JP2006175141A - アウトソール及びこれを備えた靴 - Google Patents

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育子 梅澤
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Abstract

【課題】 十分なウエットグリップ性と十分な鳴き防止性とを備えたアウトソール、及びこのアウトソールを備えた靴の提供。
【解決手段】 靴のアウトソール5は、ゴム組成物から形成されており、N領域とU領域とを備えている。N領域は爪先寄りに存在しており、U領域は踵寄りに存在している。N領域は、アクリロニトリル−ブタジエンゴムを基材ポリマー中に80質量%以上含有するゴム組成物から成形されており、U領域は、ウレタンゴムを基材ポリマー中に50質量%以上含有するゴム組成物から成形されている。N領域とU領域との面積比は60/40以上90/10以下である。アクリロニトリル−ブタジエンゴムにおける結合アクリロニトリル量は25%以上36%以下である。
【選択図】 図3

Description

本発明は、テニスシューズ、ゴルフシューズ、サッカーシューズ、ジョギングシューズ、トレッキングシューズ、タウンシューズ等の靴と、この靴に用いられるアウトソールとに関する。
靴は、底部にアウトソールを備える。通常、アウトソールは、架橋ゴムから形成されている。このアウトソールに対する重要な要求性能として、地面とスリップしにくいこと、すなわちグリップ性が良好であることが挙げられる。グリップ性が良好なアウトソールを備えた靴は、スリップによる着用者の転倒を防ぎ、着用者の運動のしやすさに寄与する。濡れた地面上ではスリップが生じやすいので、この濡れた地面上でのグリップ性(ウエットグリップ性)は特に重要である。
十分なグリップ性を備えるアウトソール及びこれを備えた靴に係る発明については、特許文献1及び2において開示されている。
特開2002−355103号公報 特開2003−33202号公報
アウトソールが路面と擦れるときに生じるキュッキュッという音(以下、鳴きという)は耳障りであるので、この鳴き防止性もアウトソールに対する要求性能として挙げられる。しかしながら、十分なウエットグリップ性と十分な鳴き防止性とを備えたアウトソールは、未だに得られていないのが実状である。
本発明の目的は、十分なグリップ性と十分な鳴き防止性とを備えたアウトソール、及びこのアウトソールを備えた靴の提供にある。
本発明に係るアウトソールは、
(1)アクリロニトリル−ブタジエンゴム(以下、NBRという)を基材ポリマー中に80質量%以上含有するゴム組成物から成形されたN領域、
(2)ウレタンゴムを基材ポリマー中に50質量%以上含有するゴム組成物から成形されたU領域を備えている。N領域とU領域との面積比は、60/40以上90/10以下である。
好ましくは、上記N領域に用いられているNBRにおける結合アクリロニトリル(以下、ANという)量は、25%以上36%以下である。
本発明に係る靴は、
NBRを基材ポリマー中に80質量%以上含有するゴム組成物から成形されたN領域と、ウレタンゴムを基材ポリマー中に50質量%以上含有するゴム組成物から成形されたU領域とを備えており、N領域とU領域との面積比が60/40以上90/10以下であるアウトソールを備える。
このアウトソールのN領域は、NBRが主要ポリマーであるので、グリップ性、特に濡れた地面上でのウエットグリップ性に寄与する。また、U領域は、ウレタンゴムが主要ポリマーであるので、鳴き防止性に寄与する。NBRを含むアウトソールにおいては、大理石等の凹凸の小さな路面上で鳴きが発生することがあるが、N領域とU領域との面積比が60/40以上90/10以下とされることにより、アウトソールのウエットグリップ性と鳴き防止性とが両立されることになる。結合AN量が25%以上36%以下であるNBRがN領域に用いられる場合、ウエットグリップ性がさらに良好である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係る靴1が示された一部切り欠き断面図である。この靴1は、アッパー2、インソール3、ミッドソール4及びアウトソール5を備えている。アッパー2の材質、形状、寸法等は、既知の靴のアッパーと同等である。インソール3の材質、形状、寸法等は、既知の靴のインソールと同等である。ミッドソール4の材質、形状、寸法等は、既知の靴のミッドソールと同等である。インソール3及びミッドソール4は、省略されてもよい。
