JP2006232925A - 記録液及びその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】印字品位が良好で、記録画像の濃度、彩度、色調に優れ、とりわけ耐光性や耐オゾン性が良好な記録画像を形成し得る色素及び記録液を提供する。
【解決手段】少なくとも水と水溶性色素を含有する記録液であって、該水溶性色素が下記一般式(1)で表わされる。 DYE−B−LIN−SOL …(1)(DYEは、B−LIN−SOLの代わりに水素原子が置換した場合、水に実質的に不溶であり、アゾ結合を有さず、かつ共役系から遷移金属への配位結合を有さない、芳香族炭素環及び/又は芳香族複素環からなる縮合環残基であり、B−LINは電子共役を切断する連結基、Bは任意の連結基、SOLは水溶性基であり、B−LIN、並びにLINに結合するSOLの個数は、各々ゼロ以外の任意の整数であり、B−LIN及び/又はSOLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つのSOLはスルホン基又はホスホノ基である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、記録液及びその利用に関するものである。
直接染料や酸性染料等の水溶性染料を含む記録液の液滴を微小な吐出オリフィスから飛翔させて記録を行う、いわゆるインクジェット記録方法が実用化されている。インクジェット記録に用いられる記録液に関しては、電子写真用紙のPPC(プレインペーパーコピア)用紙、ファンホールド紙(コンピューター等の連続用紙)等の一般事務用に汎用される記録紙に対する定着が速く、しかも印字物の印字品位が良好であること、即ち印字ににじみがなく輪郭がはっきりしていることが要求されると共に、記録液としての保存時の安定性も優れていることが必要であり、従って使用できる溶剤が著しく制限される。
一方、記録液用の染料に関しては、上記のような限られた溶剤に対して充分な溶解性を有すると共に、記録液として長期間保存した場合にも安定であり、また印字された画像の濃度、色相、彩度に優れ、しかも耐水性、耐光性に優れていること等が要求されるが、これ等の多くの要求を同時に満足させることは困難であった。
更に昨今、インクジェット写真画質画像の高精細化によるインクジェット記録の社会への更なる浸透に伴い、インクジェット画像への市場の要求は更に高まった。とりわけ、インクジェット専用光沢紙や専用葉書等の上に美しい写真ライクな画像をプリントし、得られた画像を掲示して鑑賞するといった用途の拡大に伴い、空気中のオゾンや窒素酸化物、硫黄酸化物等いわゆる酸化活性ガスによる、インクジェット画像劣化挙動の改善、換言すれば画像の耐ガス性をより向上させることがより強く求められるようになってきていたが、現在汎用されている色素等では、かかる要求に必ずしも十分応えられてはいなかった。なお、耐ガス性は、一定濃度のオゾン含有空気にインクジェット画像を曝露し、これに伴う退色度合いを尺度として定量されることが一般的なので、本発明においても耐ガス性の評価にオゾン曝露試験を用い、併せて本発明においては以後、上述の耐ガス性を耐オゾン性と称することとする。
従来、インクジェット記録において、比較的良好な堅牢性を示すイエローの色素として、特定のアゾ系色素を用いることが知られており、具体的にはC.I.ダイレクトイエロー132が、高い堅牢性が必要なインクセットのイエロー色素としてしばしは用いられている(例えば、特許文献1参照)。しかし、堅牢性、とりわけ耐光性と耐オゾン性をより高いレベルで両立するとの市場の要求は、デジタル写真の普及につれて、さらに高まりつつあり、インクジェット色素の堅牢性、とりわけ耐オゾン性についてはより一層の向上が求められているのが現状である。
ところで、一般に、アントラキノン系の化合物を水溶性の色素として用いる場合は、アントラキノン環が直接スルホン化された形の化合物が用いられる。しかし、かかる化合物を水性のインクジェット記録に用いた場合は、経験的に、耐光性や耐オゾン性について、昨今のより厳しくなってきた要求水準に応えることは困難である。それは、アントラキノン骨格内部にスルホン基が存することにより、色素への水和が発色団の近傍で生じ、記録液中や記録画像上で色素が単分子に近い形で無秩序に存在してしまい、色素の水溶性は増すものの、光やガスの攻撃に対し十分な堅牢性が発揮できていないためと思われる。
例えば、特許文献2には、アントラキノン環が直接スルホン化された形の色素を該用途に使用した例が記載されているが、現在、該用途に汎用されている既存色素との比較データは記されていない。また、特許文献2には、アントラキノン環に結合させた連結基にカルボキシル基を結合させた化合物の記載もあるが、一般的に、カルボキシル基のみで水溶化せしめた色素は、インクジェット用色素としての観点からは水溶性が十分でないことが多く、この色素についても実用的な水準の水溶性は付与できていないと推定される。
特開2003−253176号公報 特開2002−020658号公報
本発明は、インクジェット記録等の方法により普通紙やインクジェット専用紙に記録した場合に、印字品位が良好であると共に記録画像の濃度、彩度、色調に優れ、とりわけ耐光性や耐オゾン性も良好な記録画像を形成し得る記録液を提供することを目的とするものである。
本発明はまた、このような記録液を用いた記録液セット、記録方法、インクカートリッジ、インクジェットプリンター及び紙を提供することを目的とする。
本発明者らは、検討の結果、記録液成分として特定の水溶性色素を使用した場合に、上記の目的が達成されることを確認し、本発明を達成したものである。
即ち、本発明の要旨は、少なくとも水と水溶性色素を含有する記録液であって、該水溶性色素が下記一般式(1)で表わされる、自己組織形成型色素であることを特徴とする記録液、に存する(請求項1)。
DYE−B−LIN−SOL …(1)
(式中、DYEは、上式B−LIN−SOLの代わりに水素原子が置換した場合、水に実質的に不溶であり、アゾ結合を有さず、かつ共役系から遷移金属への配位結合を有さない、芳香族炭素環及び/又は芳香族複素環からなる縮合環残基であり、
