JP6942078B2 - インク組成物、インクジェット記録方法及び着色体 - Google Patents

インク組成物、インクジェット記録方法及び着色体 Download PDF

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Description

本発明は、少なくとも、特定の構造を有する第1の色材及び特定の構造を有する第2の色材の2つの色材を含むインク組成物であって、該インク組成物を用いたインクジェット記録方法及び該インク組成物によって着色された着色体に関する。
各種カラー記録方法の中で、その代表的方法の1つであるインクジェットプリンタによる記録方法は、インクの吐出方式が各種開発されている。これらは、いずれもインクの小滴を発生させ、これを種々の被記録材(紙、フィルム、布帛等)に付着させ記録を行うものである。この方法は、記録ヘッドと被記録材とが直接接触しないため、音の発生がなく静かである。また、小型化、高速化、カラー化が容易であるという特徴を有するため、近年急速に普及しつつあり、今後とも大きな伸長が期待されている。従来、万年筆やフェルトペン等のインク、及びインクジェット記録用のインクとしては、水溶性の色素(染料)を水性媒体に溶解したインクが使用されている。これらの水性インクには、ペン先やインク吐出ノズルでのインクの目詰まりを防止すべく、一般に水溶性の有機溶剤が添加されている。これらのインクには、十分な濃度の記録画像を与えること、ペン先やノズルの目詰まりを生じないこと、被記録材上での乾燥性が良いこと、滲みが少ないこと、保存安定性に優れること等の性能が要求される。
インクジェットのノズル詰まりは、ノズル付近でインク中の水分が他の溶剤や添加剤よりも先に蒸発し、水分が少なく溶剤や添加剤が多いという組成状態になったときに、色素が固化し析出することに由来するものが多い。よって、インク中の水分が少ない状態になった場合においても固体が析出しにくいということが非常に重要な要求性能の1つである。この理由から、溶剤や添加剤に対する高い溶解性も色素に求められる性質の1つである。また、ノズル詰まりを解消する方法として、印字濃度の高い色素を用いる手法が知られている。印字濃度が高い色素を用いることで、従来の印字濃度を保ちつつ、インク中の色素含有量を減らすことができる。これは色素を析出しにくくするだけでなく、コスト面でも有利であり、高い印字濃度を持つ色素の開発が望まれている。
ところで、コンピューターのカラーディスプレイ上の画像又は文字情報をインクジェットプリンタによりカラーで記録するには、一般にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクによる減法混色が用いられ、これにより記録画像がカラーで表現される。CRT(ブラウン管)ディスプレイ等におけるレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)による加法混色画像を、減法混色画像でできるだけ忠実に再現するために、インクに使用される各色素、中でもY、M、Cのそれぞれが、標準色に近い色相を有し、且つ鮮明であることが望まれる。ここで言う鮮明さとは、一般的に高い彩度を持つことを意味する。彩度が低いY、M、Cの3原色を用いた場合、単色又は混色で表現できる色領域が狭くなり、表現したい色領域の範囲としては不十分となる場合がある。このため、高彩度な色素と、それを含有するインクの開発が望まれている。また、インクの性能としては、長期の保存に対して安定であり、記録画像の濃度が高く、しかもその画像が耐水性、耐湿性、耐光性、耐ガス性等の堅牢性に優れることが求められる。ここで耐ガス性とは、空気中に存在する酸化作用を持つガス(酸化性ガスとも呼ばれる)が、被記録材上又は被記録材中で、記録画像の色素(染料)と反応し、記録画像を変退色させるという現象に対する耐性のことである。酸化性ガスの中でも特にオゾンガスは、インクジェット記録画像の変退色現象を促進させる主要な原因物質とされている。この変退色現象はインクジェット記録画像に特徴的なものであるため、耐オゾンガス性の向上はこの分野における重要な技術的課題である。
近年のインクジェット技術の発達により、インクジェット記録(印刷)のスピードの向上がめざましい。このため、電子トナーを用いたレーザープリンタと同様に、オフィス環境での主用途である普通紙へのドキュメントの印刷に、インクジェットプリンタを用いる市場の動きがある。インクジェットプリンタは記録紙の種類を選ばず、またプリンタ自体の価格が安いという利点があり、特にスモールオフィス・ホームオフィス(SOHO)等の小〜中規模オフィス環境で普及が進んでいる。このように普通紙への印刷用途でインクジェットプリンタを使用する場合、印刷物に求められる品質の中では、色相、発色(印字)濃度、及び耐湿性がより重視される傾向がある。これらの性能を満たす目的で、顔料インクを用いる方法が提案されている。しかし、顔料インクは色素が水性インク中には溶解しないため溶液状態とはならず、分散状態のインクであるため、これをインクジェット記録に用いると、インク自体の安定性の問題や記録ヘッドのノズル詰まりの問題等が生じる。また、顔料インクを使用した場合、耐擦性にも問題を生じることが多い。染料インクの場合、このような問題は比較的起こりにくいとされるが、特に耐湿性において顔料インクと比較して著しく劣り、それに対する改良が強く望まれている。また、染料インクは顔料インクと異なり、インクジェット記録により普通紙の表面に付着させた色素が、より速く紙の裏面方向へ浸透し、その結果、発色濃度が低下するという問題が起こりやすい。
