JP2006131922A - 鋼製歯車の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 窒化処理後の鋼製歯車において、化合物層を良好に除去することができる鋼製歯車の製造方法を提供する。
【解決手段】 窒化元素を含有する鋼製歯車の製造方法において、該鋼製歯車に窒化処理を施すことにより、歯車の歯面の表面部に窒素の化合物層と、その下層に窒素の拡散層とを形成した後、歯車の歯面にショットピーニング処理を施すことにより、表面部に形成された窒素の化合物層を除去して、歯車の歯面に窒素の拡散層を露出させる。鋼製歯車にガス軟窒化処理を施して化合物層をポーラス状に形成させ、ショットピーニング処理は、硬さがビッカース硬さで化合物層より100以上硬いショット粒子を用いることにより、化合物層を容易に除去することができる。
【選択図】 図4

Description

本発明は、強度及び耐摩耗性に優れる鋼製歯車の製造方法に関する技術分野に属する。
従来、自動車用駆動系等に用いられる各種歯車は、走行に必要なトルクを歯面で伝達するから、駆動時の高圧接触に耐えうる高い強度や耐摩耗性が要求される。そこで、一般に、上記駆動系歯車の強化方法として、焼入れ処理や浸炭処理、窒化処理等の表面処理が行われている。焼入れ処理は、高温の鋼製歯車を急速に冷却することによって、鋼製歯車のオーステナイト相を硬いマルテンサイトに変態させる一方、浸炭処理は、鋼製歯車の表面に炭素Cを拡散浸入させて歯車表面の硬化を図り、窒化処理は、Al、Cr、Ti等の鉄以外の各種元素を添加した鋼製歯車の表面に窒素Nを拡散浸入させ、これらの添加元素が窒化合物を形成して歯車表面の硬化を図るものである。さらに、鋼製歯車の表面にショット粒子を吹きつけて衝突させ、該表面に塑性変形を生じさせて歯元疲労強度向上をするショットピーニング処理がある。
例えば、特許文献1に開示された方法によると、鋼製歯車に浸炭窒化処理を行った後、焼入れ処理を行い、さらにショットピーニング処理を施すことにより残留オーステナイト相をマルテンサイトに変態させるようにしている。
特開平10−176219号公報
ところで、上記特許文献1に開示された方法において行われる焼入れ処理は、鋼製歯車に熱処理歪を生じ、その結果歯車の噛合い誤差によるギヤノイズを発生させるという問題がある。一方、窒化処理を施した歯車は、熱処理歪は少ないが、浸炭ほどの強度を確保することができないので、自動車用駆動系用の歯車としては使用されず、専らエンジン用歯車等の低負荷環境で使用されているのが現状である。
また、図1に示すように、窒化処理により得られた鋼製歯車(鋼素材)の表面硬化層は、表面部に主にFe−N化合物で形成された化合物層と、該化合物層の下層に窒素固溶、Fe−N化合物、及び窒化合物で形成された拡散層とを生成する。このような化合物層の発生は、材料や熱処理条件により拡散層の深さや硬さが向上するように設定しても回避することができない。
一方、上記化合物層は、硬くて脆いという性質を有しており、図6に示すように、自動車用駆動系に用いられる歯車においては、歯車の歯当りによる高面圧やすべりにより歯面の所々の化合物層が拡散層から剥離するという問題が発生する。その結果、歯車の理想的な歯型形状が変化して、つまり歯車の寸法精度が低下し、ギヤノイズの発生や相手側の歯車に対する衝撃が大きくなって摩耗進行を招く。
一方、窒化処理後の鋼製歯車に対して、化合物層を除去するための加工を行うことが考えられるが、化合物層は拡散層よりも硬い場合があり、化合物層を拡散層から良好に除去することは困難である。
そこで、本発明は、窒化処理後の鋼製歯車において、化合物層を良好に除去することができる鋼製歯車の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
まず、本願の請求項1に記載の発明は、窒化元素を含有する鋼製歯車の製造方法において、該鋼製歯車に窒化処理を施すことにより、歯車の歯面の表面部に窒素の化合物層と、その下層に窒素の拡散層とを形成した後、歯車の歯面にショットピーニング処理を施すことにより、表面部に形成された窒素の化合物層を除去して、歯車の歯面に窒素の拡散層を露出させることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の鋼製歯車の製造方法において、窒化処理は、ガス軟窒化処理であり、このガス軟窒化処理により化合物層をポーラス状に形成することを特徴とする。
