電圧上昇を比較した。それぞれ、初期輝度(L0)に対する1,000時間後の輝度(L1,000)の割合(L1,000/L0)、及び、初期電圧(V0)から1,000時間後の電圧(V1,000)の上昇値(ΔV=V1,000−V0)を求めた。
(実施例1)
図3に示す構造を有する有機電界発光素子を以下の方法で作製した。
ガラス基板1の上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(スパッター成膜品;シート抵抗15Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。パターン形成したITO基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
正孔注入層3の材料として、下記に示す構造式の芳香族アミノ基を有する非共役系高分子化合物(PB−1(重量平均分子量:29400,数平均分子量:12600))を下記に示す構造式の電子受容性化合物(A−2)と共に以下の条件でスピンコートした。
Figure 2006232813
Figure 2006232813
スピンコート条件
溶媒 安息香酸エチル
塗布液濃度 2[wt%]
PB−1:A−2 10:2(重量比)
スピナ回転数 1500[rpm]
スピナ回転時間 30[秒]
乾燥条件 230[℃]×15[分]
上記のスピンコートにより膜厚30nmの均一な薄膜が形成された。
次に、正孔注入層3を成膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。上記装置の粗排気を油回転ポンプにより行った後、装置内の真空度が5.2×10-5Pa(約3.9×10-7Torr)以下になるまでクライオポンプを用いて排気した。上記装置内に配置されたセラミックるつぼに入れた、下記に示すアリールアミン化合物(H−1)をるつぼの周囲のタンタル線ヒーターで加熱して蒸着を行った。この時のるつぼの温度は、258〜271℃の範囲で制御した。蒸着時の真空度5.8×10-5Pa(約4.4×10-7Torr)、蒸着速度は0.18nm/秒で膜厚40nmの正孔輸送層4を得た。
Figure 2006232813
引続き、発光層5の主成分(ホスト材料)として合成例1で合成された目的物3(以下のEM−1)を、副成分(ドーパント)として有機イリジウム錯体(D−1)を別々のセラミックるつぼに設置し、2元同時蒸着法により成膜を行った。
Figure 2006232813
目的物3(EM−1)のるつぼ温度は307〜309℃、蒸着速度は0.10nm/秒に、化合物(D−1)のるつぼ温度は244〜245℃にそれぞれ制御し、膜厚30nmで化合物(D−1)が約6重量%含有された発光層5を正孔輸送層4の上に積層した。蒸着時の真空度は5.5×10-5Pa(約4.1×10-7Torr)であった。
更に、正孔阻止層6として下記に示すピリジン誘導体(HB−1)をるつぼ温度を213〜216℃として、蒸着速度0.08nm/秒で5nmの膜厚で積層した。蒸着時の真空度は4.9×10-5Pa(約3.7×10-7Torr)であった。
Figure 2006232813
次に、正孔阻止層6の上に、電子輸送層7として下記に示すアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体(ET−1)を同様にして蒸着した。この時のアルミニウムの8−ヒドロキシキノリン錯体のるつぼ温度は250〜260℃の範囲で制御し、蒸着時の真空度は5.0×10-5Pa(約3.8×10-7Torr)、蒸着速度は0.21nm/秒で膜厚は30nmとした。
Figure 2006232813
上記の正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、正孔阻止層6及び電子輸送層7を真空蒸着する時の基板温度は室温に保持した。
ここで、電子輸送層6までの蒸着を行った素子を一度前記真空蒸着装置内より大気中に取り出して、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させて、別の真空蒸着装置内に設置して有機層と同様にして装置内の真空度が2.0×10-6Torr(約2.7×10-4Pa)以下になるまで排気した。陰極8として、先ず、フッ化リチウム(LiF)をモリブデンボートを用いて、蒸着速度0.03nm/秒、真空度2.8×10-6Torr(約3.7×10-4Pa)で、0.5nmの膜厚で電子輸送層7の上に成膜した。次に、アルミニウムを同様にモリブデンボートにより加熱して、蒸着速度0.46nm/秒、真空度9.6×10-6Torr(約1.3×10-3Pa)で膜厚80nmのアルミニウム層を形成して陰極8を完成させた。以上の2層型陰極8の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
以上の様にして、2mm×2mmのサイズの発光面積部分を有する有機電界発光素子が得られた。
この素子の発光特性及び寿命特性を表1に示す。