写真画質のインクジェット記録画像を得る方法の1つとして、被記録材の表面にインク受容層を設ける方法がある。このような目的で設けられるインク受容層は、インクの乾燥を早め、また高画質での色素の滲みを少なくするために、多孔性白色無機物を含むことが多い。しかしながら、特にこのような被記録材において、上記オゾンガスによる変退色が顕著に見られる。最近のデジタルカメラ及びカラープリンタの普及と共に、家庭でもデジタルカメラ等で得られた画像を写真画質として印刷する機会が増しているため、上記の酸化性ガスによる記録画像の変退色が問題視される。他の3原色であるマゼンタやシアンと比較すると、イエロー色素については耐光性と共に、良好な酸化性ガスへの耐性を有する色素が提案されてきている。しかしながら、市場が要求するような高い鮮明性と各種堅牢性とを十分に満足するインクジェット記録用の黄色色素やイエローインクは、未だ得られていない。
特開平11−70729号公報 特許第3346755号公報 特許第4100880号公報 国際公開第2011/122426号 国際公開第2009/154142号 特開2015−113391号公報 特許第4073453号公報 特許第4402917号公報
本発明は、保存安定性が高く、記録画像の高い発色性(印字濃度)を有し、彩度及び耐オゾン性に優れる黄色インク組成物、それを用いたインクジェット記録方法及び着色体の提供を目的とする。
本発明者等は上記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、少なくとも、特定の構造を有する第1の色材及び特定の構造を有する第2の色材の2つの色材を含むインク組成物が上記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記1)〜18)に関する。
1)
少なくとも、第1の色材及び第2の色材の2つの色材を含むインク組成物であって、第1の色材が下記式(1)で表される化合物であり、第2の色材が下記式(2)で表される化合物であるインク組成物。
Figure 0006942078
(式(1)中、Yは酸素原子又は硫黄原子を表し、Qはハロゲン原子、C1〜C4アルコキシ基(ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、及びスルホ基から選択される1又は2以上の置換基で置換されていても良い)、C1〜C4アルキル基(ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、及びスルホ基から選択される1又は2以上の置換基で置換されていても良い)、アセチルアミノ基等のアシルアミノ基を表し、Zは2価の架橋基を表し、Arは置換されてもよいベンゼン環又はナフタレン環を表し、xは2〜4の整数を表す。)
Figure 0006942078
(式(2)中、Y、Q、x、はそれぞれ式(1)と同じもので良い。Z、Arはそれぞれ式(1)におけるZ、Arと同じで良い。)
2)
上記第1の色材が下記式(1−1)で表される化合物である1)に記載のインク組成物。
Figure 0006942078
(式(1−1)中、Y、Q、Z、x、はそれぞれ式(1)と同じもので良い。Aはスルホ基、カルボキシ基又を表す。Rは水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アルコキシ基、アルキル基又はアルキルチオ基を表す。)
3)
上記式(1−1)において、xが3である2)に記載のインク組成物。
4)
上記式(1−1)において、Aがスルホ基である2)又は3)に記載のインク組成物。
5)
上記式(1−1)において、Qが塩素原子である2)〜4)のいずれか一項に記載のインク組成物。
6)
上記式(1−1)において、Rが水素原子又は塩素原子又はメトキシ基である2)〜5)のいずれか一項に記載のインク組成物。
7)
上記式(1−1)において、Yが酸素原子である2)〜6)のいずれか一項に記載のインク組成物。
8)
上記式(1−1)において、xが3であり、Aがスルホ基であり、Rが水素原子又は塩素原子又はメトキシ基であり、Yが酸素原子である2)に記載のインク組成物。
9)
上記式(1−1)において、Zが置換基を有しても良いトリアジン環基である2)〜8)のいずれか一項に記載のインク組成物。
10)
上記式(2)において、xが3であり、Qが塩素原子であり、Arが置換基を有しても良い芳香族炭化水素基である1)〜9)のいずれか一項に記載のインク組成物。
11)
上記式(2)において、Zが置換基を有しても良いトリアジン環基である1)〜10)のいずれか一項に記載のインク組成物。
12)
上記第1の色材が下記式(1−2)で表される化合物であり、上記第2の色材が下記式(2−1)で表される化合物である1)〜11)のいずれか一項に記載のインク組成物。
Figure 0006942078
13)
上記インク組成物中、上記第1の色材の含有率が、上記第2の色材の含有率よりも高い1)〜12)のいずれか一項に記載のインク組成物。
14)
1)〜13)いずれか一項に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクの液滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより、記録を行うインクジェット記録方法。
15)
上記被記録材が情報伝達用シートである14)に記載のインクジェット記録方法。
16)
上記情報伝達用シートが、多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである15)に記載のインクジェット記録方法。
17)
1)〜13)のいずれか一項に記載のインク組成物により着色された着色体。
18)
1)〜13)のいずれか一項に記載のインク組成物を含む容器が装填されたインクジェットプリンタ。
本発明により、保存安定性に優れ、また彩度が高い黄色を呈し、印字された画像の濃度が高く、記録画像の耐オゾンガス性に優れた記録画像を与える黄色インク組成物が得られた。当該インク組成物は、各種記録用のインク用途、特にインクジェット記録用のインク用途に極めて有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書においては、煩雑さを避けるため、「化合物」「その互変異性体」「その塩」の全てを含めて、「化合物」と簡略化して記載する。また、本発明において特に断りが無い限り、スルホ基及びカルボキシ基等の酸性官能基は遊離酸の形で表す。
