JP3340016B2 - 軟窒化用構造用鋼 - Google Patents

軟窒化用構造用鋼

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JP3340016B2
JP3340016B2 JP05411496A JP5411496A JP3340016B2 JP 3340016 B2 JP3340016 B2 JP 3340016B2 JP 05411496 A JP05411496 A JP 05411496A JP 5411496 A JP5411496 A JP 5411496A JP 3340016 B2 JP3340016 B2 JP 3340016B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ギヤ、シャフト
等高強度精密部品をはじめとする様々な機械構造用部品
用としての軟窒化用構造用鋼に関し、とくに軟窒化処理
によって硬化層を形成させた後、ショットピーニングを
施して使用するための優れた疲労強度と、良好な被削性
を有し、熱処理歪みの小さい軟窒化用構造用鋼に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、表面硬化処理方法としては、浸炭
処理と、ガス窒化、軟窒化等をはじめとする窒化処理と
が代表的なものである。
【0003】ギヤ、シャフト等高負荷のかかる機械構造
用精密部品には、小型軽量化、高強度化の目的で深い硬
化層を持つ浸炭材が使用されるのが一般的である。
【0004】浸炭処理は高温のγ域において、炭素を侵
入、拡散させるため、深い硬化深さが得られるが、浸炭
後に焼入れ焼戻しの熱処理が必要なために熱処理歪みが
大きくなり、厳しい寸法精度の要求されるギヤ等の機械
構造用部品に使用するには問題があった。また、耐焼付
性や耐かじり性にも難点があった。
【0005】これに対し、窒化処理は、A1 変態点以下
の温度域での処理であり、必ずしも焼入を必要としない
ため、熱処理歪みが少なく、また高い表面硬さの硬化層
が得られ、耐磨耗性、耐焼付性にも優れている。特に軟
窒化は、ガス窒化に比べ化合物層や処理時間の点で有利
なため、低熱処理歪性を生かし機械構造用部品や金型な
どに急速に普及しつつある。
【0006】しかし、従来より、軟窒化処理に用いられ
ている構造用炭素鋼や低合金鋼では、十分な硬化深さと
深部硬さが得られず、耐ピッチング性や耐スポーリング
性、疲労強度が大きな問題となっていた。
【0007】また、軟窒化処理は、鍛造のまま、あるい
は焼きならし後に行われることが多く、部品強度を上げ
るために芯部強度を上げることはそのまま軟窒化前の素
材硬さを上げることにつながり、特に機械構造用鋼とし
ては素材状態での加工性が問題となっていた。
【0008】一方、ショットピーニング処理は比較的容
易にしかも低コストで疲労強度を向上させる処理として
浸炭歯車などに適用されつつある。ところが窒化部品に
ショットピーニング処理を施すと、表面にクラックが生
じてしまい疲労強度を十分高めることができないことが
知られていた。
【0009】そこで、この問題を解決するための技術が
特開平2−149616で提案されている。この方法
は、鋼を熱間鍛造後冷却或いは前処理によりベイナイト
を主体とする金属組織とし、窒化処理又は軟窒化処理を
施した後、ショット径/窒化化合物膜厚=15〜60、
ショット硬さ=45〜60HRC 、ショット速度=50〜
120m/secのショット条件でショットピーニング
を施すものである。
【0010】ところで、さらにこの方法において、機械
構造用の高強度精密部品の製造上から鋼の被削性を向上
させる必要がある。しかし、被削性などの加工性を向上
させるためには、一般にS、Pb等の快削性元素を添加
する手法が広く用いられている。しかし、Pbを添加す
ることにより、特に軟窒化材にショットピーニングを施
したときの疲労強度が、非Pb鋼に対して低下してしま
う問題があることを、発明者らは見いだした。そして、
化学成分と不純物を十分にコントロールすることによっ
て良好な被削性と優れた疲労強度を併せ持たせること
が、可能となることを発見した。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、上記問題点を解消することであり、良好な
被削性と優れた疲労強度を有し、熱処理歪の小さい軟窒
化用構造用鋼を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めの本発明の手段は、重量比で、C:0.20〜0.5
0%、Si:0.03〜0.50%、Mn:0.30〜
3.00%、Cr:0.20〜0.60%、Mo:0.
