JP2006147351A - 導電性複合粉末及びその製造方法 - Google Patents

導電性複合粉末及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 帯電防止、電磁波遮蔽等の目的で、樹脂やゴム等の非導電性基材に使用した際に、十分な導電性が確保でき、添加物の重量増や体積増が抑制でき、耐酸化性があり経時変化が小さく、かつ加工成型品の風合いを損なわない顔料としての機能を有する導電性複合粉末を提供する。
【解決手段】 芯材が板状、かつ非金属の無機化合物粒子であり、その粒子表面が銀で被覆されており、かつ下記(a)から(c)の特徴を有する粒子からなる導電性複合粉末。
(a)平均粒子径:2〜15μm
(b)平均長径をA、平均短径をBとした際の、アスペクト比A/B:1〜5
(c)平均厚みC:0.3〜2.6μm
【選択図】なし

Description

本発明は、導電性複合粉末及びその製造方法に関し、特に特定の形状及び粉体特性を有す、銀被覆粒子からなる導電性複合粉末及びその製造方法に関する。
帯電防止、電磁波遮蔽等の目的で、樹脂やゴム等の非導電性基材に導電性材料を添加して、基材に導電性を付与する技術については、種々の公知技術が開示されている。
前記導電性材料としては、各種金属粉末や金属コート粉末等が挙げられ、特許文献1、あるいは2等が代表的なものである。
特開平1−197575号 特開2002−4057号
かかる導電性材料に求められる重要な特性は、非導電性基材に添加、加工された後の比抵抗が充分低いことにあるが、それ以外にも添加物の重量増や体積増を抑制できること、耐酸化性があり経時変化が小さいこと、加工成型品の風合いを損なわない顔料としての機能を有すること等も求められている。
上記のような要求に対し、金属粉末を用いた場合、金属粉末が高比重であるから、導電性を確保するために、重量的に大量な添加を要する。低重量が望ましい電子材料の重量が増え、コスト的にも性能的にも問題を生じる。
また、異種金属コート金属粉末においては、たとえば銀被覆銅粉末等を用いることにより、コスト的には低減化が図れるものの、やはり相当量の添加を余儀なくされる上、被覆銀の銅への拡散や、銅酸化物の生成により、導電性が劣化する不具合が生じる。
一方、金属コート粉末については、芯材に金属酸化物や樹脂等種々のものを適用できる旨が、前述の特許文献2にも記載されているが、汎用的な粒状品は、導電のためのネットワーク形成が不十分で、成型物の電気抵抗が高くなり、安定性や信頼性に欠ける。また、針状、棒状、あるいはウィスカー状品は、ネットワーク形成には向くものの、共用する樹脂等に混練する際、芯材が折損したりして、期待される導電性が発揮されなかったり、導電性は確保できても、得られる加工成型品の色相が劣る等の不具合を生じる。
つまり、導電性を確保するだけでなく、上述の技術的課題をもバランス良く、満足させるような導電性材料は、未だ見出されていない。
本件発明者等は、鋭意研究の結果、特定の芯材を使用した銀被覆粒子からなる導電性複合粉末であれば、上記課題を解決することができることを知見した。
すなわち、本発明の導電性複合粉末は、芯材が板状、かつ非金属の無機化合物粒子であり、その粒子表面が銀で被覆されており、かつ下記a)〜c)の特徴を有する粒子からなることを特徴とする。
a)平均粒子径: 2〜15μm
b)平均長径をA、平均短径をBとした際の、アスペクト比A/B:1〜5
c)平均厚みC: 0.3〜2.6μm
また、本発明の導電性複合粉末の製造方法は、水分散した板状非金属無機化合物粒子を含むスラリー中で、該無機化合物粒子表面に触媒活性処理を施し、固液分離された触媒活性処理後の粒子を、銀塩水溶液中で再スラリー化し、このスラリーに還元剤を添加して、前記触媒活性処理後の粒子表面に銀被覆を行うことを特徴とする。
本発明の導電性複合粉末によれば、帯電防止、電磁波遮蔽等の目的で、樹脂やゴム等の非導電性基材に添加、加工された際の低電気抵抗が確保されることはもちろん、添加物の重量増や体積増を抑制でき、耐酸化性があり経時変化が小さく、加工成型品の風合いを損なわない顔料としての機能をバランス良く有するため、当該機能を求める帯電防止、電磁波遮蔽等の部材に好適である。
また、本発明の導電性複合粉末の製造方法によれば、上記導電性複合粉末を効率的、かつ経済的に生産することができる。
