JPH1136060A - 肌焼鋼材の熱処理歪み防止焼入れ方法 - Google Patents

肌焼鋼材の熱処理歪み防止焼入れ方法

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JPH1136060A
JPH1136060A JP19423297A JP19423297A JPH1136060A JP H1136060 A JPH1136060 A JP H1136060A JP 19423297 A JP19423297 A JP 19423297A JP 19423297 A JP19423297 A JP 19423297A JP H1136060 A JPH1136060 A JP H1136060A
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quenching
steel
carburizing
ferrite
range
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JP19423297A
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Toyoaki Eguchi
豊明 江口
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Toa Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 浸炭焼入れによる歪みの吸収能力の大きなミ
クロ組織を有する鋼材を、安価な成分組成の鋼に対する
焼入れ方法を見い出すことにより開発する。 【解決手段】 浸炭深さが1mmを超えるようなものの
場合、従来の肌焼鋼材をA3 +50℃以上の温度で0.8 〜
1.4wt.% の範囲内の炭素ポテンシャルで浸炭・拡散処理
し、表層部炭素を0.6 〜0.9wt.% に低下させ、次いでA
1 +10℃超えからA3 までのオーステナイト/フェライ
トの二相温度域を0.1 〜5 ℃/分の冷却速度で冷却し、
非浸炭部のミクロ組織のフェライト面積率を10〜50%生
成させた後、A1 +10℃以上から焼入れる。浸炭深さが
0.5 mm程度の場合には、上記方法において浸炭を0.6
〜0.9wt.% とし、拡散処理せずに同様に行なう。 【効果】 通常の軟窒化と同様の低歪みで、軟窒化より
も歯元内部硬さの高い高強度歯車の製造が安価に行なえ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、肌焼鋼の浸炭窒
化熱処理方法、特に焼入れ時の歪みが少なく、騒音の少
ない自動車のトランスミッション用歯車等を製造するの
に適した肌焼鋼の浸炭窒化熱処理方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動車用歯車には、耐疲労強度
及び表面の耐摩耗性を保証するために、SCr420、
SCM420及びSNCM420等の肌焼鋼が使用され
ている。そして、歯車の製造に当たっては、上記肌焼鋼
の丸棒を歯車に近い形状に熱間鍛造した後、切削加工し
て歯車とし、更に浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れ(以
下、浸炭焼入れと総称する)を施して表面を硬化させて
いる。しかしながら、浸炭焼入れを施すと、マルテンサ
イト変態に伴う膨張のため、歯車に歪みが生じる。
【0003】即ち、炭素濃度の比較的低い低合金鋼の表
面に炭素や窒素を浸透させ、次いで焼入れ・焼戻しを施
し、歯表面部をマルテンサイトにして硬化させ、しかも
歯車の靱性を確保するために歯車芯部を一部マルテンサ
イトあるいはベイナイトを含んだフェライト+パーライ
ト組織にする。ここで、図7に歯車の歯内部(歯元内部
及び歯車芯部)と表面とを説明する概略斜視図を示す。
歯車芯部とは、図7の符号8の領域で示される歯車の中
央部であり、また、同図の符号6及び7で示される領域
をそれぞれ、歯表面部及び歯元内部という。上記焼入れ
時の冷却速度は歯元内部の方が歯車芯部よりも速いの
で、歯元内部のミクロ組織は、焼入れ組織であるマルテ
ンサイトと一部ベイナイトとの混合組織となる。この
時、オーステナイトからマルテンサイトへの変態時の膨
張による変態応力が発生する。そのため、歯車に歪みが
