JP2006178261A - 誘電体多層膜フィルタ及び光学部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 高屈折率層Hと低屈折率層Lとが交互に積層され、特定の波長の光を反射する誘電体多層膜3が光透過性基板2の一方側の面に設けられ、低屈折率層Lの内部応力と同じ傾向の内部応力を示す素材で構成され、誘電体多層膜3の低屈折率層Lの合計の物理膜厚の0.9〜1.5倍の物理膜厚を有する光透過性の反り戻し膜4が光透過性基板2の他方側の面に設けられている誘電体多層膜フィルタ1とする。反り戻し膜4を貼り合わせ面として光学素子に貼り合わせる。
【選択図】 図1
Description
本発明の誘電体多層膜フィルタに用いられる反り戻し膜は、誘電体多層膜の層数が多く、40層以上であれば誘電体多層膜による反りが大きくなり、反り戻し膜を設ける効果が大きくなる。
赤外線を反射する40層の誘電体多層膜を構成する低屈折率層の合計の物理膜厚は、概ね2.5μm程度であるため、反り戻し膜の物理膜厚は2.3μm以上必要となる。
SiO2の強い圧縮応力により、低屈折率層としてSiO2を用いた誘電体多層膜3を設けた光透過性基板2には、膜面が凸になる大きな反りが発生する。
本実施例は、可視波長域(約400nm〜750nm)の光を透過し、所定波長以上の赤外波長域での光の吸収が少ない良好な反射特性を有する誘電体多層膜フィルタ(IRカットフィルタ)に適用した例である。
光透過性基板は、白板ガラス(屈折率n=1.52)で、直径30mm、厚さ0.3mmと0.5mmの2種類を用いた。誘電体多層膜を形成する前のガラス基板の反りを表1に示す。なお、反り幅の測定は、高精度フラットネステスタFT−900((株)ニデック製)を使用した。
誘電体多層膜の材料は、高屈折率層(H)としてTiO2(n=2.40)、低屈折率層(L)としてSiO2(n=1.46)を用いた。
以下に説明する膜厚構成の表記は、高屈折率層(H)の膜厚を光学膜厚nd=λ/4の値を1Hとして表記し、低屈折率層(L)を同様に1Lと表記する。また、(xH、yL)SのSの表記は、スタック数と呼ばれる繰り返しの回数で、括弧内の構成を周期的に繰り返すことを表している。
40層の誘電体多層膜を形成したガラス基板には、表1に示すように、低屈折率層のSiO2の強い圧縮応力と高屈折率層のTiO2の弱い引張応力により、誘電体多層膜の成膜された膜面が凸になるように反りが生じた。
反り戻し膜の厚さは、3.089μmである。反り戻し膜の厚さは、誘電体多層膜における低屈折率層の合計の物理膜厚2.768μmの1.12倍である。
以上の実施例1におけるガラス基板の反り幅の測定結果を表1に示す。
(実施例2)
誘電体多層膜が形成された水晶基板は、低屈折率層のSiO2の強い圧縮応力と高屈折率層のTiO2の弱い引張応力により、誘電体多層膜の膜面が凸になるように反りが生じた。誘電体多層膜における低屈折率層は実施例1と同様に合計20層で、その合計の光学厚さは21.41L、合計の物理膜厚は2.768μmである。次に、水晶基板の一方の面に形成された誘電体多層膜の他方の面に、酸化珪素系化合物のSiO2(n=1.46)からなる反り戻し膜を厚さ3.089μmで形成した。
その結果、誘電体多層膜の反りと打ち消しあうように反り戻し膜の反りが発生するため、反り戻し膜形成後に反り幅が減少した。この実施例2における水晶基板の反り幅の測定結果を表2に示す。
光透過性基板は、白板ガラス(屈折率、n=1.52)で、直径30mm、厚さ0.3mmと0.5mmの2種類を用いた。誘電体多層膜を形成する前のガラス基板の反りを表3に示す。
誘電体多層膜の材料は、高屈折率層(H)としてTiO2、低屈折率層(L)としてSiO2を用いた。
以下に説明する膜厚構成の表記は、実施例1と同様に、高屈折率層(H)の膜厚を光学膜厚nd=1/4λの値を1Hとして表記し、低屈折率層(L)を同様に1Lと表記する。また、(xH、yL)SのSの表記は、スタック数と呼ばれる繰り返しの回数で、括弧内の構成を周期的に繰り返すことを表している。