<導電性複合粉末>
本発明の導電性複合粉末は、芯材が板状、かつ非金属の無機化合物粒子である。ただし、導電性複合粉末は、下記a)〜c)の特徴を有する粒子からなるものであるから、当然、使用される芯材粒子も粒度がかなり細かく、しかも特定の板状粒子でなければならない。
a)平均粒子径:2〜15μm
b)平均長径をA、平均短径をBとした際の、アスペクト比A/B:1〜5
c)平均厚みC:0.3〜2.6μm
芯材に必要とされる特徴は、後の説明で詳述するが、芯材を選択することなしに、本発明の課題である、導電性を維持しつつ、添加物の重量増や体積増を抑制でき、耐酸化性があり経時変化が小さく、かつ加工成型品の風合いを損なわない顔料としての機能をもバランスさせることは困難である。
まず、芯材が非金属の無機化合物粒子である点については、これが金属であると、発明が解決しようとする課題で述べたとおり、重量的に大量な添加が必要となり、不味である。
少量添加での導電性付与だけを考えると、比重の小さい樹脂等の有機系素材を選択することも考えられるが、これらの素材は粒状品が汎用的で、導電のためのネットワーク形成が不十分となり、かえって効果を損ねる。
従って、芯材は非金属の無機化合物粒子である必要があるが、それでも上記課題を解決する上で、導電性複合粉末を構成する粒子が相当に微細で、特定のアスペクト比と平均厚みを有す粒子であることが重要である。
本発明の導電性複合粉末の平均粒子径は2〜15μmであり、相当に微細な粒子からなる粉末である。この平均粒子径が2μm未満の場合、粒子の凝集が著しく、樹脂中等での分散性が不良となり、導電のためのネットワーク形成に支障をきたす。また、15μmを超える場合、粒子の粒度が大きすぎ、粒子に被覆される銀量が相対的に減り、やはり導電のためのネットワーク形成に支障をきたす。また、粒子が板状につき、機械的強度が著しく低下し、ペースト等に加工する際、破損が生じ、結果として導電性が不良となるおそれがある。この平均粒子径は、好ましくは3〜14μmで、より好ましくは5〜12μmである。
また、本発明の導電性複合粉末は、芯材が板状であり、粉末を構成する粒子において、平均長径をA、平均短径をBとした際の、アスペクト比A/Bのアスペクト比が1〜5という特徴を有する。この芯材となる粒子の形状が板状であることは重要である。そうでない場合、塗料化等による薄膜導電層を形成する際に、導電性と顔料特性を発揮させることは困難である。
本発明においては、板状粒子の形態をさらに特定し、棒状や針状粒子等との差を上記アスペクト比A/Bで明確にした。ちなみに、平均長径A及び平均短径Bは板状粒子の平面部(短径と長径を有す面で、短径>厚み径の関係にある)にて測定した、特定個数の粒子の平均値である。
このアスペクト比A/Bが1のとき、平面方向では、ほぼ等方状となる。従って、1未満の数値を取ることはない。このアスペクト比A/Bが5を超える場合、粒子が針状やウィスカー状等を呈するため、共用する樹脂等に混練する際、芯材が破損したりして、期待される導電性が発揮されなかったり、導電性は確保できても、得られる加工成型品の色相が劣る等の不具合を生じる。このアスペクト比は、導電のためのネットワーク形成効果を上げるために、好ましくは1〜4であり、より好ましくは、1〜3であると良い。
また、本発明の導電性複合粉末は、粒子の平均厚み(Cと称する)が 0.3〜2.6μmである。この平均厚みCと平均短径Bとの分別は、前述のとおりである。この平均厚みCが0.3μm未満の場合、粒子の機械的強度に欠けるため、共用する樹脂等に混練する際、芯材が破損する等のおそれがある。2.6μmを超える場合、粒子が板状化、あるいは棒状化し、導電のためのネットワーク形成に影響が出る。
この平均厚みは、導電のためのネットワーク形成効果を上げるために、好ましくは0.5〜2μmであり、より好ましくは、0.7〜1.5μmであると良い。
また、本発明の導電性複合粉末は、平均長径Aと平均厚みCによるアスペクト比A/Cが3〜20であると好ましい。このA/Cが3未満の場合、形状は粒状に近づき、導電のためのネットワーク形成に影響が出る。また、A/Cが20を超える場合、粒子の機械的強度に欠けるため、共用する樹脂等に混練する際、芯材が破損する等のおそれがある。このアスペクト比A/Cは、導電のためのネットワーク形成効果を上げるために、好ましくは4〜15であり、より好ましくは、 5〜10であると良い。
