JP2006176723A - 熱伝導性アクリル系樹脂組成物及びそれを用いた熱伝導性シート状成形体 - Google Patents

熱伝導性アクリル系樹脂組成物及びそれを用いた熱伝導性シート状成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】 熱伝導性充填剤を高比率で含有させることを可能として優れた難燃性及び熱伝導性を達成し、しかも粘度を低く抑えて加工適性の向上を可能とする熱伝導性アクリル系樹脂組成物、並びにそれを用いた熱伝導性シート状成形体を提供すること。
【解決手段】 官能基としてカルボキシル基を有するアクリル系共重合体と、官能基として1分子中に2個以上のグリシジル基を有する化合物とをマトリックスとする熱伝導性アクリル系樹脂組成物であって、前記アクリル系共重合体100質量部に対して、熱伝導性充填剤として金属水酸化物粉が100〜500質量部含有されており、且つ湿潤分散剤が0.05〜3質量部含有されていることを特徴とする熱伝導性アクリル系樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、熱伝導性アクリル系樹脂組成物及びそれを用いた熱伝導性シート状成形体に関し、より詳しくは、電子機器等の部品の熱を速やかに放熱部品へ移送するための熱伝導材と称される材料であって、局部発熱するICチップ、CPUチップ、GPUチップ等の発熱をヒートシンク等の放熱部位に速やかに熱伝達させるために有用な熱伝導性アクリル系樹脂組成物、並びにそれを用いた熱伝導性シート状成形体に関する。
電子機器部品は、一般に稼動時に熱を発することから、熱による部品の破損防止や安定作動確保のために、電子機器装置内に金属製のヒートシンク等が取り付けられている。また、必要に応じて、ヒートシンクをファン等によって強制的に空冷することも行われている。さらに、大きな発熱を伴う部品に対しては、水循環によって強制的に水冷することや半導体素子の一種であるペルチェ素子を用いて強制的に冷却すること等が行われている。
このような冷却装置を発熱体に取り付ける際には、冷却装置と発熱体との接触を密にして熱を有効に冷却装置へ伝達させる必要があり、このような役割を果たすものとして一般的に熱伝導材と称される材料が知られている。このような熱伝導材は、冷却装置と発熱体の間に介在させることで両者間の熱伝達を改善させるものである。このような熱伝導材としては、一般的に熱分解安定性、難燃性の観点から、シリコーン系グリスや熱伝導率を高めたシリコーンゴムシート、シリコーンゲルシート等が使用されている。
しかしながら、シリコーン系グリスにおいては、高粘度液状物のため扱い難く、発熱部品に塗布する場合の塗布量のコントロールが難しいという問題や、高温になるにつれ流動性が高まり流出してしまう(ポンプアウト)という問題があった。また、発熱部品の大きな凸凹面に対しては密着性があまり良くないので実質的に使用することが困難であるという問題もあった。更には、シリコーン系材料であることから僅かながらシロキサンガスの発生があり、このようなシロキサンガスが電極接点等へ付着して二酸化珪素が生成されるため、これが原因となって接点不良を生じる可能性があった。
また、熱伝導率を高めたシリコーンゴムシートや、それより低硬度のシリコーンゲルシートにおいては、シリコーン樹脂そのものが高価であるばかりか製造工程において加硫工程を必要とするため容易に製造できないという問題があった。更に、前述のシリコーン系グリスと同様にシロキサンガスが発生するため、このようなシリコーンゴムシートやシリコーンゲルシートにおいても接点不良を生じる可能性があった。
そして、このようなシリコーン系グリス、シリコーンゴムシート、シリコーンゲルシート等の問題点を解決するため、アルミナ、窒化硼素等の熱伝導性充填剤を含有したゴム系、ウレタン系、アクリル系等の熱伝導材(樹脂組成物)が提案されてきている。
例えば、特開2002−30212号公報(特許文献1)においては、アクリル系ポリウレタン樹脂と、そのアクリル系ポリウレタン樹脂中に分散せしめられた熱伝導性充填材とを含む熱伝導性シートが開示されている。しかしながら、このようなアクリル系ポリウレタン樹脂に熱伝導性充填剤を分散せしめた従来のシートの場合、既重合のいわゆるアクリル系ポリウレタンを樹脂マトリックスとして使用していたため、熱伝導性充填剤を高比率で含有させることが難しく、得られるシートの耐熱性が劣るものであった。
また、特開2004−161856号公報(特許文献2)においては、官能基としてカルボキシル基を含有するアクリル系共重合体と、1分子中に2個以上のグリシジル基を含有する化合物とをマトリックスとし、窒化物、金属酸化物又は金属粉よりなる群から選択される熱伝導性充填材を含む組成物が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載の組成物であっても、その熱伝導性と難燃性は必ずしも十分なものではなかった。
特開2002−30212号公報 特開2004−161856号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、熱伝導性充填剤を高比率で含有させることを可能として優れた難燃性及び熱伝導性を達成し、しかも粘度を低く抑えて加工適性の向上を可能とする熱伝導性アクリル系樹脂組成物、並びにそれを用いた熱伝導性シート状成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体とグリシジル基を有する化合物とからなるマトリックスに、金属水酸化物粉と湿潤分散剤とを所定量含有させることにより、熱伝導性充填剤をより高比率で含有させることを可能として優れた難燃性及び熱伝導性を達成し、しかも粘度を低く抑えて加工適性の向上を可能とする熱伝導性アクリル系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物は、官能基としてカルボキシル基を有するアクリル系共重合体と、官能基として1分子中に2個以上のグリシジル基を有する化合物とをマトリックスとする熱伝導性アクリル系樹脂組成物であって、前記アクリル系共重合体100質量部に対して、熱伝導性充填剤として金属水酸化物粉が100〜500質量部含有されており、且つ湿潤分散剤が0.05〜3質量部含有されていることを特徴とするものである。
