JPH09176792A - 熱処理鋼部品及びその製造方法 - Google Patents

熱処理鋼部品及びその製造方法

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JPH09176792A
JPH09176792A JP34669396A JP34669396A JPH09176792A JP H09176792 A JPH09176792 A JP H09176792A JP 34669396 A JP34669396 A JP 34669396A JP 34669396 A JP34669396 A JP 34669396A JP H09176792 A JPH09176792 A JP H09176792A
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  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐摩耗性を維持しつつ疲労強度を飛躍的に向
上させることができる熱処理鋼部品を、簡単に製造す
る。 【解決手段】 C:0.10〜0.40%、Si:0.
06〜0.15%未満、Mn:0.30〜1.00%、
Cr:0.90〜1.20%、Mo:0.30%を越え
て0.50%以下、残部Feからなる合金鋼を浸炭焼入
れもしくは浸炭窒化焼入れして、簡単に、表面異常層の
深さが約15μm以下とされた鋼部品を形成する。次
に、その鋼部品に対してショットピ−ニングを行い、表
面粗さに基づく切欠き効果によって疲労クラックが発生
したり、或いは表面粗さにより耐摩耗性が低下したりす
ることを防ぎつつ、鋼表面にいままで以上に圧縮残留応
力を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱処理鋼部品及び
その製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】動力伝達用構成部品の歯車類等において
は、高い疲労強度が要求される場合には、浸炭焼入れ処
理後ショットピ−ニングが施される。このショットピ−
ニングにより鋼表面に圧縮残留応力を形成して疲労クラ
ックの発生或いは伝播を抑制しようとしているのであ
る。
【0003】上記ショットピ−ニングの好ましい例とし
ては、特開昭60−218422号公報に示すように、
低炭素合金鋼SCM415、すなわち、C:0.13〜
0.18%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.
60〜0.85%、P≦0.03、S≦0.03、C
r:0.90〜1.20%、Mo:0.15〜0.30
%、残部Feからなる合金鋼を浸炭焼入れし、その合金
鋼に対してショット粒子投射速度35〜50m/se
c、ショット硬さHRC45〜50の条件でショットピ
−ニングを施す製造方法が知られている。これによれ
ば、表面粗さを許容される1μm程度以下に抑えつつ圧
縮残留応力を残留させることができ、一定の疲労強度を
得ることができる。
【0004】ところで、疲労強度は高ければ高いほど、
強度を要求される部品にとっては好ましく、この観点か
ら、上記製造方法による疲労強度以上の疲労強度が得ら
れるとすれば望ましいことである。そのような場合に
は、鋼表面に形成される圧縮残留応力をより大きくする
必要があり、その圧縮残留応力を大きくするにはショッ
ト硬さ、ショット粒子投射速度等をできるだけ大きくす
ることが考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、疲労強度を向
上させようとして、上記合金鋼に対して上記製造方法の
場合よりも大きいショット硬さ、ショット粒子投射速度
等をもってショットピ−ニングを行なっても、鋼表面の
表面粗さが許容範囲を越えて荒れその粗さに基づく切欠
き効果により疲労クラックが発生したり、或いは鋼表面
に必要なだけの圧縮残留応力すら形成されなかったりし
て、疲労強度は却って低下することとなっており、上記
製造方法の場合よりも疲労強度を高めることはなかなか
困難な状況にある。
【0006】このような状況下において、本発明者は、
上記問題点について鋭意研究した結果、粒界酸化に伴う
不完全焼入れ層(表面異常層)が係っていることを発見
し、次のような知見を見い出した。
【0007】高硬質ショットを用いて高速ショット粒
子投射速度(従来のショットピ−ニング条件に比べて)
でショットピ−ニングを行なうと、ショットピ−ニング
前の平均表面異常層の深さとショットピ−ニング後の平
均表面粗さとの関係が図1に示す特性線として得られ
(特性線f1 のショットピ−ニング条件:ショット硬さ
HRC54,ショット粒子投射速度90m/sec,シ
ョット径0.6mm,ショット時間120sec.、特
性線f2 のショットピ−ニング条件:ショット硬さHR
C50,ショット粒子投射速度60m/sec,ショッ
ト径0.6mm,ショット時間120sec.、特性線
3 のショットピ−ニング条件:ショット硬さHRC5