なお、本発明において、板状粒子とフレーク状粒子の分別は、あくまでアスペクト比で特定されるものとし、一般的にフレーク状とみなされる粒子でも、上記アスペクト比を有するものは、本発明の範疇に含まれるものとする(導電性複合粉末を構成する粒子、芯材粉末を構成する粒子いずれにおいても適用)。
また、本発明の導電性複合粉末は、粒子表面が銀で被覆されていることが重要である。銀を用いるのは、導電性のみならず耐酸化性にも優れているからである。
なお、粒子表面が銀で被覆されていることについては、芯材の地肌が露出しない状態(たとえば層状)が理想的であるが、極端な偏りなく、粒子表面に微細銀粒子が分布されているものも含まれるものである。
また、本発明の導電性複合粉末は、芯材が硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素の内から選ばれる、いずれかであると好ましい。これらの粒子は、特に機械加工を加えることなく、微細な板状粉末を製造することが可能であり、本発明の要求する粒度形態を呈するものである。特に、硫酸バリウムについては、ごく波長の小さいX線等をも遮蔽する能力に優れるため、これを用いたアプリケーション部材の機能を高めることができて好ましい。
また、本発明の導電性複合粉末は、粒子全体に対する被覆銀量が30〜60質量%であることが好ましい。この被覆銀量は多いほど、導電性効果が期待されるが、多すぎるとコスト的に不味である。少ないほど、コスト的に有利だが、逆に導電性に劣ったり、信頼性や安定性にも影響が出る。この被覆銀量は好ましくは 35〜55質量%であり、より好ましくは、40〜50質量%である。
また、本発明の導電性複合粉末は、換算銀被覆厚みが0.1〜0.8μmであると好ましい。一定重量の芯材に対し、一定重量の銀を反応させることを考えた場合、導電性複合粉末が高い導電性を得るためには、芯材の総比表面積に対し、導電性を引き出す銀被覆厚みは一定量以上必要である。本発明では、この銀被覆厚みをレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により得られた比表面積と被覆銀量から平均値として換算する。
この換算銀被覆厚みが0.1μm未満の場合、導電のためのネットワーク形成に支障をきたすおそれがある。また、0.8μmを超える場合、銀被膜の機械的強度が低下し、剥離が起きやすく、導電性が悪化してしまう他、コスト的にも不経済となる。この換算銀被覆厚みは、好ましくは0.15〜0.6μmであり、より好ましくは、0.2〜0.4μmである。
また、本発明の導電性複合粉末は、粒子の最表面に、脂肪酸が被覆されていても良い。この脂肪酸被覆を有することで、粉末の流動性が増し、樹脂に練り込む際の分散性が向上する。脂肪酸被覆量は、導電性複合粉末に対して0.1〜1%程度であれば良い。この脂肪酸被覆量が0.1%未満の場合、上記効果が得られず、1%を超える場合、導電性を損なう。被覆する脂肪酸としては、ステアリン酸、ラウリン酸、カプリン酸、パルミチン酸等の飽和脂肪酸、またはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ソルビン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。
<導電性複合粉末の製造方法>
本発明の導電性複合粉末は、特定の条件で、芯材である板状非金属無機化合物粒子表面に触媒活性処理を施した後、銀被覆を行うことにより製造できる。
用いられる芯材としては、前述のとおり、非金属の無機化合物粒子が好ましいが、それでも上記課題を解決する上で、粒子が相当に微細で、特定のアスペクト比を有す板状粒子でなければならない。そのような特徴を有す好適な素材は、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素等が挙げられる。
板状粒子に近い形状として、マイカ等、積層構造の粒子も挙げられるが、粒子表面に銀被覆を施しても、樹脂等との混練時に剥離し、銀被覆の欠落した粒子となるおそれがあり、好ましくない。
また、本発明の導電性複合粉末の形態は、平均粒子径、及びアスペクト比を特定した板状粒子からなることで特定されているが、用いられる芯材も当然ながらその特徴に準じたものである。
