JP2006176593A - 臭気を低減した天然ゴム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の臭気を低減した天然ゴムは、凝固前の天然ゴムラテックス、または凝固後に粉砕した天然ゴムに酸化防止剤を添加し、乾燥温度115℃以下で乾燥させてなる臭気を低減したもの、特に上記の乾燥温度を105℃以下で乾燥させてなり、酸化防止剤としては、例えば、L−アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、亜硫酸アルカリ金属塩類、亜硫酸アルカリ土類金属塩類、カテキン、トコフェロール、フェノール、レゾルシン、アミノフェノール、キシレノール、フェノール系老化防止剤、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン・ケトン系老化防止剤、硫黄系2次老化防止剤の中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【選択図】 なし
Description
また、上記下級グレードTSRの原料のカップランプやスラブは、農家で収穫されてから工場に入荷する前に約1ヶ月前後の流通期間があり、その間に非ゴム成分が酸化・分解して強い悪臭を発するようになる。これらの悪臭は、水洗・粉砕工程でかなりの程度、洗い流されるが、次工程の熱風乾燥で再び非ゴム成分である脂肪酸やタンパク質が酸化したり分解したりして悪臭を発するようになる。
しかしながら、タイヤ工場等に搬入された上記の原料天然ゴムにあっては、合成ゴムと比較して分子量が大きいため、直接、各種の配合剤を均一に混練りすることが難しい。このため、天然ゴムを少量の素練り促進剤と共に混練りし、ゴム分子量を適度な大きさに下げる操作を必要とする場合がある。この操作等を、「素練り」という。
素練り中にゴム温度は130〜150℃程度に上昇する。温度上昇(発熱)により、天然ゴムに含有されていた臭気成分は発散すると共に、上述の非ゴム成分が更に酸化・分解し新たな臭気を発散する。これら臭気が工場内外に漏れると環境問題になる。
他方、天然ゴムには、天然の高級脂肪酸やタンパク質などの非ゴム分が含まれることは上述の如く良く知られている。従って、天然ゴムに含有される高級脂肪酸、タンパク質が、天然ゴム生産工程での燻製や熱乾燥、ゴム製品工場での素練りにおいても上記同様の反応を生じることは容易に推察される。
この素練りゴムは、更に、カーボンブラックや各種配合薬品と共に混練りされるが、この工程では臭気がカーボンブラックなどに吸収されるため臭気問題は素練りほど大きくないが未だ特有の臭気を有するものである。
一方、天然ゴムの臭気を低減する方法としては、例えば、天然ゴムラテックスから天然ゴムを製造するに際し、天然ゴムラテックスを凝固前又は凝固後に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムから選ばれる1種以上のアルカリ溶液に接触させることにより、微生物によって非ゴム分から作り出される臭気成分の揮発性脂肪酸を不揮発性の脂肪酸に変えることにより臭いを低減した天然ゴムの製造方法が知られている(特許文献1参照)。
更に、天然ゴム製品の使用によるアレルギー症状の発現を防止するために、近年、脱タンパク天然ゴムラテックスが開発され、使用されている。この脱タンパク天然ゴムラテックスは、耐老化性が劣るためラテックスにフェノール系等の老化防止剤を添加すること、更にこの老化防止剤の添加による変色防止(白色のラテックス全体が桃色に変色するピンキング現象防止)のために水溶性ジチオカルバミン酸誘導体の塩などの脱タンパク天然ゴムラテックスの変色防止剤を添加することなどが知られている(特許文献3参照)。
従って、本発明は、上記課題及び現状に鑑み、タイヤゴム工場等における素練り工程でも臭気を発生せず、外部環境だけでなく作業環境にも優しい、臭気をより効果的に低減してなる天然ゴム及びその製造方法、その天然ゴムを用いたゴム組成物を提供することを目的とする。
即ち、本発明は、以下の構成又は構造を有することを特徴とするものである。
(3)上記酸化防止剤は、乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加してなる上記(1)記載の天然ゴム。
(4)凝固後に粉砕した天然ゴム原料は、10mm以下の大きさの粒子に粉砕され、且つ酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されるか、又は該水溶液でスプレーされる上記(1)記載の天然ゴム。