8,ショット粒子投射速度120m/sec,ショット
径0.6mm,ショット時間120sec.)、この場
合、切欠き効果に基づいて疲労クラックが生じないショ
ットピ−ニング後の表面粗さ及び耐摩耗性の観点から必
要なショットピ−ニング後の表面粗さが約1μm以下で
あることから、その表面粗さを約1μm以下にするに
は、ショットピ−ニング前の表面異常層の深さを約15
μm以下にする必要があること。 前記図1と同じ条件でショットピ−ニングを行なった
場合、ショットピ−ニング前の平均表面異常層の深さと
ショットピ−ニング後の表面圧縮残留応力との関係が図
2に示す特性線として得られ、この場合、ショットピ−
ニング前の平均表面異常層の深さが約15μm以下であ
れば、ショットピ−ニング後に鋼表面に形成される圧縮
残留応力を特に高くすることができること。
【0008】そして、本発明者は上記知見に基づき本発
明を完成した。すなわち、本発明の第1の目的は、耐摩
耗性を維持しつつ疲労強度を飛躍的に向上させることが
できる熱処理鋼部品を提供することにある。また、第2
の目的は、上記熱処理鋼部品を簡単に製造できる熱処理
鋼部品の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記第1の目的を達成す
るために第1の発明にあっては、C:0.10〜0.4
0%、Si:0.06〜0.15%未満、Mn:0.3
0〜1.00%、Cr:0.90〜1.20%、Mo:
0.30%を越えて0.50%以下、残部Feからなる
合金鋼を浸炭焼入れもしくは浸炭窒化焼入れ処理した鋼
部品であって、表面不完全焼入れ層の深さが約15μm
以下とされたものに対して、ショットピ−ニングが施さ
れている、ことを特徴とする熱処理鋼部品とした構成と
してある。
【0010】上述の構成により、上記各成分を有して表
面不完全焼入れ層(以下、表面異常層と称す)の深さが
約15μm以下とされた鋼部品に対して、高硬質ショッ
ト、高速ショット粒子投射速度等でショットピ−ニング
を行なうとしても、表面粗さが表面異常層によって許容
限界である約1μmを越すこともなくなり、その表面粗
さに基づく切欠き効果によって疲労クラックが発生した
り、或いは表面粗さにより耐摩耗性が低下したりするこ
とが防がれることになる。その一方、ショット粒子の運
動エネルギは表面異常層の表面粗さの荒れとして吸収さ
れることが抑えられることになり、高硬質ショット、高
速ショット粒子投射速度等でショットピ−ニングを行な
うことによって、鋼表面にいままで以上に圧縮残留応力
を形成することができることになる。
【0011】また、第1の発明(請求項1)の実施態様
項としては、請求項2の記載の通りとなる。
【0012】また、上記第2の目的を達成するために第
2の発明にあっては、C:0.10〜0.40%、S
i:0.06〜0.15%未満、Mn:0.30〜1.
00%、Cr:0.90〜1.20%、Mo:0.30
%を越えて0.50%以下、残部Feからなる合金鋼を
浸炭焼入れもしくは浸炭窒化焼入れし、次いで、ショッ
トピ−ニングを施す、ことを特徴とする熱処理鋼部品の
製造方法とした構成としてある。
【0013】上述の構成において、焼入れ性に有効で且
つ粒界酸化を生じさせないMoの量を従来よりも増大さ
せて上記範囲に設定する一方、粒界酸化を著しく助長し
且つ焼入れ性に関与しないSiを従来よりも減少させて
上記範囲に設定したことから、両者の作用により、浸炭
焼入れもしくは浸炭窒化焼入れ後の合金鋼の表面異常層
の深さは約15μm以下となり、前述の如く、その合金
鋼に対して高硬質ショット、高速ショット粒子投射速度
等でショットピ−ニングを行なっても、表面粗さに基づ
く切欠き効果によって疲労クラックが発生したり、或い
は表面粗さにより耐摩耗性が低下したりすることが防が
れ、その一方、そのようなショットピ−ニングにより鋼
表面上に圧縮残留応力を形成することができることにな
る。
【0014】しかも、合金鋼の成分を上記のように一旦
決めれば、通常の浸炭焼入れもしくは浸炭窒化焼入れ処
理によって合金鋼の表面異常層の深さを約15μm以下
にすることができることになる。
【0015】上記合金鋼の各成分の臨界的意義は次の通
りとなる。
【0016】C;Cは、鋼の強度付与に必要な基本的元
素であり、浸炭焼入れによりコア部(内部)の強度を確
保するためには0.1%以上必要である。しかし、C含
有量が0.40%を越えると、靱性が低下して脆くな
り、また、被削性も劣化することになる。このため、C
の含有量は0.10〜0.40%の範囲に設定される。
【0017】Si;Siは、表面異常層の生成の原因と
なる粒界酸化を助長する傾向が著しく強い元素であり、
その含有量が0.15%を越えると、その悪影響は無視
できない。しかも、Siは焼入れ性に関与しない元素で
ある。このため、Siの含有量はできるだけ下げるのが
好ましい。しかし、Siは、脱酸剤として用いられた
り、融点を下げて融解エネルギを少なくするため等に用
いられており、このため、製鋼上、Siの含有量は0.
