JP2006165426A - フィルムキャリアなどの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 微細パターン上にソルダレジストを形成した形態のフィルムキャリア、プリント回路基板、フレキシブルプリント基板などにおいて、(a)微細パターン上に下地スズ皮膜を形成し、(b)下地皮膜を加熱処理した後、(c)下地スズ皮膜の全面上に上層スズ皮膜を形成し、(d)上層スズ皮膜の上にソルダレジストを被覆するフィルムキャリアなどの製造方法である。2層スズ皮膜の形成と下地皮膜の加熱を組み合わせるため、上層スズ皮膜での異常粒子などを良好に防止できる。2層スズ皮膜を形成した後にソルダレジストを被覆するため、ソルダレジストのえぐれの問題を確実且つ簡便に解消できる。
【選択図】 なし
Description
しかしながら、フィルムキャリアやフレキシブル回路基板などの微細パターン上に無電解スズ浴を用いてメッキを行うと、得られたスズ皮膜にはホイスカーが発生し易いことは知られているが、その一方で、このホイスカーとは別に、異常粒子やフリルが発生し易いという実情がある。即ち、ホイスカーはスズ皮膜形成後の長期の経時変化に伴って現れるのに対して、異常粒子やフリルは皮膜形成の時点で現れるものである。異常粒子は、針状のホイスカーとは異なり、粗い粒子が微細パターンのほぼ全面に分散した状態で付着して、パターン表面が微細な凹凸状を呈する現象である。また、上記フリルは粒子状ではなく、いわば衣服のフリルのように波打った箔状の析出物が列状又は帯状に析出する(具体的には、リードの周縁部に集中して析出する)現象である。
(1)特許文献1
フィルムキャリアの配線パターンのほぼ全体に下地スズメッキ層を形成し、加熱により銅が拡散したスズメッキ層とした後(段落13、14、40参照)、拡散スズメッキ層にソルダレジストを形成し、拡散スズメッキ層の上に純スズメッキ層を形成することにより、スズメッキに際して配線パターンにえぐれが発生するのを防止し、また、ホイスカーの発生を防止することが開示されている(段落11参照)。
同文献1では、下地スズメッキ層は無電解メッキ、電気メッキで形成すること(段落35)、下地層の膜厚は0.01μm以上、好ましくは0.1μm、特に好ましくは0.3〜0.5μmであること(段落36〜37)、上層スズメッキ層は無電解メッキにより形成され、上層スズ膜の厚さは0.1〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μmであること(段落47)が記載されている。
スズの下地メッキ皮膜の上にソルダレジストを被覆し、下地皮膜に上層スズ皮膜を形成することは上記特許文献1に共通し、下地メッキ皮膜の銅拡散に濃度勾配があることが同文献2の特徴になっている。
下地皮膜や上層皮膜の膜厚、拡散条件は上記特許文献1に類似する。
メッキ液中のスズイオン濃度とフィルムキャリアの配線パターンのえぐれには関連があることから(段落28)、特定スズイオン濃度の無電解メッキ液を用いて、プレスズメッキと本スズメッキを行って、上記えぐれを防止することが開示されている(請求項1)。 同文献3では、プレスズメッキの厚さは本スズメッキの厚さより薄く形成し(段落12)、プレメッキ:本メッキ=0.5:10〜2:10であること(段落31)、スズメッキ層の合計の厚さは0.2〜0.7μm(好ましくは0.3〜0.5μm)であること(段落48)が記載されている。また、フィルムキャリアにおいては、配線パターンにソルダレジスト形成→プレメッキ→本メッキを順番に行っても良いし(図3)、配線パターンにプレメッキ→ソルダレジストを形成→本メッキを行っても良い(図4)ことが記載されている。
同文献4は、ソルダレジストを被覆した通常形態のフィルムキャリアの微細パターン上に0.15μm以上の厚みのスズメッキを行い、これをCu−Sn拡散層としたうえで、この拡散層の上に純スズメッキを0.15〜0.8μmの厚みで行うものである。
しかしながら、この特許文献1〜3では、ソルダレジストを被覆してから上層スズメッキを行う際に、必然的にソルダレジストがメッキ液に接触するため、メッキ液がソルダレジストの端部に侵入して部分剥離を起こす恐れは依然として残り、ソルダレジストのえぐれを軽減できるが、えぐれの確実な防止には未だ不充分である。
また、特許文献1〜3は、概ね、下地スズメッキ→下地層での銅の拡散→ソルダレジストの被覆→上層スズメッキを共通の手順とするため、レジスト塗布作業を間に挟んでメッキ作業を繰り返すという手間が必要になり、作業が煩雑で、生産性が悪い。
また、特許文献1〜3は、ソルダレジストのえぐれやホイスカーの防止を目的とするもので、スズ皮膜上の異常粒子やフリルの発生防止という本発明の目的とは異なる。特許文献4も同様にホイスカー防止を目的としたものである。
