JP2006119624A - マスクブランクス用基板,マスクブランクス,露光用マスク及び半導体装置,並びにそれらの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 磁性研磨スラリーを用いた局所研磨を基板に施しても、磁性研磨スラリーの残留による凸欠陥や、次工程への磁性研磨スラリーの持込みによる凹欠陥の発生を防止する。
【解決手段】 鉄を含む磁性流体21中に研磨砥粒を含有させた磁性研磨スラリー2を用いて、マスクブランクス用基板1の表面を研磨した後、塩酸を含む洗浄液6を用いて、マスクブランクス用基板1の表面を洗浄する方法としてある。
【選択図】 図1

Description

本発明は、マスクブランクス用基板,マスクブランクス,露光用マスク及び半導体装置,並びにそれらの製造方法に関し、特に、半導体デザインルールで65nmや45nmで使用される露光光源であるArFエキシマレーザー(露光波長:193nm),F2エキシマレーザー(露光波長:157nm),EUV(Extreme Ultra Violet)光(露光波長:13nm)などの超短波長域の光を露光光源として用いるマスクブランクス用基板,マスクブランクス,露光用マスク及び半導体装置,並びにそれらの製造方法に関する。
一般的に、マスクブランクス用基板(適宜、基板と略称する。)の研磨方法として、酸化セリウムやコロイダルシリカなどを分散剤により分散された研磨スラリーを基板に供給しながら、ウレタンなどの研磨パッドが貼り付けられた定盤を基板の上下面から押し付ける研磨方法が採用されている。
また、上記研磨後に基板に付着している研磨スラリーを洗浄除去する洗浄方法として、フッ酸や水酸化ナトリウム等の洗浄液で基板表面をわずかにエッチングしてスラリー成分を浮かせてリンス除去し、基板に強く付着したスラリーについては、ブラシによるスクラブや超音波洗浄などによる物理洗浄を加えて除去する洗浄方法が採用されている。
ところで、近年における超LSIデバイスの高密度化や高精度化にともない、マスクブランクス用ガラス基板に要求される基板表面の微細化傾向は年々厳しくなる状況にある。
特に、露光光源の波長が短くなるにしたがって、基板表面の形状精度(平坦度)や品質(欠陥サイズ)に対する要求が厳しくなっており、きわめて平坦度が高く、かつ、微小欠陥のないマスクブランクス用ガラス基板が求められている。その理由は、基板の平坦度が悪いと露光転写後のパターンの寸法精度が悪くなるからであり、また、欠陥サイズ(高さや深さ,大きさ)が大きいと位相欠陥となり、露光転写後のパターンのパターン欠陥が発生するからである。
また、上記平坦度の要求値は、パターンの微細化とともに厳しくなり、次世代の露光技術とされるEUV露光においては、縦142mm×横142mmの矩形領域において、P−V値(基準面に対する最大高さと最小高さの差)で、50nm以下の平坦度が必要とされている。また、微小欠陥については、欠陥サイズを50nm以下とすることが要求されている。なお、量産が進められているArFエキシマレーザー露光では、500nm以下の平坦度,100nm以下の欠陥サイズが要求されている。
このような数十nmの平坦度を実現するには、上述した基板の表裏両面を同時に研磨する研磨方法では不可能であり、実現するための技術として、基板の凸部分のみを局所的に除去する加工方法が研究開発されている。
この局所加工技術は、予め基板の表面形状(凹凸形状)を測定し、その凸部分の高さに応じて加工取り代を設定し、この加工取り代分だけ凸部分を局所的に除去することにより、基板表面を平坦化する技術である。
このような局所加工方法の一つとして、特許文献1にあるように磁性流体を含む磁性研磨スラリーによる加工法(MRF:MagnetoRheological Finishing)が提案されている。