上記本発明にかかる前記湿潤分散剤としては、硼酸基及び/又は燐酸基を有する飽和ポリエステル系コポリマーであることが好ましい。
上記本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物としては、前記金属水酸化物粉として水酸化アルミニウムが前記アクリル系共重合体100質量部に対して250〜500質量部含有されていることが好ましい。
上記本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物としては、前記アクリル系共重合体100質量部に対して10〜80質量部の難燃剤が更に含有されていることが好ましい。
また、本発明の熱伝導性シート状成形体は、前記熱伝導性アクリル系樹脂組成物をシート状に成形及び硬化せしめてなるものであることを特徴とするものである。
なお、本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、熱伝導性アクリル系樹脂組成物に、所定量の金属水酸化物粉と所定量の湿潤分散剤とを組み合わせて含有せしめることで、より高比率で熱伝導性充填剤を含有させることが可能となり、このような熱伝導性アクリル系樹脂組成物を用いて得られる熱伝導性シート状成形体に極めて高い難燃性と熱伝導性とを発現させることが可能となる。また、シリコーンゴムシートやシリコーンゲルシートのように高価で且つ製造時に複雑な工程が必要となるシリコーン樹脂を用いることなく、前記アクリル系共重合体を主剤とし、硬化剤として前記グリシジル基を有する化合物を含有させることで、硬化させる際の架橋密度を上げることが可能となり、しかもアクリル系共重合体の硬化時に気泡が発生し難くすることが可能となるため、熱伝導率及び耐熱性が高く、しかも十分な可撓性をもつ熱伝導性シート状成形体が得られるようになるものと本発明者は推察する。
本発明によれば、熱伝導性充填剤を高比率で含有させることを可能として優れた難燃性及び熱伝導性を達成し、しかも粘度を低く抑えて加工適性の向上を可能とする熱伝導性アクリル系樹脂組成物、並びにそれを用いた熱伝導性シート状成形体を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物について説明する。すなわち、本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物は、官能基としてカルボキシル基を有するアクリル系共重合体と、官能基として1分子中に2個以上のグリシジル基を有する化合物とをマトリックスとするアクリル系樹脂組成物であって、前記アクリル共重合体100質量部に対して、熱伝導性充填剤として金属水酸化物粉が100〜500質量部含有されていること、及び湿潤分散剤が0.05〜3質量部含有されていることを特徴とするものである。
本発明にかかるアクリル系共重合体は、主剤として用いられるものであり、分子中に官能基としてカルボキシル基を有するものである。このようなアクリル系共重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン及びこれらの誘導体のようなモノマーを、ラジカル重合開始剤の存在下に溶液重合法(ソリューション法、例えば乳化重合法(エマルジョン重合法)、懸濁重合法(サスペンジョン重合法)等)、又は塊状重合法(バルク法)等の重合法を用いて重合させることで得ることができる。
このような重合法としては特に制限されないが、例えば、特表昭59−6207号公報、特開昭60−215007号公報、特開平10−17640号公報、特開2000−239308公報、特開2000−128911公報、及び特開2001−40037公報に記載の重合法を参照することができる。
また、このようなアクリル系共重合体を製造する具体的な方法としては、例えば、官能基を有さないアクリル系モノマーを主体として、これに共重合可能なビニル系モノマー及びカルボキシル基を有するモノマーを同時に重合(共重合)させる方法や、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーと他のアクリル系モノマーを共重合させる方法、アクリル系モノマーと共重合可能なモノマーを重合させ、停止反応としてカルボキシル基含有分子により末端停止反応を行う方法等を挙げることができる。