芯材粒子に被覆される銀量は、本発明の効果を確保できれば良いため、芯材の平均粒子径は、1〜13μm程度で良く、同様に芯材粒子のアスペクト比A/Bは1〜5程度、芯材粒子のアスペクト比A/Cは3〜20程度で良い。
本発明の導電性複合粉末の製造方法は、まず芯材粉末粒子表面に触媒活性処理を行うための処理液を準備する。この処理液は、水に、必要に応じてpH調整用の酸、又はアルカリを添加したものに、触媒として水溶性パラジウム塩等を添加し、充分に攪拌したものである。この際、使用するパラジウム塩は主に塩化水素にて安定化されたものを用いるのが良いが、それに限ったものではない。この触媒物質の量は、芯材100gに対して、0.01〜2mmol程度とすれば良い。また、触媒活性処理を円滑に行うために、パラジウム塩の他に、スズ塩や還元剤等を添加、併用すると好ましい。
次に、この処理液に、適切に選ばれた芯材の粉末を投入・攪拌し、分散、スラリー化すると同時に触媒活性処理を行う。
この際のスラリー濃度は、100〜500g/L程度が、触媒活性処理が効率的に行え、好ましい。このスラリー濃度が、上記範囲を外れる場合、芯材濃度に対し触媒濃度が過剰だったり、不足したりして、芯材粒子表面の活性処理状態が不均一となり、その結果銀被覆状態にムラが生じやすい。
触媒活性処理の際の処理温度は、用いる触媒の種類により異なるが、15〜45℃程度で行うと、粒子表面上に均一、かつ効率良く処理することができる。この処理温度が、15℃未満の場合、活性処理が進行しにくく、45℃を超える場合、触媒物質のコロイド粒子が大きくなり、芯材粒子表面の活性化が不均一になるおそれがある。
触媒活性処理終了後、反応後スラリーは常法のろ過、及び水洗浄にて触媒活性済みケーキとする。
次に、銀被覆処理を行うための準備を行う。
本発明の導電性複合粉末の製造方法においては、銀被覆処理液に銀塩水溶液を用い、適切な還元剤にて銀イオンを還元、芯材粒子表面に銀被覆を行う。
銀塩水溶液は硝酸銀や酢酸銀等水溶性塩ならば、各種利用できるが、好ましくはアンモニアを併用した銀アンミン錯体水溶液を使用すると、反応に寄与する銀濃度を安定化させることができ、好適である。また、銀アンミン錯体水溶液に、緩衝剤としてアンモニウム塩を添加しておくと、水溶液中の錯体がより安定化し、好ましい。
このアンモニウム塩は硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等が代表として挙げられるが、これに限ったものではない。但し、塩化物系のアンモニウム塩は塩化銀を形成してしまうため、使用できない。
具体的な銀塩水溶液の調製の一例を示すと、硝酸銀水溶液にアンモニアを添加する。この際の銀イオン濃度は0.25〜0.8mol/L程度が、安定、かつ芯材粒子への一様な銀被覆を行え、好適である。
この銀イオン濃度が、0.25mol/L未満の場合、銀被覆反応時の銀イオン濃度が希薄なことに起因して、銀が単独で反応スラリー中に還元析出し、芯材粒子表面への被覆にムラが生じ、導電性が不良となるおそれがある。また、0.8mol/Lを超える場合、銀被覆反応時の銀イオン濃度が濃厚なことに起因して、反応が急速に進行し、還元剤成分が銀被覆中に取り込まれやすくなり、導電性が不良となるおそれがある。
この銀アンミン錯体水溶液に、触媒活性済みケーキを添加し、充分攪拌・分散させ、銀被覆用スラリーを調製する。このスラリーのスラリー濃度は、30〜150g/L程度が、安定、かつ芯材粒子への一様な銀被覆を行え、好適である。
このスラリー濃度が、上記範囲を外れる場合、芯材濃度に対し銀イオン濃度が過剰だったり、不足したりして、その結果、銀粒子が単独で析出したり、銀被覆状態にムラが生じたりしやすい。
なお、銀被覆量は処理される芯材粒子の総表面積に応じて、調整するとより好ましい。具体的には、導電性複合粉末粒子に被覆される銀量で1〜10g/mとなるように、銀塩水溶液中の銀量を調整するのが、導電性向上やコスト上、好ましい。
次に、上記銀被覆用スラリーに、還元剤を投入し、銀被覆処理を行う。
この際に用いる還元剤は、ヒドラジン、ヒドロキノン、ロッシェル塩、ホルマリン、グルコース、亜硫酸カリウム等、各種利用できるが、好ましくはヒドロキノン、ヒドラジン、ロッシェル塩を使用すると、独立した析出銀の核粒子が生成しにくく、効率的に芯材粒子に銀被覆させることができ、好適である。