さらに、請求項3に記載の発明は、上記請求項2に記載の鋼製歯車の製造方法において、化合物層をポーラス状に形成するガス軟窒化処理は、鋼製歯車にRXガス、NHガス、及びエアを含む混合気を送りながら、所定の条件で加熱することを特徴とする。
そして、請求項4に記載の発明は、上記請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼製歯車の製造方法において、ショットピーニング処理は、硬さがビッカース硬さで化合物層より100以上硬いショット粒子を用いることを特徴とする。
まず、請求項1に記載の発明によれば、窒化処理を施した鋼製歯車に対してショットピーニング処理を施すことにより、窒素の化合物層を良好に除去することができ、化合物層を除去した結果、鋼製歯車の歯面に窒素の拡散層が露出することになって、強度の高い鋼製歯車となる。このように、予め化合物層を除去しておくことによって、運転中に化合物層の剥離等が生じて歯形形状が変化することなく、ギヤノイズの発生や歯面の摩耗進行を防止することができる。さらに、化合物層除去後に露出した拡散層は、ショットピーニング処理の作用で歯元疲労強度を向上させることができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、鋼製歯車にガス軟窒化処理を施して、化合物層をポーラス状に形成させる。ポーラス状に形成した化合物層は、比較的強度が低いので、このポーラス状の化合物に対してショットピーニング処理を施すことによって、容易に化合物層を除去することができる。
さらに、請求項3に記載の発明によれば、ガス軟窒化処理を、鋼製歯車にRXガス、NHガス、及びエアを含む混合気を送りながら、所定の条件で加熱することによって、上記混合気に含まれるエアが化合物層をポーラス状に形成することに寄与し、上記請求項2に記載の発明の作用効果が得られる。このように混合気にエアを含ませることによっては、拡散層の強度特性は変わらず、化合物層のみポーラス状にして軟化させる。
また、上記所定の条件として、例えば550〜620℃の処理温度で1〜5時間加熱するように設定したときに所望の窒化処理が行われる。つまり、処理温度が550℃以下のときは、鋼製歯車の窒化速度が遅く、処理温度が620℃以上のときは、オーステナイト化して強度の低い層が生成する問題がある。一方、処理時間が1時間以下のときは、窒素浸入が浅く十分な表面硬化を図れず、処理時間が5時間以上のときは、経済面で効率が悪いという問題がある。
そして、請求項4に記載の発明によれば、硬さがビッカース硬さで化合物層より100以上硬いショット粒子を用いてショットピーニング処理を施すことによって、化合物層を容易に除去することができる。
このように、ショット粒子の硬さが化合物層の硬さよりおよそ100Hv(ビッカース硬さ、以下同じ)以上硬い場合に特に良好に化合物層を除去することができるが、一般的にショットピーニング処理で使用されるショット粒子は、硬さがおよそ850Hv以下のものであり、化合物層の硬さが例えば750Hv以上の場合は、化合物層より100Hv以上硬いショット粒子として特殊なものを準備しなければならないことになる。これに対して、上記請求項2、3に記載の発明のように、化合物層をポーラス状に形成して、該化合物層の強度を低減させることによって、通常のショット粒子を使用して、化合物層を良好に除去することができる。
ところで、表1に示すように、鋼製歯車を製造するための鋼素材の組成は、Feに対して、C:0.23〜0.28重量%、Si:0.l5〜0.35重量%、Mn:0.70〜1.00重量%、P:0.030重量%以下、S:0.030重量%以下、Cr:0.90〜1.20重量%、Mo:0.15〜0.30重量%、V:0.08〜0.14重量%、Al:0.04〜0.08重量%、Pb:0.04〜0.12重量%としている。
Figure 2006131922
ここで、鋼素材を構成する各成分の意義を以下に説明する。
まず、C(0.23〜0.28重量%)は、基地の硬さに影響する適当なベイナイト量を得るのに必要な成分であり、芯部硬さを確保するために0.23重量%以上が望ましい。しかし、0.28重量%を越えると、芯部の延性、靱性が劣化すると共に、軟窒化後の表面硬さ、硬化深さが減少する。