このような官能基を有さないアクリル系モノマーとしては、メチルアクリレート(アクリル酸メチル)、エチルアクリレート(アクリル酸エチル)、プロピルアクリレート(アクリル酸プロピル)、iso−プロピルアクリレート(アクリル酸−iso−プロピル)、n−ブチルアクリレート(アクリル酸−n−ブチル)、iso−ブチルアクリレート(アクリル酸−iso−ブチル)、tert−ブチルアクリレート(アクリル酸−tert−ブチル)、2−エチルへキシルアクリレート(アクリル酸−2−エチルヘキシル)、オクチルアクリレート(アクリル酸オクチル)、iso−オクチルアクリレート(アクリル酸−iso−オクチル)、デシルアクリレート(アクリル酸デシル)、iso−デシルアクリレート(アクリル酸イソデシル)、iso−ノニルアクリレート(アクリル酸−iso−ノニル)、ネオペンチルアクリレート(アクリル酸ネオペンチル)、トリデシルアクリレート(アクリル酸トリデシル)、ラウリルアクリレート(アクリル酸ラウリル)等の、アクリル酸アルキルエステル;シクロへキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロデシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等の脂環式アルキルアクリレート;メチルメタクリレート(メタクリル酸メチル)、エチルメタクリレート(メタクリル酸エチル)、プロピルメタクリレート(メタクリル酸プロピル)、iso−プロピルメタクリレート(メタクリル酸−iso−プロピル)、n−ブチルメタクリレート(メタクリル酸−n−ブチル)、iso−ブチルメタクリレート(メタクリル酸−iso−ブチル)、tert−ブチルメタクリレート(メタクリル酸−tert−ブチル)、2−エチルへキシルメタクリレート(メタクリル酸−2−エチルヘキシル)、オクチルメタクリレート(メタクリル酸オクチル)、iso−オクチルメタクリレート(メタクリル酸−iso−オクチル)、デシルメタクリレート(メタクリル酸デシル)、イソデシルメタクリレート(メタクリル酸イソデシル)、イソノニルメタクリレート(メタクリル酸イソノニル)、ネオペンチルメタクリレート(メタクリル酸ネオペンチル)、トリデシルメタクリレート(メタクリル酸トリデシル)、ラウリルメタクリレート(メタクリル酸ラウリル)等のメタクリル酸アルキルエステル;シクロへキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリシクロデシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等の脂環式アルキルメタクリレート等が挙げられる。
前記官能基を有さないアクリル系モノマーの中で、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましく、特にn−ブチルアクリレート(アクリル酸−n−ブチル)、2−エチルへキシルアクリレート(アクリル酸−2−エチルへキシル)を用いることが好ましい。
また、前記ビニル系モノマーとしては、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミド、N−ジメチルメタクリルアミド、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
さらに、前記官能基としてカルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸又はこれらのモノマーから誘導される官能性モノマー等が挙げられる。
なお、このようにして得られるアクリル系共重合体は、成形体、粘着剤、塗料、繊維、シーリング剤等の種々の用途に利用することができるものである。
本発明にかかるアクリル系共重合体のカルボキシル基は、分子末端又は分子鎖中間に存在してもよく、側鎖上又は主鎖上のどちらに存在してもよい。また、本発明にかかるアクリル系共重合体は、ランダム共重合したものであってもブロック共重合したものであってもよい。また、本発明に用いられるアクリル系共重合体の構造は単一なものに限られず、様々な繰り返し単位のアクリル系共重合体を混合したものを用いることも可能である。
さらに、本発明にかかるアクリル系共重合体としては、前述のようにして得られる2種以上のモノマーを共重合させたアクリル系共重合体の他にも、異なるアクリル系単独重合体同士を混合したもの、アクリル系単独重合体とアクリル系共重合体とを混合したもの、又はアクリル系共重合体同士を混合したものを用いることができる。
また、本発明にかかるアクリル系共重合体を構成する成分の中で、少なくとも主成分のポリマーのガラス転移温度(Tg)がDSC法により測定される値で−60℃〜−20℃であることが好ましく、全てのポリマーのガラス転移温度が−60〜−20℃であることがより好ましい。このような主成分のポリマーのガラス転移温度が高すぎると、得られる熱伝導性アクリル系樹脂組成物が硬くなる傾向にある。また、このようなアクリル系共重合体を硬化せしめて得られる熱伝導性シート状成形体の硬度としては、日本ゴム協会標準規格(SRIS)に規定されているASKER−Cによる測定で50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましい。
また、本発明にかかるアクリル系共重合体の分子量としてはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算により算出した数平均分子量が800〜20000であることが好ましく、2000〜15000であることがより好ましい。このような分子量が800未満のものでは、極低分子量体(モノマー、ダイマー、トリマー等)が重合体中に存在しやすく、硬化物とした際にブリードアウトするばかりか、硬化させる際にボイドが形成されやすくなる傾向にあり、他方、分子量が20000を超えると、重合体の流動性が低下して作業性に劣るとともに、熱伝導性充填剤を適量添加することが難しくなって得られる熱伝導性シート状成形体の熱伝導性及び難燃性が低下する傾向にある。
また、本発明にかかるアクリル系共重合体におけるカルボキシル基の割合は、水酸化カリウム(KOH)滴定による酸価(AV)が20〜150のものであることが好ましく、50〜150のものであることがより好ましい。このような酸価が20未満では、架橋密度が低くなって得られる熱伝導性シート状成形体の耐熱性が低下するばかりか難燃性も低下する傾向にあり、他方、前記酸価が150を超えると、架橋密度が上がり過ぎて得られる熱伝導性シート状成形体の可撓性が低下する傾向にある。
