JP2006124475A - 水溶性色素、記録液、及びその利用 - Google Patents

水溶性色素、記録液、及びその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】インクジェット記録等の方法により普通紙やインクジェット専用紙に記録した場合に、印字品位が良好であると共に記録画像の濃度、彩度、色調に優れ、とりわけ耐光性や耐オゾン性が良好な記録画像を形成し得る色素及び記録液を提供する。
【解決手段】少なくとも水と水溶性色素とを含む記録液であって、該水溶性色素が下記一般式(1)で表される、自己組織化可能型色素である記録液。
DYE−(STR) …(1)
(式中、DYEは、上式STRの代わりに水素原子が結合した場合、水に実質的に可溶な、アゾ基不含のn価の色素残基であり、STRは水に実質的に不溶な総炭素数2個以上の疎水性残基であり、nは1以上の整数であり、nが2以上の場合、複数あるSTRは、互いに同一であっても良く、異なっていても良い。)
【選択図】なし

Description

本発明は、水溶性色素、記録液、及びその利用に関するものである。
直接染料や酸性染料等の水溶性染料を含む記録液の液滴を微小な吐出オリフィスから飛翔させて記録を行う、いわゆるインクジェット記録方法が実用化されている。インクジェット記録に用いられる記録液に関しては、電子写真用紙のPPC(プレインペーパーコピア)用紙、ファンホールド紙(コンピューター等の連続用紙)等の一般事務用に汎用される記録紙に対する定着が速く、しかも印字物の印字品位が良好であること、即ち印字ににじみがなく輪郭がはっきりしていることが要求されると共に、記録液としての保存時の安定性も優れていることが必要であり、従って使用できる溶剤が著しく制限される。
一方、記録液用の染料に関しては、上記のような限られた溶剤に対して充分な溶解性を有すると共に、記録液として長期間保存した場合にも安定であり、また印字された画像の濃度、色相、彩度に優れ、しかも耐水性、耐光性に優れていること等が要求されるが、これ等の多くの要求を同時に満足させることは困難であった。
更に昨今、インクジェット写真画質画像の高精細化によるインクジェット記録の社会への更なる浸透に伴い、インクジェット画像への市場の要求は更に高まった。とりわけ、インクジェット専用光沢紙や専用葉書等の上に美しい写真ライクな画像をプリントし、得られた画像を掲示して鑑賞するといった用途の拡大に伴い、空気中のオゾンや窒素酸化物、硫黄酸化物等いわゆる酸化活性ガスによる、インクジェット画像劣化挙動の改善、換言すれば画像の耐ガス性をより向上させることがより強く求められるようになってきていた。
従来、インクジェット記録において、彩度と堅牢性を両立するマゼンタの色素として、アントラピリドン系色素を用いることが知られている(例えば、特許文献1〜8参照)。しかし、堅牢性、とりわけ耐光性と耐ガス性をより高いレベルで両立するとの課題は解決されておらず、現在汎用されているマゼンタ色素を含む特許文献1〜8に具体的に例示された色素等では、近年の画像の耐ガス性の要求に必ずしも十分答えられてはいなかった。
なお、耐ガス性は、一定濃度のオゾン含有空気にインクジェット画像を曝露し、これに伴う退色度合いを尺度として定量されることが一般的である。従って、本発明においても耐ガス性の評価にはオゾン曝露試験を用い、併せて本発明においては以後、上述の耐ガス性を耐オゾン性と称することとする。
特開昭59−74173号公報(1−3ページ) 特開平2−16171号公報(1、5−7ページ) 特開2000−109464号公報(1−2、8−12ページ) 特開2000−169776号公報(1−2、6−9ページ) 特開2000−191660号公報(1−3、11−14ページ) 特開2001−72884号公報(1−2、8−11ページ) 特開2001−139836号公報(1−2、7−12ページ) 特開2003−192930号公報(1−4、15−18ページ)
本発明は、インクジェット記録等の方法により普通紙やインクジェット専用紙に記録した場合に、印字品位が良好であると共に記録画像の濃度、彩度、色調にすぐれ、とりわけ耐光性や耐オゾン性も良好な記録画像を形成し得る水溶性色素及び記録液を提供することを目的とするものである。
本発明はまた、このような記録液を用いた記録液セット、記録方法、インクカートリッジ、インクジェットプリンター及び紙を提供することを目的とする。
本発明者らは、検討の結果、記録液成分として特定の水溶性色素を使用した場合に、上記の目的が達成されることを確認し、本発明を達成したものである。
即ち、本発明の要旨は、少なくとも水と水溶性色素とを含む記録液であって、該水溶性色素が下記一般式(1)で表される、自己組織化可能型色素であることを特徴とする記録液、に存する(請求項1)。
DYE−(STR) …(1)
(式中、DYEは、上式STRの代わりに水素原子が結合した場合、水に実質的に可溶な、アゾ基不含のn価の色素残基であり、
STRは水に実質的に不溶な総炭素数2個以上の疎水性残基であり、
nは1以上の整数であり、
nが2以上の場合、複数あるSTRは、互いに同一であっても良く、異なっていても良い。)
また、本発明の別の要旨は、前記水溶性色素が下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の記録液、に存する(請求項2)。
Figure 2006124475
(式中、APは置換されていても良いアントラピリドン骨格含有残基を表し、
Solは水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基を表し、
rは2〜10の整数を表し、
Lは酸素原子、硫黄原子、又は−NR−を表し、Rは水素原子、置換されていても良い、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換されていても良い、炭素数2〜4のアルケニル基を表し、
XとYは各々独立に、−NR、−OR、又は−SRを表し、R〜Rは各々独立に、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルケニル基、置換されていても良いアリール基、又は置換されていても良い複素環基を表すが、R〜Rに水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基は存在せず、またX又はYを通じて更に1個のAPで表される残基が結合することは無く、
更にAPは、一般式(2)中に明記されたトリアジン部位以外にも、前記STRで表される疎水性残基を有していても良い。)
また、本発明の別の要旨は、前記水溶性色素が下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項2に記載の記録液、に存する(請求項3)。
Figure 2006124475
(式中、Rは水素原子、置換されていても良い、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換されていても良い、炭素数2〜4のアルケニル基を表し、
s,tは各々独立に1〜4の整数を表し、
Ar、Arは各々独立に、アリール基もしくはヘテリル基を表す。
Sol,L,X,Yは、一般式(2)におけると同義である。)
また、本発明の別の要旨は、前記水溶性色素が、遊離酸の形で下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項3に記載の記録液、に存する(請求項4)。
Figure 2006124475
(式中、X,Yは、一般式(2)におけると同義である。)
また、本発明の別の要旨は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の記録液を含むことを特徴とする記録液セット、に存する(請求項5)。
また、本発明の別の要旨は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の記録液又は請求項5に記載の記録液セットを使用することを特徴とする記録方法、に存する(請求項6)。
また、本発明の別の要旨は、インクジェット記録であることを特徴とする請求項6に記載の記録方法、に存する(請求項7)。
また、本発明の別の要旨は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の記録液が充填されてなることを特徴とするインクカートリッジ、に存する(請求項8)。
また、本発明の別の要旨は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の記録液又は請求項5に記載の記録液セットが装填されてなることを特徴とするインクジェットプリンター、に存する(請求項9)。
また、本発明の別の要旨は、画像が印刷されてなる紙であって、前記一般式(1)で表される水溶性色素を含むことを特徴とする紙、に存する(請求項10)。
なお、本発明において、「画像」とは、文字、記号、絵、線分、図形等、すべての記録対象を包含するものである。
また、本発明の別の要旨は、前記一般式(3)で表されることを特徴とする水溶性色素、に存する(請求項11)。
