JP2006209096A - 光学フィルム、反射防止フィルム、偏光板、及び画像表示装置 - Google Patents

光学フィルム、反射防止フィルム、偏光板、及び画像表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】セルロースアシレートフィルム上に有機溶剤を含有する塗布液を塗布して光学フィルムを形成する際に、塗布液の安定性がよく、塗布溶剤による有害性、環境負荷が少なく、塗布スジ、乾燥ムラ等の塗布故障が少ない、品質の良い、画像表示装置の偏光板用に好適な光学フィルムを提供する。また、そのような光学フィルムを形成する方法を提供する。
【解決手段】透明支持体の厚みムラが平均厚みの±5%以下であり、かつ透明支持体の機能層塗布面側の表面可塑剤量のムラが表面可塑剤の平均可塑剤量の±20%以下である透明支持体上に少なくとも1層の機能層を塗布液を直接塗工、乾燥して光学フィルムを形成する。
【選択図】なし

Description

本発明は、光学フィルム、反射防止フィルム、該光学フィルムを用いた偏光板、該光学フィルムを備えた画像表示装置に関する。
陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置に対し、光学機能性フィルムの適用が一般的に行われている。このような光学フィルムとしては、反射防止フィルム、防眩性フィルム、光散乱フィルム、光学補償フィルム、偏光板等があげられる。
これらの光学フィルムは、スパッタリングなどの真空蒸着方式や、大気圧プラズマ蒸着方式などの物理的吸着方法による薄層形成も一般的ではあるが、塗布方式による薄層形成の方が、大面積化に対応し易く、かつ高生産性であり、近年その要求が高まっている。
塗布方式による薄層形成は、透明支持体上への溶液塗工、特に有機溶剤を含有する溶液の塗工によって機能層を付与することが多い。しかしながら、上記の光学フィルムは、視認される画像表示装置に用いられるため、塗布時のスジ、乾燥ムラ等の塗布故障に対して、極めて厳しい品質が要求される。特に画像表示装置の大画面化に伴い、程度の弱い塗布故障でも認識しやすくなるため、塗布故障がほとんどないことが要求される。
ところで、上記の光学フィルムの透明支持体として、セルロースアシレートフィルム、特にセルローストリアセテートフィルムが一般的に用いられる。このセルロースアシレートフィルムは、一般に溶液製膜方法または溶融製膜方法により製造されるが、溶液製膜法の方が、溶融製膜法よりも平面性の高い良好なフィルムを製造することができる。例えば特許文献1には、セルロースアシレートフィルムの製造方法が記載されている。このため、実用的には、溶液製膜方法の方が普通に採用されている。
また、このようなセルロースアシレートフィルムに対しては、透明支持体の柔軟性、透湿性等の制御のために可塑剤を添加することが一般的である。特許文献2には、このような可塑剤の表面量の制御方法が記載されている。
以上のようなセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートや可塑剤が溶剤への溶解性をもつため、セルロースアシレートフィルム上に直接有機溶剤による塗布層を付与する場合、透明支持体の塗布溶剤に対する溶解性、浸透性の影響が出る。特許文献3では、このようなセルロースアシレートフィルムへ光学機能層を塗布する場合、支持体への溶解性の違う溶剤種、比率を制御することにより、密着性、光学特性を制御する方法が記載されている。
特公平5−17844号公報 特開平8−57879号公報 特開2002−169001号公報
上記のように可塑剤を含有するセルロースアシレートフィルムに対して、有機溶剤を含む塗布液を塗工する場合、セルロースアシレートや可塑剤と有機溶剤の親和性、溶解性等により塗布性、乾燥性に影響をおよぼす。
また、塗布液中には、通常光学機能層や、物理機能層を形成する成分が含まれる。塗布溶剤としては、この含有する成分の溶解性、安定性の良好な溶剤の選択が必要である。また、有機溶剤を含有する塗布液を用い、塗布加工する際、その作業環境や、完成した光学フィルム中の残留溶剤の観点から、人体、生態系への有害性、環境安全性の問題が少ない溶剤の選択が必要である。
本発明の目的は、セルロースアシレートフィルム上に有機溶剤を含有する塗布液を塗布する際に、塗布液の安定性がよく、塗布溶剤による有害性、環境負荷が少なく、塗布スジ、乾燥ムラ等の塗布故障が少ない、品質の良い光学フィルムを提供することである。
本発明の他の目的は、そのような光学フィルムを形成する製造方法を提供することである。
本発明のさらなる他の目的は、上記光学フィルムを用いた偏光板を提供することである。
本発明のさらなる他の目的は、上記光学フィルム、あるいは偏光板を備えた画像表示装置を提供することにある。
本発明者は、鋭意検討の結果、透明支持体上に機能層を塗布する時に、特定の物性を持つ透明支持体を用いることにより、塗布量の制御および溶剤の浸透性の制御を行うことができ、塗布スジ、乾燥ムラ等の塗布故障が少ない、品質の良い光学フィルムを提供できることを見出した。
本発明によれば、下記構成の光学フィルム、その製造方法、反射防止フィルム、偏光板、及び画像表示装置が提供され、上記目的が達成される。
1.少なくとも1層の機能層が設けられている透明支持体の厚みムラが平均厚みの±5%以下であり、かつ該透明支持体の機能層塗布面側の表面可塑剤量のムラが表面可塑剤の平均可塑剤量の±20%以下であることを特徴とする光学フィルム。
2.少なくとも1層の機能層が設けられている前記透明支持体の厚みムラが、長手方向1m以上かつ幅方向1m以上の範囲で平均膜みの±5%以下であり、前記透明支持体の機能層塗布面側の表面可塑剤量のムラが、長手1m以上かつ幅方向1m以上の範囲で表面可塑剤の平均残存量の±20%以下であることを特徴とする光学フィルム。
3.前記透明支持体の平均厚みが20μm以上120μm以下であることを特徴とする上記1または2に記載の光学フィルム。
4.前記透明支持体がセルローストリアセテートであることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の光学フィルム。
5.前記少なくとも1層の機能層が低屈折率層であり、反射防止能を持つことを特徴とした上記1〜4のいずれかに記載の光学フィルム。
6.前記低屈折率層中に、平均粒径が該低屈折率層の厚みの30%以上150%以下にあるシリカ微粒子が少なくとも1種含有されていることを特徴とする上記5に記載の反射防止フィルム。
7.前記低屈折率層中に含有されているシリカ微粒子の少なくとも1種が、中空のシリカ微粒子であり、該シリカ微粒子の屈折率が1.17〜1.40であることを特徴とする上記6に記載の反射防止フィルム。
8.前記低屈折率層のバインダーに含フッ素ポリマーを用いることを特徴とする上記5〜7に記載の反射防止フィルム。
9.前記含フッ素ポリマーが、含フッ素ビニルモノマー重合単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位を含み、主鎖が炭素原子のみからなる共重合体(P)であることを特徴とする上記8に記載の反射防止フィルム。
10.共重合体(P)が下記一般式2で表されることを特徴とする上記9に記載の反射防止フィルム。
一般式2
Figure 2006209096
一般式2中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、mは0または1を表す。Xは水素原子またはメチル基を表す。Aは任意のビニルモノマーの重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表し、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。
11.前記少なくとも1層の機能層を形成する塗布液に前記透明支持体を部分的に溶解もしくは膨潤させる溶剤を使用することを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の光学フィルム。
12、少なくとも1層の機能層に下記一般式1で表されるオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物を含有することを特徴とする上記1〜11のいずれかに記載の光学フィルム。
一般式1
Figure 2006209096
(一般式1中、Rは水素原子、メチル基、メトキシ基、無置換のアルコキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、または塩素原子を表す。
Yは、単結合、*−COO−**、*−CONH−**、または、*−O−**を表す。
Lは2価の連結鎖を表す。
〜Rは、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、無置換のアルコキシ基、または無置換のアルキル基を表す。
は水素原子、または無置換のアルキル基を表す。
は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。
lはl=100−mの数式を満たす数を表し、mは0〜50の数を表す。
なお、該加水分解物および/またはその部分縮合物は、特定のl及びmを有する一般式1で表される化合物の複数種の混合物の加水分解物および/またはその部分縮合物であってもよい。)
13.前記少なくとも1層の機能層としてハードコート層、防眩層、光拡散層あるいは高屈折率層のいずれかが設けられたことを特徴とする上記1〜12のいずれかに記載の光学フィルム。
14.前記少なくとも1層の機能層として高屈折率層が設けられ、該高屈折率層は二酸化チタンを主成分とし、かつコバルト、アルミニウム、ジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する無機微粒子を含む、屈折率が1.55〜2.40の構成層であることを特徴とする上記13に記載の光学フィルム。
15.上記1〜14のいずれかに記載の光学フィルムが、偏光板における偏光子の2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられていることを特徴とする偏光板。
16.偏光子の2枚の保護フィルムのうち、反射防止フィルム以外のフィルムが、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであり、該光学異方性層がディスコティック構造単位を有する化合物から形成された層であり、該ディスコティック構造単位の円盤面が該表面保護フィルム面に対して傾いており、かつ該ディスコティック構造単位の円盤面と該表面保護フィルム面とのなす角度が光学異方層の深さ方向において変化していることを特徴とする上記15に記載の偏光板。
17.偏光子の2枚の保護フィルムのうち、透明支持体の少なくとも1枚が、下記式(I)および(II)をみたすことを特徴とするセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする上記16に記載の偏光板。
(I):0≦Re(630)≦10、かつ|Rth(630)|≦25
(II):|Re(400)−Re(700)|≦10、かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
18.上記1〜14のいずれかに記載の光学フィルム、または上記15〜17のいずれかに記載の偏光板が、ディスプレイの最表面に用いられていることを特徴とする画像表示装置。
19.上記15〜17に記載の偏光板を少なくとも1枚有するTN、STN、VA、IPS、またはOCBのモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置。
本発明により、塗布スジ、乾燥ムラ等の塗布故障が少ない、品質の良い光学フィルムが提供される。また、本発明により、塗布液の安定性がよく、塗布溶剤による有害性、環境負荷が少なく、塗布スジ、乾燥ムラ等の塗布故障が少ない光学フィルムの形成方法が提供される。
本発明の光学フィルムに関して以下詳細に説明する。
本発明の光学フィルムは、セルロースアシレートフィルムからなる支持体上に、有機溶剤を含む塗布液を直接塗工するプロセスを有する光学フィルムである。
本発明の光学フィルム、特に反射防止フィルムは、十分な反射防止性を有しながら耐傷性に優れる。更に、本発明の光学フィルムまたは反射防止フィルムを備えた画像表示装置、並びに本発明の光学フィルムまたは反射防止フィルムを用いた偏光板を備えた画像表示装置は、外光の映り込みや背景の映りこみが少なく、極めて視認性が高い。
以下、透明支持体、支持体上の塗布層、その他の層の順に説明する。なお、本願明細書において、物性値を表す「(数値A)〜(数値B)」という記載は「(数値A)以上(数値B)以下」の意味を表す。
<透明支持体>
本発明の光学フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースアシレート(例、セルローストリアシレート、セルロースジアシレート、代表的には富士写真フイルム社製TAC−TD80U,TD80UFなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)などが挙げられる。このうちセルローストリアシレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にセルローストリアシレートが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、以下のセルロースアシレートに各種添加剤
を加え、フィルム上に加工したものであり、このフィルム支持体上に溶液塗布により機能層を形成することが可能である。
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムの原料のセルロースとしては、綿花リンター、ケナフ、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等があり、何れの原料セルロースから得られるセルロースエステルでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
本発明においてはセルロースからエステル化してセルロースアシレートを作製するが、特にリンター、ケナフ、パルプを精製したセルロースを用いることが好ましい。
本発明において、セルロースアシレートとは、セルロースの総炭素数2〜22のカルボン酸エステルのことである。
本発明に用いられるセルロースアシレートの炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、シクロアルキルカルボニルエステル、あるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの中で、好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、シクロヘキサンカルボニル、アダマンタンカルボニル、オレオイル、フェニルアセチル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、より好ましいアシル基は、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、シクロヘキサンカルボニル、ドデカノイル、オクタデカノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどである。
セルロースアシレートの合成方法は、発明協会公開技報 公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)の9ページに詳細に記載されている。
本発明のセルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記数式(III)及び(IV)を満足するものが好ましい。
数式(III) : 2.3≦SA’+SB’≦3.0
数式(IV) : 0≦SA’≦3.0
ここで、SA’はセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基の置換度、またSB’はセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基の置換度を表す。なお、SAはセルロースの水酸基の水素原子を置換しているアセチル基を表し、SBはセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3〜22のアシル基を表す。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(各位それぞれ100%のエステル化は置換度1)を意味する。
本発明では、SAとSBの置換度の総和(SA’+SB’)は、より好ましくは2.6〜3.0であり、特に好ましくは2.80〜3.00である。
また、SAの置換度(SA’)はより好ましくは1.4〜3.0であり、特には2.3〜2.9である。
更に、下記数式(V)を同時に満足することが好ましい。
数式(V) : 0≦SB”≦1.2
ここで、SB”はセルロースの水酸基の水素原子を置換している炭素原子数3又は4のアシル基を表す。
さらにSB”はその28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましく、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位のSA’とSB”の置換度の総和が0.8以上であり、さらには0.85以上であり、特には0.90以上であるセルロースアシレートフィルムも好ましいものとして挙げることができる。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。
尚、置換度はセルロース中の水酸基に結合した脂肪酸の結合度を測定し、計算によって得られる。測定方法としては、ASTM D−817−91、ASTM D−817−96に準拠して測定することができる。
又、水酸基へのアシル基の置換の状態は、13C−NMR法によって測定される。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に前記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、全ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。セルロースアシレートは単独若しくは2種類以上の併用であっても良い。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度200〜700、好ましくは230〜550、更に好ましくは230〜350であり、特に好ましくは粘度平均重合度240〜320である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
該セルロースアシレートの数平均分子量Mnは、好ましくは7×10〜25×10範囲、より好ましくは、8×10〜15×10の範囲にあることが望ましい。また、該セルロースアシレートの質量平均分子量Mwとの比、Mw/Mnは、好ましくは1.0〜5.0、より好ましくは1.0〜3.0であることが望ましい。なお、セルロースエステルの平均分子量および分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定でき、これを用いて上記MnおよびMwを算出し、Mw/Mnを計算することができる。
本発明において用いられる上記セルロースアシレートフィルムは、上述の式(1)及び(2)を満足する範囲にあるセルロースアシレートが好ましく用いられる。
[可塑剤]
次に本発明のセルロースアシレートフィルムに用いられる可塑剤について示す。可塑剤は、セルロースアシレートフィルムへの柔軟性付与、寸法安定性の向上、耐湿性向上、カール低減させるために添加される成分である。本発明で用いる可塑剤として、セルロースアシレートの可塑剤として従来から知られている可塑剤を用いることができる。これらの従来可塑剤としては、例えばリン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤等を好ましく用いることができる。リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、グリコレート系可塑剤ではブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を用いることができる。さらに可塑剤は、フィルム中に安定に均一に分布し続けることが好ましく、滲出性に優れ、加水分解しにくいものが好ましい。
また、本発明の可塑剤として脂肪族多価アルコールエステルを用いることも好ましい。本発明の脂肪族多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸とのエステルである。
(脂肪族多価アルコール)
本発明に用いられる脂肪族多価アルコールは、2価以上のアルコールで次の一般式(A)で表される。
一般式(A) : R−(OH)
ここで、Rはn価の脂肪族有機基、nは2以上の正の整数、複数個のOH基はそれぞれ独立に、アルコール性またはフェノール性水酸基を表す。
n価の脂肪族有機基としては、アルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等)、アルケニレン基(例えばエテニレン基等)、アルキニレン基(例えばエチニレン基等)、シクロアルキレン基(例えば1,4−シクロヘキサンジイル基等)、アルカントリイル基(例えば1,2,3−プロパントリイル基等)が挙げられる。n価の脂肪族有機基は置換基(例えばヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子等)を有するものを含む。nは2〜20が好ましい。
好ましい多価アルコールの例としては、例えばアドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
(モノカルボン酸)
本発明の多価アルコールエステルにおけるモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有するとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。これらは更に置換基を有しても良い。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキ
サンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、ビシクロノナンカルボン酸、ビシクロデカンカルボン酸、ノルボルネンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸等のカルボン酸またはそれらの誘導体を挙げることができる。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
(多価アルコールエステル)
本発明に用いられる多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。滲出性の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
本発明の多価アルコールエステルにおけるカルボン酸は一種類でも、二種以上の混合でもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。好ましくは、分子内に芳香環もしくはシクロアルキル環を3つ以上有することが好ましい。
本発明に用いられる多価アルコールエステルの例を以下に示す。
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
本発明で特に好ましい可塑剤は、沸点が200℃以上で25℃で液体であるか、または融点が25〜250℃である固体であることが好ましい。更に好ましくは沸点が250℃以上で25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である可塑剤が挙げられる。可塑剤が液体の場合は、その精製は通常減圧蒸留によって実施されるが高真空ほど好ましく、本発明では、特に、200℃における蒸気圧が1333Pa以下の可塑剤を用いることが好ましく、より好ましくは蒸気圧667Pa以下、更に好ましくは133〜1Paの
化合物が好ましい。
本発明において、可塑剤として特に好ましいものは、リン酸エステル系可塑剤、脂肪族多価アルコールエステル系可塑剤である。さらに好ましくは、リン酸エステル系可塑剤である。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、透湿度が20〜300(g/m;24h,25℃、90%RH)が好ましく、20〜260(g/m;24h,25℃、90%RH)がより好ましく、20〜200(g/m;24h,25℃、90%RH)が最も好ましい。
本発明の可塑剤は、滲出性が少ないことも好ましい。滲出性とは、高温多湿の環境下で、可塑剤等の添加剤がフィルム外に析出や揮発すること等によりフィルムの質量が減量する性質をいい、具体的には、サンプルを、23℃、55%RHで1日放置後の質量を測定した後、80℃、90%RHの条件下で2週間放置し、さらに2週間放置後のサンプルを23℃、55%RHで1日放置後の質量を測定し、以下の式で計算した値である。
滲出性={(処理前のサンプル質量−処理後のサンプル質量)/処理前のサンプル質量}×100(%)
滲出性は2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更に好ましい。
可塑剤の種類と使用量は、本発明のフィルムの柔軟性、透湿度や滲出性、密着性等の物理特性等の総合的観点から決まってくるものであるが、本発明において、セルロースアシレートフィルム上に直接有機溶剤で塗工する場合には、上層の塗工性に対しても大きく影響があることがわかった。
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいて、セルロースアシレート中の可塑剤量は全フィルムに対して3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%が更に好ましく、特に好ましくは5〜12質量%である。
本発明の可塑剤を含むセルロースアシレートフィルム上に直接塗布液を塗布する際に、塗布するフィルム表面の可塑剤量のムラが、塗布液を塗布する際の塗布性、乾燥性に対し大きく影響することがわかった。これは、塗布液中の有機溶剤成分が透明支持体に対して浸透し、その結果、塗布を行う際の支持体の塗布性が変わる、有機溶剤成分の浸透により塗布液の乾燥が促進される、または、溶剤の浸透と同時に塗膜の成分の浸透等により、塗膜表面の凹凸が変わる、塗膜中の粒子成分の凝集状態が変わる等、により塗布、乾燥ムラに対して影響しているものと考えられる。いずれにせよ、セルロースアシレートフィルムの表面可塑剤量のムラが小さいことが、本発明の塗布、乾燥ムラ改良に対しては効果のある方向である。
セルロースアシレートフィルムの可塑剤の含有量は、赤外線吸収分光法(IR)、フーリエ変換赤外線吸収分光法(FT−IR)等の方法により求めることができる。この方法は、可塑剤によるIR吸収ピークと、セルロースアシレートのIR吸収ピークの強度を測定し、可塑剤/セルロースアシレート比を求める方法が一般的である。例えば、特開平8−57879号公報には、可塑剤吸収ピーク(1390cm−1)と、セルロースアシレートの吸収ピーク(1470cm−1)の強度を測定し、その強度比を求める方法が示されている。可塑剤の含有量は、可塑剤/セルロースアシレートの比率を変えたサンプルにより検量線を作成することにより求めることができる。
また、セルロースアシレートの表面可塑剤量として、本発明の塗布性に対し影響するのは、表面から5μm程度、特に表面から2μm程度の範囲の可塑剤量と考えられる。このような表面の可塑剤量を測定するためには、フィルム断面の切片を作成し、表面付近の可塑剤量をレーザー式の透過IRで測定する方法(表面〜10μm程度の範囲)、全反射IR測定(ATR−IR)による方法(表面〜2μm程度の範囲)により測定することがで
きる。本発明の表面可塑剤量の測定法としては、通常、表面の組成分析として用いられること、表面から0.2〜2μm程度の範囲の組成がわかること等から、表面可塑剤量はATR−IR測定結果にて示している。ただし、別種の測定方法でも、可塑剤量を定量できればよい。ただし、本発明の表面可塑剤量は、極表面(0.1μm以下)の可塑剤量で規定されるものではない。
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいて、表面可塑剤量としては、1質量%から20質量%が好ましい。より好ましくは3質量%から15質量%、さらに好ましくは3質量%から12質量%、特に好ましくは3質量%から10質量%である。
本発明において、表面可塑剤量のムラ(またはバラツキ)が少ない方が、塗布ムラ、乾燥ムラに対し良好な傾向である。表面可塑剤量のムラとしては、平均残存量の±20%以下であることが好ましい。より好ましくは±15%以下、さらに好ましくは±10%以下である。
なおここで「表面可塑剤量のムラ(またはバラツキ)」は、幅方向1mに渡り等間隔に5点、長手方向1mに渡り等間隔に5点の計25点をサンプリングしてそれぞれ可塑剤残存量を測定し、それらが平均残存量の±20%以下であることが好ましい。
この表面可塑剤量のムラは、セルロースアシレートフィルムの面積が広くなればなるほど、大きくなる。しかし本発明の塗布、乾燥ムラの改良のためには、少なくとも長手方向の1m以上かつ幅方向の1m以上の面積において、表面可塑剤量のムラは上記の平均残存量の範囲に入ることが好ましい。より好ましくは、長手方向10m以上かつ幅方向1.2m以上の面積で、上記の平均残存量の範囲に入ることである。
