JP2006155859A - 光ディスク装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ディスク表面上の傷や汚れに強く、品質の良いRF信号を得ることのできる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】本発明の光ディスク装置は、ディスク表面からの距離が相対的に小さい第1の情報記録層と前記ディスク表面からの距離が相対的に大きい第2の情報記録層とを含む複数の情報記録層を備える光ディスク102からデータを読み出すことができる。この光ディスク装置は、光ビームの集束点を光ディスク102の任意の情報記録層上に位置させるフォーカス制御部117と、光ビームの集束点を情報記録層における所定のトラック上に位置させるトラッキング制御部118と、フォーカス制御部117およびトラッキング制御部118の少なくとも一方のゲイン特性を変化させることができるゲイン切換部108とを備えている。ゲイン切換部108は、第1の情報記録層からデータを読み出すときのゲイン交点周波数を、第2の情報記録層からデータを読み出すときのゲイン交点周波数よりも低い値に設定する。
【選択図】図6

Description

本発明は、回転する円盤状の情報担体(以下、「光ディスク」と称する。)に対するデータの記録、および光ディスクに記録されたデータの再生の少なくとも一方を行う光ディスク装置に関する。
光ディスクに記録されているデータは、比較的弱い一定の光量の光ビームを回転する光ディスクに照射し、光ディスクによって変調された反射光を検出することによって再生される。
再生専用の光ディスクには、光ディスクの製造段階でピットによる情報が予めスパイラル状に記録されている。これに対して、書き換え可能な光ディスクでは、スパイラル状のランドまたはグルーブを有するトラックが形成された基材表面に、光学的にデータの記録/再生が可能な記録材料膜が蒸着等の方法によって堆積されている。書き換え可能な光ディスクにデータを記録する場合は、記録すべきデータに応じて光量を変調した光ビームを光ディスクに照射し、それによって記録材料膜の特性を局所的に変化させることによってデータの書き込みを行う。
なお、ピットの深さ、トラックの深さ、および記録材料膜の厚さは、光ディスク基材の厚さに比べて小さい。このため、光ディスクにおいてデータが記録されている部分は、2次元的な面を構成しており、「情報記録面」と称される場合がある。本明細書では、このような情報記録面が深さ方向にも物理的な大きさを有していることを考慮し、「情報記録面」の語句を用いる代わりに、「情報記録層」の語句を用いることとする。光ディスクは、このような情報記録層を少なくとも1つ有している。なお、1つの情報記録層が、現実には、相変化材料層や反射層などの複数の層を含んでいてもよい。
記録可能な光ディスクにデータを記録するとき、または、このような光ディスクに記録されているデータを再生するとき、光ビームが情報記録層における目標トラック上で常に所定の集束状態となる必要がある。このためには、「フォーカス制御」および「トラッキング制御」が必要となる。「フォーカス制御」は、光ビームの焦点の位置が常に情報記録層上に位置するように対物レンズの位置を情報記録面の法線方向(以下、「基板の深さ方向」と称する。)に制御することである。一方、トラッキング制御とは、光ビームのスポットが所定のトラック上に位置するように対物レンズの位置を光ディスクの半径方向(以下、「ディスク径方向」と称する。)に制御することである。
従来、高密度・大容量の光ディスクとして、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM,DVD−RAM,DVD−RW,DVD−R,DVD+RW,DVD+R等の光ディスクが実用化されてきた。また、CD(Compact Disc)は今も普及している。現在は、これらの光ディスクよりもさらに高密度化・大容量化されたブルーレイディスク(Blu-ray Disc;BD)などの次世代光ディスクの開発・実用化が進められつつある。また、1枚の光ディスクに記録され得るデータの容量を高めるため、積層された複数の情報記録層を備える光ディスクも開発されている。
上記の光ディスクの中には、カートリッジに収納された状態ではなく、ベア(裸)で取り扱われるものがある。このような光ディスクでの表面には傷が形成されたリ、塵または指紋が付着しやすい。光ディスクの表面上の傷、塵、および指紋は、光ディスクを照射する光ビームに対して光学的な障害物となるため、フォーカス制御やトラッキング制御のためのサーボがはずれたり、再生信号(RF信号)の振幅が小さくなりすぎることがあり、その結果、データの記録・再生を安定して実行できない場合がある。
特許文献1は、光ディスク上に形成された傷を検知し、光ビームの反射が傷による影響を受けている期間、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボのゲイン(利得)を小さくする技術を開示している。サーボのゲインを低減することにより、傷の影響を補償できる。
特許文献1に開示されている技術では、3ビーム法を採用しており、主ビームの超解像形成物による回折現象によって生ずるサイドローブを利用している。この技術では、サイドローブが光ディスク上を主ビームに先行して移動する。このサイドローブが光ディスクの傷の上を通り過ぎると、反射光の強度が傷によって増加する。この強度変化を検知することにより、サイドローブに後続する主ビームが傷の上を通り過ぎる直前に、ゲインを低減することが可能になる。
特開平8−23586号公報(段落2〜18、図6、図2)
BDの記録密度は、DVDの記録密度の5倍であり、BDのトラックピッチおよびビーム径は、それぞれ、約1/2および約1/5に縮小している。このため、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボにおけるゲインを高め、光ディスクの面振れや偏心による残差を低減しなければ、品質のよいRF信号を得ることが難しい。
また、2層以上の情報記録層を備える光ディスク(以下、「多層ディスク」と称する。)では、各情報記録層の反射率が1層の情報記録層を備える光ディスク(以下、「単層ディスク」と称する。)における情報記録層の反射率に比べて低い。このため、多層ディスクでは、RF信号の振幅が小さくなり、その結果、SN(信号対ノイズ比)が低下してしまう。特に、BDのようにディスク表面(光入射側表面)に近い位置に情報記録層が存在する多層光ディスクの場合、ディスク表面に傷やダストが存在すると、後に詳しく説明するように、信号品質が特に劣化しやすいという問題がある。このことは、特にディスクカートリッジなどのケースを用いずに、ベア状態のBDを使用する場合に顕著である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ディスク表面上の傷や汚れに強く、品質の良いRF信号を得ることのできる光ディスク装置を提供することを主たる目的としている。