(5)天然ゴム原料がラテックス凝固ゴム、カップランプ、スラブ、未燻製ゴムから選ばれる少なくとも1種である上記(4)記載の天然ゴム。
(6)酸化防止剤がL−アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、亜硫酸アルカリ金属塩類、亜硫酸アルカリ土類金属塩類、カテキン、トコフェロール、フェノール、レゾルシン、アミノフェノール、キシレノール、フェノール系老化防止剤、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン・ケトン系老化防止剤、硫黄系2次老化防止剤の中から選ばれる少なくとも1種である上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の臭気を低減した天然ゴム。
(7)酸化防止剤が硫黄系2次老化防止剤を含む少なくとも2種以上の酸化防止剤である上記(1)〜(6)の何れか一つに記載の天然ゴム。
本発明の臭気を低減した天然ゴム及びその製造方法は、用いる天然ゴムラテックスの形態、加工度合い等に応じて好適な実施形態を規定するものであり、本発明は以下の実施形態の範囲に限定されるものではない。
天然ゴムの製造方法としては、一般に下記の2つの方法が代表的である。すなわち、天然ゴム各種等級品の国際品質包装標準(通称グリーンブック)における格付けによるリブド・スモークド・シート(RSS)では、タッピング後、採取した天然ゴムラテックスを酸等によりゴム成分を凝固(USS)せしめて、固形ゴムをロールにより水溶性の非ゴム成分から分離し、この固形ゴムを約60℃で5〜7日間の乾燥(スモーキング)を行なう。また、技術的格付けゴム(TSR)では、タッピング後、天然ゴムラテックスのゴム成分を自然凝固(カップランプ)せしめて、固形ゴムを粉砕し、水洗し、脱水後、この固形ゴムを熱風乾燥をする。
本発明の天然ゴムは、基本的に凝固前のゴムラテックス、及び凝固後の上記の原料ゴム(RSS、USS、カップランプ、及びその混合物等)に酸化防止剤が添加されるものである。
凝固前のラテックスに対して、すなわち、ゴム成分の他、非ゴム成分(セラム成分、ボトム成分)を含む凝固前のラテックスに対して、酸化防止剤を添加する。好ましくは乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加する。
天然ゴムのラテックスとしては、例えば、天然ゴム木からタッピングして3時間以内に使用するタッピング後のフレッシュラテックス、タッピング後のラテックスにアンモニア処理等で安定化してなる安定化剤を加えた、好ましくはpH7.0程度のラテックス、またこれらのラテックスを遠心分離機により遠心分離した遠心分離ラテックスの少なくとも1種(各単独又は2種以上の組合わせ使用)を挙げることができる。
凝固処理には、自然凝固によって得ることもできるが、通常、以下の凝固酸等による化学的な処理と機械的な装置を使用する機械的処理を行うことが好ましい。
化学的処理は、ゴムラテックスに凝固酸等を添加して所望の時間熟成させて固形ゴムとするものである。凝固酸は、有機酸又は無機酸でもよく、例えば、ギ酸や硫酸等を代表として挙げることができ、処理ラテックスにpH5.0以下になるように酸を加え、特に、pHが3.0〜4.8の範囲であることが好ましい。
本発明では、上述の凝固処理したラテックス凝固ゴム、カップランプ、スラブ、及び未燻製ゴム、及びその混合物等を原料として粉砕処理(クラム化処理)することが好ましい。これは、通常、均一な乾燥のために行うものであり、例えば、クレーパー工程及び/又はシュレッダー工程を経ることによりクラム化することができる。クレーパー工程としては、例えば、SPHERE社製のCreper Model CRC 14/28に凝固物を4回通してクレーパーシートを得ることができ、また、シュレッダー工程としては、例えば、SPHERE社製のShvedder Model CRC 14/28にこのクレーパーシートを投入しクラムを得ることができる。尚、本発明において、凝固させた天然ゴムは、通常のTSRプロセスと同様にクレーパーナシュレッダー、又はペレタイザーなどにかけてクラム化することが好ましい。
本発明において、酸化防止剤は凝固前にゴムラテックスに加えてなるか、又は乾燥前のゴムに浸漬又は噴霧して加えるか、によって天然ゴムに添加することができる。中でも凝固前に酸化防止剤をゴムラテックスに加えてなることが良い。凝固前の添加では、均質に分散した天然ゴム原料が得られることとなる。
