JP4798963B2 - 高強度歯車およびその製造方法 - Google Patents

高強度歯車およびその製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、自動車や各種産業機器等に使用される、高い曲げ疲労強度および面圧疲労強度を有する高強度歯車およびその製造方法に関するものである。
自動車等に用いられている歯車には、近年、省エネルギー化による車体重量の軽量化に伴って、サイズの小型化が要求され、また、エンジンの高出力化に伴って歯車にかかる負荷が増大している。歯車の耐久性は、主に歯元の曲げ疲労破壊ならびに歯面の面圧疲労破壊によって決まる。
従来、歯車は、JIS SCM420H、SCM822H等により規定された肌焼鋼を用いて歯車材を調製し、この歯車材に浸炭等の表面処理を施して製造されていた。しかしながら、このような歯車は、高応力下での使用に耐えられるものではないことから、鋼材の変更、熱処理方法の変更、表面の加工硬化処理等によって、歯元曲げ疲労強度、耐ピッチング性の向上を図っていた。
例えば、特公平07−122118号公報(特許文献1)には、鋼中のSiを低減して、Mn、Cr、Mo、Niをコントロールすることにより、浸炭熱処理後の表面の粒界酸化層を低減して亀裂の発生を少なくし、不完全焼入層生成を抑制することにより、表面硬さの低減を抑えて疲労強度を高め、さらに、Caを添加して、亀裂の発生・伝播を助長するMnSの延伸を制御する方法が開示されている。以下、この方法を先行技術1という。
また、特許第2945714号公報(特許文献2)には、素材としてSiを0.25〜1.50%添加した鋼材を用いて焼戻し軟化抵抗を高める方法が開示されている。以下、この方法を先行技術2という。
特公平07−122118号公報 特許第2945714号公報
しかしながら、上述した先行技術には、下記の問題があった。
先行技術1によれば、Siを低減することにより、粒界酸化層および不完全焼入れ層が低減するので、歯元での曲げ疲労亀裂発生を抑えることはできる。しかし、逆に焼戻し軟化抵抗が低下して、破壊の発生が歯元から歯面側に移行する結果、歯面での摩擦熱による焼戻し軟化を抑えることができなくなって表面が軟化する。このために、ピッチングが発生しやすくなるという問題があった。
先行技術2では、焼戻し軟化抵抗を上げるために逆にSi等を添加し、粒界酸化進行の抑制のために浸炭工法を真空浸炭あるいはプラズマ浸炭等に限定しているが、この方法は、製造コストが上がるので量産化に不適である。
従って、この発明の目的は、上述した問題を解決して、歯元曲げ疲労強度が従来の歯車よりも高く、さらに、面圧疲労特性に優れた量産可能な高強度歯車およびその製造方法を提供することにある。
本願発明者等は、上述した課題を解決するために、鋭意、研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
(1)鋼材中のSi、Crを増量することによって、焼戻し軟化抵抗を高めると共に、歯車接触面での発熱による軟化を抑えれば、歯車駆動時に生じる歯面の亀裂発生を抑制することができる。
(2)曲げ疲労および疲労亀裂の起点となり得る粒界酸化層については、Siをある量以上添加することにより、粒界酸化層の成長方向が深さ方向から表面の密度増加方向に変わる。従って、起点となるような深さ方向に成長した酸化層がなくなるので、曲げ疲労および疲労亀裂の起点となりにくくなる。さらに、この酸化層は、剥離し易くなり、ショットピーニングによりほぼ剥離して無くなるために、影響がでない。
(3)上記(1)および(2)の通り、Siは、焼戻し軟化抵抗の向上と粒界酸化層のコントロールに有効であるが、その両方を満たすためのSi量の適正値がある。
(4)歯面の浸炭部表面は、マルテンサイトおよび40体積%以下の残留オーステナイトにすることにより硬度低下を抑制できる。また、表層のC含有量は、0.9mass%未満にして表層の粒界セメンタイトの生成を抑えることによって、曲げ疲労および面圧疲労での疲労亀裂の発生を抑えることができる。