本発明の光ディスク装置は、ディスク表面からの距離が相対的に小さい第1の情報記録層と前記ディスク表面からの距離が相対的に大きい第2の情報記録層とを含む複数の情報記録層を備える光ディスクからデータを読み出すことのできる光ディスク装置であって、光ビームを放射する光源と、前記光源から放射された光ビームを集束するレンズと、前記光ビームの集束点を前記光ディスクの任意の情報記録層上に位置させるフォーカス制御手段と、前記光ビームの集束点を前記情報記録層における所定のトラック上に位置させるトラッキング制御手段と、前記フォーカス制御手段およびトラッキング制御手段の少なくとも一方のゲイン特性を変化させることができるゲイン設定手段とを備え、前記ゲイン設定手段は、前記第1の情報記録層からデータを読み出すときのゲイン交点周波数を、前記第2の情報記録層からデータを読み出すときのゲイン交点周波数よりも低い値に設定する。
好ましい実施形態において、前記光ビームの集束点を現在の情報記録層から目的とする他の情報記録層に移動させる場合、前記集束点の移動が完了する前に、前記ゲイン交点周波数を、前記現在の情報記録層に対する値から、前記目標とする他の情報記録層に対する値に変化させる。
好ましい実施形態において、前記ディスク表面と前記第2の情報記録層との間の距離は100μm以下である。
好ましい実施形態において、前記ゲイン設定手段は、前記複数の情報記録層に対するゲイン特性を規定するパラメータを記憶する。
好ましい実施形態において、搭載された個々の光ディスクに応じて前記パラメータを調整する学習を起動時に実行する。
本発明による他の光ディスク装置は、ディスク表面からの距離が相対的に小さい第1の情報記録層と前記ディスク表面からの距離が相対的に大きい第2の情報記録層とを含む複数の情報記録層を備える光ディスクからデータを読み出すことのできる光ディスク装置であって、光ビームを放射する光源と、前記光源から放射された光ビームを集束するレンズと、前記光ビームの集束点を前記光ディスクの任意の情報記録層上に位置させるフォーカス制御手段と、前記光ビームの集束点を前記情報記録層における所定のトラック上に位置させるトラッキング制御手段と、前記情報記録層で反射された光ビームから再生信号を生成する手段と、前記再生信号に含まれる特定周波数帯域をカットするフィルタ手段と、前記フィルタ手段の周波数1MHz以上における高域ゲインを変化させるゲイン設定手段とを備え、前記ゲイン設定手段は、前記第1の情報記録層からデータを読み出すときの高域ゲインを、前記第2の情報記録層からデータを読み出すときの高域ゲインよりも高い値に設定する。
本発明による更に他の光ディスク装置は、ディスク表面からの距離が相対的に小さい第1の情報記録層と前記ディスク表面からの距離が相対的に大きい第2の情報記録層とを含む複数の情報記録層を備える光ディスクからデータを読み出すことのできる光ディスク装置であって、光ビームを放射する光源と、前記光源から放射された光ビームを集束するレンズと、前記光ビームの集束点を前記光ディスクの任意の情報記録層上に位置させるフォーカス制御手段と、前記光ビームの集束点を前記情報記録層における所定のトラック上に位置させるトラッキング制御手段と、前記情報記録層で反射された光ビームから再生信号を生成する手段と、前記再生信号に基づいて基準タイミング信号を生成するPLL回路とを備え、前記ゲイン設定手段は、前記第1の情報記録層から前記基準タイミング信号を生成するときの前記PLL回路のゲインを、前記第2の情報記録層から前記基準タイミング信号を生成するときの前記PLL回路のゲインよりも高い値に設定する。
好ましい実施形態において、前記光ビームの集束点を現在の情報記録層から目的とする他の情報記録層に移動させる場合、前記集束点の移動の後に、前記高域ゲインを前記現在の情報記録層に対する値から、前記目標とする他の情報記録層に対する値に変化させる。
好ましい実施形態において、前記ディスク表面と前記第2の情報記録層との間の距離は100μm以下である。
好ましい実施形態において、前記ゲイン設定手段は、前記複数の情報記録層に対するゲイン特性を規定するパラメータを記憶する。
好ましい実施形態において、前記ゲイン設定手段は、搭載された個々の光ディスクに応じて、前記パラメータの初期値を新しい設定値に更新する。
本発明によれば、複数の情報記録層を備える光ディスクの表面に傷やダストが存在する場合でも、制御ループのゲイン交点周波数を調節することにより、各種信号の過渡応答を低減するため、制御ループが外れたり、RF信号に振幅の欠落が生じる事態を避けることができる。このため、再生信号品質を確保しつつ、多層ディスクに対応した信頼性の高い光ディスク装置を提供することができる。
本発明の実施形態を説明する前に、情報記録層の深さとディスク表面の傷との関係を説明する。
まず、図1(a)〜(c)を参照する。図1(a)〜(c)は、いずれも、光ディスク102の断面構成と光ビームの集束点との位置関係を示している。図示されている光ディスク(厚さ:1.2mm)102は、基板(厚さ:1.1mm)180と、基板180に支持される情報記録層L0、L1、L2と、情報記録層L2を覆う保護膜188とを備えている。情報記録層L0、L1の間、および情報記録層L1、L2の間には、いずれも、薄い透明層が介在している。図1(a)、(b)、および(c)は、それぞれ、光ビームの焦点が情報記録層L0、L1、L2上に位置する状態を示している。
3層の情報記録層L0〜L2は、厚さ100μmの範囲内において25μmの間隔で積層されている。すなわち、情報記録層L0、L1、L2は、それぞれ、保護膜(厚さ:約50μm)188の表面(ディスク表面)から100μm、75μm、50μmの深さに配置されている。保護膜188は、集束レンズ126で集束された光ビームを透過させるように透明の材料から形成されており、各情報記録層L0〜L2には、保護膜188を介して光学的にアクセスされる。3層の情報記録層L0〜L2のうちのいずれの情報記録層にアクセスするかは、集束レンズ126の光軸方向(ディスク表面に垂直な方向)における位置を調節し、アクセスすべき目標の情報記録層上に光ビームの集束点(焦点)を位置させればよい。
図1(a)の状態では、ディスク表面が光ビームを横切ることよって形成される光束断面の面積が相対的に大きく、その面積中に占める傷103の面積割合は少ない。これに対して、図1(c)に示す状態では、ディスク表面が光ビームを横切ることよって形成される光束断面の面積は相対的に小さく、その面積中に占める傷103の面積割合は大きくなる。このように、情報記録層L0、L1、L2のうちのどの情報記録層上に光ビームの焦点が位置するかによって、光ディスク102の表面に形成された傷103の影響が異なっている。