素子の発光スペクトルの極大波長は512nm、色度はCIE(x,y)=(0.30,0.60)であり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。
この素子は、後述の比較例の素子と比較して発光効率が高く、長寿命であった。
(実施例2)
正孔阻止層のピリジン誘導体(HB−1)を積層しなかった他は実施例1と同様にして素子を作製した。
この素子の発光特性及び寿命特性を表1に示す。
素子の発光スペクトルの極大波長は512nm、色度はCIE(x,y)=(0.29,0.60)であり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。
この素子では、正孔阻止層なしでも有機イリジウム錯体からの発光が高効率で得られた。
(実施例3)
発光層5の主成分(ホスト材料)として目的物3(EM−1)の代わりに下記に示す目的物5(以下のEM−2)を用いた他は実施例1と同様にして素子を作製した。
この素子の発光特性を表1に示す。
素子の発光スペクトルの極大波長は514nm、色度はCIE(x,y)=(0.30,0.61)であり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。
この素子では、有機イリジウム錯体からの発光が高効率で得られ、駆動電圧も低かった。
Figure 2006232813
(実施例4)
正孔阻止層のピリジン誘導体(HB−1)を積層しなかった他は実施例3と同様にして素子を作製した。
この素子の発光特性を表1に示す。
素子の発光スペクトルの極大波長は514nm、色度はCIE(x,y)=(0.30,0.61)であり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。
この素子では、正孔阻止層なしでも有機イリジウム錯体からの発光が高効率で得られ、駆動電圧も低かった。
(実施例5)
発光層5の主成分(ホスト材料)として目的物3(EM−1)の代わりに下記に示す目的物7(以下のEM−3)を用いた他は実施例1と同様にして素子を作製した。
この素子の発光特性を表1に示す。
素子の発光スペクトルの極大波長は513nm、色度はCIE(x,y)=(0.30,0.61)であり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。
Figure 2006232813
(実施例6)
正孔阻止層のピリジン誘導体(HB−1)を積層しなかった他は実施例5と同様にして素子を作製した。
この素子の発光特性を表1に示す。
素子の発光スペクトルの極大波長は513nm、色度はCIE(x,y)=(0.30,0.61)であり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。
この素子では、正孔阻止層なしでも有機イリジウム錯体からの発光が高効率で得られ、比較例1および比較例2と比較して、駆動電圧も低かった。
(実施例7)
発光層5の主成分(ホスト材料)として目的物3(EM−1)の代わりに下記に示す目的物16(EM−4)を用いた他は実施例2と同様にして素子を作製した。
この素子の発光特性を表1に示す。
素子の発光スペクトルの極大波長は513nm、色度はCIE(x,y)=(0.30,0.61)であり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。
この素子では、正孔阻止層なしで有機イリジウム錯体からの発光が高効率で得られ、比較例2と比較して、電圧も低かった。
Figure 2006232813
(実施例8)
発光層5の主成分(ホスト材料)として目的物3(EM−1)の代わりに下記に示す目的物21(EM−5)を用いた他は実施例2と同様にして素子を作製した。
この素子の発光特性を表1に示す。
素子の発光スペクトルの極大波長は513nm、色度はCIE(x,y)=(0.30,0.61)であり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。
この素子では、正孔阻止層なしで有機イリジウム錯体からの発光が高効率で得られ、比較例2と比較して、電圧も低かった。
Figure 2006232813
(実施例9)
発光層5の主成分(ホスト材料)として目的物3(EM−1)の代わりに下記に示す目的物25(EM−6)を用いた他は実施例1と同様にして素子を作製した。
この素子の発光特性を表1に示す。
素子の発光スペクトルの極大波長は514nm、色度はCIE(x,y)=(0.31,0.61)であり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。
この素子では、有機イリジウム錯体からの発光が高効率で得られ、比較例1と比較して、電圧も低かった。
Figure 2006232813
(実施例10)
正孔阻止層のピリジン誘導体(HB−1)を積層しなかった他は実施例9と同様にして素子を作製した。
この素子の発光特性を表1に示す。
素子の発光スペクトルの極大波長は515nm、色度はCIE(x,y)=(0.31,0.62)であり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。