この発明は、上記知見に基づきなされたものであって、下記を特徴とするものである。
請求項1記載の発明は、C:0.10〜0.25%、Si:0.8〜1.2%、Mn:0.72〜2.0%、S:0.006%以上、Cr:1.0〜2.0%、Mo:0.2〜0.8%、Al:0.005〜0.200%、N:0.0050〜0.0200%(以上、mass%)を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼材を、鍛造あるいは機械加工により歯車形状に形成したものからなり、歯車形状に形成後、浸炭処理あるいは浸炭窒化処理を施した時の、表層のC含有量が0.9mass%未満、歯車の表層から100μm深さ位置までの残留オーステナイト量が26〜40体積%、且つ、組織がマルテンサイト単相であることに特徴を有するものである。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記鋼材は、Nb:0.010〜0.060%、V:0.05〜0.20%(以上、mass%)の少なくとも1種をさらに含有していることに特徴を有するものである。
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記鋼材は、Ti:0.005〜0.050%、B:0.0005〜0.0100%(以上、mass%)をさらに含有していることに特徴を有するものである。
請求項4記載の発明は、C:0.10〜0.25%、Si:0.8〜1.2%、Mn:0.72〜2.0%、S:0.006%以上、Cr:1.0〜2.0%、Mo:0.2〜0.8%、Al:0.005〜0.200%、N:0.0050〜0.0200%(以上、mass%)を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼材を、鍛造あるいは機械加工により歯車形状に形成して歯車材を調製し、次いで、前記歯車材に浸炭処理あるいは浸炭窒化処理を施し、さらに、アークハイト0.3mmA以上のショットピーニングを施して、表層のC含有量を0.9mass%未満、歯車の表層から100μm深さ位置までの残留オーステナイト量を26〜40体積%、且つ、組織をマルテンサイト単相とすることに特徴を有するものである。
請求項5記載の発明は、請求項4記載に記載の発明において、前記鋼材として、Nb:0.010〜0.060%、V:0.05〜0.20%(以上、mass%)の少なくとも1種をさらに含有したものを使用することに特徴を有するものである。
請求項6記載の発明は、請求項4または5に記載の発明において、前記鋼材として、Ti:0.005〜0.050%、B:0.0005〜0.0100%(以上、mass%)をさらに含有するものを使用することに特徴を有するものである。
この発明によれば、曲げ疲労特性および面圧疲労特性に優れた、3000MPa以上の高面圧を必要とする自動車や各種産業機器等に使用される歯車を製造することができる。
以下に、各限定理由について述べる。
C:0.10〜0.25mass%
Cは、強度確保のために必要であり、その量は、浸炭焼戻し後の内部硬さを決定するが、その量が0.10mass%未満では、内部の硬さが低下しすぎるために歯車としての強度を確保できない。一方、0.25mass%を超えると、歯車内部の靭性が低下して、疲労亀裂が進展しやすくなるため曲げ疲労特性が低下するばかりでなく、加工性の劣化が起る。従って、C含有量は、0.10〜0.25mass%の範囲内に限定した。
Si:0.8〜1.2mass%
Siは、焼戻し軟化抵抗を高めるのに有効な元素であると共に、粒界酸化層深さを抑える効果がある。軟化抵抗が低いと、歯車駆動時に歯車同士の摩擦により歯車表層が焼戻され軟化して、面圧疲労特性が低下する。粒界酸化層深さが大きいと疲労起点となりやすいために曲げ疲労特性、面圧疲労特性の何れも低下する。
Siの適正範囲を調べるために、以下の試験を行った。
Si添加量だけを変更して材料を溶解し、それらの材料に図1に示すパターンに従って浸炭処理を行い回転曲げ疲労試験を行った。また、図2に示す形状および寸法の試験片を用いて面圧疲労特性の指標であるローラーピッチング試験を行った。さらに、それぞれの材料について300℃での焼戻しによる軟化量および粒界酸化層深さを調査した。