本発明のインク組成物は、特定の式で表される第1の色材と第2の色材を含むインク組成物である。
[第1の色材について]
上記インク組成物が含む第1の色材について記載する。
上記インク組成物が含む第1の色材は、上記式(1)で表される化合物である。第1の色材は少なくとも1種類の上記式(1)で表される化合物からなり、上記式(1)で表される単一の化合物若しくは複数の化合物の混合物であってもよい。
上記式(1)中、Yは酸素原子又は硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。
上記式(1)中、Qはハロゲン原子、C1〜C4アルコキシ基(ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、及びスルホ基から選択される1又は2以上の置換基で置換されていても良い)、C1〜C4アルキル基(ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルバモイル基、及びスルホ基から選択される1又は2以上の置換基で置換されていても良い)、アセチルアミノ基等のアシルアミノ基を表し、ハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、アセチルアミノ基であることが好ましく、ハロゲン原子であることが好ましい。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子であることが好ましい。
上記アミノ基としては、C1〜6アシルアミノ基が挙げられ、アセチルアミノ基、ノルマルプロピルカルボニルアミノ基、イソプロピルカルボニルアミノ基、ノルマルブチルカルボニルアミノ基、イソブチルカルボニルアミノ基、ノルマルペンチルカルボニルアミノ基、ノルマルへキシルカルボニルアミノ基、アセチルアミノであることが好ましい。
上記式(1)中、Zは2価の架橋基を表す。2価の架橋基とは、式(1)の構造において、Z右側の(−NH−)と左側の(−NH−)とを連結する基を表し、例えば、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−SO−)、トリアジン環基(−CHN−)、ピリミジン環基(−CHN−)、ピリダジン環基(−CHN−)、等が挙げられ、トリアジン環基であることが好ましい。また、これら架橋基は置換基を有していても良い。
上記トリアジン環基は、置換基を有していても良く、置換基としては、例えば、アミノ基、C1〜8の直鎖、分岐鎖又は環状アルキル基、ハロゲン原子等が挙げられ、アミノ基であることが好ましい。ハロゲン原子としては上記と同じで良い。
上記アミノ基とは、例えば、非置換アミノ基、脂肪族炭化水素基で置換されたアミノ基、芳香族炭化水素基で置換されたアミノ基等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基で置換されたアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。これら基はさらに置換基を有していても良い。
上記脂肪族炭化水素基で置換されたアミノ基が有していても良い置換基としては、特に制限は無いが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホスホ基、シアノ基、スルホ基等が挙げられ、ヒドロキシ基であることが好ましい。
上記芳香族炭化水素基で置換されたアミノ基としては、例えば、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素基で置換されたアミノ基が有していても良い置換基としては、特に制限は無いが、上記脂肪族炭化水素基で置換されたアミノ基が有していても良い置換基と同じで良い。
上記式(1)におけるZとしては、ヒドロキシ基を置換基として有するC1〜8分岐鎖アルキル基で置換されたトリアジン環基であることが好ましく、ヒドロキシ基を置換基として有するC5分岐鎖アルキル基で置換されたトリアジン環基であることが特に好ましい。
上記式(1)におけるArは、置換されてもよいベンゼン環又はナフタレン環を表し、置換されてもよいベンゼン環であることが好ましい。
上記Arが有しても良い置換基としては、特に制限は無いが、例えば、上記脂肪族炭化水素基で置換されたアミノ基が有していても良い置換基と同じで良く、ハロゲン原子、スルホ基を有していることが好ましく、塩素原子とスルホ基を有していることが特に好ましい。
上記式(1)におけるxは2〜4の整数を表し、3であることが好ましい。
上記式(1)で表される化合物としては、上記式(1−1)であることが好ましい。
上記式(1−1)中、Y、Q、Z、x、はそれぞれ式(1)と同じもので良い。Aはスルホ基、カルボキシ基又を表す。Rは水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アルコキシ基、アルキル基又はアルキルチオ基を表す。
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基等が挙げられる。
上記式(1)で表される化合物としては、下記式(1−2)であることが特に好ましい。
Figure 0006942078
上記式(2)中、Y、Q、x、はそれぞれ式(1)と同じもので良い。Z、Arはそれぞれ式(1)におけるZ、Arと同じで良い。
上記式(2)で表される化合物としては、下記式(2−1)であることが特に好ましい。
Figure 0006942078
上記式(1)で表される化合物は、次のようにして得ることが可能である。
特開2004−75719号公報に記載の方法に準じて、下記式(3)で表されるアミノフェノールまたは4−クロロ−3−ニトロアニリンを原料として得られる下記式(4)で表される化合物を、重亜硫酸ナトリウム及びホルマリンを用いて下記式(5)で表されるメチル−ω−スルホン酸誘導体に変換する。次いで、常法により、下記式(6)で表される置換基を有するアニリンをジアゾ化し、先に得られた式(5)のメチル−ω−スルホン酸誘導体と、反応温度0〜15℃、pH4〜6でカップリング反応を行い、引き続き、反応温度80〜95℃、pH10.5〜11.5で加水分解反応を行うことにより、下記式(7)で表される化合物が得られる。