また、本発明の別の要旨は、遊離酸の形で前記一般式(4)で表されることを特徴とする水溶性色素、に存する(請求項12)。
本発明によれば、インクジェット記録等の方法により普通紙やインクジェット専用紙に記録した場合に、印字品位が良好であると共に記録画像の濃度、彩度、色調に優れ、とりわけ耐光性や耐オゾン性が良好な記録画像を形成することができる。
以下に本発明の水溶性色素、記録液、及びその利用の実施の形態を詳細に説明する。
[一般式(1)で表される水溶性色素]
まず、本発明の記録液に含有される、下記一般式(1)で表される水溶性色素について説明する。
DYE−(STR) …(1)
(式中、DYEは、上式STRの代わりに水素原子が結合した場合、水に実質的に可溶な、アゾ基不含のn価の色素残基であり、
STRは水に実質的に不溶な総炭素数2個以上の疎水性残基であり、
nは1以上の整数であり、
nが2以上の場合、複数あるSTRは、互いに同一であっても良く、異なっていても良い。)
(A)DYEとSTR
以下、本発明に係る自己組織化可能型色素について説明する。
本色素は、水溶性に富み且つ平板な構造を有する水溶性基含有縮合環色素部分(DYE)と、DYEを積層させる作用を持つ積層凝集促進基部分(STR)とが結合してなる構造を有する。そして、本色素は、水溶性に富むDYEを有するので水系媒体によく溶けインク詰まりなどが起こりにくく、かつDYEを積層させる作用を持つSTRを有するので、水系媒体中及び印字物上において自己組織化によりミクロな顔料的凝集構造を形成でき、ひいては堅牢性が向上した印字物が得られる利点がある。
本色素が水系媒体に溶解する機構は、確認されてはいないが、以下のように推定される。水溶性基を持つDYEは水和されやすく水中に単分子拡散しようとするが、疎水性のSTRは水に溶けにくいためSTR同士は凝集構造をとりやすいと考えられる。その結果、STR同士のミクロ凝集につられる形で、複数分子のDYE同士が水和し溶解しつつも近傍に存在しあう、ミクロ構造を取り得ると思われる。
更に、本色素を用いてインクジェット記録を行うと、被記録物上では色素同士はより積層し凝集が進むが、DYE部分が水溶性を有するため顔料や水不溶性染料ほど大きな凝集体にはならないと考えられ、結果として、水溶性色素の長所(目詰まりしにくさ、彩度や透明性の高さ)を維持しつつ、従来の染料に比しより改善された堅牢性を発揮するとものと思われる。
従って、本色素は、従来トレードオフとされ両立が困難であった高い水溶性と印字物の高い堅牢性とを併せ持つので、本色素及びこれを用いた記録液によれば、記録時のインク詰まりがなく、かつ印字物の彩度や透明性が高く、堅牢性も高い優れた記録を行うことができる利点がある。
本発明において、水溶性基含有縮合環色素部分(DYE)としては、水溶性に富み、かつ、STRによる作用があった際には、記録液中でもある程度積層構造を取ることができ、印字後に記録液の水が蒸散する際にはより積極的に積層構造を取り易い性質を持つことが望ましい。このような性質を有している限りDYEの構造は特に限定されないが、好ましくは水溶性基含有の平板な色素であり、アゾ色素のような屈曲性に富む色素は不適当である。
また、積層凝集促進基部分(STR)としては、疎水性に富み、水中で、STR同士で積層凝集構造をとりやすく、結果としてDYE部分の積層凝集を誘起する性質を持つことが望ましい。このような性質を有している限りSTRの構造は特に限定されないが、疎水性であり、かつ積層しやすい構造であることが望ましいため、直鎖や分枝のアルキル基等に比べると、環状の残基、とりわけ芳香性を有する残基が好ましい。
上記一般式(1)において、DYEで表されるアゾ基不含の色素残基の種類には制限は無く、種々の縮合環系色素残基や複数の芳香環や芳香族複素環が結合したメチン系色素残基等が挙げられるが、中でも縮合環系色素残基であることが望ましい。ここで縮合環系色素残基の例としては、アントラピリドン系の色素残基、アントラキノン系の色素残基、ジオキサジン系の色素残基、カルボインジゴ系の色素残基、チオインジゴ系の色素残基、フタロペリノン系の色素残基、ピラン系の色素残基、フラン系の色素残基、チアジン系の色素残基、ペリミドン系の色素残基、ペリノン系の色素残基、キノフタロン系の色素残基、フェノキサジン系の色素残基、キサンテン系の色素残基、チオキサンテン系の色素残基、アザチオキサンテン系の色素残基、が挙げられるが、中でもアントラキノン系の色素残基、アントラピリドン系の色素残基、ジオキサジン系の色素残基、カルボインジゴ系の色素残基、チオインジゴ系の色素残基が好適に用いられ、とりわけ、アントラピリドン系の色素残基、ジオキサジン系の色素残基が好適に用いられる。
DYEで表される色素残基は、それに水素原子が結合した化合物とした場合、実質的に水に可溶な水溶性である必要がある。ここで実質的に水溶性であるとは、25℃にて、水に対して0.1重量%以上の溶解度を有することを指すが、1重量%以上の溶解度を有することが更に好ましく、3重量%以上の溶解度を有することが更に好ましく、5重量%以上の溶解度を有することが更に好ましく、10重量%以上の溶解度を有することが更に好ましく、15重量%以上の溶解度を有することが更に好ましい。但し、通常は40重量%程度が溶解度の上限である。
従って、DYEで表される色素残基には、上記のような水溶性を付与するため親水性基が存することが一般的であり、かかる親水性基には、4級アミンに代表されるカチオンタイプのもの、ポリオキシエチレンに代表されるノニオンタイプのもの、スルホン基に代表されるアニオンタイプのもの等が挙げられるが、中でも、水中での解離定数(pKa値)が−10〜5程度のイオン解離性の水溶性基が好適に用いられ、とりわけ、スルホン基、ホスホノ基、カルボキシル基、ボーレート基等が好適で、中でもスルホン基とカルボキシル基が好適に用いられる。それら解離性の基は、遊離酸の形で用いられても良いが、アルカリ金属、置換又は無置換の4級アンモニウム類等から選ばれる任意の対イオンとともに塩を形成した形で用いられてもよく、特に好適な対イオンとしては、Li、Na、K、NH が挙げられ、中でもLi、Na、NH が好ましく、とりわけLi、Naが好ましい。
DYEで示される色素残基は、上述の水溶性基以外にも任意の数の任意の種類の置換基により置換されていても良く、この置換基としてはインクジェット記録液に用いられる水溶性色素の置換基として通常用いられるものが使用される。例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテリルアミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、ヘテリルカルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、ヘテリルスルファモイル基、ホルミル基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテリルオキシカルボニル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテリルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテリルスルホニル基、シアノ基、ニトロ基等、一般的に「助色団」と呼ばれる原子団等は、色素残基の色相や吸光度を大きく左右するので、目的とする色相を得るために適宜選択して用いられ、一方、アルキル基、アルケニル基、アリール基等は、目的とする色素の親水性や疎水性を所望のものに調節するためにも用いられる。
前述の通り、一般式(1)で示される水溶性色素には、DYE部位の他に、STRで表される疎水性の部位が存するので、一般式(1)で示される色素全体の水溶性を維持するためにも、DYEの部分に疎水性の原子団が置換する際は、その疎水性の原子団には更に、上述のような親水性の置換基が存することが望ましい。
DYEで表される色素残基の分子量については特に制限は無いが、通常150以上、好ましくは200以上、更に好ましくは300以上である。但し、通常2000以下、好ましくは1000以下、更に好ましくは800以下である。一般に、色素の溶解性を上げるためには、分子量が小さいことが望ましく、一方、色素の色濃度を上げるためには、分子量が大きいことが望ましい。
一方、STRで表される疎水性残基の種類としては、一般式(1)で示される色素の性能を損なわない限りは特に制約は無く、分枝していても良いアルキル基:分枝していても良いアルケニル基:分枝していても良いアルコキシ基:アリール基:ヘテリル基等が挙げられ、中でも、環状構造を有するアルキル基、ヘテリル基、アリール基が好ましく、中でもアリール基とヘテリル基が好ましく、中でも5員環の残基、6員環の残基、及びそれらが縮合した9個もしくは10個の原子によって構成された縮合環基が好ましく、中でもフェニル基、ナフチル基、イミダゾール−2−イル基、ベンゾチアゾール−2−イル基、キノリン−6−イル基、ピリミジン−2−イル基、1,3,5−トリアジン−2−イル基、が特に好ましい。
