JP2006207427A - バルブタイミング調整装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 位相ばらつきを防止するバルブタイミング調整装置を提供する。
【解決手段】 駆動軸及び従動軸2に連動して共通の回転中心O周りに回転する第一及び第二回転部材11,16、第一回転部材11と回り対偶により連繋する第一腕部材20、並びに第二回転部材16及び第一腕部材20と回り対偶により連繋する第二腕部材21から位相変化機構10を構成し、腕部材20,21同士がなす回り対偶22の運動を制御手段で制御することにより回転部材11,16間の相対回転位相を調整する。このような構成において、第一腕部材20が第一回転部材11及び第二腕部材21となす回り対偶24,22間の距離L1と、第二腕部材21が第二回転部材16及び第一腕部材20となす回り対偶26,22間の距離L1の比L1/L2を、0.5〜2の範囲内に設定する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、内燃機関(以下、エンジンという)において吸気弁及び排気弁の少なくとも一方を開閉する従動軸へ駆動軸の駆動トルクを伝達する伝達系に設けられ、当該少なくとも一方の弁の開閉タイミング(以下、バルブタイミングという)を調整するバルブタイミング調整装置に関する。
バルブタイミング調整装置の一種として、駆動軸に連動して回転するスプロケットと、従動軸に連動して回転するレバー部材とを、リンクアームで連繋してなる位相変化機構を備えた装置が特許文献1に開示されている。この装置において位相変化機構は、作動機構により制御されるリンクアームの運動をスプロケットに対するレバー部材の相対回転運動に変換することによって、駆動軸と従動軸との相対回転位相を変化させるように構成されている。
特開2002−227616号公報
しかし、特許文献1に開示の位相変化機構では、リンクアームに設けた可動操作部材に保持されるガイドボールがスプロケットの摺動用溝に対して相対滑り可能に嵌合している。それ故、エンジンの変動トルクといった外力が位相変化機構へ作用すると、リンクアームの可動操作部材が摺動用溝の長手方向へ傾斜するようにして当該溝内を相対滑りすることがある。この場合、可動操作部材が相対滑りした分、駆動軸と従動軸との相対回転位相にばらつきが生じてしまう。
そこで本発明者は、駆動軸及び従動軸に連動して共通の回転中心周りに回転する第一及び第二回転部材、第一回転部材と回り対偶により連繋する第一腕部材、並びに第二回転部材及び第一腕部材と回り対偶により連繋する第二腕部材を有する位相変化機構の開発を手掛けてきた。この位相変化機構によれば、構成部材同士が回り対偶によって連繋されるため、エンジンの変動トルクといった外力が位相変化機構へ作用しても、回り対偶をなす二部材の一方が他方に対して相対滑りすることは実質的に生じない。したがって、第一回転部材と第二回転部材との相対回転位相、ひいては駆動軸と従動軸との相対回転位相について、そうした相対滑りによるばらつきが抑制されることとなる。しかしながら、本発明者がさらに開発を進めた結果、第一腕部材と第二腕部材とがなす回り対偶の運動を制御して第一回転部材と第二回転部材との相対回転位相を調整するようにした場合、次の問題が発生することが判明した。
その問題とは、第一腕部材が第一回転部材及び第二腕部材となす回り対偶間の距離と、第二腕部材が第二回転部材及び第一腕部材となす回り対偶間の距離との一方が他方よりも過大となると、それら腕部材同士がなす回り対偶の変位量に対して回転部材間の相対回転位相の変動量が増大するというものである。即ち、腕部材同士がなす回り対偶の変位量に対して回転部材間の相対回転位相が敏感に変動することとなるため、特に当該回り対偶の運動を制御する手段がエンジンのトルク変動の影響を受け易い場合、回転部材間の相対回転位相、ひいては駆動軸及び従動軸の相対回転位相のばらつきが生じ易くなる。
また、各腕部材の連繋形態や形状によっては、それら各腕部材へ作用する力が増大したり、各腕部材を幅方向へ曲げるような曲げ応力が発生したりすることも判明した。こうした作用力の増大や曲げ応力の発生は耐久性の低下をもたらすものであり、解決すべき問題である。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、位相ばらつきを防止するバルブタイミング調整装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、耐久性を向上するバルブタイミング調整装置を提供することにある。