銀被覆処理における適切な反応終点までの時間は、還元剤により様々であるが、ヒドラジン、亜硫酸カリウムでは60〜120分、ロッシェル塩、ホルマリン、グルコースでは30〜60分、ヒドロキノンでは1〜10分程度が好ましい。この反応時間の調整については、還元剤濃度を調整する、添加時間を調整する、あるいは反応スラリー温度を調整する等の手段を適宜選択して行えば良い。
反応の終点を調整するためには、予備実験にて、経時的に反応スラリーから分析サンプルを採取して、ICP等を用いて、スラリー中の銀イオン濃度を分析し、その濃度がほぼ0になった時点を反応終点として確認する。実際の反応では、上記終点時間に5分間加えた時点で、銀イオン濃度0を確認して反応時間とするが、この反応時間の間、一定の温度、攪拌を継続すれば良い。
この反応時間が、上記還元剤毎の適正範囲未満の場合、反応が早すぎ、独立した析出銀の核粒子が生成しやすく、芯材粒子への銀被覆を阻害するおそれがあり、適正範囲を超える場合、還元剤成分の一部が芯材粒子内部に取り込まれ、残存するおそれがある。
また、反応前のスラリーpHについては、8〜11となるように調整すると良い。このpHが8未満の場合、反応が速く進行し、銀被覆部の表面が粗くなり、色相も不良となりやすい。また、pHが11を超える場合、還元剤成分が銀被覆中に取り込まれ、導電性が不良となるおそれがある。
こうして得られた銀被覆処理を終了した反応後スラリーに、常法のろ過、及び水洗浄を行い、導電性複合粉末ケーキとする。洗浄用の水は温水を用いると洗浄効果が上がり、好ましい。また、銀被覆処理の際に有機系還元剤を用いた場合は、脱脂剤として、炭酸ソーダを含む温水を用いると、粒子表面の残留炭素を低減でき、好ましい。必要に応じて、分散剤を併用したりしても良い。
導電性複合粉末ケーキは、常法の乾燥にて導電性複合粉末とする。
また、導電性複合粉末の粒子最表面に脂肪酸を被覆するには、上記導電性複合粉末ケーキを、脂肪酸を含む溶媒中に投入後、ろ過・乾燥する等の方法を採用すれば良い。脂肪酸量は、処理された後、導電性複合粉末に対して0.1〜1%となるように調整すれば良い。使用できる脂肪酸は前述したので省略する。使用できる溶媒は、アセトン、アルコール類等が挙げられる。被覆処理用溶媒に含有される脂肪酸濃度は、1〜10g/L程度となるように調製すると良い。
本発明の導電性複合粉末の製造方法によれば、微細な板状非金属無機化合物粒子に、導電性材料に要求される各種機能をバランス良く持たせる上で、最適な銀被覆が行え、かつ効率的な製造が可能である。
以下、実施例等により本発明を具体的に説明する。
〔実施例1〕
2.8Lの純水に350mlの塩酸、及びPd濃度3.8g/L、Sn塩含有量35%のOPC−80キャタリスト(奥野製薬工業製)を300mL添加し、液温を40℃に保った後、平均粒子径8.1μm、アスペクト比A/Bが2.7、アスペクト比A/Cが9.1の板状硫酸バリウム・A(堺化学製)をハンマミルにて粉砕して得られた、平均粒子径5.2μm、アスペクト比A/Bが2.4、アスペクト比A/Cが4.8の板状硫酸バリウム粉末700gを添加しスラリー化させ、15分間攪拌して触媒活性処理を行った。処理済みのスラリーをブフナー漏斗にてろ過し、8Lの純水にて洗浄を行い、再度ろ過にて触媒活性処理済みケーキを得た。
次に、7.7Lの純水に硝酸銀を910g溶解し、25%アンモニア水を1.19L添加し、さらに硫酸アンモニウムを500g添加し、pH9.4に調整した銀アンミン錯体水溶液を準備した。この銀アンミン錯体水溶液に、上記触媒活性処理済みケーキを添加し、40℃で5分間攪拌分散させ、反応用スラリーを得た。そして、この反応用スラリーに、ヒドラジン一水和物80mLを6.3Lの純水に溶解させた還元剤溶液を、100分間で定量的に投入し、完全に投入してから7分間攪拌して、芯材への銀被覆反応を終了させた。
次いで、スラリーをブフナー漏斗にてろ過し、純水を用い、70℃にて洗浄を行った。 さらに3.4%炭酸ソーダ水溶液10Lを用いて洗浄後、再び純水で洗浄を行った。ろ過後のケーキを70℃、12時間、大気中で乾燥した。
下記の評価方法にて、各種特性につき、評価した。その結果を表1及び表2に示す。
<評価方法>