STRで表される疎水性残基は、各々置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテリルアミノ基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、ヘテリルカルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、ヘテリルスルファモイル基、ホルミル基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテリルオキシカルボニル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテリルスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、分枝していても良いアルキル基、分枝していても良いアルケニル基、分枝していても良いアルコキシ基等が挙げられるが、STR部位は一般式(1)で示される色素に十分な水溶性を与えるために、これら置換基で置換されたSTRなる原子団の総炭素数は、通常40以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下のものが好適に用いられる。また、総炭素数は好ましくは2以上、より好ましくは3以上のものが好適に用いられる。
STR部位は任意の形でDYEに結合していて良いが、好ましい結合の例としては、DYEに存在する水酸基、メルカプト基、アミノ基の水素原子を置換して結合する形;単結合;アシル基、カルボキシ基等のカルボニル基含有基の水素原子を置換して結合する形;又はカルボニル基、スルホニル基等の酸素原子含有基を介して結合する形;が挙げられ、中でも単結合以外のものが好ましく、中でもDYEに存在する水酸基、メルカプト基、アミノ基の水素原子を置換して結合する形;アシル基の水素原子を置換して結合する形;スルホニル基を介して結合する形が好ましく、中でもアミノ基の水素原子を置換して結合する形;アシル基、スルホニル基を介して結合する形が好ましい。それらの連結基は上記の置換基にて置換されていても良いが、水中での解離定数(pKa値)が−10から5の間にあるイオン解離性基で置換されることは無い。
STRがフェニル基もしくはナフチル基である場合、それらは無置換でも置換されていても良く、それら置換基の好適な例としては、ハロゲン原子:アミノ基:総炭素数1〜6の、アルキルアミノ基:総炭素数1〜6の、アシルアミノ基:フェニルアミノ基:4位と6位とが、アミノ基、総炭素数1〜6のアルキルアミノ基、水酸基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から任意に選ばれる基で置換された、1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ基:水酸基:総炭素数1〜6のアルコキシ基:フェニルオキシ基:カルバモイル基、総炭素数1〜6の、アルキルカルバモイル基:フェニルカルバモイル基:スルファモイル基:総炭素数1〜6のアルキルスルファモイル基:フェニルスルファモイル基:ホルミル基:アシル基:総炭素数1〜6のアルキルオキシカルボニル基:メルカプト基:総炭素数1〜6のアルキルチオ基:フェニルチオ基:総炭素数1〜6のアルキルスルホニル基:フェニルスルホニル基:シアノ基:ニトロ基が挙げられる。中でも、塩素原子:トリフロロアセチルアミノ基:4位と6位とが、アミノ基、総炭素数1〜2のアルキルアミノ基、エタノールアミノ基、ジエタノールアミノ基、水酸基からなる群から任意に選ばれる基で置換された1,3,5−トリアジニルアミノ基のいずれかで置換された場合、及び無置換の場合とが好適な例として挙げられる。
STRが3,5−二置換−2,4,6−トリアジニル基である場合の置換基の好適な例としては、アミノ基:総炭素数1〜6の、アルキルアミノ基:フェニルアミノ基:ナフチルアミノ基:ヘテリルアミノ基:水酸基:炭素数1〜6のアルコキシ基:フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、メルカプト基:炭素数1〜6のアルキルチオ基:フェニルチオ基:ナフチルチオ基、ヘテリルチオ基等が挙げられ、それらのうち、フェニルアミノ基のフェニル基:ナフチルアミノ基のナフチル基:ヘテリルアミノ基のヘテリル基:フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基:フェニルチオ基:ナフチルチオ基:ヘテリルチオ基については、更にハロゲン原子:アミノ基:総炭素数1〜6の、アルキルアミノ基:総炭素数6〜12の、アリールアミノ基:総炭素数2〜7の、ヘテリルアミノ基:水酸基:炭素数1〜6のアルコキシ基:総炭素数6〜12の、アリールオキシ基:カルバモイル基:総炭素数2〜6の、アルキルカルバモイル基:総炭素数7〜12の、アリールカルバモイル基:総炭素数2〜7の、ヘテリルカルバモイル基:スルファモイル基:総炭素数1〜6の、アルキルスルファモイル基:総炭素数6〜12の、アリールスルファモイル基:総炭素数2〜7の、ヘテリルスルファモイル基:ホルミル基:アシル基:総炭素数2〜7の、アルキルオキシカルボニル基、総炭素数6〜12の、アリールオキシカルボニル基:総炭素数2〜7の、ヘテリルオキシカルボニル基:メルカプト基、総炭素数1〜6の、アルキルチオ基:総炭素数6〜12の、アリールチオ基:総炭素数1〜6の、アルキルスルホニル基:総炭素数6〜12の、アリールスルホニル基、総炭素数2〜7の、ヘテリルスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基等が挙げられ、これらの置換基よりなる群から選ばれる単数の置換基で置換されていても良く、複数の置換基で置換されていても良い。
STRが3,5−二置換−2,4,6−トリアジニル基である場合の置換基としての、総炭素数1〜6の、アルキルアミノ基のアルキル基:炭素数1〜6のアルコキシ基:炭素数1〜6のアルキルチオ基のアルキル基については、ハロゲン原子:アミノ基:フェニルアミノ基:水酸基:総炭素数1〜6のアルコキシ基:フェニルオキシ基:カルバモイル基、総炭素数1〜6の、アルキルカルバモイル基:フェニルカルバモイル基:スルファモイル基:総炭素数1〜6のアルキルスルファモイル基:フェニルスルファモイル基:ホルミル基:アシル基:総炭素数1〜6のアルキルオキシカルボニル基:メルカプト基:総炭素数1〜6のアルキルチオ基:フェニルチオ基:総炭素数1〜6のアルキルスルホニル基:フェニルスルホニル基:シアノ基:ニトロ基から選ばれる任意の置換基によって置換されていても良い。
STRが3,5−二置換−2,4,6−トリアジニル基である場合のその置換基のより好適なものとしては、アミノ基:水酸基:ハロゲン原子又は水酸基で置換されていても良い、総炭素数1〜4の、アルキルアミノ基:ハロゲン原子又はハロゲン原子で置換されていても良いアシルアミノ基で置換されていても良い、フェニルアミノ基:ハロゲン原子又はハロゲン原子で置換されていても良いアシルアミノ基で置換されていても良い、ナフチルアミノ基:ハロゲン原子又はハロゲン原子で置換されていても良いアシルアミノ基で置換されていても良い、ヘテリルアミノ基が挙げられ、中でも好ましくは、アミノ基:メチルアミノ基:エチルアミノ基:ジメチルアミノ基:水酸基:塩素原子で置換されていても良いアニリノ基であり、特に好ましくはアミノ基又は水酸基である。いずれの場合もSTRが、水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下であるイオン解離性基によって置換されることは無い。
前記一般式(1)で示される形の色素の優れた特性、とりわけ耐光堅牢性が優れる機構は定かではないが、一般式(1)において、DYEと表記される水溶性のある平板型色素部分と、STRで現される疎水性の高い原子団とが一分子中にあることが何らかの形で堅牢性向上に寄与しているものと思われる。即ち、水中もしくは水系インクの中では、DYE部位は水和されやすいが、STR部位は水和されにくく、他の色素分子のSTR部位と疎水性相互作用して集合体を形成する傾向があると思われ、その集合体形成傾向に連動して、集まったSTR部に各々連結したDYEで示す平板な水溶性色素部位同士も、近傍に水分子を伴いつつ積層構造を形成し得る。即ち、DYE−(STR)なる構造を有する色素には、水中や水系インク中で自己組織化する可能性があり、色素平板部位同士が接近しあうことにより、インクジェット記録の結果として得られる画像に存する色素同士が、その積層構造、π電子相互作用、分子間の励起緩和を通じて、オゾン等の酸性ガスや光に対してより高い耐分解性を示していることが予想される。
一方、DYEなる色素残基として仮にアゾ色素残基を用いると、その部分の屈曲性や異性化現象により、色素残基が十分積層しあわず、結果として本発明に係る一般式(1)で表される色素に比べると、劣るレベルの堅牢性しか有さないインクジェット画像しか得られないものと推定される。
(B)DYEがアントラピリドン系残基である場合
以下に、DYEで示される色素残基がアントラピリドン骨格である場合の一般式(1)で表される水溶性色素について述べる。