Si(0.15〜0.35重量%)は、Feと固溶して鋼の強度を増大させるのに必要な成分である。Siは、通常、鋼の脱酸剤として添加されているが、浸炭を阻害するため浸炭と窒化が同時に進行する軟窒化においては、Siが少ないほど硬化特性は優れる。
Mn(0.70〜1.00重量%)は、Crと共に焼入れ性の向上に寄与するのに必要な成分である。Mnは、製鋼時の脱酸剤として不可欠であると共に、芯部の強度確保のために0.70重量%以上が好ましい。しかし、1.00重量%以上のときは、切削性が劣化する。
P(0.030重量%以下)、S(0.030重量%以下)及びPb(0.04〜0.12重量%)は、軟窒化処理前に切削を施す場合、切削性向上に有効である。軟窒化処理前に深穴穿設、重切削、高速切削などが施される場合には、切削性が要求される度合いに応じてこれらを含有させてもよい。なお、これらの成分は、硬化特性には何ら影響を与えない。また、P又はSが0.030重量%以上、もしくはPbが0.12重量%以上の場合は、強度靱性の低下が著しくなる。
Cr(0.90〜1.20重量%)は、焼入れを高め、冷却状態でベイナイトを析出させるのに必要な成分である。Crは、軟窒化による浸入窒素と結合して表面硬さを高めると共に、硬化深さを大きくする(0.2mm以上)ために有効である。その効果を十分に発揮させるためには、0.90重量%以上添加することが好ましい。しかし、1.20重量%を越えると、表面硬さのみが高まり硬化深さに対してはむしろ逆効果となる。
Mo(0.15〜0.30重量%)は、鋼の強度と靱性を増すのに有効な成分である。この効果を発揮させるには0.15重量%以上必要である一方、0.30重量%以上を越えて添加してもその効果は飽和して経済性を損なう。
V(0.08〜0.14重量%)は、軟窒化による浸入窒素及び浸入炭素と結合して微細なV炭窒化物を析出させ、表面硬さ及び硬化深さを向上させるのに必要な成分である。Vは、Crと比べたとき、表面硬さの上昇に対する寄与は比較的小さいが、硬化深さの増加に対する寄与が大きい。また、Vは、析出強化によって芯部硬さを上昇させるため、硬化深さが深く、かつ表面から芯部へ硬さ勾配が緩やかな硬化曲線を得るのにきわめて有効である。この硬化を十分に発揮させるためには、少なくとも0.08重量%は必要である。しかし、0.14重量%を越えるとその効果が飽和するかむしろ低下し始める。
Al(0.04〜0.08重量%)は、Crと同様に、軟窒化による浸入窒素と結合して表面硬さを高めるが、硬化深さ向上にはあまり有効でない。特にVとの複合添加では0.08重量%以上添加すると硬化深さはむしろ低下する。しかし、表面硬さに対しては、微添加量でも有効であり、この効果は0.04重量%の添加で認められる。
そして、以下に説明する各実験においては、表2に示すように、鋼素材の化学成分を、Feに対して、C:0.25重量%、Si:0.3重量%、Mn:0.9重量%、P:0.014重量%、S:0.029重量%、Cr:0.96重量%、Mo:0.18重量%、V:0.09重量%、Al:0.05重量%、Pb:0.1重量%とした。
Figure 2006131922
まず、この鋼素材について熱処理を行った。熱処理は、加熱条件を900℃前後に設定し、鋼素材がオーステナイト化することを目的とした。そして、この温度条件で2時間の熱処理を行った後、冷却速度0.5〜1.0℃/sで除冷した。ここで、冷却速度が0.5℃/s未満では、フェライト+パーライト組織となって、所定の芯部硬化が得られない。また、冷却速度が1.0℃/sを越えると、組織がベイナイトとマルテンサイトの混在組織となり機械加工性が著しく劣化する。0.5〜1.0℃/sの冷却速度とすることで、ベイナイトを主体とした組織となり、所定の芯部硬さが得られ、軟窒化特性も所定のものが得られた。
次に、この熱処理後の鋼素材に対して、粒度調整(結晶粒の均一化)や残留応力を除去するために焼鈍処理を行った。焼鈍処理では、室温まで冷却した鋼素材を520℃の処理温度で1.5時間再加熱した。
そして、焼鈍処理後の鋼素材にガス軟窒化処理を施した。ガス軟窒化処理は、気密の加熱炉中に鋼素材を配置し、NHガスとRXガス(一酸化炭素CO:23体積%、水素H:33体積%、窒素N:44体積%の組成のガス)とで生成された混合気を加熱炉中に送りながら550〜620℃の処理温度で1〜5時間加熱した。