図2は、図1の靴1のアウトソール5が示された底面図である。このアウトソール5は、底面に突出部6を備えている。底面のうち突出部6以外の部分は、凹陥部7である。図2には左足用のアウトソール5のみが示されているが、右足用のアウトソール5は、図2に示された形状が反転された形状を有する。
図3は、図2のアウトソール5が示された模式的底面図である。この図では、突出部6及び凹陥部7の図示は省略されている。このアウトソール5は、N領域とU領域とを備えている。図3において縦線で塗りつぶされている部分がN領域であり、横線で塗りつぶされているのがU領域である。図3から明らかなように、N領域は爪先寄りに存在しており、U領域は踵寄りに存在している。N領域が爪先寄りに形成されることにより靴1のスリップが効果的に抑制される。なお、N領域が爪先寄りの一部分に形成されることにより、このスリップ抑制効果は発現される。N領域及びU領域は、いずれもゴム組成物が架橋されることによって成形されている。
N領域のゴム組成物には、NBRが用いられている。これがN領域の全基材ポリマーに占める比率は、80質量%以上である。NBRはグリップ性を高める特性を備えたゴムであるので、これらが用いられたN領域では優れたグリップ性が発現される。特に、図3に示されるように、足の指の付け根に相当する部分(着用者が地面を蹴る際に最も力のかかる部分)の近傍にN領域が配されることにより、靴1のスリップが効果的に抑制される。グリップ性向上の観点から、NBRは90質量%以上であるのがより好ましく、100質量%であるのが特に好ましい。
NBRの結合AN量は、25%以上36%以下であるのが好ましい。結合AN量が上記範囲であるNBRが用いられることにより、アウトソール5のウエットグリップ性が顕著に向上する。この観点から結合AN量が31%以上35%以下であるNBRが特に好ましい。
グリップ性の観点からはNBRのみが基材ポリマーとして用いられるのが好ましいが、強度向上、加工性向上、価格等の点で、他のゴムが併用されてもよい。併用されうるゴムとしては、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム、天然ゴム等が挙げられる。他のゴムに代えて、又は他のゴムと共に、合成樹脂及び熱可塑性エラストマーが基材ポリマーとして用いられてもよい。
N領域が2以上の領域に細分されてそれぞれの領域で異なる材料が用いられてもよい。例えば、NBRの配合量がそれぞれの領域毎に異なってもよく、添加剤の種類及びその配合量がそれぞれの領域毎に異なってもよい。
U領域のゴム組成物には、ウレタンゴムが用いられている。これがU領域の全基材ポリマーに占める比率は、50質量%以上である。加工性向上、コスト低下等の目的で、U領域に他のゴムが併用されてもよい。併用され得るゴムとしては、NBR、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、天然ゴム等が挙げられる。他のゴムに代えて、又は他のゴムと共に、合成樹脂及び熱可塑性エラストマーが基材ポリマーとして用いられてもよい。
ウレタンゴムは、耐摩耗性及び強度がNBRと同程度に高く、NBRの使用で問題となる、鳴きが発生しないという利点があるが、高価という欠点がある。U領域において、ウレタンゴムが50質量%以上である場合、NBRと混合したときに鳴きが生じず、他のゴムと混合したときに強度及び耐摩耗性が維持出来る。この観点から、ウレタンゴムの配合量は60質量%以上であるのが好ましく、100質量%であるのが特に好ましい。ミラブルタイプのウレタンゴムが用いられることにより、他ゴムと同様の混練り工程及びプレス成型によって、アウトソール5が得られる。
U領域が2以上の領域に細分されてそれぞれの領域で異なる材料が用いられてもよい。例えば、ウレタンゴムの配合量がそれぞれの領域毎に異なってもよく、添加剤の種類及びその配合量がそれぞれの領域毎に異なってもよい。
