JP2006141216A - D−キロ−イノシトールの製造方法 - Google Patents

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健一 吉田
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将憲 山口
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Abstract

【課題】 D−キロ−イノシトールを製造する方法において、安価で効率的に製造できる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 イノシトール代謝系遺伝子群において、2−ケト−ミオ−イノシトールデヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子(iolE遺伝子)の機能と、イノシトール代謝系遺伝子群のリプレッサータンパク質をコードする遺伝子(iolR遺伝子)の機能とを破壊した2重変異を有する微生物を、ミオ−イノシトールを含有する培養液で培養する工程を含む、D−キロ−イノシトールの製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、それ自体が生物活性を有し、II型糖尿病に改善効果を有するD−キロ−イノシトール(D−chiro−Inositol、またはDCI)の製造方法に関する。
D−キロ−イノシトールは、経口的、または非経口的に投与されると、細胞内情報伝達を活性化するイノシトールリン脂質系に作用して、II型糖尿病に改善効果をもたらすこと(特許文献1参照)、および、多嚢胞性卵巣症候群に改善効果をもたらすこと(特許文献2参照、非特許文献1参照)が提唱されている物質である。D−キロ−イノシトールは機能的には、広範な代謝系疾患に関与すると考えられ、今後、その適応が拡大する可能性が期待される物質である。
D−キロ−イノシトールは、9種類あるイノシトール立体異性体の一つであり、動植物中に広く存在する。ヒト血中にも微量存在することが知られている物質である。その製造方法は、これまで、抗生物質であるカスガマイシンの加水分解により製造する方法(特許文献3参照、特許文献4参照、特許文献5参照、特許文献6参照)、マメ科植物に含有されるD−ピニトールを加水分解してD−キロ−イノシトールを製造する方法(特許文献7参照、特許文献8参照、特許文献9参照)、有機合成によりD−キロ−イノシトールを製造する方法(特許文献10参照、特許文献11参照、特許文献12参照、特許文献13参照)、微生物をミオ−イノシトールに作用させることにより、ミオ−イノシトールからD−キロ−イノシトールへ変換させるD−キロ−イノシトールの製造方法(特許文献14参照)などが知られている。
しかしながら、カスガマイシンやD−ピニトールを出発原料とする場合、これらの物質が高価であり、また、有機合成により製造する場合も収率および光学純度が低く、最終産物であるD−キロ−イノシトールは高価なものになる。さらに、ミオ−イノシトールに微生物を作用させてD−キロ−イノシトールへ変換させる反応は、変換の制御が困難であり、微生物自体の代謝により、他の代謝産物も同時に生産されるため、精製が困難である。
また、近年、アグロバクテリウム属に属し、且つ、ミオ−イノシトールをD−キロ−イノシトールに変換できる構成酵素としてのD−ミオ−イノシトール 1−エピメラーゼを生産できる能力を有する微生物を利用して、ミオ−イノシトールからD−キロ−イノシトールを製造する方法が知られている(特許文献15参照、特許文献16参照)。しかしながら、その細菌を培養しながらミオ−イノシトールに作用させて、D−キロ−イノシトールに変換する方法では、酵素活性が低く、短時間で変換させることが困難であり、そのため、現実的な製造は困難である。
特表平4−505218号公報 米国特許第5906979号明細書 米国特許第5091596号明細書 米国特許第5463142号明細書 米国特許第5714643号明細書 米国特許第6342645号明細書 米国特許第5827896号明細書 WO01/08781号パンフレット 特開2001−261600号公報 米国特許第5406005号 WO96/25381号パンフレット 特表平8−502255号公報 特開平11−280068号公報 特開平9−140388号公報 特開2001−8694号 WO02/055715号パンフレット 特開平05−192163号公報 「ザ ニュウイングランド ジャーナル オブ メディスン(The New England Journal of Medicine)」(アメリカ)、J. E. Nestler et al、1999年、340巻、1314頁 「ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)」(アメリカ)、254巻、7684〜7690頁(1979年) 「アーカイブス オブ バイオケミストリー アンド バイオフィジィックス(Archives of Biochemistry and Biophysics)」(アメリカ)、J. Larner et al、60巻、352−363頁(1956年)
