JP2007083228A - 被膜シートの製造方法、被膜シート、光学フィルム、反射防止フィルム、偏光板、および液晶表示装置 - Google Patents

被膜シートの製造方法、被膜シート、光学フィルム、反射防止フィルム、偏光板、および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】支持体が大面積の場合にも、塗工液により均一な膜厚で被膜層を形成することができる被膜シートの製造方法を提供する。
【解決手段】支持体上に透光性樹脂及び溶剤を含有する塗工液を塗工する工程、次いで、塗工された塗工液を乾燥する第1の乾燥工程及び第2の乾燥工程を含む被膜シートの製造方法であって、第1の乾燥工程が、塗膜層表面上の最大風速が1m/秒以上である乾燥ゾーンで行なわれ、且つ第2の乾燥工程が、第1の乾燥工程が行なわれるゾーン内温度より50℃以上高い乾燥ゾーンで行なわれることを特徴とする被膜シートの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は被膜シートの製造方法に関する。特に、支持体上に被膜をむら無く均一に形成する技術に関する。本発明の製造方法は、たとえば、光学機能層の形成に有用である。さらに本発明は、当該光学機能層を用いた光学フィルムに関する。光学フィルムは、液晶ディスプレイ(LCD)、有機EL表示装置、PDP、CRT等の各種画像表示装置において好適に利用できる。
一般的に、基材フィルム上に塗工液の塗工、乾燥等の工程を施すことにより被膜層を形成した各種の被膜シートが製造されている。前記塗工液の塗工方式としては、スロットダイ、エクストルージョン、ロールコート、バーコート、リバースグラビアコート、マイクログラビア等の様々な方式が採用されている(例えば特許文献1参照)。
被膜シートとしては、たとえば、光学機能層を有する各種の光学フィルムがあげられる。TVやデスクトップパソコンといったOA機器の表示装置は、従来はCRTが主流であったが、薄型軽量、低消費電力といった大きな利点を持った液晶表示装置へと変換されてきている。現在普及している液晶表示装置は、位相差フィルムを作成するための液晶層、表面保護のためのハードコート層、防眩層、反射防止膜などの表面処理被膜等の光学機能層を有する。
光学機能層は光学機能の高性能化に伴って薄膜で形成される。当該薄膜の膜厚や表面形態にムラがあると、これを用いた液晶表示装置等の画像表示装置の表示機能を低下させる。そのため、光学機能層は膜厚が均一であることが要求されている。しかし、いずれの塗工方式を用いても、塗工工程から乾燥工程に移動するまでに樹脂流動が起こったり、乾燥工程中に乾燥の不均一により樹脂流動が起こったり表面形状の異なる面が形成されたり、均一な膜厚、面状で被膜層を形成することは困難であった。特に大面積の基材フィルム上に、均一な膜厚、面状で被膜層を形成することは困難であった。
たとえば、高分子フィルム支持体上にハードコート層、反射防止層等を形成する場合には、積層される樹脂層に屈折率の違いがあることから、特に塗工後の樹脂流動により発生する厚みむらによる干渉むらが深刻である。この場合、面内の光学厚みにズレが生ずるため、反射率特性も理論値より低下する。
また、防眩層を形成する場合には、一般的には表面に微細な凹凸を形成させるために、乾燥の不均一により凹凸形状の不均一が形成されると、外光の散乱ムラが発生する為、明室での表示品位を損なうことになる。
また液晶層を形成する液晶分子は、一般的に界面の影響を非常に受けやすく、ラビング等の界面規制力により、液晶分子が方向性を持った配列(配向)をすることが知られている。前記塗工方式の場合には、液晶分子を含む被塗工液の片面が開放系になるため、通常知られている塗工、乾燥方式では開放系側の空気の流れが、結果的に液晶層の配向ムラを生じさせる。こうして得られた液晶層では、液晶ディスプレイの一部に正面コントラストが変わるところがあるという問題点があった。
これらの膜厚ムラや表面形状ムラの問題に対しては、特許文献2では、塗布膜表面の風速を0.2〜1m/秒と非常に微風に設定したり、特許文献3では、溶剤の蒸発速度を0.1g/m2・秒以下に保って乾燥して、いずれも徐々に乾燥して、ムラを均一化する試みがなされてきた。しかしながら、徐乾による改良は、ある程度の改良効果は得られるものの、長尺状支持体に被膜を形成する場合、巾が1m以上もあれば、巾方向で中心付近の乾燥が極端に遅くなり、返って乾燥工程で生じるムラを顕在化することがあった。さらに、乾燥を遅くすることにより、乾燥時間が長くなり、生産性を落とすという問題も引き起こしていた。
この為、特に巾の広い長尺状の支持体上に、乾燥ムラがない均一な膜厚、均一な面状で連続的に光学機能層を形成する為の乾燥方法及び製造技術が求められていた。
特開昭62−140672号公報 特開2003−126768号公報 特開2004−290963号公報
本発明は、支持体が大面積の場合にも、塗工液により乾燥ムラのない均一な被膜層を形成することができる被膜シートの製造方法を提供することを目的とする。
また本発明は、当該製造方法により得られた被膜層を光学機能層とする光学フィルム、さらには当該光学フィルムを用いた偏光板および画像表示装置を提供することを目的とする。
本発明の上記課題は、下記1.〜6.の被膜シートの製造方法、下記7.の被膜シート、下記8.〜11.の光学フィルム、下記12.の偏光板、および下記13.または14.の液晶表示装置により達成された。
1.支持体上に透光性樹脂及び溶剤を含有する塗工液を塗工する工程、次いで、塗工された塗工液を乾燥する第1の乾燥工程及び第2の乾燥工程を含む被膜シートの製造方法であって、
第1の乾燥工程が、塗膜層表面上の最大風速が1m/秒以上の乾燥ゾーンで行なわれ、且つ、
第2の乾燥工程が、第1の乾燥工程が行なわれるゾーン内温度より50℃以上高い乾燥ゾーンで行なわれることを特徴とする被膜シートの製造方法。
2.支持体上に透光性樹脂及び溶剤を含有する塗工液を塗工する工程、次いで、塗工された塗工液を乾燥する第1の乾燥工程及び第2の乾燥工程を含む被膜シートの製造方法であって、
第1の乾燥工程における溶剤の乾燥速度が、0.3g/m2・秒以上であり、
第2の乾燥工程が、第1の乾燥工程が行なわれるゾーン内温度より50℃以上高い乾燥ゾーンで行なわれることを特徴とする被膜シートの製造方法。
3.前記塗工液が少なくとも2種類の溶剤を含み、2種類の溶剤の沸点が30℃以上異なることを特徴とする上記1.または2.に記載の被膜シートの製造方法。
4.前記支持体を30m/分以上で搬送しながら塗工および乾燥工程を行なうことを特徴とする上記1.〜3.のいずれかに記載の被膜シートの製造方法。
5.前記支持体が、長尺のロール状であり、巾1.4〜4mであることを特徴とする上記1.〜4.のいずれかに記載の被膜シートの製造方法。
6.前記塗工液が界面活性剤を含むことを特徴とする上記1.〜5.のいずれかに記載の被膜シートの製造方法。
7.上記1.〜6.のいずれかに記載の製造方法により形成されたことを特徴とする被膜シート。
8.上記7.に記載の被膜シートからなる光学フィルムであって、支持体上に形成された被膜層の少なくとも一層が光学機能層であることを特徴とする光学フィルム。
9.前記光学機能層が、防眩層であることを特徴とする上記8.に記載の光学フィルム。
10.前記光学機能層が、透光性樹脂と異なる屈折率の透光性粒子を含むことを特徴とする上記8.または9.に記載の光学フィルム。
11.前記光学機能層の上に、光学機能層より屈折率の低い低屈折率層を有することを特徴とする上記8.〜10.のいずれかに記載の光学フィルム。
12.偏光膜の両面を保護フィルムで挟持した偏光板であって、一方の保護フィルムに上記8.〜11.のいずれかに記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
13.上記8.〜11.のいずれかに記載の光学フィルムまたは上記12.に記載の偏光板をディスプレイの最表層に用いたことを特徴とする液晶表示装置。
14.液晶セルがVAモードあるいはIPSモードであることを特徴とする上記13.に記載の液晶表示装置。
上記のように、被膜シートの乾燥工程を制御し、面内の乾燥ムラを防止し均一な被膜層を形成することによって、支持体が大面積の場合にも、乾燥ムラのない均一な被膜層を形成することができ、生産性が高い被膜シートの製造方法を提供し、優れた特性を有する光学機能層、光学フィルムおよび画像表示装置を提供することができる。
以下、本発明について更に詳細に説明する。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」等も同様である。
本発明の被膜シートの製造方法(以下、「被膜形成方法」ともいう)は、
支持体上に透光性樹脂及び溶剤を含有する塗工液を塗工する工程、次いで、塗工された塗工液を乾燥する第1の乾燥工程及び第2の乾燥工程を含み、
第1の乾燥工程が、塗膜層表面上の最大風速が1m/秒以上の乾燥ゾーンで行なわれ、且つ
第2の乾燥工程が、第1の乾燥工程が行なわれるゾーン内温度より50℃以上高い乾燥ゾーンで行なわれることを特徴とする。
本発明の被膜シートの製造方法に用いられる支持体、塗工液は、形成する被膜層の種類、その適用用途に応じて、適宜に決定される。
本発明に用いられる塗工液は、塗膜形成可能なものであれば何れでもよく、目的とする被膜層の機能に応じて、塗工液の樹脂材料(樹脂材料は透光性であることが好ましく、透光性とは、被膜層を形成した時、可視光領域の光線透過率が50%以上であることをいう)と溶剤が選択される。本発明の被膜形成方法により形成できる被膜層としては、光学機能層、帯電防止層、表面保護層、導電機能層、粘着剤層、接着性層、透明コート層などが挙げられる。なお、塗工液による被膜の形成は、支持体に被膜を順次に形成することにより行うことができる。したがって、支持体としては、予め塗膜を形成したものを用いることができる。尚、上記の製造方法により得られる被膜シートにおいて、支持体上に形成される被膜層のうち、少なくとも一層が本発明の被膜形成方法により形成されればよい。
本発明の被膜形成方法は、光学機能層を形成する場合、特に厚み10μm以下の光学機能層を形成する場合に好適である(本明細書では光学機能層を有する被膜シートを「光学フィルム」と称する)。該光学機能層としては、ハードコート層、反射防止層、位相差層、光学補償層などが挙げられる。特に、光学機能層が、ハードコート層である場合に好ましく、防眩性を有するハードコート層(防眩層)が更に好ましい。
(支持体)
本発明の被膜シートの支持体としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスなど、特に限定は無い。透明樹脂フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム(屈折率1.48)、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルムポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム等が使用できる。
その中でも、透明性が高く、光学的に複屈折が少なく、製造が容易であり、偏光板の保護フィルムとして一般に用いられているセルロースアシレートフィルムが好ましく、セルローストリアセテートフィルムが特に好ましい。又、透明支持体の厚さは通常25μm〜1000μm程度とする。
本発明の透明支持体は、長尺状のロール形態であることが好ましく、具体的には100〜5000m程度が好ましい。また、長尺状支持体の巾は、生産性の点から、1m以上が好ましく、1.4〜4mの長尺フィルムが更に好ましい。4mを超える巾であると、ハンドリングが困難となり、支持体の搬送速度が高くできない問題が生じる。
更に、本発明の長尺フィルムは巾方向のエッジ部にナーリング加工を施すことが特に好ましい。
<セルロースアシレートフィルム>
本発明で用いられるセルロースアシレートフィルムは、酢化度が59.0〜61.5%であることが好ましい。
酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。
また、本発明に使用するセルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の値が1.0に近いこと、換言すれば分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることがさらに好ましく、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
一般に、セルロースアシレートの2,3,6の水酸基は全体の置換度の1/3づつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアシレートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて多いほうが好ましい。
全体の置換度に対して6位の水酸基が32%以上アシル基で置換されていることが好ましく、更には33%以上、特に34%以上であることが好ましい。さらにセルロースアシレートの6位アシル基の置換度が0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基、例えばプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。
本発明で用いられるセルロースアシレートとして、特開平11−5851号公報の段落「0043」〜「0044」[実施例][合成例1]、段落「0048」〜「0049」
[合成例2]、段落「0051」〜「0052」[合成例3]に記載の方法で得られたセルロースアセテートを用いることができる。
(セルロースアシレートフィルムの製造)
本発明で用いられるセルロースアシレートフィルムは、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)により製造することができる。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステルおよび炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その好ましい炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の上記で特定した好ましい炭素原子数の範囲内であればよい。
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
セルロースアシレート溶液(ドープ)の調整は一般的な方法で行なえる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。非塩素系溶媒を用いることもでき、それについては発明協会公開技報公技番号2001−1745号に記載されているものが挙げられる。
セルロースアシレートの量は、得られる溶液中に10〜40質量%含まれるように調整する。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0〜40℃)でセルロースアシレートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアシレートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアシレートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアセテートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。
セルロースアシレートの量は、この混合物中に10〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
次に、混合物を−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアセテートと有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアセテートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時の減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保持する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造する。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許第2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許第640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
複数の調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用い、ソルベントキャスト法により2層以上を流延してフィルムを作製することもできる。この場合、ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延する場合、複数のセルロースアシレート溶液を流延することが可能で、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号、などの各公報に記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号、の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。
或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成型したフィルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。
さらに本発明では、セルロースアシレート溶液を、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)形成用溶液と同時に流延し、機能層とフィルム形成を同時形成することも実施しうる。
単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多い。この解決法として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延する。これにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
セルロースアシレートフィルムには、機械的物性を改良するため、またはフィルム製造の際における流延後の乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)、ジフェニルビフェニルホスフェート、およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースアシレートの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
セルロースアシレートフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−197073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、劣化防止剤の効果及びフィルム表面へのブリードアウト(滲み出し)を考慮して、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
セルロースアシレートフィルムには、フィルムのレターデーションを調整するため、必要に応じてレターデーション上昇剤を使用することができる。フィルムのレターデーションとしては、膜厚方向には0〜300nm、面内方向には0〜1000nmのものが好ましく用いられる。
少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として好ましく、芳香族化合物は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用する。芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.05〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。
詳しくは、特開2000−111914号公報、同2000−275434号公報、同2002−236215号公報、国際公開第00/065384号パンフレット等に記載されている。
(セルロースアシレートフィルムの延伸処理)
作製されたセルロースアシレートフィルムは、さらに延伸処理により乾燥ムラや乾燥収縮で発生する膜厚ムラ、表面凹凸を改善することができる。また、延伸処理はレターデーションを調整することにも用いられる。
巾方向延伸処理の方法に特に限定はないが、その例としてテンターによる延伸方法が挙げられる。
また、更に好ましくは、ロールの長手方向に縦延伸を行うことであり、ロールフィルムを搬送するパスロール間にて、それぞれのパスロールのドロー比(パスロール同士の回転比)を調節することにより、縦延伸が可能となる。
(セルロースアシレートフィルムの表面処理)
セルロースアシレートフィルムは、表面処理を施すことが好ましい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理が挙げられる。また、特開平7−333433号公報に記載のように、下塗り層を設けることも好ましく利用される。
