JP2003193197A - 高強度コイルばねおよびその製造方法 - Google Patents

高強度コイルばねおよびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、安価で耐衝撃性の高い高強度コイル
ばねとその製造方法を提供しようとするものである。 【解決手段】本発明になる高強度コイルばねは、重量比
で、C:0.6〜0.7%、Si:1.8〜2.2%、
Mn:0.7〜0.9%、Cr:0.5〜0.8%、
V:0.05〜0.15%、を含有し、残部Fe及び不
可避的不純物からなり、不可避的不純物のうち、P:
0.05%以下、S:0.025%以下、Cu:0.2
%以下であって、最大非金属介在物が15μmである鋼
のオイルテンパー線を素材として使用し、コイリング、
マイクロショット、440〜475℃での窒化処理、二
段ショットピーニングを施すことにより、表層部(表面
から0.02mm付近の)硬さがHv600〜800で
あることを特徴とするものである。ここで、オイルテン
パー線は、引張強さが1960MPa以上、絞りが38
%以上であることが望ましい。上記の条件の組合わせで
製造することにより、安価で耐衝撃性の高い高強度コイ
ルばねを得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オートマティック
車の自動変速機のクラッチトーションのダンパースプリ
ングやエンジンの弁ばねに使用する高強度コイルばねに
関する。
【0002】
【従来の技術】現在、弁ばねの材料として規格化されて
いるのは、JISG3561のSWO−V、SWOCV
−VおよびSWOSC−Vの3種類である。なかでもシ
リコンクロム鋼オイルテンパー線であるSWOSC−V
は、耐疲労強度および耐へたり性に優れているため広範
囲に使用されている。しかし、自動車エンジン用のバル
ブスプリングや自動変速機用のダンパースプリング(以
降、ばねと称す)等に用いられるコイルばねでは、高速
回転化やコンパクト化のニーズが高いために、つねに高
強度化、高耐疲労性、または軽量化などが求められてい
る。これらの要求に応えるべく、材料組成や熱処理方法
などの改良について多くの研究がなされている。
【0003】例えば、特開平11−246943号公報
では、重量%でC:0.5〜0.8%、Si:1.2〜
2.5%、Mn:0.4〜0.8%、Cr:0.7〜
1.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物から
なり、不可避的不純物であるAl含有量が0.005%
以下、同Ti含有量が0.005%以下であって、最大
非金属介在物が15μmである鋼に、焼入れ加熱温度を
950℃以上1100℃以下として焼入れ・焼戻しを施
したオイルテンパー線を素材として使用し、コイリング
後、窒化処理を施したことを特徴とする高強度弁ばねに
ついて開示している。ここでは、Siの添加量を通常よ
りも高くすることにより、焼戻し温度を上げることを可
能にし、さらにこの焼戻し温度の上昇に伴って窒化処理
温度をも上げることで、ばねの表面硬さを硬くして疲労
強度および耐へたり性の向上を図ったものである。
【0004】しかし、この窒化処理温度を上昇可能とす
る方法では、Si添加量が高いこと、および処理温度が
高いことから、従来の方法に比べて表面近傍に窒化物や
炭窒化物を主体としたいわゆる白層が発生しやすくな
る。この白層は非常に硬くて脆いという性質があるた
め、特に自動変速機のクラッチトーション用のダンパー
スプリングなどの大きな衝撃力を受けるような場合に
は、スプリングの耐衝撃性の低下に繋がるこという大き
な難点が考えられる。さらに、高温での窒化処理はコス
トアップ要因ともなり、昨今のコスト削減要請には応え
られない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
点に鑑みてなされたもので、安価で耐衝撃性の高い高強
度コイルばねとその製造方法を提供しようとするもので
ある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明になる高強度コイ
ルばねは、重量比で、C:0.6〜0.7%、Si:
1.8〜2.2%、Mn:0.7〜0.9%、Cr:
0.5〜0.8%、V:0.05〜0.15%、を含有
し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、不可避的不
