JP3430685B2 - 耐ピッチング性軟窒化歯車 - Google Patents
耐ピッチング性軟窒化歯車Info
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Description
た高強度軟窒化歯車に関する。
車は、表面の耐摩耗性、耐折損性、耐疲労性等を高める
ため、肌焼鋼に表面硬化処理を施したものが使用されて
いる。そのなかで、窒化および軟窒化処理は、浸炭・高
周波焼入に比べ、処理後の熱処理歪が少なく寸法精度の
高い歯車の製造が可能となる。
いものの、通常、処理時間が50〜100 hrと著しく長く、
処理後も表面の脆い化合物層 (ポーラス層) を除去する
必要があるなど、製造上に問題があった。
〜600 ℃の温度域でNとCを同時に侵入・拡散させて、
表面硬化をはかる処理であり、窒化処理に比べて処理時
間が約半分ですみ、特にRXガス(CO:23vol%、H2:
30vol%、N2:47vol%) とNH3 ガス等を雰囲気ガスとし
て処理を行うガス軟窒化処理は多量生産および安定操業
が可能なことから、熱処理歪の少ない歯車用表面処理法
として急速に普及しつつある。
ている歯車用炭素鋼や低合金鋼は、歯車高強度化の動向
に対し、十分な表面硬さおよび硬化深さが得られておら
ず、また、歯車実働時に最表面の化合物層が剥離する問
題 (耐ピッチング性の低下)が生じてきている。
−16950 号公報の開示する発明では、Al、Cr、V等の化
学組成を制限することによって表面硬さ・硬化深さの向
上を図っているが、歯車接触部で生じるピッチング特性
に関しては充分でない。
では、軟窒化処理品のポーラス層をショットピーニング
により除去し、耐疲労性向上を図ることを提案している
が、耐ピッチング性に関しては充分でなく、耐ピッチン
グ性に優れた軟窒化処理歯車の開発が望まれていた。
のような問題を解決し、軟窒化特性に優れ、耐ピッチン
グ性に優れる高強度軟窒化歯車を提供することである。
また本発明の具体的な目的は、歯車歯面の耐ピッチング
性の向上を発揮でき、疲労強度の上昇、表面硬さの増
加、硬化深さの深化が得られる軟窒化歯車を提供するこ
とである。
的を達成すべく、種々検討を重ね、次のような知見を得
た。
深さを向上させ、軟窒化処理時間の短縮に効果がある。
歯車接触部である化合物層の組成を単層化することが有
効である。また、表層のポーラス層の厚さを制限するこ
とが有効である。
れ、耐ピッチング性に優れる軟窒化歯車を得ることがで
き、本発明の要旨とするところは、重量%で、C:0.15
〜0.50%、 Si:0.08〜1.20%、 Mn:0.60〜1.30
%、Cr:0.70〜1.50%、 Mo:0〜0.50%、 Al:
0.02〜0.10%、N:0.006 〜0.020 %、V:0.05〜0.20
%、残部Feおよび不可避的不純物の組成を有する鋼から
なる歯車であって、軟窒化処理後の化合物層がε層から
なり、ポーラス層厚さが10μm 以下であることを特徴と
する、耐ピッチング性に優れる高強度軟窒化歯車であ
る。
重量%で、さらにS: 0.005〜0.060 %、Pb:0.02〜0.
20%、およびCa:0.0050〜0.010 %から成る群から選ん
だ1種または2種以上を含有していてもよい。
由についてその作用とともに詳述する。なお、本明細書
において、「%」はとくに断りがない限り、「重量%」
である。
必要な元素であり、このためには0.15%以上含有する必
要が有るが、0.50%を超える場合には、焼入性増大によ
り靱性が低下するとともに切削性が大幅に低下する。よ
って、C含有量を0.15〜0.50%とした。好ましくは、0.
15〜0.35%である。
%を超えると靱性および切削性を悪化させるので、1.20
%以下とした。好ましくは、0.50%以下である。
る上で有効な元素であり、芯部硬さ確保のためには他元
素の関連において0.60%以上必要である。また、1.30%
を超えると加工性および切削性を害するので、0.60〜1.
30%の範囲とした。好ましくは、0.70〜1.10%である。
く添加すればするほど表面硬さ・硬化深さを上昇させる
元素であるが、0.70%未満では軟窒化性と芯部強度の向
上効果を得ることができず、また1.50%を超えると、表
面に強固な軟窒化層を形成するため、逆に硬化深さは減
少する。よって、0.70〜1.50%の範囲とした。好ましく
は、0.80〜1.20%である。
のに有効な任意添加元素であるが、0.50%を超えると効
果が飽和するため、0〜0.50%とした。好ましくは、0.
