JP2006179430A - アルカリ電池用亜鉛合金粉体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 アルミニウム、ビスマス、カルシウム、インジウムから選ばれる少なくとも1種を含む亜鉛合金粉体であって、標準電極電位が亜鉛より貴な金属または亜鉛より貴な金属を含む合金により表面が部分的に被覆されているアルカリ電池用亜鉛合金粉体。
【選択図】図1
Description
上記第二の問題点である亜鉛粒子間の電子伝導性の低下を抑制するために有効な方法としては、導電性粉末を負極に混合するものがあり、例えば、特許文献2に開示されている。
特許文献2のように導電性粉末を負極に混合する方法では、亜鉛合金による水素ガス発生の抑制と、導電性粉末による亜鉛粒子間の電子伝導性の低下防止により、電池特性の改善が可能である。しかし、電池反応に全く関与しない導電性粉末を負極に添加することは、負極活物質の充填量の許容限界を低くしてしまい、電池のエネルギー密度を低下させてしまうという問題を有している。
本発明の構成によれば、亜鉛合金の表面に部分的に形成された金属または合金が、電解液と接触する亜鉛合金表面の結晶粒界を減らし、そのため水素ガス発生の活性点が減少し、水素ガス発生が抑制される。さらに、被覆している金属または合金部分同士の接触が粉体間の電子伝導パスとなるので、電子伝導性の低下を防止することができ、ハイレート放電性能を向上させることができる。さらに、亜鉛合金表面が部分的に金属または合金で被覆されていることは、導電性粉末を負極に混合する場合と比較して、電池反応に全く関与しない成分が電池内で占有する体積を極力減少させることができ、負極活物質の充填量の許容限界が低下されるのを少なくできる。
亜鉛合金表面を部分的に被覆する金属または合金の量は、当該金属または合金を含む粉体の総量の、0.01重量%以上、1重量%以下であることが好ましい。この範囲であると、亜鉛合金の表面が金属または合金で被覆されすぎずに、表面反応サイトを十分に残すことができるため、ハイレート放電性能を損なうことなく、被覆している金属または合金部分が粉体間の電子伝導パスとなる効果により、ハイレート放電性能を向上させることができる。
さらに、亜鉛合金表面に部分的な金属または合金の被膜を形成させることは、導電性粉末を負極に混合する場合と比較して、電池反応に全く関与しない成分が電池内で占有する体積を極力減少させることができ、負極活物質の充填量の許容限界が低下されるのを少なくできる。
以上のように、本発明の亜鉛合金粉体をアルカリ電池の負極活物質に用いることで、電池特性とエネルギー密度の両方を向上させることができる。
亜鉛合金の粉体はアトマイズ法で得た。亜鉛合金には、少なくとも、アルミニウム、ビスマス、カルシウム、およびインジウムからなる群より選ばれる1種を添加した。亜鉛合金中の亜鉛以外の元素含有量は、20〜5000ppmの範囲が適当である。アトマイズして得られた粉体は、分級によって粒度を調整した。
以下の実施例では、添加成分として、Alを30ppm、Biを150ppm、Inを500ppmとし、それ以外に不可避不純物が含まれている。亜鉛合金の粉体は、篩い分けにより粒径が500μm以下とされたものを用いた。
電解メッキにより、亜鉛合金表面を部分的に金属または合金で被覆させる方法を示す。電解メッキの前処理として水洗、および脱脂を行った。水洗は、亜鉛合金を純水中に浸漬し、超音波を約5分間かけて行った。脱脂はエマルジョン洗浄で行った。電解メッキの前処理として酸活性化処理を行う場合もあるが、亜鉛合金は表面に酸化被膜が形成される可能性があるために行わなかった。その後、電解メッキ前に亜鉛合金をもう一度水洗し、メッキ液を入れたバレル電解槽に投入した。
バレル電解槽は、高速で回転することが可能な回転槽と、回転槽内の外周部にリング状に設置された陰極、および回転槽の中央に位置するように吊り下げられた陽極から構成される。回転槽の回転数は、メッキする金属種に関係なく350rpmで一定とし、電流密度やメッキ時間、浴温度を変化させてメッキの析出量や厚みを制御した。