曲げ疲労強度を粒界酸化層深さで整理した結果を図3に示す。図3から粒界酸化層が10μm以下になると、曲げ疲労強度が向上することが分かった。
次に、面圧疲労強度を300℃焼戻し軟化量で整理した結果を図4に示す。図4から300℃焼戻しによる軟化量ΔHVが100HV以下で面圧疲労強度が向上することが分かった。
図5に、Si量と粒界酸化層深さおよび300℃焼戻し軟化量との関係を示す。
図5から、Siは、歯面の摩擦による発熱程度の温度である300℃での焼戻しにおいて、硬度低下抑制には、0.8mass%以上で効果があることが分かり、2.0mass%を超えると効果が飽和することが分かった。
図5から粒界酸化層深さに及ぼすSi量は、0.1mass%以下および0.6mass%以上で効果があることが分かった。また、1.2mass%を超えるとその効果は飽和することが分かった。
以上の実験結果から、粒界酸化層深さおよび300℃焼戻し軟化量の両方の効果が得られるSi添加量の範囲は、0.8〜1.2mass%であり、0.8mass%未満では、面圧疲労強度の向上が図れず、1.2mass%を超えて添加してもこれらの効果は飽和してしまうためにコスト的に無駄である。従って、Si含有量は、0.8〜1.2mass%の範囲内に限定した。
Mn:0.72〜2.0mass%
Mnは、鋼の焼入れ性を高める元素である。焼入れ性を確保するためには、Mnの添加量は、0.72mass%以上必要であるが、2.0mass%を超えて添加しても過剰に焼入れ性が上がり、残留オーステナイト量が過多となって硬さの低下を招くばかりなので、Mn添加量の上限は、2.0mass%とした。
S:0.006mass%以上
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる効果を持つが、0.006mass%未満では、生成するMnSが少なすぎてその効果が現われない。従って、S含有量は、0.006mass%以上に限定した。
Cr:1.0〜2.0mass%
Crは、焼入れ性向上元素であると共に、焼戻し軟化抵抗を高める元素である。両方の性能を発揮させるには1.0mass%以上の添加が必要である。しかし、その添加量が2.0mass%を超えると、軟化抵抗を高める効果は飽和して焼入れ性が高くなりすぎる。このため歯車内部の靭性が劣化して、疲労亀裂の進展が早くなるために曲げ疲労強度が低下する。従って、Cr含有量は、1.0〜2.0mass%の範囲内に限定した。
Mo:0.2〜0.8mass%
Moは、焼入れ性向上元素である。そのためには0.2mass%以上の添加が必要であるが、0.8mass%を超えて添加してもその効果は飽和し、しかも、高価な合金であるので経済性も悪い。従って、Mo含有量は、0.2〜0.8mass%の範囲内に限定した。
Al:0.005〜0.200mass%
Alは、脱酸に有効な元素であり、その効果は、0.005mass%以上の添加で発揮される。また、Nと結合してAlNを生成し、結晶粒の粗大化を抑える働きがある。その効果は、0.200mass%までの添加で有効であり、それを超えると粗大粒が発生して疲労亀裂が進展しやすくなるために、曲げ疲労強度および面圧疲労強度が低下する。従って、Al含有量は、0.005〜0.200mass%の範囲内に限定した。
N:0.0050〜0.0200mass%
Nは、Alと結合してAlNを生成し、結晶粒の粗大化を抑えて疲労強度を向上させる。その効果を得るには0.005mass%以上必要であるが、0.0200mass%を超えるとその効果は飽和するだけでなく、内部にブローボール等の欠陥を発生させ、結果的に曲げ疲労強度の低下を招く。従って、N含有量は、0.005〜0.0200mass%の範囲内に限定した。
Nb:0.010〜0.060mass%
Nbは、炭窒化物形成により結晶粒を微細化させる。これにより歯元曲げ疲労強度の向上が図られる。結晶粒を微細化させるには0.010mass%以上必要であり、0.060mass%以上添加してもその効果は飽和してしまう。従って、Nb含有量は、0.010〜0.060mass%の範囲内に限定した。