DYEがアントラピリドン系の色素残基の場合、STRとしては、先に例示した原子団の中でも特に、3,5−二置換−2,4,6−トリアジニル基が好ましく、その置換基の好適な例としては、アミノ基:総炭素数1〜6の、アルキルアミノ基:フェニルアミノ基:ナフチルアミノ基:ヘテリルアミノ基:水酸基:炭素数1〜6のアルコキシ基:フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、メルカプト基:炭素数1〜6のアルキルチオ基:フェニルチオ基:ナフチルチオ基、ヘテリルチオ基等が挙げられ、それらのうち、フェニルアミノ基のフェニル基:ナフチルアミノ基のナフチル基:ヘテリルアミノ基のヘテリル基:フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基:フェニルチオ基:ナフチルチオ基:ヘテリルチオ基については、更にハロゲン原子:アミノ基:総炭素数1〜6の、アルキルアミノ基:総炭素数6〜12の、アリールアミノ基:総炭素数2〜7の、ヘテリルアミノ基:水酸基:炭素数1〜6のアルコキシ基:総炭素数6〜12の、アリールオキシ基:カルバモイル基:総炭素数2〜6の、アルキルカルバモイル基:総炭素数7〜12の、アリールカルバモイル基:総炭素数2〜7の、ヘテリルカルバモイル基:スルファモイル基:総炭素数1〜6の、アルキルスルファモイル基:総炭素数6〜12の、アリールスルファモイル基:総炭素数2〜7の、ヘテリルスルファモイル基:ホルミル基:アシル基:総炭素数2〜7の、アルキルオキシカルボニル基、総炭素数6〜12の、アリールオキシカルボニル基:総炭素数2〜7の、ヘテリルオキシカルボニル基:メルカプト基、総炭素数1〜6の、アルキルチオ基:総炭素数6〜12の、アリールチオ基:総炭素数1〜6の、アルキルスルホニル基:総炭素数6〜12の、アリールスルホニル基、総炭素数2〜7の、ヘテリルスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基等が挙げられ、これらの置換基よりなる群から選ばれる単数の置換基で置換されていても良く、複数の置換基で置換されていても良い。
STRが3,5−二置換−2,4,6−トリアジニル基である場合のその置換基としての、総炭素数1〜6の、アルキルアミノ基のアルキル基:炭素数1〜6のアルコキシ基:炭素数1〜6のアルキルチオ基のアルキル基については、ハロゲン原子:アミノ基:フェニルアミノ基:水酸基:総炭素数1〜6のアルコキシ基:フェニルオキシ基:カルバモイル基、総炭素数1〜6の、アルキルカルバモイル基:フェニルカルバモイル基:スルファモイル基:総炭素数1〜6のアルキルスルファモイル基:フェニルスルファモイル基:ホルミル基:アシル基:総炭素数1〜6のアルキルオキシカルボニル基:メルカプト基:総炭素数1〜6のアルキルチオ基:フェニルチオ基:総炭素数1〜6のアルキルスルホニル基:フェニルスルホニル基:シアノ基:ニトロ基からなる任意の置換基によって置換されていても良い。
STRが3,5−二置換−2,4,6−トリアジニル基である場合のその置換基のより好適なものとしては、アミノ基:水酸基:ハロゲン原子又は水酸基で置換されていても良い、総炭素数1〜4の、アルキルアミノ基:ハロゲン原子又はハロゲン原子で置換されていても良いアシルアミノ基で置換されていても良い、フェニルアミノ基:ハロゲン原子又はハロゲン原子で置換されていても良いアシルアミノ基で置換されていても良い、ナフチルアミノ基:ハロゲン原子又はハロゲン原子で置換されていても良いアシルアミノ基で置換されていても良い、ヘテリルアミノ基が挙げられ、中でも好ましくは、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、水酸基、塩素原子で置換されていても良いアニリノ基であり、特に好ましくはアミノ基又は水酸基である。いずれの場合もSTRが、水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下であるイオン解離性基によって置換されることは無い。その置換基と更に好ましい置換基についても、先に詳記した通りである。
DYEで示されるアントラピリドン系残基は、1位、2位、4位、9位に置換基を有していても良いが、その中でも4位に、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基やナフチルアミノ基に代表されるアリールアミノ基、ヘテリルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールオキシ基、ヘテリルオキシ基等のπ共役性の置換基を有するものは、マゼンタ系の鮮やかな色相を有するので好ましい。即ち色素の色相はアントラピリドン骨格と4位のかかる置換基によって決定されるものであるから、アントラピリドン系残基の4位にアミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基やナフチルアミノ基に代表されるアリールアミノ基、ヘテリルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールオキシ基等のπ共役性の置換基が存する場合、これらの置換基を含めて、上記一般式(1)におけるDYE部分に属するものと見なすこととする。
一方、アントラピリドン系残基の1位(窒素原子)の置換基としては例えばアルキル基が挙げられ、2位の置換基としては例えばアリールオキシ基が挙げられ、9位の置換基としては例えばシアノ基、或いは、アセチル基やベンゾイル基に代表される置換アシル基が挙げられるが、これらの例を含め、アントラピリドン骨格に直結する置換基は色相を左右するので、アントラピリドン骨格に直結するそれら置換基をも含めて、上記一般式(1)におけるDYE部分に属すると見なすこととする。
DYEとしてのアントラピリドン系残基には、水溶性を保持するため親水性基が存することが必要であり、かかる親水性基には、4級アミンに代表されるカチオンタイプのもの、ポリオキシエチレンに代表されるノニオンタイプのもの、スルホン基に代表されるアニオンタイプのもの等が挙げられるが、中でも、水中での解離定数(pKa値)が−10〜5程度のイオン解離性の水溶性基が好適に用いられ、とりわけ、スルホン基、ホスホノ基、カルボキシル基、ボーレート基等が好適で、中でもスルホン基とカルボキシル基が好適に用いられ、とりわけスルホン基が好適である。また、DYEとしてのアントラピリドン系残基に存する上記水溶性基の個数は、1〜5が好ましく、2〜4が更に好ましく、3が最も好ましい。更に、それらイオン解離性の基は、遊離酸の形で用いられても良いが、任意の対イオンとともに塩を形成した形で用いられても良い。
DYEとしてのアントラピリドン系残基は更に任意の置換基を有していても良いが、特に4位には、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテリルアミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、ヘテリルカルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、ヘテリルスルファモイル基、ホルミル基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテリルオキシカルボニル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテリルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテリルスルホニル基、シアノ基、ニトロ基等、一般的に「助色団」と呼ばれる原子団で置換されることが好ましく、中でも、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基やナフチルアミノ基に代表されるアリールアミノ基、ヘテリルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテリルチオ基、アリールオキシ基、ヘテリルオキシ基に代表されるπ共役性の置換基で置換されることが好ましく、中でも、置換基を有していても良い、構成原子数が5、6、9、もしくは10である芳香環で置換された、アミノ基もしくはチオ基が好ましく、中でもアニリノ基、ナフチルアミノ基、イミダゾール−2−イルアミノ基、1,3,4−トリアゾール−2−イルアミノ基、ベンゾチアゾール−2−イルアミノ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ベンゾイミダゾール−2−イルチオ基が好ましく、特に、アニリノ基、ナフチルアミノ基が好ましい。ここで上記の、構成原子数が5、6、9、もしくは10である芳香環で置換された、アミノ基もしくはチオ基の芳香環を置換基は、上述の「助色団」と呼ばれる原子団、あるいは水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下であるイオン解離性基で置換されることが好ましく、その中でも特に好ましい置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ホルミル基、アシル基、メルカプト基、アルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン基、ホスホノ基が挙げられるが、それら置換基が炭素原子を含む場合、その炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3が更に好ましく、1〜2が更に好ましい。これら置換基のうち、特に好ましくは、ハロゲン原子、ホルミル基、アシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン基、ホスホノ基であり、更に好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン基であり、更に好ましくはカルボキシル基、スルホン基であり、最も好ましくはスルホン基である。