即ち、微細パターンに下地スズ皮膜と上層スズ皮膜の2層メッキを施し、且つ、このスズの2層メッキに際して上層皮膜を形成する前に下地スズ皮膜を加熱すると、上層スズ皮膜では異常粒子やフリルの発生が良好に防止されること、この場合、下地層は0.1μm前後の薄い場合でも有効であること、また、この2層メッキをしてからソルダレジストを被覆すると、メッキ液を用いたメッキ終了後の被覆であるため、ソルダレジストのえぐれの問題を根本的で確実に解消でき、且つ、ソルダレジストの被覆作業によって分断されることなく連続で2層メッキ処理ができることを見い出して、本発明を完成した。
(a)微細パターン上に下地スズ皮膜を形成し、
(b)下地皮膜を加熱処理した後、
(c)下地スズ皮膜の全面上に上層スズ皮膜を形成し、
(d)上層スズ皮膜の上にソルダレジストを被覆することを特徴とするフィルムキャリアなどの製造方法である。
一般に、スズ皮膜を無電解メッキで形成する場合、浴種によって異常粒子が発生し易いものが少なくない。即ち、無電解スズメッキ浴として、排水処理の容易性やスズ塩の溶解性の見地から有機スルホン酸浴が多用されるが、例えば、アルカンスルホン酸浴はアルカノールスルホン酸浴に比べて異常粒子が発生し易い傾向がある。
しかしながら、このように異常粒子が出易い浴でも、本発明方法を適用することで、異常粒子を円滑に防止することができるため、無電解メッキの浴種に拘束されずに、フィルムキャリアなどの微細パターン上に均質で良好なスズ皮膜を簡便に形成できる。
この場合、ソルダレジストのえぐれ防止を目的とした上記特許文献1〜3では、ソルダレジストの被覆後に上層スズメッキを行うため、ソルダレジストがこのメッキ液に侵食される恐れは依然として残り、ソルダレジストのえぐれを完全に防止することはできない。これに対して、本発明では、上述の通り、2層メッキ後にソルダレジストを被覆する方式であり、ソルダレジストがメッキ液に接触することはないため、ソルダレジストのえぐれの問題を根本的に解消し、えぐれを完全に防止できる。
また、上記特許文献1〜3では、2層メッキの間にソルダレジストの被覆作業が介在するため、えぐれ防止の処理全体が煩雑で生産性が低くなるが、本発明では、上層スズ皮膜の析出異常を良好に防止しながら、ソルダレジストの被覆作業で分断されることなく連続メッキ処理が可能になるため、簡便な方式(高い生産性)でフィルムキャリアなどにおけるソルダレジストのえぐれ防止処理を行うことができる。
本発明2に示すように、上記(a)工程の下地スズ皮膜と上記工程(c)の上層スズ皮膜は、無電解メッキ、電気メッキ、蒸着法などを問わず、任意の方法で形成されるが、下地皮膜は0.14μm以下に薄く形成すれば足りることから(本発明4参照)、下地皮膜及び上層皮膜共に無電解メッキで形成するのが好ましい。
無電解スズメッキ浴は、一般に、可溶性第一スズ塩と、浴ベースとしての酸又はその塩と、錯化剤、界面活性剤、光沢剤などの各種添加剤により構成され、後述するように、有機酸をベースとする浴が好ましい(本発明3参照)。
上記可溶性第一スズ塩は、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−プロパノールスルホン酸、スルホコハク酸、p−フェノールスルホン酸などの有機スルホン酸の第一スズ塩を初め、ホウフッ化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第一スズ、塩化第一スズ、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウムなどである。
当該可溶性第一スズ塩は単用又は併用でき、その含有量は金属換算で5〜100g/L、好ましくは20〜60g/Lである。
上記浴ベースとしての酸は有機酸、無機酸であり、有機酸としては有機スルホン酸、脂肪族カルボン酸などが挙げられ、無機酸としては、硫酸、塩酸、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸などが挙げられる。この中では、スズの溶解性、排水処理の容易性などの見地から有機スルホン酸が好ましい。
浴ベースとしての有機酸、無機酸の塩としては、各種酸のナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタミン、ペンタエチレンテトラミン塩などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられる。
上記酸又はその塩は単用又は併用でき、その含有量は0.1〜10モル/L、好ましくは0.5〜5モル/Lである。