V:0.05〜0.20mass%
Vは、Si、Crと同じく焼戻し軟化抵抗を高める。また、それと同時に炭窒化物を形成して結晶粒の微細化を行いSiの偏析を抑制する効果も持っている。その効果を発揮させるためには、0.05mass%以上の添加が必要である。しかし、この効果は、0.20mass%を超えて添加しても飽和してしまい、十分な効果は得られず、製造コストが上がるだけである。従って、V含有量は、0.05〜0.20mass%の範囲内に限定した。
Ti:0.005〜0.050mass%、B:0.0005〜0.0100masss%
Bは、焼入れ性を上げるのに有効である。その効果は、0.0005mass%以上で得られ、0.0100mass%を超えると飽和してしまう。従って、B含有量は、0.0005〜0.0100mass%の範囲内に限定した。しかし、Bの焼入れ性向上効果は、BがN化合物で存在した場合は、無効であるためB添加と同時にNを固定するためにTiを添加する。その適正添加量は、N量により異なるが、0.005〜0.050mass%の範囲内である。
なお、不可避不純物としてのPおよび酸素含有量は、できるだけ低い方が望ましい。
また、被削性を向上させるために必要に応じて、S、Pb、Se、Ca等の快削元素を含有させても良い。
表層C含有量:0.9mass%未満
浸炭により表層のC含有量は高くなる。その結果、表面硬度が上がり、曲げ疲労および面圧疲労強度が向上する。しかし、表層C含有量が0.9mass%以上になると、表層付近の粒界にセメンタイトを析出させ、疲労の起点となるために、曲げ疲労強度および面圧疲労強度が低下する。従って、表層C含有量は、0.9mass%未満に限定した。
歯面表層の残留オーステナイト量:26〜40体積%
残留オーステナイトは、それ自体では軟質だが、それが歯面の表層に存在している場合、歯車の駆動中の応力によりマルテンサイトに変態し、硬化するので、曲げおよび面圧疲労に対して亀裂進展を抑制する効果を持つ。しかし、残留オーステナイト量が40体積%を超えると、逆に表層の硬さの低下が大きくなり過ぎて、曲げ疲労特性および面圧疲労特性は悪くなる。従って、残留オーステナイト量は、26〜40体積%に限定した。
組織:マルテンサイト単相組織
Si、V等を添加した場合、変態点の上昇により、焼入れ加熱温度でもオーステナイト単相にならず、フェライトが発生する。フェライトは、曲げ疲労破壊での亀裂の進行を早め、疲労強度が低下しやすい。従って、組織は、マルテンサイト単相に限定した。なお、フェライト発生回避については、各種元素の添加量を調整することにより可能である。
ショットピーニングのアークハイト:0.3mmA以上
ショットピーニングは、表層付近に圧縮残留応力を付与して曲げ疲労強度、面圧疲労強度をさらに上昇させる。この処理を行う場合、アークハイトが0.3mmA以下では圧縮残留応力の付与が少なすぎるために曲げ疲労強度、面圧疲労強度をさらに上げることができない。従って、ショットピーニングは、アークハイト0.3mmA以上で施すべきである。
この発明を実施例により比較例と対比し、さらに詳細に説明する。
表1に示す化学成分組成を有する鋼を溶解した。表1に示すNo.3、5〜10は、この発明の歯車の製造に用いた本発明鋼であり、No.11〜19は、この発明の範囲外である比較鋼である。そして、No.20、21は、従来鋼であり、それぞれJIS SCM420H、SCM822Hであり、同じく、この発明の範囲外である。
溶製した本発明鋼、比較鋼および従来鋼からなる各インゴットを熱間圧延して丸棒鋼を調製し、得られた丸棒鋼に対し焼準処理を実施して、本発明供試体No.3、5〜10、比較供試体No.11〜19および従来供試体No.20、21を得た。
焼準処理後の各供試体から、20mmφの各種特性試験用丸棒鋼、小野式回転曲げ疲労試験片およびローラーピッチング試験片を採取した。各種特性試験用丸棒鋼および各試験片に対して、図1に示すパターンに従って浸炭焼入れ・焼戻し処理を施した後、表面にアークハイト0.3mmAのショットピーニングを施し、各種特性試験、回転曲げ疲労試験およびローラーピッチング試験を実施した。その結果を、粒界酸化層、浸炭部γ粒度および表層C含有量の結果と併せて表2に示す。