生じ、歯車精度を維持することができない。特に、自動
車のトランスミッション系の歯車の歪みは、実車におけ
る歯車騒音発生の最大の原因となっている。そこで、焼
入れ後に歯形の修正を行なう研削を施すのが普通であ
り、大幅なコストアップを招いている。
【0004】以上のような歪み防止対策として、特開平
2−277744号公報にはNb、Al及びTiを添加
して結晶粒を微細化する方法が開示されている(先行技
術1)。しかし、この方法では浸炭加熱時の結晶粒の粗
大化に伴う歪みは防止することができるが、マルテンサ
イト変態応力による歪みは防止できない。従って、歪み
を十分に小さく抑制することはできない。
【0005】また、特開昭60−161942号公報に
は、C:0.03〜0.2wt.%、Si:1.5〜3.0
wt.%、Mn:0.2〜2.0wt.%、Ti:0.03〜
0.30wt.%を含む鋼を高温浸炭処理するに際して、心
部をオーステナイトとフェライトとの二相組織にする方
法が開示されている(先行技術2)。しかし、フェライ
ト形成元素であるSi濃度を高めることによってフェラ
イト相を確保する方法においては、Siが鋼材表面から
のCの進入を妨げる元素であるので、逆に浸炭性の低下
を招き、これを改善するために浸炭時間を長くしたり、
MoやCrを多量に添加しなければならず、コストアッ
プにつながる。
【0006】一方、浸炭焼入れによる歪み発生を回避す
るため、特開昭55−152175号公報には、軟窒化
処理を施す方法が開示されている(先行技術3)。しか
しながら、軟窒化では、硬化層の深さが0.2mm程度
の浅いものしか得られず、歯車表面にピッチングが発生
しやすく、大きな面圧のかかる大型歯車には不向きで、
小型の歯車にしか適用できない。また、窒化処理では、
深い硬化層を得るには20〜40時間という長い時間を
要し、これもコストアップの大きな原因となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、先行
技術1〜3には次のような問題点がある。即ち、大型歯
車用に必要な浸炭深さの大きな浸炭に対しては長時間の
処理を要したり、MoやCrのような高価な合金元素の
多量添加が必要であったり、また、なおも焼入れ歪みが
十分には抑制されず、歪みの修正研削の問題を解消する
には至っていない。
【0008】そこで、本発明者等は、従来一般に使用さ
れている安価な成分組成の鋼を用いて所定の歯車形状に
切削加工した後、浸炭焼入れを行なった場合、この焼入
れによる歪みの吸収能力の大きなミクロ組織を有する鋼
材となるような焼入れ方法を見い出すことを課題として
取り組んだ。かくして、この発明の目的は、特殊な成分
組成の鋼を用いることなく、歯車等鋼材の浸炭焼入れ後
に、歯形等鋼材形状の修正研削を必要としないような肌
焼鋼材の焼入れ方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上述した
観点から、低歪み肌焼鋼材を開発すべく鋭意研究を重ね
た。その結果、歯車形状等、所要の形状に加工された肌
焼鋼材を一定温度以上の高温で浸炭処理を行ない、これ
をオーステナイト/フェライトの二相温度域を適切な冷
却速度で冷却し、上記肌焼鋼材の非浸炭部のミクロ組織
を適切なフェライト+マルテンサイトの混合組織にする
ことにより、マルテンサイト変態の膨張に伴う歪みを軟
質なフェライトに吸収させることができ、歯形等、当初
の加工形状の修正研削を必要としないという知見を得
た。
【0010】この発明は、上述した知見に基づきなされ
たものであって、下記特徴を有するものである。請求項
1記載の肌焼鋼材の熱処理歪み防止焼入れ方法は、従来
使用されている肌焼鋼材の成分組成、即ち、C、Si及
びMnを含むか、又は、C、Si及びMn、並びに、C
r、Ni及びMoからなる群から選ばれた1種以上の合
金元素を含む成分組成を有する肌焼鋼材を浸炭焼入れす
る際に、A3 +50℃以上の温度で、0.8wt.%から
1.4wt.%まで(0.8〜1.4wt.%と記す。その他の
場合もこれに準じる)の範囲内の炭素ポテンシャルを有
する媒材中で上記肌焼鋼材を浸炭処理し、次いでこうし
て浸炭された肌焼鋼材を拡散処理し、その表層部の炭素
濃度を0.6〜0.9wt.%の範囲内に低下させ、次いで
上記肌焼鋼材をA1 +10℃超えからA3 までの温度範
囲内のオーステナイト/フェライトの二相温度域を0.
