JP2006206536A - シクロアルキルアルキルエーテルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 固定床流通式反応器を用い、陽イオン交換樹脂の存在下に脂環式オレフィンとアルコール(1)とを付加反応させてシクロアルキルアルキルエーテルを製造する方法において、この付加反応の前に(a)前記陽イオン交換樹脂を水による湿潤状態で前記反応器に充填して触媒層を形成する工程、(b)前記触媒層にアルコール(2)を供給して水を置換除去する工程、(c)工程(b)の後の触媒層に不活性ガスを供給してアルコール(2)を置換除去する工程、からなる前処理工程を、(a)〜(c)の順番に行なうことを特徴とするシクロアルキルアルキルエーテルの製造方法を提供する。
【選択図】 なし
Description
(1)固定床流通式反応器を用い、陽イオン交換樹脂の存在下に脂環式オレフィンとアルコール(1)とを付加反応させてシクロアルキルアルキルエーテルを製造する方法において、この付加反応の前に
(a)前記陽イオン交換樹脂を水による湿潤状態で前記反応器に充填して触媒層を形成する工程、
(b)前記触媒層にアルコール(2)を供給して水を置換除去する工程、
(c)工程(b)の後の触媒層に不活性ガスを供給してアルコール(2)を置換除去する工程、
からなる前処理工程を、(a)〜(c)の順番に行なうことを特徴とするシクロアルキルアルキルエーテルの製造方法、
(2)前記前処理工程の温度よりも、5℃以上高い温度で脂環式オレフィンとアルコール(1)を付加反応させることを特徴とする上記に記載の製造方法、
(3)脂環式オレフィンがシクロペンテンであり、アルコール(1)がメタノールである上記に記載の製造方法、
を提供するものである。
(a)前記陽イオン交換樹脂を水による湿潤状態で前記反応器に充填して触媒層を形成する工程(以下、「工程(a)」と略す。)、
(b)前記触媒層にアルコール(2)を供給して水を置換除去する工程(以下、「工程(b)」と略す。)、
(c)工程(b)の後の触媒層に不活性ガスを供給してアルコール(2)を置換除去する工程(以下、「工程(c)」と略す。)、
からなる前処理を、(a)〜(c)の順番に行なうことを特徴とする。
本発明に用いる脂環式オレフィンは、脂肪族系の単環もしくは多環骨格を有し、かつ、これらの環骨格中に少なくとも1以上の炭素−炭素二重結合を有するものである。
上記環骨格は、好ましくはそれぞれ3〜10個の炭素で構成され、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、スルホン基及びシアノ基などの置換基を有していても良い。
上記範囲にすることで、本発明の効果がより一層顕著なものとなる。
触媒として使用する陽イオン交換樹脂は、微細な三次元網目構造の高分子基体に、陽イオンを交換可能な極性基を有する不溶性で多孔質の合成樹脂からなるものである。
付加反応は固定床流通式反応器を用い、反応器中に陽イオン交換樹脂を充填して触媒層を形成し、該触媒層に脂環式オレフィン及びアルコールを流通させることにより行なう。ここで、「触媒層」とは、固定床流通式反応器内に形成される、陽イオン交換樹脂の充填層をいい、陽イオン交換樹脂間の隙間は空間であっても良いし、アルコール等の液体又は気体で満たされていても良い。
なお、本発明において「固定床流通式反応器」とは、反応器内部に触媒層を有し、該触媒層に脂環式オレフィン及びアルコールを流通させることのできる全ての構造の反応器をいう。反応器の構造は特に限定されないが、管状の反応器が好ましい。管状の反応器としては、加熱装置を有する単管式反応器でも良いし、多管式熱交換型反応器でも良いが、反応熱の除熱効率の良い多管式熱交換型反応器が好ましい。
本発明においては、固定床流通式反応器を用い、陽イオン交換樹脂の存在下に脂環式オレフィンとアルコール(1)とを付加反応させるための前処理として
(a)前記陽イオン交換樹脂を水による湿潤状態で前記反応器に充填して触媒層を形成する工程、
(b)前記触媒層にアルコール(2)を供給して水を置換除去する工程、
(c)前記触媒層に不活性ガスを供給してアルコール(2)を置換除去する工程、
を行なうことが必須である。
工程(a)においては、陽イオン交換樹脂を水による湿潤状態で固定床流通式反応器に充填して触媒層を形成する。
陽イオン交換樹脂を湿潤させるための水は、陽イオン交換樹脂に悪影響を及ぼさず、かつ反応器材質との反応性が無ければ特に限定されないが、陽イオン交換樹脂中のプロトンの、金属陽イオンによるイオン交換を防止するために、陽イオン交換水または蒸留水を使用することが好ましい。触媒である陽イオン交換樹脂のプロトンが、金属陽イオンによりイオン交換されると、触媒活性が低下する恐れがある。
陽イオン交換樹脂を湿潤させる方法は特に限定されないが、湿潤状態で市販されている陽イオン交換樹脂をそのまま用いても良く、市販の陽イオン交換樹脂を水中に分散させて湿潤させても良い。