以上のような表面可塑剤量のムラは、フィルム全体の可塑剤添加量、セルロースアシレートフィルムの流延方法、流延時の乾燥方法、および流延後の乾燥方法により変えることができる。具体的にはセルロースアシレートフィルムの流延から剥ぎ取りまでの時間、乾燥方法、また、フィルム形成後の加熱処理、搬送速度等である。これらの方法については、後述の[セルロースアシレートフィルムの製造方法]において記載する。
また、本発明においては、フィルム全体の可塑剤量に対し、表面の可塑剤量が少ないこともフィルムの柔軟性を維持した上で塗布性を改良できるため好ましい。この可塑剤量の比較は、フィルム膜厚の透過IRと表面IRの比較により確認できる。このような可塑剤量の制御は、前述の流延、乾燥方法によって可能である。
本発明に係るセルロースアシレートフィルムは、フィルムの機械的強度と寸法安定性の向上、及び耐湿性を向上させるために疎水性の微粒子を含有することが好ましい。微粒子の1次平均粒子径は、ヘイズを低く抑えるという観点から、好ましくは、1〜100nmであり、微粒子の見掛け比重としては、70g/リットル以上が好ましい。微粒子の添加量はセルロースアシレート100質量部に対して0.01〜10質量部、特に0.05〜7質量部とするのが好ましい。
微粒子の好ましい具体例は、無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム、ITO、アンチモン酸亜鉛等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムのヘイズ上昇を抑制できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。
該微粒子は表面を疎水化処理されていることが好ましく、表面処理剤は微粒子表面と親和性がある極性基を有する有機化合物、カップリング剤が好ましく用いられる。
[紫外線吸収剤]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルム自身の耐光性向上、或は偏光板、画像表示装置の液晶化合物、有機EL化合物等の画像表示部材の劣化防止のために紫外線吸収剤を含有する。
紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な画像表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものを用いることが好ましい。
例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。
紫外線吸収剤としての具体例を下記に列記するが、本発明はこれらに限定されない。
2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−(2′−ヒドロキシ−4′−へキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニルトリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルサリシレート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン2′−エチルへキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3−(3′,4′−メチレンジオキシフェニル)−2−アクリレート等が挙げられる。
また、特開平6−148430号公報に記載の紫外線吸収剤も好ましく用いることが出来る。
また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどのヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどの燐系加工安定剤を併用してもよい。
これらの安定剤化合物の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して0.0001〜1.0質量部が好ましく、0.001〜0.1質量部が更に好ましい。
本発明に係る紫外線吸収剤は、波長370nmでの透過率が20%以下であることが望ましく、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に溶解してから添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
本発明において、紫外線吸収剤の使用量は、セルロースアシレート100質量部に対し0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.8〜7質量部である。
また本発明の紫外線吸収剤としては、析出による密着不良やヘイズ上昇等の悪影響の少ない紫外線吸収性ポリマーも好ましい。これらは共重合ポリマーであり、380nmに於けるモル吸光係数が4000以上である紫外線吸収性モノマーとエチレン性不飽和モノマーとの共重合体であって、該共重合体の質量平均分子量が2000〜20000の紫外線吸収性共重合ポリマーが、自身の析出が少ない点で好ましい。
380nmに於けるモル吸光係数が4000以上であれば、紫外線吸収性能が良好であることを示し、紫外光を遮断しうるのに充分な効果が得られ、光学フィルム自身が黄色く着色することなく、光学フィルムの透明性が向上する。
本発明に於ける紫外線吸収性共重合ポリマーに用いる紫外線吸収性モノマーとしては、380nmに於けるモル吸光係数が4000以上、好ましくは8000以上、更に好ましくは10000以上のものを使用するのが良い。380nmに於けるモル吸光係数が4000未満の場合、所望のUV吸収性能を得るために多量の添加が必要となり、ヘイズの上昇或いは紫外線吸収剤の析出等により透明性の低下が著しく、かつフィルム強度の低下傾向大となる。
更に上記紫外線吸収性共重合ポリマーに用いる紫外線吸収性モノマーとしては、380nmのモル吸光係数に対する400nmのモル吸光係数の比が20以上であることを必要とし、この比が20未満の場合、着色が大きく光学フィルム用途に適さない。
即ち、より可視域に近い、400nm付近の光の吸収を抑え、所望のUV吸収性能を得るためには、紫外光を吸収する性能の高い紫外線吸収性モノマーを含有することが本発明においては好ましい。
a.紫外線吸収性モノマー
紫外線吸収性モノマーとしては、例えばサリチル酸系紫外線吸収剤(フェニルサリシレート、p−tert−ブチルサリシレート等)或いはベンゾフェノン系紫外線吸収剤(2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン等)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミル−フェニル)ベンゾトリアゾール等)、シアノアクリレート系紫外線吸収剤(2′−エチルへキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3−(3′,4′−メチレンジオキシフェニル)−アクリレート等)、トリアジン系紫外線吸収剤(2−(2′−ヒドロキシ−4′−へキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニルトリアジン等)或いは特開昭58−185677号公報、同59−149350号公報記載の化合物等が知られている。
本発明に於ける紫外線吸収性モノマーとしては、上記に示したような公知の様々なタイプの紫外線吸収剤の中から適宜基本骨格を選択し、エチレン性不飽和結合を含む置換基を導入し、重合可能な化合物とした上で、380nmに於けるモル吸光係数が4000以上であるものを選択して用いることが好ましい。本発明の紫外線吸収性モノマーとしては保存安定性の点で、ベンゾトリアゾール系化合物を用いることが好ましい。
特に好ましい紫外線吸収性モノマーは、下記一般式3で表される。
一般式3
Figure 2006209096
一般式3中、R11は、ハロゲン原子、または酸素原子、窒素原子、あるいは硫黄原子を介してベンゼン環上に置換する基を表し、R12は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、またはヘテロ環基を表し、R13,R15,及びR16は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基を表し、R14は、酸素原子または窒素原子を介してベンゼン環上に置換する基を表す。但しR11からR16で示される基の何れか一つは下記構造の基を部分構造として有する。nは1から4迄の整数を表す。
Figure 2006209096
上記構造中、Lは2価の連結基を表し、Rは水素原子またはアルキル基を表す。
以下に本発明で用いられる好ましい紫外線吸収性モノマーを例示するが、これらに限定されるものではない。
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
b.ポリマー
本発明に用いられる好ましい紫外線吸収性共重合ポリマーは、上記紫外線吸収性モノマ
ーとエチレン性不飽和モノマーとの共重合体であって、該共重合体の質量平均分子量が2000〜20000であること好ましく、より好ましくは7000〜15000である。
紫外線吸収性モノマーの単独重合体の場合、ヘイズの上昇が著しく、透明度の低下が大きいため光学フィルム用途に適さない。又紫外線吸収性モノマーの単独重合体は溶媒に対する溶解度が低く、フィルム形成する場合の作業性に劣る。また、質量平均分子量が上記範囲であれば、樹脂との相溶性が良く、経時でもフィルム表面への滲出、着色がない。
上記紫外線吸収性モノマーと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとしては、例えばメタクリル酸及びそのエステル誘導体(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等)、或いはアクリル酸及びそのエステル誘導体(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸ジエチレングリコールエトキシレート、アクリル酸3−メトキシブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル等)、アルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等)、アルキルビニルエステル(ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等)、アクリロニトリル、塩化ビニル、スチレン等を挙げることが出来る。
これらエチレン性不飽和モノマーの内、ヒドロキシル基またはエーテル結合を有するアクリル酸エステル、またはメタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸ジエチレングリコールエトキシレート、アクリル酸3−メトキシブチル)が好ましい。これらは1種単独で、または2種以上混合して、紫外線吸収性モノマーと共重合させることができる。
上記紫外線吸収性モノマーと共重合可能な上記エチレン性不飽和モノマーの使用割合は、得られる紫外線吸収性共重合ポリマーと透明樹脂との相溶性、光学フィルムの透明性や機械的強度、所望の紫外線吸収性能、共重合ポリマーの添加量とヘイズの上昇、共重合ポリマーの溶媒に対する溶解度等を考慮して選択される。好ましくは上記共重合体中に紫外線吸収性モノマーが20〜70質量%、更に好ましくは30〜60質量%含有される様に両者を配合するのが良い。
本発明に於ける紫外線吸収性共重合ポリマーを重合する方法は従来公知の方法を広く採用することができ、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。ラジカル重合法の開始剤としては、例えば、アゾ化合物、過酸化物等が挙げられ、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソブチル酸ジエステル誘導体、過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。重合溶媒は特に問わないが、例えば、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、メタノール等のアルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、水溶媒等が挙げられる。溶媒の選択により、均一系で重合する溶液重合、生成したポリマーが沈澱する沈澱重合、ミセル状態で重合する乳化重合を行うこともできる。
上記紫外線吸収性共重合ポリマーの質量平均分子量は、公知の分子量調節方法で調整することが出来る。そのような分子量調節方法としては、例えば四塩化炭素、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル等の連鎖移動剤を添加する方法等が挙げられる。重合温度は通常室温から130℃、好ましくは50〜100℃で行われる。
上記紫外線吸収性共重合ポリマーは、セルロースアシレートに対し、0.01〜40質量%の割合で混合することが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%の割合である。この時、光学フィルムを形成したときのヘイズが0.5以下であれば特に制限はされないが、好ましくはヘイズが0.2以下である。更に好ましくは、光学フィルムを形成したときのヘイズが0.2以下であり、かつ380nmに於ける透過率が10%以下である。
また、上記紫外線吸収性共重合ポリマーは透明樹脂に混合する際に、必要に応じて他の低分子化合物、高分子化合物、無機化合物などと一緒に用いることもできる。例えば、上記紫外線吸収性共重合ポリマーと、他の低分子紫外線吸収剤を透明樹脂に同時に混合してもよく、同様に酸化防止剤、可塑剤、難燃剤等の添加剤を同時に混合することも好ましい。
(他の添加剤)
更に、本発明のセルロースアシレート組成物には、各調製工程において用途に応じた他の種々の添加剤(例えば、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン等)、光学異方性コントロール剤、剥離剤、帯電防止剤、赤外吸収剤等)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。また、赤外吸収染料としては、例えば特開2001−194522号公報に記載されているものが用いられる。
これらの添加剤の添加する時期はドープ作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。さらにこれらの詳細は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、セルロースアシレート全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
本発明の透明支持体の厚みとしては、一般的に用いられるのは20乃至120μmであり、好ましくは25〜80μmであり、更に好ましくは30〜60μmである。厚みが上記範囲であると、製造時の支持体切断や皺の発生が抑制されると共に、偏光板や表示装置が薄くなり、更には光学諸特性、コスト、生産性、加工効率等に優れる。
また、厚みムラは、平均厚みの±5%以内であり、好ましくは±4%以内、更に好ましくは±3%以内である。この変動内において、支持体厚みの反射防止性に実質上の影響を及ぼさない良好なものとなる。
厚みムラを±5%以内とするには、(1)セルロースアシレートの低分子量体(オリゴマー体)を含まないこと、(2)該ポリマーフィルム形成用のセルロースアシレートを主成分とする組成物を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を流延する際の濃度及び粘度を調節すること、(3)乾燥工程において膜表面の乾燥温度、乾燥風を用いる場合の風量、風向等を調節すること等が有効である。溶解工程、流延工程および乾燥工程は、後述する[セルロースアシレートフィルムの製造方法]において記載する。
また本発明の透明支持体は、長さ100〜5000mで幅0.7〜2mの長尺ロール形態のものであることが好ましい。透明支持体がロール形態のものであると、本発明の光学
フィルム、反射防止フィルム、偏光板保護フィルムおよび画像表示装置を薄く軽量化したり、透過率を高めてコントラストや表示輝度を改善する等の良好な光学特性が安定して得られ、長尺で幅広な支持体を皺等の問題を生じることなくハンドリング性よく取り扱うことができる。
前述の透明支持体の厚みムラは、セルロースアシレートフィルムの面積が広くなればなるほど、大きくなる。しかし本発明の塗布、乾燥ムラの改良のためには、少なくとも長手方向の1m以上かつ幅方向の1m以上の面積において、厚みムラは平均厚みの上記範囲に入ることが好ましい。より好ましくは、長手方向10m以上かつ幅方向1.2m以上の面積で、上記の平均厚みの範囲に入ることである。
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムは幅方向のカール値が、−7/m〜+7/mであることが好ましい。特に好ましくは−5/m〜+5/mである。後述する塗布層の設置を長尺で広幅のセルロースアシレートフィルムに対して行う際に、フィルムの幅方向のカール値が前述の範囲内であると、フィルムのハンドリングが良好になり、フィルムの切断が起きなくなる。また、フィルムのエッジや中央部などで、フィルムが搬送ロールと強く接触して発塵したり、フィルム上への異物付着が生じなくなり、反射防止フィルム、偏光板の点欠陥や塗布スジの頻度を許容値の範囲内とすることができる。また、カールを上述の範囲とすることで偏光膜貼り合せ時に気泡が入ることを防ぐことができる。
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985)に従い測定することができる。
[セルロースアシレートフィルムの製造方法]
本発明の支持体として用いるセルロースアシレートフィルムは、溶液流延方法(ソルベントキャスト法)により製造することが好ましく、該溶液流延方法では、上記セルロースアシレート等を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いて製造される。
(溶液調製工程)
溶液流延方法において用いる有機溶媒としては、通常溶液流延方法に用いられる有機溶媒であれば特に制限されず、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲ものが好ましい。具体的には、低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3〜12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。さらに、有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。前記有機溶媒が2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の上述の好ましい炭素数の範囲内であればよい。
具体的には、例えば前記の公技番号2001−1745号p12−16に詳細に記載されている化合物が挙げられる。
セルロースアシレートを溶解する有機溶剤としては、具体的には、炭化水素(例:ベンゼン、トルエン)、ハロゲン化炭化水素(例:メチレンクロライド、クロロベンゼン)、アルコール(例:メタノール、エタノール、ジエチレングリコール)、ケトン(例:アセトン)、エステル(例:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル)及びエーテル(例:テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ)などがあげられる。
以上のうち、炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、メチレンクロライドが特に好ましく用いられる。また、セルロースアシレートの溶解性、支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械強度等、さらに光学特性等の物性の観点から、メチレンク
ロライドの他に炭素原子数1〜5のアルコールを一種、ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対し2〜25質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等があげられるが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
また、技術的には、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素は問題なく使用できるが、地球環境や作業環境の観点では、有機溶媒はハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶媒中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。また、製造したセルロースアシレートフィルムから、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素が全く検出されないことが好ましい。
このような非塩素系溶媒は、例えば特開2002−146043号公報段落番号[0021]〜[0025]、特開2002−146045号公報段落番号[0016]〜[0021]等に記載の溶媒系の例が挙げられる。
上記非塩素系溶媒としては、炭素原子数3以上12以下のエーテル、ケトン、エステルから選ばれる少なくとも1種の有機溶媒と、アルコールとの混合溶媒であって、前溶媒中のアルコールの含有割合が2〜40質量%である混合溶媒が好ましい。
上記混合溶媒には、炭素原子数が5以上10以下の芳香族あるいは脂肪族の炭化水素を0vol%以上10vol%以下添加しても良い。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンが含まれる。
特に、2種類以上の有機溶媒を混合した混合溶媒を用いることが好ましく、特に好ましくは、互いに異なる3種類以上の混合溶媒であって、第1の溶媒が炭素原子数が3〜4のケトンおよび炭素原子数が3〜4のエステル或いはその混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が5〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として沸点が30〜170℃のアルコール類または沸点が30〜170℃の炭化水素から選ばれることが好ましい。
とくに、酢酸エステルを20〜90質量%、ケトン類を5〜60質量%、アルコール類を5〜30質量%の混合比で混合してなる、酢酸エステル、ケトン類及びアルコール類の混合溶媒を用いることが、セルロースアシレートの溶解性の点から好ましい。
この混合溶媒中アルコール類の配合割合は、好ましくは全溶剤中2vol%以上40vol%以下、より好ましくは3vol%以上30vol%以下、さらに好ましくは5vol%以上20vol%以下である。
上記アルコール類は炭素原子数が1以上8以下のモノアルコールまたはジアルコールあるいは炭素原子数が2以上10以下のフルオロアルコールが好ましく、より好ましくはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールが挙げられる。これらは単独で添加しても、あるいは2種以上混合して添加しても良い。
また、上記ドープには、上記有機溶媒以外に、フルオロアルコールを全有機溶媒量の10質量%以下、より好ましくは5質量%以下含有させることもフィルムの透明性を向上させたり、溶解性を早めたりする上で好ましい。該フルオロアルコールとしては例えば、特開平8−143709号公報段落番号[0020]、同11−60807号公報段落番号[0037]等に記載の化合物が挙げられる。これらのフルオロアルコールは一種または二種以上使用してもよい。
本発明においては、上記ドープを調製する際に、容器内に窒素ガスなどの不活性ガスを
充満させてもよい。
また、ドープの製膜直前の粘度は、製膜の際、流延可能な範囲であればよく、通常10ps・s〜2000ps・sの範囲に調製されることが好ましく、特に30ps・s〜400ps・sの範囲が好ましい。
上記ドープの調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよく、冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号公報、特開昭61−106628号公報、特開昭58−127737号公報、特開平9−95544号公報、特開平10−95854号公報、特開平10−45950号公報、特開2000−53784号公報、特開平11−322946号公報、さらに特開平11−322947号公報、特開平2−276830号公報、特開2000−273239号公報、特開平11−71463号公報、特開平04−259511号公報、特開2000−273184号公報、特開平11−323017号公報、特開平11−302388号公報などに記載のドープの調製法が挙げられ、これらの公報に記載されている支持体の原料ポリマーの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜これらの技術を適用できる。さらに、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いた場合のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液の濃縮と濾過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745号p.25に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解させる場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
更に、上記ドープに上記可塑剤、上記微粒子、及び必要に応じてレターデーション調製剤、紫外線吸収剤等の他の添加剤を含有させる。
(微粒子の添加混合方法)
微粒子をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、前記したような粗大な粒子が存在しないこと、および凝集や析出などが生じないように安定に分散されていることが重要であり、これらを満たせれば、特に方法は限定せずに所望のセルロースアシレート溶液を得ることができる。上記微粒子は上記ドープ調整とは別に分散液を調製した後にドープに混合分散する方法が好ましい。
上記の微粒子以外の添加剤は、例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加してもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、所謂直前添加方法でありその混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いられる。これらの添加剤の混合は、添加物それ自身を添加してもよいが、予め溶媒やバインダー(好ましくはセルロースアシレート)を用いて溶解しておいたり、場合により分散して安定化した溶液として用いることも好ましい態様である。
(製膜工程)
次に、本発明において、ドープを用いたフィルムの製造方法について述べる。セルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、セルロースアシレートフィルム製造に供するドラム方法若しくはバンド方法と称される、従来公知の溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置を用いることができる。
製膜の工程を説明すると、溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜に一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。調製されたドープは精密濾過により凝集物、異物を除去することが重要である。具体的には、濾過のフィルターは、ドープ液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましい。濾過には絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルタが用いられ、さらには絶対濾過精度が0.1〜25μmであるフィルタが好ましく用いられる。フィルタの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、濾過圧力は15kgf/cm以下、より好ましくは10kgf/cm以下、
更には2kgf/cm以下で濾過することが好ましい。
また、精密濾過のために、順次フィルターの孔径を小さくして濾過を数回行うことも好ましい。
精密濾過するための濾材のタイプは上記性能を有していれば特に限定されないが、例えばフィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。分散物を精密濾過するための濾材の材質は上記性能を有しており、且つ塗布液に悪影響を及ばさなければ特に限定はされないが、例えばステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
調製したドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも称する)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。