35%以下である。
入してきたNと結合して表面硬さを高め、かつ硬化深さ
を深めるのに有効な元素である。そのような効果を発揮
するには0.02%以上の含有が必要で、また0.10%を超え
ると表面に強固な軟窒化層を形成するため、逆に硬化深
さは減少する。よって、0.02〜0.10%の範囲とした。好
ましくは、0.03〜0.07%である。
このためには、0.006%以上の含有が必要となる。また
0.02%を超えるとV窒化物の生成が顕著になり靱性が逆
に劣化し始める。よって、 0.006〜0.020 %の範囲とし
た。好ましくは、0.006 〜0.015 %である。
結合し微細なV炭窒化物を析出することにより、表面硬
さおよび硬化深さを向上させる。特に硬化深さ増加に対
する寄与が大きいことから、耐疲労性等にきわめて効果
が大きい。そのような効果を発揮させるには、0.05%以
上必要となるが、0.20%超になると含有Nと結合して粗
大なV窒化物が析出し芯部靱性悪化となる。よって、0.
05〜0.20%の範囲とした。
須成分とするものであるが、必要に応じて、快削成分と
して、S、Pb、Caよりなる群から選ばれる1種以上を含
有するものであってもよい。
%、Ca:0.0050〜0.010 % S、Pb、Caはいずれも被削性を向上させるための元素で
ある。更なる被削性の向上を行うには、これらの元素は
少なくとも1種、それぞれS: 0.005%、Pb:0.02%、
Ca:0.0050%以上の添加が必要である。しかし、上記の
各上限を超えて添加しても被削性の顕著な向上効果は認
められず、かえって靱性を低下させることになるから、
S: 0.005〜0.060 %、Pb:0.02〜0.20%、Ca:0.0050
〜0.010%の少なくとも1種とした。
部の金属組織の模式的説明図であり、図中、最表層から
順に、ポーラス層10、化合物層12、そして拡散層13から
成り、芯部へと続いている。
したように、表層近傍に化合物層12(ポーラス層10と緻
密層からなる) が存在し、その内部が拡散層13と呼ばれ
るマトリックスに窒素が固溶した層となる。生成される
化合物層の最表層であるポーラス層10は通常酸化物を含
有していると言われ、化合物層12の厚さの1/3 以下であ
ることが耐剥離特性の観点からは望ましいとされ、これ
が現場的な良品判定基準とされている。
層・拡散層の形態 (第1図) は耐ピッチング性に影響を
及ぼす。特に、化合物層の制御は非常に重要となる。軟
窒化処理により、ξ (Fe2 N) 、ε (Fe2-3 N) 、γ'
(Fe4 N) 、Fe3 Cの化合物層を生じるが、これらが混
在すると、組織の境界において応力が発生し、耐ピッチ
ング性が低下する。
で、化合物層および耐ピッチング性の強化を図ることが
でき、このε層の形成は処理時のガス組成比および処理
温度の調整で可能となることを見出した。そこで、本鋼
を用いた場合、以下の制限を持たなければならない。
比 ガス容積組成比が0.5 未満では、非常に脆いξ層やγ'
層が形成され、また、1.5 を超えると化合物中にFe3 C
が混在することから、ガス組成をRX/NH3=0.5 〜
1.5 とした。好ましくは 0.7〜1.3 である。なお、RX
ガスとしては特に制限されない。
化特性の悪化となる。また、650 ℃を超えると化合物中
にFe3 Cが混在することから、処理温度を550〜650 ℃
とした。
疲労性等を向上させるのに必須な因子である。特に10μ
m を超えると、ポーラス層先端部は鋭角で空洞が多く脆
弱になり、揺動部に用いた場合、ポーラス層内部に存在
する長いマイクロクラックの先端への応力負荷が増大
し、急速に内部に亀裂の伝播が進行し、耐ピッチング性
が低下することから、10μm 以下とした。
潤滑状態の悪化を考慮し、特に耐ピッチング性が要求さ
れる場合は、1〜5μm が望ましい。なお、ポーラス層
の厚さは窒化処理温度を変更することで変えることがで
きるが、一旦形成されたポーラス層を研摩して除去する
ことで10μm 以下としてもよい。次に、実施例によって
本発明の作用効果をさらに具体的に詳述する。
のである。表1に示す化学成分を有する鋼を溶製後、各
々160 mm角の鋼片とし、この鋼片を1100℃に加熱し、仕
上温度950 ℃の熱間鍛造を施して直径30mmの丸棒とした
後、放冷した。
特性を調査することから、直径20mmの試験片、JIS4
号引張試験片およびJIS2号回転曲げ疲労試験片をそ
れぞれ採取し、処理条件570 ℃×3hr→OC (油冷) 、
RX/NH3 =1のガス軟窒化処理を施した。
験および疲労試験を行った。試験後の測定結果を表2に
示す。これらの結果からも分かるように、表2において
目標値を示し歯車製造での必要特性を示しているが、本
発明例では表面硬さ、硬化深さ、引張強度、伸びおよび