純物のうち、P:0.05%以下、S:0.025%以
下、Cu:0.2%以下であって、最大非金属介在物が
15μmである鋼のオイルテンパー線を素材として使用
し、コイリング、マイクロショット、400〜475℃
での窒化処理、二段ショットピーニングを施すことによ
り、表層部(表面から0.02mm付近の)硬さがHv
600〜800であることを特徴とするものである。
【0007】ここで、オイルテンパー線は、引張強さが
1960MPa以上、絞りが38%以上であることが望
ましい。
【0008】上記の条件の組合わせで製造することによ
り、耐衝撃性の高い高強度コイルばねを得ることができ
る。
【0009】
【発明の実施の形態】(ばね素材)本発明になる高強度
コイルばねは、重量比で、C:0.6〜0.7%、S
i:1.8〜2.2%、Mn:0.7〜0.9%、C
r:0.5〜0.8%、V:0.05〜0.15%、を
含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、不可避
的不純物のうち、P:0.05%以下、S:0.025
%以下、Cu:0.2%以下であって、最大非金属介在
物が15μmである鋼のオイルテンパー線を素材とする
ことを特徴とするものである。
【0010】ここで、オイルテンパー線の組成の限定理
由は以下の通りである。
【0011】C:0.6〜0.7% Cは鋼線の強度を高めるために必須の元素であるが、
0.6%未満では充分な強度が得られず、0.7%を越
えると靱性が低下し、さらに鋼線のキズ感受性が増大し
て信頼性が低下する。
【0012】Si:1.8〜2.2% Siはフェライトの強度を向上させ、耐へたり性を向上
させるのに有効な元素である。1.8%未満ではその十
分な効果がなく、2.2%を越えると冷間加工性を低下
させるとともに熱間加工性や熱処理による脱炭を助長す
る。すなわち、コイルばねの成形性を低下させることに
なる。
【0013】Mn:0.7〜0.9% Mnは鋼の焼入れ性を向上させ、鋼中のSを固定してそ
の害を阻止するが、0.7%未満ではその効果がなく、
0.9%を越えると靱性が低下する。
【0014】Cr:0.5〜0.8% CrはMnと同様に、鋼の焼入れ性を向上させ、かつ熱
間圧延後のパテンティング処理により靱性を付与し、焼
き入れした後、焼戻し時の軟化抵抗性を高め、高強度化
するのに有効な元素である。0.5%未満ではその効果
が少なく、0.8%を越えると炭化物の固溶を抑制し、
強度の低下を招くとともに、焼入れ性の過度の増大とな
って靱性の低下をもたらす。
【0015】V:0.05〜0.15% Vは焼戻し時に炭化物を形成し、軟化抵抗を増大させる
元素であるが、0.05%未満では炭化物の形成が極め
て少ないためにその効果は小さい。また、0.15%を
越えると焼入れ加熱時に炭化物が粗大化して靱性の低下
を招く結果となる。
【0016】次に、鋼線の最大非鉄金属介在物は15μ
mであることが望ましい。この非金属介在物はAl23
やTiOからなることが多いが、これらの介在物は硬質
であるため、鋼線の表面付近に存在した場合には疲労強
度を著しく低下させる。最大非鉄金属介在物は15μm
より小さければあまり問題とはならない。
【0017】本発明に用いるオイルテンパー線は、引張
強さが1960MPa以上、絞りが38%以上であるこ
とが望ましい。引張強さが1960MPa未満では、ば
ねの疲労強度が低下して望ましくない。好ましくは19
60〜2300MPaである。また、絞りが38%未満
では、ばねの成形が問題となるので、38〜55%が適
当である。(コイルばねの製造方法)本発明の高強度コ
イルばねは、前記の機械的性質を有するオイルテンパー
線を用いて、コイリング成形後、窒化処理の前に均一な
窒化層を得るためにディスケーリング処理としてマイク
ロショットを行い、次に、第1ショットピーニングと第
2ショットピーニングとを実施して得られる。
【0018】本発明のコイルばねに使用される線材は、
窒化処理により表面部が窒化されて表面部の硬度が高く
なる鋼材である。特に、高強度ばね用として従来より使
用されているMo、Vを含む合金鋼オイルテンパー線と
か、合金鋼硬引線が適している。かかる線材は、酸化皮
膜をもつものが好ましい。酸化皮膜は、その後の工程の
コイリング成形を容易にする作用を有する。
【0019】まず初めに、ばね用低合金鋼オイルテンパ