B−LINは電子共役を切断する連結基であり、Bは任意の連結基(単結合を含む)であり、
SOLは水溶性基であり、
DYEに結合するB−LIN、並びにLINに結合するSOLの個数は、各々ゼロ以外の任意の整数であり、
B−LIN及び/又はSOLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、
少なくとも一つのSOLはスルホン基又はホスホノ基である。)
ただし、後述の如く、本発明で用いる水溶性色素は、上記一般式(1)で示されるような遊離酸型であっても良く、その塩型であっても良い。
また、本発明の別の要旨は、SOLが、色素分子中に2個以上存在することを特徴とする請求項1に記載の記録液、に存する(請求項2)。
また、本発明の別の要旨は、Bが、単結合、酸素原子、硫黄原子、及び置換されていてもよいイミノ基のいずれかであり、LIN−SOLは、各々、1以上のSOLで置換され、かつSOL以外の置換基を有していてもよいアルキル基、アルキルカルボ基、アルキルスルホニル基、N−アルキルカルバモイル基、N−アルキルスルファモイル基、アルキルアミノトリアジニル基、アリールカルボ基、アリールスルホニル基、N−アリールカルバモイル基、N−アリールスルファモイル基、アリールアミノトリアジニル基、ヘテリルカルボ基、ヘテリルスルホニル基、N−ヘテリルカルバモイル基、N−ヘテリルスルファモイル基、及びヘテリルアミノトリアジニル基からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録液、に存する(請求項3)。
また、本発明の別の要旨は、DYEが、下記一般式(2)で表わされることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の記録液、に存する(請求項4)。
Figure 2006232925
(式中、Aはイオン解離性水溶性基以外の任意の置換基を表わし、aは0〜8の任意の数を表わし、Aが複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
また、本発明の別の要旨は、上記一般式(2)が、下記一般式(3)で表わされることを特徴とする請求項4に記載の記録液、に存する(請求項5)。
Figure 2006232925
(式中、Aはイオン解離性水溶性基以外の任意の置換基を表わし、aは0〜4の任意の数を表わし、Bは単結合、酸素原子、硫黄原子、及び置換されていてもよいイミノ基のいずれかを表わし、
bは1〜4の任意の数を表わし、
A及び/又はBが複数個存在する場合それらは同一でも異なっていてもよく、a+b≦8である。
B−LINは電子共役を切断する連結基であり、
SOLは水溶性基であり、
フェニルチオ基に結合するB−LIN、並びにLINに結合するSOLの個数は、各々ゼロ以外の任意の整数であり、
B−LIN及び/又はSOLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、
少なくとも一つのSOLはスルホン基又はホスホノ基である。)
また、本発明の別の要旨は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の記録液を含むことを特徴とする記録液セット、に存する(請求項6)。
また、本発明の別の要旨は、請求項1ないし5のいすれか1項に記載の記録液或いは請求項6に記載の記録液セットを使用することを特徴とする記録方法、に存する(請求項7)。
また、本発明の別の要旨は、インクジェット記録であることを特徴とする請求項7に記載の記録方法、に存する(請求項8)。
また、本発明の別の要旨は、請求項1ないし5のいすれか1項に記載の記録液が充填されてなることを特徴とするインクカートリッジ、に存する(請求項9)。
また、本発明の別の要旨は、請求項1ないし5のいすれか1項に記載の記録液又は請求項6に記載の記録液セットが装填されてなることを特徴とするインクジェットプリンター、に存する(請求項10)。
また、本発明の別の要旨は、画像が印刷されてなる紙であって、前記一般式(1)で表わされる水溶性色素を含むことを特徴とする紙、に存する(請求項10)。
なお、本発明において、「画像」とは、文字、記号、絵、線分、図形等、すべての記録対象を包含するものである。
本発明によれば、インクジェット記録等の方法により普通紙やインクジェット専用紙に記録した場合に、印字品位が良好であると共に記録画像の濃度、彩度、色調に優れ、とりわけ耐光性や耐オゾン性が良好な記録画像を形成することができる。
以下に本発明の記録液、及びその利用の実施の形態を詳細に説明する。
[水溶性色素]
まず、本発明で用いる水溶性色素について説明する。
本発明で用いる水溶性色素は、下記一般式(1)で表わされる自己組織形成型色素である。
DYE−B−LIN−SOL …(1)
(式中、DYEは、上式B−LIN−SOLの代わりに水素原子が置換した場合、水に実質的に不溶であり、アゾ結合を有さず、かつ共役系から遷移金属への配位結合を有さない、芳香族炭素環及び/又は芳香族複素環からなる縮合環残基であり、
B−LINは電子共役を切断する連結基であり、Bは任意の連結基(単結合を含む)であり、
SOLは水溶性基であり、
DYEに結合するB−LIN、並びにLINに結合するSOLの個数は、各々ゼロ以外の任意の整数であり、
B−LIN及び/又はSOLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、
少なくとも一つのSOLはスルホン基又はホスホノ基である。)
〈自己組織形成型色素の機能〉
上記一般式(1)で表わされる本発明に係る自己組織形成型色素は、疎水性に富む色素残基部分(DYE部分)と、本来水に不溶なDYE部分を水中に溶解するための水溶性基(SOL部分)とを、適切なスペーサー(B−LIN部分)で連結させた形のものである。その目的は該色素について、水系の媒体に対し巨視的な色素分子としての溶解性は維持させつつ、微視的には、複数分子の複数のDYE部分を、積層構造を形成する形で相互作用させつつ近接して存在させることである。かかる記録液により得られた記録画像においては、色素残基の疎水性とスペーサーの屈曲性と水溶性基の数と種類と置換位置を適切に組み合わせることにより、色素残基部分が適度に近接し適度に積層しつつ集合した構造体が形成され得る。これに対し従前の水溶性染料は、記録液中では単分子に近い形で溶解していると推定され、記録画像においても個々の色素分子は、近傍に水分子を保持したまま無秩序に記録紙上に存在しているものと推定される。