また、前記アクリル系共重合体の粘度は、圧力1013hPa、温度25℃の条件下で90000mPa・s以下であることが好ましい。前記粘度が90000mPa・sを超えると、重合体の流動性が低下して熱伝導性充填剤の添加、分散が困難となり作業性が低下する傾向がある。なお、本明細書で使用する粘度は、ブルックフィールドBH型回転粘度計での測定値である。前記アクリル系共重合体の流動特性はチキソトロピック流動を示す場合、剪断速度を上げた状態で粘度が90000mPa・s以下になれば好ましく、またダイラタント流動を示す場合、剪断速度が極低剪断の時においても粘度が90000mPa・s以下となるものが好ましい。
さらに、後述のようにして熱伝導性シート状成形体を製造する際にボイドの発生をより確実に防止するという観点から、前記アクリル系共重合体としては、実質的に溶剤分を含有しないものを使用することが好ましい。
本発明にかかる官能基として1分子中に2個以上のグリシジル基を有する化合物は、本発明においては硬化剤としての役割を果たすものである。すなわち、前記グリシジル基を有する化合物はアクリル系共重合体のカルボキシル基と反応して硬化物を与えることができるものである。
このようなグリシジル基を有する化合物としては、種々のものが使用できるが、具体的には、ソルビトールポリグリシジルエーテル(SORPGE)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(PGPGE)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(PETPGE)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(DGPGE)、グリセロールポリグリシジルエーテル(GREPGE)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(TMPPGE)、レゾルシノールジグリシジルエーテル(RESDGE)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(NPGDGE)、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル(HDDGE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(PGDGE)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(PPGDGE)、ポリブタジエンジグリシジルエーテル(PBDGE)、フタル酸ジグリシジルエーテル(DGEP)、ハロゲン化ネオペンチルグリセロールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(DGEBA)、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテル(DGEBF)等が挙げられ、特に好ましくは、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(TMPPGE)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(SORPGE)等が使用される。
また、本発明にかかる官能基として1分子中に2個以上のグリシジル基を有する化合物のエポキシ当量(WPE)は80〜400の範囲にあることが好ましい。前記エポキシ当量が80未満であると前記アクリル系共重合体と反応させるために、前記化合物を多く添加することが必要となって得られる熱伝導性シート状成形体の要求性能が十分果たせない傾向にあり、他方、前記エポキシ当量が400を超えると、反応速度が速くなりすぎて熱伝導性シート状成形体の製造が困難となる傾向にある。
また、このようなグリシジル基を有する化合物としては、圧力1013hPa、温度25℃の条件下において液状のものであることが好ましい。
さらに、このようなグリシジル基を有する化合物としては、圧力1013hPa下で150℃の温度条件で10分間加熱した後の加熱重量減少値が加熱前の重量に対して3%以下となるような実質的に溶媒を含まないものであることが好ましい。このような加熱重量減少値が3%を超えると、含有されている溶媒が反応の障害となり熱伝導性シート状成形体の製造が困難となる傾向にあり、更には、含有されている溶媒が得られる熱伝導性シート状成形体の内部に気泡を発生させる原因となるためである。なお、このような加熱重量減少値は、メトラートレド株式会社製のHG53型ハロゲン水分計を用い、常圧下(1013hPa)で、試料5gを150℃の温度条件で10分間加熱した時の重量変化を測定し、加熱前後の重量比較により減少率を算出したものである。
本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物は、前記アクリル系共重合体と前記グリシジル基を有する化合物とをマトリックスとする。ここで、このようなマトリックス中における前記アクリル系樹脂組成物に対する前記グリシジル基を含有する化合物の添加量としては、前記アクリル系共重合体の酸当量100に対してエポキシ当量が80〜150の範囲内にあることが好ましい。前記エポキシ当量が80未満の場合は、熱伝導性シート状成形体の製造の際に硬化が充分に進行せず完全に固化しなくなって得られる熱伝導性シート状成形体の耐熱性と難燃性が低下する傾向にあり、他方、前記エポキシ当量が150を超えると、得られる熱伝導性シート状成形体に、未反応で過剰な前記グリシジル基を含有する化合物が残留するため経時でのブリードアウトが生じるばかりか難燃性も低下する傾向にある。