図2(a)、(b)、(c)は、それぞれ、図1(a)、(b)、(c)の状態でフォーカス制御を行ったときに得られるFE信号と傷との関係を模式的に示している。フォーカス制御のゲインは、従来どおり、いずれの場合でも同一の大きさに設定されているものとする。
光ビームの焦点が情報記録層L0上に位置するとき、図1(a)に示す傷103が光ビームを横切る時間が相対的に長くなる。図2(a)は、傷103の影響により、適切なFE信号を得ることができない期間が長いことを示している。図2(a)の上部に示される黒いマークは、ディスク表面に傷による影響の大きさと、その影響が生じる期間を模式的に示している。この期間、傷103によってデフォーカス(光ビームの集束点が目標とする情報記録層から外れる現象)が発生し、一時的にFE信号が略ゼロにまで減衰する。
図2における「FC動作」は、フォーカス制御(フォーカスコントロール)が行われていることを示し、FE信号は小さな振幅で振動している。例えば時刻Aでは、フォーカス制御が行われているため、光ビームの集束点は情報記録層L0上に位置している。このとき、光ディスクが回転しているため、光ディスクの面振れが生じるが、フォーカス制御により、図1(a)の集束レンズ126が光ディスクの面触れに追従し、情報記録層L0上に常に光ビームの集束点を保持することができる。ただし、情報記録層L0に対して光ビームの集束点が僅かにずれるため、FC動作中であっても、図2(a)に示すようにFE信号は小さく振動することになる。
時刻Cで光ビームがディスク表面の傷を横切り始め、その結果、適正なFE信号を生成できなくなる。光ビームがディスク表面の傷を横切りつつあるとき、正確なFE信号が生成されないため、光ビームの集束点は、情報記録面L0から大きくずれる可能性がある。
光ビームがディスク表面の傷を横切り終わると、適正なFE信号を生成できるようになるため、再び、FC動作を開始することができる。このとき、光ビームの集束点と、情報記録面L0との位置ずれに応じた大きさのFE信号が生成され、このFE信号をゼロにするように集束レンズ126の位置が制御される。FE信号に大きな振幅変化が発生するが、フォーカス制御により、光ビームの集束点は情報記録層L0上に位置することができるようになる。
前述したように、情報記録層L0にアクセスしているときは、光ビームの断面積に占める傷103の面積割合が小さいため、傷103の影響が相対的に小さくなる。図2(a)の上部における黒いマークは、相対的に狭い幅を有しており、このことが傷の影響が小さいことを表している。傷の影響が小さいため、図2(a)に示すように、光ビームが傷103を通過する前後で、FE信号の変動(振れ)は小さくなる。
一方、図1(b)の状態では、光ビームが傷を通過する時間が短縮し、傷103によってデフォーカスが生じる期間も短くなる。図1(c)の状態では、光ビームが傷を通過する時間は更に短縮するが、傷103によってデフォーカスが生じる期間も更に短くなる。このため、図1(b)、(c)の状態では、図2(b)、(c)に示されるように光ビームが傷103を通過する前後で、FE信号の変動(振れ)は大きくなる。
このようにフォーカス制御のゲインを一定値に設定している場合は、記録・再生の対象となる情報記録層の位置が浅くなるほど、図2(a)から(c)に示すように、傷103の通過前後でのFE信号の乱れが大きくなる。特に、図2(c)に示す例では、光ビームが傷103を通過した直後にFE信号の変動が過度に大きくなり、その結果、フォーカス制御がはずれてしまう可能性もある。
次に、図3および図4を参照しながら、フォーカス制御ループのゲイン特性を説明する。
図3は、フォーカス制御系に与えられるFE信号の振幅(面振れなどの外乱の大きさに相当)がサーボ制御によって減少する様子を模試的に示す図である。サーボ制御系に入力されるFE信号の振幅を「X」とすると、フォーカス制御により、その振幅は「Y」に減少する(X>Y)。このとき、サーボ制御のゲインは、Xに対するYの比率(Y/X)で示すことができる。例えばY/X=1/1000のとき、ゲインは60dBとなる。例えば300μmの面振れがある場合、ゲイン60dBでフォーカス制御が行われると、FE信号の振幅は0.3μm相当の振幅に低減される。すなわち、光ビームの集束点と目標の情報記録層とのずれは0.3μm以下の範囲に保持される。ただし、実際のゲインは周波数依存性を有しているため、上記のように単純ではない。
図4は、光ディスク装置におけるフォーカス制御ループのゲイン特性を模式的に示すグラフである。ゲインが周波数依存性を有するため、例えば、周波数50Hzのときのゲインが60dBであっても、周波数が高くなるにつれてゲインは低下している。本明細書では、ゲインがゼロになる周波数を「ゲイン交点周波数」と称する。
光ディスク装置のフォーカス制御では、サーボループのゲイン特性をゲイン交点周波数によって規定することが可能である。図4では、2種類のゲイン特性の概略が示されている。破線のゲイン特性は、実線のゲイン特性に比べて周波数の高い領域でゲインが高くなっている。実際の光ディスク装置におけるサーボ制御では、図4に示すようなゲイン特性が示されるため、各周波数におけるゲインを厳密に記述する代わりに、ゲイン交点周波数のみを特定するだけで、ゲイン特性の概略を決定できる。
図4の例では、実線のゲイン特性を有する場合のゲイン交点1の周波数を2kHz、破線のゲイン特性を有する場合のゲイン交点2の周波数を3kHzであるとする。ゲイン交点周波数を3kHzから2kHzに低減すると、比較的広い周波数範囲においてゲインが低下することなる。
このようにゲインは周波数依存性を有するため、例えば周波数50Hzにおけるゲインが60dBであっても、周波数が500Hzにおけるゲインは20dBに低下する。この場合において、光ディスクの面振れなどの外乱に起因してFE信号が大きく振動するとき、例えば周波数50HzにおけるFE信号の振幅が当初300μmであったとすると、サーボ制御後の振幅は0.3μm程度に減少する。ただし、FE信号に含まれる更に周波数が高い成分に対しては、相対的にゲインが小さくなるため、外乱振幅の低減率は低くなる。サーボ制御によって低下した信号振幅の大きさを「制御残渣」と称する場合がある。上述した50Hzで振幅300μmの外乱がある場合、周波数50Hzにおける制御残渣は0.3μmであった。フォーカスサーボ制御のもとでも、制御残渣をゼロにすることはできず、FE信号はある大きさの振幅を持って振動しつづける。