1〜5℃/分の範囲内の冷却速度で冷却し、上記肌焼鋼
材の非浸炭部のミクロ組織に関してフェライトを面積率
で10〜50%の範囲内で生成させた後、A1 +10℃
以上の温度から焼入れることに特徴を有するものであ
る。
【0011】また、請求項2記載の肌焼鋼材の熱処理歪
み防止焼入れ方法は、請求項1と同じように、従来使用
されている肌焼鋼材の成分組成を有する肌焼鋼材を浸炭
焼入れする際に、A3 +50℃以上の温度で、0.6〜
0.9wt.%の範囲内の炭素ポテンシャルを有する媒材中
で上記肌焼鋼材を浸炭処理し、次いで上記肌焼鋼材をA
1 +10℃超えからA3 までの温度範囲内のオーステナ
イト/フェライトの二相温度域を0.1〜5℃/分の範
囲内の冷却速度で冷却し、上記肌焼鋼材の非浸炭部のミ
クロ組織に関してフェライトを面積率で10〜50%の
範囲内で生成させた後、A1 +10℃以上の温度から焼
入れることに特徴を有するものである。
【0012】但し、上記の従来使用されている肌焼鋼材
の成分組成とは、所謂肌焼鋼であって、Cを0.12〜
0.24wt.%、含み、他にSi及びMnを適量含む炭素
鋼、及び上記炭素鋼に更に、Ni、Cr、Mo、V及び
B等の合金元素を適量含む低合金鋼乃至ボロン鋼、並び
にこれらに準じるものを指し、例えば、JIS G40
52で規定された「焼入れ性を保証した構造用鋼鋼材
(H鋼)」にある化学成分の「種類の記号」が、SCM
420H(クロムモリブデン鋼)、SCr420H(ク
ロム鋼)、SCM822H(クロムモリブデン鋼)、S
Mn420H(マンガン鋼)及びSNCM420H(ニ
ッケルクロムモリブデン鋼)はそれに該当し、その他に
JIS G4102〜G4106で規定された鋼材も対
象となる。この発明の対象とする肌焼鋼の上記炭素鋼及
び低合金鋼乃至ボロン鋼には、その成分組成に更にN
b、Ti、及びAl等の結晶粒微細化元素を含ませても
よい。また、上記いずれの成分組成の鋼材に対しても快
削性付与元素として、Pb、Bi、S、Se及びTe等
を含ませてもよい。
【0013】そして、この発明の対象とする肌焼鋼材と
は、比較的炭素濃度の低い材料の表面から炭素及び/又
は窒素を浸透させて、高炭素及び/又は高窒素濃度の表
層部を形成し、次いで、これを焼入れすることにより、
表層部を硬化させると共に内部の靱性を向上させるのに
適した、上述した通りの化学成分組成を有する鋼材、及
びそのような鋼材が所定の形状、例えば歯車等に加工さ
れた成形品をいう。なお、この発明は、浸炭焼入れにお
いてのみならず、浸炭窒化焼入れにおいても同じく適用
される。
【0014】
【発明の実施の形態】この発明の方法は、肌焼鋼を素材
として所要の形状に加工された鋼材(歯車等の機械部品
を含む)に対して、上述した条件の、浸炭及び拡散並び
に熱処理を施すと共に、その途中において上述したミク
ロ組織を生成させることを伴うものである。以下に、こ
の発明における各種条件の限定理由を説明する。
【0015】(1)浸炭温度:A3 +50℃以上 浸炭時の温度がA3 +50℃未満では、鋼中炭素の拡散
速度が遅く、内部への進入に長時間を要するので、浸炭
時間はA3 +50℃以上とする。なお、浸炭の加熱時間
は、所望の浸炭深さに応じ、公知の加熱時間と浸炭深さ
との関係推定式等を用いて定める。
【0016】(2)表層部の炭素濃度:0.6〜0.9
wt.%、及び、浸炭時の炭素ポテンシャル:0.8〜1.