酸での前処理の方法として、例えば希塩酸、希硫酸等の希酸中に陽イオン交換樹脂を添加し、20〜100℃で数分〜数十時間放置又は撹拌する方法や、カラム中に充填した陽イオン交換樹脂をカラムの一方の側から溶出する液が酸性となるまで希酸を流通させる方法が挙げられる。さらに、上記カラムは、固定床流通式反応器自体であっても良く、その場合、工程(b)の前に固定床流通式反応器に上記希酸を流通させれば良い。酸で前処理したイオン交換樹脂は、蒸留水又は脱イオン水で十分に洗浄して過剰の酸を除去した後に使用するのが好ましい。
また、本発明において、「水による湿潤状態」とは、陽イオン交換樹脂に水が付着(陽イオン交換樹脂の細孔に存在している水も含む。)しており、付着している水の量の、陽イオン交換樹脂と水の合計量に対する割合(以下、「含水量」という。)で30重量%以上であることをいう。陽イオン交換樹脂の含水量は40重量%以上が好ましく、50重量%以上が特に好ましい。
工程(b)においては、工程(a)で形成した触媒層にアルコール(2)を供給して、付着している水をアルコール(2)に置換除去する。
固定床流通式反応器に充填された陽イオン交換樹脂の水を置換除去するアルコール(2)は、陽イオン交換樹脂に悪影響を与えず、かつ水と著しい反応を起こさなければ特に限定されないが、付加反応原料として用いるアルコール(1)として例示したものと同様のものが使用される。中でも、次工程における温度制御(用いるアルコールの種類によっては、触媒層にホットスポットが発生し、陽イオン交換樹脂の耐熱温度を超えてしまう場合がある。)の容易さ及び適度な沸点を有することから、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝の飽和アルコール、または炭素数3〜8のシクロアルキルアルコールが好ましく、炭素数1〜6の直鎖または分枝の飽和アルコールがより好ましく、メチルアルコールが特に好ましい。
なお、上記アルコール(2)として、付加反応原料として用いるアルコール(1)と同一のものを使用すれば、固定床流通式反応器出口の反応混合物に含まれる不純物の種類が少なくなるため、分離精製が容易となるメリットがある。
上記の範囲にすることで、本発明の効果がより一層向上する。
工程(c)においては、工程(b)においてアルコールによる水の置換除去を行なった触媒層に、不活性ガスを供給してアルコールを置換除去する。
不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス及び空気等が挙げられるが、窒素ガスが好ましい。
触媒層のアルコールを不活性ガスで置換除去する際の温度は、触媒である陽イオン交換樹脂の耐熱温度を越えない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは1〜180℃、より好ましくは5〜100℃、特に好ましくは10〜50℃の範囲である。
上記の範囲にすることで、本発明の効果がより一層向上する。
本発明においては、上記工程(a)〜(c)の前処理を行なった後、固定床流通式反応器に脂環式オレフィンとアルコールを供給して付加反応を開始する。
また、固定床流通式反応器を熱媒体により加熱して付加反応を行なう場合、反応開始時の熱媒体温度を50〜75℃に0.1hr以上保ち、その後80〜100℃に上昇させることにより、反応初期の急激な温度上昇を防止出来るため、本発明の効果がより一層顕著なものとなる。
また、前処理工程終了後に、脂環式オレフィンとアルコールを供給しながら付加反応温度まで昇温することにより、本発明の効果は一層顕著なものとなる。
分析機器:製品名Agilent 6850(Agilent社製)
カラム:キャピラリカラム 製品名HP−5 30m×0.25mmφ(日本ヒューレット・パッカード(株)製)
カラム温度:40℃(10分)、40℃→250℃(10℃/分)
注入口温度:200℃
検出器温度:300℃
キャリアーガス:He
検出器:FID
(2)シクロペンテン転化率(以下、「CPE転化率」と略す。)(%)は、(原料液1g中のシクロペンテン重量−反応液1g中のシクロペンテン重量)/(原料液1g中のシクロペンテン重量)×100で算出した。
(3)シクロペンチルメチルエーテル選択率(以下、「CPME選択率」と略す。)(%)は、(反応液1g中のシクロペンチルメチルエーテルモル数)/(原料液1g中のシクロペンテンモル数−反応液1g中のシクロペンテンモル数)×100で算出した。
(4)水分量の測定は、カールフィッシャー電量滴定法で、水分測定装置(製品名AQ−7 発生液:製品名アクアライト(RS−A)、対極液:製品名アクアライト(CN)、平沼産業(株)製)を用いて行なった。
1.前処理工程(a)(触媒層の形成)