以上の説明から明らかなように、ゲイン交点周波数が低下すると、全体としてゲインは低下する。図2(c)に示すように、ディスク表面の傷に起因してFE信号が大きく変動すると、前述したように、フォーカス制御がはずれる問題が発生し得る。このような問題を解決するためには、フォーカス制御の応答を抑制することが有効である。フォーカス制御における応答の抑制は、制御ループのゲインを小さくすることによって可能である。ただし、このゲインを小さくすると、フォーカス制御の制御残差も大きくなるため、光ビームの集束点と情報記録層との位置ずれが平均的に大きくなってしまう。このことは、再生信号の品質を劣化させるおそれがある。
図5は、深さの異なる情報記録層L0層、L1層のそれぞれについて、フォーカスずれ(defocus)やディスクチルトと再生信号品質との関係を示すグラフである。ここで、再生信号品質は「MLSE」で示されている。MLSEは、PRML(パーシャル・レスポンス・マキシマム・ライクリフッド)信号処理方式における波形等価後の補償の確からしさの分布を規定する指標であり、ジッタと同様に信号品質指標として用いることができる。MLSEの詳細は、例えば、Harumitsu Miyashita, et.al.による「Signal Qualification Method for Partial-Response Maximum-Likelihood Read/Write Channel」(Japanese Journal of Applied Physics Vol. 43, No. 7B, 2004, pp. 4850-4851)に開示されており、この文献の全体を本願明細書に援用する。なお、ディスクチルトは、ラジアルチルト(R−tilt)、およびタンジェンシャルチルト(T−tilt)の2つに分けて評価を行っている。
図5に示すように、情報記録層L0と情報記録層L1層に関する各パラメータのマージンを比較した場合、デフォーカスマージンは±0.2μmで同等であるが、ラジアルチルトマージン、タンジェンシャルチルトマージンのチルトマージンは、情報記録層L1におけるマージンが広い。
一般にチルトマージンは、コマ収差が小さくなるほど、大きくなる。ここで、情報記録層の深さをd、レンズの開口率をNA、光ビームの波長をλとした場合、コマ収差の大きさは、d×NA3/λで示される。したがって、NAの大きなレンズを用いるBlu−rayディスクドライブでは、情報記録層L0、L1の深さの差によるチルトマージンの差がより顕著になる。
ディスク表面の傷に対するフォーカス制御の過渡応答は、図2(a)から(c)に示すように、情報記録層の位置がディスク表面に近くなるほど激しくなる。これに対して、チルトマージンは、図5に示すように、情報記録層の位置がディスク表面に近いほど、大きくなる。この傾向は、BDのように情報記録層がディスク表面に近い位置(ディスク表面から深さ100μm以下)に存在している場合に顕著である。
本発明では、上記現象に着目し、ディスク表面の傷に対する過渡応答を緩やかにするため、サーボ制御のループゲインを情報記録層ごとに変化させる。具体的には、情報記録層の位置がディスク表面に近いほど、ゲインが小さくなるようにゲイン交点周波数を相対的に低い値に設定する。このように浅い情報記録層に対するゲインを低く設定すると、光ディスクの面振れ等に対する追従残差が増加するが、浅い情報記録層では相対的にチルトマージンが大きいため、リードエラーの発生率は増加しない。したがって、各情報記録層でのゲイン交点周波数の設定値は、チルトマージンの拡大量に相当する値に決定することが好ましい。
(実施形態1)
次に、図6および図7を参照しながら、本発明による光ディスク装置による第1の実施形態を説明する。
まず、図6を参照しながら本実施形態における光ディスク装置100の機能ブロックを説明し、その後、具体的に構成を説明することにする。
光ディスク装置100は、図6に示すように、光ディスク102における所望の情報記録層に光学的にアクセスする光ヘッド110を備えている。光ディスク102は、例えば図1に示すように複数の情報記録層を有している。光ヘッド110は、光ディスク102の任意の情報記録層に光ビームを集束し、情報記録層で反射された光を電気信号に変換する。光ヘッド110は、例えば半導体レーザ等の光源と、光源から放射された光ビームを集束するレンズ(対物レンズ)を具備している。光ヘッド110は、異なる波長の光ビームを放射する複数の光源と、各々が特定波長の光ビームを集束する複数の対物レンズを備えていても良い。その場合、光ディスク装置に搭載された光ディスクの種類に応じて適切な光源および対物レンズが選択されることになる。
なお、DVDの情報記録層からデータを読み出し、あるいはデータを書き込むには、赤色レーザ(波長:660nm)を集束し、その焦点が情報記録層上に位置するように制御する必要がある。この場合のレーザ光の集束に用いる対物レンズの開口度(NA)は、約0.6である。一方、BDの情報記録層からデータを読み出すには、青紫レーザ(波長:405nm)を集束し、その焦点が情報記録層上に位置するように制御する必要がある。この場合のレーザ光の集束に用いる対物レンズの開口度(NA)は、0.85である。
移動部112は、上述した対物レンズの位置を調節するアクチュエータを備えている。このアクチュエータは、光ディスク102の情報記録層に対して垂直方向に対物レンズを移動するだけではなく、情報記録層に平行に対物レンズを移動させることもできる。対物レンズの移動により光ビームの集束点を移動させ、光ディスクの任意の情報記録層における任意のトラックにデータを書き込んだり、そのトラックからデータを読み出したりすることができる。
フォーカス検出部114は、光ヘッド110から出力される電気信号に基づいて、光ビームの集束点と目標とする情報記録層との位置ずれを示すFE信号を生成する。フォーカス制御部117は、フォーカス検出部114から受け取ったFE信号に対してフィルタ演算を行い、移動部112に駆動信号を供給する。フォーカス制御時における移動部112は、フォーカス検出部114から受け取った駆動信号に基づき、光ヘッド110内における対物レンズの光軸方向位置を制御し、光ビームの集束点が光ディスクの情報記録層上に位置するようにする。
光ヘッド110による光学的なアクセスの対象が、或る情報記録層から他の情報記録層に移るとき、光ビームの集束点を情報記録層間で垂直方向に移動させる必要がある。このようにして光ビームの集束点を情報記録層間で移動させることを本明細書では「層間移動」または「フォーカスジャンプ」と称する場合がある。
フォーカス制御部117は、「層間移動」が行われる前にフォーカス制御をオフにする。コントローラ104は、移動部112を駆動し、対物レンズの位置を光軸方向に沿って大きく変化させ、光ビームの集束点を他の情報記録層に移動させる。「層間移動」が終わった後、フォーカス制御部117は、フォーカス制御をオンにする。