03〜1.00%、Al:0.01〜0.10%、V:
0.03〜0.50%、S:0.015〜0.070
%、Pb:0.010〜0.040%、O:15ppm
以下を含有すると共に、S、Pbの含有量が、式 1.5S(%)+Pb(%)≧(9/10000)×素材硬さ(HB)-0.22 但し、素材硬さ:240HB〜330HBを満足し、
S、Pb、酸素の含有量が、式 0.5S(%)+Pb(%)+40酸素(%)≦(8/10000)×芯部硬さ(HV)-0.11 但し、芯部硬さ:250HV〜350HVを満足し、残
部がFeおよび不可避不純物よりなり、圧延まま、鍛造
まま、焼きならし等の状態で機械加工を施した後、軟窒
化処理とショットピーニングを施すことに適した、疲労
強度と被削性に優れた軟窒化用構造用鋼を用いることで
ある。
【0013】すなわち、重量比で、C:0.20〜0.
50%、Si:0.03〜0.50%、Mn:0.30
〜3.00%、Cr:0.10〜1.00%、Mo:
0.03〜1.00%、Al:0.01〜0.10%、
V:0.03〜0.50%となるように鋼に添加するこ
とによって、圧延まま、鍛造まま、焼きならし等の状態
で、例えば570℃×10時間の軟窒化処理を施し、芯
部硬さ250HV以上、表面硬さ650HV以上900
HV以下、0.4mm以上の有効効果深さ(420HV)
とする。
【0014】さらにその後、ショット径0.2〜1.0
mm、ショット硬さ42〜62HRC、ショット速度50
〜120m/secの条件にてショットピーニングを施す
ことによって、従来の肌焼鋼と同等以上の疲労強度を得
ることができる。すなわちα=1.96、φ8切り欠き
試験片での回転曲げ疲労限が70kgf/mm2(686MP
a)以上の強度特性を示す。この特性を保ちつつ、なお
かつ素材状態での被削性を向上させるために、さらに、
S:0.015〜0.070%、Pb:0.010〜
0.040%に規定してSとPbを添加し、O:15p
pm以下に酸素レベルを抑制し、しかもS、Pbの含有
量を、式 1.5S(%)+Pb(%)≧(9/10000)×素材硬さ(HB)-0.22 但し、素材硬さ:240HB〜330HBを満足するよ
うに、S、Pb、酸素の含有量を、式 0.5S(%)+Pb(%)+40酸素(%)≦(8/10000)×芯部硬さ(HV)-0.11 但し、芯部硬さ:250HV〜350HVとなるように
制御することによって、熱処理歪が小さく被削性と疲労
強度に優れた軟窒化用構造用鋼を得ることができる。
【0015】次いで、本発明の作用について説明する
と、本発明鋼は、圧延まま、鍛造まま、焼きならし等の
状態で軟窒化し、さらにその後、ショットピーニングを
施し圧縮の残留応力を付加することにより、従来の鋼に
軟窒化しただけでは得ることが出来なかった優れた疲労
強度特性を示す。
【0016】本発明鋼の成分限定理由は、以下の通りで
ある。Cは、芯部強度を確保する上で最も重要な元素で
あり、芯部強度の確保のためには、0.20%以上含有
させる必要がある。しかし、多すぎる場合には、靱性や
加工性を阻害するとともに、軟窒化後の硬化深さを著し
く減少する。0.50%以下であれば、強度、靱性、加
工性、軟窒化性の点から、満足すべき水準となる。従っ
て、本発明鋼におけるC量は、上限を0.50%とし、
下限を0.20%とする。また、これらの特性をより充
足するには、0.25%以上、0.40%以下とするこ
とがさらに好ましい。
【0017】Siは、溶製時の脱酸剤として用いられ、
また、芯部強度あるいは焼戻し軟化抵抗を上げるが、多
すぎる場合には、靱性、加工性を低下させ、特に軟窒化
後の硬化深さを減少させるので、上限を0.50%とす
る。また、芯部強度確保のために下限を0.03%とす
る。
【0018】Mnは、Siと同様に、溶製時の脱酸剤と
して用いられ、芯部強度を確保する上で有効な元素であ
り、芯部硬さの確保のためには、他元素との関連におい
て0.30%以上必要であるので下限を0.30%とす
る。また、軟窒化性に対しては、硬化深さへの影響はほ
とんどないが、表面軟窒化層の硬さを向上させる。しか
し、3.00%を超えると、冷間加工性や被削性を害す