D−キロ−イノシトールを、安価で効率的に製造できる方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、枯草菌のミオ−イノシトール2−デヒドロゲナーゼ(iolG遺伝子由来酵素)とシロ−イノソースイソメラーゼ(iolI遺伝子由来酵素)を混在させた酵素反応系を、ミオーイノシトールに作用させると、D−キロ−イノシトールを得ることができることに注目した。そして、これらの酵素を過剰に発現させ、かつ、代謝系分解酵素が作用しない枯草菌を用いることにより、NADの添加を必要とせずに、より効率的な、培養変換を利用したD−キロ−イノシトールの製造が可能と考え、前記課題を解決するために、遺伝子操作を用いてD−キロ−イノシトールを製造する方法を鋭意検討した。
本発明者らは、これまでに枯草菌において、ミオ−イノシトール代謝系遺伝子群にコードされる酵素が、どのようにして、ミオ−イノシトールを代謝するのかを解明することに成功した(Ken−ichi Yoshida et al、Microbiology、150巻、571〜580頁(2004年))。その結果、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼ(iolG遺伝子由来酵素)とシロ−イノソースイソメラーゼ(iolI遺伝子由来酵素)は、D−キロ−イノシトールを代謝分解するために、必要であることが推測された。
さらに、上記ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼ反応に続く代謝系2段階目反応の酵素である2−ケト−ミオ−イノシトールデヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子(iolE遺伝子)を薬剤変異により破壊した株において、イノシトール代謝系遺伝子群のリプレッサータンパク質をコードする遺伝子(iolR遺伝子)を相同組換えによって薬剤耐性マーカー(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)を挿入して破壊した2重変異枯草菌株(YF256株)を作成することに成功した。本菌株作成についての詳細は、Ken−ichi Yoshida et al、Microbiology、150巻、571〜580頁(2004年)に記載されている通りである。
そして、この枯草菌株(名称 Bacillus subtilis YF256株)を、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、FERM AP−20286の受領番号で寄託した(受領日、2004年11月4日)。
また、このようにして2重変異操作された枯草菌株(YF256株)では、イノシトール代謝系遺伝子群の転写抑制が常に解除された状態となり、従ってミオ−イノシトール代謝系酵素群が構成的に発現すること、当該菌株がミオ−イノシトールを代謝分解しない(D−2,3−ジケト−4−デオキシ−エピ−イノシトールに変換せず、結果的に代謝分解しない)ことを確認し、そして、当該菌株をミオ−イノシトールを含む培養液で培養するとD−キロ−イノシトールへ変換されることを発見して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、一実施形態によれば、D−キロ−イノシトールの製造方法であって、イノシトール代謝系遺伝子群において、2−ケト−ミオ−イノシトールデヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子(iolE遺伝子)の機能と、イノシトール代謝系遺伝子群のリプレッサータンパク質をコードする遺伝子(iolR遺伝子)の機能とを破壊した2重変異を有する微生物を、ミオ−イノシトールを含有する培養液で培養する工程を含む。
前記培養する工程で得られた培養ろ液から微生物を除去する工程と、微生物を除去した培養ろ液からD−キロ−イノシトールを単離する工程とをさらに含むことが好ましい。
前記遺伝子の機能を破壊する前の微生物が、D−キロ−イノシトールを代謝分解する(酸化して、D−キロ−イノソースとし、さらにシロ−イノソースを経由して代謝分解される)能力を有することが好ましい。
前記遺伝子の機能の破壊が、物理的及び/又は化学的変異誘発処理または、相同組換えによる一又は複数の塩基の挿入、欠失、及び/又は置換によりなされることが好ましい。
