JP2006174707A - 組換え微生物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 枯草菌のaprX遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を欠失又は不活性化させた微生物を宿主とし、これに異種のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子を導入した組換え微生物。
【選択図】 なし
Description
更に、本発明により生産されるタンパク質としてはヒトなどの高等生物由来の生理活性タンパク質や酵素などが挙げられる。好適な例としては、インターフェロンα、インターフェロンβ、成長ホルモン、唾液腺アミラーゼ等が挙げられる。また、生理活性タンパク質などを構成する一部のドメイン等も発現可能であり、例えば、ヒトC型肝炎ウィルス抗体の抗原認識ドメインPreS2などが挙げられる。
枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表2に示したeprfw1とeprUpr、及びeprDNfとeprrv-repの各プライマーセットを用いて、ゲノム上のepr遺伝子の上流に隣接する0.6kb断片(A)、及び下流に隣接する0.5kb断片(B)をそれぞれ調製した。また別途プラスミドpC194(J. Bacteriol. 150 (2), 815 (1982))由来のクロラムフェニコール耐性遺伝子の上流にプラスミドpUB110(Plasmid 15, 93 (1986))由来のrepU遺伝子のプロモーター領域(Nucleic Acids Res. 17, 4410 (1989))を連結した1.2kb断片(C)を調製した。次に、得られた(A)(B)(C)3断片を混合して鋳型とし、表2のプライマーeprfw2とCmrv2を用いたSOE-PCRを行うことによって、3断片を(A)(B)(C)の順になる様に結合させ、2.2kbのDNA断片を得た(図2参照)。このDNA断片の末端を平滑化及び5’-リン酸化し、プラスミドpUC118(Methods Enzymol. 153, 3 (1987))のSmaI制限酵素部位に挿入してepr遺伝子欠失用プラスミドpUC118-CmrΔeprを構築した。尚、上記1.2kb断片(C)は、repUfwとrepUr-Cmのプライマーセット(表2)及び鋳型としてプラスミドpUB110を用いて調製したrepU遺伝子プロモーター領域を含む0.4kb断片(D)と、CmUf-repとCmrv1のプライマーセット(表2)及び鋳型としてプラスミドpC194を用いて調製したクロラムフェニコール耐性遺伝子を含む0.8kb断片(E)とを混合して鋳型とし、表2に示したプライマーrepUfwとCmrv1を用いたSOE-PCRを行なうことによって調製した。
実施例1にて構築したepr遺伝子欠失用プラスミドpUC118-CmrΔeprをコンピテントセル形質転換法(J. Bacteriol. 93, 1925 (1967))によって枯草菌168株に導入し、epr遺伝子上流領域、或いは下流領域の相当する領域間での1重交差の相同組換えによりゲノムDNAと融合した形質転換株をクロラムフェニコール耐性を指標に取得した。得られた形質転換株をLB培地に接種し、37℃にて2時間培養後、再度、コンピテンス誘導操作を行うことにより、ゲノム上で重複して存在するepr遺伝子上流領域、或いは下流領域の間に於けるゲノム内相同組換えを誘導した。図2に示す様に、プラスミド導入の際と異なる領域で相同組換えが起こった場合、プラスミドに由来するクロラムフェニコール耐性遺伝子及びpUC118ベクター領域の脱落に伴ってepr遺伝子が欠失することになる。次に、クロラムフェニコール感受性となった株の存在比率を高める為、以下の要領でアンピシリン濃縮操作を行なった。コンピテントセル誘導後の培養液を終濃度5ppmのクロラムフェニコール及び終濃度100ppmのアンピシリンナトリウムを含むLB培地1 mLに600nmにおける濁度(OD600)が0.003になるように接種した。37℃にて5時間培養後、10,000ppmのアンピシリンナトリウム水溶液を10μL添加して更に3時間培養した。培養終了後、2%塩化ナトリウム水溶液にて菌体を遠心洗浄した後、1mLの2%塩化ナトリウム水溶液に懸濁し、懸濁液100μLをLB寒天培地に塗沫した。37℃にて約15時間インキュベーションし、生育した菌株のうち、プラスミド領域の脱落に伴ってクロラムフェニコール感受性となったものを選抜した。選抜した菌株のゲノムDNAを鋳型とし、表2に示すプライマーeprfw2とeprrv-repを用いたPCRを行なうことによりepr遺伝子欠失の確認を行ない、epr遺伝子欠失株を取得した。