このMRF加工法は、磁場を与えると粘性が可逆的に変化するといった磁性流体の性質を利用し、磁性研磨スラリーを基板の所望の位置に局所的(スポット的)に供給し、予め計測した基板の凹凸に応じて磁性研磨スラリーに与える磁場を調整して、加工レートや加工取り代を局所的に変化させながら研磨することにより、基板を平坦化することができる。
US2002/0081943A号公報
しかしながら、上述のMRF加工法によりマスクブランクス用基板を作製すると、以下のような問題が生じていた。
(1)局所加工後に、鉄及び炭素を主成分とする磁性研磨スラリーが基板表面に大量に付着し、従来の洗浄で用いられるフッ酸,アンモニア過水,水酸化ナトリウムを洗浄液とする洗浄方法では、上記磁性研磨スラリーを十分に除去できず、残留した磁性研磨スラリーが凸欠陥となる。この残留した磁性研磨スラリーの凸欠陥は、直接、基板上に形成する薄膜表面に反映され、転写パターンのパターン不良を引き起こす位相欠陥となったり、また、基板表面に付着した磁性研磨スラリーが、マスクとなって基板が洗浄処理でエッチングされることで、基板表面に凸欠陥が発生し、位相欠陥となる。
(2)局所加工後の基板の表面荒れを改善するために、局所加工後にコロイダルシリカ等のスラリーを用いて仕上げ研磨を行うと、局所加工で使用した磁性流体を含む磁性研磨スラリーの持込みによって、仕上げ研磨の際、基板表面に凹欠陥(傷等)が発生する。この基板表面の凹欠陥は、転写パターンのパターン不良を引き起こす位相欠陥となる。
(3)基板表面に磁性研磨スラリーが所定量以上残留していると、透過率の低下や反射膜への悪影響によって、転写パターン欠陥が発生し、超短波長域の光を露光光源として用いる次世代技術に対応することができない。
また、上記問題により、最終目的である超LSIデバイスのさらなる高密度化や高精度化を実現できないといった問題があった。
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、磁性研磨スラリーを用いた局所研磨を基板に施しても、磁性研磨スラリーの残留による凸欠陥や、次工程への磁性研磨スラリーの持込みによる凹欠陥の発生を防止することができる位相欠陥のないマスクブランクス用基板,マスクブランクス,露光用マスク及び半導体装置,並びにそれらの製造方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するため本発明におけるマスクブランクス用基板の製造方法は、鉄を含む磁性流体中に研磨砥粒を含有させた磁性研磨スラリーを用いて、マスクブランクス用基板の表面を研磨した後、強酸を含む洗浄液を用いて、前記マスクブランクス用基板の表面を洗浄する方法としてある。
このようにすると、マスクブランクス用基板に付着した磁性研磨スラリー、特に、磁性研磨スラリーに含まれる鉄成分を効果的に洗浄除去することができ、残留した磁性研磨スラリーによる凸欠陥の発生を防止することができる。また、磁性研磨スラリーの次工程への持込みを大幅に低減できるので、たとえば、仕上げ研磨の際、基板表面に凹欠陥(傷等)が発生するといった不具合を防止することができる。よって、基板表面の凸欠陥や凹欠陥によって引き起こされる転写パターンのパターン不良となる位相欠陥の発生を防止することができる。さらに、磁性研磨スラリーを用いて、MRF加工法により研磨することにより、基板の平坦度を向上させることができる。
なお、強酸とは、塩酸,硫酸,硝酸等の鉄を溶解することの可能な酸をいうものとする。
また、本発明のマスクブランクス用基板の製造方法は、前記洗浄液に含まれる強酸が塩酸であって、その塩酸の濃度を0.05〜30%とした方法としてある。
このようにすると、十分な洗浄力が得られるとともに、ミストの発生を抑制でき、効率よく洗浄することができる。また、塩酸を用いることにより、塩化物イオンとの中和塩である塩化鉄が、水に対する溶解度が高いといった特性を利用して、鉄成分を効果的に溶解除去することができる。