06%以上必要とされる。したがって、Siの含有量は
0.06〜0.15%未満の範囲で設定される。
【0018】Mn;Mnは、表面異常層の生成の原因と
なる粒界酸化を助長する元素であり、Mnの含有量は少
ないほど望ましい。しかし、Siを0.15%未満、M
oを0.30%以上添加することを条件とすれば、Mn
1.00%以下でも悪影響はない。また、Mn含有量が
0.30%未満ではコア部の焼入れ性が不十分となる。
このため、Mnの含有量は0.30〜1.00%の範囲
で設定される。
【0019】Cr;Crも、表面異常層生成の原因とな
る粒界酸化を助長する元素であり、その含有量は少ない
ほど望ましい。しかし、Si0.15%未満及びMo
0.30%以上添加することを条件とすれば、Cr1.
20%以下でも悪影響はない。また、Cr含有量が0.
90%未満ではコア部の焼入れ性の低下及び浸炭性の低
下を招く。このため、Cr含有量は0.90〜1.20
%の範囲で設定される。
【0020】Mo;Moは、粒界酸化を生じさせず、焼
入れ性を高める元素であり、表面異常層の低減に寄与す
る元素である。Mo含有量が0.50%を越えるとその
効果は飽和する傾向にあり、その含有量が0.30%未
満ではその効果が低く、コア部の焼入れ性が不十分とな
る。このため、Mo含有量は0.30〜0.50%の範
囲で設定される。また、Moは、上記範囲において表面
異常層を低減させる効果以外に、金属組織そのものを強
靱化する効果もある。
【0021】また、第2の発明(請求項3)の実施態様
項としては、請求項4、5の記載の通りとなる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を説明す
る。
【0023】図3は熱処理鋼部品の製造プロセスを示す
ものである。この製造プロセスにおいては、材料の切
断、鍛造、焼準、機械加工、熱処理、焼戻し、ショット
ピ−ニングの各工程が順に行なわれるようになってお
り、場合によっては、鍛造、焼準、焼戻しの各工程は省
略されることになっている。本発明に係る製造方法にお
いては、上記製造工程のうち、熱処理工程とショットピ
−ニング工程が深く関わっており、これらの工程につい
て詳細に説明し、他の工程については、既知であるので
その説明は省略する。
【0024】先ず、熱処理工程においては、合金鋼が浸
炭焼入れもしくは浸炭窒化焼入れされる。
【0025】上記合金鋼は、その成分がC:0.30〜
0.40%、Si:0.06〜0.15%未満、Mn:
0.30〜1.00%、Cr:0.90〜1.20%、
Mo:0.30%を越えて0.5%以下、残部Feとな
っている。この成分は、浸炭焼入れ後における合金鋼の
表面異常層の深さを約15μm以下とする観点から決め
られており、各成分の臨界的意義は前述した通りであ
る。
【0026】上記浸炭焼入れもしくは浸炭窒化焼入れ
は、一般的な条件のものが適用できる。例えば浸炭焼入
れについては、浸炭温度が900〜950度C、浸炭時
間が0.5〜5.0時間とされる。この例は、好ましい
浸炭焼入れ硬化深さ(Hv>550)0.2〜1.3m
mに相応して導かれている。この硬化深さの範囲は、
0.2mm未満では部品の耐面圧強度が不十分であり、
1.3mmを越えると合金元素の内部酸化が著しいこと
から、上記範囲に設定されている。
【0027】この通常の浸炭焼入れもしくは浸炭窒化焼
入れにより、上記合金鋼に形成される表面異常層の深さ