ガス軟窒化処理の結果、図1に示すような表面硬化層が得られた。すなわち、この表面硬化層は、表面部にFe−N化合物で形成された化合物層と、該化合物層の下層にあって上記混合気から浸入した窒素が拡散して生成した窒素固溶、Fe−N化合物、及び窒化合物を含む拡散層とを有している。表面部の化合物層は硬くて脆いという性質を有すると共に、該化合物層の下層の拡散層はAl、Cr等と結合して窒化合物が生成し格子歪を生じて硬化している。
[エア添加量に対する化合物層硬さ測定試験]
そして、ガス軟窒化処理の際に、混合気にエアを所定割合含ませることによって、化合物層をポーラス状に形成することができるが、混合気に含むエア添加量を変化させて、エア添加量に応じた化合物層硬さを測定する実験を行った。
この実験では、混合気の組成を、NHガス:RXガス:エア=70−v1:30:v1(体積%)とし、鋼素材を570℃の処理温度で3時間加熱した。そして、混合気中のエア添加量v1を0〜6体積%に変化させた結果、図2のグラフに示すような特性曲線が得られた。この特性曲線によると、エア添加量v1が0のときに化合物層の硬さが約800Hv(ビッカース硬さ、以下同じ)で最も硬く、エアの割合v1を増加させるに従って化合物層の硬さが減少することがわかった。
[ガス軟窒化処理後断面硬さ分布測定試験]
次に、3体積%のエアを含む場合(実施例)と混合気中にエアを含まない場合(比較例)とにおいて、表面硬化層の深さ方向の硬さ分布を測定する実験を行った。なお、表3に実施例と比較例とにおいてガス軟窒化処理で使用する混合気の組成を示す。
Figure 2006131922
まず、実施例においては、ガス軟窒化処理条件を、RXガス:67体積%、NHガス:30体積%、エア:3体積%の組成の混合気を用い、570℃の処理温度で3時間加熱した。図3のグラフに示すように、ガス軟窒化処理の結果、化合物層の硬さが650Hvで、表面からおよそ0.050mm〜0.150mmの深さの範囲において拡散層形成による高い強度(約600〜750Hv)が測定され、0.20mmよりも深い位置においては、鋼素材自身の比較的低い強度(約300〜400Hv)が測定された。
一方、比較例においては、ガス軟窒化処理条件を、RXガス:50体積%、NHガス:50体積%、エア:0体積%の組成の混合気を用い、上記実施例と同様に、570℃の処理温度で3時間加熱した。ガス軟窒化処理の結果、化合物層の硬さが800Hvで、図3のグラフに示すように、表面から0.050mm〜0.150mmの深さの範囲において拡散層形成による高い強度(約600〜750Hv)が測定され、表面から0.20mmよりも深い位置においては、鋼素材自身の比較的低い強度(約300〜400Hv)が測定された。
ここで、上記実施例と比較例との実験結果を比較すると、化合物層においては強度の差が顕著に表れているのに対して、拡散層の強度はほぼ同じ特性となることが確認できた。つまり、混合気にエアを含ませることは、化合物層をポーラス状に形成して該化合物層の強度を低減させる一方、窒化処理で得られる拡散層の強度には影響しないということがわかる。
そして、上記実施例で得られた鋼素材を用い、650Hvの化合物層が除去された鋼製歯車と、上記比較例で得られた鋼素材を用い、800Hvの化合物層が残ったままの鋼製歯車とを自動車の部品として使用して、走行距離1045km間における発生したギヤノイズについて比較した。
実施例の鋼製歯車を使用した場合においては、1045km走行した際のギヤノイズは走行距離0〜1045kmに亘ってほとんど変わらなかった。一方、比較例の鋼製歯車を使用した場合においては、走行距離が長くなるに従ってギヤノイズが増大して、走行距離1045kmの時点では、実施例の鋼製歯車を使用した場合に比べてギヤノイズが3db増大したことが測定された。さらに、比較例において1045km走行後の鋼製歯車の歯面を調べると、表面に5〜10μmの化合物剥離が測定された。
[ショットピーニング処理による化合物層除去試験]