るので、上限を3.00%とする。また、この元素のこ
れらの効果を最も有効とするためには、1.00%以
上、2.00%以下とすることが好ましい。
【0019】Crは、芯部強度を向上させるほか、軟窒
化性に対しては、多いほど軟窒化層の表面硬さを上昇さ
せる。しかし、Cr量が多くなりすぎた場合、表面に強
固な軟窒化層を形成するために、逆に硬化深さは減少す
る。本発明においては0.20%未満では、必要とする
表面硬さが得られないために、下限を0.20%とす
る。一方、0.60%を超えると、硬化硬さが浅くなる
ために、上限を0.60%とする。すなわち、0.20
%以上、0.60%以下の領域で、この元素の効果はさ
らに明確に現れるので、0.20%以上、0.60%以
下とする。
【0020】Moは、軟窒化層の硬度上昇、靱性の向上
に効果があるほか、窒化処理中、処理後の冷却中に生じ
る脆化を防止する作用を持つ。その効果を期待するには
0.03%以上必要であり、また、1.00%を超える
とコスト的に不利である上その効果も飽和するため、下
限を0.03%とし、上限を1.00%とする。さらに
好ましくは、0.05%以上、0.50%以下とするこ
とによりこの元素のより明らかな効果が期待できる。
【0021】Alは、溶製時に強力な脱酸剤として用い
られ、軟窒化性に対してはCrと同様に、多いほど軟窒
化後の表面硬さは大きく上昇するため、0.01%以上
を必要とする。しかし、多くなりすぎると、硬化深さが
著しく減少するようになり、また、熱間加工性や清浄度
なども悪化するので、上限を0.10%、下限を0.0
1%とする。また、この弊害をさらに抑えるためには、
0.05%未満添加することが望ましい。
【0022】Vは、軟窒化性に対して特に有効な元素で
あり、軟窒化層の表面硬さを上昇させ、硬化深さを著し
く増大させる。これは、Vが、圧延、鍛造、焼きなら
し、焼きなまし等の硬化熱処理のない状態の時、そのほ
ぼ全量あるいは一部がフェライト中に固溶し、軟窒化処
理によって浸入してきたCやNと結合して、微細な炭窒
化物を析出させるためと考えられる。このVの効果は、
0.03%未満では不十分であり、0.50%を超える
と飽和してしまい、また、非常に高価な元素であるため
コスト的にも不利になる。従って、本発明鋼では、Vの
上限を0.50%、下限を0.03%とする。また、望
ましくは0.30%以下の添加とすることによって、さ
らにコストを抑えることが可能である。
【0023】Sは、鋼の被削性を向上させる元素であ
り、素材状態での加工性を確保するためには、0.01
5%必要であり、また、多すぎると疲労強度を低下さ
せ、特に硫化物系介在物の影響で歯車など部品の疲労強
度に異方性を生じさせる。発明者らは、回転曲げ疲労限
(α=1.96、φ8切り欠き試験片使用)70kgf /
mm2 (686MPa )以上の特性を保つためには、0.0
70%添加しても差し支えないことを発見した。そのた
め、S添加の下限を0.015%、上限を0.070%
とする。しかし、硫化物系介在物による機械的性質にお
ける異方性を考慮し、上限を0.040%とすることが
さらに望ましい。
【0024】Pbは、鋼の被削性を向上させる元素であ
り、特に切り屑処理性の向上に有効である。一方、特開
平2−149616で提案されたとおり、軟窒化後ショ
ットピーニングを施すことにより、疲労強度が大幅に向
上する。しかしながら発明者らは、軟窒化後ショットピ
ーニングを施し高強度化した場合は、Pbを添加した材
料の疲労強度がPb無添加のそれよりも劣ること、そし
て、Pbを多量に添加すれば目標の疲労特性である回転
曲げ疲労限(α=1.96、φ8切り欠き試験片使用)
70kgf/mm2(686MPa)以上を満足できなくなるこ
とを見出し、さらに、Pbは酸化物系介在物との複合作
用で疲労強度低下の要因になるという事実を明らかにし
た。さらにこの場合、Pbを0.040%以内添加し、
同時に酸素量を15ppm以下に抑えることにより、上
記の高疲労強度特性と良好な被削性を併せ持つことが出
来るという知見を得た。またPbは、Sを多量添加する