フィルムの平面性を保持する観点から、これら処理においてセルロースアシレートフィルムの温度をTg以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。
本発明の光学フィルムを偏光板の保護フィルムとして使用する場合のようにセルロースアシレートフィルムを偏光膜と接着させる場合には、偏光膜との接着性の観点から、酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアシレートに対するケン化処理を実施することが特に好ましい。
接着性などの観点から、セルロースアシレートフィルムの表面エネルギーは、55mN/m以上であることが好ましく、60mN/m以上75mN/m以下であることが更に好ましく、上記表面処理により調整することができる。
固体の表面エネルギーは、「ぬれの基礎と応用」,リアライズ社,1989.12.10発行に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができる。セルロースアシレートフィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。
具体的には、表面エネルギーが既知である2種の溶液をセルロースアシレートフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
以下に、表面処理についてアルカリ鹸化処理を例に具体的に説明する。
フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。
アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、これらのアルカリの濃度は0.1mol/l〜3.0mol/lであることが好ましく、0.5mol/l〜2.0mol/lであることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温〜90℃の範囲が好ましく、40℃〜70℃がさらに好ましい。
生産性の観点から、アルカリ液を塗布し、鹸化処理後に水洗によりフィルム表面よりアルカリ除去する事が好ましい。濡れ性の観点から、塗布溶媒としてはIPA、n−ブタノール、メタノール、エタノール等のアルコール類が好ましく、アルカリ溶解の助剤として水、プロピレングリコール、エチレングリコール、等を加える事が好ましく用いられる。
<ポリエチレンテレフタレートフィルム>
本発明では、ポリエチレンテレフタレートフィルムも、透明性、機械的強度、平面性、耐薬品性および耐湿性共に優れており、その上安価であり好ましく用いられる。
透明プラスチックフィルムと、その上に設けられる被膜層(例えばハードコート層)との密着強度をより向上させるため、透明プラスチックフィルムは易接着処理が施されたされたものであることが更に好ましい。
市販されている光学用易接着層付きPETフィルムとしては東洋紡績社製コスモシャインA4100、A4300等が挙げられる。
(被膜層(光学機能層))
<ハードコート層>
本発明の光学フィルムの光学機能層として、フィルムの物理的強度を付与するためのハードコート層(あるいは防眩層)と、その上にハードコート層よりも屈折率が低く、反射防止性を付与する低屈折率層とを有することが好ましい。更に好ましくはハードコート層と低屈折率層の間に中屈折率層、高屈折率層を有することが好ましい。また、ハードコート層は、二層以上の積層から構成されてもよい。
本発明におけるハードコート層の屈折率は、反射防止性のフィルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48〜2.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.52〜1.90であり、更に好ましくは1.55〜1.80である。本発明では、ハードコート層の上に低屈折率層が少なくとも1層あることが好ましく、当該構成の場合、屈折率がこの範囲より小さ過ぎると反射防止性が低下し、大き過ぎると反射光の色味が強くなる傾向がある。
ハードコート層の膜厚は、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層の厚さは通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm、さらに好ましくは2μm〜10μm、最も好ましくは3μm〜7μmである。
また、ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
さらに、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
本発明における透光性樹脂の例として、多官能モノマーや多官能オリゴマーが挙げられる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、
ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;等を挙げることができる。
さらにはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。さらに好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールトリアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート等が挙げられる。本明細書において、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」は、それぞれ「アクリレートまたはメタクリレート」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」を表す。
多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。
アセトフェノン類の例には、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシ-ジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシ-ジメチル-p-イソプロピルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、が含まれる。
ベンゾイン類の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルサルファイド、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノン、4,4'-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、3,3'、4、4'-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが含まれる。
ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
活性エステル類の例には1、2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、スルホン酸エステル類、環状活性エステル化合物などが含まれる。
オニウム塩類の例には、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩が挙げられる。
ボレート塩の例にはカチオン性色素とのイオンコンプレックス類が挙げられる。
活性ハロゲン類の例にはS-トリアジンやオキサチアゾール化合物が知られており、
2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロルメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロルメチル)-s-トリアジン、2-(p-スチリルフェニル)-4,6-ビス(トリクロルメチル)-s-トリアジン、2-(3-Br-4-ジ(エチル酢酸エステル)アミノ)フェニル)-4,6-ビス(トリクロルメチル)-s-トリアジン、2-トリハロメチル-5-(p-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾールが含まれる。
無機錯体の例にはビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6−ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムが挙げられる。
クマリン類の例には3−ケトクマリンが挙げられる。
これらの開始剤は単独でも混合して用いても良い。
「最新UV硬化技術」,(株)技術情報協会,1991年,p.159にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光ラジカル重合開始剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DETX−S,BP−100,BDMK,CTX,BMS,2−EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC,MCAなど)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651、184、819、500,907,369,1173,2959,4265,4263など)、サートマー社製のEsacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KT046,KT37,KIP150,TZT)等が挙げられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。市販の光増感剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DMBI,EPA)などが挙げられる。
光重合反応は、ハードコート層の塗布および乾燥後、紫外線照射により行うことが好ましい。
熱ラジカル開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポキシ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、透光性粒子および無機微粒子を含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化してハードコート層を形成することができる。
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をポリマーに導入した透光性樹脂を用いてもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有する透光性樹脂は塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
ハードコート層の架橋又は重合している透光性樹脂は、ポリマーの主鎖が架橋又は重合している構造を有する。ポリマーの主鎖の例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミドおよびメラミン樹脂が含まれる。ポリオレフィン主鎖、ポリエーテル主鎖およびポリウレア主鎖が好ましく、ポリオレフィン主鎖およびポリエーテル主鎖がさらに好ましく、ポリオレフィン主鎖が最も好ましい。
ポリオレフィン主鎖は、飽和炭化水素からなる。ポリオレフィン主鎖は、例えば、不飽和重合性基の付加重合反応により得られる。ポリエーテル主鎖は、エーテル結合(−O−)によって繰り返し単位が結合している。ポリエーテル主鎖は、例えば、エポキシ基の開環重合反応により得られる。ポリウレア主鎖は、ウレア結合(−NH−CO−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレア主鎖は、例えば、イソシアネート基とアミノ基との縮重合反応により得られる。ポリウレタン主鎖は、ウレタン結合(−NH−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレタン主鎖は、例えば、イソシアネート基と、水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリエステル主鎖は、エステル結合(−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリエステル主鎖は、例えば、カルボキシル基(酸ハライド基を含む)と水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリアミン主鎖は、イミノ結合(−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミン主鎖は、例えば、エチレンイミン基の開環重合反応により得られる。ポリアミド主鎖は、アミド結合(−NH−CO−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミド主鎖は、例えば、イソシアネート基とカルボキシル基(酸ハライド基を含む)との反応により得られる。メラミン樹脂主鎖は、例えば、トリアジン基(例、メラミン)とアルデヒド(例、ホルムアルデヒド)との縮重合反応により得られる。なお、メラミン樹脂は、主鎖そのものが架橋又は重合構造を有する。
ハードコート層の透光性樹脂には、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、高屈折率モノマーまたは無機微粒子、或いは両者を加えることができる。無機微粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。本発明では、ハードコート層形成後において、前記多官能モノマーおよび/又は高屈折率モノマー等が重合して生成した重合体、その中に分散された無機微粒子を含んだものも透光性樹脂と称する。
高屈折率モノマーの例には、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が含まれる。
無機微粒子の例には、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも一つ金属の酸化物、その他BaSO4、CaCO3、タルクおよびカオリンなどが含まれ、粒径100nm以下、好ましくは50nm以下であることが好ましい。無機微粒子を100nm以下に微細化することで透明性を損なわないハードコート層を形成できる。
ハードコート層を高屈折率化する目的に対しては、無機微粒子としてはAl、Zr、Zn、Ti、InおよびSnから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物超微粒子が好ましく、具体例としては、ZrO2、TiO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITO等が挙げられる。これらの中でも、特にZrO2が好ましく用いられる。
高屈折率のモノマーや無機微粒子の添加量は、透光性樹脂の全質量の10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であると更に好ましい。無機微粒子はハードコート層内で二種類以上用いても良い。本発明において、無機微粒子の凝集、沈降を抑制したり、透光性樹脂と結合させて機械強度を上げる目的で、分散安定化剤あるいは表面処理剤を併用することも好ましい。分散安定化剤、表面処理剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリアミド、リン酸エステル、ポリエーテル、界面活性剤およびシランカップリング剤、チタンカップリング剤等を使用することができる。特にシランカップリング剤が硬化後の皮膜が強いため好ましい。分散安定化剤としてのシランカップリング剤の添加量は特に制限されるものではないが、例えば、無機微粒子100重量部に対して、1重量部以上の値とするのが好ましい。また、分散安定化剤、表面処理剤の添加方法も特に制限されるものではないが、予め加水分解したものを添加することもできるし、あるいは、表面処理剤であるシランカップリング剤と無機微粒子とを混合後、さらに加水分解および縮合する方法を採ることができる。
ハードコート層のヘイズは、反射防止フィルムに付与させる機能によって異なる。
画像の鮮明性を維持し、表面の反射率を抑えて、ハードコート層の内部及び表面にて光散乱機能を付与しない場合は、ヘイズ値は低い程良く、具体的には10%以下が好ましく、更に好ましくは5%以下であり、最も好ましくは2%以下である。
一方、表面の反射率を抑える機能に加えて、ハードコート層表面の微細な凹凸による外光の散乱による防眩機能を付与する場合は、表面ヘイズが5%〜15%であることが好ましく、5%〜10%であることがより好ましい。
また、ハードコート層の内部散乱により液晶パネルの模様や色ムラ、輝度ムラ、ギラツキなどを改良したり、散乱により視野角を拡大する機能を付与する場合は、内部ヘイズ値
(全ヘイズ値から表面ヘイズ値を引いた値)は10%〜90%であることが好ましく、更に好ましくは15%〜80%であり、最も好ましくは20%〜70%である。
本発明の光学フィルムは、目的に応じて、表面ヘイズ及び内部ヘイズを自由に設定可能である。
ヘイズは、ヘイズメーターMODEL 1001DP(日本電色工業(株)製)を用いて測定することができる。
また、本発明におけるハードコート層の表面凹凸形状については、画像の鮮明性を維持する目的で、クリアな表面を得る為には、表面粗さを示す特性のうち、例えば中心線平均粗さ(Ra)を0.10μm以下とすることが好ましい。Raは、より好ましくは0.09μm以下であり、更に好ましくは0.08μm以下である。本発明の光学フィルム、特にハードコート層上に反射防止層を有する反射防止フィルムにおいては、フィルムの表面凹凸にはハードコート層の表面凹凸が支配的であり、ハードコート層の中心線平均粗さを調節することにより、反射防止フィルムの中心線平均粗さを上記範囲とすることができる。
中心線平均粗さ(Ra)の測定は、JIS−B0601に準じて行うことができる。
画像の鮮明性を維持する目的では、表面の凹凸形状を調整することに加えて、透過画像鮮明度を調整することが好ましい。クリアな反射防止フィルムの透過画像鮮明度は60%以上が好ましい。透過画像鮮明度は、一般にフィルムを透過して映す画像の呆け具合を示す指標であり、この値が大きい程、フィルムを通して見る画像が鮮明で良好であることを示す。透過画像鮮明度は好ましくは70%以上であり、更に好ましくは80%以上である。
ここで、透過画像鮮明度は、JIS K 7105に従い、スガ試験機(株)製の写像性測定器(ICM−2D型)にて、スリット幅が0.5mmの光学櫛を用いて測定できる。
一方、防眩機能を付与する場合は、中心線平均粗さ(Ra)を0.10〜0.40μmの範囲が好ましい。0.40μmを超えると、ギラツキや、外光が反射した際、表面の白化等の問題が発生する。また、透過画像鮮明度の値は、5〜60%とするのが好ましい。
視野角拡大機能を付与する為に、上記内部ヘイズ値を調整することに加えて、ハードコート層のゴニオフォトメータで測定される散乱光の強度分布(散乱光プロファイル)を調整することが重要である。例えば、液晶ディスプレイの場合、バックライトから出射された光が視認側の偏光板表面に設置された反射防止フィルムで拡散されればされるほど視野角特性が良くなる。しかし、あまり拡散されすぎると、後方散乱が大きくなり、正面輝度が減少する、あるいは、散乱が大きすぎて画像鮮明性が劣化する等の問題が生じる。従って、ハードコート層の散乱光強度分布をある範囲に制御することが必要となる。所望の視認特性を達成するには、散乱光プロファイルの出射角0°の光強度に対して、特に視野角改良効果と相関ある出射角30°の散乱光強度が0.01%〜0.2%であることが好ましく、0.02%〜0.15%が更に好ましく、0.02%〜0.1%が最も好ましい。
散乱光プロファイルは、ハードコート層を設けた反射防止フィルムについて、(株)村上色彩技術研究所製の自動変角光度計GP−5型を用いて測定できる。
ハードコート層に表面ヘイズ及び/または内部ヘイズを付与する方法としては、電離放射線硬化性化合物からなる透光性樹脂(屈折率を調整しうる上記無機粒子などを含む)中に、透光性粒子を含有させることが好ましい。
表面ヘイズを付与する場合には、ハードコート層に透光性粒子を含有することにより、表面に凹凸形状を形成させることが好ましい。
一方、内部ヘイズを付与する場合は、透光性樹脂と屈折率の異なる透光性粒子を含有させることが好ましい。バインダーと透光性粒子との屈折率差としては、0.02〜0.20であることが好ましい。上記範囲の屈折率の差は、適度な光拡散効果が生じると共に、過度な光拡散効果によりフィルム全体が白化する心配もない。上記範囲の屈折率の差は、適度な光拡散効果が生じると共に、過度な光拡散効果によりフィルム全体が白化する心配もない。なお、前記屈折率差は、0.03〜0.15がより好ましく、0.04〜0.13が最も好ましい。
バインダーと透光性粒子の組み合わせは、上記屈折率差を調整する目的で、適宜選択できる。
透光性粒子の粒子径は、0.5μm〜6μmであることが好ましい。粒径が上記範囲であれば、光拡散効果が適度であり、後方散乱が小さく光の利用効率が十分となると共に、表面の凹凸が小さく白呆けやギラツキ現象が殆ど発生しない。なお、前記透光性粒子の粒径は、0.7μm〜5μmが好ましく、1μm〜4μmが最も好ましい。
ハードコート層に透光性粒子を含有させ、且つ、クリアな表面を得るには、該粒子による表面凹凸が生成しないように、ハードコート層の膜厚を調整する必要がある。通常は膜厚を大きくして粒子の突起がハードコート表面から突出しないようにすることで、表面粗さRa(中心線平均粗さ)を0.10μm以下にすることができる。
