JP2006190792A - 赤外発光ダイオード及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 赤外発光ダイオード1は、p型のAlx Ga1-x As(0.15≦x≦0.45)を含む少なくとも1層のp型クラッド層2と、p型のAly Ga1-y As(0≦y≦0.01)を含む活性層3と、n型のAlz Ga1-z As(0.15≦z≦0.45)を含む少なくとも1層のn型クラッド層4とを有し、活性層3の厚みは、2〜6μmであり、赤外線通信とリモコン操作通信との双方の赤外光源として使用できる。室温における発光ピーク波長を880〜890nmとすることができ、赤外線通信とリモコン操作用通信との双方への、高出力、高速応答可能な赤外光源として利用可能である。
【選択図】 図1
Description
例えば、赤外線通信に使用されるLEDとしては、大容量のデータ通信に対応するため、より高出力化、高速化が要求されるので、ダブルへテロ(DH)構造のLEDが使用されている。DH構造のLEDにおいて、活性層の厚みは薄いほど出力及び応答性に有利であり、通常1μm程度とされている。
特許文献1には、上記DH構造のLEDが開示されており、活性層へ添加する実効的不純物(ドーパント)としてゲルマニウム(Ge)を用い、活性層の厚みを0.5〜1.5μmとすることにより、高出力、高信頼性、かつ応答性の良いLEDが得られることが記載されている。
ここで、機器間の送受信に用いられる赤外通信の場合には、例えば、850〜900nmの赤外線が用いられ、リモコン操作通信の場合には、受光部の感度が高い波長帯である、例えば880〜940nmの赤外線が用いられている。従来はこれら2つの機能を兼ね備える場合、発光波長の異なる2種類のLEDを用意する必要があった。
しかしながら、特許文献1に記載されたDH構造LEDにおいては、その発光ピーク波長は800〜870nmであり、870nmより長波長のLEDが得られないという課題がある。
上記構成によれば、p型活性層の厚みを2〜6μmとすることにより、赤外線発光波長を所望の波長に制御して、赤外線通信とリモコン操作通信との双方の赤外光源として使用できる赤外発光ダイオードを提供することができる。
上記製造方法によれば、発光ピーク波長が880〜890nmであり、赤外線通信とリモコン操作用通信との両方の用途への高出力、高速応答ができる赤外発光ダイオードを、量産性よく、低コストで製造することができる。
また、本発明の赤外発光ダイオードの製造方法によれば、赤外線通信とリモコン操作用通信との双方に利用可能であり、高出力、高速応答ができる赤外発光ダイオードを量産性よく、低コストで製造することができる。
図1は、本発明の赤外発光ダイオードの構造を示す模式的な断面図である。本発明の赤外発光ダイオード1は、p型クラッド層2と、活性層3と、n型クラッド層4と、からなるDH構造(ダブルヘテロ構造)を有し、p型クラッド層2及びn型クラッド層4には、それぞれ、p層電極5及びn層電極6が形成されている。赤外発光ダイオード1の上下両面に形成される電極5,6の形状は任意に選定することができる。
なお、赤外発光ダイオード1は、図1とは逆、すなわち、上方から順に、p層電極5、p型クラッド層2、活性層3、n型クラッド層4、n層電極6としてもよい。
一方、Al組成x,zの上限としては、キャリア及び光の閉じ込めのためには、原理的には高くてもよい。しかしながら、Al組成の上昇に伴い、通電による赤外発光ダイオードの腐食劣化の問題が生じたり、また、オーミックロスによる順方向電圧の上昇が引き起こされるので好ましくない。このため、Al組成は、0.15≦x,z≦0.45であることが望ましい。
活性層3の導電型は、発光効率からはp型が好ましい。そして、高速応答性及び高信頼性のためにはp型活性層3の実効的不純物としては、Geが好ましい。この際、本発明の赤外発光ダイオード1を高速応答性とするためには、p型活性層3の不純物密度としては、おおよそ、1×1018cm-3以上とすればよい。
なお、本発明において実効的不純物とは、実効的に支配する不純物を示すものである。例えば、p型活性層3のGeによる不純物密度よりも低い、少量のZn(亜鉛)やMg(マグネシウム)が添加されてもよい。
ここで、活性層3の厚さが2μm以下では、発光波長が880nmよりも短波長側にずれるので好ましくない。一方、活性層3の厚さを、6μm以上としても、発光波長の長波長側へのシフト量が飽和し、発光出力も低下するので好ましくない。