トラッキング検出部115は、光ヘッド110から出力される電気信号に基づいてトラッキングエラー信号(TE信号)を生成する。トラッキング制御部118は、TE信号に対するフィルタ演算を行い、移動部112を駆動する。移動部112は、トラッキング制御部118からの信号に応じて光ビームの集束点が光ディスク102の所望トラック上に位置するようにトラッキング制御を行う。
RF加算部116は、光ヘッド110からの信号を加算し、RF信号を生成する。ハイパスフィルタ(HPF)119Aは、RF信号から低周波成分を除去し、必要なRF振幅を確保する。イコライザ部119Bは、HPF119Aの出力のうち所定の周波数帯域に含まれる信号成分を増幅し、不用な帯域の信号成分を減衰させる。再生部119Cは、イコライザ部119Bからの出力を2値化した後、エラー訂正や復調などのディジタル信号処理を施す。こうして、光ディスク102に記録されているデータを再生することができる。
コントローラ104は、移動部112を制御し、光ディスク102における複数の情報記録層の間で光ビームの集束点を移動させる(層間移動)が、本実施形態で特徴的な点は、フォーカス制御部117におけるゲインの切り換えを行うことにある。すなわち、本実施形態では、光ビームの集束点を位置させる情報記録層がディスク表面(光入射側表面)に近いほど、ゲイン交点周波数が低くなるようにフォーカス制御のループゲインを変化させる。ゲイン交点周波数を低下させるとき、本実施形態の効果を得るためには、例えば500Hz〜5kHzにおけるゲインを3dB以上低下させるようにゲイン交点周波数の大きさを調節することが好ましい。
次に、図7を参照しながら、光ディスク装置100のより具体的な構成を説明する。
図示されている光ディスク装置は、光ヘッドの構成要素として、光源122と、カップリングレンズ123と、フォーカスアクチュエータ124と、対物レンズ126と、トラッキングアクチュエータ128と、偏光ビームスプリッタ130と、集光レンズ132と、光検出器134と、プリアンプ136、138、140、142と、加算器144、146とを備えている。
光源122は、光ビームを放射する半導体レーザである。簡単のため、図7には単一の光源122が示されているが、実際の光源は、異なる波長のレーザ光を放射する例えば3つの半導体レーザチップから構成されていてもよい。カップリングレンズ123は、光源122から放射された光ビームを平行光にする。偏光ビームスプリッタ130は、カップリングレンズ123からの平行光を光ディスク102が位置する側に反射する。偏光ビームスプリッタ130で反射された光は、対物レンズ126を透過して光ディスク102に入射することになる。
フォーカスアクチュエータ124は、対物レンズ126の位置を光ディスク102の情報記録層に対して略垂直な方向に変化させ、トラッキングアクチュエータ128は、対物レンズ126の位置を光ディスク102の情報記録層と略平行な方向に変化させる。
対物レンズ126は、偏光ビームスプリッタ130で反射された光ビームを集束し、光ディスク102の情報記録層上に焦点を位置させる。このとき情報記録層上には光ビームスポットが形成される。光ディスク102で反射されたレーザ光は、対物レンズ126および偏光ビームスプリッタ130を通過する。
集光レンズ132は、対物レンズ126および偏光ビームスプリッタ130を通過してきた、光ディスク102からの反射光を光検出器134上に集束させる。光検出器134は、集光レンズ132を通過した光を受け、その光信号を電気信号(電流信号)に変換する。光検出器134は、例えば4分割の受光領域を有している。図7に示す例では、光検出器134から出力される4種類の電気信号が、プリアンプ136、138、140、142を介して加算器144、146に入力される。
図7の光ディスク装置は、更に、コンパレータ152、154と、位相比較器156と、差動増幅器158,160と、ディジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)162と、ゲイン切換回路164,166と、アナログ・ディジタル(AD)変換器168,170とを備えている。
差動増幅器158は、加算器144、146からの出力を受け取り、フォーカスエラー信号(FE信号)を出力する。FE信号は、光ビームが光ディスク102の情報記録層上で所定の集束状態になるように制御するための信号である。FE信号の検出法は特に限定されず、非点収差法を用いたものでもよいし、ナイフエッジ法を用いたものであってもよいし、SSD(スポット・サイズド・ディテクション)法を用いたものであってもよい。検出法に応じて回路構成を適宜変更してもよい。
コンパレータ152,154は、それぞれ、加算回路144,146からの信号を2値化する。位相比較器156は、コンパレータ152、154から出力される信号の位相比較を行う。
差動増幅器160は、位相比較器156からの出力を受け取り、トラッキングエラー信号(TE信号)を出力する。TE信号は、光ビームが光ディスク102のトラック上を正しく走査するように制御するための信号である。TE信号の検出法は特に限定されず、位相差法を用いたもの限定されず、プッシュプル法を用いたものであってもよいし、3ビーム法を用いたものであってもよい。検出法に応じて回路構成を適宜変更してもよい。
図6のコントローラ104に相当するDSP162は、TE信号等に応じて駆動回路150にトラッキング制御用の制御信号を出力する。また、DSP162は、FE信号等に応じて駆動回路148にフォーカス制御用の制御信号を出力する。駆動回路150は、DSP162からの制御信号に応じてトラッキングアクチュエータ128を駆動する。トラッキングアクチュエータ128は、集束レンズ126を光ディスク102の情報記録層と略平行な方向に移動させる。駆動回路148は、DSP162からの制御信号に応じてフォーカスアクチュエータ124を駆動する。フォーカスアクチュエータ124は、集束レンズ126を光ディスク102の情報記録層と略垂直な方向に移動させる。
ゲイン切換回路164は、FE信号が所定の振幅をもつようにフォーカス制御のゲインを調整する。AD変換器168は、ゲイン切換回路164からの信号をディジタル信号に変換してDSP162に出力する。一方、ゲイン切換回路166は、TE信号が所定の振幅を持つようにトラッキング制御のゲインを調整する。AD変換器170は、ゲイン切換回路166からの信号をディジタル信号に変換してDSP162に出力する。
光検出器134の出力は、RF加算回路181にも入力される。RF加算回路181では、周波数帯域を保持した状態で加算回路144、146の出力を加算する。RF信号は、光ディスク102の情報記録面の反射率の局所的変化に対応した信号であり、アドレス情報やユーザデータの再生に用いられる。RF加算回路の出力は、記録坦体102の反射率低下や表面の傷やほこり、汚れに対して振幅を補償するためのハイパスフィルタ(HPF)182を通過し、イコライザ(EQ)183へ入力される。EQ183は、RF信号に含まれる有効な信号を抽出するため、例えば等リプルフィルタなどで構成された高次のフィルタである。EQ183は、必要な周波数帯域を強調し、不要な高周波を減衰して除去する。EQ183で抽出された有効な帯域のRF信号は、図6に示す再生部119Cを構成する2値化回路184によってディジタル化され、ECC/復調回路185を経て出力される。