尚、凝固前とは、ゴムラテックスが凝固状態にある前であり、例えば、ゴムラテックス状態にある限り、酸化防止剤は上述の凝固酸と同時にゴムラテックスに配合しても良く、また、凝固酸等の添加の後でも良い。しかしながら、好ましくは酸化防止剤をゴムラテックスに投入混合した後に凝固処理(その他の凝固処理を含む。)を開始することが好ましい。
上述の酸化防止剤が水溶性の場合は、水溶液にして用いても良く、また、非水溶性の酸化防止剤は、まずエチルアルコール等に溶解し、それをカルボン酸塩ないしアルキルアリールスルホン酸塩の界面活性剤入りの水(精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等)で希釈して懸濁液として添加してもよいものである。
酸化防止剤水溶液の濃度は、0.005〜5質量%であることが好ましい。上記濃度が薄すぎると、目的の臭気低減効果を発揮することができず、また、5%超過の濃度では、酸化防止剤が多量にゴム中に残るため、そのものの臭気が悪影響を及ぼすことがあり、好ましくない。
また、酸化防止剤を噴霧する態様としては、噴霧器を用いてUSSシート、クラムにコンベア上で両面から均一に噴霧することなどが挙げられる。本発明では、天然ゴム(の生ゴム)に、酸化防止剤を上述の浸漬の態様で、または、上述の噴霧の態様にて添加することができ、更に、必要に応じて、この浸漬と噴霧の態様を併用して添加することもできる。
また、未燻製ゴムシートとしては、浸漬、噴霧、及びその後の燻製による乾燥のしやすさの点から、大きさ(縦×横)が(400〜500)×(1000〜1300)mmであり、厚さが3〜5mmとなるものを用いることが好ましい。未燻製ゴムシートは酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬される。
用いることができる酸化防止剤としては、例えば、L−アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、亜硫酸アルカリ金属塩類(Na,K等)、亜硫酸アルカリ土類金属塩類(Mg,Ca等)、カテキン、トコフェロール、フェノール、レゾルシン、アミノフェノール、キシレノール、フェノール系老化防止剤、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン・ケトン系老化防止剤、硫黄系2次老化防止剤の中から選ばれる少なくとも1種(各単独又は2種以上の混合物、以下同様)が挙げられる。
更に、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリル−3,3´−チオジプロピオネートなどの硫黄系2次老化防止剤は、自動酸化で生じるヒドロペルオキシドを安定なアルコールに変えるので、他の酸化防止剤と併用することが有効であり、臭気低減効果が高いものである。
これらの酸化防止剤において、上記フェノール系老化防止剤、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン・ケトン系老化防止剤、硫黄系2次老化防止剤等は、ゴム業界において使用するものであるが、その使用時期は、素練り以後に用いるものであり、本発明では天然ゴム製造工程中等における臭気低減を目的としてラテックス凝固前等に添加するものであり、その使用時期、使用目的、用途が相違し、両者は区別化されるものである。
この添加量が0.0001質量部未満では、添加量が少ないため、目的の臭気低減効果を発揮することができず、また、1.0質量部を越えると、添加量が多くなり、酸化防止剤がゴム中に残るため、そのものの臭気が悪影響を及ぼすことがあり、好ましくない。
本発明において上述の酸化防止剤を添加した天然ゴム材料は、乾燥温度を115℃以下で乾燥する。より好ましい乾燥温度は100℃〜105℃の範囲である。
上述の乾燥防止剤は、それ自身が選択的に酸化され、その近傍に存在するものの酸化を防止する働きがある。そして、酸化防止剤自身が酸化を受ける速さは、その雰囲気温度と密接に関係し、温度が10℃相違しても反応速度は数倍の相違がある。従来、天然ゴムの乾燥温度は120℃前後であるが、本発明の天然ゴム及びその製造方法にあっては、乾燥温度を115℃以下、好ましくは105℃以下にて乾燥するので、天然ゴムに存在する酸化防止剤の消耗量が大幅に抑制される。このため、タイヤ等のゴム工場で実施される素練り工程で、酸化防止剤が十分に作用することとなり、工場内の作業環境を悪化させない。また、乾燥温度が、100℃未満では、乾燥に時間がかかり、乾燥も十分になされない。
従って、本発明のゴム組成物では、臭気を低減した天然ゴムを用いるので、素練り以後の各種ゴム組成物製造工程においても、天然ゴム由来の臭気は低減した状態でゴム組成物が得られることとなる。
〔実施例1〜6及び比較例1〜5〕