N領域の面積SnとU領域の面積Suとの比(Sn/Su)は、60/40以上90/10以下である。Sn/Su比が上記範囲未満である場合、ウエットグリップ性が不十分となり、アウトソール5の原料コストが高くなる。この観点から、Sn/Su比は65/35以上であるのが好ましく、70/30以上であるのが特に好ましい。Sn/Su比が90/10を超えた場合、アウトソール5に鳴きが発生することがある。この観点からSn/Su比は85/15以下であるのが好ましく、80/20以下であるのが特に好ましい。
アウトソール5の底面に、N領域及びU領域のいずれでもない領域が形成されてもよい。この場合においても、N領域の面積Snの底面積全体に対する比率が60%以上、特に70%以上であるのが好ましい。また、U領域の面積Suの底面積全体に対する比率が10%以上、特に20%以上であるのが好ましい。
N領域及びU領域のそれぞれに用いられるゴム組成物には、充填剤が配合されるのが好ましい。充填剤が配合されることにより、アウトソール5の耐摩耗性及び強度が向上する。用いられ得る充填剤としては、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、クレー等が挙げられる。特に、耐摩耗性向上効果が大きいという観点から、シリカ及びカーボンブラックが好ましい。シリカ及びカーボンブラックの配合量は、基材ポリマー100重量部に対して30重量部以上70重量部以下であるのが好ましい。
N領域及びU領域のそれぞれに用いられるゴム組成物の架橋形態は特に制限されない。通常は硫黄架橋が採用され、加硫促進剤及び架橋助剤が併用される。これらのゴム組成物には、軟化剤、老化防止剤、シランカップリング剤、シリル化剤、着色剤等が適宜配合されてもよい。
図4は、図2及び図3のアウトソール5の踵近傍が示された模式的拡大断面図である。この図において右側が、靴1の爪先側である。この図において左右方向は、靴1の長さ方向である。本発明において、アウトソール5のN領域及びU領域の面積は、これらの底面(露出面)が接地面(水平面)に投影されて得られる図形の面積を意味する。例えば、図4において両矢印Lで示されるのは、U領域の投影図形の長さ方向の寸法である。同様に、U領域の幅方向に関しても、投影図形から寸法が求められる。これらの投影寸法が用いられて、U領域の面積が算出される。図示されていないが、N領域の面積も、同様に投影図形から算出される。なお、N領域が2以上の領域に分断されて存在している場合は、それぞれの領域の面積を合計したものがN領域の面積Snとされる。同様に、U領域が2以上の領域に分断されて存在している場合は、それぞれの領域の面積を合計したものがU領域の面積Suとされる。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきはない。
[ゴム組成物の調製]
下記の表1に示される配合剤を密閉式混練機とロールとで練り、配合番号がN1からN4及びU1からU4のゴム組成物を得た。なお、表1においては質量比によって配合量が表されている。
Figure 2006175141
表1に示されたゴム及び添加剤の詳細は以下の通りである。
*1 結合AN量:33%
*2 結合AN量:41%
*3 ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフェン
*4 2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール
*5 ジ-o-トリルグアニジン
*6 ジベンゾチアジルジスルフィド
*7 テトラエチルチウラムジスルフィド
*8 2-メルカプトベンゾチアゾール
[実施例1]
アウトソールと同等形状のキャビティを備えた金型を用意し、図3に示されるN領域にゴム組成物N1を充填し、U領域にゴム組成物U1を充填した。そして、160℃で8分間加圧・加熱して、アウトソールを得た。このアウトソールにアッパー及びインソールを取り付けて、実施例1の靴を得た。この靴のアウトソールの底面形状は、図2に示される通りである。この靴1のN領域の面積Snの底面積全体に対する比率は70%であり、U領域の面積Suの比率は30%である。
[実施例2、3及び比較例1]
N領域に充填するゴム組成物を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2、3及び比較例1の靴を得た。
Figure 2006175141
[比較例2]