まずここで、第一腕部材と第一回転部材とがなす回り対偶を第一対偶とし、第二腕部材と第二回転部材とがなす回り対偶を第二対偶とし、第一腕部材と第二腕部材とがなす回り対偶を第三対偶とする。
請求項1に記載の発明によると、第一対偶と第三対偶との間の距離L1と、第二対偶と第三対偶との間の距離L2との比L1/L2は、0.5〜2の範囲内に設定される。これにより、第一腕部材と第二腕部材とがなす第三対偶の変位量に対して第一回転部材と第二回転部材との相対回転位相の変動量が小さくなる。即ち、第三対偶の変位量に対する回転部材間の相対回転位相の変動が抑制されるため、第三対偶の運動を制御する制御手段がエンジンのトルク変動の影響を受け易い場合であっても、回転部材間の相対回転位相、ひいては駆動軸と従動軸との相対回転位相にばらつきが発生することを防止することができる。
請求項2に記載の発明によると、第一対偶と第三対偶との間の距離L1と、第二対偶と第三対偶との間の距離L2との比L1/L2は、略1に設定される。これにより、距離L1,L2が互いに略等しい腕部材同士がなす第三対偶の変位量に対して、回転部材間の相対回転位相の変動量が十分に小さくなる。したがって、駆動軸と従動軸との相対回転位相についてばらつきの防止効果が向上する。
請求項3に記載の発明によると、第一腕部材において第三対偶よりも第一対偶側となる部分と、第二腕部材において第三対偶よりも第二対偶側となる部分とは、各回転部材に共通の回転中心と第三対偶との間を結ぶ径方向軸線の両側にそれぞれ配置される。これにより、第一腕部材の第三対偶よりも第一対偶側部分と、第二腕部材の第三対偶よりも第二対偶側部分とを上記径方向軸線に対して同じ側に配置する場合に比べ、少なくとも一方の腕部材へ作用する力を低減することができる。したがって、位相変化機構の耐久性を高めることができる。
請求項4に記載の発明によると、第一対偶と第三対偶との間の距離L1と、第二対偶と第三対偶との間の距離L2との比L1/L2は、0.5〜2の範囲内に設定される。したがって、請求項1に記載の発明と同様の原理によって駆動軸と従動軸との相対回転位相のばらつきを防止しつつ、位相変化機構の耐久性を高めることができる。
請求項5に記載の発明によると、第一対偶と第三対偶との間の距離L1と、第二対偶と第三対偶との間の距離L2との比L1/L2は、略1に設定される。これにより、各腕部材へ作用する力を共に低減することができるので、位相変化機構において各腕部材の耐久性を確実に高めることができる。しかも、請求項2に記載の発明と同様の原理により、駆動軸と従動軸との相対回転位相についてばらつきの防止効果を向上させることができる。
請求項6に記載の発明によると、第一腕部材及び第二腕部材の少なくとも一方である注目腕部材において幅方向両側の外形線は、第一対偶及び第二対偶のうち当該注目腕部材に対応する注目対偶と第三対偶との間を結ぶ仮想直線の両側をそれぞれ延伸する。これにより、注目腕部材を幅方向へ曲げるような曲げ応力の発生を抑制することができるので、位相変化機構の耐久性を高めることができる。
請求項7に記載の発明によると、注目腕部材は、それに対応する注目対偶と第三対偶との間の全域にわたって、それら対偶間を結ぶ仮想直線上に肉部を有するので、注目腕部材における曲げ応力の発生抑制効果が向上する。
請求項8に記載の発明によると、制御手段において運動変換機構は電動モータの回転運動を第三対偶の運動へ変換するので、電動モータの回転運動を制御することによって第三対偶の運動を制御することが可能になる。したがって、高精度に電気制御可能な電動モータを用いることにより、回転部材間の相対回転位相、ひいては駆動軸と従動軸との相対回転位相について調整精度を高めることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図2は、本発明の一実施形態によるバルブタイミング調整装置1を示している。このバルブタイミング調整装置1は、車両のエンジンにおいて、駆動軸としてのクランクシャフトの駆動トルクを従動軸としてのカムシャフト2へ伝達する伝達系に設けられている。バルブタイミング調整装置1は、クランクシャフトとカムシャフト2との相対回転位相を変化させることにより、エンジンの吸気弁又は排気弁のバルブタイミングを調整する。