60層の誘電体多層膜を形成したガラス基板には、表3に示すように、低屈折率層のSiO2の強い圧縮応力と高屈折率層のTiO2の弱い引張応力により、誘電体多層膜の成膜された膜面が凸になるような実施例1よりも大きな反り幅の反りが生じた。
次に、ガラス基板の一方の面(上面)に形成された誘電体多層膜の他方の面(下面)に、酸化珪素系化合物のSiO2(n=1.46)からなる反り戻し膜を形成した。成膜方法は、ガラス基板表面にSiO2を蒸着する際に、蒸着するSiO2にイオン照射しながら蒸着を行うイオンアシスト法を用いて、成膜される膜の圧縮応力が強く、緻密な誘電体単層膜を形成した。反り戻し膜の物理膜厚は、4.634μmである。反り戻し膜の厚さは、誘電体多層膜における低屈折率層の合計の物理膜厚3.85μmの1.20倍である。
(実施例4)
誘電体多層膜が形成された水晶基板は、低屈折率層のSiO2の強い圧縮応力と高屈折率層のTiO2の弱い引張応力により、誘電体多層膜の膜面が凸になるように反りが生じた。次に、水晶基板の一方の面に形成された誘電体多層膜3の他方の面に、酸化珪素系化合物のSiO2(n=1.46)からなる反り戻し膜を厚さ4.634μmで形成した。
その結果、誘電体多層膜の反りと打ち消しあうように反り戻し膜の反りが発生するため、反り戻し膜形成後に反り幅が減少した。この実施例4における水晶基板の反り幅の測定結果を表4に示す。
また、本発明の光学部材は、例えばデジタルスチルカメラの固体撮像素子の前に配置される空間周波数の高域成分を抑制する光学ローパスフィルタとして利用することができる。
Claims (7)
- 高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層され、特定の波長の光を反射する誘電体多層膜が光透過性基板の一方側の面に設けられ、前記低屈折率層の内部応力と同じ傾向の内部応力を示す素材で構成され、前記誘電体多層膜の低屈折率層の合計の物理膜厚の0.9〜1.5倍の物理膜厚を有する光透過性の反り戻し膜が前記光透過性基板の他方側の面に設けられていることを特徴とする誘電体多層膜フィルタ。
- 請求項1記載の誘電体多層膜フィルタにおいて、
前記誘電体多層膜が40層以上の層構成を有することを特徴とする誘電体多層膜フィルタ。 - 請求項1又は2記載の誘電体多層膜フィルタにおいて、
前記反り戻し膜の物理膜厚が、2.3μm以上であることを特徴とする誘電体多層膜フィルタ。 - 請求項1〜3いずれかに記載の誘電体多層膜フィルタにおいて、
前記低屈折率層及び前記反り戻し膜が、酸化珪素系化合物で構成されていることを特徴とする誘電体多層膜フィルタ。 - 請求項1〜4いずれかに記載の誘電体多層膜フィルタにおいて、
前記誘電体多層膜が、赤外線を反射する又は赤外線と紫外線の両方を反射することを特徴とする誘電体多層膜フィルタ。 - 高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層され、特定の波長の光を反射する誘電体多層膜が光透過性基板の一方側の面に設けられ、前記低屈折率層の内部応力と同じ傾向の内部応力を示す素材で構成され、前記誘電体多層膜の前記低屈折率層の合計の物理膜厚の0.9〜1.5倍の物理膜厚を有する光透過性の反り戻し膜が前記光透過性基板の他方側の面に設けられている誘電体多層膜フィルタが前記反り戻し膜を介して光学素子の平面に貼り合わされていることを特徴とする光学部材。
- 請求項6記載の光学部材において、
複屈折板として機能する前記光透過性基板が前記反り戻し膜を介して複屈折板又は四分の一波長板と貼り合わされて光学ローパスフィルタが構成されていることを特徴とする光学部材。
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