CmH2m+1-CH(OH)-CpH2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)
で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸(2−プロパノールスルホン酸)、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸などが挙げられる。
また、上記脂肪族カルボン酸としては、グリコール酸、ジグリコール酸、プロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸などが挙げられる。
上記錯化剤は微細パターンの銅、銅合金に配位して錯イオンを形成し、銅の電極電位を卑の方向に変移させて、スズとの化学置換反応を促進するものをいい、具体的には、下記の(1)〜(3)などの化合物を単用又は併用するのが好ましい。
(2)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA・2Na)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンリン酸など。
(3)ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、アミノトリメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸五ナトリウム塩、ベンジルアミン、2―ナフチルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、シンナミルアミン、p―メトキシシンナミルアミン等。
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、モノ〜トリアルキルアミン塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシルリン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。
上記酸化防止剤は、浴中のSn2+の酸化防止を目的として含有され、次亜リン酸又はその塩、アスコルビン酸又はその塩、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、フロログルシン、クレゾールスルホン酸又はその塩、フェノールスルホン酸又はその塩、カテコールスルホン酸又はその塩、ハイドロキノンスルホン酸又はその塩、ヒドラジンなどが挙げられる。
上記防腐剤としては、ホウ酸、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、塩化ベンザルコニウム、フェノール、フェノールポリエトキシレート、チモール、レゾルシン、イソプロピルアミン、グアヤコールなどが挙げられる。
この無電解スズの有機スルホン酸浴にあっては、前述したように、アルカンスルホン酸浴はアルカノールスルホン酸浴に比べて析出異常が発生し易い傾向がある。
しかしながら、このように析出異常が出易い浴でも、本発明方法を適用することで、異常粒子やフリルを円滑に防止することができる。
本発明では、析出異常の発生防止のために2層メッキ方式が採用されるため、先ず、工程(a)では、フィルムキャリアなどの微細パターン上に下地スズ皮膜を形成する。
下地スズ皮膜の膜厚は0.001〜0.14μmが好ましく(本発明4参照)、より好ましくは0.01〜0.1μmである。膜厚が0.001μmより薄いと、上層スズ皮膜の析出異常を防止する効果が低減し、膜厚が過剰に厚くても効果の差異はあまりなく、経済的でない。
無電解スズ浴でのメッキ条件は、浴温15℃〜75℃、メッキ時間1秒〜10分が適当であり、浴温20℃〜70℃、メッキ時間3秒〜1分がより好ましい。
上記加熱処理はアニール処理、リフロー処理を問わないが、アニール処理が好ましい(本発明7参照)。
上層スズ皮膜の膜厚は0.02〜5.0μmが好ましく(本発明5参照)、0.05〜3.0μmがより好ましい。膜厚が0.02μmより薄いと、微細パターン上にスズ皮膜を形成する際の所期の目的であるハンダ付け性の効果が低減する。過剰に厚くしてもハンダ付け性の効果にあまり差異はなく、メッキ材料の無駄である。
無電解スズ浴でのメッキ条件は、浴温15℃〜75℃、メッキ時間1秒〜30分が適当であり、浴温40℃〜70℃、メッキ時間60秒〜15分がより好ましい。
本発明では、2層メッキの後でソルダレジストを被覆するため、ソルダレジストが無電解メッキ液に侵食されることはなく、従って、ソルダレジストの密着性を高めて、えぐれの問題を解消できる。また、レジスト塗布作業を間に挟んでメッキ作業を繰り返す手間が要らないため、上層スズ皮膜の析出異常を良好に防止しながら、ソルダレジストのえぐれ防止の作業性を簡略化できる。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