本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物は、前記マトリックス中に熱伝導性充填剤として金属水酸化物粉を含有するものである。このような金属水酸化物粉は、他の熱伝導性充填剤と比較して樹脂との相溶性が高く、難燃性が高い。このような金属水酸化物粉としては、分解温度が250℃以上の金属水酸化物粉であることが好ましく、具体的には水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等の粉末が挙げられる。前記分解温度が250℃未満では、得られる熱伝導性シート状成形体に十分な熱伝導性を付与することが困難となる傾向にある。なお、上記分解温度の測定方法は、金属水酸化物粉(熱伝導性充填剤)のみをTGA(Thermo Gravimetric Analyzer)により、大気雰囲気下、室温〜600℃まで昇温速度10℃/minにより測定を行い、重量減少を生じる温度を測定して分解温度とするものである。
このような金属水酸化物粉の大きさ、形状等は特に制限されるものではないが、金属水酸化物粉の形状としては球状又は擬球状であることが好ましい。
また、このような金属水酸化物粉の粒径は0.5〜30μm程度であることが好ましい。前記粒径が0.5μm未満では前記金属水酸化物粉を前記マトリックス中に含有せしめた際に液体の粘度が高くなり過ぎて熱伝導性シート状成形体を製造することが困難となる傾向にあり、他方、前記粒径が30μmを超えると前記金属水酸化物粉が前記マトリックス中に混入し難いため均一に分散し難くなる傾向にある。
さらに、このような金属水酸化物粉としては、同じ組成の金属水酸化物粉の粒径の異なるものを組み合わせて用いることも可能である。このようにして粒径の異なるものを数種類組み合わせて金属水酸化物粉を前記マトリックスに含有させることによって、得られる熱伝導性アクリル系樹脂組成物の粘度を低下させることが可能となる。
本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物中における前記金属水酸化物粉の添加量としては、前記アクリル系共重合体100質量部に対して100〜500質量部である。前記金属水酸化物粉の添加量が100質量部未満では、十分な難燃性及び熱伝導性を確保できない。他方、前記金属水酸化物粉の添加量が500質量部を超えると、難燃性及び熱伝導性は向上するが、得られる熱伝導性アクリル系樹脂組成物の粘度が高くなって熱伝導性シート状成形体の製造が困難となる。
また、このような金属水酸化物粉(熱伝導性充填剤)の添加量としては、前記アクリル系共重合体100質量部に対して250〜500質量部であることが好ましく、260〜500質量部であることがより好ましい。このような添加量とすることで、熱伝導性と難燃性とがより向上する傾向にある。
さらに、このような金属水酸化物粉には、他の伝導性充填剤を組み合わせて用いることも可能である。このような他の伝導性充填剤としては、窒化硼素、窒化アルミ等の窒化物、アルミナ、マグネシア等の金属酸化物、炭化珪素、カーボン、銅、銀、アルミ等の金属粉末を添加することも可能であり、更には、熱伝導的には必ずしも優れない炭酸カルシウム等の炭酸金属や、クレー、カオリン等の充填剤等を添加することも可能である。
本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物は、前記マトリックス中に前記金属水酸化物粉に加えて湿潤分散剤を含有するものである。本発明にかかる湿潤分散剤は、前記アクリル系共重合体との相溶性を向上させることが可能な官能基と前記熱伝導性充填剤(フィラー)に吸着することが可能な官能基とを有している湿潤分散剤を好適に用いることができる。このような湿潤分散剤を含有させていない系においては、前記金属水酸化物粉の粒子同士が相互に衝突して凝集してしまう。そして、このような凝集を起こした系においては、見掛けの粒子径が大きくなるため、早期に沈降(あるいは浮上)分離を起こしてしまう。
本発明においては、前記マトリックス中に前記金属水酸化物粉に加えて湿潤分散剤を含有させるため、前記湿潤分散剤を前記金属水酸化物粉の粉体表面に吸着させてより大きな電荷を持たせることが可能となり、これにより粉体粒子同士の静電反発力を高めて前記金属水酸化物粉の凝集を防止できる。また、本発明においては、前記粉体粒子表面に吸着されている前記湿潤分散剤同士の立体反発力によっても、前記金属水酸化物粉の凝集が防止できる。
このような湿潤分散剤としては、硼酸基及び/又は燐酸基を有する飽和ポリエステル系コポリマー、多価アルコール有機酸エステル、特殊アルコール有機酸エステル、ウレタン変性アクリルコポリマー、高分子量ポリエステル、ポリカルボン酸共重合体、アリルアルコールと無水マレイン酸とスチレン共重合物とポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルとのグラフト化物、ポリアクリル酸アンモニウム塩、アクリル共重合物アンモニウム塩、シリコン系ポリマーエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
このような湿潤分散剤の中でも、硼酸基及び/又は燐酸基を有する飽和ポリエステル系コポリマーを用いることが好ましい。