流延工程で用いる金属支持体は、その表面が算術平均粗さ(Ra)が0.015μm以下で、十点平均粗さ(Rz)が0.05μm以下であることが好ましい。より好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.001〜0.01μmで、十点平均粗さ(Rz)が0.001〜0.02μmである。更に好ましくは、(Ra)/(Rz)比が0.15以上である。このように、金属支持体の表面粗さを所定の範囲とすることで、金属支持体からウェブを容易に均一剥離し、且つ製膜後のフィルムの表面形状を本発明の範囲内に制御できる。
これらの各製造工程(流延(共流延を含む)、乾燥、剥離、延伸などに分類される)については、前記の公技番号2001−1745号、p.25−30に詳細に記載されている工程が好ましい。流延工程では1種類のドープを単層流延してもよいし、それぞれ異なるポリマーを溶解してなる2種類以上のドープを同時及び逐次の少なくともいずれかの手段により共流延しても良い。
このセルロースアシレート溶液を流延する工程に際し、その溶液温度が−10〜57℃であることが好ましい。また、前記セルロースアシレート溶液を流延するに際し、その工程の温度が−10〜57℃で保温されていることが好ましい。さらに、前記セルロースアシレート溶液を流延する金属支持体は、−20〜40℃の表面温度を有していることが好ましい。
特に、上記したような組成物からなるドープからフィルムに製膜する工程において、添加した化合物が凝集や偏在することなく行われるには、乾燥工程が重要である。
支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側の裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の支持体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。
帯状に流延したドープを乾燥させてフィルムを得るセルロースアシレートフィルムの乾燥工程における乾燥温度は5〜250℃、特に20〜180℃が好ましい。さらに残留溶
媒を除去するために、30〜160℃で乾燥し、その場合逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましく用いられている。以上の方法は、特公平5−17844号号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。
最終仕上がりフィルムの残留溶媒量は2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。なお本発明においては、剥離剤で更に剥離時間を短縮でき、かつ剥離時の抵抗が低くなることで、面状(剥離時の横方向のムラ、ゲル状ブツの剥げ残りに起因するブツなど)の悪化がないセルロースアシレートフィルムを得ることができる。
具体的には、ドープの流延から剥ぎ取りまでの平均乾燥速度を、良好な生産性の維持及び風ムラの発生の抑制を考慮して、好ましくは300質量%/分を超え、かつ1000質量%/分以下とし、さらに好ましくは400質量%/分を超え、かつ900質量%/分以下とし、もっとも好ましくは500質量%/分を超え、かつ800質量%/分以下とするのが望ましい。
平均乾燥速度とは、流延ドープの溶剤含有量の変化量を時間で割った値である。
平均乾燥速度を調整するには、乾燥風の温度、風量、溶剤ガスの濃度、流延支持体の表面温度、流延するドープの温度、流延するドープのウェット厚み、流延するドープの溶剤組成等を適宜調整することにより行うことができる。
(剥離工程)
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に金属支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)としてゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、金属支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。金属支持体上でゲル化させ剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来るのである。金属支持体上でのウェブの乾燥が条件の強弱、金属支持体の長さ等により剥離残留溶媒量を決められる。
該剥離位置におけるウェブの残留溶媒量を5〜400質量%の範囲で剥離することが好ましい。更には10〜350質量%とすることが好ましい。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易くなってしまう。
本発明においては、剥離残留溶媒量は下記の式で表わすことが出来る。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMの質量のウェブを110℃で3時間乾燥させた後の質量である。
また、金属支持体からウェブを剥離するまでの時間は、1秒以上120秒以下が好ましい。より好ましくは2秒以上100秒以下、特に好ましくは、3秒以上90秒以下である。時間は短い方が流延速度が上げられ生産性は上がるが、ウェブの取り扱いが難しくなる。
支持体から剥離後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは巾方向に収縮しようとする。高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程或いは一部の工程を幅方向にクリップでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式)
が好ましい。
本発明において、流延時の速度は、10〜200m/分であることが好ましい。
(乾燥及び延伸工程)
剥離後、一般には、ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置、あるいは両方の装置を用いてウェブを乾燥する。乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃の範囲で行われる。より好ましくは40〜180℃である。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。
最終的には、仕上げのセルロースアシレートフィルムにおける残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。
以上のような流延、乾燥工程は、基本的には流延方法、流延速度、剥ぎ取り方法、面質等により設定されるが、これらが許容される範囲で、条件を変えることにより、表面の可塑剤量を変えることができる。具体的に表面の可塑剤量を下げるには、流延時の金属支持体上での乾燥を促進すること、金属支持体から早く剥ぎ取ること、特開平8−57879号公報に開示されたように、フィルムの残留溶剤が5質量%以下になったあと、100〜160℃の温度で加熱処理する方法等がある。また、流延時に金属支持体に接していない面の方が、乾燥遅れるため、表面可塑剤量多く、金属支持体に接していない面は表面可塑剤量が少ない傾向があるため、金属支持体に接していない面を塗工に使うこともできるが、金属支持体に接していないため、フィルムの平面性による面質悪化が起こる可能性もある。以上のような表面可塑剤量を変える方法のうち、特に100℃から160℃の加熱処理をする方法は全体の可塑剤量を維持したまま、表面の可塑剤量を下げられるため、好ましい。このような熱処理温度は、さらに120℃以上150℃以下が好ましい。また、熱処理時間は、30秒以上1200秒以下が好ましく、さらに好ましくは60秒以上900秒以下であり、特に好ましくは120秒以上600秒以下である。
(延伸処理工程)
前記セルロースアシレートフィルムは、少なくとも一軸流延中、あるいは流延後に0.5〜300%延伸されることが好ましい。
流延工程では流延方向(縦方向)等の一方向のみの1軸延伸、或いは流延方向及び他の方向(横方向)の2軸延伸等が行うことが好ましい。
作製されたセルロースアシレートフィルムを延伸により、フィルムの機械的強度、更には光学特性(レターデーション値)を調整することができる。この時、延伸倍率は、3乃至100%であることが好ましい。
下記(1)あるいは(2)または両者の延伸方法を採用した場合には、フィルムの平面性、膜の強度、光学特性等を所定の範囲内に調整できる。
(1)3乃至40%、より好ましくは7乃至38%、さらに好ましくは15乃至35%の延伸倍率で幅方向に延伸する。これに引き続き、長手方向に0.4%以上5%以下、より好ましくは0.7%以上4%以下、さらに好ましくは1%以上3.5%以下膨張させながら20〜160℃で処理する。
(2)延伸中に表裏に温度差を付与する。流延時に基板(バンドあるいはドラム)に接触していた面の温度を、その反対面より2℃以上20℃以下、より好ましくは3℃以上15℃以下、より好ましくは4℃以上12℃以下高くする。
このような方法により、延伸工程でのフィルム内に添加した添加剤(可塑剤、超微粒子
、紫外線吸収剤等)の偏在化が解消されることで、得られたフィルムの光学特性が均質化されるとともに機械的特性が向上する。
さらにドープは、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延してもよい。
上述のように、本発明においては、上記支持体が、セルロースアシレートフィルムであって、該セルロースアシレートフィルムが、セルロースアシレートを実質的に非塩素系の溶剤に・BR>N解してセルロースアシレート溶液を調製する溶液調製工程、セルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフィルムを製膜する製膜工程、及び、セルロースアシレートフィルムを延伸する延伸工程により製造されたフィルムであるのが、好ましい。
セルロースアシレートフィルムの膜厚変動幅を±3%以内とするには、(1)該セルロースアシレートフィルムを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を流延する際の濃度及び粘度を調節する、(2)乾燥工程において膜表面の乾燥温度、乾燥風を用いる場合のその風量、風向等を調節することが有効である。
[セルロースアシレートフィルムの特性(表面形状)]
本発明の光学フィルムは、支持体として用いるセルロースアシレートフィルムが特定の表面形状を有するのが好ましい。以下、セルロースアシレートフィルムの表面形状について説明する。
前記セルロースアシレートフィルムの反射防止層を設ける側の表面は、JIS B0601−1994に基づくフィルムの表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0005〜0.1μm、十点平均粗さ(Rz)が0.001〜0.3μm、及び最大高さ(Ry)が0.5μm以下で、好ましくは(Ra)が0.0002〜0.05μm、(Rz)が0.005〜0.1μm、(Ry)が0.3μm以下であり、特に好ましくは(Ra)が0.001〜0.02μm、(Rz)が0.002〜0.05μm、(Ry)が0.1μm以下である。
上記の範囲にすることが、塗布ムラの無い均一な塗布面状で、且つ支持体と塗布膜の密着性が良好な光学機能層を設けるのに好ましい。
更には、微細な表面凹凸形態において、算術平均粗さ(Ra)と十点平均粗さ(Rz)との比(Ra/Rz)が0.1以上であるのが好ましく、且つJIS B0601−1994に基づくフィルム表面凹凸の平均間隔(Sm)が 2μm以下であることが好ましい。ここで、RaとRzの関係は表面の凹凸の均一性を示すものである。さらに好ましくは、(Ra/Rz)比が0.15以上、平均間隔(Sm)が1〜0.1、特に好ましくは(Ra/Rz)比が0.2以上で、平均間隔(Sm)が0.1〜0.001μmである。
表面の凹と凸の形状は、透過型電子顕微鏡(TEM)、原子間力顕微鏡(AFM)等により評価することが出来る。
また、上記セルロースアシレートフィルムにおける視覚的な大きさが100μm以上である光学的欠陥の数は、1m当たり1個以下であるのが、視覚的な欠陥の減少と歩留まり向上の点から好ましい。
この光学的な欠陥は、偏光顕微鏡を用い、クロスニコル下でフィルムの遅相軸を偏光子の吸収軸と平行にして観察することができる。輝点として見える欠点を円形に面積近似し、その直径が100μm以上のものを数える。100μm以上の輝点は、肉眼で容易に観測できる。
すなわち、上記セルロースアシレートフィルムは、その表面が、JIS B0601−1994に基づく表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.0005〜0.1μm、十点平均粗さ(Rz)が0.001〜0.3μm、及び表面凹凸の平均間隔(Sm)が2μm以下であり、且つ視覚的な大きさが100μm以上である光学的欠陥の数が1m当たり2
個以下、特に1個以下であるのが好ましい。
[フィルムの光学的特性]
上記セルロースアシレートフィルムは、光透過率が90%以上、ヘイズが1%以下であることが好ましい。より好ましくは、光透過率が92%以上、ヘイズが0〜0.5%であることが好ましい。
ヘイズ値は、JIS−K−7105に準じヘーズメーター(例えば、日本電色工業(株)製MODEL 1001DP、村上色彩技術研究所製HR−100等)を用いて測定できる。
[フィルムの力学特性]
(引裂き強度)
上記セルロースアシレートフィルムは、そのJIS K7128−2:1998の引裂き試験方法(エルメンドルフ引裂き法)に基づく引裂き強度が、2g以上であるのが、前記の膜厚においても膜の強度が充分に保持できる点で好ましい。より好ましくは、5〜25gであり、更に好ましくは6〜25gである。また60μm換算では、8g以上が好ましく、より好ましくは8〜15gである。
具体的には、試料片50mm×64mmを、25℃、65%RHの条件下に2時間調湿した後に軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定できる。
(引掻き強度)
また、引掻き強度は2g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましく、10g以上であることが特に好ましい。この範囲とすることにより、フィルム表面の耐傷性、ハンドリング性が問題なく保持される。
引掻き強度は、円錐頂角が90度で先端の半径が0.25mのサファイヤ針を用いて支持体表面を引掻き、引掻き跡が目視にて確認できる荷重(g)をもって評価することができる。
[フィルムの残留溶剤量]
本発明に用いる支持体の残留溶剤量は0〜1.5%にすることでカールを抑制できる。該残留溶剤量が0〜1.0%であることがより好ましい。
これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時に残留溶剤量を少なくすることで自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
具体的には、セルロースアシレートフィルムに対する残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。
[フィルムの透湿度及び含水量]
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS規格JIS Z0208に記載の方法(温度25℃、湿度90%RH)において、前述の範囲に収めることが好ましい。これにより、反射防止層の密着不良を低減すると共に光学補償フィルムや偏光板の保護フィルムとして液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こすことがなくなる。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)p.285−294:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することもできる。
セルロースアシレートフィルムの含水量は、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、30℃85%RH下で0.3〜12g/mであることが好ましい。0.5〜5g/mであることがより好ましい。
12g/mより大きいとレターデーションの湿度変化による依存性も大きくなって好ましくない。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、少なくとも一方の面が表面処理されていても良い。この表面処理としては、真空グロー放電処理、大気圧プラズマ放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸処理またはアルカリ処理等があげられる。
<塗布液>
次に本発明において、セルロースアシレートフィルム上に塗布する塗布液について示す。
本発明においては、セルロースアシレートフィルム上に直接、有機溶剤を含む塗布液が塗工される。この有機溶剤を含む塗布液には、光学機能層および物理機能層等の特性をもつ層を形成する成分が一般的に含まれる。なお、ここで、支持体上に直接塗工するとは、塗布液と支持体表面間に何らかの層が設けられていない状態で塗布することであり、セルロースアシレートフィルム表面に各種表面処理がされていても良い。ただし、好ましいのは、表面処理されていないセルロースアシレートフィルム上に直接有機溶剤を塗布する場合である。
光学機能層、物理機能層を形成する塗布液において、その塗布液に含まれる成分の溶解性、安定性、粒子成分の分散安定性等の観点から溶剤の種類が選択される。このような点からは、ケトン類、エステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類が適している。また、塗布に用いられる有機溶剤においては、塗布加工作業をする際に、人体、生態系への安全性、防爆上の安全性、環境放出による温室効果、オゾン層破壊性等へ配慮することが必要となっている。このような観点から、ケトン類、エステル類の溶剤が適しており、最も一般的に用いられる。
しかしながら、ケトン類、エステル類の溶剤は、本発明のセルロースアシレートフィルムに対し溶解性、浸透性を有し、透明支持体を部分的に溶解もしくは膨潤させる。このため、塗布を行う場合、溶解性、浸透性による塗布性の変化、乾燥性の変化、乾燥条件による浸透度の変化等により、塗布ムラ、乾燥ムラが発生する場合があった。
このような溶解性、浸透性の調整のために、セルロースアシレートを溶解する溶剤以外に非溶解性の溶剤を混合して塗布する方法が、特開2002−169001号公報に開示されている。これは、塗布液中の成分の浸透による光学特性変化を抑制し、かつ浸透による密着性改良を行っている。
これに対し、われわれは、セルロースアシレートフィルムに対する有機溶剤塗布において、塗布面状改良の検討を行い、本発明の塗布液に対し、セルロースアシレート中の表面の可塑剤含有量が大きく影響することを見出した。これは、使用している溶剤種の、基材となるセルロースアシレートフィルムに対する浸透性を目安に調整できることがわかってきた。
本発明に用いられる、ケトン類、エステル類の溶剤の具体例としては、沸点が100℃以下の低沸点溶剤として、アセトン(56.1℃:以下℃を省略する)、2−ブタノン(=メチルエチルケトン:MEK、79.6)などのケトン類、ギ酸エチル(54.2)、酢酸メチル(57.8)、酢酸エチル(77.1)、酢酸イソプロピル(89)などのエステル類などがある。
また、沸点が100℃以上の高沸点の溶剤としては、例えば、酢酸ブチル(126)、酢酸イソブチル(118)、シクロヘキサノン(155.7)、2−メチル−4−ペンタノン(=メチルイソブチルケトン:MIBK、115.9)、2−オクタノン(173)、ジアセトンアルコール(168)などがある。以上のうち、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等が好まし
い。ただし、本発明の有機溶剤は、以上に限られるものではない。
以上のケトン系、エステル系溶剤に対し、セルロースアシレートフィルムに対する浸透性のほとんど無い溶剤を混合することも好ましい。このような溶剤としては、上記のケトン、エステル類で浸透性のほとんど無いものを選択することもできるし、その他、アルコール類、アミド類、エーテル類、エーテルエステル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等各種の溶剤を用いることができる。また、水、フッ素系溶剤等の有機溶剤以外の溶剤と混合して用いることもできる。これらの溶剤の選択は、塗布液に含有される構成成分の溶解性、反応性、添加している粒子等の安定性、乾燥工程での乾燥性、粘度調整等の観点から適宜選択し、混合の比率等を選択できる。
以上の溶剤の具体例としては、先に述べたケトン、エステル類の他に、沸点が100℃以下の低沸点溶剤として、例えば、ヘキサン(沸点68.7)、ヘプタン(98.4)、シクロヘキサン(80.7)、ベンゼン(80.1)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8)、クロロホルム(61.2)、四塩化炭素(76.8)、1,2−ジクロロエタン(83.5)、トリクロロエチレン(87.2)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6)、ジイソプロピルエーテル(68.5)、ジプロピルエーテル(90.5)、テトラヒドロフラン(66)などのエーテル類、メタノール(64.5)、エタノール(78.3)、2−プロパノール(82.4)、1−プロパノール(97.2)、2−ブタノール(99.5)、t−ブタノール(82.5)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6)、プロピオニトリル(97.4)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2)、などがある。
また、沸点が100℃以上の溶剤としては、例えば、オクタン(125.7)、トルエン(110.6)、キシレン(138)、テトラクロロエチレン(121.2)、クロロベンゼン(131.7)、ジオキサン(101.3)、ジブチルエーテル(142.4)、1−ブタノール(117.7)、iso―ブタノール(107.9)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(120)、N,N−ジメチルホルムアミド(153)、N,N−ジメチルアセトアミド(166)、ジメチルスルホキシド(189)、などがある。ただし、本発明の有機溶剤は、以上に限られるものではない。
なお、以上の溶剤については、セルロースアシレートフィルムへの溶剤の浸透性を目安に適宜溶剤種、溶剤組成を選択することが好ましい。各種溶剤の浸透性については、各種溶剤を含有した塗布液を塗布した時のカール性や、塗布した成分の浸透深さ等で判断することができるが、定量的に基材となるフィルムに対する溶剤の浸透性を見る方法として、溶剤中に染料等を混合しておき、その溶剤中に基材となるセルロースアシレートフィルムを一定時間浸漬し、溶剤から出したあと乾燥し、フィルムの断面で染料の染み込む深さを見る方法がある。例えば、市販のセルローストリアセテートフィルムTD−80Uを、染料を含有した溶剤に2秒浸漬し、45℃で5分乾燥させたときの各種溶剤浸透度は、MIBK 0%、MEK 50%、シクロヘキサノン10%、アセトン100%、酢酸エチル1%、トルエン0%、メタノール1%等となった。セルロースアシレートフィルムに浸透する溶剤とは、上記のような方法で2%程度以上の浸透性を持つ溶剤であり、2%未満のものは浸透しない溶剤と見ることができる。ひとつの例としてセルローストリアセテートフィルムに浸透性のある溶剤としては、具体的には、ケトン類として、アセトン、MEK、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エステル類として、酢酸メチル等がある。非浸透性の溶剤としては、ケトン類として、MIBK、2−オクタノン、エステル類として酢酸エチル、その他炭化水素系のヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等、アルコール類としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。ただし、これらの浸透性/非浸透性溶剤は、基材のセルロースアシレートの組成、可塑剤種等によってそれぞれ違いを生じる。
また、以上の溶剤のうち、本発明のケトン類、エステル類の溶剤に加えて、非浸透性の溶剤を混合することが好ましい。また、本発明のケトン、エステル類は、浸透性のある溶剤であることがより好ましい。さらに、浸透性、非浸透性の溶剤とも、ケトン類、エステル類であることが特に好ましい。以上の点で、特に好ましいのはMEK/MIBKの混合溶剤、MIBK/シクロヘキサノン等の混合溶剤等が上げられる。これらの混合比は、乾燥性、塗布液成分の溶解性、基材への浸透性等の観点で、適宜調節できる。
また、その他、溶剤の乾燥性、粘度、表面張力等の調整のために、特性の異なる数種の溶剤を混合して用いることもできる。特に高沸点の溶剤の混合は、中の成分の溶解性付与、分散安定性付与、塗布液の急激な乾燥による乾燥ムラ悪化の抑制、塗布液含水分上昇等の抑制のため、好ましい。
<機能層塗布>
次に本発明の光学フィルムにおける、有機溶剤を含有する塗布液の塗布によって付与される塗布層について説明する。本発明における塗布層は、光学機能層および物理機能層等の特性をもつ。光学機能層としては、防眩性層、光拡散層、低屈折率層、高屈折率層や、光学補償層等が挙げられ、物理機能層としてはハードコート層などが挙げられる。もちろん光学機能層と物理機能層と兼ねる場合もあり、例えば防眩性ハードコート層などが該当する。
本発明において、セルロースアシレート上に直接塗工されることが好ましいのは、防眩性(ハードコート)層、光拡散層、ハードコート層等である。
本発明の実施の一形態として、本発明の光学機能フィルムの好適な一態様である反射防止フィルムの基本的な構成を図面を参照しながら説明する。
図1(a)に模式的に示される断面図は、本発明の反射防止フィルムの一例であり、反射防止フィルム1は、透明支持体2、三種類の機能層(ハードコート層3、防眩性ハードコート層4、低屈折率層5)、の順序の層構成を有する。防眩性ハードコート層4には、マット粒子6が分散しており、防眩性ハードコート層4のマット粒子6以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層5の屈折率は1.35〜1.49の範囲にあることが好ましい。本発明において機能層は、このように防眩性を有するハードコート層でもよいし、防眩性を有しないハードコート層でもよく、また光拡散層でもよく、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。機能層である低屈折率層は最外層に塗設される。
さらに、低屈折率層は下記数式(VI)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(VI):(m/4)×0.7<n<(m/4)×1.3
式中、mは正の奇数であり、nは低屈折率層の屈折率であり、そして、dは低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
なお、上記数式(VI)を満たすとは、上記波長の範囲において数式(VI)を満たすm(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
図1(b)に模式的に示される断面図は、本発明の反射防止フィルムの一例であり、反射防止フィルム1は、透明支持体2、各々の機能層(ハードコート層3、中屈折率層7、高屈折率層8)、低屈折率層(最外層)5の順序の層構成を有する。透明支持体2、中屈折率層7、高屈折率層8および低屈折率層5は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
図1(b)のような層構成では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層が下記数式(VII)、高屈折率層が下記数式(VIII)、低屈折率層が下記数式(IX)をそれぞれ満足することがより優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる点で好ましい。
数式(VII):(hλ/4)×0.7<n<(hλ/4)×1.3
数式(VII)中、hは正の整数(一般に1、2または3)であり、nは中屈折率層の屈折率であり、そして、dは中屈折率層の層厚(nm)である。λは可視光線の波長(nm)であり、380〜680nmの範囲の値である。
数式(VIII):(iλ/4)×0.7<n<(iλ/4)×1.3
数式(VIII)中、iは正の整数(一般に1、2または3)であり、nは高屈折率層の屈折率であり、そしてdは高屈折率層の層厚(nm)である。λは可視光線の波長(nm)であり、380〜680nmの範囲の値である。
数式(IX):(jλ/4)×0.7<n<(jλ/4)×1.3
数式(IX)中、jは正の奇数(一般に1)であり、nは低屈折率層の屈折率であり、そしてdは低屈折率層の層厚(nm)である。λは可視光線の波長(nm)であり、380〜680nmの範囲の値である。
図1(b)のような層構成では、中屈折率層が下記数式(X)、高屈折率層が下記数式(XI)、低屈折率層が下記数式(XII)をそれぞれ満足することが特に好ましい。ここで、λは500nm、hは1、iは2、jは1である。
数式(X):
(hλ/4)×0.80<n<(hλ/4)×1.00
数式(XI):
(iλ/4)×0.75<n<(iλ/4)×0.95
数式(XII):
(jλ/4)×0.95<n<(jλ/4)×1.05