なお、前記一般式(1)において、nは1以上の整数であるが、一般にnは1〜4、特に1〜2であることが好ましい。
nが2以上の場合、複数あるSTRは、互いに同一であっても異なっていても良い。
DYEで示される色素残基がアントラピリドン骨格である場合、前記一般式(1)で表される水溶性色素のより好ましい様態は、下記した一般式(2)で表すことができる。
Figure 2006124475
(式中、APは置換されていても良いアントラピリドン骨格含有残基を表し、
Solは水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基を表し、
rは2〜10の整数を表し、
Lは酸素原子、硫黄原子、又は−NR−を表し、Rは水素原子、置換されていても良い、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換されていても良い、炭素数2〜4のアルケニル基を表し、
XとYは各々独立に、−NR、−OR、又は−SRを表し、R〜Rは各々独立に、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルケニル基、置換されていても良いアリール基、又は置換されていても良い複素環基を表すが、R〜Rに水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基は存在せず、またX又はYを通じて更に1個のAPで表される残基が結合することは無く、
更にAPは、一般式(2)中に明記されたトリアジン部位以外にも、前記STRで表される疎水性残基を有していても良い。)
上記一般式(2)中、APは置換されていても良いアントラピリドン骨格含有残基を表し、上述の如く、1位(窒素原子)、2位、4位、9位には置換基を有していても良く、4位の置換基としては、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基やナフチルアミノ基に代表されるアリールアミノ基、ヘテリルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリールオキシ基、ヘテリルオキシ基等のπ共役性の置換基が好ましく、中でも好ましくはアニリノ基やナフチルアミノ基に代表されるアリールアミノ基、ヘテリルアミノ基であり、より好ましくはアニリノ基又はナフチルアミノ基であり、より好ましくはアニリノ基である。それら4位の置換基は、更に置換基を有していても良いが、中でも「Sol」として後述される、水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基を、1〜4個、好ましくは2〜3個、より好ましくは2個有する。
上記一般式(2)のAPの1位(窒素原子)の置換基としては、例えばアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基とエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
上記一般式(2)のAPの2位の置換基としては、例えばアリールオキシ基が挙げられ、好ましくはフェノキシ基である。このフェノキシ基等の2位の置換基は、更に置換されていても良く、その置換基としてはハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテリルアミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、ヘテリルカルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、ヘテリルスルファモイル基、ホルミル基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテリルオキシカルボニル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテリルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテリルスルホニル基、シアノ基、ニトロ基等、一般的に「助色団」と呼ばれる原子団や、炭素数8以下のアルキル基や、「Sol」として後述される、水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数8以下のアルキル基や、「Sol」として後述される、水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基であり、より好ましくは、「Sol」として後述される、水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基であり、これら置換基の個数は1〜2が好ましい。
上記一般式(2)のAPの9位の好ましい置換基としてはシアノ基、アセチル基、又はベンゾイル基に代表されるアリールアシル基やヘテリルアシル基が挙げられ、より好ましくはベンゾイル基ある。これら9位の置換基は更に置換されていても良く、その置換基としてはハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテリルアミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、ヘテリルカルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、ヘテリルスルファモイル基、ホルミル基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテリルオキシカルボニル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテリルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテリルスルホニル基、シアノ基、ニトロ基等、一般的に「助色団」と呼ばれる原子団や、「Sol」として後述される、水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、「Sol」として後述される、水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基であり、より好ましくは、「Sol」として後述される、水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基であり、それら置換基の個数は1〜2が好ましい。
Solは水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基を表し、好ましい例としてはスルホン基、ホスホノ基、カルボキシル基、ボーレート基等が好適で、中でもスルホン基とカルボキシル基が好ましく、スルホン基がより好ましい。
rは2〜10の整数を表し、2〜5がより好ましく、2〜3がより好ましい。
Lは酸素原子、硫黄原子、又は−NR−を表し、好ましくは−NR−である。ここで、Rは水素原子:置換されていても良い、炭素数1〜4のアルキル基:置換されていても良い、炭素数2〜4のアルケニル基を表し、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基であり、より好ましくは水素原子である。
XとYは各々独立に、−NR、−OR、又は−SRを表し、より好ましくは−NR、又は−ORである。ここでR〜Rは各々独立に、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルケニル基、置換されていても良いアリール基、又は置換されていても良い複素環基を表すが、R〜Rに水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基は存在しない。ここでR〜Rの好ましい例としては、水素原子;置換されていても良い、炭素数1〜4のアルキル基;置換されていても良い、炭素数2〜4のアルケニル基;置換されていても良いナフチル基;置換されていても良いフェニル基;置換されていても良い、構成原子数が5、6、9、若しくは10である、窒素原子又は硫黄原子を複素原子として含む複素環基が挙げられ、中でも水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、シアノエチル基、ヒドロキシエチル基、フェニル基が好ましい。ここで該フェニル基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基からなる群から選ばれる1〜3の置換基を有していても良い。R〜Rとしてより好ましいのは、水素原子、メチル基、エチル基であり、より好ましいのは水素原子である。