透光性粒子は有機粒子であっても、無機粒子であってもよい。粒径にばらつきがないほど、散乱特性にばらつきが少なくなり、ヘイズ値の設計が容易となる。透光性粒子としては、プラスチックビーズが好適であり、特に透明度が高く、バインダーとの屈折率差が前述のような数値になるものが好ましい。
有機粒子としては、架橋アクリル粒子(屈折率1.49)、アクリル−スチレン共重合体粒子(屈折率1.54)、メラミン粒子(屈折率1.57)、ポリカーボネート粒子(屈折率1.57)、スチレン粒子(屈折率1.60)、架橋スチレン粒子(屈折率1.61)、ポリ塩化ビニル粒子(屈折率1.60)、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒド粒子(屈折率1.68)等が用いられる。
無機粒子としては、シリカ粒子(屈折率1.44)、アルミナ粒子(屈折率1.63)、酸化チタン粒子等が用いられる。
なかでも架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、シリカ粒子が好ましく用いられる。
ここで、透光性樹脂の屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。前記透光性粒子の屈折率は、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に透光性粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定される。
透光性粒子の粒径は、前述のように0.5〜6μmのものを適宜選択して用いるとよく、2種類以上混合して用いてもよく、透光性樹脂100質量部に対して5〜30質量部含有させるとよい。
上記のような透光性粒子の場合には、透光性樹脂中で透光性粒子が沈降し易いので、沈降防止のためにシリカ等の無機フィラーを添加してもよい。なお、無機フィラーは添加量が増す程、透光性粒子の沈降防止に有効であるが、塗膜の透明性に悪影響を与える。従って、好ましくは、粒径0.5μm以下の無機フィラーを、透光性樹脂に対して塗膜の透明性を損なわない程度に、0.1質量%未満程度含有させるとよい。
<塗工層用界面活性剤>
本発明における塗工層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を塗工層形成用の塗布組成物中に含有することが好ましい。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の被膜シートの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。
面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
また、これら界面活性剤は、ハードコート層、防眩層に好ましく用いられる。
フッ素系の界面活性剤の好ましい例としては、フルオロ脂肪族基含有共重合体(「フッ素系ポリマー」と略記することもある)が挙げられ、該フッ素系ポリマーは、下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むことを特徴とする、あるいは下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むことを特徴とする、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、及びこれらに共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体が有用である。
(i)下記一般式イで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
一般式イ
Figure 2007083228
一般式イにおいてR11は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子または−N(R12)−を表し、mは1以上6以下の整数、nは2〜4の整数を表す。R12は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。Xは酸素原子が好ましい。
(ii)前記(i)と共重合可能な下記一般式ロで示されるモノマー
一般式ロ
Figure 2007083228
一般式ロにおいて、R13は水素原子またはメチル基を表し、Yは酸素原子、イオウ原子または−N(R15)−を表し、R15は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。Yは酸素原子、−N(H)−、および−N(CH3)−が好ましい。
14は置換基を有しても良い炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。R14のアルキル基の置換基としては、水酸基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、アルキルエーテル基、アリールエーテル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等があげられるがこの限りではない。炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、直鎖及び分岐してもよいブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基等、また、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の単環シクロアルキル基及びビシクロヘプチル基、ビシクロデシル基、トリシクロウンデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデシル基、等の多環シクロアルキル基が好適に用いられる。
本発明で用いられるフッ素系ポリマー中に用いられるこれらの一般式イで示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該フッ素系ポリマーの各単量体に基づいて10モル%以上であり、好ましくは15〜70モル%であり、より好ましくは20〜60モル%の範囲である。
本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、5,000〜80,000がより好ましい。
更に、本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい添加量は、塗布液に対して0.001〜5質量%の範囲であり、好ましくは0.005〜3質量%の範囲であり、更に好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。フッ素系ポリマーの添加量が0.001質量%未満では効果が不十分であり、また5質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、塗膜としての性能(例えば反射率、耐擦傷性)に悪影響を及ぼす。
以下、一般式イで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーを含むフッ素系ポリマーの具体的な構造の例を示すがこの限りではない。なお式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
Figure 2007083228
Figure 2007083228
しかしながら、特にハードコート層(あるいは防眩層)形成においては、前記のようなフッ素系ポリマーを使用することにより、ハードコート層表面にF原子を含有する官能基が偏析することにより防眩層の表面エネルギーが低下し、前記ハードコート層上に低屈折率層をオーバーコートしたときに反射防止性能が悪化する問題が生じる。これは低屈折率層を形成するために用いられる硬化性組成物の濡れ性が悪化するために低屈折率層に目視では検知できない微小なムラが悪化するためと推定される。このような問題を解決するためには、フッ素系ポリマーの構造と添加量を調整することにより、ハードコート層の表面エネルギーを好ましくは20mN・m-1〜50mN・m-1に、より好ましくは30mN・m-1〜40mN・m-1に制御することが効果的であることを見出した。前記のような表面エネルギーを実現するためには、X線光電子分光法で測定したフッ素原子由来のピークと炭素原子由来のピークの比であるF/Cが0.1〜1.5であることが必要である。
或いは、上層を塗布する時には上層を形成する溶媒に抽出されるようなフッ素系ポリマーを選択することで、下層表面(=界面)に偏在することがなくなり、かつ上層と下層の密着性を持たせることで、高速塗布においても面状の均一性を保ち、かつ耐擦傷性の強い光学フィルムを提供できる。表面自由エネルギーの低下を防ぐことにより、低屈折率層塗布前のハードコート層の表面エネルギーを前記範囲に制御することでも目的を達成することができる。そのような素材の例は下記一般式ハで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーに相当する繰り返し単位を含むことを特徴とするアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、及びこれらに共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体である。
(iii)下記一般式ハで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
一般式ハ
Figure 2007083228
一般式ハにおいてR21は水素原子またはハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。X2は酸素原子、イオウ原子または−N(R22)−を表し、酸素原子または−N(R22)−がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。mは1以上6以下の整数(1〜3がより好ましく、1であることが更に好ましい。)、nは1以上18以下の整数(4〜12がより好ましく、6〜8が更に好ましい。)を表す。R22は水素原子または置換基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましい。Xは酸素原子が好ましい。
またフッ素系ポリマー中に一般式ハで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーが2種類以上構成成分として含まれていても良い。
(iv)前記(iii)と共重合可能な下記一般式ニで示されるモノマー
一般式ニ
Figure 2007083228
一般式ニにおいて、R23は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。Y2は酸素原子、イオウ原子または−N(R25)−を表し、酸素原子または−N(R25)−がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。R25は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましい。
24は置換基を有しても良い炭素数1〜20の、直鎖、分岐または環状のアルキル基、ポリ(アルキレンオキシ)基を含むアルキル基、置換基を有していても良い芳香族基(例えば、フェニル基またはナフチル基)を表す。炭素数1〜12の、直鎖、分岐、または環状のアルキル基、または総炭素数6〜18の芳香族がより好ましく、炭素数1〜8の、直鎖、分岐、または環状のアルキル基が更に好ましい。
以下、一般式ハで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーに相当する繰り返し単位を含むフッ素系ポリマーの具体的な構造の例を示すがこの限りではない。なお、式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
Figure 2007083228
Figure 2007083228
Figure 2007083228
Figure 2007083228
Figure 2007083228
またハードコート層上に低屈折率層をオーバーコートする時点で表面エネルギーの低下を防げば、反射防止性能の悪化が防げる。ハードコート層塗布時にはフッ素系ポリマーを用いて塗布液の表面張力を下げて面状均一性を高め、高速塗布による高生産性を維持し、ハードコート層塗布後にコロナ処理、UV処理、熱処理、鹸化処理、溶剤処理といった表面処理手法を用いて、特に好ましいのはコロナ処理であるが、表面自由エネルギーの低下を防ぐことにより、低屈折率層塗布前のハードコート層の表面エネルギーを前記範囲に制御することでも目的を達成することができる。
また、本発明では、ハードコート層を形成する為の塗布組成物中に、チクソトロピー剤を添加しても良い。チクソトロピー剤としては、0.1μm以下のシリカ、マイカ等があげられる。これら添加剤の含有量は、通常、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、1〜10質量部程度とするのが好適である。
ハードコート層と透明支持体が接する場合、ハードコート層を形成するための塗布液の溶剤は、ハードコート層表面の凹凸の制御(凹凸を小さくする、あるいは平らにする)および透明支持体とハードコート層間との密着性の両立を図るために、透明支持体(例えばトリアセチルセルロース支持体)を溶解する少なくとも一種類以上の溶剤と、透明支持体を溶解しない少なくとも一種類以上の溶剤から構成するのが好ましい。より好ましくは、透明支持体を溶解しない溶剤のうちの少なくとも一種類が、透明支持体を溶解する溶剤のうちの少なくとも一種類よりも高沸点であることが好ましい。
透明支持体(好ましくはトリアセチルセルロース)を溶解する溶剤として、
炭素子数が3〜12のエーテル類:具体的には、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等、
炭素数が3〜12のケトン類:具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等、
炭素数が3〜12のエステル類:具体的には、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等、
2種類以上の官能基を有する有機溶媒:具体的には、2−メトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1,2−ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、およびアセト酢酸エチル等が挙げられる。
これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。透明支持体を溶解する溶剤としてはケトン系溶剤が好ましい。
透明支持体(好ましくはトリアセチルセルロース)を溶解しない溶剤として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ペンタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノンが挙げられる。
これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
透明支持体を溶解する溶剤の総量(A)と透明支持体を溶解しない溶剤の総量(B)の質量割合(A/B)は、5/95〜50/50が好ましく、より好ましくは10/90〜40/60であり、さらに好ましく15/85〜30/70である。
<低屈折率層>
本発明の光学フィルムは、最外層に低屈折率層を有するのが好ましい。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.46が好ましく、1.25〜1.41がより好ましく、最も好ましくは1.30〜1.39である。さらに、低屈折率層は下記数式(1)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(1): (m1/4)λ×0.7<n11<(m1/4)λ×1.3
上記数式(1)中、m1は正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そしてd1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。なお、上記数式(1)を満たすとは、上記波長の範囲において数式(1)を満たすm1(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
低屈折率層には、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマー、あるいは含フッ素ゾルゲル素材などが含まれる。含フッ素ポリマーあるいは含フッ素ゾルゲルとしては、熱または電離放射線により架橋し、形成される低屈折率層表面の動摩擦係数0.03〜0.15であり、水に対する接触角90〜120°となる素材が好ましい。本発明では、低屈折率層に膜強度向上のための無機微粒子を用いることもできる。
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学工業(株)製)やM−2020(ダイキン工業(株)製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシル基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号の各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用してもよい。
本発明で特に有用な含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテル類またはビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60mol%の場合である。
また本発明の含フッ素ポリマーには防汚性を付与する目的で、ポリシロキサン構造が導入されていることが好ましい。ポリシロキサン構造の導入方法に制限はないが例えば特開平11−189621号、同11−228631号、特開2000−313709号の各公報に記載のごとく、シリコーンマクロアゾ開始剤を用いてポリシロキサンブロック共重合成分を導入する方法、特開平2−251555号、同2−308806号の各公報に記載のごとくシリコーンマクロマーを用いてポリシロキサングラフト共重合成分を導入する方法が好ましい。これらのポリシロキサン成分はポリマー中の0.5〜10質量%であることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%である。
防汚性付与に対しては上記以外にも反応性基含有ポリシロキサン(例えばKF−100T,X−22−169AS,KF−102,X−22−3701IE,X−22−164B,X−22−5002,X−22−173B,X−22−174D,X−22−167B,X−22−161AS(以上商品名、信越化学工業(株)製)、AK−5,AK−30,AK−32(以上商品名、東亜合成(株)製)、サイラプレーンFM0275,サイラプレーンFM0721(以上商品名、チッソ(株)製)等)を添加する手段も好ましい。この際これらのポリシロキサンは低屈折率層全固形分の0.5〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%の場合である。
本発明では、低屈折率層中に、低屈折率と耐擦傷性を両立させる目的で、中空のシリカ微粒子を含有させる。
中空のシリカ微粒子の屈折率は1.17〜1.40が好ましく、更に好ましくは1.17〜1.35、最も好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空シリカ微粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、空隙率xは下記数式(2)で算出される。
数式(2): x=(4πa3/3)/(4πb3/3)×100
空隙率xは、好ましくは10〜60%、更に好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。中空のシリカ微粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17未満の低屈折率の粒子は成り立たない。
なお、これら中空シリカ微粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定をおこなった。
中空シリカ微粒子の製造方法は、例えば特開2001−233611号公報や特開2002−79616号公報に記載されている。
中空シリカ微粒子の塗設量は、1mg/m2〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5mg/m2〜80mg/m2、更に好ましくは10mg/m2〜60mg/m2である。塗設量が上記範囲であると、低屈折率化の効果や耐擦傷性の改良効果が発現すると共に、低屈折率層表面に微細な凹凸が発生せず、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する心配もない。
中空シリカ微粒子の平均粒径は、0.5nm以上200nm以下であり、20nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