バルブタイミング調整装置1は、位相変化機構10、電動モータ30及び運動変換機構40を備えている。
図1及び図2に示すように位相変化機構10は、スプロケット11、出力軸16、腕部材20,21を組み合わせて構成されており、要素11,16間の相対回転位相、ひいてはクランクシャフトとカムシャフトとの相対回転位相を変化調整する。尚、図1及び後に説明する図4及び図6では、断面を表すハッチングを省略している。
スプロケット11は、支持筒部12、支持筒部12より大径の入力筒部13、支持筒部12と入力筒部13との間を繋ぐリンク部14を一体に有している。支持筒部12は出力軸16に対して同軸配置され、当該出力軸16の外周壁によって支持されている。これによりスプロケット11は、回転中心O周りに回転可能且つ出力軸16に対して相対回転可能となっている。入力筒部13に形成された複数の歯13aと、クランクシャフトに形成された複数の歯との間には、チェーンベルトが掛け渡される。したがって、クランクシャフトの駆動トルクがチェーンベルトを通じて入力筒部13に入力されるときには、スプロケット11が図1の時計方向へ回転中心O周りに回転する。即ちスプロケット11は、クランクシャフトと連動して回転する第一回転部材に相当する。
出力軸16は、固定部17及びリンク部18を一体に有している。固定部17の一端部は、カムシャフト2の一端部に同軸固定されている。これにより出力軸16は、カムシャフト2と共に回転中心O周りに回転可能且つスプロケット11に対して相対回転可能となっている。即ち出力軸16は、カムシャフト2に連動して回転する第二回転部材に相当する。
腕部材20,21は、入力筒部13に固定されたカバー15とリンク部14とによって、リンク部18及び運動変換機構40の各要素41,44,45,47,49と共に挟持されている。第一腕部材20はリンク部14と回り対偶により連繋し、第二腕部材21はリンク部18及び第一腕部材20のそれぞれと回り対偶により連繋している。この連繋により出力軸16は、クランクシャフトの回転に伴ってスプロケット11と同一方向へ回転する。また、上記連繋により出力軸16は、スプロケット11に対して進角する方向である進角方向Xと、スプロケット11に対して遅角する方向である遅角方向Yへ相対回転可能となっている。腕部材20,21は、さらに運動変換機構40の可動部材44と回り対偶により連繋している。これにより位相変化機構10では、腕部材20,21がなす回り対偶22が可動部材44と連動し、当該回り対偶22の運動がスプロケット11と出力軸16との相対回転運動へ変換されることとなる。
図2及び図3に示す電動モータ30は、ハウジング31、軸受32、回転軸33、ステータ34を組み合わせて構成されたブラシレスモータである。
ハウジング31は、ステー35を介してエンジンに固定されている。ハウジング31には、二つの軸受32及びステータ34が収容固定されている。
回転軸33はスプロケット11及び出力軸16に対して同軸配置され、各軸受32によって軸方向の二箇所を支持されていると共に軸継手36を介して運動変換機構40の入力軸46に連結固定されている。これにより回転軸33は、入力軸46と共に回転中心O周りに回転可能となっている。回転軸33は、その本体33aから径方向外側へ突出する円形平板状のロータ部33bを有している。ロータ部33bには、複数の永久磁石37が回転中心O周りに等間隔に埋設されている。
ステータ34はロータ部33bの外周側に配置されており、コア38及びコイル39を有している。コア38は複数枚の鉄片を積層して形成され、回転中心O周りに等間隔に並ぶ形態で複数設けられている。各コア38には、図示しない制御回路に電気接続されたコイル39が巻装されている。ここで制御回路は、各永久磁石37へ作用する回転磁界を各コイル39の励磁によって形成するように、それら各コイル39への通電を制御する。したがって、制御回路によって各コイル39が通電されるときには、回転磁界の方向に応じた方向の制御トルクが回転軸33へ付与されることとなる。
図2に示すように運動変換機構40は、案内部材41、可動部材44、リングギア45、入力軸46、遊星ギア47、ベアリング48、伝達部材49を組み合わせて構成されている。