前記微生物が、2重変異枯草菌株(YF256株、受領番号FERM AP−20286)であることが好ましい。
本発明によれば、II型糖尿病に改善効果をもたらすこと、および、多嚢胞性卵巣症候群に改善効果をもたらすことが提唱されている物質であるD−キロ−イノシトールを、効率良く製造することができる。
本発明は、一実施の形態によれば、D−キロ−イノシトールの製造方法であって、イノシトール代謝系遺伝子群において、2−ケト−ミオ−イノシトールデヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子(iolE遺伝子)の機能と、イノシトール代謝系遺伝子群のリプレッサータンパク質をコードする遺伝子(iolR遺伝子)の機能とを破壊した2重変異を有する微生物を、ミオ−イノシトールを含有する培養液で培養する工程を含む。
本実施形態において2重変異操作の対象となる微生物としては、イノシトール代謝酵素が、群を成して存在する(代謝系遺伝子群、または、オペロン)ものを用いることができる。このようなイノシトール代謝系遺伝子群を形成することが知られる微生物としては、例えば、バチルス属(Bacillus)、ラルストニア属(Ralstonia)、サルモネラ属(Salmonella)に属する菌が挙げられる。全塩基配列が知られているためである。しかし、イノシトール代謝系遺伝子群を形成することが知られる微生物は、バチルス属、ラルストニア属、サルモネラ属には限定されない。特には、枯草菌(Bacillus subtilis)が好ましく用いられる。
また、2重変異操作の対象となる微生物としては、塩基配列が知られていない微生物であっても、少なくとも、ミオ−イノシトールと、D−キロ−イノシトールを、どちらも代謝分解する能力を有する微生物を用いることもできる。このような微生物としては、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、エンテロバクター属(Enterobacter)、リゾビウム属(Rhizobium)、シノリゾビウム属(Sinorhizobium)に属する菌が挙げられる。クリプトコッカス属、エンテロバクター属、リゾビウム属、シノリゾビウム属などの微生物も同様なイノシトール代謝系遺伝子群を形成することが予想することができるため、利用することが可能である。
本実施形態において、2重変異操作による破壊対象となる目的の遺伝子は、2−ケト−ミオ−イノシトールデヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子(iolE遺伝子)と、イノシトール代謝系遺伝子群のリプレッサータンパク質をコードする遺伝子(iolR遺伝子)とである。
ここで、本発明のミオ−イノシトール代謝系遺伝子群にコードされる重要な3つの酵素の作用について説明する。ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼは、iolG遺伝子にコードされるミオ−イノシトール代謝の初発酵素であり、ミオ−イノシトール以外にもD−キロ−イノシトールに作用し、NAD依存の酸化反応により、それぞれ、シロ−イノソース(別名2−ケト−ミオ−イノシトール)、D−キロ−1−イノソースへ変換する。また、シロ−イノソースイソメラーゼは、iolI遺伝子にコードされ、シロ−イノソースとD−キロ−1−イノソースを相互変換(異性化)する酵素である。2−ケト−ミオ−イノシトールデヒドラターゼは、iolE遺伝子にコードされ、シロ−イノソースを脱水し、D−2,3−ジケト−4−デオキシ−エピ−イノシトールへ変換する酵素である。
これらの酵素と物質の関係を図で示すと以下の様になる。


Figure 2006141216
イノシトール代謝系遺伝子群にコードされる酵素としては、他に、D−2,3−ジケト−4−デオキシ−エピ−イノシトールをさらに代謝する酵素を含む。しかし、D−2,3−ジケト−4−デオキシ−エピ−イノシトールが生成しない場合(例えば、2−ケト−ミオ−イノシトールデヒドラターゼ活性がない場合)、D−2,3−ジケト−4−デオキシ−エピ−イノシトールの代謝は行なわれず、ミオ−イノシトール、D−キロ−イノシトール、シロ−イノソース、D−キロ−1−イノソースの4物質の平衡状態に達する。つまり、2−ケト−ミオ−イノシトールデヒドラターゼ活性がない場合、過剰にミオ−イノシトールを含む培養液では、D−キロ−イノシトールを生成する反応が進行する。
しかし、上述したイノシトール代謝系遺伝子群は、培養液にミオ−イノシトールが含まれていても、グルコースなどの糖を同時に含む培地を用いる場合、ほとんど、転写レベルで発現しないことが知られている(Yoshida, K. et alNucleic Acids Resarch、29巻、683〜692頁(2001年))。そのため、通常の培養では、上述した酵素の活性は非常に低く、2−ケト−ミオ−イノシトールデヒドラターゼ活性がない場合でも、ミオ−イノシトールからD−キロ−イノシトールへの変換反応はほとんど進行しない。