4wt.%、又は0.6〜0.9wt.% 浸炭後の肌焼鋼材表層部の炭素濃度を、0.6〜0.9
wt.%の範囲内に調整するのは、焼き入れ後の表層部(例
えば、歯車の歯表面部)全域をマルテンサイトに変態さ
せ、且つ、所要の表面硬さ(HV=600以上)のミク
ロ組織を得るために必要なためである。
【0017】また、請求項1においては、浸炭時の炭素
ポテンシャルを0.8〜1.4とする。これは、大物部
品において浸炭深さが1.0mmを超えるような深い硬
化層深さを得る場合には、高い炭素ポテンシャルで浸炭
して表面の炭素濃度を高くした後、0.6〜0.9wt.%
の表面炭素濃度になるように拡散処理を施す。こうする
ことによって浸炭処理時間の短縮が可能になるからであ
る。しかし、硬化層深さが0.5mm程度の比較的浅い
ものでよい場合には、始めから0.6〜0.9wt.%の炭
素ポテンシャルで浸炭すればよい。従って、請求項2に
おいては浸炭時の炭素ポテンシャルを0.6〜0.9w
t.%の範囲内とする。
【0018】(3)焼入れ前における二相温度域の冷却
速度:0.1〜5℃/分 オーステナイト/フェライトの二相温度域の冷却速度が
5℃/分より速いと、非浸炭部において、面積率で10
%以上のフェライト量を得ることができない。一方、そ
の冷却速度が0.1℃/分より遅いと、非浸炭部におい
て、フェライト量を50%以下にすることができない。
従って、二相温度域の冷却速度は、0.1〜5℃/分の
範囲内にする。
【0019】(4)ミクロ組織:フェライトの面積率=
10〜50% 非浸炭部におけるミクロ組織(例えば、歯車においては
歯元内部及び歯車芯部でのミクロ組織)をフェライトに
するのは、この発明において極めて重要であり、前述し
たように、浸炭焼入れ時のマルテンサイト変態に伴う体
積膨張による応力(変態応力)を、フェライト形成領域
に吸収させ、歪み発生を防止するためである。この場
合、フェライト面積率が10%未満では歯車等鋼材に発
生した変態応力を十分に吸収できず、歪み発生を十分に
抑制することができない。なお、フェライトが50%を
超えると、材料強度が不足するので、フェライト面積率
は50%以下にすることが必要である。更に、最適なフ
ェライト量は、面積率で20〜30%の範囲内である。
そして、焼入れ後のミクロ組織はフェライト+マルテン
サイトの二相組織にする。このとき、マルテンサイトに
残留オーステナイトやベイナイトが一部混じっても差し
支えない。なお、焼入れ後は通常、150〜200℃の
範囲内程度の温度で焼戻しを施す。
【0020】
【実施例】次に、この発明を、実施例によって更に詳細
に説明する。表1に、この試験で使用した8種の肌焼鋼
材の鋼種(記号)及び化学成分組成を示す。但し、同表
に示した化学成分組成はすべて従来使用されている肌焼
鋼材の化学成分組成に含まれるものである。これら8種
の鋼材のそれぞれについて変態点測定試験を行ない、得
られたA1 及びA3 温度を表1に併記する。
【0021】
【表1】
【0022】表1に示した各肌焼鋼材を、図5及び6に
示す焼入れ歪み測定用のUSネイビー試験片と、図7に
示す歯車のミクロ組織及び硬さ測定用のスパーギアーと
の2種に加工した。
【0023】図5は、ネイビーC試験片の正面図であ
り、2は開口部、3は円形状空間で、oはネイビーC試
験片1の中心、aは60mm、cは34.8mm、そし
てdは6mmである。図6は、図5の側面図であり、ネ
イビーC試験片1の厚さbは12mmである。図7は、
スパーギアーの外観を示す斜視図であり、4及び5はそ
れぞれ、スパーギアー大及びスパーギアー小である。
【0024】表1に示した化学成分組成を有するネイビ
ーC試験片及びスパーギアーのそれぞれに対して、本発
明の範囲内の各種熱処理方法(実施例1〜10)、及び
本発明の範囲外の各種熱処理方法(比較例1〜3)によ
る試験を行なった。なお、実施例1〜4、6、7及び1
0は、請求項1記載の発明の範囲内のものであり、そし
て実施例5、8及び9は、請求項2記載の発明の範囲内
のものである。
【0025】実施例及び比較例における肌焼鋼材の浸炭
処理、炭素の拡散処理、並びに、焼入れ前の冷却開始温
度(徐冷開始温度)及び冷却速度等の各処理条件を、表
2及び3に示す。