その結果、本発明に係る水溶性色素を用いて記録を行えば、水溶性色素による記録でありながら記録紙上では堅牢性に富む顔料ライクな色素構造体を、微視的に形成させ得る可能性があり、結果として従前の水溶性色素による記録に比しより改善された堅牢性に至り得ると推定される。
このようなことから、本発明では、屈曲性に富み、色素残基として幾何異性体など多様な存在状態をとるため秩序ある積層や凝集構造が得られにくい危惧があるアゾ系色素骨格の適用を避けた。併せて、水酸イオンやハロゲンイオン等、色素リガンド以外の多様な配位子による配位結合や、配位の立体異性体形成等により、色素残基として多様な存在状態を取りえるため秩序ある積層や凝集構造が得られにくい危惧がある、アゾ系や銅フタロシアニン系等の所謂金属キレート色素骨格の適用も避けた。そして、積層や秩序ある凝集構造を取りやすいと思われる、平板な、芳香族炭素環又は芳香族複素環からなる縮合環残基DYEを色素残基として選んだ。同時に、かかる色素残基DYEを水溶化するに当たり、従前の色素合成にて一般的に行われる、スルホン化に代表される、色素残基への水溶性基の直接導入を避けた。これは、前述のように、かかる方法で合成された従前型の水溶性色素では、色素残基上すなわち共役系内部、場合によっては発色団の近傍に、往々にして複数の水溶性基が導入される危惧があり、それら水溶性基が水和され、結果として色素同士の接近を妨げ、光や、特にオゾンガスに対する堅牢性が不十分になる危険性があるからである。それに対し本発明では、特に選択された疎水性に富む平板な縮合環色素残基部分(DYE部分)と、本来水に不溶なDYE部分を水中に溶解するための水溶性基(SOL部分)とを、適切なスペーサー(B−LIN部分)で連結させることにより、水溶性と高堅牢性を両立させたものである。
〈DYE〉
前記一般式(1)において、DYEで表わされる色素残基は、それに水素原子が結合した化合物とした場合、水に実質的に不溶でなければならない。ここで実質的に水に不溶性であるとは、25℃にて、水に対して1重量%未満の溶解度を有することを指すが、好ましくは0.1重量%未満、中でも好ましくは0.01重量%未満、より好ましくは0.001重量%未満(1ppm未満)の溶解度である。溶解度の下限に関しては、水に不溶と呼ばれている色素にしても、0.001ppm(1ppb)〜0.0001ppm(0.1ppb)程度の溶解度はあると経験的には思われるが、かかる低溶解性の色素の微少な量を定量することは機器分析の精度を勘案すると有意なものとは考えにくいので、本発明では溶解度の下限は規定しない。
DYEで表わされる、水に実質的に不溶であり、アゾ結合を有さず、併せて共役系から遷移金属への配位結合を有さない、芳香族炭素環及び/又は芳香族複素環からなる縮合環残基には、本発明の主旨に反しない限り特に制約は無いが、平面性に富む、疎水性相互作用により積層しやすい縮合環系色素残基であることが望ましい。
DYEの好ましい例としては、アントラピリドン系の色素残基、アントラキノン系の色素残基、ジオキサジン系の色素残基、カルボインジゴ系の色素残基、チオインジゴ系の色素残基、フタロペリノン系の色素残基、ピラン系の色素残基、フラン系の色素残基、チアジン系の色素残基、ペリミドン系の色素残基、ペリノン系の色素残基、キノフタロン系の色素残基、フェノキサジン系の色素残基、キサンテン系の色素残基、チオキサンテン系の色素残基、アザチオキサンテン系の色素残基、が挙げられるが、中でもアントラキノン系の色素残基、アントラピリドン系の色素残基、ジオキサジン系の色素残基、カルボインジゴ系の色素残基、チオインジゴ系の色素残基が好適に用いられ、とりわけ、アントラキノン系の色素残基が好適に用いられる。
DYEで示される色素残基は、B−LIN―SOLで示した水溶性を付与するための置換基以外にも、任意の数の任意の種類の置換基(ただし、後述の如く、イオン解離性水溶性基を除く。)により任意の位置が置換されていてもよく、この置換基としては具体的には色素の置換基として通常用いられるものが使用される。例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテリルアミノ基、アシルアミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、ヘテリルカルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、ヘテリルスルファモイル基、ホルミル基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテリルオキシカルボニル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテリルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテリルスルホニル基、シアノ基、ニトロ基等、一般的に「助色団」と呼ばれる原子団等は、色素残基の色相や吸光度を大きく左右するので、目的とする色相を得るために適宜選択して用いられ、一方、アルキル基、アルケニル基、アリール基等は、目的とする色素の親水性や疎水性を所望のものに調節するためにも用いられる。
ここで、前述のように、一般式(1)で示される水溶性色素は、DYE部位にB−LIN部位を介して存するSOL部位により水溶化し、一方、DYE部位には、より高い堅牢性を印画物に付与すべく、印字後の乾燥時に疎水性分子間相互作用による自己組織化を能力が必要なので、DYE部位に、スルホン基、ホスホノ基、カルボキシル基、ボーレート基といった、水溶性の高いイオン解離性基が直接結合することは避ける必要がある。
DYEで表わされる色素残基の分子量については特に制限は無いが、通常150〜2000程度のもの、好ましくは200〜1000程度のもの、更に好ましくは300〜800程度、特に好ましくは400〜600程度のものが好適に用いられる。一般に、色素の溶解性を上げるためには、分子量が小さいことが望ましく、一方、色素の色濃度を上げるためには、分子量が大きいことが望ましい。