epr遺伝子欠失株に対し、次の欠失としてwprA遺伝子の欠失をepr遺伝子欠失と同様に行なった。即ち、実施例1と同様にしてwprA遺伝子欠失用プラスミドpUC118-CmrΔwprAを構築し、構築したプラスミドのゲノムDNAへの導入とそれに続くゲノム内相同組換えによるwprA遺伝子の欠失によりepr遺伝子とwprA遺伝子の2重欠失株を取得した。以降同様の操作を繰り返すことにより、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、aprEの各遺伝子を順次欠失させ、最終的に8種類のプロテアーゼ遺伝子が欠失したプロテアーゼ8重欠失株を構築し、Kao8株と命名した。各欠失を行う際に用いたプライマーの配列は表2に示し、また各プライマーと実施例1で示したepr遺伝子欠失に用いたプライマーとの対応については表3に示した。
SOE(splicing by overlap extension)-PCR法(Gene, 77, 61, (1989))によって調製される欠失導入用DNA断片を用いた二重交差法によりaprX遺伝子欠失株を構築した。まず、表2に示したaprX+5FとaprX+563R、及びaprX+775FとaprX+1320Rの各プライマーセットを用いて、枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、aprX遺伝子の上流を含む5’末端側の558 bp断片(F)、及び3’末端側の545 bp断片(G)をそれぞれ調製した。一方、プラスミドpDG1727(Gene, 167, 335, (1995))のBamHI及びXhoI制限酵素切断点よりスペクチノマイシン耐性遺伝子領域を切り出し、pBluescript II SK(+)(Stratagene)にBamHI及びXhoI制限酵素切断点に挿入し、pBlueSPRを構築した。PBlueSPRのDNAを鋳型とし、PB-M13-20、PB-M13Rev(表1)のプライマーセットを用いてスペクチノマイシン耐性遺伝子領域を増幅した(H)。次に(F)、(G)及び(H)のDNA断片鋳型とし、aprX+5F、aprX+1320Rプライマーセットを用いてSOE-PCR法により、(E)(H)(G)の順に結合したDNA断片を調製した。調製したDNA断片を用い、コンピテントセル形質転換法による枯草菌168株の形質転換を行い、スペクチノマイシン(100μg/mL)を含むLB寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。得られた形質転換体のゲノムを抽出し、PCRによってaprX遺伝子が欠失してスペクチノマイシン耐性遺伝子に置換していることを確認した。以上の様にして、枯草菌のaprX遺伝子が欠失した菌株を構築し、ΔaprX(Sp)株と命名した。
実例4に示した(E)(H)(G)の順に結合したDNA断片を用いて、コンピテントセル形質転換法によりプロテアーゼ遺伝子8重欠失株(実施例3、Kao8株)の形質転換を行い、スペクチノマイシン(100μg/mL)を含むLB寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。得られた形質転換体のゲノムを抽出し、PCRによってaprX遺伝子が欠失してスペクチノマイシン耐性遺伝子に置換していることを確認した。以上の様にして、枯草菌のaprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprAの8遺伝子の多重欠失に加えて、aprX遺伝子が欠失した菌株を構築し、Kao9株と命名した。
実施例1−5にて得られた各遺伝子欠失株、及び対照として枯草菌168株を100時間培養後、培養液を10,000rpm、5分遠心し、その上清を1×サンプルバッファー(62.5mM Tris-HCl(pH6.8), 5% 2-メルカプトエタノール, 2% SDS, 5% スクロース, 0.002% BPB(Bromophenol blue))になるように可溶化し、プロテアーゼザイモグラムのサンプルとした。サンプルを煮沸せず、0.1%ゼラチンを含む12%SDS-PAGEを行った後、Renaturation buffer (2.5% Triton X-100)にて室温で30分間振とうし、さらにZymogram Developing buffer (50mM Tris-HCl(pH8.5)、200mM NaCl、5mM CaCl2、0.02% Brij35)にて室温で30分間振とうした。再度Zymogram Developing bufferに置換した後37℃で12時間インキュベートした後、CBB(クマシ染色液)でゲルを染色した。以上の方法によってプロテアーゼのザイモグラム解析を行った(図3)。この結果、8重欠失株(Kao8株)においてもプロテアーゼ活性バンドが検出されたが、aprX遺伝子欠失株では本バンドが消失し、Kao8株で残存するプロテアーゼ活性がAprXであることが明らかになった。また、aprX遺伝子を含むプロテアーゼ遺伝子9重欠失株(Kao9株)ではプロテアーゼ活性バンドが検出されなかった。