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】上記試験が行なわれた試験材について下記
試験測定を行なった。 熱処理歪み量の測定:ネイビーC試験片による。 歯車の表面炭素量:スパーギアー小5(図7参照)の
歯表面部6(図8参照)の炭素濃度。 歯元内部のフェライト量:スパーギアー小5の歯元内
部7(図8参照)のフェライト面積率 歯元内部の硬さ:スパーギアー小5の歯元内部7(図
8参照)のビッカース硬さ(HV) 上記測定結果を、上記表2及び3に併記する。
【0029】(1)比較例1、実施例1〜3、及び比較
例2 いずれも鋼種SCM420を用い、浸炭条件を一定(炭
素ポテンシャル1.0wt.%、920℃で4hr浸炭後、
1時間の拡散処理)とし、焼入れ前の冷却開始温度及び
冷却速度のみを変化させて試験し、次いで油冷した。
【0030】・比較例1は、従来行なわれている方法で
あり、図3に、浸炭・焼入れパターンを示す。焼入れ前
の温度は、オーステナイト単相域の850℃で、30分
保持した後、油冷を行なった。非浸炭部の組織にはフェ
ライトは見られず、残留オーステナイトを一部含むマル
テンサイト組織であった。また、USネイビー試験片の
開口部の歪み量は、2.6と大きく、歯車においても変
形が大きい。そのまま使用すると局部的に面圧が高くな
って、早期にピッチングを起こしたり、騒音が大きくな
ることが懸念されたので、歯形を研削して修正を施し
た。
【0031】・実施例1の浸炭・焼入れパターンを、図
1に示す。焼入れ前の冷却(徐冷)開始温度がA3 (8
22℃)よりも僅かに低い810℃であり、2℃/分の
冷却速度で冷却し、次いで、焼入れ開始温度がA1 +1
0℃(743+10℃)よりも若干高い760℃より焼
入れたものである。非浸炭部には13%のフェライトが
含まれ、このため歪み量も0.3%と著しく小さく、歯
形修正の必要はなかった。
【0032】・実施例2は、焼入れ前の冷却(徐冷)開
始温度がA3 (822℃)より低いがそれに極めて近い
低い820℃であり、1℃/分の冷却速度で冷却し、次
いで、焼入れ開始温度がA1 +10℃(743+10
℃)よりも若干高い770℃より焼入れたものである。
非浸炭部には33%のフェライトが含まれ、このため歪
み量も0.05%と殆どなく、歯形修正の必要はなかっ
た。この実施例から推定されるように、徐冷開始を必ず
しもA3 温度以下で行なう必要はなく二相温度域に保持
される時間が10分以上であれば目的は達せられる。
【0033】・実施例3の浸炭・焼入れパターンを、図
2に示す。焼入れ前の冷却(徐冷)開始温度を810℃
とし、2℃/分で冷却後、780℃に10分保持した
後、再度2℃/分で冷却し、760℃から焼入れた場合
である。非浸炭部には、28%のフェライトが含まれ、
このため歪み量も0.03%と小さく、歯形修正の必要
はなかった。
【0034】・比較例2は、焼入れ温度をA1 温度(7
43℃)よりも低い730℃まで低めた場合である。こ
のためフェライト面積率は55%と多量に出て、内部の
硬さがビッカース硬さで260と低く、歯車の硬さとし
ては不足である。また、浸炭部の組織にもパーライトが
混じっており、耐摩耗性の上からも好ましくない組織で
ある。
【0035】(2)実施例4及び比較例3 ・実施例4は、鋼種SCM421を、焼入れ前の冷却
(徐冷)開始温度を810℃とし、1℃/分で冷却後、
760℃から焼入れた場合である。実施例1では冷却速
度2℃/分でフェライト面積率13%、歯車内部の硬さ
はHV325であり、比較例1のHV335に比べて低
くなっている。実施例4では冷却速度1℃/分でフェラ
イト面積率28%を得たが、この実施例4では鋼種SC
M420よりC、Mn、Cr及びMoのいずれもが若干
高い鋼種SCM421を用いることにより、HV335
が得られている。
【0036】・比較例3は、鋼種SCM420を試験片
に加工後、あるいは歯車に加工後、組織微細化のため焼
ならしを行なった後、5時間ガス軟窒化を行なった場合
であり、従来法に属するものである。歪みも小さく、歯
形修正の必要もなかった。しかしながら、歯元内部の硬
さがHV200と著しく低く、また、2回の熱処理を必
要とする点で、本発明の最大の問題点が解決されていな
い。
【0037】(3)更に、表1に示した各鋼種の肌焼鋼