〈B−LIN〉
前記一般式(1)において、Bは任意の連結基(単結合を含む)であり、B−LINは電子共役を切断する任意の連結基であるが、分子量20〜700の原子団であることが好ましく、より好ましくは分子量30〜500、更に好ましくは40〜400であり、DYE部分とSOL部分を、立体的にも、電子の共役的にも隔離させるものが好ましい。
電子の共役の切断とは、文献(例えば、細田豊 著「染料化学」、技報堂、151ページ)に一部が例示された、所謂「隔離基」によってなされる。それらのうち、−NH−、−O−、−S−については、それらの一端に色素残基が結合し、他端にフェニル基やナフチル基といったアリール基が結合している場合は、経験的には上記共役切断効果は低いと思われる。具体的には色素残基に、例えばアニリノ基やフェノキシ基といった原子団が結合する場合としない場合では、分子の吸収スペクトルや色相にも影響が及ぶことが多いので、本発明においては、上記の3系統の2価連結基については隔離基とは見なさない。従って、例えば、上記3系統の2価連結基を介して色素残基とアリール基が結合している場合には、そのアリール基までを含めてDYE部分と見なすこととする。
B−LINのうち、連結基Bは、好ましくは単結合、酸素原子、硫黄原子、置換されていても良いイミノ基のいずれかであるが、ここで、置換されていてもよいイミノ基に導入される置換基としては、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又は置換されていてもよい炭素数2〜4のアルケニル基が挙げられる。連結基Bは、中でも、単結合又は置換されていてもよいイミノ基であることが好ましく、ここで上記イミノ基の置換基としてはメチル基が好ましいが無置換アミノ基の方がより好適に用いられる。
好ましいLINの例としては、1価の残基の形で表現して(即ち、SOL、或いはSOL以外に導入されうる置換基を除いて)、アルキル基、アルキルカルボ基、アルキルスルホニル基、N−アルキルカルバモイル基、N−アルキルスルファモイル基、アルキルアミノトリアジニル基、アリールカルボ基、アリールスルホニル基、N−アリールカルバモイル基、N−アリールスルファモイル基、アリールアミノトリアジニル基、ヘテリルカルボ基、ヘテリルスルホニル基、N−ヘテリルカルバモイル基、N−ヘテリルスルファモイル基、ヘテリルアミノトリアジニル基等が好ましく、中でも、アルキル基、アルキルスルホニル基、アルキルアミノトリアジニル基、アリールカルボ基、N−アリールカルバモイル基、N−アリールスルファモイル基、アリールアミノトリアジニル基、N−ヘテリルカルバモイル基が好ましい。上記例示置換基のうち、アルキル基の炭素数は1〜8が好ましく、中でも2〜5が好ましく、中でも2〜3が好ましい。アリール基の炭素数は6〜12が好ましく、中でも6〜10が好ましい。ヘテリル基の炭素数は1〜8が好ましく、中でも2〜5が好ましい。
LINで表わされる連結基の分子量については特に制限は無いが、通常20〜600程度のもの、好ましくは30〜400程度のもの、更に好ましくは40〜300程度のものが好適に用いられる。
前記一般式(1)で表わされる本発明に係る水溶性色素は、複数のB−LINを有していてもよいが、その場合において、複数あるB−LINのB及び/又はLINは同一であっても異なるものであってもよい。
〈SOL〉
本発明で用いられる色素は、実質的に水溶性である必要がある。ここで実質的に水溶性であるとは、25℃にて、水に対して0.1重量%以上の溶解度を有することを指すが、1重量%以上の溶解度を有することが更に好ましく、4重量%以上の溶解度を有することが更に好ましく、8重量%以上の溶解度を有することが更に好ましい。
そのため、本発明で用いられる前記一般式(1)で表わされる色素には、SOLで表わされる親水性基が必須であり、かかる親水性基には、4級アミンに代表されるカチオンタイプのもの、ポリオキシエチレンに代表されるノニオンタイプのもの、スルホン基に代表されるアニオンタイプのもの等が挙げられるが、中でも、水中での解離乗数が−10〜5程度のイオン解離性の水溶性基が好適に用いられ、とりわけ、スルホン基、ホスホノ基、カルボキシル基、ボーレート基等が好適で、中でも水中での解離乗数が−10〜3程度のイオン解離性基が少なくとも一つは必須であり、具体的にはスルホン基とホスホノ基が好適に用いられ、スルホン基が最も好ましい。
前記一般式(1)で表わされる色素1分子中のSOLの個数は、DYE部分の疎水性の高さ、B−LIN部分の疎水性の高さと屈曲性、目標とする溶解度の3点を考え合わせて任意に決められるが、一般的には1分子あたり1〜4個のSOLが存することが好ましく、中でも2〜3個のSOLがあることが好ましい。
色素分子中に複数のSOLが存する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、またSOLが夫々LINに結合していてもよいが、一つのLINに複数のSOLが結合していてもよい。
〈DYEがアントラキノン骨格である場合〉
前記一般式(1)において、DYEがアントラキノン系残基である場合、即ち、DYEが下記一般式(2)で表わされる場合の好適例について説明する。
Figure 2006232925
(式中、Aはイオン解離性水溶性基以外の任意の置換基を表わし、aは0〜4の任意の数を表わし、Bは単結合、酸素原子、硫黄原子、及び置換されていてもよいイミノ基のいずれかを表わし、
bは1〜4の任意の数を表わし、
A及び/又はBが複数個存在する場合それらは同一でも異なっていてもよく、a+b≦8である。
B−LINは電子共役を切断する連結基であり、
SOLは水溶性基であり、
フェニルチオ基に結合するB−LIN、並びにLINに結合するSOLの個数は、各々ゼロ以外の任意の整数であり、
B−LIN及び/又はSOLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、
少なくとも一つのSOLはスルホン基又はホスホノ基である。)