ただし、一般式(2)において、X又はYを通じて更に1個のAPで表される残基が結合することは無く、更にAPは、一般式(2)中に明記されたトリアジン部位以外にも、前記一般式(1)のSTRで表される疎水性残基を有していても良いが、その疎水性残基は、アントラピリドン骨格の9位の置換基の水素原子を置換する形でアントラピリドン部位に結合することが好ましい。
DYEで示される色素残基がアントラピリドン骨格である場合、前記一般式(1)で表される水溶性色素のより好ましい様態は、下記一般式(3)で表すことができる。
Figure 2006124475
(式中、Rは水素原子、置換されていても良い、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換されていても良い、炭素数2〜4のアルケニル基を表し、
s,tは各々独立に1〜4の整数を表し、
Ar,Arは各々独立に、アリール基もしくはヘテリル基を表す。
Sol,L,X,Yは、一般式(2)におけると同義である。)
上記一般式(3)中、Rは好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜2のアルキル基であり、sは好ましくは2又は3であり、より好ましくは2であり、tは好ましくは1〜3であり、より好ましくは1〜2であり、より好ましくは1である。
また、Arは好ましくはナフチル基又はフェニル基であり、より好ましくはフェニル基であり、一般式(2)におけるAPの4位の好ましい置換基としてのアリール基を更に好ましく置換する置換基として前項で詳記した置換基によって置換されていても良いが、更に好ましくは式中「Sol」と記した置換基以外の置換基を有さない。
Arは好ましくはナフチル基又はフェニル基であり、より好ましくはフェニル基であり、一般式(2)におけるAPの9位の好ましい置換基としてのアリール基を更に好ましく置換する置換基として前項で詳記した置換基によって置換されていても良いが、更に好ましくは式中「Sol」と記した置換基以外の置換基を有さない。
DYEで示される色素残基がアントラピリドン骨格である場合、前記一般式(1)で表される水溶性色素のより好ましい様態は、下記一般式(4)で表すことができる。なお、一般式(4)中、XとYは前記一般式(2)におけると同義であり、その好ましい様態についても、先の一般式(2)のX,Yの説明の項と同じものである。
Figure 2006124475
(C)DYEがジオキサジン系残基である場合
以下に、DYEで示される色素残基がジオキサジン骨格である場合の一般式(1)で表される水溶性色素について述べる。
DYEがジオキサジン骨格である場合、STRとしては、先に例示した原子団の中でも特に、3,5−二置換−2,4,6−トリアジニル基が好ましく、その置換基の好適な例としては、アミノ基:総炭素数1〜6の、アルキルアミノ基:フェニルアミノ基:ナフチルアミノ基:ヘテリルアミノ基:水酸基:炭素数1〜6のアルコキシ基:フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、メルカプト基:炭素数1〜6のアルキルチオ基:フェニルチオ基:ナフチルチオ基、ヘテリルチオ基等が挙げられ、それらのうち、フェニルアミノ基のフェニル基:ナフチルアミノ基のナフチル基:ヘテリルアミノ基のヘテリル基:フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基:フェニルチオ基:ナフチルチオ基:ヘテリルチオ基については、更にハロゲン原子:アミノ基:総炭素数1〜6の、アルキルアミノ基:総炭素数6〜12の、アリールアミノ基:総炭素数2〜7の、ヘテリルアミノ基:水酸基:炭素数1〜6のアルコキシ基:総炭素数6〜12の、アリールオキシ基:カルバモイル基:総炭素数2〜6の、アルキルカルバモイル基:総炭素数7〜12の、アリールカルバモイル基:総炭素数2〜7の、ヘテリルカルバモイル基:スルファモイル基:総炭素数1〜6の、アルキルスルファモイル基:総炭素数6〜12の、アリールスルファモイル基:総炭素数2〜7の、ヘテリルスルファモイル基:ホルミル基:アシル基:総炭素数2〜7の、アルキルオキシカルボニル基、総炭素数6〜12の、アリールオキシカルボニル基:総炭素数2〜7の、ヘテリルオキシカルボニル基:メルカプト基、総炭素数1〜6の、アルキルチオ基:総炭素数6〜12の、アリールチオ基:総炭素数1〜6の、アルキルスルホニル基:総炭素数6〜12の、アリールスルホニル基、総炭素数2〜7の、ヘテリルスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基等が挙げられ、これらの置換基よりなる群から選ばれる単数の置換基で置換されていても良く、複数の置換基で置換されていても良い。
STRが3,5−二置換−2,4,6−トリアジニル基である場合のその置換基としての、総炭素数1〜6の、アルキルアミノ基のアルキル基:炭素数1〜6のアルコキシ基:炭素数1〜6のアルキルチオ基のアルキル基については、ハロゲン原子:アミノ基:フェニルアミノ基:水酸基:総炭素数1〜6のアルコキシ基:フェニルオキシ基:カルバモイル基、総炭素数1〜6の、アルキルカルバモイル基:フェニルカルバモイル基:スルファモイル基:総炭素数1〜6のアルキルスルファモイル基:フェニルスルファモイル基:ホルミル基:アシル基:総炭素数1〜6のアルキルオキシカルボニル基:メルカプト基:総炭素数1〜6のアルキルチオ基:フェニルチオ基:総炭素数1〜6のアルキルスルホニル基:フェニルスルホニル基:シアノ基:ニトロ基からなる任意の置換基によって置換されていても良い。
STRが3,5−二置換−2,4,6−トリアジニル基である場合のその置換基のより好適なものとしては、アミノ基:水酸基:ハロゲン原子又は水酸基で置換されていても良い、総炭素数1〜4の、アルキルアミノ基:ハロゲン原子又はハロゲン原子で置換されていても良いアシルアミノ基で置換されていても良い、フェニルアミノ基:ハロゲン原子又はハロゲン原子で置換されていても良いアシルアミノ基で置換されていても良い、ナフチルアミノ基:ハロゲン原子又はハロゲン原子で置換されていても良いアシルアミノ基で置換されていても良い、ヘテリルアミノ基が挙げられ、中でも好ましくは、アミノ基:メチルアミノ基:エチルアミノ基:ジメチルアミノ基:水酸基:塩素原子で置換されていても良いアニリノ基であり、特に好ましくはアミノ基又は水酸基である。いずれの場合もSTRが、水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下であるイオン解離性基によって置換されることは無いその置換基と更に好ましい置換基についても、先に詳記した通りである。
DYEで示されるジオキサジン系残基は置換基を有していても良い。中でも、水溶性を保持するため親水性基が存することが必要であり、かかる親水性基には、4級アミンに代表されるカチオンタイプのもの、ポリオキシエチレンに代表されるノニオンタイプのもの、スルホン基に代表されるアニオンタイプのもの等が挙げられるが、中でも、水中での解離定数(pKa値)が−10〜5程度のイオン解離性の水溶性基が好適に用いられ、とりわけ、スルホン基、ホスホノ基、カルボキシル基、ボーレート基等が好適で、中でもスルホン基とカルボキシル基が好適に用いられ、とりわけスルホン基が好適である。また、DYEとしてのジオキサジン残基に存する上記水溶性基の個数は、1〜6が好ましく、2〜4が更に好ましく、とりわけ2が好ましい。更に、これらイオン解離性の基は、遊離酸の形で用いられても良いが、任意の対イオンとともに塩を形成した形で用いられても良い。
ジオキサジン系残基へのこれら親水性基の置換位置には制約は無いが、5位及び5’位以外であることが好ましく、中でも、1位、1’位、4位、4’位が好ましく、中でも、1位と1’位、若しくは4位と4’位というふうに、対称性が高い位置に存する場合、DYE部分の水溶性が高くなりえるので好ましい。なお、ここで、ジオキサジンの骨格の置換位置を、下記の如く規定する。
Figure 2006124475
DYEとしてのジオキサジン系残基は更に上記の置換基以外の任意の置換基を有していても良い。例えば、2,2’位又は3,3’位には、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテリルアミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、ヘテリルカルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、ヘテリルスルファモイル基、ホルミル基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテリルオキシカルボニル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテリルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテリルスルホニル基、シアノ基、ニトロ基等、一般的に「助色団」と呼ばれる原子団で置換されることが好ましく、中でも、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテリルアミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテリルチオ基が好ましく、中でもアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテリルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテリルチオ基が好ましく、中でもアルキルアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基が好ましく、アルコキシ基が最も好ましい。