当該実施例においては、後に続く試験例でスズ皮膜における析出異常の防止度合の評価を主眼とするため、基材上に銅パターンを形成しただけの(当然ながらソルダレジストは被覆していない)TAB用フィルムキャリア(テスト試料)を被メッキ物として、本発明の2層メッキ処理を行った。
実施例1〜6のうち、実施例1〜3は無電解スズのアルカノールスルホン酸浴を用いて下地スズ皮膜と上層スズ皮膜を形成したもので、下地スズ皮膜の膜厚を変化させた例である。実施例4〜5は無電解スズのアルカンスルホン酸浴を用いて下地スズ皮膜と上層スズ皮膜を形成したもので、下地スズ皮膜の加熱条件を変化させた例である。実施例6は無電解スズのカルボン酸浴を用いて下地スズ皮膜と上層スズ皮膜を形成した例である。
また、比較例1〜2のうち、比較例1は微細パターン上にスズ皮膜を単層で形成した例である。比較例2は微細パターン上にスズの2層メッキを行ったもので、下地メッキ皮膜を加熱せずに、下地皮膜に上層メッキ皮膜を積層した例である。
上述の通り、VLP(電解銅箔の一種)によりパターン形成しただけのTAB用フィルムキャリア(テスト試料)を試験片として、このフィルムキャリアの銅パターン上に下記(a)の無電解メッキ浴を用いて下地スズ皮膜を形成し、下記(b)の条件で下地皮膜を形成した試験片に加熱処理を施したのち、下記(c)の条件で上記(a)と同組成の無電解メッキ浴により上層スズ皮膜を形成した。
(a)無電解メッキによる下地スズ皮膜の形成
下記(イ)の無電解スズメッキ浴を建浴して、同メッキ液に試験片を浸漬し、下記(ロ)の液温及びメッキ時間で無電解メッキを施して、フィルムキャリアのインナリード上に同欄の膜厚のスズ皮膜を形成した。
(イ)無電解メッキ浴の組成
3−ヒドロキシプロパン
−1−スルホン酸第一スズ(Sn2+として) 0.35モル/L
3−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸 2.50モル/L
次亜リン酸 0.50モル/L
チオ尿素 2.00モル/L
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO8) 5.0g/L
(ロ)無電解メッキの条件
液温 :40℃
メッキ時間 :30秒
スズ膜厚 :0.06μm
(b)下地皮膜の加熱
下記の条件で下地皮膜を形成した試験片を加熱処理した。
加熱温度 :125℃
加熱時間 :60分
(c)無電解メッキによる上層スズ皮膜の形成
前記(a)の無電解スズメッキ浴を用いて、下地皮膜の上に下記(イ)の液温及びメッキ時間で無電解メッキを施し、同欄の合計膜厚(下地膜厚と上層膜厚の合計)になるようにスズ皮膜を積層した。
(イ)無電解メッキの条件
液温 :60℃
メッキ時間 :5分
スズの合計膜厚:0.58μm
上記実施例1を基本としながら、下地スズ皮膜の形成工程(a)における無電解スズメッキの条件を下記の通りに設定し、それ以外は実施例1と同様に処理して、銅パターン上にスズの2層メッキを施した。
[下地皮膜での無電解メッキの条件]
液温 :60℃
メッキ時間 :10秒
スズ膜厚 :0.05μm
上記実施例1を基本としながら、下地スズ皮膜の形成工程(a)における無電解スズメッキの条件を下記の通りに設定し、それ以外は実施例1と同様に処理して、銅パターン上にスズの2層メッキを施した。
[下地皮膜での無電解メッキの条件]
液温 :60℃
メッキ時間 :20秒
スズ膜厚 :0.07μm
前記実施例1と同様のTABのフィルムキャリアを試験片として、このフィルムキャリアの銅パターン上に下記(a)の無電解メッキ浴を用いて下地スズ皮膜を形成し、下記(b)の条件で下地皮膜を形成した試験片に加熱処理を施したのち、下記(c)の条件で前記(a)と同組成の無電解メッキ浴により上層スズ皮膜を形成した。
(a)無電解メッキによる下地スズ皮膜の形成
下記(イ)の無電解スズメッキ浴を建浴して、同メッキ液に試験片を浸漬し、下記(ロ)の液温及びメッキ時間で無電解メッキを施して、フィルムキャリアのインナリード上に同欄の膜厚のスズ皮膜を形成した。
(イ)無電解メッキ浴の組成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 0.35モル/L
メタンスルホン酸 2.50モル/L
チオ尿素 1.50モル/L
次亜リン酸 0.50モル/L
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO8) 5.0g/L
(ロ)無電解メッキの条件
液温 :40℃