ー線を冷間コイリングしてばね状に成形する。その後、
低温熱処理を施してコイル成形時に生じた残留応力や残
留歪みを除去することが好ましい。また、合金鋼硬引線
に対しては、焼入れ焼戻し処理を施してその硬度を高く
するのが好ましい。
【0020】次に、窒化に先立ってディスケール処理を
行う。ディスケール処理は、コイル成形されたばね素材
の表面の酸化皮膜を除去する工程で、酸化皮膜を取除く
ことにより均一な窒化を可能とするものである。
【0021】なお、ディスケール処理では、ばね素材の
表面粗さで、表面粗さの最大高さ粗さRmaxを5μm以
下にするのが好ましい(JIS B 0601「製品の
幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用
語、定義及び表面性状パラメータ」が2001年1月に
改正され、最大高さ粗さの表記はRZと改訂されたが、
従前の十点平均粗さRZとの誤解を避けるために本明細
書では、最大高さ粗さをRmaxと表記する)。Rmaxが5
μmを越えると、窒化の均一性が不十分となり、また、
得られたコイルばねの表面研磨が必要となる。
【0022】ディスケール処理としては、ばね素材の表
面粗さを増大させないように、比較的弱くブラストされ
るような条件、すなわち、マイクロショットを使用して
ショットピーニングして行う。マイクロショットとして
は、比較的軟らかいガラスビーズや砥粒を使用すると
か、直径0.3mm以下の細かいカットワイヤを使用す
る、あるいは直径0.3mm以下のスティールショット
を使用するという方法などを例示することができる。こ
れらの方法により、ばね素材の表面粗さの最大高さ粗さ
maxを5μm以下にすることができる。
【0023】ディスケールをマイクロショットで実施す
ることで、酸化皮膜が除去できるとともに、次の工程の
窒化を容易にすることができる。
【0024】窒化処理は、窒素ガスまたはアンモニアガ
ス等の雰囲気中で行うことができるが、窒化処理条件
は、400〜475℃で2〜4時間が望ましい。窒化処
理温度が400℃未満では、硬化不足となり、また、4
75℃を越えると内部硬さが低下して、衝撃性の高い高
強度コイルばねを得ることが出来ない。
【0025】さらに、窒化処理時間が2時間未満では、
窒化処理に伴う硬化層の形成が不均一となり、また、4
時間を超えても、長時間処理に見合うより有効な窒化層
を得ることは出来ないので、製造コストを押上げるとい
う不都合を生じる。
【0026】以上の窒化処理で得られたコイルばねの表
面硬さは、表面から0.02mm入った位置での硬さ
が、Hv600〜800である。この硬さが、Hv60
0未満では次工程の二段ショットピーニングで十分な圧
縮残留応力を形成することができないために、コイルば
ねの疲労強度が低下する。一方、Hv800を越えると
耐衝撃性が低下してしまい、本発明の課題である耐衝撃
性の高い高強度コイルばねを得ることが出来ない。
【0027】ショットピーニング工程は、表面部が窒化
処理されて硬化したコイルばねの表面から内部深く、か
つ表面での残留応力を大きく付与して、コイルばねの疲
労強度を高めることを目的に実施するものである。その
ため、第1ショットピーニング工程では、まず粒径の大
きいショットを、例えば高速でコイルばねに投射して表
面より内部の深い位置まで残留応力を付与させる。
【0028】第2ショットピーニング工程では、第1シ
ョットピーニング工程で使用したショットより粒径が小
さいショットを使用して再度投射を行う。この工程によ
って表面部にさらに大きな残留応力を付与する。第1シ
ョットピーニング工程で使用したショットより硬度の高
いものを使用したり、あるいはショットを高速で投射す
ることでその効果をより高めることができる。
【0029】以上の工程によって、表面の残留応力が高
く、かつ内部の深い位置にまで残留応力が付与できるの
で、コイルばねの疲れ強さを大幅に向上させることがで
きる。 さらに、最終の低温焼きなましを施すことが好
ましい。
【0030】第1ショットピーニング工程で使用される
ショットとしては、内部の深い位置まで残留応力を付与
するために、0.4〜1.0mmの径で、硬さがHv5
00〜800の範囲のものが好ましい。
【0031】第2ショットピーニング工程では、ショッ
トの径が第1ショットピーニング工程で使用したものよ
りも小さいものを使用することが望ましい。表面部の残
留応力を高めるためには、ショット径は0.05〜0.