いっぽう、イノシトール代謝系遺伝子群の遺伝子上の上流にある転写制御タンパク(iolR遺伝子にコードされるリプレッサータンパク質)に、D−2,3−ジケト−4−デオキシ−エピ−イノシトール以降に存在するイノシトール代謝中間体(恐らくは2−デオキシ5−ケト−D−グルクロン酸6−リン酸)がインデューサーとして作用して、イノシトール代謝系遺伝子群の転写抑制が解除され、この代謝系遺伝子群の酵素が翻訳誘導されることが知られている(Ken−ichi Yoshida et al、Microbiology、150巻、571〜580頁(2004年))。しかし、逆に、iolR遺伝子を破壊することによっても、イノシトール代謝系遺伝子群の転写抑制が解除され、この代謝系遺伝子群が構成的に発現することが、実験的に示されている(Ken−ichi Yoshida et al、Journal of Molecular Biology、285巻、917〜929頁(1999年))。
これらのことから、イノシトール代謝系遺伝子群のうち、iolE遺伝子の機能とiolR遺伝子の機能とを破壊し、iolI遺伝子の機能とiolG遺伝子の機能とを保持した菌株を、ミオ−イノシトールを含む培地で培養することにより、2−ケト−ミオ−イノシトールデヒドラターゼを発現させることなく、かつ転写抑制を解除した状態で、シロ−イノソースイソメラーゼとミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼとを生合成させることができると考えられる。すなわち、好ましくない反応であるミオ−イノシトールの代謝分解を生じさせることなく、ミオ−イノシトールからD−キロ−イノシトールへの反応を促進することができるのである。
目的の遺伝子の破壊方法は、通常の微生物の変異方法が使用できる。例えば、物理的及び/又は化学的変異誘発処理では、UV照射、放射線照射などの物理的変異方法の他、Nニトロソグアニジン、メタンスルホン酸エチル、亜硝酸、メタンスルホン酸メチル、アクリジン色素、ベンゾピレン、硫酸ジメチルなどの変異剤の混合による化学的変異方法が例示される。これらの変異処理は、遺伝子上で塩基の挿入、欠失及び/又は置換が期待される方法である。変異処理においては、遺伝子が破壊される限り、一個の塩基を挿入、欠失及び/又は置換してもよく、複数個の塩基を挿入、欠失、及び/又は置換してもよい。
また、変異処理を施した微生物からの目的の菌を得る方法としては、ミオ−イノシトールの代謝分解能力の欠失を指標にした選抜方法、グルコース添加培地中で生育した菌のイノシトール代謝酵素活性の高さを指標にした選抜方法が挙げられる。これらの選抜方法により、シロ−イノソースイソメラーゼ活性と、ミオ−イノシトール 2−デヒドロゲナーゼ活性を保持した菌株を選抜することができる。
さらに、目的の遺伝子の別の破壊方法として、相同組換えによる塩基の挿入、欠失及び/又は置換を行なう方法がある。相同組換え法では、人為的に塩基の挿入、欠失及び/又は置換を施した目的の遺伝子と同じ配列を部分的に有する塩基配列を導入し、相同組換えによって変異を行なう方法である。例えば、薬剤耐性遺伝子であるクロラムフェニコール耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子などを挿入した塩基配列を導入した後、相当する薬剤で選抜し、生存する菌を得る方法である。さらに、望むべき部分に挿入されたことをPCRなどの機器を用いて確認することによって、目的の菌を得ることが可能である。
なお、ここで、遺伝子機能の破壊とは、突然変異の導入、又は相同組み換えにより、当該遺伝子の転写を抑制し、又は当該遺伝子にコードされるタンパク質の機能を破壊することをいう。
上記遺伝子の破壊方法を用いて、iolE遺伝子の機能とiolR遺伝子の機能とを破壊した、2重変異を有する微生物を製造し、選抜する具体的なプロトコルについては、Ken−ichi Yoshida et al、Microbiology、150巻、571〜580頁(2004年)に詳細に記載されている。かかる文献に開示されたプロトコルにより製造されたのは、2重変異操作された枯草菌株(YF256株、受領番号FERM AP−20286)であるが、当業者であれば、かかる開示にしたがって、上述のような他の微生物を2重変異操作することができると考えられる。
二重変異菌株を用いてミオ-イノシトールからD−キロ−イノシトールへ変換する方法は、ミオ−イノシトールを含有する培養液で、2重変異を有する微生物を培養すれば良い。培地の組成は、目的に達する限り何ら特別の制限はなく、D−キロ−イノシトールへの変換原料であるミオ−イノシトールに加えて、炭素源、窒素源、有機栄養源、無機塩類等を含有する培地であればよく、合成培地又は天然培地のいずれも使用できる。