Figure 0006942078
上記式(7)の化合物(2当量)とハロゲン化アシル基を含む架橋化剤(例えば塩化シアヌル、1当量)とを、反応温度15〜45℃、pH5〜8で縮合することにより、下記式(8)の化合物が得られる。
Figure 0006942078
上記式(8)で表される化合物と、「H−A」で表される化合物とを、反応温度55〜95℃、pH6〜9で反応させることにより、脱HCl反応が起こり、上記式(1)で表される化合物を得ることができる。
以下に、式(1)で表される化合物の具体例を示す。
Figure 0006942078
Figure 0006942078
Figure 0006942078
上記式(2)で表される化合物は、次のようにして得ることが可能である。
上記式(7)の化合物(1当量)とハロゲン化アシル基を含む架橋化剤(例えば塩化シアヌル、1当量)とを、反応温度5〜15℃、pH5〜8で縮合することにより、下記式(9)の化合物が得られる。
Figure 0006942078
上記式(9)の化合物(1当量)と上記式(4)の化合物を、反応温度25〜50℃、pH5〜8で縮合することにより、下記式(10)の化合物が得られる。
Figure 0006942078
上記式(10)で表される化合物と、「H−A」で表される化合物とを、反応温度55〜95℃、pH6〜9で反応させることにより、脱HCl反応が起こり、上記式(2)で表される化合物を得ることができる。
以下に、式(2)で表される化合物の具体例を示す。
Figure 0006942078
Figure 0006942078
上記インク組成物に用いる第1の色材及び第2の色材は、遊離酸、あるいはその塩として存在しても良い。第1の色材及び第2の色材の塩としては、無機又は有機陽イオンとの塩が挙げられる。無機陽イオンの塩の具体例としては、アルカリ金属塩、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の塩、及びアンモニウム塩(NH4 +)が挙げられる。また、有機陽イオンとしては、たとえば下記式(11)で表される4級アンモニウムの塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 0006942078
上記式(11)中、Z1〜Z4はそれぞれ独立に水素原子、C1−C4アルキル基、ヒドロキシC1−C4アルキル基、又はヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基を表し、Z1〜Z4の少なくとも1つは水素原子以外の基である。
ここで、Z1〜Z4における上記C1−C4アルキル基の例としてはメチル基、エチル基等が挙げられる。同様に、上記ヒドロキシC1−C4アルキル基の例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。同様に、上記ヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル基、2−ヒドロキシエトキシエチル基、3−(ヒドロキシエトキシ)プロピル基、3−(ヒドロキシエトキシ)ブチル基、2−(ヒドロキシエトキシ)ブチル基等が挙げられる。
上記塩のうち好ましいものは、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンの塩等の有機4級アンモニウム塩、アンモニウム塩、等が挙げられる。これらのうち、より好ましくは、リチウム塩、ナトリウム塩、及びアンモニウム塩である。
上記インク組成物に用いる第1の色材及び第2の色材を所望の塩とするには、各化合物の合成反応の最終工程が終了した後、所望の無機塩又は有機陽イオンの塩を反応液に添加することにより塩析する方法、又は、塩酸等鉱酸の添加により遊離酸の形で単離し、これを水、酸性の水又は水性有機媒体等を必要に応じ用いて洗浄することにより無機塩を除去後、水性の媒体中で所望の無機又は有機塩基により中和する方法、等により、対応する塩の固体、又は溶液を得ることができる。ここで酸性の水とは、例えば硫酸、塩酸等の鉱酸や酢酸等の有機酸を水に溶解し、酸性にしたものをいう。また水性有機媒体とは、水と混和可能な有機物質、又は水と混和可能ないわゆる有機溶剤等(具体例としては後述する水溶性有機溶剤等)と水との混和物が挙げられる。無機塩の例としては塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等アルカリ金属塩、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のアンモニウム塩が挙げられ、有機の陽イオンの塩の例としては、上記した式(8)の4級アンモニウムのハロゲン塩等が挙げられる。無機塩基の例としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム(アンモニア水)、又は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、等が挙げられ、有機塩基の例としては、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン、上記式(8)で表される4級アンモニウムの水酸化物やハロゲン化物、等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
上記インク組成物で用いられる第1の色材及び第2の色材の化合物のそれぞれの合成反応において、最終工程終了後のそれぞれの反応液は、本発明のインク組成物の製造に直接使用することができる。しかし、まず各色素を含む反応液を個別に乾燥、例えばスプレー乾燥させる方法、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類を添加することによって塩析する方法、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸を添加することによって酸析する方法、あるいは上記した塩析と酸析を組み合わせた酸塩析する方法、等によって各化合物を単離し、これを混合してインク組成物を調製することもできる。