3mm程度で、その硬さがHv700〜900のものを
使用することが好ましい。この場合には高圧エアーによ
るのショットの投射が望ましく、この高圧での投射で表
面付近に著しく高い残留応力を形成することができるの
である。
【0032】その後、低温焼きなましを施すことが望ま
しい。
【0033】以上のようにして、従来よりも安価で高い
耐衝撃性を有する高強度コイルばねを得ることが出来
る。この高強度コイルばねは、オートマティック車の自
動変速機のクラッチトーション用ダンパースプリングや
エンジンの弁ばねに好適に使用することができる。
【0034】
【実施例】以下、実施例により具体的に説明する。 [試料の調製] (実施例1)コイルばねの線材として、C:0.64重
量%(以下、特に明記しない限り重量%とする)、S
i:2.06%、Mn:0.78%、Cr:0.70
%、V:0.07%で、不可避的不純物としては、P:
0.008%、S:0.014%、Cu:0.04%を
含み、残部がFeとからなる合金鋼をオイルテンパーし
て、引張り強さが2103MPa、絞りが50.7%の
合金鋼オイルテンパー線を用いた。このオイルテンパー
線の最大非金属介在物は 13μmであった。
【0035】前記のオイルテンパー線をコイリングし、
線径:2.3mm、コイル中心径:11.7mm、総巻
数:11.5巻、有効巻数:9.5巻、自由高さ:5
8.2mm、ばね定数:17.9N/mm2のコイルば
ねを成形した。
【0036】次に、このコイルばねを435℃で10分
間熱処理してコイル成形時に生じた残留応力や残留歪み
を除去した。その後、直径が0.2mmで、硬度Hv5
50のスチールボールを使用して20分間のマイクロシ
ョットを施して、表面の酸化皮膜を除去した。
【0037】次に、アンモニアガス雰囲気下で420
℃、3時間のガス窒化を行い、コイル表面に窒化層を形
成した。
【0038】第1ショットピーニング工程は、窒化処理
後に直径0.6mmでHv600のラウンドカットワイ
ヤを使用して、73m/sの条件で10分間のショット
ピーニングを行った。
【0039】第2ショットピーニング工程は、直径0.
25mmでHv800のラウンドカットワイヤを、エア
ーで5分間投射して、ショットピーニングを施した。次
いで225℃、10分間の低温焼きなましを実施して、
異常に大きな内部歪みを除去し、コイル表面に圧縮残留
応力を付与して実施例1の高強度コイルばねを得た。 (実施例2)実施例1と同一組成で、同一の機械的性質
を有するオイルテンパー線を用いて、窒化処理条件を4
40℃、3時間とした以外は、実施例1と全く同様の形
状と製造工程および製造条件で、実施例2の高強度コイ
ルばねを得た。 (実施例3)実施例1と同一組成で、同一の機械的性質
を有するオイルテンパー線を用いて、窒化処理条件を実
施例2と同様の440℃、3時間とし、第2ショットピ
ーニングを、直径0.6mmでHv800のラウンドカ
ットワイヤを用いて、ショット速度を40m/secと
して10分間投射した以外は、実施例1と全く同様の形
状と製造工程および製造条件で、実施例3の高強度コイ
ルばねを得た。 (実施例4)実施例1と同一組成で、同一の機械的性質
を有するオイルテンパー線を用いて、窒化処理温度を4
60℃とした以外は、実施例1と全く同様の形状と製造
工程および製造条件で、実施例4の高強度コイルばねを
得た。 (実施例5)実施例1と同一組成で、同一の機械的性質
を有するオイルテンパー線を用いて、窒化処理温度を4
75℃とした以外は、実施例1と全く同様の形状と製造
工程および製造条件で、実施例5の高強度コイルばねを
得た。 (比較例1)従来のSWOXX−V鋼材、すなわち、
C:0.64%、Si:1.4%、Mn:0.7%、C
r:1.5%、Mo:0.5%、V:0.15%で、不
可避的不純物としては、P:0.0015%、S:0.
03%、Cu:0.02%のオイルテンパー線を用い
て、実施例1と同様の形状のコイルばねを形成して比較
例1とした。
【0040】ここで、オイルテンパー線の引張強さは、
2110MPa、絞りは、40%であった。また、窒化
処理条件は500℃、4時間とし、第1ショットピーニ
ング工程は、窒化処理後に直径0.8mmでHv700
のラウンドカットワイヤを使用して、73m/sの投射
速度で60分間のショットピーニングを実施した。
【0041】第2ショットピーニング工程は、直径0.