また、本発明のマスクブランクス用基板の製造方法は、前記マスクブランクス用基板を、ArFエキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板,F2エキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板,又は,EUV露光用マスクブランクス用基板とした方法としてある。
このようにすると、微小な欠陥でも大きな影響がある超短波長域の光を、露光光源として用いる場合でも、基板表面に鉄成分がほとんど存在しない高品質なマスクブランクス用基板となり、十分適用することができる。
また、上記目的を達成するため本発明におけるマスクブランクスの製造方法は、上記請求項1〜3のいずれかに記載のマスクブランクス用基板の製造方法によって、マスクブランクス用基板を製造し、製造した前記マスクブランクス用基板の主表面上に、マスクパターンとなる薄膜を形成する方法としてある。
このようにすると、平坦度に優れ、かつ、表面欠陥のないそして位相欠陥が発生しない高品質なマスクブランクスを製造することができる。
また、上記目的を達成するため本発明における露光用マスクの製造方法は、上記請求項4記載のマスクブランクスの製造方法によって、マスクブランクスを製造し、製造した前記マスクブランクスにおける薄膜をパターニングして前記マスクブランクス用基板の主表面上にマスクパターンを形成する方法としてある。
このようにすると、平坦度に優れ、かつ、表面欠陥及び位相欠陥のない高品質な露光用マスクを製造することができる。
また、上記目的を達成するため本発明における半導体装置の製造方法は、上記請求項5記載の露光用マスクの製造方法によって、露光用マスクを製造し、製造した前記露光用マスクを使用し、リソグラフィー法により該露光用マスクの薄膜パターンを半導体基板上にパターン転写する方法としてある。
このようにすると、現状レベルよりさらなる高密度化や高精度化を実現できる超LSIデバイス等の半導体装置を製造することができる。
また、上記目的を達成するため本発明におけるマスクブランクス用基板は、基板表面に存在する鉄の量が5×1012原子/cm以下である。
このようにすると、透過率の低下や反射膜への悪影響が低減されるので、転写パターン欠陥の発生を低減することができる。
また、本発明のマスクブランクス用基板は、前記マスクブランクス用基板を、ArFエキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板,F2エキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板,又は,EUV露光用マスクブランクス用基板とした構成としてある。
このようにすると、鉄に吸収されるArFエキシマレーザーやF2エキシマレーザーの吸収量が低減され、基板の透過率の低下が抑制されるので、転写パターン欠陥の発生を効果的に低減することができる。また、EUV露光用として使用する場合、基板表面に存在する鉄が、その上に形成される反射膜に混ざり反射率が低下するといった不具合を防止でき、転写パターン欠陥の発生を効果的に低減することができる。
また、上記目的を達成するため本発明におけるマスクブランクスは、上記請求項7又は8記載のマスクブランクス用基板の主表面上に、マスクパターンとなる薄膜を形成した構成としてある。
このようにすると、平坦度に優れ、かつ、露光光に対する光学特性(透過率や反射率など)が変化し転写パターン欠陥の要因となる表面欠陥のない高品質なマスクブランクス用基板によって、転写パターン欠陥の発生を効果的に低減することができる。
また、上記目的を達成するため本発明における露光用マスクは、上記請求項9記載のマスクブランクスにおける前記薄膜がパターニングされ、前記マスクブランクス用基板の主表面上にマスクパターンを形成した構成としてある。