この素子では、正孔阻止層なしでも有機イリジウム錯体からの発光が高効率で得られ、比較例2と比較して、電圧も低かった。
(比較例1)
発光層5の主成分(ホスト材料)として目的物(EM−1)の代わりに下記に示す(CBP)を用いた他は実施例1と同様にして素子を作製した。
この素子の発光特性及び寿命特性を表1に示す。
素子の発光スペクトルの極大波長は514nm、色度はCIE(x,y)=(0.30,0.58)であり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。
この素子は、実施例1〜6の素子と比較して発光効率が低かった。
Figure 2006232813
(比較例2)
正孔阻止層のピリジン誘導体(HB−1)を積層しなかった他は比較例1と同様にして素子を作製した。
この素子の発光特性を表1に示す。
素子の発光スペクトルの極大波長は512nm、色度はCIE(x,y)=(0.30,0.60)であり、有機イリジウム錯体(D−1)からのものと同定された。
この素子では、正孔阻止層なしでも有機イリジウム錯体からの発光が得られたが、実施例1〜6の素子と比較して、発光効率が低かった。また、実施例1及び2の素子と比較して、駆動電圧も高かった。
Figure 2006232813
以上の通り、実施例1〜4の素子は、比較例1,2の素子と比較して発光効率が高く、また、特に実施例1、実施例2の素子は比較例1の素子と比較して輝度が高く、かつ、電圧上昇が小さい。これらの結果から、本発明の有機化合物を用いることにより、高効率で、駆動安定性に優れた長寿命な燐光素子が実現されることが明らかである。
本発明の有機電界発光素子の一例を示した模式的断面図である。 本発明の有機電界発光素子の別の例を示した模式的断面図である。 本発明の有機電界発光素子の別の例を示した模式的断面図である。
符号の説明
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層(陽極バッファ層)
4 正孔輸送層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 陰極

Claims (8)

  1. 下記式(I)で表されることを特徴とする有機化合物。
    Figure 2006232813
    (式中、Cz及びCzは、カルバゾリル基を表す。Cz及びCzは同一であっても異なっていても良い。
    及びQは、直接結合又は任意の連結基を表す。Q及びQは同一であっても異なっていても良い。
    Cz、Cz、Q、Q、環B及び環Bは、それぞれ置換基を有していても良い。)
  2. 上記式(I)が下記式(I−1)である請求項1に記載の有機化合物。
    Figure 2006232813
    (式中、G〜Gは、直接結合又は任意の連結基を表す。G〜Gはそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
    環A及び環Aは、それぞれ置換基を有していても良いベンゼン環である。
    Cz、Cz、環B及び環Bは、式(I)におけると同義である。)
  3. 上記式(I)が下記式(I−2)である請求項1に記載の有機化合物。
    Figure 2006232813
    (式中、Gは、直接結合又は任意の連結基を表す。
    Zは、Cz及びCz上の窒素原子同士を共役可能とする任意の連結基を表す。Zは置換基を有していても良い。
    Cz、Cz、環B及び環Bは、式(I)におけると同義である。)
  4. 上記式(I)が下記式(I−3)である請求項1に記載の有機化合物。
    Figure 2006232813
    (式中、Cz、Cz、Q、Q、環B及び環Bは、式(I)におけると同義である。)
  5. 上記式(I)の部分構造である下記式(I’)が、下記式(III−1)で表される、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の有機化合物。
    Figure 2006232813
    (式中、環B及び環Bは、式(I)におけると同義である。)
  6. 分子中に存在する全てのカルバゾリル基が下記式(II)で表されるN−カルバゾリル基である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の有機化合物。
    Figure 2006232813
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の有機化合物を含有することを特徴とする電荷輸送材料。
  8. 基板上に、陽極、陰極、及びこれら両極間に設けられた有機発光層を有する有機電界発光素子において、該陽極と陰極との間に、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の有機化合物を含有してなる層を有することを特徴とする有機電界発光素子。
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