材を用い、浸炭条件等を種々変化させた試験を行なった
(実施例5〜10)。 ・実施例5の熱処理パターンを、図4に示す。炭素ポテ
ンシャルが0.86wt.%で、910℃、3hrの浸炭を
行ない、拡散焼鈍を行なわず、その後800℃から1℃
/分で徐冷して770℃から焼入れた場合である。この
実施例においても歪み量は0.18%と小さく、歯形修
正の必要はなかった。
【0038】・実施例6〜10のいずれにおいても、焼
入れ前の徐冷条件が適正であり、適量のフェライト量を
有し、歪みが小さい。この結果、焼入れ後の歯車におい
て歯形修正の必要はなかった。
【0039】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、
鋼成分として特殊なものを用いることなく、通常の軟窒
化と同等の低歪みで、軟窒化によるより歯元内部硬さの
高い高強度のギヤーの製造が可能になる。この発明は、
このように効果的な肌焼鋼材の熱処理歪み防止焼入れ方
法を提供することができ、工業上有用な効果がもたらさ
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の浸炭・焼入れパターンの一例(実施
例1)を示す。
【図2】この発明の浸炭・焼入れパターンの一例(実施
例3)を示す。
【図3】従来法による浸炭・焼入れパターンのた他の例
(比較例1)を示す。
【図4】この発明の浸炭・焼入れパターンの一例(実施
例5)を示す。
【図5】焼入れ歪み量を測定するためのネイビーC試験
片の正面図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】スパーギアーの外観を示す斜視図である。
【図8】歯車の歯内部(歯元内部及び歯車芯部)及び表
面を説明する概略斜視図である。
【符号の説明】
1 ネイビーC試験片 2 開口部 3 円形状空間 4 スパーギヤー大 5 スパーギヤー小 6 歯表面部(浸炭部) 7 歯元内部 8 歯車芯部
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F16H 55/06 F16H 55/06

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C、Si及びMnを含む肌焼鋼材、又
    は、C、Si及びMn、並びに、Cr、Ni及びMoか
    らなる群から選ばれた1種以上の合金元素を含む肌焼鋼
    材を浸炭焼入れする方法において、A3 +50℃以上の
    温度で、0.8〜1.4wt.%の範囲内の炭素ポテンシャ
    ルを有する媒材中で前記肌焼鋼材を浸炭処理し、次いで
    こうして浸炭された前記肌焼鋼材を拡散処理し、その表
    層部の炭素濃度を0.6〜0.9wt.%の範囲内に低下さ
    せ、次いで前記肌焼鋼材をA1 +10℃超えからA3
    での温度範囲内のオーステナイト/フェライトの二相温
    度域を0.1〜5℃/分の範囲内の冷却速度で冷却し、
    前記肌焼鋼材の非浸炭部のミクロ組織に関してフェライ
    トを面積率で10〜50%の範囲内で生成させた後、A
    1 +10℃以上の温度から焼入れることを特徴とする、
    肌焼鋼材の熱処理歪み防止焼入れ方法。
  2. 【請求項2】 C、Si及びMnを含む肌焼鋼材、又
    は、C、Si及びMn、並びに、Cr、Ni及びMoか
    らなる群から選ばれた1種以上の合金元素を含む肌焼鋼
    材を浸炭焼入れする方法において、A3 +50℃以上の
    温度で、0.6〜0.9wt.%の範囲内の炭素ポテンシャ
    ルを有する媒材中で前記肌焼鋼材を浸炭処理し、次いで
    前記肌焼鋼材をA1 +10℃超えからA3 までの温度範
    囲内のオーステナイト/フェライトの二相温度域を0.
    1〜5℃/分の範囲内の冷却速度で冷却し、前記肌焼鋼
    材の非浸炭部のミクロ組織に関してフェライトを面積率
    で10〜50%の範囲内で生成させた後、A1 +10℃
    以上の温度から焼入れることを特徴とする、肌焼鋼材の
    熱処理歪み防止焼入れ方法。
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