なお、ここで記載した高屈折率、中屈折率、低屈折率とは層相互の相対的な屈折率の高低をいう。また、図1(b)では、高屈折率層を光干渉層として用いており、極めて優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる。
次に、本発明の光学フィルムの各機能層について説明する。
[防眩性ハードコート層]
本発明の防眩性ハードコート層について以下に説明する。
防眩性ハードコート層は、主な成分としてハードコート性を付与するためのバインダー、防眩性を付与するためのマット粒子、および高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラー、等から形成される。
バインダーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマー(バインダー前駆体)の重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
以上のようなバインダーとしては、ラジカル重合性またはカチオン重合性基を持つ多官能モノマーや多官能オリゴマーがあげられる。
ラジカル重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、スチリル
基、アリル基等のエチレン性不飽和基等が挙げられ、中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。分子内に2個以上のラジカル重合性基を含有する多官能モノマーを含有することが好ましい。
ラジカル重合性多官能モノマーとしては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。好ましくは、分子中に2〜6個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー(すなわち2量体、3量体およびオリゴマー)またはそれらの混合物、並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
これらのバインダー成分としては、好ましくは、アクリレート系の官能基を有する樹脂、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート(以下本明細書では、アクリレートとメタアクリレートとを(メタ)アクリレートと記載する。)などのオリゴマーまたはプレポリマー等が挙げられる。多官能モノマーの具体例としては、、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール・ヘキサ(メタ)アクリレートと・ペンタ(メタ)アクリレートの混合物、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどがあげられる。また、これらにエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、N−ビニルピロリドンなどの単官能モノマーを混合することもこのましい。
また、その他、例えば、脂肪族多価アルコール化合物と、不飽和カルボン酸との重合性エステル化合物(モノエステルまたはポリエステル)、としては、特開2001−139663号公報段落番号[0026]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。また、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号の各公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開平2−226149号公報等記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を有するもの等も好適に用いられる。また、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物(特公昭48−41708号公報等)、ウレタンアクリレート類(特公平2−16765号公報等)、エチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物(特公昭62−39418号公報等)、ポリエステルアクリレート類(特公昭52−30490号公報等)、更に、日本接着協会誌20巻(7)、300〜308頁(1984年)に記載の光硬化性モノマーおよびオリゴマーも使用することができる。
これらのバインダーとしては、市販品として例えば日本化薬(株)、大阪有機化学(株)、大日本インキ化学、東亜合成、三菱化学等、一般に市販されているものを用いることができる。
これらの活性放射線硬化樹脂は、二種類以上を併用してもよい。以上のうち、特に好ましいのは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテト
ラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール・ヘキサ(メタ)アクリレートと・ペンタ(メタ)アクリレートの混合物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等である。
また、高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止フィルムを形成することができる。
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−エトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
また特開平6−41468に記載されているように、光重合開始剤を2種併用することも好ましく用いられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
熱ラジカル開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾービスーイソブチロニトリル、2−アゾービスープロ
ピオニトリル、2−アゾ−ビスーシクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止フィルムを形成することができる。
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。また、ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
防眩性ハードコート層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して20〜95質量%添加する。
防眩性ハードコート層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が1〜10μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が含有される。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、シリカ粒子が好ましい。
マット粒子の形状は、真球あるいは不定形のいずれも使用できる。
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与するマット粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なるマット粒子を併用することにより大きく改善することができる。
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは
0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
上記マット粒子は、形成された防眩性ハードコート層中のマット粒子量が好ましくは10〜2000mg/m、より好ましくは100〜1400mg/mとなるように防眩性ハードコート層に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
防眩性ハードコート層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた防眩性ハードコート層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
防眩性ハードコート層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO、ZrO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITOとSiO等が挙げられる。TiOおよびZrOが高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、防眩性ハードコート層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
本発明の防眩性ハードコート層のバインダーおよび無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
防眩性ハードコート層の膜厚は1〜10μmが好ましく、1.2〜8μmがより好ましい。
(オルガノシランゾル)
本発明の反射防止フィルムを構成する機能層のうちの少なくとも1層は、その層を形成する塗布液中に、オルガノシラン化合物、その加水分解物およびその部分縮合物の少なくとも一種の成分、いわゆるゾル成分(以降このように称する場合もある)を含有することが耐擦傷性の点で好ましい。このゾル成分は、塗布液を塗布後、乾燥、加熱工程で縮合して硬化物を形成し上記層のバインダーとなる。また、該硬化物が重合性不飽和結合を有する場合、活性光線の照射により3次元構造を有するバインダーが形成される。
オルガノシラン化合物は、下記一般式4で表されるものが好ましい。
一般式4:(R10−Si(X)4−m
上記一般式4において、R10は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基か好ましく、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。アルキル基の具体例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル
等が挙げられる。アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
Xは、水酸基または加水分解可能な基を表し、例えばアルコキシ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる)、ハロゲン原子(例えばCl、Br、I等)、及びRCOO(Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。例えばCHCOO、CCOO等が挙げられる)で表される基が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。
mは1〜3の整数を表し、好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。
一般式4において、R10あるいはXが複数存在するとき、複数のR10あるいはXはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。
10に含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
一般式4において、R10が複数ある場合は、少なくとも一つが置換アルキル基もしくは置換アリール基であることが好ましく、中でも、下記一般式1で表されるビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物が好ましい。
一般式1
Figure 2006209096

上記一般式1において、Rは水素原子、メチル基、メトキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、または塩素原子を表す。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。水素原子、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、および塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、および塩素原子が更に好ましく、水素原子およびメチル基が特に好ましい。
Yは単結合もしくは*−COO−**、*−CONH−**または*−O−**を表し、単結合、*−COO−**および*−CONH−**が好ましく、単結合および*−COO−**が更に好ましく、*−COO−**が特に好ましい。*は=C(R)−に結合する位置を、**はLに結合する位置を表す。
一般式1中、Lは2価の連結鎖を表す。具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミドなど)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基が挙げられ、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
一般式1中、lはl=100−mの数式を満たす数を表し、mは0〜50の数を表す。mは0〜40の数がより好ましく、0〜30の数が特に好ましい。
〜Rは、ハロゲン原子、水酸基、無置換のアルコキシ基、もしくは無置換のアルキル基が好ましい。R〜Rは塩素原子、水酸基、無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、水酸基、炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基もしくはメトキシ基が特に好ましい。
は水素原子、または無置換のアルキル基を表す。Rは水素原子もしくは炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子もしくはメチル基が特に好ましい。
一般式1中、Rは置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基か好ましく、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。アルキル基の具体例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル等が挙げられる。アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。Rに含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。置換基としてビニル重合性基以外の重合性官能基、例えばエポキシ基、イソシアナート基なども好ましい。Rの置換基としては、水酸基もしくは無置換のアルキル基が更に好ましく、水酸基もしくは炭素数1〜3のアルキル基が更に好ましく、水酸基もしくはメチル基が特に好ましい。
一般式1の化合物は2種類以上を併用しても良い。特に一般式1の化合物は複数種のシラン化合物を出発原料として合成することができる。以下に一般式4の化合物、並びに一般式1で表される化合物の出発原料の具体例を示すが、限定されるものではない。
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096

M−48: CH−Si(OCH
M−49: C−Si(OCH
M−50: t−C−Si(OCH
これらのうち、重合性基を含有するオルガノシランとしては(M−1)、(M−2)、及び(M−25)が特に好ましい。
本発明の効果を得るためには、オルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物における前記ビニル重合性基を含有するオルガノシランの含有量は、30質量%〜100質量%が好ましく、50質量%〜100質量%がより好ましく、70質量%〜95質量%が更に好ましい。固形分が生じにくく、液が濁りにくく、ポットライフが悪化しにくく、分子量の制御が容易(分子量の増大の抑制)であったり、重合性基の含有量が十分で、重合処理を行った場合の性能(例えば反射防止膜の耐傷性)の向上が得られやすい点で、前記ビニル重合性基を含有するオルガノシランの含有量は30質量%以上が好ましい。一般式1で表される化合物を合成する場合は、前記ビニル重合性基を含有するオルガノシランとして(M−1)、(M−2)、ビニル重合性基を有さないオルガノシランとして(M−19)〜(M−21)および(M−48)の中からそれぞれ1種をそれぞれ上記の量を組み合わせて用いると好ましい。
本発明のオルガノシランの加水分解物およびその部分縮合物の少なくともいずれかは、塗布品性能の安定化のためには揮発性を抑えることが好ましく、具体的には、105℃における1時間当たりの揮発量が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
本発明で用いるオルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物について詳細を説明する。
オルガノシランの加水分解反応、それに引き続く縮合反応は、一般に触媒の存在下で行われる。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、酪酸、マレイン酸、クエン酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブチルチタネート、ジブチル錫ジラウレート等の金属アルコキシド類;Zr、TiまたはAlなどの金属を中心金属とする金属キレート化合物等;KF、NHFなどの含F化合物が挙げられる。
上記触媒は単独で使用しても良く、或いは複数種を併用しても良い。
無機酸では塩酸、硫酸、有機酸では、水中での酸解離定数(pKa値(25℃))が4.5以下のものが好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸がより好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、メタンスルホン酸、シュウ酸、フタル酸、マロン酸が更に好ましく、シュウ酸が特に好ましい。
オルガノシランの加水分解・縮合反応は、無溶媒でも、溶媒中でも行うことができるが成分を均一に混合するために有機溶媒を用いることが好ましく、例えばアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。
溶媒はオルガノシランと触媒を溶解させるものが好ましい。また、有機溶媒が塗布液あるいは塗布液の一部として用いることが工程上好ましく、含フッ素ポリマーなどのその他の素材と混合した場合に、溶解性あるいは分散性を損なわないものが好ましい。
このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコールまたは2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。
これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。
これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を混合して使用することもできる。該反応における固形分の濃度は特に限定されるものではないが通常1%〜100%の範囲であり、より好ましくは1%〜90%の範囲であり、特に好ましくは20%〜70%の範囲である。
オルガノシランの加水分解・縮合反応は、オルガノシランの加水分解性基1モルに対して0.05〜2モル、好ましくは0.1〜1モルの水を添加し、上記溶媒の存在下あるいは非存在下に、そして触媒の存在下に、25〜100℃で、撹拌することにより行われる。
ビニル重合性基を含有するオルガノシラン加水分解物およびその部分縮合物の重量平均分子量は、分子量が300未満の成分を除いた場合に、450〜20000が好ましく、500〜10000がより好ましく、550〜5000が更に好ましく、600〜300
0が更に好ましい。
オルガノシランの加水分解物およびその部分縮合物における分子量が300以上の成分のうち、分子量が20000より大きい成分は20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。
また、オルガノシランの加水分解物およびその部分縮合物における分子量300以上の成分のうち、分子量1000〜20000の成分は20質量%以上であることが好ましい。20質量%以上であると、そのようなオルガノシランの加水分解物およびその部分縮合物を含有する硬化性組成物を硬化させて得られる硬化皮膜は、透明性や基板との密着性に優れる。
ここで、重量平均分子量及び分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量であり、含有量は、分子量が300以上の成分のピーク面積を100%とした場合の、前記分子量範囲のピークの面積%である。
分散度(重量平均分子/数平均分子量)は3.0〜1.1が好ましく、2.5〜1.1がより好ましく、2.0〜1.1が更に好ましく、1.5〜1.1が特に好ましい。
オルガノシランの加水分解物および部分縮合物の29Si−NMR分析により、一般式4のXが−OSiの形で縮合している状態を確認できる。
この時、Siの3つの結合が−OSiの形で縮合している場合(T3)、Siの2つの結合が−OSiの形で縮合している場合(T2)、Siの1つの結合が−OSiの形で縮合している場合(T1)、Siが全く縮合していない場合を(T0)とした場合に縮合率αは
数式(XIII):α=(T3×3+T2×2+T1×1)/3/(T3+T2+T1+T0)
で表され、縮合率は0.2〜0.95が好ましく、0.3〜0.93がより好ましく、0.4〜0.9がとくに好ましい。
0.1より小さいと加水分解や縮合が十分でなく、モノマー成分が増えるため硬化が十分でなく、0.95より大きいと加水分解や縮合が進みすぎ、加水分解可能な基が消費されてしまうため、バインダーポリマー、樹脂基板、無機微粒子などの相互作用が低下してしまい、これらを用いても効果が得られにくくなる。
本発明においては、一般式ROH(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールと一般式RCOCHCOR(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、TiまたはAlから選ばれる金属を中心金属とする少なくとも1種の金属キレート化合物の存在下で、25〜100℃で撹拌することにより加水分解を行うことが好ましい。もしくは触媒に含F化合物を使用する場合、含F化合物が完全に加水分解・縮合を進行させる能力が有るため、添加する水量を選択することにより重合度が決定でき、任意の分子量の設定が可能となるので好ましい。すなわち、平均重合度Mのオルガノシラン加水分解物/部分縮合物を調整するためには、Mモルの加水分解性オルガノシランに対して(M−1)モルの水を使用すれば良い。
金属キレート化合物は、一般式ROH(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールとRCOCHCOR(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、Ti、Alから選ばれる金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用しても良い。本発明に用いられる金属キレート化合物は、一般式Zr(ORp1(RCOCHCORp2、Ti(ORq1(RCOCHCORq2、およびAl(ORr1(RCOCHCORr2で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記オルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物の縮合反応を促進する作用をなす。
金属キレート化合物中のRおよびRは、同一または異なってもよく炭素数1〜10のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、Rは、前記と同様の炭素数1〜10のアルキル基のほか、炭素数1〜10のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基などである。また、金属キレート化合物中のp1、p2、q1、q2、r1、およびr2は、それぞれp1+p2=4、q1+q2=4、r1+r2=3となる様に決定される整数を表す。
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
金属キレート化合物は、前記オルガノシラン化合物に対し、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%の割合で用いられる。金属キレート化合物が上記範囲用いられることにより、オルガノシラン化合物の縮合反応が早く、塗膜の耐久性が良好であり、オルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物と金属キレート化合物を含有してなる組成物の保存安定性が良好である。
本発明の光学フィルムに用いられる機能層の塗布液には、上記ゾル成分および金属キレート化合物を含む組成物に加えて、β−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物の少なくともいずれかが添加されることが好ましい。以下にさらに説明する。
本発明で使用されるのは、一般式RCOCHCORで表されるβ−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物の少なくともいずれかであり、本発明に用いられる組成物の安定性向上剤として作用するものである。すなわち、前記金属キレート化合物(ジルコニウム、チタニウムおよびアルミニウム化合物の少なくともいずれかの化合物)中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物によるオルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物の縮合反応を促進する作用を抑制し、得られる組成物の保
存安定性を向上させる作用をなすものと考えられる。β−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物を構成するRおよびRは、前記金属キレート化合物を構成するRおよびRと同様である。
このβ−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。本発明において、β−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物は、金属キレート化合物1モルに対し好ましくは2モル以上、より好ましくは3〜20モル用いられる。2モル未満では得られる組成物の保存安定性に劣るおそれがあり好ましいものではない。
上記オルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物の含有量は、比較的薄膜である反射防止層の場合は少なく、厚膜であるハードコート層や防眩層の場合は多いことが好ましい。含有量は効果の発現、屈折率、膜の形状・面状等を考慮すると、含有層(添加層)の全固形分の0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜15質量%が最も好ましい。
本発明においてはまず前記オルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物の少なくともいずれかの化合物と金属キレート化合物を含有する組成物を調製し、これにβ−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物の少なくともいずれかを添加した液をハードコート層もしくは低屈折率層の少なくとも1層の塗布液に含有せしめて塗設することが好ましい。
(界面活性剤)
また、本発明の塗布液に対しては、塗布性改良、乾燥均一化、高速塗布適性付与のために、フッ素系、シリコーン系の界面活性作用をもつ成分の何れか、あるいはその両者を、塗布組成物中に添加することが好ましい。これらの界面活性成分は、表面の濡れ性、防汚性、防塵性、帯電性調整等のために添加することもある。
シリコーン系化合物の好ましい例としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む、化合物鎖の末端および側鎖の少なくともいずれかに置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中には、ジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられる。
シリコーン系化合物の分子量には特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることが特に好ましく、3000〜30000であることが最も好ましい。シリコーン系化合物のシリコーン原子含有量にも、特に制限はないが、18.0質量%以上であることが好ましく、25.0〜37.8質量%であることが特に好ましく、30.0〜37.0質量%であることが最も好ましい。