より具体的には、培地全体の重量に対し、ミオ−イノシトールを0.1重量%〜40重量%、より好ましくは1重量%〜30重量%添加し、炭素源としては、グリセロール、シュークロース、マルトースあるいは澱粉を0.1重量%〜20重量%、より好ましくは0.3重量%〜5重量%、窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、カザミノ酸、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムあるいは尿素等を0.01重量%〜5.0重量%、好ましくは0.5重量%〜2.0重量%添加するのが望ましい。
その他、必要に応じ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、マンガン、亜鉛、鉄、銅、モリブデン、リン酸、硫酸などのイオンを生成することができる無機塩類を培地中に添加することができる。無機塩類の添加量は、当業者が任意に決定することができる。
培養液中の水素イオン濃度は特に調整する必要は無いが、好ましくはpH4〜10、より好ましくはpH5〜9に調整し培養することができる。かかるpHで効率よくD−キロ−イノシトールを得ることができるためである。
培養条件は、菌の種類によっても異なるが、培養温度は12〜45℃、好ましくは27〜40℃とすることができる。また、培養は液体培地を振とうしたり、液体培地中に空気あるいは酸素ガスを吹き込むなどして好気的に行えば良い。培養期間は、D−キロ−イノシトールが最大または、必要量の蓄積量を示すまで行えば良く、通常1〜7日、好ましくは1〜2日である。
培養液から目的物を採取する方法は、通常の水溶性中性物質を単離精製する一般的な方法を応用することができる。すなわち、培養液から菌体を除去した後、培養上清液を活性炭やイオン交換樹脂等で処理することにより、イノシトール類以外の不純物をほとんど除くことができる。その後、再結晶等の方法を用いることにより、目的物質を単離することができる。
具体的には、菌体などの不溶物は、遠心分離や膜分離などの一般的に使用される不溶物除去方法によって除去することができる。そして、菌体などの不溶物が除去された溶液は、液中に存在するミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトール以外のイオン性の物質を除去する目的で、イオン交換樹脂を用いて精製することができる。この際に使用されるイオン交換樹脂は、強塩基性イオン交換樹脂、又は弱塩基性イオン交換樹脂の何れか1つ、もしくは、強塩基性イオン交換樹脂と弱塩基性イオン交換樹脂との混合物と、強酸性イオン交換樹脂、又は弱酸性イオン交換樹脂の何れか1つ、もしくは、強酸性イオン交換樹脂と弱酸性イオン交換樹脂との混合物が使用できる。イオン交換樹脂の作用のさせ方は、カラム状に詰めたイオン交換樹脂中に溶液を通す方法も使用できるが、バッチ式で攪拌混合し、ろ過することで脱塩することも可能である。
さらに、溶液に色素が混入した場合、活性炭を用いて脱色させることが可能である。活性炭の作用のさせ方は、カラム状に詰めた活性炭中に溶液を通す方法も使用できるが、バッチ式で攪拌混合し、ろ過することで脱色することも可能である。活性炭を用いて脱色することは、D−キロ−イノシトールの再結晶化前に行うことが好ましい。
このようにして調製された溶液中には、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールのみが含まれる。
再結晶を行う際には、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを含む溶液を濃縮するだけで、選択的にミオ−イノシトールだけを析出させることが可能であるが、より効率的には、ミオ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを含む溶液に、水と混和する有機溶媒を添加した後に該溶液を濃縮することが好ましい。かかる操作により、ミオ−イノシトールのみをさらに析出させて、D−キロ−イノシトール含量を上げることができるためである。加える有機溶媒は水と混和すれば特に限定されないが、好ましくは、イソプロパノール、またはn−プロパノールが選択的にミオ−イノシトールの析出を促すために利用できる。
カラムクロマトグラフィーによる精製を行なう場合は、強塩基性イオン交換樹脂カラムにてD−キロ−イノシトールとミオ−イノシトールとを相互に分けることが可能である。その場合、D−キロ−イノシトールとミオ−イノシトールのみを含有する溶液を強塩基性イオン交換樹脂(OH-タイプ)カラムに加え、水で溶出させ、分画することによって、先に溶出するミオ−イノシトールと、後に溶出するD−キロ−イノシトールを分けて、D−キロ−イノシトールを含む画分を濃縮することによって、高純度のD−キロ−イノシトールを得ることができる。