以下にそれぞれの調査内容について説明する。
(1)有効硬化層深さ、内部の組織、内部靭性、内部硬度
20mmφの丸棒鋼を切断し、断面の硬度分布を測定し、ビッカース硬さで550HVの得られる深さを調査し、有効硬化層深さとした。また、各丸棒鋼の浸炭焼入れ・焼戻しにおける内部(非浸炭部)の組織を検鏡試験で観察し、フェライト析出の有無を確認した。さらに、内部よりJIS3号衝撃試験片を作製し、20℃における衝撃値を調査した。内部の硬度については、ビッカース硬度計を用いて測定した。
(2)表層残留オーステナイト
別の丸棒鋼を用いて、表層下20μm位置での残留γ量を測定した。なお、測定面の研磨には電解研磨を使用し、測定にはX線回折装置を使用した。
(3)回転曲げ疲労特性
直径32mmの丸棒鋼供試体から、平行部直径10mmの試験片を採取し、平行部にこれと直角方向の深さ3mmの切り欠き(切り欠き係数:1.4)を全周に亘って付けた回転曲げ疲労試験片を調製した。この試験片全数に対し、浸炭焼入れ・焼戻しを行った。その後、各供試体の試験片について半数にショットピーニング処理(アークハイト:0.3mmA)を行った。そして、各試験片のショットピーニング実施品、未実施品について、小野式回転曲げ疲労試験機を使用して107回を疲労限度として回転曲げ疲労試験を行い、回転曲げ疲労強度を測定した。
(4)ローラーピッチング試験(面圧疲労特性)
直径32mmの丸棒鋼供試体から図2に示す試験面の直径が26mm、幅が28mmの円筒部を有する試験片を作製した。さらに、直径70mmの丸棒鋼を用いて、鍛造により直径135mmとした後、焼準処理を行い、直径130mm、幅18mmの大ローラーを作製した。次いで、ローラー状試験片および大ローラーの浸炭焼入れ・焼戻し処理を行った。その後、それぞれの半数について回転曲げ疲労試験片と同じ条件でショットピーニング処理(アークハイト:0.3mmA)を実施した。そして、各試験片のショットピーニング実施品、未実施品について、ローラーピッチング試験機を使用して107回を疲労限度として試験を行った。そのときの試験条件は、回転数:1500rpm、すべり率40%、潤滑剤:ミッションオイル、油温:120℃であった。
Figure 0004798963
Figure 0004798963
表1および表2から以下の事項が明らかとなった。
本発明供試体No.3、5〜10は、従来供試体No.20、21に比べて、内部靭性、浸炭部γ粒度、残留γ量は同等であるものの、粒界酸化層が小さくなっており、そのため、回転曲げ疲労強度が向上した。また、Siにより焼戻し軟化抵抗が高いために面圧疲労強度が著しく上昇した。
これに対して、比較供試体No.11は、C含有量が本発明範囲より低く、Si含有量が本発明の範囲を超えて高いために、内部にフェライトが析出した。そのため内部の硬さが低すぎて、回転曲げ疲労強度が低下した。
比較供試体No.12は、C含有量が本発明の範囲を超えており、焼入れ性が高すぎる。そのため内部の靭性が低下した。また、残留γ量が多くなりすぎて浸炭層の硬度が低下し、回転曲げ疲労強度、面圧疲労強度共に低下した。
比較供試体No.13は、Cr含有量が本発明の範囲を超えて高い。そのため内部衝撃値が低くなりすぎたために、回転曲げ疲労強度が低下した。また、Al含有量が低すぎて、浸炭部γ粒が大きくなっているために面圧疲労強度が低下した。
比較供試体No.14は、Mn含有量が本発明の範囲より多く、そのために焼入れ性が高すぎた。このために、有効硬化層深さが深くなりすぎて、浸炭層に残留γが多過ぎた。この結果、回転曲げ疲労強度、面圧疲労強度共に低下した。
比較供試体No.15は、Mn含有量が本発明範囲より低いために、焼入れ性が低すぎて有効硬化層深さが浅すぎ、この結果、マトリックスの強度が不足して、回転曲げ疲労強度が低下した。