表1に、本発明で用いられる一般式(1)で表される水溶性色素の好ましい例を遊離酸の形で例示するが、本発明で用いる水溶性色素はこれら例示によって限定されない。
Figure 2006124475
本発明で使用される前記一般式(1)で示される水溶性色素は、遊離酸型のまま使用しても良いが製造時、塩型で得られた場合はそのまま使用しても良いし、所望の塩型に変換して用いても良い。このような塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていても良いアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン及び炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。
塩型の交換方法としては、公知の方法を任意に用いることができる。例えば以下の方法が挙げられる。
1)塩型で得られた色素の水溶液に塩酸等の強酸を添加し、色素を遊離酸の形で酸析せしめたのち、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
2)塩型で得られたの色素の水溶液に、所望の対イオンを有する大過剰の中性塩(例えば、塩化リチウム)を添加し、塩析ケーキの形で塩交換を行う方法。
3)塩型で得られた色素の水溶液を、強酸性イオン交換樹脂で処理し、色素を遊離酸の形で酸析せしめたのち、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
4)予め所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で処理した強酸性イオン交換樹脂に、塩型で得られた色素の水溶液を作用させ、塩交換を行う方法。
また、本発明で使用される色素は、酸基の一部が塩型のものであっても良く、塩型の色素と遊離酸型の色素が混在していても良い。ここで、酸性基が遊離酸型を取るか、塩型を取るかは、記録液のpKaとインクのpHに依存する。通常、スルホ基が塩型を取り、カルボキシル基もより多く塩型になっている方が、インクの目詰まりしにくさの点では好ましい。他方、カルボキシル基が酸型を取っている色素は、耐水性や耐滲み性を重視する場合に好ましく使用される。上記の塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていても良いアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン及び炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していても良い。
対イオンの種類の選択についても、そのインクにおいて重視すべき特性に応じ、自由に選択される。色素の合成の中間体や試薬にNaを含むものが多いので、水溶性色素は一般にNa塩の形で得られるが、耐水性を重視する場合はNH塩に変換されることが多く、また色素の溶解性を高めインクの目詰まり性をより高いレベルに維持する必要があるときなどは、Li塩や、トリエタノールアミンに代表されるアルカノールアミン塩の形に変換されることもある。
また、本発明で使用する一般式(1)で表される色素の構造において、その1分子中に酸基が複数個含まれる場合は、その複数の酸基は塩型あるいは酸型であり互いに異なるものであっても良い。
本発明で使用する前記一般式(1)で示される水溶性色素は、例えば前出の特許文献8に記載の方法等、周知の方法に従って製造することができる。
[記録液]
次に、前記一般式(1)で表される水溶性色素と水を少なくとも含有する本発明の記録液について説明する。
記録液中における前記一般式(1)の水溶性色素の含有量としては、記録液全量に対して0.5重量%以上、特に2重量%以上が好ましい。また、8重量%以下、特に5重量%以下が好ましい。記録液からの色素析出、記録液の粘度上昇のおそれを低減させるためには、色素の含有量は少なめが好ましい。また、高品質の画像を得るためには、色素の含有量は多めが好ましい。
また、本発明の記録液には水以外の溶剤を含有していることが好ましく、この水以外の溶剤としては、水溶性有機溶剤として、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(#200)、ポリエチレングリコール(#400)、グリセリン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、チオジエタノール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、2−ピロリドン、スルホラン、エチルアルコール、イソプロパノール等が挙げられる。
これらの水溶性有機溶剤は、通常記録液の全量に対して1〜50重量%の範囲で使用される。一方、水は記録液の全量に対して45〜95重量%の範囲で使用される。色素の溶解性を上げるためには、水溶性有機溶剤の含有量が多すぎず、水の含有量が少なすぎないことが望ましい。また、記録液の粘度や表面張力の調節をしやすくするためには、水溶性有機溶剤の含有量が少なすぎず、水の含有量が多すぎないことが望ましい。
本発明の記録液は、前記一般式(1)で表される水溶性色素、水及び必要に応じて配合される上記水溶性有機溶剤以外の成分を含有していても良く、例えば、本発明の記録液に、その全量に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の尿素、チオ尿素、ビウレット、セミカルバジドから選ばれる化合物を添加したり、0.001〜5.0重量%の界面活性剤を添加することによって、印字後の速乾性及び印字品位をより一層改良することができる。
なお、本発明の記録液は、前記一般式(1)で表される水溶性色素以外の色素(以下「その他の色素」と称す。)を含有していても良く、その他の色素を含有する場合、記録液中の合計の色素含有量は、記録液全量に対して0.5重量%以上、特に2重量%以上が好ましく、8重量%以下、特に5重量%以下であることが好ましく、全色素量に対するその他の色素の割合は50重量%以下、特に25重量%以下であることが、本発明の効果を確実に得る上で好ましい。
本発明の記録液は、前記一般式(1)で表される水溶性色素と、水及び好ましくは更に水溶性有機溶剤と、必要に応じて配合されるその他の成分の所定量を混合して溶液とすることに容易に調製される。なお、この混合溶液は無機粒子等の不溶解分を除去するためにメンブランフィルター等で濾過し、また、吐出安定性を向上させるために脱気処理して使用に供することが好ましい。
[記録液の利用]
本発明の記録液セットは、このような本発明の記録液を含むものであり、例えば、本発明の記録液と、その他の水溶性色素ベースの記録液、又はカーボンブラックや有機顔料等の顔料ベースの記録液とで構成される。
本発明の記録方法は、このような本発明の記録液又は記録液セットを用いて記録するものであり、特にインクジェット記録に有効である。
本発明のインクカートリッジは、本発明の記録液が充填されたものである。
本発明のインクジェットプリンターは、本発明の記録液又は記録液セットが装填されたものである。
本発明の紙は、前記一般式(1)で表される水溶性色素を含むものであり、特に本発明の記録液又は記録液セットを用いて画像が印刷されたものである。
特にインクジェット写真画質印刷などに用いられる光沢紙であると、画質に優れ、かつ耐光性と耐オゾン性にも優れた記録画像が得られ、好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、何ら以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
オルフィンE1010(界面活性剤、日信化学工業より入手可能)2重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル11重量部、ジエチレングリコール13重量部、グリセリン12重量部、トリエタノールアミン0.8重量部、尿素11重量部、表2の色素3重量部に水を加え、1N水酸化ナトリウム水溶液でpHを9に調整して全量を100重量部とした。なお、この色素の水中(pH=10)での可視部最大吸収波長は、545nmであった。この組成物を充分に混合して溶解し、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで加圧濾過した後、超音波洗浄機で脱気処理して記録液を調製した。