(a)平均粒子径及び比表面積:試料を少量ビーカーに取り、3%トリトンX溶液(関東化学製)を2、3滴添加し、粉体になじませてから、0.1%SNディスパーサント41溶液(サンノプコ製)約50mLを添加した後、超音波分散器TIPΦ20(日本精機製作所製、OUTPUT:8、TUNING:5)を用いて2分間分散した。この測定用サンプルを、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置MT3300(日機装製)を用いて、平均粒子径(MV)及び比表面積を測定した。
(b)平均長径A、平均短径B、平均厚みC:透過型電子顕微鏡にて1,200倍の写真を撮影し、100個の粒子の平均長径A及び平均短径Bを測定した。また、エポキシ樹脂にて試料を樹脂埋めし、耐水サンドペーパーP400、P800、P1500、純アルミナ粉末20%スラリーを用いて段階的に樹脂埋めされた粉体断面を研磨した後、SEMにて1,000倍の写真を撮影し、100個の粒子の平均厚みCを測定した。
(c)アスペクト比:(b)で求めたA、B、及びCより、アスペクト比A/B、A/Cを求めた。
(d)粒子全体に対する被覆銀含有率:試料を硝酸にて溶解し、ICP分析にて銀量を求め、試料重量で除し、100倍し、銀含有率を求めた。
(e)粒子表面の銀被覆厚み(換算値):(a)にて測定した芯材の比表面積と、(d)のICP分析にて得られた銀含有率を用いて、
銀被覆厚み(μm)={銀含有率/(10.49×100)}/{(芯材比表面積×(1−銀含有率/100))にて求める。
(f)粉体体積抵抗: 試料3gをロレスタPD−41型(三菱化学製)によりプレス圧力10kNで加圧し、径20mmの円筒型ペレットにした状態で、4探針抵抗測定器ロレスタGP(三菱化学製)を用いて測定した。
(g)ゴムとの混練組成物の比抵抗:
試料3g、ゴム原料KE45(信越化学工業製)1.3g、及びトルエン2mLを混合、混練し、ペースト化した。このゴムペーストをOHP用シート上にアプリケーターを用いて、60μm厚さで成型後、70℃の乾燥機中で30分間硬化させた。この成型体を10mm×50mm角の寸法に切断し、電気抵抗をデジタルボルトメーター(YOKOGAWA
ELECTRIC WORKS製)にて測定した。比抵抗は
比抵抗(Ω・cm)=幅(cm)×膜厚(μm)×抵抗(Ω)/長さ(cm)×0.0001
という式にて算出した。
(h)導電性の耐酸化性:試料を温度150℃、RH30%環境下に24時間保持した後、(f)と同様の方法にて、圧粉抵抗値を測定し、熱処理後数値/熱処理前数値で算出した。
(i)隠ぺい力(顔料としての機能評価)
JIS K 5101−1991顔料試験方法記載の隠ぺい率試験紙法に準拠して、隠ぺい力を測定した。評価法が相対法につき、同時に実施例1〜比較例3の塗膜8点を比較し、隠ぺい力の一番大きいものを1、一番小さいものを8として示した。
〔実施例2〕
実施例1と同様に製造し、洗浄後のケーキを0.9gのステアリン酸を溶解した2Lのアセトン溶液中で再スラリー化し、10分攪拌分散した後、固液分離、さらに70℃の大気雰囲気乾燥機中にて12時間乾燥した。
実施例1と同様に、各種特性につき、評価した。その結果を表1及び表2に示す。
〔実施例3〕
2.8Lの純水に350mLの塩酸、及びPd濃度3.8g/L、Sn塩含有量35%のOPC−80キャタリスト(奥野製薬工業製)を300mL添加し、液温を40℃に保った後、平均粒子径8.1μm、アスペクト比A/Bが2.7、アスペクト比A/Cが9.1の板状硫酸バリウム・A(堺化学製)700gを添加しスラリー化させ、15分間攪拌して触媒活性処理を行った。処理済みのスラリーをブフナー漏斗にてろ過し、8Lの純水にて洗浄を行い、再度ろ過にて触媒活性処理済みケーキを得た。
次に、7.7Lの純水に硝酸銀を910g溶解し、25%アンモニア水を1.19L添加し、さらに硫酸アンモニウムを680g添加し、pH9.1に調整した銀アンミン錯体水溶液を準備した。この銀アンミン錯体水溶液に、上記触媒活性処理済みケーキを添加し、40℃で5分間攪拌分散させ、反応用スラリーを得た。そして、この反応用スラリーに、ヒドロキノン294gを6.3Lの純水に溶解させた還元剤溶液を一気に投入し、反応容器を冷却しながら、8分間攪拌して芯材への銀被覆反応を終了させた。
以下の処理は、実施例1と同様に行い、各種特性につき、評価した。その結果を表1及び表2に示す。
一方、この粉末のX線透過率を、以下の評価方法にて測定した結果、30.5%であった。
<X線透過率評価方法>