疲労強度すべてにおいて特性を満足している。
29の比較鋼のうち、C、Mn、Crが規定より少ない鋼 ( N
o.11、14、16) は、引張強度が大きく低下し、目標をは
ずれている。
い鋼 ( No.12、13、15、17、18、20、24、25、26、27)
およびNが規定より少ない鋼 ( No.23) は強度は満足す
るものの、伸びが大きく低下し、目標をはずれている。
6、19、21、26) やCr、Alが規定より多い鋼 ( No.17、2
2、27) さらに従来鋼 ( No.28、29) では、表面硬さ、
硬化深さともに低く、目標に達していない。以上のよう
に、本発明の範囲を外れる組成を有するものは、いずれ
も目標とする特性を得ることができない。
材とした表1に示す供試鋼の No.2、9を、熱間鍛造、
焼ならし、機械加工により外径:120 mm、モジュール:
2.0 、歯数:56、歯幅:20mm、歯たけ:4.6 mmの歯車を
作製し、これらを試験品としてガス軟窒化処理を施し
た。
変えた表3の条件で実施し、歯車疲労試験をおこなっ
た。評価は、トルク:40Kgf 、回転速度:1000RPM 、油
温:80℃の条件下で歯車を回転させ、107 回転時の歯面
1枚 (接触面積:52 mm2) 当たりのピッチング面積測定
により行った。なお、ピッチング面積ゼロをもって合格
とする。
度が満足するものは、化合物層がε単層になり、ポーラ
ス層が10μm を超える条件を除いてピッチングも発生は
していない。ガス組成が0.5 未満となると、化合物層は
複合化し、ピッチングも多数発生する。また、処理温度
が550 ℃未満となると、硬化深さが十分でなく評価完了
までに破損し、評価不能となる。以上のように、本発明
の条件を外れると目標とする特性を得ることができな
い。
が規格内でポーラス層が10μm を超える歯車について、
ショットピーニングにてポーラス層厚さを10μm 以下に
調整した歯車で、実施例2と同様に歯車疲労試験をおこ
ない、評価を行った。表5に測定結果を示す。ポーラス
層を10μm 以下に調整した歯車のピッチングは皆無とな
り、耐ピッチング性のさらなる向上が図れている。
するに際し、熱処理条件の調整・ポーラス層の厚さ調整
をおこなうことにより、軟窒化鋼として従来鋼にない優
れたピッチング特性を保有することで、歯車の高強度化
・軽量化が可能となるものである。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量%で、 C:0.15〜0.50%、 Si:0.08〜1.20%、 Mn:0.
60〜1.30%、 Cr:0.70〜1.50%、 Mo:0〜0.50%、 Al:0.02
〜0.10%、 N:0.006 〜0.020 %、V:0.05〜0.20%、 残部Feおよび不可避的不純物の組成を有する鋼からなる
歯車であって、軟窒化処理後の化合物層がε層からな
り、ポーラス層厚さが10μm 以下であることを特徴とす
る、耐ピッチング性に優れる高強度軟窒化歯車。 - 【請求項2】 前記組成が、重量%で、さらにS: 0.0
05〜0.060 %、Pb:0.02〜0.20%、およびCa:0.0050〜
0.010 %から成る群から選んだ1種または2種以上を含
有する、請求項1記載の高強度軟窒化歯車。
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JP30927294A JP3430685B2 (ja) | 1994-12-13 | 1994-12-13 | 耐ピッチング性軟窒化歯車 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP30927294A JP3430685B2 (ja) | 1994-12-13 | 1994-12-13 | 耐ピッチング性軟窒化歯車 |
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JPH08165556A JPH08165556A (ja) | 1996-06-25 |
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ID=17991002
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP30927294A Expired - Lifetime JP3430685B2 (ja) | 1994-12-13 | 1994-12-13 | 耐ピッチング性軟窒化歯車 |
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-
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