好ましいシリコーン系化合物の例としては、例えば特開2004−42278号公報段落番号[0068]記載のもの等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、添加剤として、フルオロアルキル基を含有する化合物も好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖[例えば−CFCF、−CH(CFH、−CH(CFCF、−CHCH(CFH等]であっても、分岐構造[例えば−CH(CF、−CHCF(CF、−CH(CH)CFCF、−CH(CH)(CFCFH等]であっても、脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)であってもよく、エーテル結合を有していてもよい(例えば−CHOCHCFCF、−CHCHOCHH、−CHCHOCHCH17、−CHCHOCFCFOCFCFH等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はなく用いられる。フッ素系化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが、20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としては、“R−2020”、“M−2020”、“R−3833”、“M−3833”[商品名:以上、ダイキン化学工業(株)製];メガファックF−171、F−172、F−179A、F−780−F、ディフェンサMCF−300[商品名:以上、大日本インキ(株)製]などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
以上の添加剤のうち、フルオロアルキル基含有共重合体を塗布組成物中に含有することが特に好ましい。このフルオロアルキル基含有共重合体は、より少ない添加量で、光学フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましい。
さらに、以下のフルオロアルキル基含有共重合体の構造の選択により、機能層表面に偏在した共重合体を上層(例えば低屈折率層)塗布時に上層の溶媒に抽出させて、本発明の反射防止膜を形成した時には機能層表面(機能層界面)に存在させないことも好ましい。また、フルオロ脂肪族基含有共重合体の添加量を調整することも、上記の効果を改良することに有効である。
このような方法は、具体的には、塗布液中にフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位を10質量%以上含むフルオロ脂肪族基含有共重合体を添加し、フルオロ脂肪族基含有共重合体が表面に偏析(偏在と同意である)させ、上層との密着性を得るためには、前記フルオロ脂肪族基含有共重合体を含有する機能層上に上層を形成する塗布液の溶媒を塗布、乾燥することで、該機能層の表面自由エネルギーが1mN/m以上変化する、特に3mN/m以上変化する様にする方法である。
フルオロ脂肪族基含有共重合体(「フッ素系ポリマー」と略記することもある)は、側鎖に炭素数4以上のパーフルオロアルキル基または炭素数4以上のCFH−基を有するフルオロアルキル基を有する共重合体であることが好ましい。
なかでも、下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位(重合単位)および下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位(重合単位)を含むアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、及びこれらに共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体が有用である。このような単量体としては、PolymerHandbook 2nd ed.,J.Brandrup,Wiley lnterscience(1975)Chapter 2Page 1〜483記載のものを用いることが出来る。
例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、
アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等をあげることができる。
(i)下記一般式6で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
一般式6
Figure 2006209096
上記一般式6において、Rは水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、メチル基が好ましい。Xは酸素原子、イオウ原子または−N(R12)−を表し、酸素原子または−N(R12)−がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。R12は水素原子または置換基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましい。Rは−CFまたは−CFHを表す。
一般式6中のmは1〜6の整数を表し、1〜3がより好ましく、1であることが更に好ましい。
一般式6中のnは1〜17の整数を表し、4〜11がより好ましく、6〜7が更に好ましい。Rは−CFHが好ましい。
またフッ素系ポリマー中に一般式6で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーから誘導される重合単位が2種類以上構成成分として含まれていても良い。
(ii)上記(i)と共重合可能な下記一般式7で示されるモノマー
一般式7
Figure 2006209096
上記一般式7において、R13は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。Yは酸素原子、イオウ原子または−N(R15)−を表し、酸素原子または−N(R15)−がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。R15は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましい。
14は、置換基を有しても良い炭素数1〜60の直鎖、分岐、あるいは環状のアルキル基、または置換基を有していても良い芳香族基(例えば、フェニル基またはナフチル基)を表す。該アルキル基はポリ(アルキレンオキシ)基を含んでも良い。炭素数1〜12の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基、炭素数5〜40のポリ(アルキレンオキシ)基を含むアルキル基または総炭素数6〜18の芳香族がより好ましく、炭素数1〜8の直鎖、分岐、または環状のアルキル基および炭素数炭素数5〜30のポリ(アルキレンオキシ)基を含むアルキル基が極めて好ましい。以下にポリ(アルキレンオキシ)基について説明する。
ポリ(アルキレンオキシ)基は(OR)xで表すことができ、Rは2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基、例えば−CHCH−、−CHCHCH−、−CH(CH)CH−、または−CH(CH)CH(CH)−であることが好ましい。xは2〜30を表し、2〜20が好ましく、4〜15がさらに好ましい。
前記のポリ(オキシアルキレン)基中のオキシアルキレン単位はポリ(オキシプロピレン)におけるように同一であってもよく、また互いに異なる2種以上のオキシアルキレンが不規則に分布されたものであっても良く、直鎖または分岐状のオキシプロピレンまたはオキシエチレン単位であったり、または直鎖または分岐状のオキシプロピレン単位のブロック及びオキシエチレン単位のブロックのように存在するものであっても良い。
このポリ(オキシアルキレン)鎖は1つまたはそれ以上の連鎖結合(例えば−CONH−Ph−NHCO−、−S−など:Phはフェニレン基を表す)で連結されたものも含むことができる。連鎖の結合が3つまたはそれ以上の原子価を有する場合には、これは分岐鎖のオキシアルキレン単位を得るための手段を供する。またこの共重合体を本発明に用いる場合には、ポリ(オキシアルキレン)基の分子量は250〜3000が適当である。
ポリ(オキシアルキレン)アクリレート及びメタクリレートは、市販のヒドロキシポリ(オキシアルキレン)材料、例えば商品名“プルロニック”[Pluronic](旭電化工業(株)製)、アデカポリエーテル(旭電化工業(株)製)“カルボワックス[Carbowax(グリコ・プロダクス)]、”トリトン“[Toriton(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas製))およびP.E.G(第一工業製薬(株)製)として販売されているものを公知の方法でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリドまたは無水アクリル酸等と反応させることによって製造できる。別に、公知の方法で製造したポリ(オキシアルキレン)ジアクリレート等を用いることもできる。
本発明で用いられるフッ素系ポリマーの製造に用いられる上記一般式6で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該フッ素系ポリマーの単量体全量に基づいて、10質量%以上であり、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70〜100質量%であり、さらに好ましくは80〜100質量%の範囲である。
本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、6,000〜80,000がより好ましく、8,000〜60,000が更に好ましい。
ここで、質量平均分子量及び分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。分子量は300以上の成分のピーク面積から算出した。
更に、本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい添加量は、添加による効果の発現、乾燥、および面状故障の発生の抑制などの観点から、塗布液の質量に対して0.001〜5質量%の範囲であり、好ましくは0.005〜3質量%の範囲であり、更に好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。
以下、本発明によるフッ素系ポリマーの具体的な構造の例を示すがこの限りではない。なお、式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
その他、本発明の防眩性ハードコート層中に、帯電防止性、導電性、硬度調節等の目的のための添加剤を用いることもできる。
以上の本発明の防眩製ハードコートフィルムは、物理的強度、および防眩性付与のため、膜厚としては、0.5μm以上20μm以下が好ましい。より好ましくは0.7μm以上15μm以下であり、特に好ましくは1μm以上10μm以下である。また、これらの層を付与する際の、塗膜としての塗布厚みは、塗布液の濃度、粘度、乾燥性等により設定されるが、1mあたり1ccから40ccが好ましく、2ccから30ccがより好ましく、特に5ccから25ccが好ましい。なお、本発明のセルロースアシレートフィルム、および溶剤組成の選択による改良効果は、塗布量の少ない領域でも効果あるが、特に塗布量の多い領域での効果が大きく、10ccから25ccがさらに好ましい。
[光拡散層]
本発明の光学機能フィルムにおける光拡散層の目的は、液晶表示装置の視野角(特に下
方向視野角)を拡大し、観察方向の視角が変化してもコントラスト低下、階調または黒白反転、あるいは色相変化を抑止することである。
本発明者等は、ゴニオフォトメーターで測定される散乱光の強度分布が視野角改良効果に相関することを確認した。すなわち、バックライトから出射された光が視認側の偏光板表面に設置された光拡散フィルムに含有される透光性微粒子の内部散乱の効果により拡散されればされるほど視野角特性がよくなる。しかし、あまり拡散されすぎると、後方散乱が大きくなり、正面輝度が減少する、あるいは、散乱が大きすぎて画像鮮明性が劣化する等の問題が生じる。従って、散乱光強度分布をある範囲に制御することが必要となる。そこで、鋭意検討の結果、所望の視認特性を達成するには、散乱光プロファイルの出射角0°の光強度に対して、特に視認角改良効果と相関ある30°の散乱光強度が0.01%〜0.2%であることが好ましく、0.02%〜0.15%が更に好ましく、0.03%〜0.1%が特に好ましい。
散乱光プロファイルは、作成した光散乱フィルムについて、(株)村上色彩技術研究所製の自動変角光度計GP−5型を用いて測定できる。
本発明の光拡散層はバインダー、無機フィラーおよび透光性微粒子から形成され、バインダー、無機フィラーは前述の防眩性ハードコート層と同様のものが使用でき、透光性微粒子は前述のマット粒子と同様のものが用いられる。
光拡散性層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して、5〜80質量%添加する。
本発明の光拡散層は、ハードコート機能を持つことも好ましい。この光拡散層には、前記防眩性ハードコート層で記載したバインダー、開始剤、粒子、その他添加剤を同様に用いることができる。
[高屈折率層]
本発明の反射防止フィルムでは、より良い反射防止能を付与するために、高屈折率層を好ましく用いることができる。
(二酸化チタンを主成分とする無機微粒子)
本発明の高屈折率層には、コバルト、アルミニウム、ジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子を含有する。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。
本発明の高屈折率層の屈折率は屈折率1.55〜2.40であり、いわゆる高屈折率層あるいは中屈折率層といわれている層であるが、以下の本明細書では、この層を高屈折率層と総称して呼ぶことがある。
本発明における二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、屈折率が1.90〜2.80であることが好ましく、2.10〜2.80であることがさらに好ましく、2.20〜2.80であることが最も好ましい。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の一次粒子の質量平均径は1〜200nmであることが好ましく、より好ましくは1〜150nm、さらに好ましくは1〜100nm、特に好ましくは1〜80nmである。
無機微粒子の粒子径は、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。無機微粒子の比表面積は、10〜400m/gであることが好ましく、20〜200m/gであることがさらに好ましく、30〜150m/gであることが最も好ましい。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造が主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量
%)が多い成分を意味する。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子に、Co、Al及びZrから選ばれる少なくとも1つの元素を含有することで、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、本発明の高屈折率層の耐候性を改良することができる。
特に、好ましい元素はCoである。また、2種類以上を併用することも好ましい。
Tiに対するCo、Al又はZrの含有量は、それぞれTiに対して0.05〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜7質量%、特に好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは0.5〜3質量%である。
Co、Al及びZrは、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部と表面の少なくともいずれかに存在させることができるが、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在させることが好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。
Co、Al、Zrを二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在させる(例えば、ドープする)には、種々の手法がある。例えば、イオン注入法(Vol.18,No.5,pp.262−268,1998;青木 康)や、特開平11−263620号公報、特表平11−512336号公報、ヨーロッパ特許出願公開第0335773号明細書、特開平5−330825号公報に記載の手法があげられる。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の粒子形成過程において、Co、Al、Zrを導入する手法(例えば、特表平11−512336号公報、ヨーロッパ特許出願公開第0335773号明細書、特開平5−330825号公報に記載)が特に好ましい。
Co、Al、Zrは、酸化物として存在することも好ましい。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子には、目的により、さらに他の元素を含むこともできる。他の元素は、不純物として含んでいてもよい。他の元素の例には、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Mg、Si、PおよびSが含まれる。
本発明に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は表面処理してもよい。表面処理は、無機化合物または有機化合物を用いて実施する。表面処理に用いる無機化合物の例には、コバルトを含有する無機化合物(CoO,Co,Coなど)、アルミニウムを含有する無機化合物(Al,Al(OH)など)、ジルコニウムを含有する無機化合物(ZrO,Zr(OH)など)、ケイ素を含有する無機化合物(SiOなど)、鉄を含有する無機化合物(Feなど)などが含まれる。
コバルトを含有する無機化合物、アルミニウムを含有する無機化合物、ジルコニウムを含有する無機化合物が特に好ましく、コバルトを含有する無機化合物、Al(OH)、Zr(OH)が最も好ましい。
表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤およびチタネートカップリング剤が含まれる。シランカップリング剤が最も好ましい。
チタネートカップリング剤としては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、のどのテトライソプロポキシチタンなどの金属アルコキシド、プレンアクト(KR−TTS、KR−46B、KR−55、KR−41Bなど;味の素(株)製)などが挙げられる。
表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、その他アニオン性基を有する有機化合物などが好ましく、特に好ましいのは、カルボキシル基、スルホン酸基、又は、リン酸基を有する有機化合物である。
ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などが好ましく用いることができる。
表面処理に用いる有機化合物は、さらに、架橋又は重合性官能基を有することが好まし
い。架橋、又は、重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する基である。
これらの表面処理は、2種類以上を併用することもできる。アルミニウムを含有する無機化合物とジルコニウムを含有する無機化合物を併用することが、特に好ましい。
本発明の二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、表面処理により特開2001−166104号公報記載のごとく、コア/シェル構造を有していても良い。
高屈折率層に含有される二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状あるいは不定形状であることが好ましく、特に好ましくは不定形状、紡錘形状である。
(分散剤)
本発明の高屈折率層に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散には、分散剤を用いることができる。
本発明の二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散には、アニオン性基を有する分散剤を用いることが特に好ましい。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(及びスルホ基)、リン酸基(及びホスホノ基)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有する基、またはその塩が有効であり、特にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基及びその塩が好ましく、カルボキシル基及びリン酸基が特に好ましい。1分子当たりの分散剤に含有されるアニオン性基の数は、1個以上含有されていればよい。
無機微粒子の分散性をさらに改良する目的でアニオン性基は複数個が含有されていてもよい。平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有されるアニオン性基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
分散剤は、さらに架橋又は重合性官能基を含有することが好ましい。架橋又は重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する官能基である。
本発明の高屈折率層に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散に用いる好ましい分散剤は、アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有し、かつ該架橋又は重合性官能基を側鎖に有する分散剤である。
アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有し、かつ該架橋又は重合性官能基を側鎖に有する分散剤の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが1000以上であることが好ましい。分散剤のより好ましい質量平均分子量(Mw)は2,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは5,000〜200,000、特に好ましくは10,000〜100,000である。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(スルホ)、リン酸基(ホスホノ)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有する基、またはその塩が有効であり、特にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基またはその塩が好ましく、カルボキシル基、リン酸基が特に好ましい。1分子当たりの分散剤に含有されるアニオン性基の数は、平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上で
ある。また、分散剤に含有されるアニオン性基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有し、かつ該架橋又は重合性官能基を側鎖に有する分散剤は、上記アニオン性基を側鎖又は末端に有する。
特に好ましい分散剤は、側鎖にアニオン性基を有する分散剤である。側鎖にアニオン性基を有する分散剤において、アニオン性基含有繰返し単位の組成は、全繰返し単位のうちの10−4〜100mol%の範囲であり、好ましくは1〜50mol%、特に好ましくは5〜20mol%である。
架橋又は重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する基である。
1分子当たりの分散剤に含有される架橋又は重合性官能基の数は、平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有される架橋又は重合性官能基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
本発明に用いる好ましい分散剤において、側鎖にエチレン性不飽和基を有する繰返し単位の例としては、ポリ−1,2−ブタジエンおよびポリ−1,2−イソプレン構造あるいは、(メタ)アクリル酸のエステルまたはアミドの繰返し単位であって、それに特定の残基(−COORまたは−CONHRのR基)が結合しているものが利用できる。上記特定の残基(R基)の例としては、−(CH)n−CR21=CR2223、−(CHO)n−CHCR21=CR2223、−(CHCHO)n−CHCR21=CR2223、−(CH)n−NH−CO−O−CHCR21=CR2223、−(CH)n−O−CO−CR21=CR2223および−(CHCHO)−X(R21〜R23はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、R21とR22またはR23は互いに結合して環を形成してもよく、nは1〜10の整数であり、そしてXはジシクロペンタジエニル残基である)を挙げることができる。エステル残基のRの具体例には、−CHCH=CH(特開昭64−17047号公報記載のアリル(メタ)アクリレートのポリマーに相当)、−CHCHO−CHCH=CH、−CHCHOCOCH=CH、−CHCHOCOC(CH)=CH、−CHC(CH)=CH、−CHCH=CH−C、−CHCHOCOCH=CH−C、−CHCH−NHCOO−CHCH=CHおよび−CHCHO−X(Xはジシクロペンタジエニル残基)が含まれる。アミド残基のRの具体例には、−CHCH=CH、−CHCH−Y(Yは1−シクロヘキセニル残基)および−CHCH−OCO−CH=CH、−CHCH−OCO−C(CH)=CHが含まれる。
上記のエチレン性不飽和基を有する分散剤においては、その不飽和結合基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、分子間で直接、または重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、分子間に架橋が形成されて硬化する。あるいは、分子中の原子(例えば不飽和結合基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、分子間に架橋が形成されて硬化する。
架橋又は重合性官能基の含有単位は、アニオン性基含有繰返し単位以外の全ての繰返し単位を構成していてもよいが、好ましくは全架橋又は繰返し単位のうちの5〜50mol%であり、特に好ましくは5〜30mol%である。
本発明の好ましい分散剤は、架橋又は重合性官能基、アニオン性基を有するモノマー以外の適当なモノマーとの共重合体であっても良い。共重合成分に関しては特に限定はされないが、分散安定性、他のモノマー成分との相溶性、形成皮膜の強度等種々の観点から選択される。好ましい例としては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、スチレン等が挙げられる。
本発明の好ましい分散剤の形態は特に制限はないが、ブロック共重合体またはランダム共重合体であることが好ましくコストおよび合成的な容易さからランダム共重合体であることが特に好ましい。
本発明に好ましく用いられる分散剤としては、特開2004−29705号公報の「化1」から「化6」に記載の化合物を用いることができる。なお、本発明用の分散剤はこれらに限定されるものではない。
分散剤の無機微粒子に対する使用量は、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%の範囲であることがより好ましく、5〜20質量%であることが最も好ましい。また、分散剤は2種類以上を併用してもよい。
(高屈折率層及びその形成法)
高屈折率層に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、分散物の状態で高屈折率層の形成に使用する。
無機微粒子の分散において、前記の分散剤の存在下で、分散媒体中に分散する。
分散媒体は、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散媒体の例には、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が含まれる。トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびブタノールが好ましい。
特に好ましい分散媒体は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエンである。
無機微粒子は、分散機を用いて分散する。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライターおよびコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミルおよび高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダーおよびエクストルーダーが含まれる。
無機微粒子は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、質量平均径は1〜200nmである。好ましくは5〜150nmであり、さらに好ましくは10〜100nm、特に好ましくは10〜80nmである。
無機微粒子を200nm以下に微細化することで透明性を損なわない高屈折率層を形成できる。