ことなく被削性を向上させるために必要であるため、下
限はS量との兼ね合いから決めるべきものである。その
ため、Pb添加の下限を0.010%、上限を0.04
0%とする。Pbは0.010%以上であればより明確
にその効果が現れる。
【0025】Oは、上記のとおり、Pbを0.040%
以下添加し、同時に酸素量を15ppm以下とすること
により、高疲労強度特性と良好な被削性を併せ持つこと
ができる。従ってOの上限を15ppmとする。さら
に、優れた疲労強度特性を得るには、酸素含有量を12
ppm以下に抑えることがより望ましい。
【0026】S、Pbは、上記の通り、ともに被削性を
向上させる元素である。また、圧延まま、鍛造まま、焼
きならし後等の特別な硬化熱処理のない素材状態ではフ
ェライト・パーライト、ベイナイト、或いはそれらの混
合組織となり、素材硬さの上昇とともに被削性が低下す
る。S、Pb、Oは、上記のとおり、疲労強度を低下さ
せる元素である。又、窒化は変態点以下の処理であるた
め、窒化前の素材硬さで窒化後の芯部硬さが決定する。
そして、窒化後の芯部硬さが低下すると、疲労強度も低
下する。これらの兼ね合いから、被削性確保のために
は、S、Pbのトータル量の下限を、疲労強度確保のた
めには、S、Pb、Oのトータル量の上限を、それぞ
れ、素材硬さ、芯部硬さとの関係より規定する必要があ
る。
【0027】S、Pbのトータル量の下限は、それぞれ
単独の成分範囲が上記範囲内で、しかも式 1.5S(%)+Pb(%)≧(9/10000) ×素材硬さ(HB)-0.22 但し、素材硬さ:240HB〜330HBを満足するよ
うに添加しなければならない。なお、素材硬さは強度と
被削性のバランスを考慮して上記値に限定する。
【0028】また、S、Pb、Oのトータル量の上限
は、それぞれ単独の成分範囲が上記範囲内で、しかも式 0.5S(%)+Pb(%)+40酸素(%)≦(8/10000) ×芯部硬さ(HV)-0.11 但し、芯部硬さ:250HV〜350HVを満足するよ
うに添加しなければならない。なお、芯部硬さは、疲労
強度と靱性を考慮して上記値に限定する。
【0029】次に、窒化処理方法およびショットピーニ
ング処理方法は以下の通りである。窒化の方法は、鋼の
合金組成を前記のように限定しているため、ガス軟窒
化、タフトライドあるいはイオン軟窒化、または、ガス
窒化、イオン窒化いずれの方法を使用しても良い。例え
ば、570℃×10hr、処理雰囲気:NH3 /RX=
1/1でガス軟窒化処理する。ショットピーニング処理
方法は、十分な最大圧縮応力と圧縮残留応力深さを得る
ためと、ショットにより発生したクラックによる疲労強
度低下をおさえるために以下の通りとする。
【0030】ショット径0.2〜1.0mm、ショット硬
さ42〜62HRC、ショット速度50〜120m/se
c である。
【0031】以上述べたとおり、本発明鋼は芯部強度確
保のためにC、Mn、Cr、Mo量を規定し、軟窒化層
の特性を調整するためにCr、Al、V、Mo量を規定
し、素材状態での被削性の向上と、処理後の高疲労強度
の確保を両立させるために、S、Sbの添加量および酸
素含有量を規定した鋼を、圧延まま、鍛造まま、焼きな
らし等の状態でA1 変態点以下の低熱処理歪表面硬化処
理である軟窒化処理の後、圧縮の残留応力を付加するた
めにショットピーニングを施すことによって、小野式回
転曲げ疲労限(α=1.96、φ8切り欠き試験片使
用)70kgf/mm2(686MPa )という高疲労強度特性
を獲得した、軟窒化前の素材状態では高硬さでもドリル
穿孔時間13sec 以下という肌焼鋼並みかそれ以上の被
削性を持ち、熱処理歪が肌焼鋼の1/3以下となる被削
性と疲労強度に優れた軟窒化構造用鋼である。
【0032】
【発明の実施の形態】本発明の効果を明らかにするた
め、以下に実施例を示す。
【0033】
【表1】
【0034】表1に示す化学成分の鋼を、小型真空溶解
炉で溶製し、1200℃で直径20mmの丸棒に鍛造し、
900℃焼きならしを施した後、機械加工によって小野
式回転曲げ疲労試験片(α=1.96、φ8切り欠き)
を作製し、ガス軟窒化処理の後、ショットピーニングを