N領域とU領域との境界を前方に移動し、N領域の面積Snの比率を55%とし、U領域の面積Suの比率を45%とした他は実施例1と同様にして、比較例2の靴を得た。
[比較例3]
N領域とU領域との境界を後方に移動し、N領域の面積Snの比率を95%とし、U領域の面積Suの比率を5%とした他は実施例1と同様にして、比較例3の靴を得た。
[実施例4]
N領域の面積Snの比率を70%とし、U領域の面積Suの比率については、ゴム組成物U1を20%、ゴム組成物U4を10%とした他は実施例1と同様にして、実施例4の靴を得た。
[実施例5、6及び比較例4]
U領域に充填するゴム組成物を下記の表2に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5、6及び比較例4の靴を得た。
[ウエットグリップ性の評価]
10名のテスターに、各実施例及び各比較例の靴を着用させ、濡れた芝生上を歩行させた。そして、ウエットグリップ性について、「1」から「5」の5段階で評価させた。滑りにくいものを「5」とし、滑りやすいものを「1」とした。これらの結果が、下記の表2に示されている。
[鳴き防止性]
10名のテスターに、各実施例及び各比較例の靴を着用させ、大理石の路面上で足裏を擦らせた。そして、キュッキュと音がするものを「不良」、しないものを「良」とし、7名以上が「良」をつけた場合を「良」、7名以上が「不良」をつけた場合を「不良」とした。
[コストパフォーマンス性]
アウトソールの材料コストを算出し、生産使用可能なコストである場合を「良」、コストに問題があると判断した場合を「不良」とした。
表2に示されるように、N領域の基材ポリマー中のNBR量が80質量%未満である比較例1の靴は、ウエットグリップ性に劣る。また、Sn/Su比が60/40未満である比較例2の靴は、コストパフォーマンス性に劣り、Sn/Su比が90/10を超える比較例3の靴は、鳴き防止性に劣る。そして、U領域の基材ポリマー中のウレタンゴム量が50質量%未満である比較例4の靴は、鳴き防止性に劣る。これに対し、各実施例の靴は、ウエットグリップ性、鳴き防止性及びコストパフォーマンス性のすべてに優れる。従って、本発明の優位性は明らかである。
以上説明されたように、本発明のアウトソールはウエットグリップ性及び鳴き防止性に優れているので、このアウトソールを備えた靴の着用者は、濡れた地面上でも滑ることがなく、運動がしやすく、また、アウトソールが路面と擦れても鳴きが生じず、耳障りとならない。
本発明は、テニスシューズ、ゴルフシューズ、サッカーシューズ、ジョギングシューズ、トレッキングシューズ、タウンシューズ等の靴、及びこの靴に用いられるアウトソールに適用され得る。
図1は、本発明の一実施形態に係る靴が示された一部切り欠き断面図である。 図2は、図1の靴のアウトソールが示された底面図である。 図3は、図2のアウトソールが示された模式的底面図である。 図4は、図2及び図3のアウトソールの踵近傍が示された模式的拡大断面図である。
符号の説明
1・・・靴
2・・・アッパー
3・・・インソール
4・・・ミッドソール
5・・・アウトソール
6・・・突出部
7・・・凹陥部
N・・・N領域
U・・・U領域

Claims (3)

  1. アクリロニトリル−ブタジエンゴムを基材ポリマー中に80質量%以上含有するゴム組成物から成形されたN領域と、
    ウレタンゴムを基材ポリマー中に50質量%以上含有するゴム組成物から成形されたU領域と
    を備えており、
    N領域とU領域との面積比が60/40以上90/10以下であるアウトソール。
  2. 上記N領域に用いられているアクリロニトリル−ブタジエンゴムにおける結合アクリロニトリル量が25%以上36%以下である請求項1に記載のアウトソール。
  3. アクリロニトリル−ブタジエンゴムを基材ポリマー中に80質量%以上含有するゴム組成物から成形されたN領域と、ウレタンゴムを基材ポリマー中に50質量%以上含有するゴム組成物から成形されたU領域とを備えており、N領域とU領域との面積比が60/40以上90/10以下であるアウトソールを備えた靴。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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