本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物における前記アクリル系共重合体に対する湿潤分散剤の添加量は、0.05〜3.0質量部である。前記湿潤分散剤の添加量が0.05質量部未満では、前記マトリックスと前記金属水酸化物粉との相溶性が低くなって混練りが困難となり、他方、湿潤分散剤の添加量が3.0質量部を超えると得られる熱伝導性アクリル系樹脂組成物の増粘、ゲル化が起こり、前記組成物の硬化性が低下して熱伝導性シート状成形体の製造が困難になる。
本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物は、主剤としての前記アクリル系共重合体と、硬化剤としての前記グリシジル基を有する化合物とからなるマトリックスに、熱伝導性充填剤としての金属水酸化物粉及び前記湿潤分散剤を含有させて製造することができる。具体的には、本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物は、各成分を各々前述の添加量となるように計量して配合し、混合攪拌することで製造することができる。このような混合攪拌の方法は特に制限されるものではなく、重合体の組成、粘度、金属水酸化物粉の種類、各成分の添加量により適宜選定することができ、具体的には、ディゾルバーミキサー、ホモミキサー等の攪拌機を用いる方法が挙げられる。また、前記グリシジル基を有する化合物に、予め金属水酸化物粉を混合しておくことも可能であり、このような混合においても前記混合攪拌の方法を用いることができる。
また、このようにして混合攪拌されものを必要に応じて、例えば未分散の金属水酸化物粉等の固まりを除去する目的で濾過してもよい。このような濾過を行うことで、均質な熱伝導性アクリル系樹脂組成物が得られ、熱伝導性シート状成形体の製造を効率良く行うことが可能となる。また、このような混合攪拌を行う際に液中に生じる気泡は減圧下で脱泡することが好ましい。このような脱泡を行うことで、得られる熱伝導性アクリル系樹脂組成物を用いて製造される熱伝導性シート状成形体に気泡が生じることを防止することが可能となる。
また、本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物には、難燃性をより向上させるという観点から、難燃剤を添加することが好ましい。このような難燃剤としては、ポリ燐酸アンモニウム、膨張黒鉛、赤燐、燐酸エステル系、燐酸アンモン、炭酸アンモン、錫酸亜鉛、トリアジン化合物、メラミン化合物、グアニジン化合物、硼酸、硼酸亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
また、このような難燃剤として用いられる膨張黒鉛は、鱗片状の黒鉛の層間にある化合物をインターカレーション(層間挿入)して作られるものであり、インターカレーションする化合物の種類により膨張温度をコントロールすることができるものである。このような膨張黒鉛を添加することによって難燃性が発現する機構は完全には解明されていないが、燃焼時の熱により層間に入っている化合物がガス化することにより鱗片状黒鉛が膨張しチャー形成することにより高い難燃性が発現されると本発明者らは推察する。
このような難燃剤として用いられる膨張黒鉛の膨張温度としては、200℃以上が好ましく、270℃以上であることがより好ましい。前記膨張黒鉛の膨張温度が200℃未満では、熱伝導性シート状成形体が使用される環境が最高で120〜150℃の温度条件に達することから、使用中に熱伝導性シート状成形体が膨張してしまう傾向にあり、更には、熱伝導性アクリル系樹脂組成物を架橋硬化させる際の加熱温度下においても膨張してしまう傾向にある。
また、このような膨張黒鉛の粒径は特に制限されないが、アクリル系共重合体樹脂マトリックスへの分散性及び熱伝導性シート状成形体の製造適性の観点から、10μm〜50μm程度であることが好ましい。
さらに、熱伝導性アクリル系樹脂組成物中における前記難燃剤の含有量としては、10〜80質量部であることが好ましい。前記難燃剤の配合量が前記下限未満では、難燃性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、加工性が低下してコストが高くなり経済性が低下する傾向にある。
また、本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物には、更に反応性触媒成分を含有させることが好ましい。このような反応性触媒成分は特に限定されないが、例えば4級アンモニウム、3級アミン、環状アミン、環状アミンの塩、リン系化合物、ルイス酸等が好適に使用される。
このような反応性触媒成分として用いられる4級アンモニウム塩としては、具体的には、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド(TEBAC)、テトラブチルアンモニウムクロライド(TBAC)、テトラメチルアンモニウムクロライド(TMAC)等が挙げられる。
また、前記反応性触媒成分として用いられる3級アミンとしては、具体的には、トリエチレンジアミン(TEDA)、ベンジルジメチルアミン等が挙げられ、前記反応性触媒成分として用いられるイミダゾール化合物として、具体的には、1,2−ジメチルイミダゾール(1,2DMZ),1−ベンジルー2−メチルイミダゾール(1B2MZ)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)、2−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ−CN)等が挙げられる。
また、前記反応性触媒成分として用いられるリン系化合物として、具体的には、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