中空シリカ微粒子の粒径が上記範囲であれば、空腔部の割合が適度で屈折率が低下し、かつ低屈折率層表面に微細な凹凸に基づく黒の締まりといった外観、積分反射率の悪化がない。
中空シリカ微粒子の外殻部分のシリカは、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良い。また中空シリカ微粒子のサイズ分布は、単分散粒子が好ましいが、多分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球形が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。
ここで、中空シリカ微粒子の平均粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。
本発明においては、耐擦傷性向上の目的に対し、中空シリカ微粒子と併用して、その他の無機微粒子を含有することができる。
該無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。例えば、フッ化マグネシウムやシリカが挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点で、空腔のないシリカ微粒子が好ましい。空腔のないシリカ微粒子の好ましい粒子サイズは、30nm以上150nm以下、更に好ましくは35nm以上80nm以下、最も好ましくは40nm以上60nm以下である。
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(「大サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)と併用することが好ましい。
小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コストおよび保持剤効果の点で好ましい。
シリカ微粒子は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング剤が好ましく、後述する一般式(1)および(2)で表されるオルガノシラン化合物が好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するシランカップリング剤による処理が特に有効である。
上記カップリング剤は、低屈折率層の無機微粒子の表面処理剤として該層塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いてもよいが、該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
シリカ微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
本発明では、ハードコート層と低屈折率層のうちの少なくとも1層には、オルガノシラン化合物の加水分解物およびその部分縮合物の少なくともいずれか、いわゆるゾル成分(以降このように称する)を含有することが耐擦傷性の点で好ましく、ハードコート層と低屈折率層の両方に含有することが、より好ましい。
オルガノシランのゾルの適宜な含有量は、添加する層によっても異なるが、低屈折率層への添加量は低屈折率層の全固形分の0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。
低屈折率層における、含フッ素ポリマーに対するオルガノシランのゾルの使用量は、ゾルの使用の効果、層の屈折率、及び形成される層の形状・面状等の観点から、5〜100質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、8〜35質量%が更に好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。
ハードコート層へのオルガノシランのゾルの添加量は、光拡散層の全固形分の0.5〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。それ以外の層への添加量は、含有層(添加層)の全固形分の0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.05〜10質量%が更に好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。
用いられるオルガノシラン化合物は、下記一般式(1)で表すことができる。
一般式(1): (R10m−Si(X)4-m
上記一般式(1)において、R10は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。
Xは加水分解可能な基を表し、例えばアルコキシ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる)、ハロゲン(例えばCl、Br、I等)、またはR2COO(R2は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。例えばCH3COO、C25COO等が挙げられる)が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。
mは1〜3の整数を表す。R10もしくはXが複数存在するとき、複数のR10もしくはXはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。mとしては、好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。
10に含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基
(ビニル、1−プロペニル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基
(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていてもよい。
10が複数ある場合は、少なくとも一つが置換アルキル基もしくは置換アリール基であることが好ましい。
一般式(1)で表されるオルガノシラン化合物の中でも、下記一般式(2)で表されるビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物が好ましい。
一般式(2):
Figure 2007083228
一般式(2)においてR1は、水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)を表す。なかでも、水素原子、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、および塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、および塩素原子が更に好ましく、水素原子およびメチル基が特に好ましい。
Yは、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基、またはウレア基を表す。なかでも、単結合、エステル基、およびアミド基が好ましく、単結合およびエステル基が更に好ましく、エステル基が特に好ましい。
Lは2価の連結基を表す。具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミドなど)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基が挙げられる。なかでも、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、および内部に連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、および内部にエーテルあるいはエステルからなる連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、および内部にエーテルあるいはエステルからなる連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていてもよい。
nは0または1を表す。Xが複数存在するとき、複数のXはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。nとして好ましくは0である。
10は、一般式(1)と同義であり、置換もしくは無置換のアルキル基、無置換のアリール基が好ましく、無置換のアルキル基、無置換のアリール基が更に好ましい。
Xは、一般式(1)と同義であり、ハロゲン、水酸基、および無置換のアルコキシ基が好ましく、塩素原子、水酸基、および無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基、および炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
オルガノシラン化合物として、一般式(1)、一般式(2)で表される化合物を、2種類以上を併用してもよい。併用する場合は、一般式(2)で表されるビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物と、ビニル重合性の置換基を有さない化合物を併用することが好ましい。以下に一般式(1)、一般式(2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007083228
Figure 2007083228
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Figure 2007083228
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上記の化合物の中で、M−1、M−2、M−5、M−19〜M−21、M−48が好ましく、併用する場合は、ビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物としてM−1、M−2、M−5のいづれかと、ビニル重合性の置換基を有さない化合物としてM−19〜M−21、M−48のいづれかを組み合わせて用いることが好ましい。
オルガノシランの加水分解・縮合反応は、無溶媒でも、溶媒中でも行うことができるが成分を均一に混合するために有機溶媒を用いることが好ましく、例えばアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。
溶媒は、オルガノシランと触媒を溶解させるものが好ましい。また、有機溶媒を塗布液あるいは塗布液の一部として用いることが工程上好ましく、含フッ素ポリマーなどのその他の素材と混合した場合に、溶解性あるいは分散性を損なわないものが好ましい。
このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコールまたは2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。
これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
該反応における固形分の濃度は特に限定されるものではないが通常1%〜90%の範囲であり、好ましくは20%〜70%の範囲である。
オルガノシランの加水分解・縮合反応は、触媒の存在下で行われることが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類;Zr、TiまたはAlなどの金属を中心金属とする金属キレート化合物等が挙げられるが、ゾル液の製造安定性やゾル液の保存安定性の点から、酸触媒(無機酸類、有機酸類)および金属キレート化合物が好ましい。酸触媒としては、無機酸では塩酸、硫酸、有機酸では、水中での酸解離定数
(pKa値(25℃))が4.5以下のものが好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸がより好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、メタンスルホン酸、シュウ酸、フタル酸、マロン酸が更に好ましく、シュウ酸が特に好ましい。
加水分解・縮合反応は、通常、オルガノシランの加水分解性基1モルに対して0.3〜2モル、好ましくは0.5〜1モルの水を添加し、上記溶媒の存在下あるいは非存在下に、そして好ましくは触媒の存在下に、25〜100℃で、撹拌することにより行われる。
加水分解性基がアルコキシドで触媒が有機酸の場合には、有機酸のカルボキシル基やスルホ基がプロトンを供給するために、水の添加量を減らすことができ、オルガノシランのアルコキシド基1モルに対する水の添加量は、0〜2モル、好ましくは0〜1.5モル、より好ましくは、0〜1モル、特に好ましくは、0〜0.5モルである。アルコールを溶媒に用いた場合には、実質的に水を添加しない場合も好適である。
触媒の使用量は、触媒が無機酸の場合には加水分解性基に対して0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%であり、触媒が有機酸の場合には、水の添加量によって最適な使用量が異なるが、水を添加する場合には加水分解性基に対して0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%であり、実質的に水を添加しない場合には、加水分解性基に対して1〜500モル%、好ましくは10〜200モル%であり、より好ましくは20〜200モル%であり、更に好ましくは50〜150モル%であり、特に好ましくは50〜120モル%である。
反応は25〜100℃で撹拌することにより行われるが、オルガノシランの反応性により適宜調節されることが好ましい。
金属キレート化合物は、一般式R3 OH(式中、R3は炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールとR4COCH2COR5(式中、R4は炭素数1〜10のアルキル基、R5は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、Ti、Alから選ばれる金属を中心金属とするものを好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用しても良い。本発明に用いられる 金属キレート化合物は、一般式Zr(OR3p1(R4COCHCOR5p2、Ti(OR3q1(R4COCHCOR5q2、およびAl
(OR3r1(R4COCHCOR5r2で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記オルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物の縮合反応を促進する作用をなす。
金属キレート化合物中のR3およびR4は、同一または異なってもよく炭素数1〜10のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec −ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、R5は、前記と同様の炭素数1〜10のアルキル基のほか、炭素数1〜10のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec −ブトキシ基、t−ブトキシ基などである。また、 金属キレート化合物中のp1、p2、q1、q2、r1、およびr2は、それぞれp1+p2=4、q1+q2=4、r1+r2=3となる様に決定される整数を表す。
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナートビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
本発明の金属キレート化合物は、縮合反応の速度および塗膜にした場合の膜強度の観点から、オルガノシランに対し、好ましくは、0.01〜50質量%、より好ましくは、0.1〜50質量%、さらに好ましくは、0.5〜10質量%の割合で用いられる。
本発明に係る低屈折率層を形成するために用いる塗布液の溶媒組成としては、単独および混合のいずれでもよく、混合のときは、沸点が100℃以下の溶媒が50〜100%であることが好ましく、より好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%、さらに好ましくは100%である。沸点が100℃以下の溶媒が上記範囲であると、乾燥速度が速く、塗布面状が良好であり、塗布膜厚が均一であるため、反射率などの光学特性も良好である。
沸点が100℃以下の溶媒としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃、以下「℃」を省略する)、ヘプタン(98.4)、シクロヘキサン(80.7)、ベンゼン(80.1)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8)、クロロホルム(61.2)、四塩化炭素(76.8)、1,2−ジクロロエタン(83.5)、トリクロロエチレン(87.2)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6)、ジイソプロピルエーテル(68.5)、ジプロピルエーテル(90.5)、テトラヒドロフラン(66)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2)、酢酸メチル(57.8)、酢酸エチル(77.1)、酢酸イソプロピル(89)などのエステル類、アセトン(56.1)、2−ブタノン(=メチルエチルケトン、79.6)などのケトン類、メタノール(64.5)、エタノール(78.3)、2−プロパノール(82.4)、1−プロパノール(97.2)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6)、プロピオニトリル(97.4)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2)、などが挙げられる。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
沸点が100℃以上の溶媒としては、例えば、オクタン(125.7)、トルエン(110.6)、キシレン(138)、テトラクロロエチレン(121.2)、クロロベンゼン(131.7)、ジオキサン(101.3)、ジブチルエーテル(142.4)、酢酸イソブチル(118)、シクロヘキサノン(155.7)、2−メチル−4−ペンタノン
(=MIBK、115.9)、1−ブタノール(117.7)、N,N−ジメチルホルムアミド(153)、N,N−ジメチルアセトアミド(166)、ジメチルスルホキシド(189)、などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
低屈折率層成分を前述の組成の溶媒で希釈することにより、低屈折率層用塗布液が調製される。塗布液濃度は、塗布液の粘度、層素材の比重などを考慮して適宜調節されることが好ましいが、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
<高屈折率層>
本発明の光学フィルムには、ハードコート層上に高屈折率層、中屈折率層を設け、反射防止性を高めることができる。本発明では高屈折率層、中屈折率層の屈折率は1.55〜2.40が好ましい。以下の本明細書では、この高屈折率層と中屈折率層を高屈折率層と総称して呼ぶことがある。なお、本発明において、高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層の「高」、「中」、「低」とは層相互の相対的な屈折率の大小関係を表す。また、透明支持体との関係で言えば屈性率は、透明支持体>低屈折率層、高屈折率層>透明支持体の関係を満たすことが好ましい。
本発明における高屈折率層には、コバルト、アルミニウム、ジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子を含有することが好ましい。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。
本発明における二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、屈折率が1.90〜2.80であることが好ましく、2.10〜2.80であることがさらに好ましく、2.20〜2.80であることが最も好ましい。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の一次粒子の質量平均径は1〜200nmであることが好ましく、より好ましくは1〜150nm、さらに好ましくは1〜100nm、特に好ましくは1〜80nmである。
無機微粒子の粒子径は、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。無機微粒子の比表面積は、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることがさらに好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造が主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子に、Co(コバルト)、Al(アルミニウム)及びZr(ジルコニウム)から選ばれる少なくとも1つの元素を含有することで、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、高屈折率層の耐候性を改良することができる。