ディスクモータ120は、光ディスク102を所定の回転数で回転させる。
本実施形態における光検出器134と、プリアンプ136、138、140、142と、加算回路144,146と、コンパレータ152,154と、位相比較器156と、差動増幅器160と、ゲイン切換回路166と、AD変換器170と、DSP162と、駆動回路150と、トラッキングアクチュエータ128とは、請求項におけるトラッキング制御手段を構成する。また、光検出器134と、プリアンプ136〜142と、加算回路144,146と、差動増幅器158と、ゲイン切換回路164と、AD変換器168と、DSP162と、駆動回路148と、フォーカスアクチュエータ124とは、請求項におけるフォーカス制御手段を構成する。
次に、本実施形態における光ディスク装置の基本的な動作を説明する。
まず、情報記録層L0にアクセスしている状態から、情報記録層L1への層間移動が必要になったとする。この場合は、DSP162および駆動回路148の働きにより、光ビームの集束点を情報記録層L0から情報記録層L1に移動させる。本実施形態では、
情報記録層L1に移動後のゲイン交点周波数を値GF1に等しくなるようにゲイン切換回路164を制御する。そして光ビームの集束点が情報記録層L1に達した後、フォーカス制御、トラッキング制御のサーボループを閉じる。このときのゲイン交点周波数GF1は、情報記録層L0のゲイン交点周波数GF0より低い値である。
さらに情報記録層L1から情報記録層L2への層間移動が必要になった場合は、DSP162および駆動回路148の働きにより、光ビームの集束点を情報記録層L1から最も手前に位置する情報記録層L2に移動させる。この場合も、本実施形態では、情報記録層L2に移動後のゲイン交点周波数を値GF2に等しくなるようにゲイン切換回路164を制御する。そして光ビームの集束点が情報記録層L2に達した後、フォーカス制御やトラッキング制御のサーボループを閉じる。
こうして、本実施形態における情報記録層L0、L1、L2に関するゲイン交点周波数の値は、GF0>GF1>GF2の関係を満足することになる。ゲインの設定値あるいはゲイン特性を規定するパラメータは、DSP162に内蔵されるメモリ(不図示)に前もってテーブル値として格納されている。
なお、本実施形態では、ゲインを規定する各種パラメータの切り替えを、層間移動の前に行っていている。フォーカスサーボやトラッキングサーボにおけるゲインの切り替えは、層間移動の前に行っても不安定にならないため、実際の層間移動を開始する前に行なうことが好ましい。なぜなら、フォーカスサーボやトラッキングサーボが動作している安定状態で、層間移動前にゲインを切り替えても、その影響でサーボが外れてしまうようなことはない。また逆に、情報記録層の反射率や、トラッキング信号の変調率が情報記録層ごとにばらついた場合は、層間移動後に適切なゲイン特性を得られず、サーボループを閉じることが困難になるからである。従って、層間移動後に速やかにゲイン切り替えの効果を得るには、層間移動を開始する直前にゲインの切り替えを行うことが望ましい。
なお、情報記録層ごとに異なるゲイン特性は、個々の光ディスクの差異に応じて最適化されることが好ましい。以下、起動時の学習によりゲイン特性を調整する方法を簡単に説明する。
まず、光ディスク装置の電源がON状態になると、光ディスク装置に搭載された光ディスク102の情報記録層のうち、対物レンズ126から最も離れた情報記録層L0に焦点を結ぶようにフォーカスアクチュエータ124が動作する。このとき、フォーカス制御のゲイン交点周波数が値GF0に等しくなるようにゲイン切換回路164が調整され、フォーカスサーボのゲイン特性が初期値から修正される。
次に、DSP162および駆動回路148の働きにより、光ビームの集束点を情報記録層L0から情報記録層L1に移動させる。光ビームの集束点が情報記録層L1に移動した後、トラッキング制御のサーボループを閉じ、そのゲイン交点周波数を値GF1に等しくなるようにゲイン切換回路164を制御する。情報記録層L1でのゲイン調整が終了すると、DSP162および駆動回路148の働きにより、光ビームの集束点を情報記録層L1から最も手前に位置する情報記録層L2に移動する。このとき、フォーカス制御の初期ゲインは情報記録層L1での調整値を採用することが好ましい。光ビームの集束点が情報記録層L2に移動した後、トラッキング制御のサーボループを閉じ、そのゲイン交点周波数を値GF2に等しくなるようにゲイン切換回路164を制御する。このゲイン交点周波数GF2は、情報記録層L1のゲイン交点周波数GF1より低い値である。調整後のゲインを規定するパラメータは、DSP162に内蔵されるメモリ(不図示)にテーブル値として格納される。
フォーカスアクチュエータ124の感度特性ばらつきによっては、初期のゲイン変動が大きい。このため、出荷前の工程調整において、光ディスクの面振れや偏心などのない安定した光ディスクを用い、その感度ばらつきを吸収するような調整値を獲得し、光ディスク装置の不揮発性メモリに書き込んでおくことが好ましい。
光ディスクの情報記録層毎の反射率も光ディスクによって変動するため、反射率の変動に起因してゲインを規定するパタメータを調整することが好ましい。このようなゲインパラメータの調整は、上述したように、光ディスク装置の起動時に行うことが好ましい。
なお、本実施形態では、フォーカス制御のゲインを情報記録層ごとに調節しているが、トラッキング制御のゲインを情報記録層ごとに調節してもよい。トラッキング制御のゲイン、ディスク表面傷に起因するTE信号の応答特性、およびチルトマージンの関係も、フォーカス制御の場合と同様である。
本実施形態の光ディスク装置によれば、積層された複数の情報記録層を有する多層ディスクの表面に傷が存在したとしても、光ディスク装置の制御の安定性と高品質の記録再生を両立し、信頼性の高い装置を提供することができる。
(実施形態2)
次に、本発明による光ディスク装置の第2の実施形態を説明する。本実施形態における光ディスク装置の基本的な構成は、図7に示す通りである。本実施形態の光ディスク装置が前述の実施形態1における光ディスク装置と異なる点は、光ディスク102が備える情報記録層の深さに応じてEQ183の周波数特性を変化させる点にある。
以下、本実施形態におけるHPF182のゲイン設定を説明する。
図8(a)、(b)、(c)は、それぞれ、図1(a)、(b)、(c)の状態でフォーカス制御を行ったときに得られるRF信号とディスク表面の傷との関係を模式的に示している。HPF182におけるゲインは、従来どおり、いずれの場合でも同一に設定されているものとする。