なお、LEDの発光波長は、発光部すなわちpn接合部の温度に依存して変化し、周囲温度が高い場合や高電流動作で接合部の温度が高い場合には、発光強度の最も大きい発光波長、すなわち発光ピーク波長は、長波長側に移動する。このため、本発明の赤外発光ダイオードのピーク発光波長は、室温において、直流順方向電流が20mAのときの測定値で定義する。
そして、発光時のパルス応答が高速であるので、速度の遅いリモコン操作用通信用のみならず、高速赤外線通信に対応できる。
本発明の赤外発光ダイオード1は、以下のようにして製造することができる。最初に、GaAs基板上に、p型クラッド層2、活性層3、n型クラッド層4の順に、エピタキシャル成長を行い、DH構造を得る。また、成長の順序は、上記とは逆の、n型クラッド層4、活性層3、p型クラッド層2の順番でもよい。ここで、用いるGaAs基板は、後述するように、エピタキシャル成長の後で除去する場合には、p型、n型、半絶縁性、アンドープの何れであってもよい。そして、GaAs基板を除去しない場合には、最初に成長させるクラッド層の導電型に対応するp型又はn型のGaAs基板を使用すればよい。
続いて、DH構造が形成されたGaAs基板から、GaAs基板を除去し、DH構造を得る。
次に、DH構造のp型クラッド層2及びn型クラッド層4にそれぞれ電極5,6を形成し、所定の面積のチップに分割する。その後で、光の取り出し効率を高めるためにチップ表面を荒らしてもよい。
その後、上記チップの下面電極をリードフレームの一方に固着し、リードフレームの他方と、上面電極と、の間を金線やAl線を用いたワイヤーボンディングにより接続して、チップが搭載されたリードフレームの上方をエポキシコートすることにより砲弾型の赤外発光ダイオードを製造することができる。
図2は、本発明の赤外発光ダイオードのエピタキシャル成長に使用するボートの模式断面図である。図2に示すように赤外発光ダイオードのエピタキシャル成長に使用するボート10は、るつぼ11と、ベース12と、仕切り13と、の3点の部品から構成されている。これらの部品の材料としては、カーボンを用いることができる。
るつぼ11は、少なくとも3槽からなる。これは、p型クラッド層2、活性層3、n型クラッド層4のエピタキシャル成長に必要な、組成及びドーパントの異なる溶液槽が3槽必要なことによる。るつぼ11の各槽には、DH構造の各層の所定組成になるような、Ga原料、Al原料、GaAs原料、及びドーパントが、それぞれ調合され、充填されている。
ここで、各槽に充填された各層の成長原料は、原料溶液となる。また、ベース12の中にはGaAs基板14が収納されている。
最初に、るつぼ11内に原料が充填されたボート10は、電気炉内の石英管に収容され、窒素ガスパージや真空引きの後、水素ガスなどが流され、電気炉により成長温度まで昇温され、所定の時間保持される。
次に、ボート10が、電気炉の制御により徐冷されるとともに、つぼ8を動かして原料溶液を、GaAs基板14が収納されているベース12内に導入する。そして、所定の温度、時間、及び徐冷速度により、エピタキシャル成長を行い、仕切り13を操作して成長後の原料溶液をGaAs基板から分離する。この繰り返しによりDH構造の各層2,3,4を成長させることができる。
ここで、AlAsの偏析係数がGaAsのそれより大きいため、クラッド層2,4の厚い層を成長させる場合に、Ga中のAlAs成分が減少し、クラッド層2,4内のAl組成x,zが傾斜する。一方、活性層3は、厚みがクラッド層2,4の厚さに比べて非常に薄いので、Al組成yの変動は殆ど生起しない。
本発明の実施例においては、液相成長法として徐冷法を用い、GaAs基板上にp型クラッド層2と、p型活性層3と、n型クラッド層4と、からなるDH構造をエピタキシャル成長させた。エピタキシャル成長は、p型クラッド層2及びn型クラッド層4の厚さを、それぞれ約100μm、約60μmと固定し、p型活性層3となるAlGa1-y As層の厚さを種々変化させた。ここで、成長温度は、600〜900℃の範囲であった。
表1から明らかなように、p型クラッド層2の組成xは0.15〜0.45であり、Znによる不純物密度は3×1017cm3 であり、厚さは100μmである。p型活性層3の組成yは0、すなわち、GaAsであり、Geによる実効的不純物密度は2×1018cm3 であり、厚さは種々変えたのでdμmと表記しているが、0.5μm〜8μm程度の厚さとした。