特に、好ましい元素はCo(コバルト)である。また、2種類以上を併用することも好ましい。
Ti(チタン)に対するCo(コバルト)、Al(アルミニウム)またはZr(ジルコニウム)の含有量は、それぞれTiに対して0.05〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜7質量%、特に好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは0.5〜3質量%である。
Co(コバルト)、Al(アルミニウム)及びZr(ジルコニウム)は、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部と表面の少なくともいずれかに存在させることができるが、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在させることが好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。
Co(コバルト)、Al(アルミニウム)、Zr(ジルコニウム)を二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在させる(例えば、ドープする)には、種々の手法がある。例えば、青木康,「イオン注入法」,表面科学,1998,Vol.18,No.5,p.262−268や、特開平11−263620号公報、特表平11−512336号公報、欧州特許出願公開第335773号明細書、特開平5−330825号公報に記載の手法があげられる。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の粒子形成過程において、Co(コバルト)、Al(アルミニウム)、Zr(ジルコニウム)を導入する手法(例えば、特表平11−512336号公報、欧州特許出願公開第335773号明細書、特開平5−330825号公報に記載)が特に好ましい。
Co(コバルト)、Al(アルミニウム)、Zr(ジルコニウム)は、酸化物として存在することも好ましい。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子には、目的により、さらに他の元素を含むこともできる。他の元素は、不純物として含んでいてもよい。他の元素の例には、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Mg、Si、PおよびSが含まれる。
本発明に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は表面処理してもよい。表面処理は、無機化合物または有機化合物を用いて実施する。表面処理に用いる無機化合物の例には、コバルトを含有する無機化合物(CoO2,Co23,Co34など)、アルミニウムを含有する無機化合物(Al23,Al(OH)3など)、ジルコニウムを含有する無機化合物(ZrO2,Zr(OH)4など)、ケイ素を含有する無機化合物(SiO2など)、鉄を含有する無機化合物(Fe23など)などが含まれる。
コバルトを含有する無機化合物、アルミニウムを含有する無機化合物、ジルコニウムを含有する無機化合物が特に好ましく、コバルトを含有する無機化合物、Al(OH)3、Zr(OH)4が最も好ましい。
表面処理に用いる有機化合物の例には、シランカップリング剤およびチタネートカップリング剤が含まれる。なかでも、シランカップリング剤が最も好ましく、例えば一般式(1)あるいは一般式(2)で表されるシランカップリング剤が挙げられる。
シランカップリング剤の含有量は、高屈折率層の全固形分の1〜90質量%が好ましく、より好ましくは2〜80質量%、特に好ましくは5〜50質量%である。
チタネートカップリング剤としては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、のどのテトライソプロポキシチタンなどの金属アルコキシド、プレンアクト(KR−TTS、KR−46B、KR−55、KR−41Bなど;味の素(株)製)などが挙げられる。
表面処理に用いるその他の有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、その他アニオン性基を有する有機化合物などが好ましく、特に好ましいのは、カルボキシル基、スルホン酸基、または、リン酸基を有する有機化合物である。ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などが好ましく用いることができる。
表面処理に用いる有機化合物は、さらに、架橋または重合性官能基を有することが好ましい。架橋、または、重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する基である。
これらの表面処理は、2種類以上を併用することもできる。アルミニウムを含有する無機化合物とジルコニウムを含有する無機化合物を併用することが、特に好ましい。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、表面処理により特開2001−166104号公報記載のごとく、コア/シェル構造を有していても良い。
高屈折率層に含有される二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状あるいは不定形状であることが好ましく、特に好ましくは不定形状、紡錘形状である。
{分散剤}
高屈折率層に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散には、分散剤を用いることができる。
本発明では、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散には、アニオン性基を有する分散剤を用いることが特に好ましい。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(及びスルホ基)、リン酸基(及びホスホノ基)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有する基、またはその塩が有効であり、特にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基及びその塩が好ましく、カルボキシル基及びリン酸基が特に好ましい。1分子当たりの分散剤に含有されるアニオン性基の数は、1個以上含有されていればよい。
無機微粒子の分散性をさらに改良する目的でアニオン性基は複数個が含有されていてもよい。平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有されるアニオン性基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
分散剤は、さらに架橋または重合性官能基を含有することが好ましい。架橋または重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する官能基である。
本発明において高屈折率層に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散に用いる好ましい分散剤は、アニオン性基、及び架橋または重合性官能基を有し、かつ該架橋または重合性官能基を側鎖に有する分散剤である。
アニオン性基、及び架橋または重合性官能基を有し、かつ該架橋または重合性官能基を側鎖に有する分散剤の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが1000以上であることが好ましい。分散剤のより好ましい質量平均分子量(Mw)は2000〜1000000であり、さらに好ましくは5000〜200000、特に好ましくは10000〜100000である。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(スルホ)、リン酸基(ホスホノ)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有する基、またはその塩が有効であり、特にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基またはその塩が好ましく、カルボキシル基、リン酸基が特に好ましい。1分子当たりの分散剤に含有されるアニオン性基の数は、平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有されるアニオン性基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
アニオン性基、及び架橋または重合性官能基を有し、かつ該架橋または重合性官能基を側鎖に有する分散剤は、上記アニオン性基を側鎖または末端に有する。側鎖にアニオン性基を導入する方法としては、例えばアニオン性基含有モノマー(例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、部分エステル化マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、燐酸モノ−2−
(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル等を重合させる方法、水酸基、アミノ基等を有するポリマーに対して酸無水物を作用させる方法等の高分子反応の利用によって合成できる。
側鎖にアニオン性基を有する分散剤において、アニオン性基含有繰返し単位の組成は、全繰返し単位のうち、10-4〜100mol%の範囲であり、好ましくは1〜50mol%、特に好ましくは5〜20mol%である。
一方、末端にアニオン性基を導入する手法としては、アニオン性基含有連鎖移動剤(例えばチオグリコール酸等)の存在下で重合反応を行なう手法、アニオン性基含有重合開始剤(例えば和光純薬工業性V−501)を用いて重合反応を行なう手法等によって合成できる。
特に好ましい分散剤は、側鎖にアニオン性基を有する分散剤である。
架橋または重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する基である。
1分子当たりの分散剤に含有される架橋または重合性官能基の数は、平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有される架橋または重合性官能基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
本発明に用いる好ましい分散剤において、側鎖にエチレン性不飽和基を有する繰返し単位の例としては、ポリ−1,2−ブタジエンおよびポリ−1,2−イソプレン構造あるいは、(メタ)アクリル酸のエステルまたはアミドの繰返し単位であって、それに特定の残基(−COORまたは−CONHRのR基)が結合しているものが利用できる。上記特定の残基(R基)の例としては、−(CH2n−CR1=CR23、−(CH2O)n−CH2CR1=CR23、−(CH2CH2O)n−CH2CR1=CR23、−(CH2n−NH−CO−O−CH2CR1=CR23、−(CH2n−O−CO−CR1=CR23および−
(CH2CH2O)2−X(R1〜R3はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、R1とR2またはR3は互いに結合して環を形成してもよく、nは1〜10の整数であり、そしてXはジシクロペンタジエニル残基である)を挙げることができる。エステル残基の具体例には、−CH2CH=CH2、−CH2CH2O−CH2CH=CH2、−CH2CH2OCOCH=CH2、−CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、−CH2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C65、−CH2CH2OCOCH=CH−C65、−CH2CH2−NHCOO−CH2CH=CH2および−CH2CH2O−X(Xはジシクロペンタジエニル残基)が含まれる。アミド残基の具体例には、−CH2CH=CH2、−CH2CH2−Y(Yは1−シクロヘキセニル残基)および−CH2CH2−OCO−CH=CH2、−CH2CH2−OCO−C(CH3)=CH2が含まれる。
上記のエチレン性不飽和基を有する分散剤においては、その不飽和結合基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、分子間で直接、または重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、分子間に架橋が形成されて硬化する。あるいは、分子中の原子(例えば不飽和結合基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、分子間に架橋が形成されて硬化する。
側鎖に架橋または重合性官能基を導入する方法は、例えば特開平3−249653号公報等に記載のごとく架橋または重合性官能基含有モノマー(例えばアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリアルコキシシリルプロピルメタクリレート等)の共重合、ブタジエンあるいはイソプレンの共重合、3−クロロプロピオン酸エステル部位を有するビニルモノマーの共重合を行なった後に脱塩化水素を行なう方法、高分子反応による架橋または重合性官能基の導入(例えばカルボキシル基含有ポリマーへのエポキシ基含有ビニルモノマーの高分子反応)等によって合成することができる。
架橋または重合性官能基の含有単位は、アニオン性基含有繰返し単位以外の全ての繰返し単位を構成していてもよいが、好ましくは全架橋または繰返し単位のうちの5〜50mol%であり、特に好ましくは5〜30mol%である。
本発明における好ましい分散剤は、架橋または重合性官能基、アニオン性基を有するモノマー以外の適当なモノマーとの共重合体であっても良い。共重合成分に関しては特に限定はされないが、分散安定性、他のモノマー成分との相溶性、形成皮膜の強度等種々の観点から選択される。好ましい例としては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、スチレン等が挙げられる。
本発明では好ましい分散剤の形態は特に制限はないが、ブロック共重合体またはランダム共重合体であることが好ましくコストおよび合成的な容易さからランダム共重合体であることが特に好ましい。
以下に本発明に好ましく用いられる分散剤の具体例を示すが、本発明用の分散剤はこれらに限定されるものではない。なお特に記載の無い場合はランダム共重合体を表す。
Figure 2007083228
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分散剤の二酸化チタンを主成分とする無機微粒子に対する使用量は、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%の範囲であることがより好ましく、5〜20質量%であることが最も好ましい。また、分散剤は2種類以上を併用してもよい。
{高屈折率層の形成法}
高屈折率層に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、分散物の状態で高屈折率層の形成に使用する。無機微粒子の分散において、前記の分散剤の存在下で、分散媒体中に分散する。
分散媒体は、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散媒体の例には、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル
(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が含まれる。トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびブタノールが好ましい。
特に好ましい分散媒体は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンである。
無機微粒子は、分散機を用いて分散する。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライターおよびコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミルおよび高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダーおよびエクストルーダーが含まれる。
無機微粒子は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、質量平均径は1〜200nmである。好ましくは5〜150nmであり、さらに好ましくは10〜100nm、特に好ましくは10〜80nmである。
無機微粒子を200nm以下に微細化することで透明性を損なわない高屈折率層を形成できる。
本発明に用いる高屈折率層は、上記のようにして分散媒体中に無機微粒子を分散した分散液に、透光性樹脂(例えば、ハードコート層の説明で例示した電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)、光重合開始剤、増感剤、塗布溶媒等を加えて高屈折率層形成用の塗布組成物とし、ハードコート層上に高屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、電離放射線硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応または重合反応により硬化させて形成することが好ましい。透光性樹脂、光重合開始剤、増感剤、塗布溶媒の具体例は、ハードコート層で例示した化合物を用いることができる。
さらに、高屈折率層の透光性樹脂を層の塗布と同時または塗布後に、分散剤と架橋反応または重合反応させることが好ましい。
このようにして作製した高屈折率層の透光性樹脂は、例えば、上記の好ましい分散剤と電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋または重合反応し、透光性樹脂に分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。さらに高屈折率層の透光性樹脂は、アニオン性基が無機微粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋または重合構造が透光性樹脂に皮膜形成能を付与して、無機微粒子を含有する高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良する。
無機微粒子は高屈折率層の屈折率を制御する効果と共に、硬化収縮を抑える機能がある。
高屈折率層の中において、無機微粒子はなるべく微細に分散されていることが好ましく、質量平均径は1〜200nmである。高屈折率層中の無機微粒子の質量平均径は、5〜150nmであることが好ましく、10〜100nmであることがさらに好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。
無機微粒子を200nm以下に微細化することで透明性を損なわない高屈折率層を形成できる。
高屈折率層における無機微粒子の含有量は、高屈折率層の質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜75質量%である。無機微粒子は高屈折率層内で二種類以上を併用してもよい。
高屈折率層の上に低屈折率層を有するので、高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率より高いことが好ましい。
高屈折率層に、芳香環を含む電離放射線硬化性化合物、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)を含む電離放射線硬化性化合物、S,N,P等の原子を含む電離放射線硬化性化合物などの架橋または重合反応で得られる透光性樹脂も好ましく用いることができる。
高屈折率層の屈折率は1.55〜2.40であることが好ましく、より好ましくは1.60〜2.20、更に好ましくは、1.65〜2.10、最も好ましくは1.80〜2.00である。
例えば、ハードコート層上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順に3層設ける場合、中屈折率層の屈折率は1.55〜1.80、高屈折率層の屈折率は1.80〜2.40、低屈折率層の屈折率は1.20〜1.46であることが好ましい。
高屈折率層には、前記の成分(無機微粒子、重合開始剤、光増感剤など)以外に、樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子、などを添加することもできる。
高屈折率層の膜厚は用途により適切に設計することができる。高屈折率層を後述する光学干渉層として用いる場合、30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜170nm、特に好ましくは60〜150nmである。
(その他の光学機能層)
より優れた反射防止性能を有する光学フィルムを作製するために、高屈折率層の屈折率と、透明支持体の屈折率の間の屈折率を有する中屈折率層を設けることが好ましい。