は約15μm以下に抑えられることになり、何等、特別
の処置・処理を施さなくても表面異常層の深さを約15
μm以下とすることができる。特に、浸炭窒化焼入れを
上記合金鋼に施すと、窒素で焼入れ性が向上するため、
浸炭焼入れを施す場合よりもより一層、表面異常層の深
さを浅くできることになる。
【0028】このように表面異常層の深さを約15μm
以下に抑えることに、上記合金鋼のSiとMo成分が大
きく係わっていることは前述した通りであるが、これ
は、図4、図5に示す特性線により確認することができ
る。すなわち、図4はSi含有量の表面異常層の深さへ
の影響を示している。これによれば、Si含有量が少な
ければ少ないほど表面異常層の深さが浅くなることが理
解できる。この場合、Si以外の各成分は図10に示す
ように実質的に同一とみなされる範囲内の鋼種とされ、
浸炭は930度Cで2時間行われ、焼入れは浸炭後85
0度Cより行なわれ、焼戻しは180度Cで1.5時間
行なわれた。
【0029】図5はMo含有量の表面異常層の深さへの
影響を示している。これによれば、Mo含有量が多けれ
ば多いほど表面異常層の深さが浅くなることが理解でき
る。この場合、Mo以外の各成分は図11に示すように
実質的に同一とみなされる範囲内の鋼種とされ、前記S
iの場合と同様、浸炭は930度Cで2時間行なわれ、
焼入れは浸炭後850度Cより行なわれ、焼戻しは18
0度Cで1.5時間行なわれた。
【0030】図6は上記方法によって表面異常層の深さ
を約6μmとした場合を示す400倍の顕微鏡写真図、
図7は上記方法によって表面異常層の深さを約10μm
とした場合を示す400倍の顕微鏡写真図である。この
図6、図7において、下側が合金鋼の内部組織であり、
該合金鋼の上方部に形成されている薄層が表面異常層で
ある。これに対し、図8は、通常の合金鋼(例えばSC
M415)に対して通常の浸炭焼入れを行なうことによ
って表面異常層の深さを約18μmとした場合を示す4
00倍の顕微鏡写真図、図9は、図8の場合と同様の方
法により表面異常層の深さを約25μmとした場合を示
す400倍の顕微鏡写真図である。この図8、図9にお
いて、下側が合金鋼の内部組織であり、該合金鋼の上方
部に形成されている層が表面異常層である。
【0031】ショットピ−ニング工程においては、好ま
しい態様として、ショット硬さHRC50〜58、ショ
ット粒子投射速度60〜120m/sec、ショット径
0.1〜1.0mm、ショットピ−ニング時間10〜3
00秒の条件でショットピ−ニングが行なわれる。
【0032】ショット硬さとショット粒子投射速度とに
ついては、前述のように表面異常層が約15μm以下で
あれば、圧縮残留応力を形成する観点から、大きければ
大きいほど好ましい。しかし、ショット硬さが、HRC
50よりも低いときには、ショットピ−ニングの加工力
が疲労強度を向上させるには不十分となり、HRC58
よりも高いときにはショットピ−ニング効果が飽和する
上、ショットが割れ易くなる。また、ショット粒子投射
速度が60m/secより小さいときにはショットピ−
ニングの加工力が疲労強度を向上させるには不十分とな
り、120m/secよりも大きいときにはショットが
割れ易く、経済性が損なわれることになる。このため、
ショット硬さ及びショット粒子投射速度については、上
記範囲に設定されるのが好ましい。
【0033】ショット径については、ショット径が0.