図2及び図4に示すように、案内部材41は出力軸16と同軸の円形平板状に形成され、当該出力軸16の外周壁によって支持されている。これにより案内部材41は、回転中心O周りに回転可能且つスプロケット11に対して方向X,Yへ相対回転可能となっている。案内部材41において回転中心Oを挟む二箇所には、可動部材44を案内する案内通路42が長孔状に形成されている。各案内通路42は案内部材41を板厚方向へ貫通し、回転中心Oを対称軸として互いに180°の回転対称となるように設けられている。各案内通路42は、案内部材41の径方向軸線に対して傾斜して直線状に延伸し且つ当該延伸方向において回転中心Oからの距離が変化する形状とされている。
可動部材44は、案内通路42に対応して二つ設けられている。各可動部材44は円柱状に形成され、回転中心Oに対して偏心する形態でリンク部14と伝達部材49との間に挟持されている。各可動部材44の一端部は、それぞれ対応する案内通路42に滑り回り対偶により嵌合連繋している。各可動部材44の他端部側は、それぞれ対応する腕部材20,21に回り対偶により嵌合連繋している。
図2及び図5に示すようにリングギア45は、歯先曲面が歯底曲面の内周側にある内歯車で構成され、入力筒部13の内周壁に同軸固定されている。これによりリングギア45は、スプロケット11と共に回転中心O周りに回転可能となっている。
入力軸46は、電動モータ30の回転軸33に連結固定されることにより回転中心Oに対して偏心している。尚、図5においてPは、入力軸46の中心を表している。
遊星ギア47は、歯先曲面が歯底曲面の外周側にある外歯車で構成されている。遊星ギア47の歯先曲面の曲率半径はリングギア45の歯底曲面の曲率半径よりも小さく、遊星ギア47の歯数はリングギア45の歯数よりも1つ少ない。遊星ギア47はリングギア45の内周側に配置され、複数の歯の一部をリングギア45の複数の歯の一部に噛み合わせている。これにより遊星ギア47は、リングギア45を太陽ギアとして遊星運動可能となっている。遊星ギア47の中心孔には、入力軸46がベアリング48を介して挿入されている。これにより、入力軸46に連結固定された回転軸33がスプロケット11に対して方向X,Yへ相対回転可能となっている。
伝達部材49は案内部材41と同軸の円形平板状に形成され、当該案内部材41を挟んで腕部材20,21とは反対側に配置されている。伝達部材49は案内部材41に嵌合固定されており、当該案内部材41と共に回転中心O周りに回転可能且つ且つスプロケット11に対して方向X,Yへ相対回転可能となっている。伝達部材49の複数箇所には、円筒孔状の係合孔49aが形成されている。各係合孔49aは伝達部材49を板厚方向へ貫通し、回転中心O周りに等間隔に設けられている。伝達部材49を挟んで案内部材41とは反対側に配置されている遊星ギア47には、各係合孔49aと向かい合う複数箇所に円柱状の係合突起47aが形成されている。各係合突起47aは入力軸46の中心P周りに等間隔に設けられており、それぞれ向かい合う係合孔49a内に突入している。
このような運動変換機構40では、回転軸33がスプロケット11に対して相対回転しないときには、クランクシャフトの回転に伴って遊星ギア47がリングギア45との噛合位置を保ちつつスプロケット11及び入力軸46と共に回転する。すると、係合突起47aが係合孔49aを回転方向へ押圧するため、伝達部材49及び案内部材41がスプロケット11に対する相対回転位相を保って回転する。このとき可動部材44は、案内通路42に対して相対滑りせず、回転中心Oからの距離を保った状態で案内部材41と共に回転する。
一方、制御トルクの増大等により回転軸33がスプロケット11に対して遅角方向Yへ相対回転するときには、遊星運動によって遊星ギア47が入力軸46に対して図5の時計方向へ相対回転しつつリングギア45との噛合位置を変化させる。すると、係合突起47aが係合孔49aを回転方向へ押圧する力が増大するため、伝達部材49及び案内部材41がスプロケット11に対して進角方向Xへ相対回転する。このとき可動部材44は、案内通路42に対して回転中心Oから遠い側へ相対滑りし、回転中心Oからの距離を拡大させる。
また一方、制御トルクの増大等により回転軸33がスプロケット11に対して進角方向Xへ相対回転するときには、遊星運動によって遊星ギア47が入力軸46に対して図5の反時計方向へ相対回転しつつリングギア45との噛合位置を変化させる。すると、係合突起47aが回転方向とは反対方向へ係合孔49aを押圧するようになるため、伝達部材49及び案内部材41がスプロケット11に対して遅角方向Yへ相対回転する。このとき可動部材44は、案内通路42に対して回転中心Oに近い側へ相対滑りし、回転中心Oからの距離を縮小させる。