図1(a)に示すように、光ビームの焦点が情報記録層L0上に位置するとき、傷103が光ビームを横切る時間が相対的に長くなる。図8(a)は、傷103の影響により、適切なRF信号を得ることができない期間が長いことを示している。すなわち、傷103によってデフォーカスが発生し、一時的にRF信号が減衰する期間が長くなる。ただし、前述したように、光ビームの断面積に占める傷103の面積割合が小さいため、傷103の影響が相対的に小さくなる。このため、光ビームが傷103を通過する前後で、RF信号の変動(振れ)は小さくなる。
一方、図1(b)の状態では、光ビームが傷を通過する時間が短縮し、傷103によってデフォーカスが生じる期間も短くなる。図1(c)の状態では、光ビームが傷を通過する時間は更に短縮し、傷103によってデフォーカスが生じる期間も更に短くなる。このため、図1(b)、(c)の状態では、図8(b)、(c)に示されるように光ビームが傷103を通過する前後で、RF信号の変動(振れ)は大きくなる。
このようにHPF182のゲイン交点周波数を一定値に設定している場合は、記録・再生の対象となる情報記録層の位置が浅くなるほど、傷の影響が集中するため、影響度は大きく、傷の通過時にはRF信号の減衰も大きくなるため、振幅劣化がひどくなる。RF信号の振幅劣化がひどい場合、データスライスのフィードバックループもはずれ、2値化もできなくなる。
本実施形態の光ディスク装置においても、情報記録層L0、L1に関する信号特性を比較すると、図5に示すよう結果が得られる。したがって、デフォーカスマージンは±0.2μmで同等であるが、ラジアルチルトマージン、タンジェンシャルチルトマージンのチルトマージンは情報記録層L1のほうが大きくなる。
本実施形態では、情報記録層に応じて、図9に示すようにHPF182の高域ゲイン(周波数1MHz以上のRF帯域でのゲイン)を値GH0、GH1、GH2の三段階に変化させる。図9はゲインの周波数依存性を示しており、BDの標準再生速度では、RF帯域の範囲を規定するF1は約4MHz、F2は約16MHzである。
より詳細に説明すると、本実施形態では、高域ゲインを情報記録層L0に対しては値GH0、情報記録層L1に対しては値GH1、情報記録層L2に対しては値GH2に設定し、情報記録層の位置が浅くなるほど、高域ゲインを高い値に設定するようにしている。これにより、ディスク表面の傷に起因するRF信号の減衰を各情報記録層で略同じレベルにすることが可能になる。
HPF182の高域ゲインを高くすると、高域ノイズが増加し、信号品質が劣化する結果、ジッタやMLSE等の指標が高くなる。しかし、図5を参照しつつ説明したように、情報記録層の位置が浅くなるほど、チルトマージンが拡大するため、リードエラーの増大は発生しない。各情報記録層に関する高域ゲインの値は、チルトマージンの拡大量に相当する値に設定するのが好ましい。
なお、HPF182における高域ゲインの設定値は、光ヘッドの分解能や絞りのばらつきに合わせて製造工程等で個別に調整し、EEPROMに各層毎に書き込んでもよい。あるいは、光ディスク装置の起動時に、光ディスクの内周領域に存在する著作権保護や、ディスクID付与のためのBCA(Burst Cutting Area)の領域へ移動し、そのBCAの部分を傷に見立てて、HPFのゲインが傷に対してもっとも強くなるように、RF振幅やジッタベストになるように調整してもよい。調整されたゲイン設定値は、例えばDSP162内蔵のRAM(不図示)にテーブル値として格納される。
EEPROM(不図示)やRAMに格納したゲイン設定値に基づき、層間移動を行うとき、目標とする情報記録層に光ビームの集束点が移動した直後に、その情報記録層のゲイン設定値に更新する。データの記録再生は、ゲイン設定値の更新が完了してから開始する。
本実施形態では、ゲインの切り替えを層間移動の直前ではなく直後に行っている。HPFすなわちイコライザのゲイン設定を移動前に切り換えてしまうと、そのタイミングで、トラックアドレスやセクタアドレスを読めなくなるため、フォーカスサーボなどが外れていると誤って判定してしまう可能性がある。そのような誤判定が生じると、フォーカス引き込みのリトライなどか行われ、予定していた層間移動を行えなくなる場合がある。このため、ゲイン切り換えは、層間移動後に行うことが好ましいが、層間移動前に行なうことも可能ではある。
このように本実施形態によれば、多層ディスクの浅い位置に存在する情報記録層からのRF信号がディスク表面の傷等によって大きく減衰したとしても、サーボ制御のゲイン交点周波数の調節により、十分な信号品質を得ることができる。このため、光ディスクの傷に対する安定性と記録再生の品質を、どの情報記録層においても両立し、信頼性の高い装置を提供することができる。
なお、情報記録層に応じて、HPF182の高域ゲインのみならず、2値化回路184のデータスライス系のフィードバックゲインやPLLループのゲインを変化させても良い。この場合は、フォーカスサーボやトラッキングサーボのように応答帯域の低いサーボ系と逆に、情報記録層の位置が浅くなるほど、ディスク表面の傷によってRF振幅が低下する。このため、これらのゲインについては、情報記録層が浅くなるほど、その価を高く設定し、傷に対する応答特性を高めることが好ましい。また、これらのゲインを高めることにより、傷に起因して例えばPLLのループが外れたとしても、ディスク表面の傷を通過した後、速やかPLLの引き込みを行うことができる。これらのゲインを高めることにより、ジッタ等は劣化するが、その劣化はチルトマージンの拡大によって相殺される。
(実施形態3)
図8を参照して説明したように、ディスク表面の傷に起因するRF信号の振幅が減衰する割合は、情報記録層の位置がディスク表面に近いほど大きい。このことは、PLL(Phase Locked Loop:フェーズロックトループ)にも影響を与える。PLLは、入力信号や基準周波数と、出力信号との周波数を一致させる公知の回路である。入力信号と出力信号との位相差を検出し、電圧制御発信器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)により、基準周波数に正確に同期した信号を発生させることができる。
光ディスク装置のPLLは、RF信号に基づいて動作するため、ディスク表面に傷があると、ディスク表面に近い情報記録層でPLLの動作を正常に行うことができない場合がある。このため、PLLのゲインも、情報記録層が浅くなるほど、大きな値に設定することが好ましい。相対的に浅い位置にある情報記録層にアクセスしているとき、ディスク表面の傷によってRF信号の振幅が大きく減衰しても、2値化できクロックが抽出できている限りは外れにくく、さらにPLLが外れてもゲインを高めていることで引き込み性能が上がるので、傷の通過後速やかに再引き込みが可能となる。