試料3gとゴム原料KE45(信越化学工業製)とを体積で0.325cmとなるように混合し、さらにトルエン2mLを加え、混練し、ペースト化した。このペーストを、ポリエチレンシート上にアプリケーターを用いて60μmの厚さで塗布し、70℃、30分間で乾燥、硬化させた。このシートをX線回折装置M21X(ブルカーAXS製)にセットし、線源Cu、波長1.54184Å、計数時間1.0secで入力カウントを10800カウントとし、出力カウントを測定して、出力カウント/入力カウント×100にてX線透過率(%)を求めた。
〔実施例4〕
実施例3と同様に製造し、洗浄後のケーキを0.9gのステアリン酸を溶解した2Lのアセトン溶液中で再スラリー化し、10分攪拌分散した後、固液分離、さらに70℃の大気雰囲気乾燥機中にて12時間乾燥した。
実施例1と同様に、各種特性につき、評価した。その結果を表1及び表2に示す。
〔実施例5〕
2.8Lの純水に350mlの塩酸、及びPd濃度3.8g/L、Sn塩含有量35%のOPC−80キャタリスト(奥野製薬工業製)を300ml添加し、液温を40℃に保った後、平均粒子径3.1μm、アスペクト比A/Bが2.8、アスペクト比A/Cが4.3の板状炭酸カルシウム粉末600gを添加しスラリー化させ、15分間攪拌して触媒活性処理を行った。処理済みのスラリーをブフナー漏斗にてろ過し、8Lの純水にて洗浄を行い、再度ろ過にて触媒活性処理済みケーキを得た。
次に、7.7Lの純水に硝酸銀を910g溶解し、25%アンモニア水を1.19L添加し、さらに硫酸アンモニウムを820g添加し、pH8.9に調整した銀アンミン錯体水溶液を準備した。この銀アンミン錯体水溶液に、上記触媒活性処理済みケーキを添加し、60℃で5分間攪拌分散させ、反応用スラリーを得た。そして、この反応用スラリーに、ロッシェル塩420gを6.3Lの純水に溶解させた還元剤溶液を一気に投入し、57分間攪拌して芯材への銀被覆反応を終了させた。
洗浄後のケーキを0.9gのステアリン酸を溶解した2Lのアセトン溶液中で再スラリー化し、10分攪拌分散した後、固液分離、さらに70℃の大気雰囲気乾燥機中にて12時間乾燥した。
実施例1と同様に、各種特性につき、評価した。その結果を表1及び表2に示す。
〔比較例1〕
平均粒子径が8.2μm、アスペクト比A/Bが1.5、アスペクト比A/Cが6.9の電解銅粉末を粉砕して得た板(フレーク)状銅粉末100gを、1Lの純水にスラリー化し、50℃で保温した後、ヒドラジン一水和物9.2gを添加し、30分間保持した(表面の酸化状態を改良し、銀被覆しやすくするため)。次いで、このスラリーをブフナー漏斗にてろ過し、純水600mLにて洗浄を行った後、メタノール300mlを粉体に注いで、同じく吸引し水分を除去した。
上記銅粉ケーキを1Lの純水で再びスラリー化させ、次いでEDTA8.5gを添加し、攪拌・溶解した銅粉含有スラリーを準備した。また、純水480mLに硝酸銀35gを溶解させ、その硝酸銀水溶液を2時間かけて、上記銅粉スラリーに定量的に添加した。そこで得られた銀コート銅粉含有スラリーを洗浄・ろ過し、それを70℃の大気乾燥機にて5時間乾燥した。得られた導電性粉末を、実施例1と同様に、各種特性につき、評価した。その結果を表1及び表2に示す。また、この粉末のX線透過率を、実施例3と同様に測定した結果、46.3%であった。
〔比較例2〕
280mLの純水に30mLの塩酸、及びPd濃度3.8g/L、Sn塩含有量35%のOPC−80キャタリスト(奥野製薬工業製)を30mL添加し、液温を40℃に保った後、平均粒径13.1μmの真球状シリカ粉末60gをスラリー化させ、15分間攪拌して触媒活性処理を行った。処理済みのスラリーをブフナー漏斗にてろ過し、1Lの純水にて洗浄を行い、再度ろ過にて触媒活性処理済みケーキを得た。
次に、7.2Lの純水に硝酸銀を195.2g溶解し、25%アンモニア水を261mL添加し、アンミン錯体を形成させ、温度を60℃に保持した。ここに上記触媒活性処理済みケーキを添加し、60℃で5分間攪拌分散させ、反応用スラリーを得た。そして、この反応用スラリーに、ロッシェル塩90.1gを1.8Lの純水に溶解させた還元剤溶液を一気に投入し、52分間攪拌して芯材への銀被覆反応を終了させた。
次いで、スラリーをブフナー漏斗にてろ過し、純水を用い、70℃にて洗浄を行った。 さらに3.4%炭酸ソーダ水溶液10Lを用いて洗浄後、再び純水で洗浄を行った。ろ過後のケーキを70℃、12時間、大気中で乾燥した。