施し、試験を行った。ガス軟窒化およりびショットピー
ニングの条件は下記に示す通りである。
【0035】ガス軟窒化処理条件: 処理温度 :570℃ 処理時間 :10h 処理雰囲気 :NH3 /RX=1/1
【0036】ショットピーニング条件: ショット速度:90m/sec ショット径 :0.6mm ショット硬さ:54HRC 照射時間 :30sec
【0037】また、試験片加工前の素材状態で被削性を
調査するため、鋼塊を1200℃で直径65mmに鍛造
し、ドリル穿孔性試験を行なった。この試験は、材料の
被削性を下記の条件で深さ10mmのドリル穴を穿孔する
ために要する時間(sec )(25個の穴を穿孔するとき
の平均)で評価するものである。 ドリル穿孔試験条件 方式 :乾式自由落下式 工具 :SKH51 φ8ストレートドリル 周速 :23m/min 荷重 :686N
【0038】本発明鋼の、素材状態でのドリル穿孔性、
軟窒化特性、芯部強度、および、軟窒化とショットピー
ニングを施すことによって得られる疲労強度は表2に示
すとおりである。
【0039】図1に素材状態でのドリル穿孔性試験の結
果を、硬さとドリル穿孔時間で整理したものを示す。こ
の結果より、S、Pbを添加することによって、高硬さ
でも肌焼鋼並みのレベルを示すことが分かる。
【0040】また、図2、図3にほぼ同一硬さの素材の
ドリル穿孔時間をS、Pb量で整理したものを示す。
S、Pbはともに被削性に対して有効な作用があること
が分かる。
【0041】図4に、軟窒化後にショットピーニングを
施した材料の、小野式回転曲げ疲労強度(α=1.9
6、φ8切り欠き試験片使用)を疲労限(107 寿命強
度)と酸素、Pb量との関係で示す。酸素含有量とPb
添加量をともに抑えるほど、疲労強度は向上する。ま
た、疲労限70kgf/mm2 (686MPa )という高疲
労強度特性を得るには、酸素含有量を15ppm 以下に抑
え、Pb添加量を0.04%以下にする必要があること
が分かる。
【0042】
【表2】
【0043】図5に、S:0.015%以上0.070
%以下、Pb:0.010%以上0.040%以下の範
囲におけるS、Pbのトータル量と切削前の素材硬さに
対する、ドリル穿孔時間の関係を示す。ドリル穿孔時間
が13sec以下となるには、 1.5S(%)+Pb(%)≧(9/10000)×素材硬さ(HB)-0.22 とする必要があることが分かる。
【0044】さらに、S、Pbの影響を明らかにするた
め、図7に、ほぼ同一な窒化特性を持つ試験片の軟窒化
後と、さらにその後ショットピーニングを施した場合の
小野式回転曲げ疲労強度(α=1.96、φ8切り欠き
試験片使用)を示す。疲労限とS量の関係を座標にと
り、Pb量によって層別した。
【0045】窒化材にショットを施すことにより、疲労
限は著しく向上することが分かる。Pbの疲労強度への
悪影響は、軟窒化処理のままではほとんど現れず、ショ
ットを施すことにより顕著となる。この時、0.06%
Pb添加鋼の破断した試験片のほとんどがフィッシュア
イ起点であり、起点にはPbが付着した酸化物系介在物
の存在が認められた。Pbと酸素の複合作用の影響が、
疲労強度低下の原因の一つであることが明らかとなっ
た。
【0046】また、SもPbほど明確ではないものの、
疲労強度を低下させる傾向を示すことが分かる。
【0047】図6に、S:0.015%以上0.070
%以下、Pb:0.010%以上0.040%以下、酸
素量15ppm以下の範囲におけるS、Pb、Oのトータ
ル量と窒化後の芯部硬さに対する、小野式回転曲げ疲労
試験での疲労限の関係を示す。疲労限70kgf/mm2
(686MPa)となるには、 0.5S(%)+Pb(%)+40酸素(%)≦(8/10000)×芯部硬さ(HV)-0.11 とする必要があることが分かる。
【0048】図8に本発明鋼と従来浸炭材のU.S.N
aby歪試験による熱処理歪の大きさの違いを示す。本
発明鋼の軟窒化後の熱処理歪は、従来浸炭材の1/3以
下と非常に小さいことが分かる。
【0049】第3表にショットピーニング条件の違いに