さらに、前記反応性触媒成分として用いられるルイス酸としては、具体的には、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化錫、三フツ化ホウ素等が挙げられ、三フツ化ホウ素のモノエチルアミン及びエタノールアミン化合物を用いることが好ましい。
このような反応性触媒成分の中でも、反応性の観点から、3級アミン及びイミダゾール系化合物を使用することが好ましい。このような3級アミン及びイミダゾール系化合物の中でも2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)が特に好適に使用される。なお、このようなイミダゾール系化合物は、前記アクリル系共重合体中のカルボキシル基と化合物中のグリシジル基との反応触媒として作用するとともに、余剰のグリシジル基と連鎖的に反応するため、未反応のグリシジル基を含有する化合物による物性の低下を防止できるものと考えらえるが詳しいメカニズムは不明である。
また、このような反応性触媒成分の配合の割合としては、アクリル系共重合体100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることがより好ましい。
このような反応性触媒成分を本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物に混合させる方法としては、アクリル系共重合体に、触媒を予め配合しておいて、その後、グリシジル基を含有する化合物を混合することが好ましい。
さらに、本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物には、熱伝導性シート状成形体の要求性能に応じて、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤等を適宜添加することが可能である。
次に、本発明の熱伝導性シート状成形体につき説明する。このような熱伝導性シート状成形体は、前述の本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物をシート状に成形し且つ硬化せしめて得られる。
このような熱伝導性アクリル系樹脂組成物をシート状に成形し且つ硬化せしめる方法としては、特に制限されず、適宜公知の方法を用いることが可能である。このような方法としては、例えば、基材となるフィルム(ポリエステルフィルム等)の上に前記熱伝導性アクリル系樹脂組成物をコーティングし、160〜200℃の温度条件下で5〜15分間加熱することによって硬化させる方法を挙げることができる。
このような本発明の熱伝導性シート状成形体の厚さとしては、0.5mm〜3mmであることが好ましく、1.0mm〜2.0mmであることがより好ましい。前記厚さが0.5mm未満では、十分な難燃性を達成できない傾向にあり、他方、前記厚さが3mmを超えると、難燃化は容易となるものの、電子機器部品等の使用目的にそぐわない製品となってしまう傾向にある。
このような熱伝導性シート状成形体は、必要に応じて切断することが可能であり、任意の形状にすることにより熱伝導が必要な部位に容易に貼着させることも可能である。
また、このような熱伝導性シート状成形体は、UL(Underwriters Laboratories Inc.)のプラスチックの難燃性規格であるUL−94 V(Vertical Barning Test)でV−0程度の高い難燃性を有するものとなる。
なお、UL−94 V−0の規格においては、熱伝導性シート状成形体を13.0mm×127mmの大きさに切断したものを試料とし、以下の5項目の条件を満たすことを規定している。
1) 各資料の1回目又は2回目の接炎後の燃焼時間が10秒以下
2) 10回(2日目の接炎を含む)の接炎後の燃焼時間の合計が50秒以下
3) 2回目の接炎後の燃焼時間と火種時間の合計が30秒以下
4) 125mmマークに達する燃焼又は火種がないこと
5) 落下物による脱脂綿の着火がないこと。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜14及び比較例1〜10)
先ず、表1に示すカルボキシル基を有するアクリル系共重合体、表3に示す熱伝導性充填剤(金属水酸化物粉、金属酸化物(比較例のみで使用)又は窒化物(比較例のみで使用))、表4に示す湿潤分散剤及び表5に示す難燃剤を、それぞれ表6及び表7に示す割合で配合して混合攪拌して充分に減圧下脱泡した後、表2に示す1分子中に2個以上のグリシジル基を有する化合物を表6及び表7に示す割合で配合して再度混合攪拌して減圧下脱泡して、熱伝導性アクリル系樹脂組成物を得た。
次に、このようにして得られた熱伝導性アクリル系樹脂組成物を、表面がシリコン離型処理されているポリエステルフィルム上にコーティングした後、180℃のオーブン中で10分間加熱することにより硬化させた。その後、常温にて24時間放置することにより養生して熱伝導性シート状成形体を得た。
このようにして得られた各熱伝導性シート状成形体について、以下のような評価を行った。
〈熱伝導性の試験〉
実施例1〜14及び比較例1〜10で得られた各熱伝導性シート状成形体について、京都電子社製のQTM−500を用いて熱伝導率(W/m・K)を測定した。このような熱伝導率は、熱伝導率が既知である基準物質の上に試料を置き、数種類の基準物質に対して偏差を求めた後、基準物質の熱伝導率を横軸にし、偏差を縦軸にしてプロットし、偏差がゼロとなる交点を求めることにより算出した。得られた結果を表6及び表7に示す。
〈難燃性の試験〉