メッキ液を入れた回転槽の陽極とリング状陰極に電圧を印加し、運転により回転槽が自転すると、亜鉛合金粉体は遠心力により外周部のリング状陰極に接触される。このとき、亜鉛合金は通電され、表面にメッキ膜が析出する。図1は、電解メッキにより作製された、表面が部分的に金属で被覆された亜鉛合金粉体の一例を示すSEM写真であり、粉体表面が金属で完全に被覆されないようにメッキ条件を制御したものである。
メカノフュージョンと呼ばれる、粉体混合物に加圧力とせん断力を加えて複合化処理する方法で、亜鉛合金表面を部分的に金属または合金で被覆させる方法を示す。装置はホソカワミクロン株式会社製AMS−labを用いた。亜鉛合金粉体の表面に金属または合金が被覆される仕組みは次の通りである。
装置内部は主に有底筒状回転槽と加圧体とからなり、加圧体は筒状回転槽の壁面との間にわずかな隙間を保ちながら、壁面に沿って回転する。筒状回転槽は加圧体とは反対方向に回転する。筒状回転槽に投入された亜鉛合金粉体と被覆する金属または合金の元となる粉体は、筒状回転槽が回転することで、加圧体と筒状回転槽の壁面部との間の隙間に挟まれ、このとき押圧力およびせん断圧力を受ける。2種類の粉体は、このような押圧力とせん断圧力により、一方の粉体表面に他方の粉体成分が被覆されて複合化される。メカノフュージョンのような方法を用いて亜鉛合金表面を金属または合金で被覆させるには、被覆する金属または合金には、亜鉛合金と同等またはそれ以下の硬度のものを用いる。
前記の電気化学的または物理的な方法により作製された、表面が部分的に金属または合金で被覆された亜鉛合金粉体を用いて、熱処理により粉体集合体を得る方法を示す。装置は一般的な真空炉を用いた。加熱処理は、亜鉛合金粉体を電池形状に合わせた型へ充填した状態で行った。すなわち、アルカリ電池に用いる場合は、図2に示すようなセパレータ内部に収容できる円筒形状とし、集電子を挿入できる凹部を設けた。空気電池に用いる場合は、図3に示すような負極ケース内部に収容できるペレット状とし、そのペレットの直径は絶縁ガスケットの内径よりも小さくした。これらに用いた亜鉛合金粉体は、あらかじめ篩い分けにより粒径を200〜500μmとした。雰囲気は真空、または還元雰囲気とした。
図2は本実施例の亜鉛合金粉体を用いたアルカリ電池の一部を断面にした正面図である。この電池は、以下のようにして製造される。
正極ケース1は、ニッケルメッキされた鋼からなる。この正極ケース1の内面には、黒鉛塗装膜(図示しない)が形成されている。この正極ケース1の内部に、二酸化マンガン、または二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルの混合物を主成分として含む短筒状の正極合剤ペレット2を複数個挿入し、ケース内において再加圧することによりケース1の内面に密着させる。そして、この正極合剤ペレット2の内側にセパレータ3と絶縁キャップ9を挿入した後、セパレータ3と正極合剤ペレット2を湿潤させる目的で電解液を注液する。電解液には、例えば40重量%の水酸化カリウム水溶液を用いる。
図3は、本実施例の亜鉛合金粉体を用いたボタン形空気亜鉛電池の縦断面図である。この電池は、以下のようにして製造される。
正極ケース11は底部中央の凹部に空気孔12を有し、上部が開口している。この正極ケース11の凹部内面に、空気拡散紙13、撥水膜14、空気極15、およびセパレータ16をこの順に積層する。正極ケース11の側壁部には、電解液の漏出を防止する目的でピッチを塗布する。一方、正極ケース11の中央の外面には、電池が未使用の状態では空気孔12を塞ぐようにシールテープ(図示しない)が貼付されており、このシールテープを正極ケース11から取り外すことで、電池内部に酸素が進入し、起電反応が開始される。この正極ケース11は、ニッケルメッキした鉄が用いられる。
電解メッキ法により、表面がスズで被覆された亜鉛合金粉体Aを作製した。