上記インク組成物中、第1の色材及び第2の色材の含有率は、使用目的に合わせそれぞれ任意に設定することが可能であり、インク組成物中に含まれる色材総質量中、第1の色材の含有率が5〜95質量%、第2の色材の含有率が5〜95質量%であり、第1の色材の含有率が第2の色材の含有率よりも高いことが好ましく、第1の色材の含有率が上記インク組成物中、40〜80質量%、第2の色材の含有率が10〜30質量%である場合がさらに好ましく、第1の色材の含有率が0.5〜10質量%、第2の色材の含有率が0.1〜5質量%である場合が特に好ましい。
上記インク組成物において、第1の色材と第2の色材の組合せとして、式(1−2)と式(2−1)の組合せであることが極めて好ましい。
上記インク組成物は、水を媒体として調製され、本発明の効果を害しない範囲内において必要に応じ、水溶性有機溶剤やインク調製剤を適宜含有しても良い。
上記水溶性有機溶剤は、染料の溶解、組成物の乾燥の防止(湿潤状態の保持)、組成物の粘度の調整、色素の被記録材への浸透の促進、組成物の表面張力の調整、組成物の消泡、等の効果を目的として使用され、本発明のインク組成物には含有する方が好ましい。
上記インク調製剤としては、例えば、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、染料溶解剤、褪色防止剤、表面張力調整剤、消泡剤等の公知の添加剤が挙げられる。
上記インク組成物の総質量に対して、水溶性有機溶剤の含有量は0〜60質量%、好ましくは10〜50質量%であり、インク調製剤は0〜20質量%、好ましくは0〜15質量%用いるのが良い。上記インク組成物において、上記第1の色材、第2の色材、水溶性有機溶剤、及びインク調製剤以外の残部は水である。
上記水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1−C4アルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の複素環式ケトン、アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(好ましくはトリオール)、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4モノアルキルエーテル、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、等が挙げられる。
上記水溶性有機溶剤には、例えばトリメチロールプロパン等のように、常温で固体の物質も含まれている。しかし、該物質等は固体であっても水溶性を示し、さらに該物質等を含有する水溶液は水溶性有機溶剤と同様の性質を示し、同じ効果を期待して使用することができる。このため本明細書においては、便宜上、このような固体の物質であっても上記と同じ目的で使用できる限り、水溶性有機溶剤の範疇に含むこととする。
上記水溶性有機溶剤として好ましいものは、イソプロパノール、グリセリン、モノ、ジ、又はトリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ピロリドン、ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン、N−メチル−2−ピロリドン、トリメチロールプロパン及びブチルカルビトールであり、より好ましくはイソプロパノール、グリセリン、ジエチレングリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、及びブチルカルビトールである。これらの水溶性有機溶剤は、単独又は混合して用いられる。
上記防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。ピリジンオキシド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられる。イソチアゾリン系化合物としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤としては、酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等が、さらにはアーチケミカル社製の商品名プロクセルRTMGXL(S)及びプロクセルRTMXL−2(S)、等が、それぞれ挙げられる。なお、本明細書中において、上付きの「RTM」は登録商標を意味する。
上記pH調整剤は、インクの保存安定性を向上させる目的で、インクのpHを6.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、タウリン等のアミノスルホン酸、等が挙げられる。
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
上記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物、スチルベン系化合物が挙げられる。また、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤等も使用できる。
上記粘度調整剤としては、水溶性有機溶剤の他に、水溶性高分子化合物が挙げられ、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
上記染料溶解剤としては、例えば、尿素、ε−カプロラクタム、エチレンカーボネート等が挙げられる。その中でも尿素を使用するのが好ましい。
上記褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、及びヘテロ環類等が挙げられ、金属錯体としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体等が挙げられる。