よる疲労強度への影響を示す。本発明鋼1を用いて、焼
ならし後、570℃×10時間のガス軟窒化処理を施
し、それぞれの条件でショットピーニングを施した。
【0050】
【表3】
【0051】本発明鋼に適用するショットピーニング条
件a〜eでは、最大圧縮残留応力が980〜1127MP
a 、圧縮残留応力深さ0.25〜0.30mmとなり、切
欠き回転曲げ疲労限は695〜720MPa と優れた特性
を示す。
【0052】それに対して適用範囲外のショットピーニ
ング条件f〜jでは、ピーニング強度が大きすぎる場合
(f,h,j)、圧縮残留応力深さは深いが、表面の化
合物層に発生したクラックのために回転曲げ疲労強度は
低くなっている。また、ピーニング強度が小さい場合
(g,i)は、圧縮残留応力深さが0.15mmと浅く、
回転曲げ疲労限も低くなっていることが分かる。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、本発明鋼は、これ
を従来浸炭材の使用されていた部品に使用する際、熱処
理歪を小さくしつつ、優れた疲労強度と良好な部品の加
工性を備えた機械構造部品用軟窒化用鋼として、従来の
軟窒化用構造用鋼では得られなかった優れた部品性能、
低コスト性を実現したものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】素材状態でのドリル穿孔試験の結果を示す図で
ある。
【図2】同一硬さの素材のドリル穿孔時間をS量で整理
した図である。
【図3】同一硬さの素材のドリル穿孔時間をPb量で整
理した図である。
【図4】軟窒化後にショットピーニングした供試材の回
転曲げ疲労強度と酸素及びPb添加量の関係を示す図で
ある。
【図5】S、Pbのトータル量と切削前の素材硬さに対
するドリル穿孔時間の関係を示す図である。
【図6】S、PbとOのトータル量と窒化後の芯部硬さ
に対する小野式回転曲げ疲労試験での疲労限の関係を示
す図である。
【図7】軟窒化後にショットピーニングした供試材の回
転曲げ疲労強度とPbおよびS添加量の関係を示す図で
ある。
【図8】本発明鋼と従来浸炭材の熱処理歪の違いを示す
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C23C 8/26 C23C 8/26 8/80 8/80 (72)発明者 細田 賢一 兵庫県姫路市飾磨区中島字一文字3007番 地 山陽特殊製鋼株式会社内 (72)発明者 有見 幸夫 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツ ダ株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−25797(JP,A) 特開 昭63−216950(JP,A) 特開 昭59−190321(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比で、C:0.20〜0.50%、
    Si:0.03〜0.50%、Mn:0.30〜3.0
    0%、Cr:0.20〜0.60%、Mo:0.03〜
    1.00%、Al:0.01〜0.10%、V:0.0
    3〜0.50%、S:0.015〜0.070%、
    b:0.010〜0.040%、O:15ppm以下を
    含有すると共に、S、Pbの含有量が、式 1.5S(%)+Pb(%)≧(9/10000)×素材硬さ(HB)-0.22 但し、素材硬さ:240HB〜330HBを満足し、な
    おかつS、Pb、酸素の含有量が、式 0.5S(%)+Pb(%)+40酸素(%)≦(8/10000)×芯部硬さ(HV)-0.11 但し、芯部硬さ:250HV〜350HVを満足し、 残部がFeおよび不可避不純物よりなり、圧延まま、鍛
    造まま、焼きならし等の状態で機械加工を施した後、軟
    窒化処理とショットピーニングを施して使用するため
    の、疲労強度と被削性に優れた軟窒化用構造用鋼。
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