本発明に用いる高屈折率層は、上記のようにして分散媒体中に無機微粒子を分散した分散液に、好ましくは、さらにマトリックス形成に必要なバインダー前駆体(前述の防眩性ハードコート層のバインダー前駆体と同様のもの)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層形成用の塗布組成物とし、透明支持体上に高屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、電離放射線硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応、又は、重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
さらに、高屈折率層のバインダーを層の塗布と同時または塗布後に、分散剤と架橋反応、又は、重合反応させることが好ましい。
このようにして作製した高屈折率層のバインダーは、例えば、上記の好ましい分散剤と電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。さらに高屈折率層のバインダーは、アニオン性基が無機微粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、無機微粒子を含有する高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良する。
光重合性多官能モノマーの重合反応には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。
光ラジカル重合開始剤としては、前述の防眩性ハードコート層と同様のものが用いることができる。
高屈折率層においてバインダーは、さらにシラノール基を有することが好ましい。バインダーがさらにシラノール基を有することで、高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性がさらに改良される。
シラノール基は、例えば架橋又は重合性官能基を有する前記一般式4で表されるシランカップリング剤、その部分加水分解物、あるいはその縮合物を上記の高屈折率層形成用の塗布組成物に添加し、塗布組成物を透明支持体上に塗布して上記の分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマー、前記一般式4で表されるシランカップリング剤、その部分加水分解物、あるいはその縮合物を架橋反応、又は、重合反応させることによりバインダーに導入することができる。
高屈折率層においてバインダーは、アミノ基または四級アンモニウム基を有することも好ましい。
アミノ基または四級アンモニウム基を有する高屈折率層のバインダーは、例えば架橋又は重合性官能基とアミノ基または四級アンモニウム基を有するモノマーを上記の高屈折率層形成用の塗布組成物に添加し、塗布組成物を透明支持体上に塗布して上記の分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマーと架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
アミノ基または四級アンモニウム基を有するモノマーは、塗布組成物の中で無機微粒子の分散助剤として機能する。さらに、塗布後、分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマーと架橋反応、又は、重合反応させてバインダーとすることで高屈折率層における無機微粒子の良好な分散性を維持し、物理強度、耐薬品性、耐候性に優れた高屈折率層を作製することが出来る。
アミノ基または四級アンモニウム基を有する好ましいモノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、
ジメチルアリルアンモニウムクロライドなどがあげられる。
アミノ基または四級アンモニウム基を有するモノマーの分散剤に対する使用量は、1〜40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは3〜30質量%、特に好ましくは3〜20質量%である。高屈折率層の塗布と同時または塗布後に、架橋又は重合反応によってバインダーを形成すれば、高屈折率層の塗布前にこれらのモノマーを有効に機能させることができる。
架橋又は重合しているバインダーは、ポリマーの主鎖が架橋又は重合している構造を有する。ポリマーの主鎖の例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミドおよびメラミン樹脂が含まれる。ポリオレフィン主鎖、ポリエーテル主鎖およびポリウレア主鎖が好ましく、ポリオレフィン主鎖およびポリエーテル主鎖がさらに好ましく、ポリオレフィン主鎖が最も好ましい。
ポリオレフィン主鎖は、飽和炭化水素からなる。ポリオレフィン主鎖は、例えば、不飽和重合性基の付加重合反応により得られる。ポリエーテル主鎖は、エーテル結合(−O−)によって繰り返し単位が結合している。ポリエーテル主鎖は、例えば、エポキシ基の開環重合反応により得られる。ポリウレア主鎖は、ウレア結合(−NH−CO−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレア主鎖は、例えば、イソシアネート基とアミノ基との縮重合反応により得られる。ポリウレタン主鎖は、ウレタン結合(−NH−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレタン主鎖は、例えば、イソシアネート基と、水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリエステル主鎖は、エステル結合(−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリエステル主鎖は、例えば、カルボキシル基(酸ハライド基を含む)と水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリアミン主鎖は、イミノ結合(−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミン主鎖は、例えば、エチレンイミン基の開環重合反応により得られる。ポリアミド主鎖は、アミド結合(−NH−CO−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミド主鎖は、例えば、イソシアネート基とカルボキシル基(酸ハライド基を含む)との反応により得られる。メラミン樹脂主鎖は、例えば、トリアジン基(例、メラミン)とアルデヒド(例、ホルムアルデヒド)との縮重合反応により得られる。なお、メラミン樹脂は、主鎖そのものが架橋又は重合構造を有する。
アニオン性基は、連結基を介してバインダーの側鎖として、主鎖に結合していることが好ましい。
アニオン性基とバインダーの主鎖とを結合する連結基は、−CO−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、およびこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。架橋又は重合構造は、二つ以上の主鎖を化学的に結合(好ましくは共有結合)する。架橋又は重合構造は、三つ以上の主鎖を共有結合することが好ましい。架橋又は重合構造は、−CO−、−O−、−S−、窒素原子、リン原子、脂肪族残基、芳香族残基およびこれらの組み合わせから選ばれる二価以上の基からなることが好ましい。
バインダーは、アニオン性基を有する繰り返し単位と、架橋又は重合構造を有する繰り返し単位とを有するコポリマーであることが好ましい。コポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、2〜96mol%であることが好ましく、4〜94mol%であることがさらに好ましく、6〜92mol%であることが最も好ましい。繰り返し単位は、二以上のアニオン性基を有していてもよい。コポリマー中の架橋又は重合構造を有する繰り返し単位の割合は、4〜98mol%であることが好ましく、6〜96mol%であることがさらに好ましく、8〜94mol%であることが最も好ましい。
バインダーの繰り返し単位は、アニオン性基と架橋又は重合構造の双方を有していてもよい。バインダーには、その他の繰り返し単位(アニオン性基も架橋又は重合構造もない繰り返し単位)が含まれていてもよい。
その他の繰り返し単位としては、シラノール基、アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位が好ましい。
シラノール基を有する繰り返し単位では、シラノール基は、バインダーの主鎖に直接結合させるか、あるいは連結基を介して主鎖に結合させる。シラノール基は、連結基を介して側鎖として、主鎖に結合させることが好ましい。シラノール基とバインダーの主鎖とを結合する連結基は、−CO−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、およびこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。バインダーが、シラノール基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、2〜98mol%であることが好ましく、4〜96mol%であることがさらに好ましく、6〜94mol%であることが最も好ましい。
アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位では、アミノ基または四級アンモニウム基は、バインダーの主鎖に直接結合させるか、あるいは連結基を介して主鎖に結合させる。アミノ基または四級アンモニウム基は、連結基を介して側鎖として、主鎖に結合させることが好ましい。アミノ基または四級アンモニウム基は、二級アミノ基、三級アミノ基または四級アンモニウム基であることが好ましく、三級アミノ基または四級アンモニウム基であることがさらに好ましい。二級アミノ基、三級アミノ基または四級アンモニウム基の窒素原子に結合する基は、アルキル基であることが好ましく、炭素原子数が1〜12のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数が1〜6のアルキル基であることがさらに好ましい。四級アンモニウム基の対イオンは、ハライドイオンであることが好ましい。アミノ基または四級アンモニウム基とバインダーの主鎖とを結合する連結基は、−CO−、−NH−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、およびこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。バインダーが、アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、0.1〜32mol%であることが好ましく、0.5〜30mol%であることがさらに好ましく、1〜28mol%であることが最も好ましい。
なお、シラノール基、及び、アミノ基、四級アンモニウム基は、アニオン性基を有する繰り返し単位あるいは架橋又は重合構造を有する繰り返し単位に含まれていても、同様の効果が得られる。
架橋又は重合しているバインダーは、高屈折率層形成用の塗布組成物を透明支持体上に塗布して、塗布と同時または塗布後に、架橋又は重合反応によって形成することが好ましい。
高屈折率層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して、5〜80質量%添加する。
無機微粒子は高屈折率層の屈折率を制御する効果と共に、硬化収縮を抑える機能がある。
高屈折率層の中において、無機微粒子はなるべく微細に分散されていることが好ましく、質量平均径は1〜200nmである。高屈折率層中の無機微粒子の質量平均径は、5〜150nmであることが好ましく、10〜100nmであることがさらに好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。
無機微粒子を200nm以下に微細化することで透明性を損なわない高屈折率層を形成できる。
高屈折率層における無機微粒子の含有量は、高屈折率層の質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜75質量%である。無機微粒子は高屈折率層内で二種類以上を併用してもよい。
高屈折率層の上に低屈折率層を有する場合、高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率より高いことが好ましい。
高屈折率層に、芳香環を含む電離放射線硬化性化合物、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)を含む電離放射線硬化性化合物、S,N,P等の原子を含む電離放射線硬化性化合物などの架橋又は重合反応で得られるバインダーも好ましく用いることができる。
高屈折率層の上に低屈折率層を構築して反射防止フィルムを作製するためには、高屈折率層の屈折率は1.55〜2.40であることが好ましく、より好ましくは1.60〜2.20、更に好ましくは、1.65〜2.10、最も好ましくは1.80〜2.00である。
高屈折率層には、前記の成分(無機微粒子、重合開始剤、光増感剤など)以外に、樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子、などを添加することもできる。
高屈折率層の膜厚は用途により適切に設計することができる。高屈折率層を後述する光学干渉層として用いる場合、30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜170nm、特に好ましくは60〜150nmである。
高屈折率層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
高屈折率層のヘイズは、防眩機能を付与する粒子を含有しない場合、低いほど好ましい。5%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
高屈折率層は、前記透明支持体上に直接、又は、他の層を介して構築することが好ましい。
本発明において、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応は、酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。このことは高屈折率層の形成時に限らず、防眩性ハードコート層または光拡散性層の形成時についても共通である。
高屈折率層を酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性、更には、高屈折率層と高屈折率層と隣接する層との接着性を改良することができる。
好ましくは酸素濃度が6体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋又は重合反応により高屈折率層を形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
[ハードコート層]
ハードコート層としては、反射防止フィルムに物理強度を付与するために防眩性ではない、いわゆる平滑なハードコート層が好ましく用いられ、透明支持体の表面に設けられる。特にこの平滑なハードコート層は、透明支持体と前記防眩性ハードコート層、透明支持体と光拡散層、透明支持体と高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの具体例は防眩性ハードコート層で説明したものと同じである。
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、高屈折率層で例示したものが挙げられ、光重合開始剤、光増感剤を用いて重合することが好ましい。光重合反応は、ハードコート層の塗布および乾燥後、紫外線照射により行うことが好ましい。
ハードコート層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して30〜95質量%添加する。
ハードコート層は、一次粒子の平均粒径が200nm以下の無機微粒子を含有することが好ましい。ここでいう平均粒径は質量平均径である。一次粒子の平均粒径を200nm以下にすることで透明性を損なわないハードコート層を形成できる。
無機微粒子はハードコート層の硬度を高くすると共に、塗布層の硬化収縮を抑える機能がある。また、ハードコート層の屈折率を制御する目的にも添加される。
無機微粒子としては、高屈折率層で例示した無機微粒子に加え、二酸化珪素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化錫、ITO、酸化亜鉛などの微粒子が挙げられる。好ましくは、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化錫、ITO、酸化亜鉛である。
無機微粒子の一次粒子の好ましい平均粒径は5〜200nm、より好ましくは10〜150nmであり、さらに好ましくは20〜100nm、特に好ましくは20〜50nmである。
ハードコート層の中において、無機微粒子はなるべく微細に分散されていることが好ましい。
ハードコート層の中における無機微粒子の粒子サイズは、好ましくは平均粒径で5〜300nm、より好ましくは10〜200nmであり、さらに好ましくは20〜150nm、特に好ましくは20〜80nmである。
ハードコート層における無機微粒子の含有量は、ハードコート層の全質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜75質量%である。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μm、特に好ましくは0.7〜5μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ない
ほど好ましい。
ハードコート層の形成において、電離放射線硬化性の化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成される場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度や耐薬品性に優れたハードコート層を形成することができる。
好ましくは酸素濃度が6体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
ハードコート層は、透明支持体の表面に、ハードコート層形成用の塗布組成物を塗布することで形成することが好ましい。
[低屈折率層]
本発明の低屈折率層について以下に説明する。
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49であり、好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。
本発明の低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
本発明の低屈折率層には、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含むことが好ましい。フッ素ポリマーとしては動摩擦係数0.03〜0.15、水に対する接触角90〜120°の熱または電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。前述したように本発明の低屈折率層には膜強度向上のための無機フィラーを用いることもできる。
低屈折率層に好ましく用いられる含フッ素ポリマーとしては、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
低屈折率層に用いられる特に有用な含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテル類またはビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60mol%を占めていることである。
低屈折率層に用いられる共重合体の好ましい形態として、前記一般式2のものが挙げられる。
一般式2中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していても良い。
好ましい例としては、*‐(CH−O−**,*−(CH−NH−**,*−(CH−O−**,*−(CH−O−**,*−(CH−O−(CH−O−**,*−CONH−(CH−O−**,*−CHCH(OH)CH−O−**,*−CHCHOCONH(CH−O−**(*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す。)等が挙げられる。mは0または1を表す。
一般式2中、Xは水素原子またはメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
一般式2中、Aは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表し、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一あるいは複数のビニルモノマーによって構成されていても良い。
好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビ
ニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表し、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10の場合である。
低屈折率層に用いられる共重合体の特に好ましい形態として一般式8が挙げられる。
一般式8
Figure 2006209096
一般式8において、X、x、yは一般式2と同じ意味を表し、好ましい範囲も同じである。
nは2≦n≦10の整数を表し、2≦n≦6であることが好ましく、2≦n≦4であることが特に好ましい。
Bは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を単位を表し、単一組成であっても複数の組成によって構成されていても良い。例としては、前記一般式2におけるAの例として説明したものが当てはまる。
z1およびz2はそれぞれの繰返し単位のmol%を表し、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たす値を表す。それぞれ0≦z1≦30、0≦z2≦10であることが好ましく、0≦z1≦10、0≦z2≦5であることが特に好ましい。
一般式2または8で表される共重合体は、例えば、ヘキサフルオロプロピレン成分とヒドロキシアルキルビニルエーテル成分とを含んでなる共重合体に前記のいずれかの手法により(メタ)アクリロイル基を導入することにより合成できる。
以下に本発明で有用な共重合体の好ましい例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
Figure 2006209096
低屈折率層に用いられる上記共重合体の合成は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合によって水酸基含有重合体等の前駆体を合成した後、前記高分子反応によって(メタ)アクリロイル基を導入することにより行なうことができる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行なうことができる。
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光または放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶剤の単独ある
いは2種以上の混合物でも良いし、水との混合溶媒としても良い。
重合温度は生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm、特に、1〜30kg/cm程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。
得られたポリマーの再沈殿溶媒としては、イソプロパノール、ヘキサン、メタノール等が好ましい。
低屈折率層の含フッ素ポリマーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して20〜95質量%添加する。
(無機微粒子)
次に本発明の低屈折率層中に、含有することのできる無機微粒子について、以下に記載する。
無機微粒子の配合量は、1mg/m〜100mg/mが好ましく、より好ましくは5mg/m〜80mg/m、更に好ましくは10mg/m〜60mg/mである。配合量が上記範囲であることにより、耐擦傷性に優れ、低屈折率層表面に微細な凹凸の発生が減少し、黒の締まりなどの外観や積分反射率が良化する。
該無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。例えば、フッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点で、シリカ微粒子が好ましい。シリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
シリカ微粒子の粒径が上記範囲であれば、耐擦傷性の改良効果が十分であり、しかも低屈折率層表面に微細な凹凸が発生することが無く、その結果、黒の締まりといった外観や積分反射率が良化する。
シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。
ここで、無機微粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
低屈折率層の屈折率上昇をより一層少なくするために、中空のシリカ微粒子を用いることが好ましく、該中空シリカ微粒子は屈折率が1.17〜1.40、より好ましくは1.17〜1.35、さらに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、下記数式(XIV)から算出される空隙率xは、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。
数式(XIV):x=(4πa/3)/(4πb/3)×100
中空のシリカ粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17未満の低屈折率の粒子は用いられない。
なお、これら中空シリカ粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定をおこなった。
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(「大サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)と併用することが好ましい。
小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層が100nmの場合、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コストおよび保持剤効果の点で好ましい。
シリカ微粒子は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング処理が特に有効である。
上記カップリング剤は、低屈折率層の無機フィラーの表面処理剤として該層塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いられるが、該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
シリカ微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
以上シリカ微粒子について述べたことは、他の無機微粒子についても適用される。
本発明の低屈折率層は反射防止能と耐擦傷性を両立させるために前記オルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物の少なくともいずれかを含有することが好ましく、下層のハードコート層もゾル成分を含有することが特に好ましい。
上記オルガノシランゾル成分の含有量は、比較的薄膜である低屈折率層のような表面層の場合は含有層(添加層)の全固形分の0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。
低屈折率層における、含フッ素ポリマーに対するオルガノシランのゾル成分の使用量は、効果の発現、屈折率、膜の形状・面状等を考慮すると、5〜100質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、8〜35質量%が更に好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。
本発明において、無機フィラーの凝集、沈降を抑制する目的で、各層を形成するための塗布液に分散安定化剤を併用することも好ましい。分散安定化剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリアミド、リン酸エステル、ポリエーテル、界面活性剤および、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を使用することができる。特に前述のシランカップリング剤が硬化後の皮膜が強いため好ましい。
本発明の低屈折率層形成組成物は、通常、液の形態をとり前記共重合体を好ましい構成成分とし、必要に応じて各種添加剤およびラジカル重合開始剤を適当な溶剤に溶解して作製される。この際固形分の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1%〜20質量%程度である。