次に、上記ガス軟窒化処理後断面硬さ分布測定試験における実施例で得られた鋼素材に対してショットピーニング処理を施した。ショットピーニング処理は、ノズルからエアと共にショット粒子を吹き出して、該ショット粒子を鋼素材表面に衝突させる処理である。ここで、ショットピーニング条件、すなわち、ショット粒子の径(ショット径)、ショット粒子の硬さ(ショット硬さ)、エアノズルによる投射エア圧、ショット粒子の投射量を表4に示すように設定した実施例及び比較例において、化合物層の除去状況を観測した。
Figure 2006131922
すなわち、この実験では、ショット径:0.3φmm、ショット硬さ:850Hv、投射エア圧:0.4MPa、投射量:2000kg/mという条件とされた実施例と、ショット径:0.8φmm、ショット硬さ:700Hv、投射エア圧:0.4MPa、投射量:3500kg/mという条件とされた比較例とでショットピーニング処理を行い、化合物層の除去状況を観測した。
まず、図4に示すように、実施例においては、ショットピーニング処理により化合物層が除去されたのが観測されたのに対し、図5に示すように、比較例においては、ショットピーニング処理を施しても化合物層はあまり変化しなかったことが観測された。ここで、化合物層の硬さと上記ショット硬さとの差を算出すると、実施例においてはショット粒子が化合物層より200Hv高い値で、比較例においては化合物層より100Hv低い値である。さらに、比較例においては、ショット径及び投射量が実施例よりも大きく設定されており、衝突時に化合物層に与えるエネルギーが大きく、化合物層の除去能力が高いと考えられるにもかかわらず、結果においてショット硬さが硬く設定されただけの実施例の方が良好に化合物層を除去したという事実から、ショット硬さが化合物層を除去するための最も重要な要因であると考えられる。
以上のように、ガス軟窒化処理で使用する混合気にエアを含ませて、化合物層をポーラス状に形成する一方、化合物層に対してショットピーニング処理を施すことにより、化合物層を良好に除去することができ、化合物層を除去した結果、鋼製歯車の歯面に窒素の拡散層が露出することになって、強度の高い歯車を製造することができる。このように、予め化合物層を除去しておくことによって、運転中に化合物層の剥離等が生じて歯形形状が変化することなく、ギヤノイズの発生や摩耗進行を防止することができる。さらに、化合物層除去後に露出した拡散層は、ショットピーニング処理により歯元疲労強度が向上することになる。
なお、上記各実験においては、窒化処理としてガス軟窒化処理を行った例について示しているが、これに限らずガス窒化処理やタフトライド法による塩浴窒化処理でも同様の作用効果が得られた。
本発明は、窒化処理後の鋼製歯車において、化合物層を良好に除去することができる鋼製歯車の製造方法を提供する。本発明は、強度及び耐摩耗性に優れる鋼製歯車の製造方法に関する技術分野に広く好適である。
ガス軟窒化処理により得られた表面硬化層の説明図である。 ガス軟窒化処理で使用する混合気に含むエアの割合を変化させたときの化合物層の硬さ特性を表すグラフである。 ガス軟窒化処理後の表面からの距離に対する硬さ特性を表すグラフである。 実施例によるショットピーニング処理の説明図である。 比較例によるショットピーニング処理の説明図である。 歯車表面から化合物層が剥離した様子の説明図である。

Claims (4)

  1. 窒化元素を含有する鋼製歯車の製造方法において、該鋼製歯車に窒化処理を施すことにより、歯車の歯面の表面部に窒素の化合物層と、その下層に窒素の拡散層とを形成した後、歯車の歯面にショットピーニング処理を施すことにより、表面部に形成された窒素の化合物層を除去して、歯車の歯面に窒素の拡散層を露出させることを特徴とする鋼製歯車の製造方法。
  2. 窒化処理は、ガス軟窒化処理であり、このガス軟窒化処理により化合物層をポーラス状に形成することを特徴とする請求項1に記載の鋼製歯車の製造方法。
  3. 化合物層をポーラス状に形成するガス軟窒化処理は、鋼製歯車にRXガス、NHガス、及びエアを含む混合気を送りながら、所定の条件で加熱することを特徴とする請求項2に記載の鋼製歯車の製造方法。
  4. ショットピーニング処理は、硬さがビッカース硬さで化合物層より100以上硬いショット粒子を用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼製歯車の製造方法。
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