このようにすると、平坦度に優れ、かつ、露光光に対する光学特性(透過率や反射率など)が変化し転写パターン欠陥の要因となる表面欠陥のない高品質な露光用マスクによって、転写パターン欠陥の発生を効果的に低減することができる。
また、上記目的を達成するため本発明における半導体装置は、上記請求項10記載の露光用マスクにおける薄膜パターンを、リソグラフィー法により、半導体基板上にパターン転写した構成としてある。
このようにすると、たとえば超LSIデバイス等の半導体装置に対して、現状レベルよりさらなる高密度化や高精度化を実現できる。
以上のように、本発明のマスクブランクス用基板,マスクブランクス,露光用マスク及び半導体装置,並びにそれらの製造方法によれば、磁性研磨スラリーを用いた局所研磨をマスクブランクス用基板に施しても、磁性研磨スラリーの残留による凸欠陥や、次工程への磁性研磨スラリーの持込みによる凹欠陥の発生を防止することができる。よって、基板表面の凸欠陥や凹欠陥によって引き起こされる転写パターンのパターン不良となる位相欠陥の発生を防止することができる。また、最終目的である超LSIデバイス等の半導体装置を、さらに高密度化したり高精度化したりすることができる。さらに、磁性研磨スラリーを用いて、MRF加工法により研磨することにより、基板の平坦度を向上させることができる。また、露光光に対する光学特性が変化し、転写パターン欠陥の発生を防止することができる。
[マスクブランクス用ガラス基板の製造方法]
図1は、本発明の実施形態にかかるマスクブランクス用ガラス基板の製造方法を説明するための概略フローチャート図を示している。
同図において、本発明のマスクブランクス用ガラス基板の製造方法は、ガラス基板を準備する準備工程(P−1)と、ガラス基板表面の凹凸形状を測定する凹凸形状測定工程(P−2)と、局所加工によってガラス基板表面の平坦度を制御する平坦度制御工程(P−3)と、ガラス基板表面を洗浄する洗浄工程(P−4)と、ガラス基板表面を仕上げ研磨する研磨工程(P−5)とを有する。
<準備工程>
準備工程は、ガラス基板の片面又は両面が精密研磨され、研磨表面粗さを自乗平均平方根粗さRMSで約0.4nm以下にしたガラス基板を準備する工程である。
一般的に、準備工程(P−1)は、ガラス基板の両面を粗研磨する粗研磨工程と、粗研磨されたガラス基板の片面又は両面を精密研磨する精密研磨工程とを有し、段階的な研磨が行なわれる。この際、粗研磨工程では、比較的研磨砥粒の大きい酸化セリウムを分散させた研磨剤が使用され、精密研磨工程では、比較的研磨砥粒の小さいコロイダルシリカを分散させた研磨剤が使用される。
ガラス基板は、マスクブランクスとして用いられるものであれば、特に限定されない。例えば、合成石英ガラス,ソーダライムガラス,アルミノシリケートガラス,ボロシリケートガラス,無アルカリガラスなどが挙げられる。
ただし、F2エキシマレーザー露光用マスクブランクス用ガラス基板の場合は、露光光源の吸収を可及的に抑えるために、弗素をドープした合成石英ガラスなどが用いられる。
また、EUVマスクブランクス用ガラス基板の場合は、露光時の熱による被転写パターンの歪みを抑えるために、約0±1.0×10−7/℃の範囲内、より好ましくは、約0±0.3×10−7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するガラス材料が使用される。
さらに、EUV用マスクブランクスは、ガラス基板上に多数の膜が形成されるため、膜応力による変形を抑制できる剛性の高いガラス材料が使用される。特に、約65GPa以上の高いヤング率を有するガラス材料が好ましい。例えば、SiO−TiO系ガラス、合成石英ガラスなどのアモルファスガラスや、β−石英固溶体を析出した結晶化ガラスが用いられる。
<凹凸形状測定工程>
凹凸形状測定工程は、準備工程で準備されたガラス基板表面の凹凸形状(平坦度)を測定する工程である。