なお、以下において、アントラキノン環の置換位置の表示に当たっては、下記のものを用いる。
Figure 2006232925
DYEが上記一般式(2)で表わされるアントラキノン系色素の場合、この色素は任意の位置にイオン解離性水溶性基以外の置換基Aを有していてもよい。ここで、置換基Aとして、例えば、ハロゲン原子、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテリルアミノ基、アシルアミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、ヘテリルカルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、ヘテリルスルファモイル基、ホルミル基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテリルオキシカルボニル基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテリルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテリルスルホニル基、シアノ基、ニトロ基等、一般的に「助色団」と呼ばれる原子団等は、色素残基の色相や吸光度を大きく左右するので、目的とする色相を得るために適宜選択して用いられるが、具体的には1位、4位、5位、8位の何れか2〜4箇所に、アルキルチオ基やアリールチオ基を結合させると、インクジェット用イエローとして実用に耐える彩度と色相が得られるので、イエローの色相が求められる際に好ましく、中でも1位と5位とをフェニルチオ基で置換したものが特に好ましい。一方、1位、4位、5位、8位の何れか2〜4箇所に、アルキル基アミノ基、アリールアミノ基、アシル基アミノ基、又は水酸基等を結合させると、色素の吸収波長が長波長側にシフトし、マゼンタ、ブルーなどの色相が得られるので、これらの色相が求められる場合に好ましい。
本発明で用いられるアントラキノン色素残基は、上述の通り、フェニルチオ基、フェノキシ基、アニリノ基等の芳香族環含有の置換基で置換されうるが、それらの置換基にB−LIN−SOLが結合する場合、その結合位置は芳香環のアントラキノンへの結合基に対しオルト位にすると、水溶化効果が大きくなるので、より高い水溶性が求められる場合に好ましく、一方、メタ位又はパラ位にすると、色素の堅牢性がよりよくなる傾向があるので、より高い堅牢性が求められる場合に好ましい。一方、−NH基が直接アントラキノン骨格に結合したもの、とりわけ1位、4位、5位、8位の何れかに結合したものは、その部分がオゾンガスの付加反応を受けやすいためか、インクジェット画像の耐オゾン性が低下しがちなので好ましくない。一方、2位,3位,6位,7位については、置換による色相への影響が相対的に小さいので、DYE部の疎水性を調節するため炭素数1〜15程度好ましくは炭素数2〜8程度の、アルキル基やアルケニル基やアリール基に代表される疎水性基や、炭素数2〜8好ましくは炭素数3〜6程度のオキシアルキレン基に代表されるノニオン性基により置換されることが好ましいが、前述の如く、スルホン基やカルボキシル基に代表されるイオン解離性水溶性基で置換されることは、本発明の主旨に反するので好ましくない。
DYEがアントラキノン骨格である場合、本発明に係る水溶性色素は、下記一般式(3)で表わされるものが好ましい。
Figure 2006232925
(式中、Aはイオン解離性水溶性基以外の任意の置換基を表わし、aは0〜4の任意の数を表わし、Bは単結合、酸素原子、硫黄原子、及び置換されていてもよいイミノ基のいずれかを表わし、
bは1〜4の任意の数を表わし、
A及び/又はBが複数個存在する場合それらは同一でも異なっていてもよく、a+b≦8である。
B−LINは電子共役を切断する連結基であり、
SOLは水溶性基であり、
フェニルチオ基に結合するB−LIN、並びにLINに結合するSOLの個数は、各々ゼロ以外の任意の整数であり、
B−LIN及び/又はSOLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、
少なくとも一つのSOLはスルホン基又はホスホノ基である。)
上記一般式(3)において、A,B,LIN,SOLについては前述の通りであり、前述の如く、1位と5位にフェニルチオ基を有し、このフェニルチオ基にB−LIN−SOLが結合したものが好ましい。また、この場合において、フェニルチオ基に対するB−LIN−SOLの結合位置がオルト位であると水溶化効果の面で好ましく、メタ位又はパラ位であると色素の堅牢性の面で好ましい。
〈DYEがアントラピリドン骨格である場合〉
前記一般式(1)において、DYEがアントラピリドン系残基である場合についても、アントラピリドン骨格は任意の位置に任意の数の任意の置換基を導入し得るが、本発明の主旨に従い、この置換基としては、スルホン基やカルボキシル基に代表されるイオン解離性水溶性基は好ましくない。それら以外のアントラピリドン骨格に導入し得る公知の置換基は、本発明の主旨を逸脱しない限り好適に用いられる。具体的には、下記の特許文献に例示された置換基が好ましい。
特開昭59−74173号公報
特開平2−16171号公報
特開2000−109464号公報
特開2000−169776号公報
特開2000−191660号公報
特開2001−72884号公報
特開2001−139836号公報
特開2003−192930号公報
〈DYEがジオキサジン骨格である場合〉
前記一般式(1)において、DYEがジオキサジン系残基である場合についても、任意の数の任意の置換基を任意の位置に有していても良い。なお、以下において、ジオキサジン環の置換位置の表示に当たっては、下記のものを用いる。
Figure 2006232925
ジオキサジン系残基の置換基についても、本発明の主旨に従いスルホン基やカルボキシル基に代表されるイオン解離性水溶性基は好ましくないが、それら以外の公知のジオキサジン化合物の置換基は、本発明の主旨を逸脱しない限り好適に用いられる。