前記したとおり、低屈折率層の皮膜硬度の観点からは硬化剤等の添加剤を添加すること
は必ずしも有利ではないが、高屈折率層との界面密着性等の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト、多塩基酸またはその無水物等の硬化剤、あるいはシリカ等の無機微粒子を少量添加することもできる。これらを添加する場合には低屈折率層皮膜の全固形分に対して0〜30質量%の範囲であることが好ましく、0〜20質量%の範囲であることがより好ましく、0〜10質量%の範囲であることが特に好ましい。
防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のシリコーン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には低屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
シリコーン系化合物の好ましい例としてはジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物鎖の末端および側鎖の少なくともいずれかに置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられる。 分子量に特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることが特に好ましく、3000〜30000であることが最も好ましい。シリコーン系化合物のシリコーン原子含有量には特に制限はないが18.0質量%以上であることが好ましく、25.0〜37.8質量%であることが特に好ましく、30.0〜37.0質量%であることが最も好ましい。好ましいシリコーン系化合物の例としては信越化学(株)製、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−164B、X22−164C、X−22−170DX、X−22−176D、X−22−1821(以上商品名)やチッソ(株)製、FM−0725、FM−7725、DMS−U22、RMS−033、RMS−083、UMS−182(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖(例えば−CFCF,−CH(CFH,−CH(CFCF,−CHCH(CFH等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF,CHCF(CF,CH(CH)CFCF,CH(CH)(CFCFH等)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)であっても良く、エーテル結合を有していても良い(例えばCHOCHCFCF,CHCHOCHH,CHCHOCHCH17,CHCHOCFCFOCFCFH等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層皮膜との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物との共重合体であっても共重合オリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。フッ素系化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが20質量
%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としてはダイキン化学工業(株)製、R−2020、M−2020、R−3833、M−3833(以上商品名)、大日本インキ(株)製、メガファックF−171、F−172、F−179A、ディフェンサMCF−300(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
防塵性、帯電防止等の特性を付与する目的で、公知のカチオン系界面活性剤あるいはポリオキシアルキレン系化合物のような防塵剤、帯電防止剤等を適宜添加することもできる。これら防塵剤、帯電防止剤は前述したシリコーン系化合物やフッ素系化合物にその構造単位が機能の一部として含まれていてもよい。これらを添加剤として添加する場合には低屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。好ましい化合物の例としては大日本インキ(株)製、メガファックF−150(商品名)、東レダウコーニング(株)製、SH−3748(商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
本発明の各種塗布液は、塗布液のろ過処理を行うことが好ましい。このろ過処理は、一般的に知られている各種のフィルターを使うことができる。具体的には、ろ過材として、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリスルホン、グラスファイバー、ステンレスメッシュ等が上げられる。特に有機溶剤系の処理としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等が好ましい。これらのフィルターは、通常カートリッジタイプのフィルターとして市販で提供される。フィルターのろ過材としては、シート状で、その表面でろ過するサーフェスタイプのろ過材と、繊維を編んで熱融着する等の方法で作られた厚みのあるろ過材により厚み方向でろ過を行うデプスタイプのろ過材等があり、ろ過材の表面積の大きいデプスタイプのフィルターが好ましい。また、デプスタイプのフィルターの中でも、各フィルターメーカーにより高精度ろ過ができるタイプとして提供されるフィルターが特に好ましい。
以上のうち、防眩性ハードコート層、光散乱層、ハードコート層等には、ポリプロピレン製のフィルターが良く用いられる。また、低屈折率層には、ポリプロピレン製フィルターや、テトラフルオロエチレン製のフィルターがよく用いられる。これらのフィルターのろ過孔径としては、一般に公称ろ過精度、もしくは絶対ろ過精度で示されるが、0.5μm〜200μm程度のものが知られている。本発明の塗布液に対しては、粒子を含有する塗布液が多いので、その粒子の通過性に合わせて、最適の孔径を選んで用いることができる。
[光学フィルムの製造方法]
本発明の光学フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。次に、ハードコート層を形成するための塗布液を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書参照)により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥することができる。これらの塗布方式のうち、グラビアコート法で塗布すると反射防止膜の各層のような塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができ、好ましい。グラビアコート法の中でもマイクログラビア法は膜厚均一性が高く、より好ましい。
また、ダイコート法を用いても塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができ、さらにダイコート法は前計量方式のため膜厚制御が比較的容易であり、さらに塗布部における溶剤の蒸散が少ないため、好ましい。二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。その後、光照射あるいは加熱して、防眩性ハードコート層を形成するためのモノマーを重合して硬化する。これによりハードコート層が形成される。
ここで、必要であればハードコート層を複数層とし、防眩性ハードコート層塗布の前に同様な方法で平滑なハードコート層塗布および硬化を行うことができる。
次に、同様にして低屈折率層を形成するための塗布液をハードコート層上に塗布し、光照射あるいは加熱し低屈折率層が形成される。このようにして、本発明の反射防止フィルムが得られる。
本発明で用いられるマイクログラビアコート法とは、直径が約10〜100mm、好ましくは約20〜50mmで全周にグラビアパターンが刻印されたグラビアロールを支持体の下方に、かつ支持体の搬送方向に対してグラビアロールを逆回転させると共に、該グラビアロールの表面からドクターブレードによって余剰の塗布液を掻き落として、定量の塗布液を前記支持体の上面が自由状態にある位置におけるその支持体の下面に塗布液を転写させて塗工することを特徴とするコート法である。ロール形態の透明支持体を連続的に巻き出し、該巻き出された支持体の一方の側に、少なくともハードコート層乃至含フッ素ポリマーを含む低屈折率層の内の少なくとも一層をマイクログラビアコート法によって塗工することができる。
マイクログラビアコート法による塗工条件としては、グラビアロールに刻印されたグラビアパターンの線数は50〜800本/インチが好ましく、100〜300本/インチがより好ましく、グラビアパターンの深度は1〜600μmが好ましく、5〜200μmがより好ましく、グラビアロールの回転数は3〜800rpmであることが好ましく、5〜200rpmであることがより好ましく、支持体の搬送速度は0.5〜100m/分であることが好ましく、1〜50m/分がより好ましい。
このようにして形成された本発明の反射防止フィルムは、ヘイズ値が3〜70%、好ましくは4〜60%の範囲にあり、そして450nmから650nmの平均反射率が3.0%以下、好ましくは2.5%以下である。
本発明の反射防止フィルムが上記範囲のヘイズ値及び平均反射率であることにより、透過画像の劣化を伴なわずに良好な防眩性および反射防止性が得られる。
本発明の反射防止フィルムを液晶表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置する。該透明支持体がトリアセチルセルロースの場合は偏光板の偏光層を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが用いられるため、本発明の反射防止フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの上では好ましい。
本発明の反射防止フィルムは、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フィルムとして使用される場合には、十分に接着させるためには透明支持体上に含フッ素ポリマーを主体とする最外層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬して実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面が親水化さ
れる。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏向膜との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏向膜と接着させる際に偏向膜と反射防止フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の(1)及び(2)の2つの手段から選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、反射防止膜面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて膜が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れる。
(1)透明支持体上に反射防止層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。
(2)透明支持体上に反射防止層を形成する前または後に、アルカリ液を該反射防止フィルムの反射防止フィルムを形成する面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗および/または中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
[用途]
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の光学フィルム、特に反射防止フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
偏光膜としては公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作成される。
即ち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落番号[0020〜0030]に詳しい記載がある。
偏光子の2枚の保護フィルムのうち、反射防止フィルム以外のフィルムが、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであることも好ましい。光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号公報に記載されている光学補償フィルムが好ましい。
偏光子の2枚の保護フィルムのうち、少なくとも1枚の保護フィルムの透明支持体が下記式(I)および(II)を満たすことが、液晶表示画面の斜め方向からの表示改良効果
が高く好ましく、特に本発明の透明支持体が下記数式(I)および(II)を満たすことが特に好ましい。
(I):0≦Re(630)≦10、かつ|Rth(630)|≦25
(II):|Re(400)−Re(700)|≦10、かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
本発明の反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用することができる。本発明の反射防止フィルムは透明支持体を有しているので、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着して用いられる。
本発明の反射防止フィルムは、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)、および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
さらに、ベンド配向モードの液晶セル、光学異方層を含む偏光板を含めた全体として、波長450nm、波長550nmおよび波長630nmのいずれの測定においても、下記数式(XV)を満足する光学特性を有することが、液晶表示画面の斜め方向からの表示改良効果が高く好ましく、特に本発明の光学フィルムを保護フィルムとした偏光板が下記数式(XV)をみたすことが特に好ましい。
数式(XV):0.05<(Δn×d)/(Re×Rth)<0.20
[数式(XV)中、Δnは液晶セル中の棒状液晶性分子の固有複屈折率であり;dはnmを単位とする液晶セルの液晶層の厚さであり;Reは光学異方層全体の面内レターデーション値であり;Rthは光学異方層全体の厚み方向のレターデーション値である。]
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」東レリサーチセンター発行(2001)などに記載されている。
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
以下に実施例に基づき本発明について具体的に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
<支持体の作製>
(1)セルロースアシレート溶液(a)の調製
下記の組成からなるセルロースアシレート溶液(a)を調製した。
[組成]:セルロースアシレート溶液(a)
セルローストリアセテートA(置換度2.84、粘度平均重合度306、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度 315mPa・s、平均粒子径1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体) 100質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 320質量部
メタノール(第2溶媒) 83質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 3質量部
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.6質量部
可塑剤B(ビフェニルジフェニルフォスフェイト) 3.8質量部
UV剤a:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール 0.7質量部
UV剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.3質量部
クエン酸エステル混合物(クエン酸、モノエチルエステル、ジエチルエステル、トリエチルエステル混合物) 0.006質量部
微粒子(二酸化ケイ素(粒径15nm)、モース硬度 約7)0.05質量部
[綿化合物:セルロースアセテートAは下記のとおり]
ここで使用したセルローストリアセテートAは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有量が58ppm、Mg含有量が42ppm、Fe含有量が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンが15ppm含むものであった。また6位アセチル基の置換度は0.91であり全アセチル中の32.5%であった。また、アセトン抽出分は8質量%、重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、イエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は160℃、結晶化発熱量は6.4J/gであった。このセルローストリアセテートAは、綿から採取したセルロースを原料としてセルローストリアセテートを合成した。以下の説明において、これを綿原料TACと称する。
[セルロースアシレート溶液ドープの調整]
(ドープ溶解・濾過)
攪拌羽根を有する4000Lのステンレス性溶解タンクに、前記複数の溶媒を混合して混合溶媒としてよく攪拌・分散しつつ、セルローストリアセテート粉体(フレーク)を徐々に添加し、全体が2000kgになるように調製した。なお、溶媒は、すべてその含水率が0.5質量%以下のものを使用した。まず、セルローストリアセテートの粉末は、分散タンクに紛体を投入して、攪拌剪断速度を最初は5m/sec(剪断応力5×10kgf/m/sec)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸、および中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×10kgf/m/sec)で攪拌する条件下で30分間分散した。分散の開始温度は25℃であり、最終到達温度は48℃となった。分散終了後、高速攪拌は停止し、アンカー翼の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、セルローストリアセテートフレークを膨潤させた。膨潤終了までは窒素ガスでタンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際のタンク内の酸素濃度は2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。またドープ中の水分量は0.5質量%以下であることを確認し、本実験では0.3質量%であった。
以上の膨潤した溶液をタンクから、ジャケット付配管で50℃まで加熱し、更に2MPaの加圧化で90℃まで加熱し、完全溶解した。加熱時間は15分であった。
次に36℃まで温度を下げ、公称孔径8μmの濾材を通過させドープを得た。この際、濾過1次圧は1.5MPa、2次圧は1.2MPaとした。高温にさらされるフイルター、ハウジング、及び配管はハステロイ合金製で耐食性の優れたものを利用し保温加熱用の熱媒を流通させるジャケットを有する物を使用した。
(濃縮・濾過・脱法・添加剤)
このようにして得られた濃縮前ドープを80℃で常圧のタンク内でフラッシュさせて、蒸発した溶剤を凝縮器で回収分離した。フラッシュ後のドープの固形分濃度は、21.8質量%となった。フラッシュタンクには中心軸にアンカー翼を有して周速0.5m/secで攪拌して脱泡を行った。タンク内のドープの温度は25℃であり、タンク内の平均滞留時間は50分であった。このドープを採集して25℃で測定した剪断粘度は剪断速度10(sec−1)で450(Pa・s)であった。
つぎに、このドープは弱い超音波照射することで泡抜きを実施した。その後、1.5MPaに加圧した状態で、最初公称孔径10μmの焼結繊維金属フイルターを通過させ、ついで同じく10μmの焼結繊維フイルターを通過させた。それぞれの一次圧は、1.5,1.2MPaであり、二次圧は1.0、0.8MPaであった。濾過後のドープ温度は、36℃に調整して2000Lのステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。ストックタンクは中心軸にアンカー翼を有して周速0.3m/secで常時攪拌された。以上によりセルロースアシレートドープ(a)を作成した。
(2−1)溶液流延方法(バンド法)
上述のセルロースアシレート溶液を調製する工程を行った後、得られたドープを、バンド流延機を用いて流延して、セルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフィルムを製膜する工程を行った。
金属支持体(流延バンド)としては、ステンレススチールからなり、幅2m、長さ56m(面積112m)、バンド厚み1.5mmのエンドレスバンドを用いた。該金属支持体の算術平均粗さ(Ra)は0.006μmで、最大高さ(Ry)は0.06μmであり、また十点平均粗さ(Rz)は0.009μmであった。算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)、十点平均粗さ(Rz)の各測定は、JIS B 0601に規定によった。バンドは2個のドラムにより駆動するタイプを用い、その際のバンドのテンションは1.5×10kg/mに調整し、バンドとドラムとの相対速度差が0.01m/分以下となるものであった。また、バンド駆動の速度変動は0.5%以下であった。
流延部のドラムは支持体を冷却するように内部に伝熱媒体(冷媒)を循環させる設備を有しているものを用いた。また、他方のドラムが乾燥のための熱を供給するために伝熱媒体が通水できるものである。それぞれの伝熱媒体の温度は5℃(流延ダイ側)と40℃とした。流延直前の支持体中央部の表面温度は15℃であった。両端の温度差は6℃以下であった。
ドラム、バンドのいずれにおいても表面欠陥はあってはならないものであり、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m以下、10μm以下のピンホールは2個/m以下である支持体を使用した。
この支持体上に流延ダイから3層のドープを共流延した。共流延は、完成厚みで、エアー面からそれぞれ4μm、73μm、3μmで、製品厚みが80μmになるように、流延幅を1700mmとして流延ダイからのドープの流量を調整した。
(流延乾燥)
前記流延ダイ及び支持体などが設けられている流延室の温度は、35℃に保った。
バンド上に流延されたドープは、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥した。乾燥する際の乾燥風からのドープへの総括伝熱係数は24kcal/m・hr・℃であった。乾燥風の温度はバンド上部の上流側を135℃とし、下流側を140℃とした。また、バンド下部は、65℃とした。それぞれのガスの飽和温度は、いずれも−8℃付近であった。支持体上での乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。
流延後5秒間は遮風装置により乾燥風が直接ドープに当たらないようにして流延ダイ直近の静圧変動を±1Pa以下に抑制した。ドープ中の溶剤比率が乾量基準で50質量%になった時点で流延支持体からフィルムとして剥離した。剥ぎ取ったフィルムの表面温度は15℃であった。支持体上での乾燥速度は平均60質量%乾量基準溶剤/分であった。
(2−2)溶液流延方法(ドラム法)
上述のセルロースアシレート溶液を流延して、セルロースアシレート溶液からセルロースアシレートフィルムを製膜する工程として、金属支持体をドラムで行う方法も実施した。
支持体として幅2.5mでステンレス製のドラムを使用した。そして、表面粗さは0.05μm以下になるように研磨したものを使用した。材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有するものとした。ドラムの全体の厚みムラは0.5%以下であった。回転ムラが0.2mm以下の精度で回転させた。ドラムにおいても表面の平均粗さは0.01μm以下であり、クロム鍍金処理により十分な硬度と耐久性を有したものである。流延ダイ直下における支持体表面のドラム回転に伴う上下方向の位置変動は200μm以下にした。支持体は、風圧振動抑制手段を有したケーシング内に設置されている。この支持体上にダイから3層のドープを共流延した。回転ムラが0.2mm以下の精度で回転させた。ドラムにおいても表面の平均粗さは0.01μm以下であり、クロム鍍金処理により十分な硬度と耐久性を有したものである。
流延直前の支持体中央部の表面温度は−5℃であった。両端の温度差は2℃以下であった。
ドラム、バンドのいずれにおいても表面欠陥はあってはならないものであり、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m以下、10μm以下のピンホールは2個/m以下である支持体を使用した。
(流延乾燥)
前記流延ダイ及び支持体などが設けられている流延室の温度は、25℃に保った。バンド上に流延されたドープは、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥した。乾燥する際の乾燥風からのドープへの総括伝熱係数は24kcal/m・hr・℃であった。乾燥風の温度は40℃とした。それぞれのガスの飽和温度は、いずれも−8℃付近であった。支持体上
での乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。
流延後、ドープ中の溶剤比率が乾量基準で300質量%以下になった時点で流延支持体からフィルムとして剥離した。この時の剥離テンションは10kgf/mであり、支持体速度に対して剥ぎ取り速度(剥取りロールドロー)は100.1%〜110%の範囲で適切に剥ぎ取れるように設定した。また、剥ぎ取ったフィルムの表面温度は15℃であった。支持体上での乾燥速度は平均60質量%乾量基準溶剤/分であった。
以上のバンドもしくはドラム方法での流延後、剥ぎ取ったフィルムを多数のローラが設けられている渡り部で搬送した。渡り部には、3本のローラを備え、また渡り部の温度は、40℃に保持した。渡り部のローラで搬送している際に、フィルムに16N〜160Nのテンションを付与した。
(3)テンター搬送、乾燥、耳切り
剥ぎ取られたフィルムは、クリップを有したテンターで両端を固定されながら、テンターの乾燥ゾーンを搬送され、乾燥風により乾燥した。また、テンター内を3ゾーンに分け、それぞれのゾーンの乾燥風温度を上流側から90℃,100℃,110℃とした。乾燥風のガス組成は−10℃の飽和ガス濃度とした。テンター内での平均乾燥速度は120質量%(乾量基準溶剤)/分であった。テンターの出口ではフィルム内の残留溶剤の量は7〜10質量%以下となるように条件を調整した。テンター内では搬送しつつ幅方向に延伸も行った。なお、テンターに搬送された際の幅を100%としたときの拡幅量を103%とした。剥取ローラからテンタ入口に至る延伸率(テンタ駆動ドロー)は、102%とした。テンター内の延伸率はテンター噛み込み部から10mm以上離れた部分における実質延伸率の差異が10%以下であり、かつ20mm離れた任意の2点の延伸率の差異は5%以下であった。ベース端のうちテンターで固定している長さの比率は90%とした。また、テンタークリップの温度は50℃を超えないように冷却しつつ搬送した。
そして、テンター出口から30秒以内に両端の耳切りを行った。NT型カッターにより両側50mmの耳をカットした。テンター部の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。後述するローラー搬送ゾーンで高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥ゾーンでフィルムを予備加熱した。この時のフィルム内残留溶剤量はほぼ5質量%となった。
(4)後乾燥
以上の方法で得られた耳切り後のセルローストリアセテートフィルムをローラ搬送ゾーンで高温乾燥した。ローラ搬送ゾーンを4区画に分割して、上流側から130℃,130℃,130℃,130℃の乾燥風を給気した。このとき、フィルムのローラー搬送テンションは100N/巾として、最終的に残留溶剤量が0.3質量%になるまでの約7分間、乾燥した。以上により透明支持体としてのセルロースアシレートフィルム(長さ3500m、幅1300mm、平均厚み80μm)を製造した。
フィルムの厚みは、接触式膜厚測定計(アンリツ製)を用いて行い、フィルムの厚みムラを調べるために、上記測定のサンプリングは、幅方向1mに渡り等間隔に5点、長手方向1mに渡り等間隔に5点の計25点行い、それぞれについて測定を行った。
以上のように製造したセルロースアシレートフィルムの実施例試料1の幅方向のカール値は−4.5/mであった。