ガラス基板表面の凹凸形状の測定には、通常、光学干渉計が使用される。光学干渉計は、コヒーレントな光をガラス基板表面に照射して反射させ、ガラス基板表面の高さの差を反射光の位相のずれとして観測するものであり、フリンジ観察干渉計や位相シフト干渉計がある。また、位相シフト干渉計には、参照面をピエゾPZT走査により干渉計測を行う機械シフト干渉計と、光源として波長変調レーザーを用いて干渉計測を行う波長シフト干渉計とがある。
上記光干渉計によって測定された凹凸形状の測定結果は、コンピュータなどの記録媒体に保存される。
次に、コンピュータなどの演算処理手段によって、凹凸形状の測定結果と予め設定された所定の基準値(所望の平坦度)とが比較され、その差分が、ガラス基板表面の所定領域(たとえば、縦5mm×横5mmの領域)ごとに算出される。すなわち、ガラス基板表面の凸部分の高さに応じて加工取り代が設定される。この差分(加工取り代)が、局所的な表面加工における各所定領域の必要除去量となる。
なお、上記の演算処理は、凹凸形状測定工程又は平坦度制御工程のいずれで行ってもよい。
<平坦度制御工程>
平坦度制御工程は、上記演算処理手段によって設定された加工取り代に応じた加工条件で、所定領域ごとに凸部分を表面加工し、ガラス基板表面の平坦度を所定の基準値以下に制御する工程である。
また、上記表面加工は、鉄を含む磁性流体中に研磨砥粒を含有させ磁性研磨スラリーを用いて、ガラス基板表面に局所的に接触させる研磨加工である。本実施形態では、かかる表面加工として、上述したMRF加工法を採用している。
図2は、本実施形態の平坦度制御工程におけるMRF加工法による加工状態を説明する概略図であり、(a)は正面方向断面図を、(b)は側面方向断面図を示している。
同図において、MRF加工法によれば、鉄(図示せず)を含む磁性流体21中に含有させた研磨砥粒(図示せず)を、磁場援用により、被加工物であるマスクブランクス用基板1に高速で接触させるとともに、接触部分の滞留時間を制御することにより、局所的に研磨加工している。すなわち、回転自在に支持された円盤状の電磁石3に、磁性流体21と研磨スラリー22の混合液(磁性研磨スラリー2)を投入して、その先端を局所加工の研磨スポット4とし、除去すべき凸部分11を研磨スポット4に接触させている。このようにすると、円盤上の磁場に沿って磁性研磨スラリー2が、マスクブランクス用基板1側に研磨スラリー22が多く分布し、磁石3側に磁性流体21が多く分布する、ほぼ二層状態をなして流れる。この状態の一部分を局所的に研磨加工する研磨スポット4とし、マスクブランクス用基板1の表面と接触させることにより、凸部分11を局所的に研磨し数十nmの平坦度に制御する。
このMRF加工法は、従来の研磨方法と異なり、常に研磨スポット4が流動しているため、加工工具の磨耗や形状変化による加工精度の劣化がなく、さらに、マスクブランクス用基板1を高荷重で押圧する必要がないので、表面変位層における潜傷やキズが少ないといったメリットがある。
また、MRF加工法は、研磨スポット4を接触させながらマスクブランクス用基板1を移動させる際、所定領域ごとに設定された加工取り代(必要除去量)に応じてマスクブランクス用基板1の移動速度を制御することにより、容易に除去量を調節することができる。
磁性流体21に混合する研磨スラリー22は、微細な研磨粒子を液体に分散させたものが用いられる。研磨粒子は、たとえば、炭化珪素,酸化アルミニウム,ダイヤモンド,酸化セリウム,酸化ジルコニウム,酸化マンガン,コロイダルシリカなどであり、被加工物の材質や加工表面粗さなどに応じて適宜選択される。これらの研磨粒子は、水,酸性溶液,アルカリ性溶液などの液体中に分散されて研磨スラリー22となり、磁性流体21に混合される。