実施例1−5にて得られた各遺伝子欠失株、及び対照として枯草菌168株に、バチルス エスピー(Bacillussp.)KSM-S237株由来のアルカリセルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報、配列番号1)断片(3.1 kb)がシャトルベクターpHY300PLKのBamHI制限酵素切断点に挿入された組換えプラスミドpHY-S237を、プロトプラスト形質転換法によって導入した。これによって得られた菌株を5mLのLB培地で一夜30℃で振盪培養を行い、更にこの培養液0.03 mLを30 mLの2xL−マルトース培地(2% トリプトン、1% 酵母エキス、1% NaCl、7.5% マルトース、7.5 ppm 硫酸マンガン4-5水和物、15 ppm テトラサイクリン)に接種し、30℃で4日間、振盪培養を行った。培養後、遠心分離によって菌体を除いた培養液上清のアルカリセルラーゼ活性を測定し、培養によって菌体外に分泌生産されたアルカリセルラーゼの量を求めた。この結果、表4に示した様に、aprX遺伝子欠失株であるΔaprX(Sp)株及びプロテアーゼ遺伝子多重欠失株(Kao9株)を用いた場合はいずれも、対照の168株(野生型)の場合と比較してアルカリセルラーゼの高い分泌生産が認められた。
枯草菌由来のアミラーゼ遺伝子のN末側522アミノ酸をコードする領域の下流にヒトB型肝炎ウィルス抗原認識PreS2ドメイン断片を結合したDNA断片(165 bp)が挿入された組換えプラスミドpTUBE52-preS2(Appl. Microbiol. Biotechnol., 40, 341 (1993))を、実施例3及び5にて得られたKao8株とKao9株に通常のコンピテントセル形質転換法によって導入した。得られた形質転換菌株を一夜30℃で振盪培養を行い、更にこの培養液0.03 mLを30 mLの2xL−マルトース培地(2% トリプトン、1% 酵母エキス、1% NaCl、7.5% マルトース、7.5 ppm 硫酸マンガン4-5水和物、15 ppm テトラサイクリン)に接種し、30℃で100時間、振盪培養を行った。培養後、遠心分離によって菌体を除いた培養液上清中のアミラーゼ-PreS2タンパク質量を抗PreS2抗体((株)特殊免疫研究所)を用いたウエスタンブロット解析により求めた。まず、培養上清を1×サンプルバッファー(62.5mM Tris-HCl(pH6.8),5% 2-メルカプトエタノール, 2% SDS, 5% スクロース, 0.002% BPB(Bromophenol blue))になるよう可溶化し、10%SDS-PAGEを行った後、PVDF(polyvinyl difluoridine membrane:Immobilon; 0.45μm pore size; Millipore)にブロッティングした。一次抗体として抗preS2抗体(Hyb-5520:(株)特殊免疫研究所)を用いた。二次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(Amersham Pharmacia biotech)を使用した。またECL Plus Western blotting reagent pack (RPN2124; Amersham Pharmacia biotech)により検出した。この結果、図4に示した様に、プロテアーゼ遺伝子9重欠失株(Kao9株)では8重欠失株(Kao8株)に比べて明らかに強いアミラーゼ-PreS2バンドが検出され、aprXの欠失によりアミラーゼ-PreS2の大幅な生産向上が認められた。
主要な2つの細胞外プロテアーゼをコードするaprE遺伝子とnprE遺伝子に加え、aprX遺伝子を含む計3種類のプロテアーゼ遺伝子を欠失させた微生物の構築を行なった。実施例1及び2と同様にしてaprE遺伝子欠失用プラスミドpUC118-CmrΔaprEを構築し、構築したプラスミドの枯草菌168株ゲノムDNAへの導入とそれに続くゲノム内相同組換えによるaprE遺伝子の欠失によりaprE遺伝子の単独欠失株を取得した。次いで実施例3と同様にしてaprE、nprE、及びaprXの3遺伝子が欠失したプロテアーゼ遺伝子3重欠失株を構築し、Kao3株と命名した。尚、Kao3株構築においてaprX遺伝子を欠失させる際に用いたプライマーと他のプロテアーゼ遺伝子を欠失させた際に用いたプライマーとの対応については表3に示した。