上記の様に、D−キロ−イノシトールを、ミオ−イノシトールとの混合物から単離する方法としては、カラムクロマトグラフィーを用いた分離方法と、結晶化による分離方法を使用することができ、またこれらの方法を組み合わせることもできる。
2重変異枯草菌株(Bacillus subtilisYF256株、受領番号FERM AP−20286))によるD−キロ−イノシトールの製造
LB寒天培地のスラントで継代維持したYF256株を、クロラムフェニコール10ppm含有する変換用液体培地(1重量%ペプトン、0.5重量%酵母抽出物、0.5重量%NaCl、pH7.0)10mlに1白金耳移植し、好気条件で、36℃で、7時間培養した。培養後、あらかじめミオ−イノシトール1重量%を含有する上記と同組成の変換用液体培地を100mlずつ入れた500ml容坂口フラスコ60本のそれぞれに、上記の培養後の液体培地(10ml)から0.1mlずつとって加え、同様に好気条件で振幅120rpm、36℃で、45時間培養した。
この培養溶液を経時的にサンプリングし、HPLCによる分析を行ったところ、培養27時間目には、ミオ−イノシトールの9.3%がD−キロ−イノシトールになった時点で変換は停止した(最大の変換値は平衡値である14%)。また、HPLC面積から、ミオ−イノシトールと、D−キロ−イノシトールの総計値はほとんど、減少しておらず、代謝分解は認められなかった。
培養終了後、培養液を集め、遠心分離し、上清(約5.8L)を強酸性陽イオン交換樹脂1L(Duolite−C20(H+タイプ))カラム、強塩基性陰イオン交換樹脂1.5L(Duolite−A116(OH-タイプ))カラム、活性炭200mlカラムを連続的に通過させた。その後、蒸留水3.0Lを3つのカラムに通過させ、カラム内に残留するイノシトール類を溶出し、脱塩精製した。次に、得られた透明な溶液(約8.8L)を、エバポレーターを用いて、約200mlまで、減圧濃縮し、これに200mlのイソプロパノールを加えた。この操作で液体中に存在する大半のミオ−イノシトールは析出した。
さらに、ろ過により固液分離を行ない、ろ液を濃縮し、17.2gの固体を得た。NMRによる分析では、この固体は、D−キロ−イノシトール:ミオ−イノシトール=45:55(モル比)の混合結晶であった。
混合結晶からのD−キロ−イノシトールの単離は、次のようにして行った。混合結晶17.2gに40mlの水を加え、溶解した。これを強塩基性陰イオン交換樹脂アンバーライト(登録商標)CG−400(OH-タイプ)3Lを充填したカラム(内径5.5cm、長さ85cm)に供し、さらに蒸留水で溶出し、溶出液を分画して集めた。D−キロ−イノシトールを含む画分を集め、これらを減圧下で濃縮した。濃縮液15mlに室温でエタノール30mlを加え、混合し、徐々に放熱するとともに、結晶を析出させた。結晶を乾燥し、D−キロ−イノシトール7.6gを得た。このようにして得られたD−キロ−イノシトールの物理的性質は、比旋光度[α]D 25が+65℃(C=1.0、H2O)であり、光学純度99%以上、融点238℃であり、D−キロ−イノシトール純品を得ることができた。
本方法による、D−キロ−イノシトールの製造方法は、天然から微量にしか摂取することができないD−キロ−イノシトールを純度良く製造することができ、産業上有用である。

Claims (5)

  1. イノシトール代謝系遺伝子群において、2−ケト−ミオ−イノシトールデヒドラターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子(iolE遺伝子)の機能と、イノシトール代謝系遺伝子群のリプレッサータンパク質をコードする遺伝子(iolR遺伝子)の機能とを破壊した2重変異を有する微生物を、ミオ−イノシトールを含有する培養液で培養する工程を含む、D−キロ−イノシトールの製造方法。
  2. 前記培養する工程で得られた培養ろ液から微生物を除去する工程と、
    微生物を除去した培養ろ液からD−キロ−イノシトールを単離する工程と
    をさらに含む請求項1に記載のD−キロ−イノシトール製造方法。
  3. 前記遺伝子の機能を破壊する前の微生物が、D−キロ−イノシトールを代謝分解する能力を有する、請求項1または2に記載のD−キロ−イノシトール製造方法。
  4. 前記遺伝子の機能の破壊が、物理的及び/又は化学的変異誘発処理または、相同組換えによる一又は複数の塩基の挿入、欠失、及び/又は置換によりなされる、請求項1〜3のいずれかに記載のD−キロ−イノシトール製造方法。
  5. 前記微生物が、2重変異枯草菌株(YF256株、受領番号FERM AP−20286)である、請求項1〜4のいずれかに記載のD−キロ−イノシトール製造方法。
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