得られた記録液を使用し、インクジェットプリンター(商品名BJ F890、キヤノン社製)を用いてインクジェット専用光沢紙(商品名PMマット紙、セイコーエプソン社製)にインクジェット記録を行った。得られた印字物は、高彩度なマゼンタ色画像であった。
得られた印字物について、下記方法で耐オゾン性、耐光性の評価を行ったところ、表2に示す如く、いずれも良好な結果が得られた。
<耐オゾン性の評価>
得られた印字物を、40℃、相対湿度55%、オゾン濃度10ppmの含オゾン空気に4時間曝露した。曝露前後の画像の変退色度合いを、測色装置(商品名スペクトロアイ、グレタグマクベス社製)にてΔE値の形で定量した。ここで、ΔE値は変退色の度合いを表す数値であり、数値が大きければ大きいほど、変退色度合いが大きい、即ち今回の評価においては耐オゾン性が劣ることを意味する。
<耐光性の評価>
キセノンウェザーオーメーターCi4000(アトラス試験機社製品)を用い、印字物に80時間キセノン光を照射した。その後、その印字物の変色度合い(ΔE値)を、上述の測色装置にて測定した。上述の如く、ΔE値は変退色の度合いを表す数値であり、数値が大きければ大きいほど、変退色度合いが大きい、即ち今回の評価においては耐光性が劣ることを意味する。
<比較例1>
色素と、「STR」部位を省いた形の表2に示す類似化合物に変更した他は、実施例1と同様にして記録液の調製、インクジェット記録、及び得られた印字物の評価を行ったところ、表2に示す通り、耐オゾン性、耐光性共に実施例1よりも劣る、不十分なものであった。
<比較例2>
色素を、前記特許文献8の実施例4の化合物に変更した他は、実施例1と同様にして記録液の調製、インクジェット記録、及び得られた印字物の評価を行ったところ、表2に示す通り、耐オゾン性、耐光性ともに、比較例1よりは良いものの、実施例1に比べると劣るものであった。
<比較例3>
色素を、表2に示すアゾ基含有化合物(特開2000−1638号公報の実施例5の化合物)に変更した他は、実施例1と同様にして記録液の調製、インクジェット記録、及び得られた印字物の評価を行ったところ、表2に示す通り、耐オゾン性、耐光性共に実施例1よりも劣る、不十分なものであった。
Figure 2006124475

Claims (12)

  1. 少なくとも水と水溶性色素とを含む記録液であって、該水溶性色素が下記一般式(1)で表される、自己組織化可能型色素であることを特徴とする記録液。
    DYE−(STR) …(1)
    (式中、DYEは、上式STRの代わりに水素原子が結合した場合、水に実質的に可溶な、アゾ基不含のn価の色素残基であり、
    STRは水に実質的に不溶な総炭素数2個以上の疎水性残基であり、
    nは1以上の整数であり、
    nが2以上の場合、複数あるSTRは、互いに同一であっても良く、異なっていても良い。)
  2. 前記水溶性色素が下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の記録液。
    Figure 2006124475
    (式中、APは置換されていても良いアントラピリドン骨格含有残基を表し、
    Solは水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基を表し、
    rは2〜10の整数を表し、
    Lは酸素原子、硫黄原子、又は−NR−を表し、Rは水素原子、置換されていても良い、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換されていても良い、炭素数2〜4のアルケニル基を表し、
    XとYは各々独立に、−NR、−OR、又は−SRを表し、R〜Rは各々独立に、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルケニル基、置換されていても良いアリール基、又は置換されていても良い複素環基を表すが、R〜Rに水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基は存在せず、またX又はYを通じて更に1個のAPで表される残基が結合することは無く、
    更にAPは、一般式(2)中に明記されたトリアジン部位以外にも、前記STRで表される疎水性残基を有していても良い。)
  3. 前記水溶性色素が下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項2に記載の記録液。
    Figure 2006124475
    (式中、Rは水素原子、置換されていても良い、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換されていても良い、炭素数2〜4のアルケニル基を表し、
    s,tは各々独立に1〜4の整数を表し、
    Ar,Arは各々独立に、アリール基もしくはヘテリル基を表す。
    Sol,L,X,Yは、一般式(2)におけると同義である。)
  4. 前記水溶性色素が、遊離酸の形で下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項3に記載の記録液。
    Figure 2006124475
    (式中、X,Yは、一般式(2)におけると同義である。)
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の記録液を含むことを特徴とする記録液セット。
  6. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の記録液又は請求項5に記載の記録液セットを使用することを特徴とする記録方法。
  7. インクジェット記録であることを特徴とする請求項6に記載の記録方法。
  8. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の記録液が充填されてなることを特徴とするインクカートリッジ。
  9. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の記録液又は請求項5に記載の記録液セットが装填されてなることを特徴とするインクジェットプリンター。
  10. 画像が印刷されてなる紙であって、下記一般式(1)で表される水溶性色素を含むことを特徴とする紙。
    DYE−(STR) …(1)
    (式中、DYEは、上式STRの代わりに水素原子が結合した場合、水に実質的に可溶な、アゾ基不含のn価の色素残基であり、
    STRは水に実質的に不溶な総炭素数2個以上の疎水性残基であり、
    nは1以上の整数であり、
    nが2以上の場合、複数あるSTRは、互いに同一であっても良く、異なっていても良い。)
  11. 下記一般式(3)で表されることを特徴とする水溶性色素。
    Figure 2006124475
    (式中、Rは水素原子、置換されていても良い、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換されていても良い、炭素数2〜4のアルケニル基を表し、
    s,tは各々独立に1〜4の整数を表し、
    Ar,Arは各々独立に、アリール基もしくはヘテリル基を表し、
    Solは水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基を表し、
    Lは酸素原子、硫黄原子、又は−NR−を表し、Rは水素原子、置換されていても良い、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換されていても良い、炭素数2〜4のアルケニル基を表し、
    XとYは各々独立に、−NR、−OR、又は−SRを表し、R〜Rは各々独立に、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルケニル基、置換されていても良いアリール基、又は置換されていても良い複素環基を表すが、R〜Rに水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基は存在せず、またX又はYを通じて更に1個の、置換されていても良いアントラピリドン骨格含有残基が結合することは無い。)
  12. 遊離酸の形で下記一般式(4)で表されることを特徴とする水溶性色素。
    Figure 2006124475
    (式中、XとYは各々独立に、−NR、−OR、又は−SRを表し、R〜Rは各々独立に、水素原子、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアルケニル基、置換されていても良いアリール基、又は置換されていても良い複素環基を表すが、R〜Rに水中での解離定数(pKa値)が−10以上5以下である解離性基は存在せず、またX又はYを通じて更に1個の、置換されていても良いアントラピリドン骨格含有残基が結合することは無い。)
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