ジオキサジン環の2位と6位の好ましい置換基の例としては、色相を深色化するとの観点から電子供与性基であり、具体的には、炭素数1〜15、好ましくは炭素数2〜10程度の、アルキル基、アリール基、ヘテリル基、アシル基からなる群から選ばれる置換基で置換されていてもよい、アミノ基、酸素原子、硫黄原子である。
9位と10位の置換基としては、色素の電子密度を下げて酸化分解を防ぐとの観点から、電子吸引性基が好ましく、具体的には塩素に代表されるハロゲン原子やシアノ基が好ましい。
〈DYEが他の縮合環である場合〉
DYEがそれ以外の縮合環である場合の好ましい置換基の置換位置については、α位とβ位に分けられるが、α位の置換基としては、上記アントラキノン骨格の1位、4位、5位、8位の置換基の好ましい例として挙げたものが好ましく、β位の置換基としては同2位、3位、6位、7位の置換基として説明した基が好ましい。
〈分子量〉
前記一般式(1)で表わされる水溶性色素の分子量については特に制限は無いが、通常300〜2000程度、好ましくは400〜1500程度、更に好ましくは500〜1000程度のものが好適に用いられる。
〈具体例〉
前記一般式(1)で表わされる水溶性色素を構成するDYEの構造、B−LIN−SOLの構造、それらの組み合わせとしての色素の構造の好適な具体例を、以下に遊離酸の形で例示するが、本発明は以下の例示のものに何ら制限されるものではない。
Figure 2006232925
Figure 2006232925
Figure 2006232925
〈遊離酸型/塩型〉
本発明で使用される前記一般式(1)で示される水溶性色素は、遊離酸型のまま使用してもよいが製造時、塩型で得られた場合はそのまま使用してもよいし、所望の塩型に変換して用いてもよい。このような塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン及び炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。
塩型の交換方法としては、公知の方法を任意に用いることができる。例えば以下の方法が挙げられる。
1)塩型で得られた色素の水溶液に塩酸等の強酸を添加し、色素を遊離酸の形で酸析せしめたのち、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
2)塩型で得られたの色素の水溶液に、所望の対イオンを有する大過剰の中性塩(例えば、塩化リチウム)を添加し、塩析ケーキの形で塩交換を行う方法。
3)塩型で得られた色素の水溶液を、強酸性イオン交換樹脂で処理し、色素を遊離酸の形で酸析せしめたのち、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
4)予め所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で処理した強酸性イオン交換樹脂に、塩型で得られた色素の水溶液を作用させ、塩交換を行う方法。
また、本発明で使用される色素は、酸基の一部が塩型のものであってもよく、塩型の色素と遊離酸型の色素が混在していてもよい。ここで、酸性基が遊離酸型を取るか、塩型を取るかは、記録液のpKaとインクのpHに依存する。通常、スルホ基が塩型を取り、カルボキシル基もより多く塩型になっている方が、インクの目詰まりしにくさの点では好ましい。他方、カルボキシル基が酸型を取っている色素は、耐水性や耐滲み性を重視する場合に好ましく使用される。上記の塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、又は有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミン及び炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
対イオンの種類の選択についても、そのインクにおいて重視すべき特性に応じ、自由に選択される。色素の合成の中間体や試薬にNaを含むものが多いので、水溶性色素は一般にNa塩の形で得られるが、耐水性を重視する場合はNH塩に変換されることが多く、また色素の溶解性を高めインクの目詰まり性をより高いレベルに維持する必要があるときなどは、Li塩や、トリエタノールアミンに代表わされるアルカノールアミン塩の形に変換されることもある。
また、本発明で使用する一般式(1)で表わされる色素の構造において、その1分子中に酸基が複数個含まれる場合は、その複数の酸基は塩型あるいは酸型であり互いに異なるものであってもよい。
〈水溶性〉
前記一般式(1)で表わされる水溶性色素の水溶性の程度としては、例えば25℃における水への溶解度が0.1〜30重量%程度であり、好ましくは1〜25%であり、更に好ましくは4〜20重量%であり、特に好ましくは8〜15重量%である。ここで、水に対する溶解度が高めのものは、ノズルヘッドでインクが乾燥する際などにも、色素の析出がより起こりにくいので、より高い耐目詰まり性が求められる場合に好ましく、一方、水に対する溶解度が低めのものには、印字物の耐水性がより良好なものが多いので、より高い耐水性が求められる場合に好適である。
〈製造法〉
前記一般式(1)で示される水溶性色素は、例えば後述の合成例に示したように、周知の方法に従って製造することができる。
[記録液]
次に、前記一般式(1)で表わされる水溶性色素と水を少なくとも含有する本発明の記録液について説明する。
記録液中における前記一般式(1)の水溶性色素の含有量としては、記録液全量に対して0.5重量%以上、特に2重量%以上が好ましい。また、10重量%以下、特に8重量%以下が好ましい。記録液からの色素析出、記録液の粘度上昇のおそれを低減させるためには、色素の含有量は少なめが好ましい。また、高品質の画像を得るためには、色素の含有量は多めが好ましい。
また、本発明の記録液には水以外の溶剤を含有していることが好ましく、この水以外の溶剤としては、水溶性有機溶剤として、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(#200)、ポリエチレングリコール(#400)、グリセリン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、チオジエタノール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、2−ピロリドン、スルホラン、エチルアルコール、イソプロパノール等が挙げられる。