メッキ時間 :30秒
スズ膜厚 :0.05μm
(b)下地皮膜の加熱
下記の条件で下地皮膜を形成した試験片を加熱処理した。
加熱温度 :125℃
加熱時間 :60分
(c)無電解メッキによる上層スズ皮膜の形成
前記(a)と同組成の無電解スズメッキ浴を用いて、試験片の下地皮膜の上に下記(イ)の液温及びメッキ時間で無電解メッキを施し、同欄の合計膜厚になるようにスズ皮膜を積層した。
(イ)無電解メッキの条件
液温 :65℃
メッキ時間 :5分
スズの合計膜厚:0.60μm
上記実施例4を基本として、下地スズ皮膜の加熱工程(b)の条件を下記の通りに設定し、それ以外は実施例4と同様に処理して、銅パターン上にスズの2層メッキを施した。
[加熱条件]
加熱温度 :110℃
加熱時間 :90分
前記実施例1と同様のTABのフィルムキャリアを試験片として、このフィルムキャリアの銅パターン上に下記(a)の無電解スズのカルボン酸浴により下地スズ皮膜を形成し、下記(b)の条件で下地皮膜を形成した試験片に加熱処理を施したのち、下記(c)の条件で前記(a)と同組成の無電解メッキ浴により上層スズ皮膜を形成した。
(a)無電解メッキによる下地スズ皮膜の形成
下記(イ)の無電解スズメッキ浴を建浴して、同メッキ液に試験片を浸漬し、下記(ロ)の液温及びメッキ時間で無電解メッキを施して、フィルムキャリアのインナリード上に同欄の膜厚のスズ皮膜を形成した。
(イ)無電解メッキ浴の組成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 0.35モル/L
グリコール酸 2.50モル/L
チオ尿素 1.50モル/L
次亜リン酸 0.50モル/L
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO8) 5.0g/L
(ロ)無電解メッキの条件
液温 :40℃
メッキ時間 :30秒
スズ膜厚 :0.06μm
(b)下地皮膜の加熱
下記の条件で下地皮膜を形成した試験片を加熱処理した。
加熱温度 :125℃
加熱時間 :60分
(c)無電解メッキによる上層スズ皮膜の形成
前記工程(a)と同組成の無電解スズメッキ浴を用いて、試験片の下地皮膜の上に下記(イ)の液温及びメッキ時間で無電解メッキを施し、同欄の合計膜厚になるようにスズ皮膜を積層した。
(イ)無電解メッキの条件
液温 :65℃
メッキ時間 :5分
スズ合計膜厚:0.59μm
前記実施例1と同様のTABのフィルムキャリアを試験片として、下記(イ)の無電解メッキ浴に試験片を浸漬し、下記(ロ)の液温及びメッキ時間で無電解メッキを施して、フィルムキャリアのインナリード上に同欄の膜厚の単層スズ皮膜を形成した。
(イ)無電解メッキ浴の組成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 0.35モル/L
グリコール酸 2.50モル/L
チオ尿素 1.50モル/L
次亜リン酸 0.50モル/L
α−ナフトールポリエトキシレート(EO15) 5.0g/L
(ロ)無電解メッキの条件
液温 :65℃
メッキ時間 :5分
スズ膜厚 :0.53μm
前記実施例1と同様のTABのフィルムキャリアを試験片として、このフィルムキャリアの銅パターン上に上記比較例1と同組成の無電解メッキ浴を用いて下記(a)の条件で下地スズ皮膜を形成した後、この下地皮膜を加熱することなく(下記(b)参照)、下記(c)の条件で上記比較例1と同組成の無電解メッキ浴により上層スズ皮膜を形成した。
(a)無電解メッキによる下地スズ皮膜の形成
[無電解メッキの条件]
液温 :40℃
メッキ時間 :30秒
スズ膜厚 :0.05μm
(b)下地皮膜の加熱はしない
(c)無電解メッキによる上層スズ皮膜の形成
[無電解メッキの条件]
液温 :65℃
メッキ時間 :5分
スズ合計膜厚:0.60μm
そこで、上記実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた各フィルムキャリアについて、上層スズメッキ皮膜(比較例1では、単層メッキ皮膜)を目視観察して、スズ皮膜における析出異常の発生度合の優劣を評価した。
評価基準は次の通りである。
○:スズ皮膜に異常粒子もフリルの発生も認められなかった。
×:スズ皮膜のほぼ全面に異常粒子が発生した。
評価 評価
実施例1 ○ 比較例1 ×
実施例2 ○ 比較例2 ×
実施例3 ○
実施例4 ○
実施例5 ○
実施例6 ○
これに対して、銅パターン上に下地スズ皮膜を形成し、これを加熱してから、上層スズ皮膜を形成した実施例1〜6では、上層スズ皮膜に異常粒子やフリルの発生はなく、析出異常を良好に防止できることが確認された。特に、実施例4〜5では、比較例1と同じアルカンスルホン酸浴を使用したが、析出異常の発生はなかった。