このように運動変換機構40は、電動モータ30の回転運動を可動部材44の運動へ変換する。したがって、電動モータ30及び運動変換機構40は、可動部材44に連動した回り対偶22の運動を制御する制御手段に相当する。
次に、位相変化機構10について図1、図2、図6及び図7を参照しつつ説明する。ここで図1は、スプロケット11に対する出力軸16の相対回転位相が最遅角位相となった状態を示し、図6は、スプロケット11に対する出力軸16の回転位相が最進角位相となった状態を示している。
位相変化機構10において、第一腕部材20はアーチ形の平板状に形成され、回転中心Oを挟む両側にそれぞれ一つずつ配置されている。リンク部14は出力軸16と同軸の円形平板状に形成されており、当該リンク部14において回転中心Oを挟む二箇所には、それぞれ対応する第一腕部材20の一端部が当接し軸部材23を介して連繋している。ここで軸部材23は回転中心Oに対して偏心する円柱状であり、これによりリンク部14と各第一腕部材20とが回り対偶24(以下、第一対偶24という)をなしている。
第二腕部材21はアーチ形の平板状に形成され、回転中心Oを挟む両側にそれぞれ一つずつ配置されている。リンク部18は、固定部17の回転中心Oを挟む二箇所から径方向外側へ突出する矩形平板状に形成されており、それら各リンク部18において突出方向の中間部には、それぞれ対応する第二腕部材21の一端部が当接し軸部材25を介して連繋している。ここで軸部材25は回転中心Oに対して偏心する円柱状であり、これにより各リンク部18と各第二腕部材21とが回り対偶26(以下、第二対偶26という)をなしている。そして本実施形態では、各第二対偶26の中心と回転中心Oとの間の距離が等しくされている。
各第二腕部材21の回り対偶26とは反対側端部は、それぞれ対応する第一腕部材20の回り対偶24とは反対側端部に当接し可動部材44を介して連繋している。ここで可動部材44は、上述の如く回転中心Oに対して偏心する円柱状であり、これにより各第一腕部材20と各第二腕部材21とが回り対偶22(以下、第三対偶22という)をなしている。
このような位相変化機構10では、回転中心Oと可動部材44との間の距離が保持されるときには、第一〜第三対偶24,26,22の各位置が変化しない。その結果、出力軸16がスプロケット11に対する相対回転位相を保ちつつカムシャフト2と共に回転するので、クランクシャフトに対するカムシャフト2の相対回転位相が一定に保たれる。
一方、例えば図6から図1へ移行するとき等、回転中心Oと可動部材44との間の距離が拡大するときには、第三対偶22の位置が回転中心Oから離間するに伴い、第一腕部材20がリンク部14及び第二腕部材21に対して、それぞれ軸部材23及び可動部材44の中心周りに相対回転する。それと同時に、第二腕部材21がリンク部18に対して軸部材25の中心周りに相対回転し、第二対偶26の位置が第一対偶24の位置に対して遅角方向Yへ接近する。その結果、出力軸16がスプロケット11に対して遅角方向Yへ相対回転するので、クランクシャフトに対するカムシャフト2の相対回転位相が遅角する。
また一方、例えば図1から図6へ移行するとき等、回転中心Oと可動部材44との間の距離が縮小するときには、第三対偶22の位置が回転中心Oへ接近するに伴い、第一腕部材20がリンク部14及び第二腕部材21に対して、それぞれ軸部材23及び可動部材44の中心周りに相対回転する。それと同時に、第二腕部材21がリンク部18に対して軸部材25の中心周りに相対回転し、第二対偶26の位置が第一対偶24の位置から進角方向Xへ離間する。その結果、出力軸16がスプロケット11に対して進角方向Xへ相対回転するので、クランクシャフトに対するカムシャフト2の相対回転位相が進角する。
以下、本実施形態による位相変化機構10の特徴部分について詳細に説明する。
(第一の特徴)
図8に示すように、第一対偶24の中心と回転中心Oとを結ぶ径方向軸線と、第二対偶26の中心と回転中心Oとを結ぶ径方向軸線とがなす角θは、可動部材44の変位量と一致する第三対偶22の変位量Δrに対してΔθ分、変動する。ここで角θは回転要素11,16間の相対回転位相と一致するものであり、故に変動量Δθは第三対偶22の変位量Δrに対する当該相対回転位相の変動量であると考えることができる。したがって、単位変位量Δrに対する変動量Δθが小さくなるほど、回転要素11,16間の相対回転位相にばらつきが少なくなるのである。