上記表面張力調整剤としては、界面活性剤が挙げられ、例えば、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、及びノニオン界面活性剤等が挙げられる。
上記アニオン界面活性剤としては、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
上記カチオン界面活性剤としては、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、その他イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
上記ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール(アルコール)系、日信化学工業株式会社製の商品名サーフィノールRTM104、同82、同465、オルフィンRTMSTG、SIGMA−ALDRICH社製の商品名TergitolRTM15−S−7、等が挙げられる。
上記消泡剤としては、高酸化油系、グリセリン脂肪酸エステル系、フッ素系、シリコーン系化合物等が挙げられる。
上記これらインク調製剤は、単独又は混合して用いられる。なお、本発明のインク組成物の表面張力は通常25〜70mN/m、好ましくは25〜60mN/mであり、粘度は30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下に調整することがより好ましい。
上記インク組成物の製造において、添加剤等の各薬剤を溶解させる順序には特に制限はない。インク組成物の調製に用いる水は、イオン交換水又は蒸留水等の不純物が少ない物が好ましい。また、必要に応じインク組成物の調製後に、メンブランフィルター等を用いて精密濾過を行って、インク組成物中の夾雑物を除いても良い。特に、本発明のインク組成物をインクジェット記録用のインクとして使用する場合には、精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過に使用するフィルターの孔径は通常1μm〜0.1μm、好ましくは、0.8μm〜0.1μmである。
本発明のインク組成物は、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング、又は記録(印刷)、特にインクジェット記録における使用に適する。また本発明のインク組成物は、インクジェットプリンタの記録ヘッドのノズル付近における乾燥に対しても固体の析出は起こりにくく、この理由により該記録ヘッドの閉塞もまた起こしにくい。
上記インクジェット記録方法について説明する。本発明のインクジェット記録方法は、上記本発明のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて、被記録材に付着させることにより記録を行うものである。記録の際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。該記録方法は、公知の各方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射し、その放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット、すなわちバブルジェット(登録商標)方式、等を採用することができる。なお、上記インクジェット記録方法には、フォトインクと称する、インク中の色素濃度(色素含有量)の低いインクを、小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相でインク中の色素濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式、及び無色透明のインクを用いる方式、等も含まれる。
上記インクジェット記録方法に用いる被記録材としては下記する被記録材が好ましい。着色されうる被記録材としては特に制限はないが、例えば紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられ、中でも情報伝達用シートが好ましい。情報伝達用シートとしては、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙、フィルム等の基材にインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工する方法、又は多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等のインク中の色素を吸収し得る無機微粒子をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工する方法、等により設けられる。このようなインク受容層を設けたものは通常インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙、又は光沢フィルム等と呼ばれる。
上記情報伝達用シートのうち、特に多孔性白色無機物を表面に塗工したシートは表面光沢度が高くまた耐水性も優れている為、写真画質の記録に特に適している。しかし、これらに記録した画像は、オゾンガスによって変退色が大きくなることが知られている。しかし本発明のインク組成物は耐オゾンガス性が優れているため、このような被記録材へインクジェット記録した際にも大きな効果を発揮する。上記多孔性白色無機物を表面に塗工したシートとして代表的な市販品の一例を挙げると、キヤノン(株)製、商品名:写真用紙・光沢プロ「プラチナグレード」、写真用紙・光沢ゴールド、セイコーエプソン(株)製、商品名:写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢)、フォトマット紙、日本ヒューレット・パッカード(株)製、商品名:アドバンスフォト用紙(光沢)、富士フィルム(株)製、商品名:画彩写真仕上げPro、等があるが、本発明のインク組成物の用途としては、これらの専用紙等に限られるものではない。