実施例1〜14及び比較例1〜10で得られた各熱伝導性シート状成形体について、以下のようにして難燃性の評価を行った。すなわち、各熱伝導性シート状成形体を13.0mm×127mmの大きさに切断したものを試料とし、UL(Underwriters Laboratories Inc.)のプラスチックの難燃性規格であるUL−94 V(Vertical Barning Test)に準拠した測定を行った。このような試験の評価基準は下記の通りである。また、その評価方法は、下記V−0に規定された5項目を満たすか否かを評価し、5項目全てを満たす場合には評価はV−0となる。また、V−0に規定された5項目のうち1項目でも満たさないものがある場合においては、次に、V−1に規定された5項目を満たすか否かを評価し、5項目全てを満たす場合には評価はV−1となる。さらに、V−1に規定された5項目のうち1項目でも満たさないものがある場合においては、V−2に規定された5項目を満たすか否かを評価し、5項目全てを満たす場合には評価はV−2となり、5項目のうち1項目でも満たさない場合には評価は不合格となる。得られた結果を表6及び表7に示す。
評価基準
〔V−0〕
1) 各サンプルの1回目又は2回目の接炎後の燃焼時間が10秒以下
2) 10回(2日目の接炎を含む)の接炎後の燃焼時間の合計が50秒以下
3) 2回目の接炎後の燃焼時間と火種時間の合計が30秒以下
4) 125mmマークに達する燃焼又は火種がないこと
5) 落下物による脱脂綿の着火がないこと。
〔V−1〕
1) 各サンプルの1回目又は2回目の接炎後の燃焼時間が30秒以下
2) 10回(2日目の接炎を含む)の接炎後の燃焼時間の合計が250秒以下
3) 2回目の接炎後の燃焼時間と火種時間の合計が60秒以下
4) 125mmマークに達する燃焼又は火種がないこと
5) 落下物による脱脂綿の着火がないこと。
〔V−2〕
1) 各サンプルの1回目又は2回目の接炎後の燃焼時間が30秒以下
2) 10回(2日目の接炎を含む)の接炎後の燃焼時間の合計が250秒以下
3) 2回目の接炎後の燃焼時間と火種時間の合計が60秒以下
4) 125mmマークに達する燃焼又は火種がないこと
5) 落下物による脱脂綿の着火があった。
〈加工性〉
実施例1〜14及び比較例1〜10において得られた熱伝導性アクリル系樹脂組成物について、熱伝導性シート状成形体を製造する際の加工適性を評価した。すなわち、各熱伝導性アクリル系樹脂組成物について、ラボスターラーを用いて混練りが容易であるか否かを観測して加工適性の評価を行った。評価基準は下記の通りである。結果を表6及び7に示す。
評価基準
◎:粘度が低く混練りが可能であり、シート化も容易であった。
○:粘度がやや高いが混練りが可能であり、シート化も容易であった。
△:粘度が高く混練りがやや困難であり、シート化もやや困難であった。
×:粘度が高く混練りが困難であり、シート化も困難であった。
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表6及び表7に示す結果からも明らかなように、各実施例で得られた本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物は加工適性が高く、しかもこれを用いて製造された本発明の熱伝導性シート状成形体は、熱伝導率と難燃性とが共に高いものであることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、熱伝導性充填剤を高比率で含有させることを可能として優れた難燃性及び熱伝導性を達成し、しかも粘度を低く抑えて加工適性の向上を可能とする熱伝導性アクリル系樹脂組成物、並びにそれを用いた熱伝導性シート状成形体を提供することが可能となる。
したがって、本発明の熱伝導性アクリル系樹脂組成物は加工適性に優れ、優れた難燃性と熱伝導性を有する熱伝導性シート状成形体を製造することが可能であり、このような熱伝導性シート状成形体は、電子機器部品の熱を冷却装置に伝達させる熱伝導材等として有用である。

Claims (5)

  1. 官能基としてカルボキシル基を有するアクリル系共重合体と、官能基として1分子中に2個以上のグリシジル基を有する化合物とをマトリックスとする熱伝導性アクリル系樹脂組成物であって、前記アクリル系共重合体100質量部に対して、熱伝導性充填剤として金属水酸化物粉が100〜500質量部含有されており、且つ湿潤分散剤が0.05〜3質量部含有されていることを特徴とする熱伝導性アクリル系樹脂組成物。
  2. 前記湿潤分散剤が、硼酸基及び/又は燐酸基を有する飽和ポリエステル系コポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性アクリル系樹脂組成物。
  3. 前記金属水酸化物粉として水酸化アルミニウムが前記アクリル系共重合体100質量部に対して250〜500質量部含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱伝導性アクリル系樹脂組成物。
  4. 前記アクリル系共重合体100質量部に対して10〜80質量部の難燃剤が更に含有されていることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の熱伝導性アクリル系樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の熱伝導性アクリル系樹脂組成物をシート状に成形及び硬化せしめてなるものであることを特徴とする熱伝導性シート状成形体。
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