このような知見の下、本発明者が鋭意検討した結果、第一腕部材20における対偶24,22の中心間距離L1と、第二腕部材21における対偶26,24の中心間距離L2との差が小さくなると、単位変位量Δrに対する変動量Δθも小さくなることが判明した。即ち図9に示すように、距離L1と距離L2との比L1/L2が0.5〜2の範囲内、望ましくは当該比が略1となるとき、単位変位量Δrに対する変動量Δθが低減することを発見したのである。したがって、本実施形態では、図1に示すように第一腕部材20と第二腕部材21とを略同一の形状に形成することにより、距離L1,L2の比L1/L2を0.5〜2の範囲内の略1に設定している。
(第二の特徴)
図10は、第一腕部材20において第三対偶22よりも第一対偶24側となる部分28と、第二腕部材21において第三対偶22よりも第二対偶26側となる部分29とを、回転中心Oと第三対偶22の中心との間を結ぶ径方向軸線Rに対して同じ側に配置した比較例を示している。この比較例では、可動部材44に掛かる負荷Fが図10のように各腕部材20,21へと分配されるため、特に第二腕部材21に大きな力が作用してしまう。そこで、本発明者が鋭意検討した結果、第一腕部材20の第三対偶22よりも第一対偶側部分28と、第二腕部材21の第三対偶22よりも第二対偶側部分29とを径方向軸線Rを挟む両側にそれぞれ配置すると、各腕部材20,21に作用する力が小さくなることが判明した。したがって、本実施形態では、図11に示すように各部分28,29を径方向軸線Rの両側に配置し、且つ上記第一の特徴を持たせたことにより、可動部材44に掛かる負荷Fが同図のように各腕部材20,21へと分配され、それら各腕部材20,21への作用力が共に低減されている。
(第三の特徴)
図12は、第一及び第二腕部材20,21について、第一及び第二対偶24,26のうち対応するものと第三対偶22との中心間を結ぶ仮想直線Sに対して大きく湾曲させ、当該仮想直線S上に空間部を存在させた比較例を示している。この比較例では、対偶24,26と対偶22とを通じて各腕部材20,21に力が作用した場合、各腕部材20,21の中央部分では、幅方向両側の外形線20a,21aの近傍に幅方向の曲げ応力が発生してしまう。そこで、本発明者が鋭意検討した結果、第一及び第二腕部材20,21について、図13に示すように幅方向両側の外形線20a,21aが仮想直線Sの両側をそれぞれ延びる形態とすると、当該外形線20a,21aに発生する曲げ応力が小さくなることが判明した。さらに、図13に示すように対偶24,26と対偶22との間の全域にわたって仮想直線S上に肉部が存在するようにする、即ち仮想直線S上に空間部が全く存在しないようにすると、曲げ応力の発生抑制効果が向上することも判明した。したがって、本実施形態では図14に示すように、第一及び第二腕部材20,21の幅方向両側の外形線20a,21aを仮想直線Sの両側において延伸させ、且つ対偶24,26と対偶22との間の全域にわたって仮想直線S上に肉部を存在させている。
以上説明した本実施形態によれば、上記第一の特徴により第三対偶22の単位変位量Δrに対して回転要素11,16間の相対回転位相の変動量Δθが小さくなる。それ故、エンジンのトルク変動に起因して可動部材44の位置、即ち第三対偶22の位置が変動することがあっても、回転要素11,16間の相対回転位相のばらつきが十分に防止される。
しかも本実施形態によれば、上記第二の特徴により各腕部材20,21に作用する力が小さくなると共に、上記第三の特徴により各腕部材20,21における曲げ応力の発生が抑制される。それ故、各腕部材20,21の耐久性が高められている。
ここまで本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定して解釈されるものではない。
例えば、第一及び第二腕部材20,21についての距離L1,L2の比L1/L2を、0.5〜2の範囲内において1以外の値に設定してもよい。
また、比L1/L2を0.5〜2の範囲内に設定した場合には、図15に示すように、各腕部材20,21の部分28,29を径方向軸線Rに対して同じ側に配置する、及び/又は、少なくとも一方の腕部材20,21を大きく湾曲させる等して仮想直線S上に空間部が存在するようにしてもよい。尚、ここで仮想直線S上に空間部が存在する構成としては、腕部材20,21の幅方向中間部に孔が設けられた構成であってもよい。