中屈折率層は、前記高屈折率層において記載したのと同様に作製することが好ましく、屈折率の調整には皮膜中の無機微粒子の含有率を制御することで可能である。
光学フィルムには、以上に述べた以外の層を設けてもよい。例えば、接着層、シールド層、防汚層、滑り層や帯電防止層を設けてもよい。シールド層は電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
(被膜シートの製造方法)
次に、本発明の被膜シートの製造方法について詳細に説明する。
本発明の被膜シートの製造方法は、支持体上に塗工液を塗工する工程、次いで支持体上に塗工された塗工液の乾燥工程を含む。図1は、被膜シートの製造方法に用いられる塗工装置の概念図の一例である。
図1において、送り出しロール1から搬送される支持体2に、塗工ロール3及びダイコーター4にて塗工液が塗工され、続いて乾燥工程に移行する。図1の塗工装置では、乾燥工程は、第一乾燥工程5と第二乾燥工程6に分かれている。第一乾燥工程、第二乾燥工程における乾燥温度、乾燥時間は、塗工液の種類に応じて、調整される。乾燥工程の後には、必要に応じて、被膜の硬化設備7(例えば熱硬化設備、UV硬化設備)を経て、支持体に被膜層を形成した被膜シートが巻取りロール8に巻き取られる。
連続した支持体を用いている為、送り出しから巻き取りまで、各工程において、支持体はほぼ同じ速度で搬送される。
{塗布液の調整}
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液(塗工液)が調製される。その際、溶剤の揮発量を最小限に抑制することにより、塗布液中の含水率の上昇を抑制できる。塗布液中の含水率は5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。溶剤の揮発量の抑制は、各素材をタンクに投入後の攪拌時の密閉性を向上すること、移液作業時の塗布液の空気接触面積を最小化すること等で達成される。また、塗布中、或いはその前後に塗布液中の含水率を低減する手段を設けてもよい。
尚、塗工液は少なくとも2種類の溶剤を含み、2種類の溶剤の沸点が30℃以上異なることが好ましい。より好ましくは40℃以上150℃以下、更に好ましくは50℃以上120℃以下異なることが好ましい。溶剤の沸点を上記範囲とすることで、乾燥ムラの均一化に有効であり、第1の乾燥工程を経ても塗膜層中に高沸点溶媒がある程度残留することが必要であると推定される。
更に、特にハードコート層を形成する塗布液中には、直接その上に形成される層、例えば、低屈折率層の乾燥膜厚(50nm〜120nm程度)に相当する異物を概ね全て(90%以上を指す)除去できるろ過をすることが好ましい。光拡散性を付与する為の透光性粒子が低屈折率層の膜厚と同等以上であるため、前記ろ過は、透光性粒子以外の全ての素材を添加した中間液に対して行うことが好ましい。また、前記のような粒径の小さな異物を除去可能なフィルターが入手できない場合には、少なくとも直接その上に形成される層のウエット膜厚(1〜10μm程度)に相当する異物を概ね全て除去できるろ過をすることが好ましい。このような手段により、直接その上に形成される層の点欠陥を減少することができる。
本発明の被膜シートの各層は以下の塗布方法により形成することができるが、この方法に制限されない。即ち、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法(ダイコート法)(米国特許2681294号明細書参照)、マイクログラビアコート法等の公知の方法が用いられ、その中でもマイクログラビアコート法、ダイコート法が好ましい。
本発明で用いられるマイクログラビアコート法とは、直径が約10〜100mm、好ましくは約20〜50mmで全周にグラビアパターンが刻印されたグラビアロールを支持体の下方に、かつ支持体の搬送方向に対してグラビアロールを逆回転させると共に、該グラビアロールの表面からドクターブレードによって余剰の塗布液を掻き落として、定量の塗布液を前記支持体の上面が自由状態にある位置におけるその支持体の下面に塗布液を転写させて塗工することを特徴とするコート法である。ロール形態の支持体を連続的に巻き出し、該巻き出された支持体の一方の側に、少なくともハードコート層乃至含フッ素ポリマーを含む低屈折率層の内の少なくとも一層をマイクログラビアコート法によって塗工することができる。
マイクログラビアコート法による塗工条件としては、グラビアロールに刻印されたグラビアパターンの線数は50〜800本/インチが好ましく、100〜300本/インチがより好ましく、グラビアパターンの深度は1〜600μmが好ましく、5〜200μmがより好ましく、グラビアロールの回転数は3〜800rpmであることが好ましく、5〜200rpmであることがより好ましく、支持体の搬送速度は0.5〜100m/分であることが好ましく、1〜50m/分がより好ましい。
本発明の被膜シートを高い生産性で供給するために、エクストルージョン法(ダイコート法)が好ましく用いられる。特に、ハードコート層や反射防止層のような、ウエット塗布量の少ない領域(20cc/m2以下)で好ましく用いることができるダイコーターについて、以下に説明する。{ダイコーターの構成}
図2はスロットダイを用いたコーターの断面図である。コーター10はバックアップロール11に支持されて連続走行するウェブWに対して、スロットダイ13から塗布液14をビード14aにして塗布することにより、ウェブW上に塗膜14bを形成する。
スロットダイ13の内部にはポケット15、スロット16が形成されている。ポケット15は、その断面が曲線及び直線で構成されており、例えば図2に示すような略円形でもよいし、あるいは半円形でもよい。ポケット15は、スロットダイ13の幅方向にその断面形状をもって延長された塗布液の液溜め空間で、その有効延長の長さは、塗布幅と同等か若干長めにするのが一般的である。ポケット15への塗布液14の供給は、スロットダイ13の側面から、あるいはスロット開口部16aとは反対側の面中央から行う。また、ポケット15には塗布液14が漏れ出ることを防止する栓が設けられている。
スロット16は、ポケット15からウェブWへの塗布液14の流路であり、ポケット15と同様にスロットダイ13の幅方向にその断面形状をもち、ウェブ側に位置する開口部16aは、一般に、図示しない幅規制板のようなものを用いて、概ね塗布幅と同じ長さの幅になるように調整する。このスロット16のスロット先端における、バックアップロール11のウェブ走行方向の接線とのなす角は、30°以上90°以下が好ましい。
スロット16の開口部16aが位置するスロットダイ13の先端リップ17は先細り状に形成されており、その先端はランドと呼ばれる平坦部18とされている。このランド18であって、スロット16に対してウェブWの進行方向の上流側を上流側リップランド18a、下流側を下流側リップランド18bと称する。
図3は、スロットダイ13の断面形状の一例を従来のものと比較して示すもので、(A)は本発明のスロットダイ13を示し、(B)は従来のスロットダイ30を示している。従来のスロットダイ30では、上流側リップランド31aと下流側リップランド31bのウェブとの距離は等しい。なお、符号32はポケット、33はスロットを示している。これに対して、本発明のスロットダイ13では、下流側リップランド長さILOが短くされており、これによって、湿潤膜厚が20μm以下の塗布を精度良くおこなうことができる。
上流側リップランド18aのランド長さIUPは特に限定はされないが、500μm〜1mmの範囲で好ましく用いられる。下流側リップランド18bのランド長さILOは30μm以上100μm以下であり、好ましくは30μm以上80μm以下、さらに好ましくは30μm以上60μm以下である。下流側リップのランド長さILOが30μmよりも短い場合は、先端リップのエッジあるいはランドが欠けやすく、塗膜にスジが発生しやすくなり、結果的には塗布が不可能になる。また、下流側の濡れ線位置の設定が困難になり、塗布液が下流側で広がりやすくなるという問題も発生する。この下流側での塗布液の濡れ広がりは、濡れ線の不均一化を意味し、塗布面上にスジなどの不良形状を招くという問題につながることが従来より知られている。一方、下流側リップのランド長さILOが100μmよりも長い場合は、ビードそのものを形成することができないために、薄層塗布を行うことは不可能である。
さらに、下流側リップランド18bは、上流側リップランド18aよりもウェブWに近接したオーバーバイト形状であり、このため減圧度を下げることができて薄膜塗布に適したビード形成が可能となる。下流側リップランド18bと上流側リップランド18aのウェブWとの距離の差(以下、オーバーバイト長さLOと称する)は30μm以上120μm以下が好ましく、さらに好ましくは30μm以上100μm以下、もっとも好ましくは30μm以上80μm以下である。スロットダイ13がオーバーバイト形状のとき、先端リップ17とウェブWの隙間GLとは、下流側リップランド18bとウェブWの隙間を示す。
図4は、塗布工程のスロットダイ及びその周辺を示す斜視図である。ウェブWの進行方向側とは反対側に、ビード14aに対して十分な減圧調整を行えるよう、接触しない位置に減圧チャンバー40を設置する。減圧チャンバー40は、その作動効率を保持するためのバックプレート40aとサイドプレート40bを備えており、バックプレート40aとウェブWの間、サイドプレート40bとウェブWの間にはそれぞれ隙間GB 、GS が存在する。図5及び図6は、近接している減圧チャンバー40とウェブWを示す断面図である。サイドプレートとバックプレートは図5のようにチャンバー本体と一体のものであってもよいし、図6のように適宜隙間を変えられるようにチャンバーにネジ40cなどで留められている構造でもよい。いかなる構造でも、バックプレート40aとウェブWの間、サイドプレート40bとウェブWの間に実際にあいている部分を、それぞれ隙間GB、GS と定義する。減圧チャンバー40のバックプレート40aとウェブWとの隙間GB とは、減圧チャンバー40を図4のようにウェブW及びスロットダイ13の下方に設置した場合、バックプレート40aの最上端からウェブWまでの隙間を示す。
バックプレート40aとウェブWとの隙間GB をスロットダイ13の先端リップ17とウェブWとの隙間GLよりも大きくして設置するのが好ましく、これによりバックアップロール11の偏心に起因するビード近傍の減圧度変化を抑制することができる。例えば、スロットダイ13の先端リップ17とウェブWとの隙間GLが30μm以上100μm以下のとき、バックプレート40aとウェブWの間の隙間GB は100μm以上500μm以下が好ましい。
{材質、精度}
前記ウェブの進行方向側の先端リップのウェブ走行方向における長さは、長いほどビード形成に不利であり、この長さがスロットダイ幅方向における任意の個所間でばらつくと、かすかな外乱によりビードが不安定になる。したがって、この長さをスロットダイ幅方向における変動幅が20μm以内とすることが好ましい。
また、スロットダイの先端リップの材質については、ステンレス鋼などのような材質を用いるとダイ加工の段階でだれてしまい、前記のようにスロットダイ先端リップのウェブ走行方向における長さを30〜100μmの範囲にしても、先端リップの精度を満足できない。したがって、高い加工精度を維持するためには、特許第2817053号公報に記載されているような超硬材質のものを用いることが重要である。具体的には、スロットダイの少なくとも先端リップを、平均粒径5μm以下の炭化物結晶を結合してなる超硬合金にすることが好ましい。超硬合金としては、タングステンカーバイド(以下、WCと称す)などの炭化物結晶粒子をコバルトなどの結合金属によって結合したものなどがあり、結合金属としては他にチタン、タンタル、ニオブ及びこれらの混合金属を用いることも出来る。WC結晶の平均粒径としては、粒径3μm以下がさらに好ましい。
高精度な塗布を実現するためには、先端リップのウェブ進行方向側のランドの前記長さ及びウェブとの隙間のスロットダイ幅方向のばらつきも重要な因子となる。この二つの因子の組み合わせ、つまり隙間の変動幅をある程度抑えられる範囲内の真直度を達成することが望ましい。好ましくは、前記隙間のスロットダイ幅方向における変動幅が5μm以下になるように先端リップとバックアップロールの真直度を出す。
{塗布速度}
上記の様なバックアップロール及び先端リップの精度を達成することにより、本発明で好ましく用いられる塗布方式は高速塗布時における膜厚の安定性が高い。さらに、この塗布方式は前計量方式であるために高速塗布時でも安定した膜厚の確保が容易である。本発明における光学フィルム、特に反射防止フィルムの様な低塗布量の塗布液に対して、この塗布方式は高速で膜厚安定性良く塗布が可能である。他の塗布方式でも塗布は可能であるが、ディップコート法は液受け槽中の塗布液振動が不可避であり、段状のムラが発生しやすい。リバースロールコート法では、塗布に関連するロールの偏芯やたわみにより段状のムラが発生しやすい。また、これらの塗布方式は後計量方式であるため、安定した膜厚の確保が困難である。上記塗布方法を用い、30m/分以上で塗布することが生産性の面から好ましい。
{ウエット塗布量}
ハードコート層(あるいは防眩層)を形成する際には、基材フィルム上に直接又は他の層を介してウエット塗布膜厚として6〜30μmの範囲で前記塗液を塗布するのが好ましく、乾燥ムラ防止の観点からさらに3〜20μmの範囲がより好ましい。また、低屈折率層を形成する際には、ハードコート層上に直接、或いは他の層を介してウエット塗布膜厚として1〜10μmの範囲で塗布組成物を塗布するのが好ましく、2〜5μmの範囲で塗布されるのがより好ましい。
<乾燥>
本特許の製造方法における乾燥工程は、少なくとも2つの乾燥工程からなる。塗工液を塗布後に乾燥風で乾燥する第1の乾燥工程では、塗膜表面上における乾燥風の最大風速が1m/秒以上、好ましくは2m/秒以上30m/秒以下、さらに好ましくは3m/秒以上20m/秒以下である。1m/秒未満では、支持体の巾方向で乾燥速度の違いが顕著になって乾燥ムラが発生したり、乾燥時間が長く必要になり、生産性を落としてしまう。風速が高すぎると、風圧により塗布液が流動することがある。乾燥風の向きは、特に制限されないが、ここでの風速は、塗膜表面上10mmにおいて、塗膜及び支持体の進行方向に水平な方向の風成分を風速計にて測定した値である。
なお、風速の最小値は、0.1m/秒以上であることが好ましい。
乾燥風の温度は、通常、室温〜200℃程度、好ましくは室温〜150℃、更に好ましくは、室温〜100℃の範囲である。
また、溶剤の乾燥速度を制御することも重要であり、0.3g/m2・秒以上であることが好ましく、より好ましくは、0.4g/m2・秒以上であり、更に好ましくは0.5g/m2・秒以上である。
尚、溶剤の乾燥速度は、搬送される支持体上の塗工液の膜厚を測定し、その膜厚の変化から塗工液中の溶剤の揮発量を算出し(具体的には式:{膜厚変化[μm]×比重[−]}/膜厚変化所要時間(s),1μm厚みは密度1000kg/m3 の場合に1g/m2に相当)、単位時間における単位面積あたりの溶剤の揮発量[g/m2・s]を乾燥速度とした。
乾燥風の設備としては、第1の乾燥工程のゾーン内に、乾燥風の給排気の為の給気孔と排気孔を有していることが好ましい。給気孔は主に塗布膜面上、乾燥ゾーンの上部に設けることが好ましく、排気孔は乾燥ゾーンの上部、下部、側部のいずれに設けてもよい。
給気設備の形態として、金属板に複数の給気孔を設けたものや、金網を通して乾燥風を吹き付けるもの、または、ある間隔で複数の給気ノズルを設けたものなどが挙げられる。
また、塗布面から蒸発する溶剤蒸気を利用してガス濃度を上げる方法や、事前に調整した一定のガス濃度の空気を循環させる方法などによって、乾燥させてもよい。
さらに、電熱ヒーター、赤外ヒーター、加熱ロールなどを併用することもできる。
第2の乾燥工程では、第1の乾燥工程のゾーン内温度より50℃以上高い温度のゾーン内温度で乾燥する。その温度差は、60℃以上が好ましく、70℃以上がさらに好ましい。
乾燥する設備は特に限定されず、乾燥風、電熱ヒーター、赤外ヒーター、加熱ロールなどが挙げられ、その中でも乾燥風が好ましい。
但し、塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。例えば、紫外線硬化樹脂と併用される市販の光ラジカル発生剤のなかには120℃の温風中で数分以内にその数10%前後が揮発してしまうものもあり、また、単官能、2官能のアクリレートモノマー等は100℃の温風中で揮発が進行するものもある。そのような場合には、前記のように各層の塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。
<硬化>
溶剤の乾燥ゾーンの後に、ウェブで電離放射線および/または熱により各塗膜を硬化させるゾーンを通過させ、塗膜を硬化する。電離放射線は、紫外線、電子線、γ線等で、化合物を活性化して架橋硬化させることができれば制限なく使用できるが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は10mJ/cm2以上が好ましく、更に好ましくは、50mJ/cm2〜10000mJ/cm2であり、特に好ましくは、50mJ/cm2〜2000mJ/cm2である。その際、ウェブの幅方向の照射量分布は中央の最大照射量に対して両端まで含めて50〜100%の分布が好ましく、80〜100%の分布がより好ましい。
紫外線照射は、被膜層を構成する複数の層(中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層)それぞれに対して1層設ける毎に照射してもよいし、積層後照射してもよい。あるいはこれらを組み合わせて照射してもよい。生産性の点から、多層を積層後、紫外線を照射することが好ましい。
また、光学フィルムがハードコート層と該層上に低屈折率層を有する構成の場合、ハードコート層の硬化率(100−残存官能基含率)が100%未満のある値となった場合、その上に低屈折率層を設けて電離放射線および/または熱により低屈折率層を硬化した際に下層のハードコート層の硬化率が低屈折率層を設ける前よりも高くなると、ハードコート層と低屈折率層との間の密着性が改良され、好ましい。
また、電子線も同様に使用できる。電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
上記電離放射線で架橋反応、又は、重合反応により各層を形成する場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度や耐薬品性に優れた層を形成することができる。
好ましくは酸素濃度が6体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
(偏光板)
本発明の偏光板は、偏光膜およびその両側を挟持する二枚の保護フィルムからなる。一方の保護フィルムとして、本発明の光学フィルムを用いることができる。他方の保護フィルムは、通常のセルロースアセテートフィルムを用いてもよいが、上述の溶液製膜法で製造され、且つ10〜100%の延伸倍率でロールフィルム形態における巾方向に延伸したセルロースアセテートフィルムを用いることが好ましい。
更には、本発明の偏光板において、光学フィルムに対して他方の保護フィルムが液晶性化合物からなる光学異方性層を有する光学補償フィルムであることが好ましい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
光学フィルムの透明支持体やセルロースアセテートフィルムの遅相軸と偏光膜の透過軸とは、実質的に平行になるように配置する。
偏光板の生産性には保護フィルムの透湿性が重要である。偏光膜と保護フィルムは水系接着剤で貼り合わせられており、この接着剤溶剤は保護フィルム中を拡散することで、乾燥される。保護フィルムの透湿性が高ければ、高いほど乾燥は早くなり、生産性は向上するが、高くなりすぎると、液晶表示装置の使用環境(高湿下)により、水分が偏光膜中に入ることで偏光能が低下する。
保護フィルムの透湿性は、透明支持体やポリマーフィルム(および重合性液晶化合物)の厚み、自由体積、親疎水性、等により決定される。
本発明の光学フィルムを偏光板の保護フィルムとして用いる場合、透湿性は100〜1000g/m2・24hrsであることが好ましく、300〜700g/m2・24hrsであることが更に好ましい。
透明支持体の厚みは、製膜の場合、リップ流量とラインスピード、あるいは、延伸、圧縮により調整することができる。使用する主素材により透湿性が異なるので、厚み調整により好ましい範囲にすることが可能である。
透明支持体の自由体積は、製膜の場合、乾燥温度と時間により調整することができる。この場合もまた、使用する主素材により透湿性が異なるので、自由体積調整により好ましい範囲にすることが可能である。
透明支持体の親疎水性は、添加剤により調整することが出来る。上記自由体積中に親水的添加剤を添加することで透湿性は高くなり、逆に疎水性添加剤を添加することで透湿性を低くすることができる。
上記透湿性を独立に制御することにより、光学補償能を有する偏光板を安価に高い生産性で製造することが可能となる。
(光学補償フィルム)
本発明の偏光板は、偏光膜の両面を挟持する保護フィルムのうち、一方の保護フィルムに上記本発明の光学フィルムを有することが好ましく、他方の保護フィルムは光学異方性層を有する光学補償フィルムであることが好ましい。
光学補償フィルムの光学異方性層に用いられる液晶化合物は、棒状液晶でも、ディスコティック液晶でもよく、またそれらが高分子液晶、もしくは低分子液晶、さらには、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含む。液晶性化合物として最も好ましいのは、ディスコティック液晶である。