25mmでHv800のラウンドカットワイヤをエアー
で5分間ショットして第2ショットピーニングとした。
次いで225℃、10分間の低温焼きなましを施して、
実施例1と同様に異常に大きな内部歪みを除去し、コイ
ル表面に圧縮残留応力を付与して比較例1の高強度コイ
ルばねを得た。得られたコイルばねのばね定数は、1
7.9N/mm2であった。 [評価] (評価方法)上記で得られた各試料を硬さ試験及び衝撃
試験によって評価した。また、実施例2および実施例5
については耐久試験を実施した。
【0042】硬さ試験は、得られた各試料の断面を研磨
して、マイクロビッカース(荷重50g)で、ばねの表
面から内部へ0.02mm入った部分を測定した。結果
を0.02mmの硬さとして表1に示す。
【0043】衝撃試験は、図1に示す衝撃試験機で測定
した。すなわち、試料ばね1の下部にスペーサ5を配置
し、潤滑油6の塗布してある試験台3上に載置する。次
に、圧縮プレート2と一体的に接合されているリング状
のケース4を試料ばね1の上部からはめ込んで、所定の
荷重Wを負荷して試料ばねを圧縮する。この時の荷重W
は375Nである。しかる後に、スペーサ5を水平方向
に急激にスライドさせて、試料ばね1の下部から除去す
る。試料ばね1は、瞬時にスペーサ5の厚さ分だけ下方
に伸びて、試験台3の表面に激突することとなる。この
激突の衝撃力による試料ばねの折損の有無を調べるもの
である。なお、スペーサ5を除去した場合の荷重Wは、
200Nであった。
【0044】試料ばねの個数は、実施例1〜5および比
較例1ともに各5個ずつとし、折損しなかった試料ばね
の個数をばね未折損数として、窒化処理温度およびばね
表面から0.02mm内部の硬さとともに表1に示し
た。
【0045】試料ばねの耐久試験は、実施例2および5
についてのみ実施した。各実施例で得られた各8個の試
料ばねについて、以下の条件で耐久試験を実施した。
【0046】すなわち、540±520MPaの繰返し
応力を、600cpmの速度で各試料ばねに負荷し、繰
返し回数が1×107で破損のない場合を合格とした。
なお、この耐久試験は室温で実施した。この耐久試験条
件は、従来品(比較例1)の合格基準である。
【0047】
【表1】
【0048】(評価結果)表1の実施例1、2、4およ
び5から窒化温度の上昇に伴い0.02mm硬さが上昇
していることが分る。しかし、その範囲は、本発明の特
徴であるHv600〜800の間となっており、比較例
1のHv900に比べて低く、靱性の改善されたことを
示している。
【0049】また、衝撃試験によるばね未折損数は、実
施例2では、試料ばね5本中5本全部が未折損であった
が、比較例1では5本全てが折損してしまい、本発明に
よる衝撃性の改善は顕著であることが分る。
【0050】実施例3は、第2ショット条件以外は実施
例2と同様に実施して得られたものである。すなわち、
第2ショット条件を変化させても比較例1の耐衝撃性を
上回ることが分った。
【0051】実施例2および実施例5に対して実施した
耐久試験では、いずれの場合も、繰返し回数が1×10
7回終了後でも8本の試料ばね全部が破損せず合格であ
った。
【0052】すなわち、本発明により、従来の比較例1
と同程度の耐久性を有し、かつ比較例1よりも耐衝撃性
の高い高強度コイルばねを得ることが出来た。
【0053】
【発明の効果】本発明では、コイルばねの素材であるオ
イルテンパー線の組成及び機械的性質を限定し、さらに
製造方法、特に窒化処理温度を400〜475℃に規定
して、表面硬さ(表面から0.02mmの硬さ)をHv
600〜800とすることで、従来よりも安価で高い耐
衝撃性を有する高強度コイルばねを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料ばねの衝撃試験方法を示す衝撃試験機の縦
断面の概略図である。
【符号の説明】
1:試料ばね 2:圧縮プレート 3:試験台 4:ケ
ース 5:スペーサ 6:潤滑油 W:荷重

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量比で、C:0.6〜0.7%、Si:
    1.8〜2.2%、Mn:0.7〜0.9%、Cr:
    0.5〜0.8%、V:0.05〜0.15%、を含有
    し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、前記不可避
    的不純物のうち、P:0.05%以下、S:0.025
    %以下、Cu:0.2%以下、最大非金属介在物が15
    μmである鋼のオイルテンパー線を素材とし、コイリン
    グ、マイクロショット、400〜475℃での窒化処
    理、二段ショットピーニングを施し、表面から0.02
    mmの硬さがHv600〜800であることを特徴とす
    る高強度コイルばね。
  2. 【請求項2】前記オイルテンパー線は、引張強さが、1
    960MPa以上、絞りが38%以上である請求項1記
    載の高強度コイルばね。
  3. 【請求項3】重量比で、C:0.6〜0.7%、Si:
    1.8〜2.2%、Mn:0.7〜0.9%、Cr:
    0.5〜0.8%、V:0.05〜0.15%、を含有
    し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、前記不可避
    的不純物のうち、P:0.05%以下、S:0.025
    %以下、Cu:0.2%以下、最大非金属介在物が15
    μmである鋼のオイルテンパー線を素材として使用し、
    コイリング、マイクロショット、400〜475℃での
    窒化処理、二段ショットピーニングを施し、表面から
    0.02mmの硬さがHv600〜800であることを
    特徴とする高強度コイルばねの製造方法。
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