さらに、各腕部材20,21の部分28,29を径方向軸線Rの両側に配置した場合には、比L1/L2を0.5〜2の範囲外に設定する、及び/又は、少なくとも一方の腕部材20,21を大きく湾曲させる等して仮想直線S上に空間部が存在するようにしてもよい。尚、ここで仮想直線S上に空間部が存在する構成としては、腕部材20,21の幅方向中間部に孔が設けられた構成であってもよい。
またさらに、各腕部材20,21の外形線20a,21aを仮想直線Sの両側において延伸させた場合には、比L1/L2を0.5〜2の範囲外に設定する、及び/又は、各腕部材20,21の部分28,29を径方向軸線Rに対して同じ側に配置するようにしてもよい。
さらにまた、案内部材41の案内通路42の形状は、案内部材41の径方向軸線に対して傾斜して延伸し且つ当該延伸方向において回転中心Oからの距離が変化する形状であれば、上述した直線状以外、例えば円弧状、渦巻状等の曲線状や折れ線状であってもよい。また、案内通路42、可動部材44及び腕部材20,21の組の配設数については、適宜設定することができる。
加えて電動モータ30は、例えばブラシモータや、上述した構成とは異なる構成のブラシレスモータであってもよい。あるいは、クランクシャフトの駆動トルクを伝達されることにより回転するブレーキ部材並びにブレーキ部材を磁気吸引するソレノイドを有し、ソレノイドに磁気吸引されたブレーキ部材に生じる制動トルクを制御トルクとして用いるようにした装置を、電動モータ30の代わりに用いてもよい。
さらに加えて運動変換機構40は、上述した構成とは異なる構成、例えば要素45〜49を設けずに回転軸33を案内部材41と直接連結する構成であってもよい。
本発明の一実施形態を示す図であって、図2のI−I線断面図である。 本発明の一実施形態を示す図であって、図1のII−II線断面図である。 本発明の一実施形態を示す図であって、図2のIII−III線断面図である。 本発明の一実施形態を示す図であって、図2のIV−IV線断面図である。 本発明の一実施形態を示す図であって、図2のV−V線断面図である。 本発明の一実施形態の作動を説明するための図であって、図1に対応する断面図である。 本発明の一実施形態を示す図であって、図1のVII−VII線断面図である。 本発明の一実施形態の特徴部分を説明するための模式図である。 本発明の一実施形態の特徴部分を説明するための特性図である。 比較例を説明するための断面図である。 本発明の一実施形態の特徴部分を説明するための断面図である。 比較例を説明するための平面図である。 本発明の一実施形態の特徴部分を説明するための平面図である。 本発明の一実施形態の特徴部分を説明するための断面図である。 図1の変形例を示す断面図である。
符号の説明
1 バルブタイミング調整装置、2 カムシャフト(従動軸)、10 位相変化機構、11 スプロケット(第一回転部材)、14 リンク部、16 出力軸(第二回転部材)、18 リンク部、20 第一腕部材、20a 第一腕部材の外形線、21 第二腕部材、21a 第二腕部材の外形線、22 第三対偶、24 第一対偶、26 第二対偶、28 第一腕部材の第三対偶よりも第一対偶側部分、29 第二腕部材の第三対偶よりも第二対偶側部分、30 電動モータ(制御手段)、33 回転軸、40 運動変換機構(制御手段)、41 案内部材、42 案内通路、44 可動部材、L1 第一腕部材の第一及び第三対偶間の距離、L2 第二腕部材の第二及び第三対偶間の距離、O 回転中心、R 径方向軸線、S 仮想直線

Claims (8)

  1. 内燃機関において吸気弁及び排気弁の少なくとも一方の弁を開閉する従動軸へ駆動軸の駆動トルクを伝達する伝達系に設けられ、前記少なくとも一方の弁の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
    前記駆動軸に連動して回転する第一回転部材、前記従動軸に連動して前記第一回転部材と共通の回転中心周りに回転する第二回転部材、前記第一回転部材と回り対偶により連繋する第一腕部材、並びに前記第二回転部材及び前記第一腕部材と回り対偶により連繋する第二腕部材を有する位相変化機構と、