棒状液晶の好ましい例としては、特開2000−304932号公報に記載のものが挙げられる。
ディスコティック液晶の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics Lett.A、78巻、82頁(1990年)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。
上記ディスコティック液晶は、一般的にこれらを分子中心の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示す。ただし、分子自身が負の一軸性を有し、一定の配向を付与できるものであれば上記記載に限定されるものではない。
また、本発明において、光学異方性層中のディスコティック構造単位を有する化合物とは、光学異方性層中で最終的にできた化合物がディスコティック化合物である必要はなく、例えば、前記低分子ディスコティック液晶が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。上記ディスコティック液晶の好ましい例は特開平8−50206号公報に記載されている。
光学補償フィルムの光学異方層は、ディスコティック構造単位を有する化合物からなる層であって、そしてディスコティック構造単位の円盤面が、透明支持体面(即ち、保護フィルム表面)に対して傾き、且つ該ディスコティック構造単位の円盤面と透明支持体面(即ち、保護フィルム表面)とのなす角度が、光学異方層の深さ方向に変化していることが好ましい。
ディスコティック構造単位の面の角度(傾斜角)は、一般に、光学異方層の深さ方向でかつ光学異方層の底面からの距離の増加と共に増加または減少している。上記傾斜角は、距離の増加と共に増加することが好ましい。さらに、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、及び増加及び減少を含む間欠的変化等を挙げることができる。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。傾斜角は、変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していることが好ましい。さらに、傾斜角は全体として増加していることが好ましく、特に連続的に変化することが好ましい。
光学異方層は、一般にディスコティック化合物及び他の化合物を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱し、その後配向状態(ディスコティックネマチック相)を維持して冷却することにより得られる。あるいは、光学異方層は、ディスコティック化合物及び他の化合物(さらに、例えば重合性モノマー、光重合開始剤)を溶剤に溶解した溶液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いでディスコティックネマチック相形成温度まで加熱したのち重合させ(UV光の照射等により)、さらに冷却することにより得られる。本発明に用いるディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマチック液晶相−固相転移温度としては、70〜300℃が好ましく、特に70〜170℃が好ましい。
支持体側のディスコティック単位の傾斜角は、一般にディスコティック化合物あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)のディスコティック単位の傾斜角は、一般にディスコティック化合物あるいはディスコティック化合物とともに使用する他の化合物
(例、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマー)を選択することにより調整することができる。さらに、傾斜角の変化の程度も上記選択により調整することができる。
上記可塑剤、界面活性剤及び重合性モノマーとしては、ディスコティック化合物と相溶性を有し、液晶性ディスコティック化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しない限り、どのような化合物も使用することができる。これらの中で、重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する化合物)が好ましい。上記化合物は、ディスコティック化合物に対して一般に1〜50質量%(好ましくは5〜30質量%)の量にて使用される。さらに、好ましい重合性モノマーの例としては、多官能アクリレートが挙げられる。官能基の数は3官能以上が好ましく、4官能以上がさらに好ましい。最も好ましいのは6官能モノマーである。6官能モノマーの好ましい例としては、ジペンタエリストリトールヘキサアクリレートが挙げられる。また、これら官能基数の異なる多官能モノマーを混合して使用することも可能である。
上記ポリマーとしては、ディスコティック化合物と相溶性を有し、液晶性ディスコティック化合物に傾斜角の変化を与えられる限り、どのようなポリマーでも使用することができる。ポリマー例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。上記ポリマーは、液晶性ディスコティック化合物の配向を阻害しないように、ディスコティック化合物に対して一般に0.1〜10質量%(好ましくは0.1〜8質量%、特に0.1〜5質量%)の量にて使用される。
本発明では、光学異方性層は、保護フィルム(例えば、セルロースアセテートフィルム)などの上に設けられた配向膜上に形成されたディスコティック液晶からなり、配向膜が架橋されたポリマーからなるラビング処理された膜であることが好ましい。
(配向膜)
本発明で光学異方性層の液晶性化合物の配向を調整するために設ける配向膜は、架橋された2種のポリマーからなる層であることが好ましい。2種のうち少なくとも1種に、それ自体架橋可能なポリマー、あるいは架橋剤により架橋されるポリマー、のいずれかを使用することが好ましい。上記配向膜は、官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入したものを、光、熱、pH変化等により、ポリマー間で反応させて形成するか、あるいは、反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてポリマー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋することにより形成することができる。
このような架橋は、通常上記ポリマーまたはポリマーと架橋剤の混合物を含む塗布液を、透明支持体上に塗布したのち、加熱等を行なうことにより実施されるが、最終商品の段階で耐久性が確保できればよいので、配向膜を支持体上に塗設した後から、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で架橋させる処理を行なってもよい。配向膜上に形成される光学異方性層がディスコティック化合物で形成される場合、ディスコティック化合物の配向性を考えると、該化合物を配向させたのちに、充分架橋を行なうことも好ましい。すなわち、支持体上に、ポリマー及び該ポリマーを架橋することができる架橋剤を含む塗布液を塗布した場合、加熱乾燥した後(一般に架橋が行なわれるが、加熱温度が低い場合にはディスコティックネマチック相形成温度に加熱された時にさらに架橋が進む)、ラビング処理を行なって配向膜を形成し、次いでこの配向膜上に円盤状構造単位を有する化合物を含む塗布液を塗布し、ディスコティックネマチック相形成温度以上に加熱した後、冷却して光学異方層を形成する。
本発明で配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。勿論両方可能なポリマーもある。上記ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート、ゼラチン等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、さらにゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
上記ポリマーの中で、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールが好ましく、重合度の異なるポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが最も好ましい。
ポリビニルアルコールとしては、例えば鹸化度70〜100%のものであり、一般に鹸化度80〜100%のものであり、より好ましくは鹸化度85〜95%のものである。重合度としては、100〜3000の範囲が好ましい。変性ポリビニルアルコールとしては、共重合変性したもの(変性基として、例えば、COONa、Si(OX)4、N(CH33・Cl、C919COO、SO3、Na、C1225等が導入されている)、連鎖移動により変性したもの(変性基として、例えば、COONa、SH、C1225等が導入されている)、ブロック重合による変性をしたもの(変性基として、例えば、COOH、CONH2、COOR(R:炭素原子数が1〜20のアルキル基)、C65等が導入されている)等のポリビニルアルコールの変性物を挙げることができる。これらの中で、鹸化度80〜100%の未変性乃至変性ポリビニルアルコールが好ましく、鹸化度85〜95%の未変性ないしアルキルチオ変性ポリビニルアルコールがより好ましい。
これら変性ポリマーの合成方法、可視吸収スペクトル測定、および導入率の決定方法等は、特開平8−338913号公報に詳しい記載がある。
上記ポリビニルアルコール等のポリマーと共に使用される架橋剤の具体例として、下記のものを挙げることができるが、これらは上記水溶性ポリマー、特にポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール(上記特定の変性物も含む)、と併用する場合に好ましい。例えば、アルデヒド類(例、ホルムアルデヒド、グリオキザール及びグルタルアルデヒド)、N−メチロール化合物(例、ジメチロール尿素及びメチロールジメチルヒダントイン)、ジオキサン誘導体(例、2,3−ジヒドロキシジオキサン)、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物(例、カルベニウム、2−ナフレンスルホナート、1,1−ビスピロリジノ−1−クロロピリジニウム及び1−モルホリノカルボニル−3−
(スルホナトアミノメチル))、活性ビニル化合物(例、1、3、5−トリアクロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビス(ビニルスルホン)メタン及びN,N’−メチレンビス−[β−(ビニルスルホニル)プロピオンアミド])、活性ハロゲン化合物(例、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジン)、イソオキサゾール類、及びジアルデヒド澱粉、などを挙げることができる。これらは、単独または組合せて用いることができる。生産性を考慮した場合、反応活性の高いアルデヒド類、とりわけグルタルアルデヒドの使用が好ましい。
架橋剤としては、特に限定はなく、添加量は、耐湿性に関しては、多く添加した方が良化傾向にある。しかし、配向膜としての配向能が、ポリマーに対して50質量%以上添加した場合に低下することから、0.1〜20質量%が好ましく、特に0.5〜15質量%が好ましい。この場合、配向膜は、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含むこともあるが、その架橋剤の量は、配向膜中に1.0質量%以下であることが好ましく、特に0.5質量%以下であることが好ましい。配向膜中に1.0質量を超える量で架橋剤が含まれていると、充分な耐久性が得られない。即ち、液晶表示装置に使用した場合、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合に、レチキュレーションが発生することがある。
本発明における配向膜は、配向膜形成材料である上記ポリマーおよび架橋剤を含む塗布液を、透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥し(架橋させ)、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なってよい。そして、前記のポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のあるメタノール等の有機溶媒と水の混合溶媒とすることが好ましく、その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が一般的であり、0:100〜91:9であることが好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、さらには光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。塗布方法としては、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。特にE型塗布法が好ましい。また、膜厚は0.1〜10μmが好ましい。
加熱乾燥は20℃ないし110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成させるためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができる。好ましくは5分間〜30分間である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、架橋剤にグルタルアルデヒドを使用した場合は、pHは4.5〜5.5が好ましく、5が特に好ましい。
配向膜は、透明支持体上、または透明支持体と配向膜を密着し得る下塗り層を介して設けられる。下塗り層は、透明支持体と配向膜との組み合わせにおいて、両者の密着性を向上できるものであれば、特に限定されない。
配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。配向膜は、その上に設けられる液晶性ディスコティック化合物の配向方向を規定するように機能する。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行なうことにより実施される。
(光学異方性層を塗設する透明支持体)
光学異方性層を設ける透明支持体は、セルロースアセテートフィルムが好ましく、光学的に一軸性でも二軸性であってもよい。
光学異方性層を塗設する透明支持体は、それ自身が光学的に重要な役割を果たすため、透明支持体のRe(λ)が0〜200nmであり、そして、Rth(λ)が70〜400nmに調節されることが好ましい。
液晶表示装置に二枚の光学的異方性セルロースアセテートフィルムを使用する場合、フィルムのRth(λ)は70〜250nmであることが好ましい。
液晶表示装置に一枚の光学的異方性セルロースアセテートフィルムを使用する場合、フィルムのRth(λ)は150〜400nmであることが好ましい。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。
尚、本明細書では特に断りのない限り、(λ)は波長590nmで測定した値を示す。
(液晶表示装置)
本発明の光学フィルム、偏光板は、液晶表示装置等の画像表示装置に有利に用いることができ、ディスプレイの最表層に用いることが好ましい。
液晶表示装置は、液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板を有し、液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。さらに、光学異方性層が、液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置されるか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置されることもある。
液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモードまたはECBモードであることが好ましい。VAモードあるいはIPSモードが更に好ましい。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、さらに60〜120゜にねじれ配向している。
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of Tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルであり、米国特許第4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードと呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
IPSモードの液晶セルは、ネマチック液晶に横電界をかけてスイッチングする方式であり、詳しくはProc.IDRC(Asia Display ’95), p.577−580及び同p.707−710に記載されている。
ECBモードの液晶セルは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向している。ECBモードは、最も単純な構造を有する液晶表示モードの一つであって、例えば特開平5−203946号公報に詳細が記載されている。
本発明を、以下の実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
尚、本明細書において「部」とは「質量部」を示すものである。
(ハードコート層用塗布液Aの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して防眩性ハードコート層塗布液Aとした。
(ハードコート層用塗布液A組成)
KAYARAD DPHA 28.4質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製)
イルガキュア184 1.3質量部
(光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
KBM−5103 5.2質量部
(シランカップリング剤:信越化学工業(株)製)
CAB−531−1 0.50質量部
(分子量40,000のセルロースアセテートブチレート:イーストマンケミカル(株)製)
平均粒径3.5μmの架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子 9質量部
(共重合組成比=50/50、屈折率1.536:綜研化学(株)製)
メチルイソブチルケトン 61質量部
(ハードコート層用塗布液Bの調製)
ハードコート塗布液Aに、更に本明細書記載のフッ素系界面活性剤(FP−149)0.05質量部を添加、攪拌して、防眩性ハードコート層塗布液Bとした。
(ハードコート層用塗布液Cの調製)
ハードコート塗布液Aに含まれるメチルイソブチルケトン61質量部のうち、6質量部をプロピレングリコールに置き換え、防眩性ハードコート層塗布液Cとした。
(ハードコート層用塗布液Dの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して防眩性ハードコート層塗布液Dとした。
(ハードコート層用塗布液D組成)
KAYARAD PET−30 50質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製)
イルガキュア184 2.5質量部
(光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
KBM−5103 6.2質量部
(シランカップリング剤:信越化学工業(株)製)
平均粒子径3.5μmの架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子 2質量部
(屈折率1.55 : 綜研化学(株)製)
平均粒子径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子 3質量部
(屈折率1.60 : 綜研化学(株)製)
本明細書記載のフッ素系界面活性剤(FP−149) 0.05質量部
トルエン 50質量部
シクロヘキサノン 6.6質量部
(ハードコート層用塗布液Eの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液Eとした。
(ハードコート層用塗布液E組成)
デソライトZ7404 100質量部
(ジルコニア微粒子含有ハードコート組成液:固形分濃度60質量%、ジルコニア微粒子含量70質量%対固形分、平均粒子径約20nm、溶剤組成MIBK:MEK=9:1、JSR(株)製)
KAYARAD DPHA 31質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製)
KBM−5103 10質量部
(シランカップリング剤:信越化学工業(株)製)
KE−P150 8.9質量部
(1.5μmシリカ粒子:日本触媒(株)製)
MXS−300 3.4質量部
(3.0μm架橋PMMA粒子:綜研化学(株)製)
メチルエチルケトン(MEK) 29質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK) 13質量部