一方、銅パターン上にスズの2層メッキを形成し、且つ、下地スズ皮膜を加熱しなかった比較例2では、上層スズ皮膜のほぼ全面に異常粒子が発生し、評価の低さでは比較例1との差異はあまりなかった。従って、この比較例2を実施例1〜6と対比すると、上層スズ皮膜の析出異常を良好に防止するには、銅パターン上にスズの2層メッキを形成するだけでは充分でなく、下地スズ皮膜の加熱が必要であることが確認できた。
先ず、実施例1〜3を見ると、下地スズ皮膜の膜厚を変化させても上層スズ皮膜の析出異常は良好に防止された。この場合、下地皮膜の膜厚は、例えば、0.15μm以上に厚く形成する前記特許文献4とは異なり、0.06〜0.07μm程度に薄くても充分に効果があることが分かる。
また、実施例4〜5を見ると、下地スズ皮膜の加熱条件を変化させても上層スズ皮膜の析出異常の防止に有効に寄与できることが分かる。この場合、加熱温度が110℃では加熱時間は90分程度であるが(実施例5参照)、加熱温度を上げると加熱時間を短縮できる(実施例4参照)。
また、実施例1〜6においては、下地スズ皮膜と上層スズ皮膜を形成する無電解メッキ浴の浴種はアルカンスルホン酸浴、アルカノールスルホン酸浴、カルボン酸浴であるが、いずれの浴種で無電解スズメッキを行っても、上層スズ皮膜の析出異常は有効に防止されることが分かる。従って、フィルムキャリアなどの銅パターン上に本発明の2層スズメッキ方法を適用すると、異常粒子などが発生し易い浴種(例えば、アルカンスルホン酸浴)を用いた場合でも、異常粒子を円滑に防止でき、無電解スズメッキの浴種に拘束されず、均質で良好なスズ皮膜を形成できることが確認された。
前記試験例は上層スズ皮膜における析出異常の発生度合の評価試験であったが、本試験では、スズの2層メッキ皮膜上にソルダレジストを被覆した場合に、当該ソルダレジストの密着性の度合を調べた。
即ち、TAB用フィルムキャリア(微細パターンを形成しただけのテスト試料)の微細パターン上にスズの2層メッキを施した前記実施例1を援用し、この実施例1の上層スズ皮膜の上に公知の方法でソルダレジストを塗布し、乾燥硬化を行って、ソルダレジストの密着性を観察したが、ソルダレジストは上層スズ皮膜の上に良好に密着しており、ソルダレジストの端部においても部分剥離は全く認められなかった。
従って、ソルダレジストを被覆したフィルムキャリアなどの微細パターン上に無電解スズ浴でメッキする従来方式にあっては、ソルダレジストの端部にメッキ液が侵入して剥離(えぐれ)を起こす弊害があり、冒述の特許文献1〜3にあっても、ソルダレジストのえぐれを軽減する程度であるのに対して、本発明は、2層メッキ処理を終えた後にソルダレジストを塗布する方式であり、ソルダレジストがメッキ液に接触するという弊害を根本的に解消できるため、ソルダレジストに高い密着性を付与できることが裏付けられた。
Claims (7)
- 銅又は銅合金の微細パターンの上にパターン保護用のソルダレジストを形成した形態のフィルムキャリア、プリント回路基板、フレキシブルプリント基板などにおいて、
(a)微細パターン上に下地スズ皮膜を形成し、
(b)下地皮膜を加熱処理した後、
(c)下地スズ皮膜の全面上に上層スズ皮膜を形成し、
(d)上層スズ皮膜の上にソルダレジストを被覆することを特徴とするフィルムキャリアなどの製造方法。 - 下地スズ皮膜及び上層スズ皮膜を夫々無電解メッキ、電気メッキ又は蒸着法などで形成したことを特徴とする請求項1に記載のフィルムキャリアの製造方法。
- 下地スズ皮膜及び上層スズ皮膜を共に無電解スズの有機酸メッキ浴を用いて形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルムキャリアなどの製造方法。
- 工程(a)の下地スズ皮膜の膜厚が0.001〜0.14μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルムキャリアなどの製造方法。
- 工程(c)の上層スズ皮膜の膜厚が0.02〜5.0μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルムキャリアなどの製造方法。
- 工程(b)の加熱条件が70〜180℃、180分以内であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルムキャリアなどの製造方法。
- 工程(b)の加熱処理がアニール処理であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムキャリアなどの製造方法。
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