実施例8と同様に、アミラーゼ-PreS2生産用プラスミドpRUBE52-preS2を実施例9にて得られたKao3株、及び対照として枯草菌168株に通常のコンピテントセル形質転換法によって導入した。得られた形質転換菌株を一夜30℃で振盪培養を行い、更にこの培養液0.03 mLを30 mLの2xL−マルトース培地(2% トリプトン、1% 酵母エキス、1% NaCl、7.5% マルトース、7.5 ppm 硫酸マンガン4-5水和物、15 ppm テトラサイクリン)に接種し、30℃で25時間、振盪培養を行った。培養後、遠心分離によって菌体を除いた培養液上清中のアミラーゼ-PreS2タンパク質量を抗PreS2抗体((株)特殊免疫研究所)を用いたウエスタンブロット解析により求めた。図5に示した様に、対照の168株(野生株)の場合には認められなかったアミラーゼ-PreS2のバンドがプロテアーゼ遺伝子3重欠失株において検出され、アミラーゼ-PreS2の生産性向上が確認された。
Claims (11)
- 枯草菌のaprX遺伝子若しくは当該遺伝子に相当する遺伝子を欠失又は不活性化させた微生物を宿主とし、これに異種のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子を導入した組換え微生物。
- 更に枯草菌のaprX遺伝子又は当該遺伝子に相当する遺伝子とは異なるプロテアーゼをコードする1種以上の遺伝子を欠失又は不活性化させた微生物を宿主とする請求項1記載の組換え微生物。
- 枯草菌のaprX遺伝子又は当該aprX遺伝子に相当する遺伝子とは異なるプロテアーゼをコードする遺伝子が、枯草菌のaprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprAの各遺伝子並びに当該遺伝子に相当する遺伝子から選ばれるものである請求項2記載の組換え微生物。
- 枯草菌のaprX、aprE及びnprEの各遺伝子の全て、又は当該遺伝子に相当する3種類の遺伝子の全てを欠失又は不活性化させた微生物を宿主とする請求項3記載の組換え微生物。
- 枯草菌のaprX、aprE、nprB、nprE、bpr、vpr、mpr、epr及びwprAの各遺伝子の全て、又は当該遺伝子に相当する9種類の遺伝子の全てを欠失又は不活性化させた微生物を宿主とする請求項3記載の組換え微生物。
- 微生物が枯草菌又はその他のバチルス属細菌である請求項1〜5のいずれか1項記載の微生物。
- 異種のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子の上流に転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域から選ばれる1以上の領域を結合した請求項1〜6のいずれか1項記載の組換え微生物。
- 転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域を結合したものである請求項7記載の組換え微生物。
- 分泌シグナル領域がバチルス属細菌のセルラーゼ遺伝子由来のものであり、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域が当該セルラーゼ遺伝子の上流0.6〜1kb領域由来のものである請求項7又は8記載の組換え微生物。
- 転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域が、配列番号1で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜659の塩基配列、配列番号3で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜696の塩基配列又は当該塩基配列のいずれかと70%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA断片、又は当該塩基配列の一部が欠失した塩基配列からなるDNA断片である請求項8記載の組換え微生物。
- 請求項1〜10のいずれか1項記載の組換え微生物を用いるタンパク質又はポリペプチドの製造方法。
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