比較供試体No.16は、Cr含有量が本発明の範囲より少ないために、焼戻し軟化抵抗が低く、また、焼入れ性が低いために有効硬化層が浅かった。そのため、回転曲げ疲労強度、面圧疲労強度共に低下した。
比較供試体No.17は、Si含有量が本発明の範囲より少ないために、焼戻し軟化抵抗が低く、そのため面圧疲労強度が低下した。
比較供試体No.18は、Mo含有量が本発明範囲よりも低く、そのために焼入れ性が低すぎて内部硬さが低く、有効硬化層深さが浅いために回転曲げ疲労強度が低下した。
比較供試体No.19は、Al含有量が本発明範囲よりも高い。そのために結晶粒が大きくなりすぎて、回転曲げ疲労強度、面圧疲労強度共に低下した。
比較供試体No.20、21は、従来鋼のJIS SCM420H、SCM822Hであるが、Si含有量が本発明の範囲より低く、その結果、粒界酸化層が深くなり、回転曲げ疲労強度、面圧疲労強度共に低下した。
浸炭処理のパターンを示す図である。 ピッチング試験片の一例を示す図である。 粒界酸化層深さと曲げ疲労強度との関係を示すグラフである。 300℃焼戻し軟化量と面圧疲労強度との関係を示すグラフである。 Siの添加量と300℃焼戻し軟化量および粒界酸化層深さとの関係を示すグラフである。

Claims (6)

  1. C:0.10〜0.25%、
    Si:0.80〜1.20%、
    Mn:0.72〜2.00%、
    S:0.006%以上、
    Cr:1.00〜2.00%、
    Mo:0.20〜0.80%、
    Al:0.005〜0.200%、
    N:0.0050〜0.0200%(以上、mass%)
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼材を、鍛造あるいは機械加工により歯車形状に形成したものからなり、歯車形状に形成後、浸炭処理あるいは浸炭窒化処理を施した時の、表層のC含有量が0.9mass%未満、歯車の表層から100μm深さ位置までの残留オーステナイト量が26〜40体積%、且つ、組織がマルテンサイト単相であることを特徴とする高強度歯車。
  2. 前記鋼材は、
    Nb:0.010〜0.060%、
    V:0.05〜0.20%(以上、mass%)
    の少なくとも1種をさらに含有していることを特徴とする、請求項1記載の高強度歯車。
  3. 前記鋼材は、
    Ti:0.005〜0.050%、
    B:0.0005〜0.0100%(以上、mass%)
    をさらに含有していることを特徴とする、請求項1または2記載の高強度歯車。
  4. C:0.10〜0.25%、
    Si:0.80〜1.20%、
    Mn:0.72〜2.00%、
    S:0.006%以上、
    Cr:1.00〜2.00%、
    Mo:0.20〜0.80%、
    Al:0.005〜0.200%、
    N:0.0050〜0.0200%(以上、mass%)
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼材を、鍛造あるいは機械加工により歯車形状に形成して歯車材を調製し、次いで、前記歯車材に浸炭処理あるいは浸炭窒化処理を施し、さらに、アークハイト0.3mmA以上のショットピーニングを施して、表層のC含有量を0.9mass%未満、歯車の表層から100μm深さ位置までの残留オーステナイト量を26〜40体積%、且つ、組織をマルテンサイト単相とすることを特徴とする、高強度歯車の製造方法。
  5. 前記鋼材として、
    Nb:0.010〜0.060%、
    V:0.05〜0.20%(以上、mass%)
    の少なくとも1種をさらに含有したものを使用することを特徴とする、請求項4記載の、高強度歯車の製造方法。
  6. 前記鋼材として、
    Ti:0.005〜0.050%、
    B:0.0005〜0.0100%(以上、mass%)
    をさらに含有するものを使用することを特徴とする、請求項4または5記載の、高強度歯車の製造方法。
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