上記専用紙以外の被記録材としては普通紙が挙げられる。普通紙とは、上記のインク受容層が設けられていないものであり、市販品の例としては、キヤノン(株)製、商品名:GF−500、キヤノン普通紙・ホワイト、セイコーエプソン(株)製、商品名:両面上質普通紙、等のインクジェット専用の普通紙が挙げられる。またインクジェット専用ではないものの例としては、PPC(プレインペーパーコピー)用紙等も使用できる。
上記インクジェット記録方法で情報伝達用シート等の被記録材に記録するには、例えば上記のインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタの所定の位置にセットし、上記の通常の記録方法で被記録材に記録すればよい。上記インクジェット記録方法は、本発明のインク組成物と、例えば公知のマゼンタ、シアン、イエロー、及び必要に応じて、グリーン、ブルー(又はバイオレット)及びレッド(又はオレンジ)等の各色のインク組成物とを併用することもできる。各色のインク組成物は、それぞれの容器に注入され、その各容器を本発明のインク組成物を含有する容器と同様にインクジェットプリンタの所定の位置に装填してインクジェット記録に使用される。
上記インク組成物第1の色材及び第2の色材は、水性媒体に対する溶解性が高く、且つ水溶解性にも優れるので、インク組成物を製造する過程でのメンブランフィルターによるろ過性が良好である。上記インク組成物又は該インク組成物から調製されるインクは、保存時の安定性や吐出安定性にも優れている。すなわち、本発明のインク組成物は長期間保存後の固体析出、物性変化、色相の変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。また、本発明のインク組成物は、インクジェット記録用、筆記用具用等として好適に用いられ、特にインクジェット専用紙に記録した際には、濃色及び淡色印刷時のいずれにおいても鮮明な黄色を呈し、異なるメディアに記録した場合であっても、色相の変化が少ない。また、記録画像の印字(印刷)濃度が非常に高く、高濃度溶液を印字した場合でもその画像にブロンジングを起こさず、さらに耐湿性、耐水性等の各種堅牢性、特に耐光性と耐オゾンガス性が共に優れている。特に本発明のインク組成物は発色性(印字濃度)と彩度に優れ、印字濃度においては、測色システムによるイエロー印字濃度(Dy値)が1.80以上であると良好なイエロー印字がなされていることを示す。また、マゼンタ、シアン及びブラック色素を含有する他のインク組成物と併用することで各種堅牢性に優れ、保存性の優れたフルカラーのインクジェット記録が可能であり、普通紙にも使用できる。このように本発明のインク組成物は、インクジェット記録用の黄色インクとして極めて有用である。
以下に本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準であり、また反応温度は内温である。合成した化合物のうち、λmax(最大吸収波長)を測定したものについては、pH7〜8の水溶液中での測定値を示した。また、実施例中で得た化合物の各構造式において、カルボキシ基、スルホ基等の酸性官能基は、遊離酸の形で記載した。
[合成例1]
(工程1)
5−アミノ−2−クロロベンゼンスルホン酸20.8部を水酸化ナトリウムでpH6に調整しながら水200部に溶解し、次いで亜硝酸ナトリウム7.2部を加えた。この溶液を0〜10℃で、5%塩酸200部中に30分間かけて滴下した後、10℃以下で1時間撹拌してジアゾ化反応を行い、ジアゾ反応液を調製した。一方、2−(スルホプロポキシ)−5−クロロアニリン26.6部を、水酸化ナトリウムでpH7に調整しながら水130部に溶解し、10.4部の重亜硫酸ナトリウム及び8.6部の35%ホルマリンを用いて、常法によりメチル−ω−スルホン酸誘導体とした。得られたメチル−ω−スルホン酸誘導体を、先に調製したジアゾ反応液中に加え、0〜15℃、pH2〜4で24時間撹拌した。反応液を水酸化ナトリウムでpH11とした後、同pHを維持しながら80〜95℃で5時間撹拌し、さらに100部の塩化ナトリウムを加えて塩析し、析出固体を濾過分離することにより、下記式(12)で表されるアゾ化合物100部をウェットケーキとして得た。
Figure 0006942078
(工程2)
250部の氷水中にライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名:レオコールRTMTD−90(界面活性剤)0.10部を加えて激しく撹拌し、その中に塩化シアヌル3.6部を添加し0〜5℃で30分間撹拌し、懸濁液を得た。続いて、上記式(12)で表される化合物のウェットケーキ100部を水200部に溶解し、この溶液に上記の懸濁液を30分間かけて滴下した。滴下終了後pH6〜8、25〜45℃で6時間撹拌した。得られた液に、4−アミノ−2−メチル−1−ブタノール6.2部を加え、pH7〜9、75〜90℃で4時間撹拌した。得られた反応液を20〜25℃まで冷却後、2−プロパノール2000部を加え、20〜25℃で2時間撹拌した。析出固体を濾過分離することによりウェットケーキ50.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより、下記式(1−2)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:411.0nm)11.5部を得た。
Figure 0006942078
[合成例2]