また、磁性流体21は、液体中に高濃度のマグネタイト等の強磁性微粒子(鉄を含む微粒子)が安定に分散した系で、通常媒体となる液体(ベース液)と磁性微粒子、さらに磁性粒子の表面に強固に化学吸着した界面活性剤の3成分よりなる。
マスクブランクス用基板1に要求される平坦度は、マスクブランクスにおいて使用される露光光源の波長に応じて決められており、この要求平坦度に応じて、平坦度制御工程における平坦度制御の基準値が決定される。
たとえば、F2エキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板の場合は、平坦度制御の基準値を約0.25μm以下とし、EUVマスクブランクス用基板の場合は、平坦度制御の基準値を約50nm以下として、MRF加工法による局所加工が行われる。
<洗浄工程>
図3は、本実施形態の洗浄工程におけるマスクブランクス用基板の洗浄状態を説明する概略拡大図であり、(a)は洗浄前の断面図を、(b)は洗浄後の断面図を、(c)は仕上げ研磨・洗浄後の断面図を示している。
同図において、マスクブランクス用基板1は、上述のMRF加工法による凹凸制御工程後、塩酸を含む洗浄液6を用いて洗浄される。
ところで、上述したように、マスクブランクス用基板1には、ほぼ二層状態をなして流れる研磨スラリー22が主に接触する。ただし、磁性流体21に含有された鉄成分5は、全くマスクブランクス用基板1と接触しないわけではなく、研磨スラリー22に比べれば微量ではあるが接触し、マスクブランクス用基板1表面に付着する。この付着状態は、図3(a)に示すように、大きく三つに分類でき、第一は、鉄成分5がマスクブランクス用基板1上に載置された状態で付着する場合,第二は、鉄成分5の一部がマスクブランクス用基板1にめりこんだ状態で付着する場合,第三は、鉄成分5の半分以上の部分がマスクブランクス用基板1にめりこんだ状態で付着する場合がある。
ここで、本実施形態は、塩酸を含む洗浄液6を用いてマスクブランクス用基板1を洗浄する方法としてあり、マスクブランクス用基板1に付着した鉄成分5を、酸を用いて溶解除去することができる。すなわち、鉄イオンと、酸の対イオンで形成される中和塩の中で、塩化物イオンとの中和塩である塩化鉄は、水に対する溶解度が高いといった特性を利用して、たとえば、鉄成分5がマスクブランクス用基板1にめりこんだ状態で付着している場合であっても、マスクブランクス用基板1に付着した磁性研磨スラリー2の鉄成分5をほとんど溶解除去することができる。
なお、洗浄液6に含まれる酸は、塩酸以外の強酸、たとえば、硫酸や硝酸などの強い酸性の酸を用いてもよい。
また、好ましくは、洗浄液6に含まれる塩酸の濃度を、0.05〜30%とするとよい。この理由は、塩酸の濃度を0.05%未満とすると十分な洗浄力が得られないからであり、また、30%を超えると、洗浄装置内に多量のミストが発生し、洗浄後のマスクブランクス用基板1に再付着するからである。
さらに好ましくは、洗浄液6に過酸化水素水を加えるとよい。このように、過酸化水素水を加えることにより、鉄成分を溶解させる力が大きくなり洗浄力を高めることができる。
また、洗浄方法としては、洗浄液6が満たされた洗浄槽にマスクブランクス用基板1を浸漬するディップ法や、洗浄液6をノズルから供給し、基板全面に供給する方法など様々な洗浄方法があるが、本発明は、ほぼ全ての洗浄方法に適用することができる。
好ましくは、上述の洗浄液6に超音波(例えば、100kHz以上)を印加したり、あるいは、洗浄液6を基板表面に供給しながらスポンジブラシやロールブラシによるスクラブ等の物理的作用を加えるなどしたりすることにより、さらに洗浄力を高めることができる。
また、マスクブランクス用基板1を、ArFエキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板,F2エキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板,又は,EUV露光用マスクブランクス用基板とした方法とするとよい。