n型クラッド層4の組成zは0.20〜0.45であり、Teによる不純物密度は6×1017cm3 であり、厚さは60μmである。
なお、上記組成x,zは、上記したようにそれぞれ各膜厚内の変動幅を示している。
この赤外発光ダイオードのチップの大きさは、0.32mm×0.32mmの面積を有し、その厚さは、活性層の厚さがクラッド層よりも十分に薄いので無視すると、約160μmである。
図3は、実施例の赤外発光ダイオードにおける、活性層厚さdを変化させたときのピーク発光波長及びピーク発光波長における発光出力を示すものである。図において、横軸は活性層厚さd(μm)を、左縦軸はピーク発光波長(nm)を、右縦軸はピーク発光波長での光出力(mW)を示している。この際、発光ダイオード1には、室温(25℃)で、20mAの電流を流している。ここで、発光特性は、分光器(MCPD3000大塚電子(株)製)を用いて測定した。
図から明らかように、活性層厚さdを0.5μmから6μmまで変化させたときに、ピーク発光波長が約870〜890nmまで変化する。そして、活性層厚さdが2μm〜6μmの間では、ピーク発光波長が約880nm〜890nmとなることが分かる。この際、ピーク発光波長における出力は、4mW前後の高出力が得られた。これにより、上記880nm〜890nmのピーク発光波長は、赤外線通信とリモコン操作用通信との双方に利用できる赤外光領域の境界に当たる波長に相当し、しかも、高出力である。
ここで、立ち上がり時間Tr及び立ち下がり時間Tfの測定は、赤外発光ダイオード1に、パルス幅125nsec、デューティ比25%、ピーク電流500mAのパルスを印加して測定した。
図から明らかように、活性層厚さdを2μmから6μmまで変化させたときに、立ち上がり時間Tr及び立ち下がり時間Tfはほぼ同じ値であり、約37nsecから55nsec程度であり、赤外線通信に要求される遮断周波数に対応できる応答性能であることが分かる。
ピーク発光波長等の測定は、室温で、直流順方向電流を20mA印加したときの値である。活性層厚さを2.8μmとした赤外発光ダイオードにおいては、ピーク発光波長は885nmであり、その半値幅(発光出力が1/2となる発光波長幅)は51nmであった。その発光出力は3.82mWであった。また、パルス電流500mA駆動時の立ち上がり時間Tr及び立ち下がり時間Tfは、それぞれ、30nsecであった。活性層厚さを4.8μmとした赤外発光ダイオードにおいては、ピーク発光波長は885nmであり、その半値幅は51nmであった。その発光出力は3.59mWであった。また、パルス電流500mA駆動時の立ち上がり時間Tr及び立ち下がり時間Tfは、それぞれ、65nsecであった。
2:p型クラッド層
3:活性層(p型活性層)
4:n型クラッド層
5:p層電極
6:n層電極
10:ボート
11:るつぼ
12:ベース
13:仕切り
14:GaAs基板
Claims (4)
- p型のAlx Ga1-x As(0.15≦x≦0.45)を含む少なくとも1層のp型クラッド層と、
p型のAly Ga1-y As(0≦y≦0.01)を含む活性層と、
n型のAlz Ga1-z As(0.15≦z≦0.45)を含む少なくとも1層のn型クラッド層と、を有し、
上記活性層の厚みは、2〜6μmであり、赤外線通信とリモコン操作通信との双方の赤外光源として使用できることを特徴とする、赤外発光ダイオード。 - 前記活性層の実効的不純物が、Geで形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の赤外発光ダイオード。
- 前記赤外発光ダイオードの室温における発光ピーク波長は、880〜890nmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の赤外発光ダイオード。
- 請求項1〜3の何れかに記載の赤外発光ダイオードの製造方法であって、
前記p型クラッド層と、前記p型活性層と、前記n型クラッド層とが、GaAs基板上にエピタキシャル成長により形成され、
上記エピタキシャル成長後に、上記基板が除去されることにより製造されることを特徴とする、赤外発光ダイオードの製造方法。
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