(5)セルロースアシレートフィルムの評価
(可塑剤量の測定)
上記フィルムの表面可塑剤量は、ニコレー製FT−IR装置Magma760を用い、ATR−IR測定をおこなった。測定条件は、反射測定用クリスタルとしてKRS−5を用い、入射角45度にておこなった。可塑剤量の測定は、可塑剤吸収ピーク(1390cm−1)と、セルロースアシレートの吸収ピーク(1470cm−1)の強度を測定し、その強度比を求める方法により行った。可塑剤の含有量は、可塑剤/セルロースアシレートの比率を変えたサンプルによる検量線により求めた。
また、フィルム全体の可塑剤量は、同じ測定方法により、フィルム膜厚方向の透過IR測定により求めた。
また、フィルムの可塑剤量分布を調べるために、上記測定のサンプリングは、幅方向1mに渡り等間隔に5点、長手方向1mに渡り等間隔に5点の計25点行い、それぞれについて測定を行った。
(フィルムの柔軟性)
上記フィルムの柔軟性は、できたフィルムの取り扱い性、加工性、引き裂き強度等より総合的にフィルムの柔軟性を判断した。
A:柔らかい
B:若干柔らかい
C:柔軟性良好
D:若干硬くもろい。
E:硬くもろい。
(6)セルロースアシレートフィルム評価結果
以上と同様の方法にて、セルロースアシレート溶液中の可塑剤量、流延方法、後乾燥条件等を変えて、表1に示したように、実施例試料1〜13、比較試料1〜3を作成した。比較試料3は、支持体の搬送速度を倍速に変えて作成した以外は、試料1と同じである。この中で、支持体面とは流延時に金属支持体に接触した面であり、エアー面とは、金属支持体と反対側の面である。
この結果、仕込み中の可塑剤量を変えることにより、可塑剤の表面量を変えることができた。この時、可塑剤仕込みを0%にした時、表面可塑剤量を0%にできたが、この時フィルムの柔軟性は悪く、本発明の支持体に適しなかった。また、流延方法としては、流延時の金属支持体からの剥離時間が短いドラム流延のほうが、平面性の良好な支持体面側の可塑剤量を減らすことができる。また、後乾層条件を高くした試料10、11により、フィルム全体の可塑剤量に比べ、表面の可塑剤量を低下させることができる。
Figure 2006209096
(7)セルロースアシレートフィルム上に塗布する反射防止フィルムの、本発明試料51〜66、比較試料51〜54の作成と評価
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
Figure 2006209096
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7gおよび過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は5.4kg/cmであった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が3.2kg/cmに達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.421であった。
(フルオロ樹脂含有ポリマー(FP−8)の合成)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート39.93g、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート1.1g、2−ブタノン30gを加え窒素雰囲気下で6時間78℃に加熱して反応を完結させた。質量平均分子量は2.9×10であった。
(ゾル液a−1の調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液a−1を得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。29Si−NMR測定から算出される前述の数式(IX)による縮合率αは0.88であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
(ゾル液a−2の調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン70部とメチルトリメトキシシラン(KBM−13、信越化学工業(株)製)30部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン交換水
3部を加え、40℃で30分反応させて、ゾル液a−2を得た。質量平均分子量は800であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は30%であった。29Si−NMRによる縮合率αは0.56であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびメチルトリメトキシシランは10%以下の残存率であった。
(ゾル液bの調製)
反応後室温まで冷却した後、アセチルアセトン6部を添加したこと以外は上記ゾル組成物a−1と同様にしてゾル液bを得た。
(防眩性ハードコート層用塗布液A−1の組成)
PET−30 50.0g
イルガキュア184 2.0g
SX−350(30%) 1.7g
架橋アクリル−スチレン粒子(30%) 13.3g
FP−8 0.75g
KBM−5103 10.0g
トルエン 38.5g
上記塗布液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層用塗布液A−1を調製した。
(防眩性ハードコート層用塗布液A−2の組成)
上記、防眩性ハードコート層用塗布液A−1のKBM−5103 10.0gをゾル液a−2 10.0gに変更した以外は、上記塗布液A−1と全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液A−2を調整した。
(防眩性ハードコート層用塗布液A−3の組成)
PET−30 42.3g
イルガキュア184 2.0g
SX−350(30%) 23.3g
架橋アクリル−スチレン粒子(30%) 7.5g
FP−8 0.07g
KBM−5103 9.3g
トルエン 86.1g
(防眩性ハードコート層用塗布液A−4の組成)
PET−30 42.4g
イルガキュア184 1.6g
SX−350(30%) 23.8g
架橋アクリル−スチレン粒子(30%) 3.8g
FP−8 0.1g
X−40−2671G 10.5g
トルエン 76.9g
上記塗布液をそれぞれ孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層用塗布液A−3およびA−4を調製した。
(光拡散層用塗布液B−1の組成)
デソライトZ7404 285g
DPHA 85g
KBM−5103 28g
KE−P150(30%) 90g
MXS−300(30%) 35g
FP−8 0.12g
MEK 17g
MIBK 60g
上記塗布液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して光拡散層用塗布液B−1を調製した。
(光拡散層用塗布液B−2の組成)
上記、光拡散層用塗布液B−1のKBM−5103 28gをゾル液a−2 28.0gに変更した以外は、上記塗布液B−1と全く同様にして光拡散層用塗布液B−2を調整した。
(光拡散層用塗布液B−3の組成)
上記、光拡散層用塗布液B−1のKBM−5103 28gをX−40−2671G 28.0gに変更した以外は、上記塗布液B−1と全く同様にして光拡散層用塗布液B−3を調整した。
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
・PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
・イルガキュア184:重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
・SX−350:平均粒径3.5μm 架橋ポリスチレン粒子[屈折率1.60、綜研化学(株)製、30%トルエン分散液、ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用]
・架橋アクリル−スチレン粒子:平均粒径3.5μm[屈折率1.55、綜研化学(株)製、30%トルエン分散液、ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用]
・KBM−5103:シランカップリング剤(アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)[信越化学工業(株)製]
・X−40−2671G:シランカップリング剤オリゴマー[信越化学工業(株)製]
・デソライトZ7404:ZrO微粒子含有ハードコート剤[屈折率1.62、固形分濃度60.4%、JSR(株)製]
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
・KEP−150:平均粒径1.5μmシリカ粒子[屈折率1.46、日本触媒(株)製、30%MEK分散液、ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用]
・MXS−300:平均粒径3μmPMMA粒子[屈折率1.49、綜研化学(株)製、30%MIBK分散液、ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用]
・MXS−150H:平均粒径1.5μmPMMA粒子[屈折率1.49、日本触媒(株)製、30%MIBK分散液、ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用]
(光学フィルムの作製)
支持体として上記実施例にて流延作成したセルロースアシレートフィルムをロール形態で巻き出して、防眩性ハードコート層用塗布液A−1を線数110本/インチ、深度65μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量200mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、防眩性ハードコート層(厚さ6μm)を形成し巻き取った。また、この時の塗布液としての塗布量は、約20cc/mであった。
また、同様に、光拡散層用塗布液B−1を線数135本/インチ、深度60μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数45rpm、搬送速度20m/分の条件で塗布し、100℃で40秒乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量250mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、光拡散層(厚さ3.4μm)の機能層を形成し、巻き取った。この時の塗布液としての塗布量は、約20cc/mであった。
(8)塗布サンプルの評価、結果
[塗布面状(乾燥ムラ、スジムラ)の評価]
以上の塗布品に対して、塗布面状の評価を行った。評価としては、作成したフィルムを、3波長の蛍光灯光源の透過で観察する方法と、裏面に黒いシートもしくはクロスニコルで黒くした偏光板を貼り付け、3波蛍光灯もしくは人工太陽灯光源の反射検査にて評価を行った。
塗布品の評価としては、透過評価が厳しく判定されるが、光学フィルムとしては、反射評価でAからCまでが許容内である。
以上の評価結果を以下のごとく判定した。
A:ほとんどムラが見えない。
B:わずかにムラが見えるが特に問題は無い。
C:ムラが見えるが、許容できる。
D:ムラが見え、許容外である。
E:ムラがかなり強い。
[フィルム基材起因の平面性評価]
塗布品について、偏光板に貼った時の、セルロースアシレートフィルム起因の平面性として、1〜2mmピッチの表面のうねり性を確認した。許容内のものを○、気になるレベルのものを△、許容されないものを×とする。
(塗布品の作成、評価結果)
本発明の実施例試料51〜66、比較試料51〜54の塗布品の結果を表2に示した。実施例試料51から56、比較試料51において、表面可塑剤量バラツキが多いと塗布ムラが悪化し、表面可塑剤量バラツキが±25%を超えると、透過および反射面検で許容外となる。また、膜厚バラツキの大きい比較試料52でも、透過および反射面検で許容外が発生する。なお、表面可塑剤量バラツキの少ないエアー面に塗布した実施例試料57、58は、塗布品面状は良いが、透明支持体のセルロースアシレートの平面性起因の凹凸が若干見られる。
また、塗布液B−1を用いた実施例試料59〜66においても、同様の傾向を示した。
また、塗布液A−1の代わりにA−2、A−3、A−4を、B−1の代わりにB−2、B−3を使用すると、反射検査での塗布面状が良化した。
Figure 2006209096
(9)反射防止フィルムの作成
上記の本発明の実施例試料55、63に対し、低屈折率層の付与を行った。
(低屈折率層用塗布液Aの組成)
オプスターJTA−113(6%) 13.0g
MEK−ST−L(30%) [平均粒径45nm] 1.3g
ゾル液a−1 10.6g
MEK 5.0g
シクロヘキサノン 0.6g
上記塗布液を孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して低屈折率層用塗布液Aを調製した。
(低屈折率層用塗布液Bの調製)
上記低屈折率層用塗布液Aのコロイダルシリカ分散物の代わりに中空シリカ分散物(屈折率1.31、平均粒径60nm、固形分濃度20%)を1.95g用いた以外は添加量も含め上記塗布液Aと同様にして、低屈折率層用塗布液Bを作成した。
(低屈折率層用塗布液Cの組成)
オプスターJN−7228(6%) 15.0g
MEK−ST(30%) [平均粒径15nm] 0.6g
MEK−ST−L(30%) [平均粒径45nm] 0.8g
ゾル液a−1 0.4g
MEK 3.0g
シクロヘキサノン 0.6g
上記塗布液を孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して低屈折率層用塗布液Cを調製した。
(低屈折率層用塗布液Dの組成)
パーフルオロオレフィン共重合体(1) 15.2g
MEK−ST−L(30%) [平均粒径45nm] 1.4g
反応性シリコーンX−22−164B 0.3g
ゾル液a−1 7.3g
イルガキュア907 0.76g
MEK 301g
シクロヘキサノン 9.0g
上記塗布液を孔径5μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して低屈折率層用塗布液Dを調製した。
(低屈折率層用塗布液Eの調整)
上記低屈折率層用塗布液Dにおいて、コロイダルシリカ分散物の代わりに中空シリカ分散物(屈折率1.31、平均粒径60nm、固形分濃度20%)を1.95g用いた以外は添加量も含め上記塗布液Dと同様にして、低屈折率層用塗布液Eを作成した。
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
・オプスターJN:特開平11−189621、実施例1に記載の含フッ素ポリマー80g、硬化剤としてサイメル303 15g(日本サイテックインダストリーズ(株)、硬化触媒としてキャタリスト4050 2.0g(日本サイテックインダストリーズ(株)をMEKに溶解して6%にしたもの[屈折率1.42、固形分濃度6%、JSR(株)製]
・オプスターJTA:特開平11−189621、実施例1のHBVEを増量した含フッ素ポリマー[屈折率1.44、固形分濃度6%、JSR(株)製]
・P−1:パーフルオロオレフィン共重合体(1)
・MEK−ST:コロイダルシリカ分散物[平均粒径10〜20nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製]
・MEK−ST−L:コロイダルシリカ分散物[MEK−STの粒子サイズ違い、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製]
・中空シリカ:KBM−5103表面修飾中空シリカゾル[表面修飾率対シリカ30質量%、CS−60IPA、屈折率1.31、平均粒径60nm、シェル厚み10nm、固形分濃度20.0%、触媒化成工業(株)製]
・X−22−164B:反応性シリコーン[信越化学工業(株)製]
・イルガキュア907:光重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
(2)低屈折率層の塗設
上記機能層を塗設したセルロースアシレートフィルムを再び巻き出して、表3に記載の低屈折率層用塗布液を線数200本/インチ、深度30μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度15m/分の条件で塗布し、120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量900mJ/cmの紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成して反射防止フィルムを作成し、巻き取った。
以上により、低屈折率層を塗設した実施例試料101〜108を作成した。
(反射防止フィルムの鹸化処理)
反射防止フィルムについて、以下の処理を行った。
1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01mol/lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製した反射防止フィルムを上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
このようにして、鹸化処理済み反射防止フィルム(本発明試料101〜108)を作製した。
(反射防止フィルムの評価)
得られたこれらの反射防止フィルム試料について、以下の項目の評価を行った。結果を表3に示した。
(1)平均反射率
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの積分球平均反射率を用いた。
(2)スチールウール耐傷性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストをおこなった。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にスチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.0000)を巻いて、動かないようバンド固定した。
移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、荷重:500g/cm、先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
◎:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
○△:弱い傷が見える。
△:中程度の傷が見える。
△×〜×:一目見ただけで分かる傷がある。
(3)水綿棒こすり耐性評価
ラビングテスターのこすり先端部に綿棒を固定し、平滑皿中で試料の上下をクリップで固定し、室温25℃で、試料と綿棒を25℃の水に浸し、綿棒に500gの荷重をかけて、こすり回数を変えてこすりテストを行った。こすり条件は以下のとおり。
こすり距離(片道):1cm、 こすり速度:約2往復/秒
こすり終えた試料を観察して、膜剥がれが起こった回数で、こすり耐性を以下のように評価した。
×:0〜10往復で膜剥がれ
×△:10〜30往復で膜剥がれ
△:30〜50往復で膜剥がれ
○△:50〜100往復で膜剥がれ
○:100〜150往復で膜剥がれ
◎:150往復でも膜剥がれなし
以上の結果を表3に示す。本発明により優れた面状と高い耐擦傷性を持つ反射防止膜が
生産性高く得られる。
Figure 2006209096
また本発明試料101〜108において、低屈折率層塗布液に使用しているオルガノシランのゾル液a−1の代わりにゾル液bを使用したところ、塗布液の経時安定性が良くなり、連続塗布に対する適性が高くなった。
さらに本発明試料104、108において、低屈折率層塗布液Eにジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)10gを添加して、同様に塗布したところ、耐擦傷性が著しく向上した。
[実施例2]
PVAフィルムをヨウ素2.0g/l、ヨウ化カリウム4.0g/lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、特開2002−86554号公報に記載の図2の形態のテンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、テンターを延伸方向に対し図2の如く屈曲させ、以降幅を一定に保った。80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱した。左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、導入されるフィルムの中心線と次工程に送られるフィルムの中心線のなす角は、46゜であった。ここで|L1−L2|は0.7m、Wは0.7mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口における実質延伸方向Ax−Cxは、次工程へ送られるフィルムの中心線22に対し45゜傾斜していた。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
さらに、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤としてケン化処理した富士写真フィルム(株)製フジタック(セルローストリアセテート、レターデーション値3.0nm)と貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して有効幅650mmの偏光板を得た。得られた偏光板の吸収軸方向は、長手方向に対し45゜傾斜していた。この偏光板の550nmにおける透過率は43.7%、偏光度は99.97%であった。さらに310×233mmサイズに裁断したところ、91.5%の面積効率で辺に対し45゜吸収軸が傾斜した偏光板を得た。
次に、実施例1の本発明試料(鹸化処理済み)の各々のフィルムを上記偏光板と貼り合わせて防眩性反射防止付き偏光板を作製した。この偏光板を用いて反射防止層を最表層に配置した液晶表示装置を作製したところ、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、防眩性により反射像が目立たず優れた視認性を有していた。
[実施例3]
1.5mol/l、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗した。80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)と、実施例1の各本発明試料の裏面鹸化済みトリアセチルセルロースフィルムに、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光子の両面を接着、保護して偏光板を作製した。このようにして作製した偏光板を、反射防止膜側が最表面となるように透過型TN液晶表示装置搭載のノートパソコンの液晶表示装置(偏光選択層を有する偏光分離フィルムである住友3M(株)製のD−BEFをバックライトと液晶セルとの間に有する)の視認側の偏光板と貼り代えたところ、背景の映りこみが極めて少なく、表示品位の非常に高い表示装置が得られた。
[実施例4]
実施例1の本発明試料を貼りつけた透過型TN液晶セルの視認側の偏光板の液晶セル側の保護フィルム、およびバックライト側の偏光板の液晶セル側の保護フィルムとして、視野角拡大フィルム(ワイドビューフィルムエース、富士写真フイルム(株)製)を用いたところ、明室でのコントラストに優れ、且つ上下左右の視野角が非常に広く、極めて視認性に優れ、表示品位の高い液晶表示装置が得られた。
また、本発明試料104〜108(光拡散層用塗布液B−1)は、出射角0°に対する30°の散乱光強度が0.06%であり、この光拡散性により、特に下方向の視野角アップ、左右方向の黄色味が改善され、非常に良好な液晶表示装置であった。比較として、該光拡散層用塗布液Bから、架橋PMMA粒子、シリカ粒子を除去した以外、全く本発明試料104〜108と同じく作製したフィルムでは、出射角0°に対する30°の散乱光強度が実質0%であり、下方向視野角アップ、黄色味改善効果は全く得られなかった。
[実施例5]
アセチル置換度2.94のセルロースアシレートを用い、光学的異方性低下剤A−19を49.3%(対セルロースアシレート)、波長分散調整剤UV−102を7.6%(対セルロースアシレート)となるようにして、実施例1と同様の製膜法により厚み80μmのセルロースアシレート試料201を作製した。得られたフィルムのレターデーションReは−1.0nm(TD方向に遅相軸のため負とする)、厚み方向のレターデーションRthは−2.0nmといずれも十分に小さい値であった。このセルロースアシレートフィルム試料を偏光子の2枚の保護フィルムのうちセル側の保護フィルムの透明支持体に、本発明の実施例1を偏光子の視認側の保護フィルムとしたところ、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置での評価をしたところ、いずれの場合においてもコントラスト視野角が良好な性能が得られた。
A−19
Figure 2006209096
UV−102
Figure 2006209096
[実施例6]
実施例1の本発明試料を、有機EL表示装置の表面のガラス板に粘着剤を介して貼り合わせたところ、ガラス表面での反射が抑えられ、視認性の高い表示装置が得られた。
[実施例7]
実施例1試料を用いて、片面反射防止フィルム付き偏光板を作製し、偏光板の反射防止膜を有している側の反対面にλ/4板を張り合わせ、有機EL表示装置の表面のガラス板に貼り付けたところ、表面反射および、表面ガラスの内部からの反射がカットされ、極めて視認性の高い表示が得られた。
(a)は防眩性反射防止フィルムの層構成を示す断面模式図であり、(b)は反射防止性能に優れた反射防止フィルムの層構成を示す断面模式図である。
符号の説明
1 反射防止フィルム
2 透明支持体
3 ハードコート層
4 防眩性ハードコート層
5 低屈折率層
6 微粒子
7 中屈折率層
8 高屈折率層

Claims (9)

  1. 少なくとも1層の機能層が設けられている透明支持体の厚みムラが、平均厚みの±5%以下であり、かつ該透明支持体の機能層塗布面側の表面可塑剤量のムラが表面可塑剤の平均残存量の±20%以下であることを特徴とする光学フィルム。
  2. 少なくとも1層の機能層が設けられている透明支持体の厚みムラが、長手方向1m以上かつ幅方向1m以上の範囲で、平均厚みの±5%以下であり、しかも支持体の機能層塗布面側の表面可塑剤量のムラが、長手1m以上かつ幅方向1m以上の範囲で、表面可塑剤の平均残存量の±20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 透明支持体の平均厚みが20μm以上120μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
  4. 透明支持体がセルローストリアセテートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルム。
  5. 少なくとも1層の機能層が低屈折率層であり、反射防止能を持つことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム。
  6. 少なくとも1層の機能層を形成する塗布液に透明支持体を部分的に溶解もしくは膨潤させる溶剤を使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルム。
  7. 少なくとも1層の機能層に下記一般式1で表されるオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム。
    一般式1
    Figure 2006209096


    (一般式1中、Rは水素原子、メチル基、メトキシ基、無置換のアルコキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、または塩素原子を表す。
    Yは、単結合、*−COO−**、*−CONH−**、または、*−O−**を表す。
    Lは2価の連結鎖を表す。
    〜Rは、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、無置換のアルコキシ基、または無置換のアルキル基を表す。
    は水素原子、または無置換のアルキル基を表す。
    は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。
    lはl=100−mの数式を満たす数を表し、mは0〜50の数を表す。
    なお、該加水分解物および/またはその部分縮合物は、特定のl及びmを有する一般式1で表される化合物の複数種の混合物の加水分解物および/またはその部分縮合物であってもよい。)
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の光学フィルムが、偏光板における偏光子の2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられていることを特徴とする偏光板。
  9. 請求項5〜7のいずれかに記載の反射防止フィルム、または請求項8に記載の偏光板が、ディスプレイの最表面に用いられていることを特徴とする画像表示装置。
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