なお、PLLのゲインを高くすると、一般にはノイズなどに応答しやすくなる。このため、定常状態で発生するランダムノイズなどにより、データ抽出クロックのジッタが大きくなる。しかし、情報記録層の位置が浅くなるに従い、チルトマージンが拡大するため、この場合でもリードエラーの発生が抑制される。
本発明の光ディスク装置は、実施形態1〜3を任意に組み合わせた構成を有していても良い。例えばフォーカス制御のゲインおよびPLLのゲインの両方を情報記録層ごとに変化させるようにしてもよい。
上記の各実施形態では、1つの光ディスクが3つの情報記録層L0〜L2を有しているが、光ディスクが2層の情報記録層または4層以上の情報記録層を有していても良い。また、ゲイン特性を全ての情報記録層で変化させる必要は無い。例えば、情報記録層L0、L1では、同一のゲイン特性(同一のゲイン交点周波数または高域ゲイン)に設定し、最表面側に位置する情報記録層L2のゲイン特性のみを変化させるようにしてもよい。
本発明の光ディスク装置は、多層光ディスクを対象にデータの記録再生を安定して行うことができる。特に、光ディスクの表面に近い位置に情報記録層に光学的にアクセスする場合、ディスク表面に形成された傷などによってFE信号やRF信号の悪影響が及びやすいが、本発明の光ディスク装置によれば、その影響を低減し、信号品質を高めることが可能になる。
本発明は、ベア状態のBDに対してデータの記録再生を行うときに特に有利な効果を発揮する。
(a)、(b)、(c)は、傷103が表面に存在する光ディスク102の断面構成と光ビームの集束点との位置関係を示している。 (a)、(b)、(c)は、それぞれ、図1(a)、(b)、(c)の状態でフォーカス制御を行ったときに得られるFE信号とディスク表面の傷との関係を模式的に示している。 サーボ制御系に与えられるFE信号の振幅(面振れなどの外乱の大きさに相当)がサーボ制御によって減少する様子を模試的に示す図である。 光ディスク装置におけるフォーカス制御のゲイン特性を模式的に示すグラフである。 情報記録層L0層、L1層のそれぞれについて、フォーカスずれ(defocus)やディスクチルトと再生信号品質との関係を示すグラフである。 本発明の実施形態1による光ディスク装置の機能ブロックを示す図である。 本発明の実施形態による光ディスク装置の構成を示す図である (a)、(b)、(c)は、それぞれ、図1(a)、(b)、(c)の状態でフォーカス制御を行ったときに得られるRF信号とディスク表面の傷との関係を模式的に示している。 実施形態2の光ディスク装置が備えるHPF182におけるゲインの周波数特性を示す図である。
符号の説明
100 光ディスク装置
102 光ディスク
104 コントローラ
110 光ヘッド
112 移動部
114 フォーカス検出部
115 トラッキング検出部
116 RF加算部
117 フォーカス制御部
118 トラッキング制御部
119 イコライザ部
120 再生部

Claims (10)

  1. ディスク表面からの距離が相対的に小さい第1の情報記録層と前記ディスク表面からの距離が相対的に大きい第2の情報記録層とを含む複数の情報記録層を備える光ディスクからデータを読み出すことのできる光ディスク装置であって、
    光ビームを放射する光源と、
    前記光源から放射された光ビームを集束するレンズと、
    前記光ビームの集束点を前記光ディスクの任意の情報記録層上に位置させるフォーカス制御手段と、
    前記光ビームの集束点を前記情報記録層における所定のトラック上に位置させるトラッキング制御手段と、
    前記フォーカス制御手段およびトラッキング制御手段の少なくとも一方のゲイン特性を変化させることができるゲイン設定手段と、
    を備え、
    前記ゲイン設定手段は、前記第1の情報記録層からデータを読み出すときのゲイン交点周波数を、前記第2の情報記録層からデータを読み出すときのゲイン交点周波数よりも低い値に設定する、光ディスク装置。
  2. 前記光ビームの集束点を現在の情報記録層から目的とする他の情報記録層に移動させる場合、前記集束点の移動が完了する前に、前記ゲイン交点周波数を、前記現在の情報記録層に対する値から、前記目標とする他の情報記録層に対する値に変化させる、請求項1に記載の光ディスク装置。
  3. 前記ディスク表面と前記第2の情報記録層との間の距離は100μm以下である、請求項1に記載の光ディスク装置。
  4. 前記ゲイン設定手段は、前記複数の情報記録層に対する各ゲイン特性を規定するパラメータを記憶する、請求項1に記載の光ディスク装置。
  5. 前記ゲイン設定手段は、搭載された個々の光ディスクに応じて前記パラメータを調整する学習を起動時に実行する、請求項4に記載の光ディスク装置。
  6. ディスク表面からの距離が相対的に小さい第1の情報記録層と前記ディスク表面からの距離が相対的に大きい第2の情報記録層とを含む複数の情報記録層を備える光ディスクからデータを読み出すことのできる光ディスク装置であって、
    光ビームを放射する光源と、
    前記光源から放射された光ビームを集束するレンズと、
    前記光ビームの集束点を前記光ディスクの任意の情報記録層上に位置させるフォーカス制御手段と、
    前記光ビームの集束点を前記情報記録層における所定のトラック上に位置させるトラッキング制御手段と、
    前記情報記録層で反射された光ビームから再生信号を生成する手段と、
    前記再生信号に含まれる特定周波数帯域をカットするフィルタ手段と、
    前記フィルタ手段の周波数1MHz以上のRF帯域における高域ゲインを変化させるゲイン設定手段と、
    を備え、
    前記ゲイン設定手段は、前記第1の情報記録層からデータを読み出すときの高域ゲインを、前記第2の情報記録層からデータを読み出すときの高域ゲインよりも高い値に設定する、光ディスク装置。
  7. 前記光ビームの集束点を現在の情報記録層から目的とする他の情報記録層に移動させる場合、前記集束点の移動の後に、前記高域ゲインを前記現在の情報記録層に対する値から、前記目標とする他の情報記録層に対する値に変化させる、請求項6に記載の光ディスク装置。
  8. 前記ディスク表面と前記第2の情報記録層との間の距離は100μm以下である、請求項6に記載の光ディスク装置。
  9. 前記ゲイン設定手段は、前記複数の情報記録層に対するゲイン特性を規定するパラメータを記憶する、請求項6に記載の光ディスク装置。
  10. 前記ゲイン設定手段は、搭載された個々の光ディスクに応じて、前記パラメータの初期値を新しい設定値に更新する、請求項9に記載の光ディスク装置。

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