1mmよりも小さいときには圧縮残留応力の分布層が薄
くなり、ショット径が1.0mmよりも大きいときには
圧縮残留応力の分布層の厚みは充分となるが、表面層の
圧縮残留応力値が低くなる。このため、上記のように、
ショット径は0.1〜1.0mmの範囲内で設定され
る。
【0034】ショットピ−ニング時間については、10
秒未満ではショットピ−ニングの効果が不十分であり、
300秒を越すとショットピ−ニングの効果が飽和し、
経済性を損なうことになる。このため、ショットピ−ニ
ング時間は、上記のように10〜300秒の範囲内で設
定される。
【0035】これにより、鋼部品の表面粗さを荒すこと
なく該鋼部品の表面に充分な圧縮残留応力を形成するこ
とができることになり、耐摩耗性を維持しつつ疲労強度
を向上させることができることになる。
【0036】
【実施例】上記実施形態に基づく効果は図12に示す実
験例により裏付けることができる。図12には、各実験
例の特有の実験条件(合金鋼の化学成分等)とその結果
とが記載されているが、共通の実験条件は下記のように
なっている。
【0037】共通の実験条件: 実験部品:自動車用トランスミッション歯車(モジュ−
ル2.50) 浸炭焼入れ:930度Cで2時間、浸炭を行なった後、
850度Cより焼入れを行ない、その後、180度Cで
1.5時間焼戻しを行なった。 ショットピ−ニング条件:ショット径 0.6mm、シ
ョット時間 150秒
【0038】(実験例1)この実験例1は、本発明の設
定範囲において、Siが下限に近く、Moが上限にある
ときには、その合金鋼を浸炭焼入れすれば、ショットピ
−ニング前の表面異常層の深さが極めて浅い、6μmと
なることを示している。また、この実験例1は、このよ
うな合金鋼に対してショットピ−ニングを本発明の設定
範囲内で行なえば、表面異常層の深さが約15μm以下
であるため、表面粗さが許容範囲内の1.0μm以下、
圧縮残留応力が疲労強度の向上に必要とされる50kg
f/mm2 となり(図12中、「−」符号は合金鋼中に
圧縮残留応力が残留していることを意味する)、疲労強
度の向上を図ることができることも示している。
【0039】(実験例2)この実験例2は、本発明の設
定範囲において、Si、Moが中間にあるときには、そ
の合金鋼を浸炭焼入れすれば、ショットピ−ニング前の
表面異常層の深さが許容範囲内の10μmとなることを
示している。また、この実験例2は、実験例1と同様、
ショットピ−ニングにより疲労強度を向上させることが
できることも示している。
【0040】(実験例3)この実験例3は、本発明の範
囲内においてSiが上限、Moが下限近くにあるときに
は、その合金鋼を浸炭焼入れすれば、ショットピ−ニン
グ前の表面異常層の深さが許容限界近傍の14μmとな
ることを示している。また、この実験例3は、前記実験
例1、2と同様、ショットピ−ニングにより疲労強度を
向上させることができることをも示している。
【0041】(実験例4、5、6)これら実験例4、
5、6は、本発明の設定範囲に対して、Siが多過ぎ、
Moが少な過ぎるときには、その合金鋼を浸炭焼入れし
ても、ショットピ−ニング前の表面異常層の深さが許容
限界の15μmを越えることを示している。また、実験
例4、5は、上記のように表面異常層の深さが許容限界
を越えているときには、ショット硬さ及びショット粒子
投射速度が本発明の設定範囲内にあっても、ショットピ
−ニング後の表面粗さが、許容限界の1.0μm以下を
越し、圧縮残留応力も疲労強度の向上に必要とされる5
0kgf/mm2 以上とはならず、疲労強度の向上は望
めないことを示している。このようにショットピ−ニン
グ後の表面粗さが許容範囲を越えたのは、他の表面層に
比べて柔らかい表面異常層が比較的厚いためにショット
硬さ及びショット粒子投射速度の増大に伴って荒れ易く
なるからであり、また、ショットピ−ニング後の圧縮残
留応力が必要以上ないのは、ショット粒子の運動エネル
ギが表面異常層の荒れとして費やされるためであると考
えられる。
【0042】実験例6については、表面異常層の深さが
許容限界を越え、しかも、ショットピ−ニング条件(シ
ョット硬さ、投射速度)が本発明の設定範囲外にあると
きには、疲労強度の向上が望めないことを示している。
【0043】(実験例7)実験例7は、Si、Moが共
に本発明の設定範囲内にあるときは、その合金鋼を浸炭
焼入れすれば、ショットピ−ニング前の表面異常層の深
さは、許容範囲内となるが、その合金鋼に対して、ショ