蒸留水に市販のスチレン系陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、製品名DIAION RCP−160M、耐熱温度:120℃、含水量:53重量%)を分散させ十分膨潤させた後に、該イオン交換樹脂をメスシリンダーで計り取り、熱伝対及び熱媒循環用ジャケットを軸方向に備えた固定床流通式反応器(管状、内径57mm、SUS316製)に、空塔基準の触媒層容積が1275mlになるように充填した。その後該反応器に、原料供給用ポンプ、原料気化器、反応器出口ガス凝縮器、及び反応液採取用タンクを接続した。
前処理工程(a)終了後の固定床流通式反応器に、25℃、絶対圧力101kPaの条件下で、メタノールを34ml/分の通液速度で2.5時間導入し、触媒層の水をメタノールで置換除去した。
通液終了時に固定床流通式反応器出口から排出されるメタノールを採取し、水分量を測定したところ、水分含有量は0.25重量%であった。
前処理工程(b)終了後の固定床流通式反応器に、25℃、絶対圧力111kPaの条件下で、1245ml/分の供給速度で窒素ガスを1分間導入して、窒素ガスによるメタノールの置換除去を行なった。
前処理工程(c)終了後、反応器の熱媒温度を70℃まで上昇させた後に、気化器によって気化されたシクロペンテンとメチルアルコールの混合物(混合物中の水分含有量120重量ppm、混合モル比:シクロペンテン/メタノール=1.6/1)を、2.83L/分(標準状態での体積換算)の供給速度で固定床流通式反応器に供給し反応を開始した。このときの固定床流通式反応器内の最高温度は103℃であり、固定床流通式反応器入口の絶対圧力は133kPa、固定床流通式反応器出口の絶対圧力は101kPaであった。反応初期の発熱が終わった段階(反応開始から0.5hr後)で固定床流通式反応器の熱媒温度を90℃まで上昇させたところ、固定床流通式反応器内の最高温度は95℃であり、固定床流通式反応器入口圧力は116kPa、固定床流通式反応器出口圧力は常圧であった。更に5時間経過後に固定床流通式反応器出口より排出される反応液を採取し、GC分析を行ったところ、CPE転化率は14.4%、CPME選択率は93.7%であった。一連の操作の中で固定床流通式反応器内部温度は70〜103℃に保たれ、前処理工程の温度よりも30℃以上高かった。また、触媒の耐熱温度(120℃)を固定床流通式反応器内部温度が上回ることが無く、触媒の劣化による活性の低下は見られなかった。
実施例1と同じ市販のスチレン系陽イオン交換樹脂を真空乾燥機に入れ、圧力13.3Pa、温度70℃で10時間乾燥した後、デシケーターに入れ室温で1週間乾燥し、その後、60℃で乾燥窒素ガスを流通させ4時間乾燥してから室温に戻し、乾燥イオン交換樹脂(含水量2.1重量%)を得た。
次いで、実施例1と同じ固定床流通式反応器に、上記で得られた乾燥イオン交換樹脂を実施例1と同じ空塔基準の触媒層容積になるように充填した。その後該反応器に、原料供給用ポンプ、原料気化器、反応器出口ガス凝縮器、及び反応液採取用タンクを接続した。
固定床流通式反応器の熱媒温度を70℃まで上昇させた後に、気化器によって分子状となったシクロペンテンとメチルアルコールの混合物(混合モル比:シクロペンテン/メタノール=1.6/1)を2.83L/分(標準状態での体積換算)の供給速度で固定床流通式反応器に供給し反応を開始した。このときの固定床流通式反応器内の最高温度は130℃まで上昇し、触媒の耐熱温度(120℃)を上回った。反応初期の発熱が終わった段階で固定床流通式反応器の熱媒温度を90℃まで上昇させたところ、固定床流通式反応器内の最高温度は97℃であった。更に5時間経過後に固定床流通式反応器出口より排出される反応液を採取し、GC分析を行って反応成績を計算したところ、CPE転化率は9.4%、CPME選択率は93.2%であった。
Claims (3)
- 固定床流通式反応器を用い、陽イオン交換樹脂の存在下に脂環式オレフィンとアルコール(1)とを付加反応させてシクロアルキルアルキルエーテルを製造する方法において、この付加反応の前に
(a)前記陽イオン交換樹脂を水による湿潤状態で前記反応器に充填して触媒層を形成する工程、
(b)前記触媒層にアルコール(2)を供給して水を置換除去する工程、
(c)工程(b)の後の触媒層に不活性ガスを供給してアルコール(2)を置換除去する工程、
からなる前処理工程を、(a)〜(c)の順番に行なうことを特徴とするシクロアルキルアルキルエーテルの製造方法。 - 前記前処理工程の温度よりも、5℃以上高い温度で脂環式オレフィンとアルコール(1)を付加反応させることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 脂環式オレフィンがシクロペンテンであり、アルコール(1)がメタノールである請求項1に記載の製造方法。
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