下記表1に天然ゴム原料がカップランプの場合における下級グレードTSRの実施例及び比較例を示す。
浸漬後の各ゴムは、表1に示す温度で熱風乾燥し、各天然ゴム(下級グレードTSR)を得た。
得られた各天然ゴムについて、下記方法により、素練り時の臭気濃度を評価した。これらの結果を下記表1に示す。
試験室用の3.7リッターのバンバリーミキサーで、循環水70、ローター回転数70rpmの条件で、天然ゴム2.2kgを素練り促進剤(ノクタイザーSK、大内新興化学工業社製)1.3kgと共に、3分30秒間素練りした。
2)素練り後、直ちにラムを上昇させ、ゴム投入口から排出する臭気の混じった空気をポンプでサンプリングバックに約2分間、約5リッター回収した。
3)サンプリングバッグに回収された臭気の混じった空気を、化学用シリンジで規定量採取し、それを予め清浄な空気を満たしておいた3リッターの臭い袋に注入した(サンプル)。注入量mlと3リッターとで希釈倍率を求めておく。例えば、注入量が1mlであれば、希釈倍率は3000である。
4)少なくとも3名の臭気モニターによって、清浄な空気と比較してサンプルに臭いが感じられるかどうかを鼻で臭いを判定した。
5)臭いが感じられるなら、希釈倍率を上げたサンプルを準備し、再度モニターによって臭いが感じられるかどうかを判定した。
6)臭いが感じられなくなった希釈倍率を臭気濃度とした。
以上の素練り臭気濃度測定手順は、以下の実施例においても共通である。
特に、実施例4〜6では他の実施例1〜3に較べて更なる臭気濃度低減効果があり、また大きいことが判った。
上記実施例5と比較例1との天然ゴム夫々約10mgを150℃で10分間加熱し、発生するガスをGC−MSで分析し比較した。
その結果、比較例1の天然ゴムからは、多量の低級脂肪酸、アルデヒド類、アンモニア類、窒素環状化合物であるピロリジンが検出された。実施例5の天然ゴムからは殆ど検出されず、低級脂肪酸が微量検出されたのみであった。
このことは、酸化防止剤が、乾燥後においても非ゴム成分の脂肪酸やタンパク質の分解を防止していることを裏付けることが判る。
下記表2に天然ゴム原料がラテックスの場合におけるTSRの実施例及び比較例を示す。乾燥ゴム分5kgを含有するラテックス17リットルに下記表2に示す添加量で酸化防止剤(水溶液)を添加して、撹拌棒で撹拌することにより充分分散せしめた。
このラテックスをギ酸で凝固し、表2に示す乾燥温度で乾燥し、業界で一般に行われている常法で各天然ゴム(上級TSR)を得た。得られた各天然ゴムについて、上記方法により、素練り時の臭気濃度を評価した。これらの結果を下記表2に示す。
Claims (9)
- 凝固前の天然ゴムラテックス、または凝固後に粉砕した天然ゴムに酸化防止剤を添加し、乾燥温度115℃以下で乾燥させてなる臭気を低減した天然ゴム。
- 上記の乾燥温度が105℃以下である請求項1記載の天然ゴム。
- 上記酸化防止剤は、乾燥ゴム分100質量部に対して、0.0001〜1.0質量部添加してなる請求項1記載の天然ゴム。
- 凝固後に粉砕した天然ゴム原料は、10mm以下の大きさの粒子に粉砕され、且つ酸化防止剤の0.005〜5%濃度の水溶液又は懸濁液に浸漬されるか、又は該水溶液でスプレーされる請求項1記載の天然ゴム。
- 天然ゴム原料がラテックス凝固ゴム、カップランプ、スラブ、未燻製ゴムから選ばれる少なくとも1種である請求項4記載の天然ゴム。
- 酸化防止剤がL−アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、亜硫酸アルカリ金属塩類、亜硫酸アルカリ土類金属塩類、カテキン、トコフェロール、フェノール、レゾルシン、アミノフェノール、キシレノール、フェノール系老化防止剤、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アミン・ケトン系老化防止剤、硫黄系2次老化防止剤の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5の何れか一つに記載の臭気を低減した天然ゴム。
- 酸化防止剤が硫黄系2次老化防止剤を含む少なくとも2種以上の酸化防止剤である請求項1〜6の何れか一つに記載の天然ゴム。
- 請求項1に記載の天然ゴムに充填剤を配合してなることを特徴とするゴム組成物。
- 凝固前の天然ゴムラテックス、または凝固後に粉砕した天然ゴムに酸化防止剤を添加し、該酸化防止剤処理した天然ゴムを115℃以下で乾燥させる請求項1記載の臭気を低減した天然ゴムの製造方法。
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