ット硬さHRC50以下、ショット粒子投射速度が60
m/sec未満の条件でショットピ−ニングを行なった
場合には、疲労強度の向上が望めないことを示してい
る。
【0044】なお、上記実施形態では浸炭焼入れについ
て述べているが、本発明は浸炭窒化焼入れにも適用で
き、この場合は表面異常層はより少なくでき好ましい結
果となる。
【0045】
【発明の効果】第1の発明によれば、表面粗さに基づく
切欠き効果による疲労クラックの発生及び表面粗さによ
る耐摩耗性の低下を防ぐことができると共に、ショット
粒子の運動エネルギを増大させることによって熱処理鋼
部品の表面にいままで以上に圧縮残留力を形成すること
ができることから、耐摩耗性を維持しつつ疲労強度を飛
躍的に向上させることがきる熱処理鋼部品を提供でき
る。
【0046】第2の発明によれば、その方法により上記
熱処理鋼部品を得ることができるばかりでなく、合金鋼
の成分を上記のように一旦決めれば、通常の浸炭焼入れ
もしくは浸炭窒化焼入れ処理によって合金鋼の表面異常
層の深さを約15μm以下にすることができることか
ら、上記熱処理鋼部品を得る際、表面異常層の深さを約
15μm以下にするために、特別な処置・処理を施す必
要はなく、表面異常層の深さを約15μm以下にする処
理が複雑化することを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ショットピ−ニング前の平均表面異常層の深さ
とショットピ−ニング後の平均表面粗さとの関係を示す
特性図。
【図2】ショットピ−ニング前の平均表面異常層の深さ
とショットピ−ニング後の表面圧縮残留応力との関係を
示す特性図。
【図3】熱処理鋼部品の製造プロセスを示す図。
【図4】ショットピ−ニング前の表面異常層の深さとS
i含有量との関係を示す特性図。
【図5】ショットピ−ニング前の表面異常層の深さとM
o含有量との関係を示す特性図。
【図6】表面異常層の深さが約6μmの場合における金
属組織を示す400倍の顕微鏡写真図。
【図7】表面異常層の深さが約10μmの場合における
金属組織を示す400倍の顕微鏡写真図。
【図8】表面異常層の深さが約18μmの場合における
金属組織を示す400倍の顕微鏡写真図。
【図9】表面異常層の深さが約25μmの場合における
金属組織を示す400倍の顕微鏡写真図。
【図10】図4の特性図を得る際の各成分の割合を示す
図。
【図11】図5の特性図を得る際の各成分の割合を示す
図。
【図12】実験例を示す図。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.10〜0.40%、Si:0.
    06〜0.15%未満、Mn:0.30〜1.00%、
    Cr:0.90〜1.20%、Mo:0.30%を越え
    て0.50%以下、残部Feからなる合金鋼を浸炭焼入
    れもしくは浸炭窒化焼入れ処理した鋼部品であって、表
    面不完全焼入れ層の深さが約15μm以下とされたもの
    に対して、ショットピ−ニングが施されている、ことを
    特徴とする熱処理鋼部品。
  2. 【請求項2】 請求項1において、 前記鋼部品は、浸炭焼入れもしくは浸炭窒化焼入れ処理
    に基づく硬化深さがビッカ−ス硬さ550より大となる
    領域で0、2mm〜1.3mmとされている、ことを特
    徴とする熱処理鋼部品。
  3. 【請求項3】 C:0.10〜0.40%、Si:0.
    06〜0.15%未満、Mn:0.30〜1.00%、
    Cr:0.90〜1.20%、Mo:0.30%を越え
    て0.50%以下、残部Feからなる合金鋼を浸炭焼入
    れもしくは浸炭窒化焼入れし、 次いで、ショットピ−ニングを施す、ことを特徴とする
    熱処理鋼部品の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3において、 前記焼入れ温度が900度C〜950度Cとされ、 前記焼入れ時間が、0.5〜5.0時間である、ことを
    特徴とする熱処理鋼部品の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項3において、 前記ショットピ−ニングを、ショット径0.1mm〜
    1.0mm、ショット粒子投射速度60〜120m/s
    ecの条件で行う、ことを特徴とする熱処理鋼部品の製
    造方法。
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