これらの水溶性有機溶剤は、通常記録液の全量に対して1〜50重量%の範囲で使用される。一方、水は記録液の全量に対して45〜95重量%の範囲で使用される。色素の溶解性を上げるためには、水溶性有機溶剤の含有量が多すぎず、水の含有量が少なすぎないことが望ましい。また、記録液の粘度や表面張力の調節をしやすくするためには、水溶性有機溶剤の含有量が少なすぎず、水の含有量が多すぎないことが望ましい。
本発明の記録液は、前記一般式(1)で表わされる水溶性色素、水及び必要に応じて配合される上記水溶性有機溶剤以外の成分を含有していてもよく、例えば、本発明の記録液に、その全量に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の尿素、チオ尿素、ビウレット、セミカルバジドから選ばれる化合物を添加したり、0.001〜5.0重量%の界面活性剤を添加することによって、印字後の速乾性及び印字品位をより一層改良することができる。
なお、本発明の記録液は、前記一般式(1)で表わされる水溶性色素以外の色素(以下「その他の色素」と称す。)を含有していてもよく、その他の色素を含有する場合、記録液中の合計の色素含有量は、記録液全量に対して0.5重量%以上、特に2重量%以上が好ましく、8重量%以下、特に5重量%以下であることが好ましく、全色素量に対するその他の色素の割合は50重量%以下、特に25重量%以下であることが、本発明の効果を確実に得る上で好ましい。
本発明の記録液は、前記一般式(1)で表わされる水溶性色素と、水及び好ましくは更に水溶性有機溶剤と、必要に応じて配合されるその他の成分の所定量を混合して溶液とすることに容易に調製される。なお、この混合溶液は無機粒子等の不溶解分を除去するためにメンブランフィルター等で濾過し、また、吐出安定性を向上させるために脱気処理して使用に供することが好ましい。
[記録液の利用]
本発明の記録液セットは、このような本発明の記録液を含むものであり、例えば、本発明の記録液と、その他の水溶性色素ベースの記録液、又はカーボンブラックや有機顔料等の顔料ベースの記録液とで構成される。
本発明の記録方法は、このような本発明の記録液又は記録液セットを用いて記録するものであり、特にインクジェット記録に有効である。
本発明のインクカートリッジは、本発明の記録液が充填されたものである。
本発明のインクジェットプリンターは、本発明の記録液又は記録液セットが装填されたものである。
本発明の紙は、前記一般式(1)で表わされる水溶性色素を含むものであり、特に本発明の記録液又は記録液セットを用いて画像が印刷されたものである。
特にインクジェット写真画質印刷などに用いられる光沢紙であると、画質に優れ、かつ耐光性と耐オゾン性にも優れた記録画像が得られ、好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、何ら以下の実施例に限定されるものではない。
〈合成例〉
60%水素化ナトリウム(試薬)0.88重量部とテトラヒドロフラン(試薬)10重量部の混合物に、3−アミノチオフェノール(試薬)2.75重量部のテトラヒドロフラン(試薬)50重量部溶液を室温で滴下し、20分間攪拌後、1,5−ジクロロ−9,10−アントラキノン(試薬)2.77重量部を加え、4時間加熱還流した。室温へ冷却後、水を加え、沈殿を濾取して、水及びヘキサンで順次洗浄して、1,5−ビス[(3−アミノフェニル)チオ]−9,10−アントラキノン4.55重量部を得た。
この1,5−ビス[(3−アミノフェニル)チオ]−9,10−アントラキノン0.91重量部、N−メチルピロリドン(試薬)100重量部及び炭酸ナトリウム(試薬)0.42重量部の混合物に、氷冷下にm−クロロスルホニルベンゾイルクロリド(試薬)1.05重量部を10重量部のN−メチルピロリドン(試薬)に溶解した溶液を滴下し、次いで室温で30分間攪拌した。氷冷下に1N水酸化ナトリウム水溶液10重量部を加え、室温で30分間攪拌後、沈殿を濾過で除いた。濾液にイソプロピルアルコール(試薬)400重量部を加え、生じた沈殿を濾取、乾燥して、目的物である前記例示色素(1)を0.77重量部得た。
ESI−MS m/z=843([M+Na]
pH=10の水中での最大吸収波長=464nm
〈実施例1〉
オルフィンE1010(界面活性剤、日信化学工業より入手可能)2重量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル11重量部、ジエチレングリコール13重量部、グリセリン12重量部、トリエタノールアミン0.8重量部、尿素11重量部、上記合成例で製造した色素(1)8重量部に水を加え、1N水酸化ナトリウム水溶液でpHを9に調整して全量を100重量部とした。この組成物を充分に混合して溶解し、孔径0.45μmのメンブレンフィルターで加圧濾過した後、超音波洗浄機で脱気処理して記録液を調製した。
得られた記録液を使用し、インクジェットプリンター(商品名BJ F890、キヤノン社製)を用いてインクジェット専用光沢紙(商品名PR101、キヤノン社製)にインクジェット記録を行い、イエローのベタ画像を得た。
得られた画像について、下記方法で耐オゾン性、耐光性の評価を行ったところ、表1に示す如く、いずれも良好な結果が得られた。
〈耐オゾン性の評価〉
得られた画像を、40℃、相対湿度55%、オゾン濃度10ppmの含オゾン空気に4時間曝露した。曝露前後の画像の変退色度合いを、測色装置(商品名スペクトロアイ、グレタグマクベス社製)にてOD残存率の形で定量した。ここで、OD残存率は退色の度合いを表す数値であり、数値が小さければ小さいほど、退色度合いが大きい、即ち今回の評価においては耐オゾン性が劣ることを意味する。
〈耐光性の評価〉
キセノンウェザーオーメーターCi4000(アトラス試験機社製品)を用い、画像に80時間キセノン光を照射した。その後、その画像の退色度合い(OD残存率)を、上述の測色装置にて測定した。上述の如く、OD残存率は退色の度合いを表す数値であり、数値が小さければ小さいほど、退色度合いが大きい、即ち今回の評価においては耐光性が劣ることを意味する。