    前記第一腕部材と前記第二腕部材とがなす回り対偶の運動を制御することにより前記第一回転部材と前記第二回転部材との相対回転位相を調整する制御手段と、
    を備え、
    前記第一腕部材と前記第一回転部材とがなす回り対偶を第一対偶とし、前記第二腕部材と前記第二回転部材とがなす回り対偶を第二対偶とし、前記第一腕部材と前記第二腕部材とがなす回り対偶を第三対偶としたとき、
    前記第一対偶と前記第三対偶との間の距離L1と、前記第二対偶と前記第三対偶との間の距離L2との比L1/L2は、0.5〜2の範囲内に設定されることを特徴とするバルブタイミング調整装置。
  2. 前記比L1/L2は、略1に設定されることを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング調整装置。
  3. 内燃機関において吸気弁及び排気弁の少なくとも一方の弁を開閉する従動軸へ駆動軸の駆動トルクを伝達する伝達系に設けられ、前記少なくとも一方の弁の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
    前記駆動軸に連動して回転する第一回転部材、前記従動軸に連動して前記第一回転部材と共通の回転中心周りに回転する第二回転部材、前記第一回転部材と回り対偶により連繋する第一腕部材、並びに前記第二回転部材及び前記第一腕部材と回り対偶により連繋する第二腕部材を有する位相変化機構と、
    前記第一腕部材と前記第二腕部材とがなす回り対偶の運動を制御することにより前記第一回転部材と前記第二回転部材との相対回転位相を調整する制御手段と、
    を備え、
    前記第一腕部材と前記第一回転部材とがなす回り対偶を第一対偶とし、前記第二腕部材と前記第二回転部材とがなす回り対偶を第二対偶とし、前記第一腕部材と前記第二腕部材とがなす回り対偶を第三対偶としたとき、
    前記第一腕部材において前記第三対偶よりも前記第一対偶側となる部分と、前記第二腕部材において前記第三対偶よりも前記第二対偶側となる部分とは、前記回転中心と前記第三対偶との間を結ぶ径方向軸線の両側にそれぞれ配置されることを特徴とするバルブタイミング調整装置。
  4. 前記第一対偶と前記第三対偶との間の距離L1と、前記第二対偶と前記第三対偶との間の距離L2との比L1/L2は、0.5〜2の範囲内に設定されることを特徴とする請求項3に記載のバルブタイミング調整装置。
  5. 前記比L1/L2は、略1に設定されることを特徴とする請求項4に記載のバルブタイミング調整装置。
  6. 内燃機関において吸気弁及び排気弁の少なくとも一方の弁を開閉する従動軸へ駆動軸の駆動トルクを伝達する伝達系に設けられ、前記少なくとも一方の弁の開閉タイミングを調整するバルブタイミング調整装置であって、
    前記駆動軸に連動して回転する第一回転部材、前記従動軸に連動して前記第一回転部材と共通の回転中心周りに回転する第二回転部材、前記第一回転部材と回り対偶により連繋する第一腕部材、並びに前記第二回転部材及び前記第一腕部材と回り対偶により連繋する第二腕部材を有する位相変化機構と、
    前記第一腕部材と前記第二腕部材とがなす回り対偶の運動を制御することにより前記第一回転部材と前記第二回転部材との相対回転位相を調整する制御手段と、
    を備え、
    前記第一腕部材と前記第一回転部材とがなす回り対偶を第一対偶とし、前記第二腕部材と前記第二回転部材とがなす回り対偶を第二対偶とし、前記第一腕部材と前記第二腕部材とがなす回り対偶を第三対偶としたとき、
    前記第一腕部材及び前記第二腕部材の少なくとも一方である注目腕部材において幅方向両側の外形線は、前記第一対偶及び前記第二対偶のうち当該注目腕部材に対応する注目対偶と前記第三対偶との間を結ぶ仮想直線の両側をそれぞれ延伸することを特徴とするバルブタイミング調整装置。
  7. 前記注目腕部材は、前記注目対偶と前記第三対偶との間の全域にわたって前記仮想直線上に肉部を有することを特徴とする請求項6に記載のバルブタイミング調整装置。
  8. 前記制御手段は、電動モータ、並びに前記電動モータの回転運動を前記第三対偶の運動へ変換する運動変換機構を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置。
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