実施例1と同様に、各種特性につき、評価した。その結果を表1及び表2に示す。
〔比較例3〕
平均粒子径が5.7μm、アスペクト比A/Bが1.4、アスペクト比A/Cが4.4の板状銀粉末を、実施例1と同様に、各種特性につき、評価した。その結果を表1及び表2に示す。
表1及び表2からもわかるように、実施例の導電性複合粉末は、適切な芯材において銀被覆を有することにより、優れた導電性を示すことはもちろんのこと、その導電性能について耐酸化性があり経時変化が小さく、塗料化してもその隠ぺい力に優れており、加工成型品の風合いを損なわない顔料としての機能を有するものである。
さらに、実施例3のように、硫酸バリウムを芯材として用いた場合、X線遮蔽率にも優れていることが判明した。
これに対し、比較例1や比較例3の粉末は、金属成分のみで構成されており、粉体体積抵抗のみならず、比重が小さいことに起因して、成型物の比抵抗が大きいことがわかった。
また、比較例1の粉末は、銅粒子が芯材であり、耐酸化性にも劣っていた。
また、比較例2の粉末は、芯材が球形を呈したシリカ粒子であるため、導電のためのネットワーク形成が不十分で、成型物の比抵抗が大きかった。さらに、球形であることに起因して、顔料としてみた際の隠ぺい力に劣るものであった。
本発明の導電性複合粉末は、帯電防止、電磁波遮蔽等の目的で、樹脂やゴム等の非導電性基材に使用した際に、十分な導電性が確保でき、添加物の重量増や体積増が抑制でき、耐酸化性があり経時変化が小さく、かつ加工成型品の風合いを損なわない顔料としての機能を有する。
実施例3の導電性複合粉末の、平面部を中心に捉えたSEM観察写真(倍率:5000倍) 実施例3の導電性複合粉末の、厚み部を中心に捉えたSEM観察写真(倍率:2000倍)

Claims (12)

  1. 芯材が板状、かつ非金属の無機化合物粒子であり、その粒子表面が銀で被覆されており、かつ下記(a)から(c)の特徴を有する粒子からなる導電性複合粉末。
    (a)平均粒子径:2〜15μm
    (b)平均長径をA、平均短径をBとした際の、アスペクト比A/B:1〜5
    (c)平均厚みC:0.3〜2.6μm
  2. アスペクト比A/Cが3〜20の特徴を有する粒子からなる請求項1に記載の導電性複合粉末。
  3. 前記芯材である非金属の無機化合物粒子が硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素の内から選ばれる、いずれかである請求項1または請求項2に記載の導電性複合粉末。
  4. 前記銀で被覆されている粒子において、粒子全体に対する被覆銀量が30〜60質量%である請求項1〜3いずれかに記載の導電性複合粉末。
  5. 前記銀で被覆されている粒子において、換算銀被覆厚みが0.1〜0.8μmである請求項1〜4いずれかに記載の導電性複合粉末。
  6. 前記銀で被覆されている粒子において、さらに脂肪酸被覆が施されている請求項1〜5いずれかに記載の導電性複合粉末。
  7. 水分散した非金属の無機化合物粒子を含むスラリー中で、該無機化合物粒子表面に触媒活性処理を施し、固液分離された触媒活性処理後の粒子を、銀塩水溶液中で再スラリー化し、このスラリーに還元剤を添加して、前記触媒活性処理後の粒子表面に銀被覆を行うことを特徴とする導電性複合粉末の製造方法。
  8. 前記銀塩水溶液が銀アンミン錯体である、請求項7記載の導電性複合粉末の製造方法。
  9. 前記銀塩水溶液に、緩衝剤としてアンモニウム塩を添加する請求項8記載の導電性複合粉末の製造方法。
  10. 前記触媒活性処理後の粒子表面に銀被覆を行う際の、反応前のスラリーpHが8〜11である、請求項7〜9いずれかに記載の導電性複合粉末の製造方法。
  11. 前記触媒活性処理後の粒子表面に銀被覆を行う際に用いる還元剤が、ヒドラジン、ヒドロキノン、ロッシェル塩、ホルマリン、グルコース、亜硫酸カリウムの内から選ばれるいずれかである、請求項7〜10いずれかに記載の導電性複合粉末の製造方法。
  12. 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の導電性複合粉末を含有する導電性組成物。








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