〈比較例1〉
色素をC.I.ダイレクトイエロー132に変え、記録液の色濃度(OD)が実施例1と同濃度になるように調節しつつ、実施例1と同様の操作により記録液を調製した。この記録液を用いて実施例1と同様にしてインクジェット記録、及び得られた画像の評価を行ったところ、表1に示す通り、耐光性は実施例1と同等に良好なものであったが、耐オゾン性については、実施例1の3倍近く退色した。
比較例2
色素を表1の比較例2の項に示したもの(試薬)に変更した他は、比較例1と同様の操作にて記録液を調製し、同様に、インクジェット記録、及び得られた画像の評価を行ったところ、表1に示す通り、耐オゾン性、耐光性ともに極めて低いものであった。
Figure 2006232925

Claims (11)

  1. 少なくとも水と水溶性色素を含有する記録液であって、該水溶性色素が下記一般式(1)で表わされる、自己組織形成型色素であることを特徴とする記録液。
    DYE−B−LIN−SOL …(1)
    (式中、DYEは、上式B−LIN−SOLの代わりに水素原子が置換した場合、水に実質的に不溶であり、アゾ結合を有さず、かつ共役系から遷移金属への配位結合を有さない、芳香族炭素環及び/又は芳香族複素環からなる縮合環残基であり、
    B−LINは電子共役を切断する連結基であり、Bは任意の連結基(単結合を含む)であり、
    SOLは水溶性基であり、
    DYEに結合するB−LIN、並びにLINに結合するSOLの個数は、各々ゼロ以外の任意の整数であり、
    B−LIN及び/又はSOLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、
    少なくとも一つのSOLはスルホン基又はホスホノ基である。)
  2. SOLが、色素分子中に2個以上存在することを特徴とする請求項1に記載の記録液。
  3. Bが、単結合、酸素原子、硫黄原子、及び置換されていてもよいイミノ基のいずれかであり、
    LIN−SOLは、各々、1以上のSOLで置換され、かつSOL以外の置換基を有していてもよいアルキル基、アルキルカルボ基、アルキルスルホニル基、N−アルキルカルバモイル基、N−アルキルスルファモイル基、アルキルアミノトリアジニル基、アリールカルボ基、アリールスルホニル基、N−アリールカルバモイル基、N−アリールスルファモイル基、アリールアミノトリアジニル基、ヘテリルカルボ基、ヘテリルスルホニル基、N−ヘテリルカルバモイル基、N−ヘテリルスルファモイル基、及びヘテリルアミノトリアジニル基からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録液。
  4. DYEが、下記一般式(2)で表わされることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の記録液。
    Figure 2006232925
    (式中、Aはイオン解離性水溶性基以外の任意の置換基を表わし、aは0〜8の任意の数を表わし、Aが複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
  5. 上記一般式(2)が、下記一般式(3)で表わされることを特徴とする請求項4に記載の記録液。
    Figure 2006232925
    (式中、Aはイオン解離性水溶性基以外の任意の置換基を表わし、aは0〜4の任意の数を表わし、Bは単結合、酸素原子、硫黄原子、及び置換されていてもよいイミノ基のいずれかを表わし、
    bは1〜4の任意の数を表わし、
    A及び/又はBが複数個存在する場合それらは同一でも異なっていてもよく、a+b≦8である。
    B−LINは電子共役を切断する連結基であり、
    SOLは水溶性基であり、
    フェニルチオ基に結合するB−LIN、並びにLINに結合するSOLの個数は、各々ゼロ以外の任意の整数であり、
    B−LIN及び/又はSOLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、
    少なくとも一つのSOLはスルホン基又はホスホノ基である。)
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の記録液を含むことを特徴とする記録液セット。
  7. 請求項1ないし5のいすれか1項に記載の記録液或いは請求項6に記載の記録液セットを使用することを特徴とする記録方法。
  8. インクジェット記録であることを特徴とする請求項7に記載の記録方法。
  9. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の記録液が充填されてなることを特徴とするインクカートリッジ。
  10. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の記録液又は請求項6に記載の記録液セットが装填されてなることを特徴とするインクジェットプリンター。
  11. 画像が印刷されてなる紙であって、下記一般式(1)で表わされる水溶性色素を含むことを特徴とする紙。
    DYE−B−LIN−SOL …(1)
    (式中、DYEは、上式B−LIN−SOLの代わりに水素原子が置換した場合、水に実質的に不溶であり、アゾ結合を有さず、かつ共役系から遷移金属への配位結合を有さない、芳香族炭素環及び/又は芳香族複素環からなる縮合環残基であり、
    B−LINは電子共役を切断する連結基であり、Bは任意の連結基(単結合を含む)であり、
    SOLは水溶性基であり、
    DYEに結合するB−LIN、並びにLINに結合するSOLの個数は、各々ゼロ以外の任意の整数であり、
    B−LIN及び/又はSOLが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、
    少なくとも一つのSOLはスルホン基又はホスホノ基である。)
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