250部の氷水中にライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名:レオコールRTMTD−90(界面活性剤)0.10部を加えて激しく撹拌し、その中に塩化シアヌル3.6部を添加し0〜5℃で30分間撹拌し、懸濁液を得た。続いて、上記式(12)で表される化合物のウェットケーキ50部を水100部に溶解し、この溶液に上記の懸濁液を30分間かけて滴下した。滴下終了後pH6〜8、5〜15℃で2時間撹拌した。得られた液に5−クロロ−2−スルホプロポキシアニリン5.2部を水100部に溶解した液を20分かけて滴下し、25〜45℃で4時間撹拌した。得られた液に、4−アミノ−2−メチル−1−ブタノール6.2部を加え、pH7〜9、75〜90℃で4時間撹拌した。得られた反応液を20〜25℃まで冷却後、2−プロパノール2000部を加え、20〜25℃で2時間撹拌した。析出固体を濾過分離することによりウェットケーキ50.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより、下記式(2−1)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:405.0nm)9.2部を得た。
Figure 0006942078
[インクの調製]
下記表1に示した各成分を混合して溶液とした後、0.45μmのメンブランフィルターで精密濾過することにより、試験用のインクを調製した。表中の数値は「部」である。
下記表1中、「aq.NaOH」が「残部」とは、各成分の混合液に25%水酸化ナトリウム水溶液と水とを加え、各液のpHを8.0〜9.5に、且つ液の総量を100部に調製したことを意味する。
下記表1中の略号等は、以下の意味を表す。
式(1−2):第1の色材、式(1−2)で表される化合物。
式(2−1):第2の色材、式(2−1)で表される化合物。
EDTA2Na:エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム。
104PG50:サーフィノール104PG50。
Figure 0006942078
[(B)インクジェット記録]
上記実施例1〜4及び比較例1、2で調製した各インクを、インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUSRTM ip4500)を用いて、印字濃度(Dy値)試験用、彩度(C*値)試験用として3種類の光沢紙(インクジェット専用紙)にインクジェット記録を行なった。インクジェット記録の際、反射濃度が数段階の階調で得られるように画像パターンを作り、黄色のグラデーションを有する記録物を得た。得られた記録物を試験片とし、各種の試験を行なった。
光沢紙1:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・プラチナグレード(PT−201)
光沢紙2:ブラザー工業株式会社製、商品名:BP71G。
光沢紙3:富士フィルム株式会社製、商品名:画彩 写真仕上げPro。
彩度(C*値)、及び反射濃度(Dy値)は、階調の最も高い箇所を測定した。彩度、及び反射濃度の測定には、測色システム(商品名SpectroEyeRTM、X−right社製)を使用した。測色は、濃度基準にDIN、視野角2度、光源D65の条件で行った。
記録画像の各種試験方法及び試験結果の評価方法を以下に記載する。
[(C)印字濃度試験]
各試験片のうち、反射濃度が最も高い階調部分について、上記測色システムによりイエロー印字濃度(Dy値)を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0006942078
表2の結果は、上記イエロー印字濃度試験(Dy値)において、実施例1〜4は比較例1及び2より、全ての光沢紙において、少なくとも同等以上の高い値を示すことを示しており、本願実施例インク組成物が、光沢紙の種類によらず高い印字濃度を実現可能であることが明らかとなった。
[(D)彩度試験]
各試験片のうち、反射濃度が最も高い階調部分について、上記測色システムによりイエロー彩度(C*値)を測定した。結果を下記表3に示す。
Figure 0006942078
表3の結果は、彩度(C*値)において、実施例1〜4は比較例1及び2より、全ての光沢紙において、少なくとも同等以上の高い値を示すことを示しており、本願実施例インク組成物が、光沢紙の種類によらず良好な彩度を実現可能であることが明らかとなった。
上記結果より、本発明のインク組成物は、それぞれの色素を単独で使用した場合と比較して、発色性と彩度に優れていることがわかる。
黄色色材である本発明の水溶性アゾ化合物の組み合わせ、及びこれらを含む本発明のイエローインク組成物は、高発色、高彩度の記録画像を与える。従って、本発明のインク組成物は、各種の記録用途、特にインクジェット記録用途に非常に有用である。

Claims (7)

  1. 少なくとも、第1の色材及び第2の色材の2つの色材を含むインク組成物であって、前記第1の色材が下記式(1−2)で表される化合物であり、記第2の色材が下記式(2−1)で表される化合物であるインク組成物。
    Figure 0006942078
  2. 上記インク組成物中、上記第1の色材の含有率が、上記第2の色材の含有率よりも高い請求項1に記載のインク組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクの液滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより、記録を行うインクジェット記録方法。
  4. 上記被記録材が情報伝達用シートである請求項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 上記情報伝達用シートが、多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである請求項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 請求項1又は2に記載のインク組成物により着色された着色体。
  7. 請求項1又は2のいずれか一項に記載のインク組成物を含む容器が装填されたインクジェットプリンタ。
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