まず、メッキされる亜鉛合金粉体を純水中に浸漬させ、超音波を約5分間かけて水洗した。次に、高沸点炭化水素の1種であるケロシンと純水と界面活性剤とを重量比100:1:2の割合で混合して乳化状態とし、60℃まで加温した中に、亜鉛合金粉体を10分間浸漬して脱脂した。亜鉛合金はもう一度水洗したのち、スズ酸カリウム・三水和物(K2SnO3・3H2O)を150g/dm3、水酸化カリウム(KOH)を25g/dm3、過酸化水素(H2O2)を少量含むメッキ浴が入れられたバレル電解槽に投入した。バレル電解槽は350rpmで回転させ、陽極にスズ電極を用い、浴温度80℃、陰極電流密度20A/dm2の条件で3分間運転を行った。最後に、メッキされた亜鉛合金粉体を純水中に浸漬させ、超音波を約5分間かけて水洗する作業を2回繰り返し、室温で真空乾燥した。
このように作製した亜鉛合金粉体Aの表面に被覆されているスズ量は、ICP分析で定量した。その他の金属または合金で被覆された亜鉛合金粉体B〜Kは、表1のような条件で作製した。
メッキ浴a;
K2SnO3・3H2O 150g/dm3
KOH 25g/dm3
H2O2 少量
メッキ浴b;
KAu(CN) 4g/dm3
NaPO 15g/dm3
NaHPO 20g/dm3
pH 6.5〜7.5
AgCN 30g/dm3
KCN 60g/dm3
KCO 15g/dm3
メッキ浴d;
CuPO・3HO 90g/dm3
KPO 350g/dm3
NH(28%) 5mL/dm3
pH 8〜9
CrO 250g/dm3
HSO 2.5g/dm3
メッキ浴f;
NiSO・6HO 250g/dm3
NiCl・6HO 45g/dm3
HBO 30g/dm3
pH 4.5〜5.5
PdCl・2HO 4g/dm3
NaHPO・12HO 20g/dm3
(NH)HPO 100g/dm3
NHOH pH調整
pH 8.5〜9.5
メッキ浴h;
HPTCl・HO 4g/dm3
(NH)HPO 20g/dm3
NaHPO 100g/dm3
RhCl 5g/dm3
HSO 50mL/dm3
メッキ浴j;
CuCN 30g/dm3
Zn(CN) 10g/dm3 NaCN 60g/dm3
pH 10〜11
CuCN 35g/dm3 NaSnO・3HO 60g/dm3
NaCN 25g/dm3
pH 12〜13
単三サイズのアルカリ電池は、次のようにして作製した。
正極活物質として、東ソー(株)製アルカリ電池用電解二酸化マンガンHH−PFを用い、この二酸化マンガン100重量部に対して電解液1重量部を混合し、ミキサーで攪拌・混合して一定粒度に整粒した。得られた粒状物を中空円筒形に加圧成型して正極合剤ペレット2を作製した。
正極ケース11は、空気孔12として直径0.5mmの孔を4個有している。空気拡散紙13として、厚さ0.13mmのビニロン製不織布、撥水膜14として、厚さ0.1mm、空孔率20%のPTFE微多孔膜を用いた。
マンガン酸化物、活性炭、ケッチェンブラック、およびPTFE粉末を重量比40:30:20:10の割合で十分に混合し、ニッケルメッキを施したネット状30メッシュのステンレス鋼製集電体に圧着充填し、PTFE微多孔膜を撥水膜14と対峙する面に圧着した。その後、所定寸法に打抜き切断し、空気極15とした。セパレータ16として、親水処理を施したポリプロピレン微多孔膜を用いた。
まず、正極ケース11の底部中央の凹部に水を塗布し、そこに空気拡散紙13を配置して固定し、その上に撥水膜14、空気極15、およびセパレータ16をその順に挿入・積層した。絶縁ガスケット19は、負極ケース17との接触面に封止剤であるピッチをあらかじめ塗布して、負極ケース17と組み合わせた。負極ケース17内に、本実施例で説明した亜鉛合金粉体を、ゲル化剤のポリアクリル酸ソーダ、およびアルカリ電解液ともに充填した。このようにして組み立てた部品を封口し、図3に示すボタン形空気亜鉛電池とした。電池特性の評価は、組み立て後の電池を、通常の補聴器の消費電流2mAと高出力タイプの補聴器に必要な消費電流15mAで連続放電させ、電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの放電容量を測定した。結果を表2に示す。