なお、上記1.5μmシリカ粒子は平均粒径1.5μmのシリカ粒子を意味し、3.0μm架橋PMMA粒子は平均粒径3.0μmの架橋ポリメチルメタクリレート粒子を意味する。これら粒子は、透光性粒子である。
(ハードコート層用塗布液Fの調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液Fとした。
(ハードコート層用塗布液F組成)
KAYARAD DPCA−20 27.5質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製)
MEK−ST 50.0質量部
(シリカ微粒子分散物:日産化学工業(株)製)
KBM−5103 5.0質量部
(シランカップリング剤:信越化学工業(株)製)
イルガキュア184 2.5質量部
(光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
SX−130H 2.0質量部
(1.3μm架橋ポリスチレン粒子:綜研化学(株)製)
メチルエチルケトン(MEK) 10.0質量部
シクロヘキサノン 5.0質量部
(中屈折率層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して中屈折率層用塗布液を調製した。
(中屈折率層用塗布液組成)
二酸化チタン微粒子分散液 100質量部
KAYARAD DPHA 66質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製)
イルガキュア907 3.5質量部
(光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
カヤキュアーDETX−S 1.2質量部
(光増感剤:日本化薬(株)製)
メチルエチルケトン(MEK) 543質量部
シクロヘキサノン 2103質量部
(高屈折率層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してその後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、高屈折率層用塗布液を調製した。
(高屈折率層用塗布液組成)
二酸化チタン微粒子分散液 100質量部
KAYARAD DPHA 8.2質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製)
イルガキュア907 0.68質量部
(光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
カヤキュアーDETX−S 0.22質量部
(光増感剤:日本化薬(株)製)
メチルエチルケトン(MEK) 78質量部
シクロヘキサノン 243質量部
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、メチルエチルケトン120質量部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103(商品名);信越化学工業(株)製)100質量部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3質量部を加え混合したのち、イオン交換水30質量部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1800であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7gおよび過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は0.53MPa(5.4kg/cm2)であった。この温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm2)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次にこのポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.421であった。
Figure 2007083228
(中空シリカ微粒子分散液の調製)
中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子の屈折率1.31)500部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−5103)30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5部加え混合した後に、イオン交換水を9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8部を添加し、中空シリカ微粒子分散液を得た。得られた中空シリカ微粒子分散液の固形分濃度は18質量%、溶剤乾燥後の屈折率は1.31であった。
(低屈折率層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、その後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
(低屈折率層用塗布液組成)
KAYARAD DPHA 1.4質量部
(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製)
パーフルオロオレフィン共重合体(1) 5.6質量部
中空シリカ微粒子分散液 20.0質量部
RMS−033 0.7質量部
(反応性シリコーン:Gelest(株)製)
光重合開始剤a 0.2質量部
ゾル液a 6.2質量部
メチルエチルケトン(MEK) 306.9質量部
シクロヘキサノン 9.0質量部
光重合開始剤a
Figure 2007083228
(実施例1〜5、比較例1〜4)
支持体として80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製、支持体幅:1340mm)をロール形態で巻き出して、支持体上に、下記の装置構成および塗布条件で示されるダイコート法によってハードコート層用塗布液Aを塗布し、表1記載の条件にて、第一の乾燥工程、次いで第二の乾燥工程を経て、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量50mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmのハードコート層を形成し、巻き取った。
塗布基本条件:スロットダイ13は、上流側リップランド長IUPが0.5mm、下流側リップランド長ILOが50μmで,スロット16の開口部のウェブ走行方向における長さが150μm、スロット16の長さが50mmのものを使用した。上流側リップランド18aとウェブWの隙間を、下流側リップランド18bとウェブWの隙間よりも50μm長くし(以下、オーバーバイト長さ50μmと称する)、下流側リップランド18bとウェブWとの隙間GLを50μmに設定した。また、減圧チャンバー40のサイドプレート40bとウェブWとの隙間GS 、及びバックプレート40aとウェブWとの隙間GBはともに200μmとした。
それぞれの塗布液の液物性に合わせて、ハードコート層:ハードコート層用塗布液A、B、C、Dの場合:塗布速度=30m/分、ウエット塗布量=17.5ml/m2で、ハードコート層用塗布液Eの場合:塗布速度=20m/分、ウエット塗布量=9ml/m2で、ハードコート層用塗布液Fの場合:塗布速度=40m/分、ウエット塗布量=21ml/m2で、中屈折率層:塗布速度=25m/分、ウエット塗布量=3.5ml/m2で、高屈折率層:塗布速度=25m/分、ウエット塗布量=3.5ml/m2で、低屈折率層:塗布速度=40m/分、ウエット塗布量=5.0ml/m2で塗布を行った。なお、塗布幅:1300mm、有効幅:1280mmとした。
(実施例6〜8)
実施例1と同様に、ハードコート層用塗布液Bを塗布し、表1記載の条件にて、第一の乾燥工程、次いで第二の乾燥工程を経て、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmのハードコート層を形成し、巻き取った。
(実施例9)
実施例1と同様に、ハードコート層用塗布液Cを塗布し、表1記載の条件にて、第一の乾燥工程、次いで第二の乾燥工程を経て、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmのハードコート層を形成し、巻き取った。
(実施例10、比較例5)
実施例1と同様に、ハードコート層用塗布液Dを塗布し、表1記載の条件にて、第一の乾燥工程、次いで第二の乾燥工程を経て、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmのハードコート層を形成し、巻き取った。
(実施例11、比較例6)
実施例1と同様に、ハードコート層用塗布液Eを塗布し、表1記載の条件にて、第一の乾燥工程、次いで第二の乾燥工程を経て、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ3.7μmのハードコート層を形成し、巻き取った。
(実施例12、比較例7)
実施例1と同様に、ハードコート層用塗布液Fを塗布し、表1記載の条件にて、第一の乾燥工程、次いで第二の乾燥工程を経て、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmのハードコート層を形成し、巻き取った。
(実施例13)
実施例6で作製したハードコート層を塗設した支持体を再び巻き出して、低屈折率層用塗布液を上記の基本条件で塗布し、90℃で60秒乾燥の後、窒素パージにより酸素濃度0.1%の雰囲気下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス
(株)製)を用いて、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、巻き取り、反射防止フィルムを作製した。
(実施例14)
実施11で作製したハードコート層を塗設した支持体を再び巻き出して、実施例13と同様にして、反射防止フィルムを作製した。
(実施例15)
実施例12で作製したハードコート層を塗設した支持体を巻き出して、中屈折率層用塗布液を上記の基本条件で塗布し、90℃で60秒乾燥の後、窒素パージにより酸素濃度0.1%の雰囲気下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ67nmの中屈折率層を形成し、巻き取った。
中屈折率層の屈折率は1.65であった。
中屈折率層の上に、高屈折率層用塗布液を上記の基本条件で塗布し、90℃で60秒乾燥の後、窒素パージにより酸素濃度0.1%の雰囲気下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ107nmの高屈折率層を形成し、巻き取った。
高屈折率層の屈折率は1.93であった。
高屈折率層の上に、低屈折率層用塗布液を上記の基本条件で塗布し、90℃で60秒乾燥の後、窒素パージにより酸素濃度0.1%の雰囲気下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、巻き取った。このようにして、ハードコート層上に三層反射防止層を形成した。
(実施例16)
支持体として幅を1500mmに変更した80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルムを使用した以外は、実施例13と同様にして反射防止フィルムを作製した。
(実施例17)
支持体のTAC−TD80Uに含まれるTinuvin327(UV吸収剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)をTinuvin326(UV吸収剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)に置き換えて作製したセルローストリアセテートフィルムを用いて、実施例13と同様にして反射防止フィルムを作製した。
(実施例18)
ハードコート層用塗布液Aの平均粒径3.5μmの架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子の代わりに凝集性シリカ(日本シリカ製、二次粒子径1.0μmの凝集性シリカ)を使用する以外は実施例1と同様の条件で第一の乾燥工程、次いで第二の乾燥工程を経て、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ2.4μmのハードコート層を形成し、巻き取った。
(反射防止フィルムの鹸化処理)
1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.005mol/lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製した反射防止フィルムを上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
このようにして、鹸化処理済み反射防止フィルムを作製した。
(反射防止フィルム付き偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。上記鹸化処理済みの反射防止フィルムに、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、反射防止フィルムの支持体側(トリアセチルセルロース)が偏光膜側となるように偏光膜の片側に貼り付けた。また、光学補償層を有する視野角拡大フィルム(ワイドビューフィルムスーパーエース、富士写真フイルム(株)製)を鹸化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜のもう一方の側に貼り付けた。このようにして偏光板を作製した。
(測定・評価方法)
得られた被膜シート、反射防止フィルム及び偏光板について、以下の項目の評価を行った。結果を表1に示す。
(1)風速測定
アネモマスター風速計(日本カノマックス社製、MODEL6112)にて、塗膜表面上10mmで、塗膜及び支持体の進行方向に水平な方向の風成分を風速計にて測定した値である。尚、第一の乾燥工程内の塗布面上において、場所によって風速がばらつく為、最大値を測定値とした。
(2)乾燥速度測定
(株)チノー製のIR膜厚計(IRM−V)により、搬送される支持体上の塗工液の膜厚を測定し、その膜厚の変化から塗工液中の溶剤の揮発量を算出し(具体的には式:{膜厚変化[μm]×比重[−]}/膜厚変化所要時間(s),1μm厚みは密度1000kg/m3 の場合に1g/m2 に相当)、単位時間における単位面積あたりの溶剤の揮発量[g/m2 ・s]を乾燥速度とした。なお、測定に際しては、溶剤の揮発とともに乾燥速度が変化し、また乾燥温度の変化によっても乾燥速度が変化するため、10秒毎に塗工液の膜厚を測定し、乾燥速度を算出した。その結果を元にし、各工程内での中心値を示す。
(3)外観面状評価
VAモード液晶セルを使用した液晶表示装置(LC−22GD3、シャープ(株)製)、IPSモードモード液晶セルを使用した液晶表示装置(KLV−23HR1、ソニー(株)製)に設けられている視認側の偏光板を剥がし、代わりに、偏光板の透過軸が製品に貼られていた偏光板と一致するようにプレーン偏光板(HLCS−5618、サンリッツ(株)製)を貼り、更に粘着剤を介して、ハードコート層あるいは反射防止層が視認側になるように、実施例1〜18、比較例1〜7のフィルムを貼り付けた。
作成した液晶表示装置について、三波長蛍光灯下、1000luxの明室にて、液晶表示装置を黒表示にして、種々の視角から目視により以下の基準で外観面状を評価した。C以上の評価であれば実用環境下で乾燥ムラは視認されないため、C以上を合格とした。
A:乾燥ムラが全くない
B:乾燥ムラが微かに見える
C:弱い乾燥ムラがある
D:中程度の乾燥ムラがある
E:強い乾燥ムラがある
Figure 2007083228

表1に示された結果から以下のことが明らかである。第一の乾燥工程において乾燥風速の最大値が1m/秒以上であり、第二の乾燥工程において、第一の乾燥工程のゾーン内温度より50℃以上高い温度で乾燥を行うことにより、風ムラの良好な均一な面状が得られた。更に、沸点が30℃以上異なる2種類の溶剤を用いること、または、フッ素系界面活性剤を用いることにより、極めて高度なレベルで風ムラが改良された塗工フィルムが得られた。
また、明室で目視にて反射防止性の評価を行ったところ、ハードコート層上に反射防止層を設けたフィルムは、いずれも良好であった。
さらに、実施例16〜17の様に、支持体幅、支持体に含まれるUV吸収剤を変更しても、同様の性能が得られた。
また、平均粒径3.5μmの架橋ポリ(アクリル−スチレン)粒子の代わりに凝集性シリカ(日本シリカ製、二次粒子径1.0μmの凝集性シリカ)を使用した実施例18のハードコート層の乾燥ムラはCレベルであり、風ムラレベルは良好であった。
本発明の被膜シートの製造方法に用いられる塗工装置の概念図である。 本発明に用いられるスロットダイ13を有するコーター10の断面図である。 (A)は本発明に用いられるスロットダイ13の断面形状を示し、(B)は従来のスロットダイ30の断面形状を示す図である。 本発明に用いられる塗布工程のスロットダイ13及びその周辺を示す斜視図である。 近接している減圧チャンバー40とウェブWの関係を示す断面図である。(バックプレート40aはチャンバー40本体と一体) 近接している減圧チャンバー40とウェブWの関係を示す断面図である。(バックプレート40aがチャンバー40にネジ40c留め)
符号の説明
1 送り出しロール
2 支持体
3 塗工ロール
4 ダイコーター
5 第一の乾燥工程
6 第二の乾燥工程
7 硬化設備
8 巻き取りロール
10 コーター
11 バックアップロール
W ウェブ
13 スロットダイ
14 塗布液
14a ビード
14b 塗膜
15 ポケット
16 スロット
17 先端リップ
18 ランド
18a 上流側リップランド
18b 下流側リップランド
UP 上流側リップランド18aのランド長さ
LO 下流側リップランド18bのランド長さ
LO オーバーバイト長さ(下流側リップランド18bと上流側リップランド18aのウェブWとの距離の差)
L 先端リップ17とウェブWの隙間(下流側リップランド18bとウェブWの隙間)
30 従来のスロットダイ
31a 上流側リップランド
31b 下流側リップランド
32 ポケット
33 スロット
40 減圧チャンバー
40a バックプレート
40b サイドプレート
40c ネジ
B バックプレート40aとウェブWの間の隙間
S サイドプレート40bとウェブWの間の隙間

Claims (14)

  1. 支持体上に透光性樹脂及び溶剤を含有する塗工液を塗工する工程、次いで、塗工された塗工液を乾燥する第1の乾燥工程及び第2の乾燥工程を含む被膜シートの製造方法であって、
    第1の乾燥工程が、塗膜層表面上の最大風速が1m/秒以上である乾燥ゾーンで行なわれ、且つ
    第2の乾燥工程が、第1の乾燥工程が行なわれるゾーン内温度より50℃以上高い乾燥ゾーンで行なわれることを特徴とする被膜シートの製造方法。
  2. 前記第1の乾燥工程における溶剤の乾燥速度が、0.3g/m2・秒以上であることを特徴とする請求項1に記載の被膜シートの製造方法。
  3. 前記塗工液が少なくとも2種類の溶剤を含み、2種類の溶剤の沸点が30℃以上異なることを特徴とする請求項1または2に記載の被膜シートの製造方法。
  4. 前記支持体を30m/分以上で搬送しながら塗工および乾燥工程を行なうことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被膜シートの製造方法。
  5. 前記支持体が、長尺のロール状であり、巾1.4〜4mであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の被膜シートの製造方法。
  6. 前記塗工液が界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の被膜シートの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により形成されたことを特徴とする被膜シート。
  8. 請求項7に記載の被膜シートからなる光学フィルムであって、支持体上に形成された被膜層の少なくとも一層が光学機能層であることを特徴とする光学フィルム。
  9. 前記光学機能層が、防眩層であることを特徴とする請求項7に記載の光学フィルム。
  10. 前記光学機能層が、透光性樹脂と異なる屈折率の透光性粒子を含むことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の光学フィルム。
  11. 前記光学機能層の上に、光学機能層より屈折率の低い低屈折率層を有することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の光学フィルム。
  12. 偏光膜の両面を保護フィルムで挟持した偏光板であって、一方の保護フィルムに請求項8〜11のいずれかに記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
  13. 請求項8〜11のいずれかに記載の光学フィルムまたは請求項12に記載の偏光板をディスプレイの最表層に用いたことを特徴とする液晶表示装置。
  14. 液晶セルがVAモードあるいはIPSモードであることを特徴とする請求項13に記載の液晶表示装置。
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