添加成分として、Alを30ppm、Biを150ppm、Inを500ppm、それ以外に不可避不純物が含まれ、篩い分けにより粒径が500μm以下とされた亜鉛合金粉体を用いて、上記と同様にして単三型のアルカリ電池、およびR44型の空気亜鉛電池を作製し、電池特性を評価した。結果を表2に示す。
実施例1と同様に電解メッキ法を用いて、表面が部分的にスズで被覆され、被覆される金属量が異なる亜鉛合金粉体L〜Rを表3のような条件で作製した。表面に被覆されているスズ量はICP分析で定量した。
メカノフュージョンの方法を用いて、表面が部分的にスズで被覆された亜鉛合金粉体Sを作製した。亜鉛のモース硬度は2.5、スズのそれは1.8であり、亜鉛合金の表面にスズの被膜を形成させることが可能である。亜鉛合金粉体とスズ粉末(高純度化学研究所(株)製99.99%、粒径38μm以下)とを重量比100:0.11の割合でよく混合したのちに槽に投入し、回転数3000rpmで60分間処理して、スズで亜鉛合金表面を部分的に被覆させた。このようにして作製した亜鉛合金粉体Sの表面に被覆されているスズ量は、ICP分析で定量した。同様にしてメカノフュージョンの方法により、モース硬度が2.5の金、2.7の銀、1.5の鉛、1.2のインジウムを用いて、亜鉛合金粉体T〜Wを表5のような条件で作製した。
実施例1で示した、表面が部分的に金属で被覆された亜鉛合金粉体AおよびBを用いて、熱処理により粉体集合体を形成させた。装置は環状炉を用いた。加熱処理は、亜鉛合金粉体を単三型アルカリ電池、およびR44型空気亜鉛電池それぞれの負極収容スペースに合わせて作製したカーボン製の型へ充填した状態で行った。加熱処理により粉体集合体とすることでは、粉体の状態よりも嵩密度が減少するため、実施例1〜3に示した亜鉛合金粉体をゲル化して負極に用いる場合と比較して、負極収容スペースに対する活物質充填量を増加させることができ、体積エネルギー密度を向上させることができる。そのため型への充填量は、嵩密度の減少分を考慮して幾分多くした。加熱中の雰囲気は還元雰囲気とするため、水素・窒素混合ガス(体積比1対99)を炉内に満たした状態で行った。温度および処理時間は表7に示す。
Claims (6)
- アルミニウム、ビスマス、カルシウム、インジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む亜鉛合金粉体であって、標準電極電位が亜鉛より貴な金属または亜鉛より貴な金属を含む合金により表面が部分的に被覆されていることを特徴とするアルカリ電池用亜鉛合金粉体。
- 前記粉体の表面を被覆する金属または合金が、スズ、金、銀、銅、クロム、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、真鍮、青銅、鉛、およびインジウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の合金である請求項1記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉体。
- 前記粉体の表面を被覆する金属または合金の量が、当該金属または合金を含む粉体の総量の0.01〜1重量%である請求項1または2記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の亜鉛合金粉体の集合体からなり、前記粉体同士が接合されているアルカリ電池用亜鉛合金粉体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉体を負極活物質として備えるアルカリ電池。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のアルカリ電池用亜鉛合金粉体を負極活物質として備える空気亜鉛電池。
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