このようにすると、鉄成分がほとんど存在しない高品質なマスクブランクス用基板1に対して、超短波長域の光を露光光源として用いることができ、超LSIデバイス等の半導体装置を、さらに高密度化したり高精度化したりすることができる。
<仕上げ研磨工程>
仕上げ研磨は、上述の凹凸制御工程において、ガラス基板表面に面荒れや加工変質層が生じた場合、該面荒れや加工変質層の除去を目的として行なわれる研磨である。この研磨方法は、局所表面加工で作り上げた平坦度を維持しつつ、表面粗さが改善される研磨方法であればよい。たとえば、研磨パッドなどの研磨用工具面をガラス基板表面と接触させて研磨する方法や、ガラス基板表面と研磨用工具面が直接接触することなく、両者の間に介在する加工液の作用で研磨を行う非接触研磨(例えば、フロートポリッシング法、EEM(Elastic Emission Machining)法)方法などが挙げられる。
たとえば、上記仕上げ研磨を実施することにより、図3(b)に示す鉄成分5が除去された跡に発生した凹部12を有するマスクブランクス用基板1を、図3(c)に示すように、凹部12を研磨により除去することができ、凹欠陥(傷等)を低減することができる。
また、局所加工後の基板の表面荒れを改善するために、局所加工後にコロイダルシリカ等のスラリーを用いて仕上げ研磨を行うと、局所加工で使用した磁性流体21を含む磁性研磨スラリー2(特に、鉄成分5)の持込みによって、仕上げ研磨の際、基板表面に凹欠陥(傷等)が発生するといった不具合を防止することができる。
このように、本実施形態にかかるマスクブランクス用基板の製造方法によれば、局所加工後に、マスクブランクス用基板1に付着した磁性研磨スラリー2(特に、鉄成分5)を、効果的に溶解除去することができるので、残留した鉄成分5による凸欠陥を大幅に低減することができる。
また、局所加工後の基板の表面荒れを改善するために、局所加工後にコロイダルシリカ等のスラリーを用いて仕上げ研磨を行う際、残留した鉄成分5によって、新たに基板表面に凹欠陥(傷等)が発生するといった不具合を防止することができる。
さらに、磁性研磨スラリー2を用いたMRF加工法を採用することにより、マスクブランクス用基板1の平坦度を大幅に向上させることができる。
[マスクブランクス用基板]
また、本発明は、マスクブランクス用基板の発明としても有効であり、本発明の実施形態にかかるマスクブランクス用基板1は、MRF加工し、さらに洗浄後の基板表面に存在する鉄(Fe)の量を、5×1012原子/cm以下とした構成としてある。
このようにすると、基板表面に上記量を超えた鉄が存在しないことにより、マスクブランクス用基板1をArFエキシマレーザー露光用やF2エキシマレーザー露光用として使用する場合、ArFエキシマレーザーやF2エキシマレーザーが鉄に吸収されてしまい、基板の透過率が低下するといった不具合を改善することができるので、転写パターン欠陥を大幅に低減することができる。また、EUV露光用として使用する場合、EUV露光用フォトマスクブランクス作製工程で基板上に作製されるEUV光反射多層膜の中に、鉄が混ざってしまい、EUV光反射多層膜のEUV光反射率を著しく低下させるといった不具合を改善することができるので、転写パターン欠陥を大幅に低減することができる。
また、鉄の量は、上記数値に限定されるものではなく、好ましくは、MRF加工し、さらに洗浄後の基板表面に存在する鉄(Fe)の量を、3×1012原子/cm以下とするとよく、好ましくは1×1012原子/cm以下、より好ましくは3×1010原子/cm以下、さらに好ましくは1×1010原子/cm以下とするとよい。すなわち、鉄の量は少ないほど好ましく、洗浄時間や洗浄サイクル等に起因する洗浄コストとのコストパフォーマンスによって設定される。
[マスクブランクスの製造方法]
また、本発明は、マスクブランクスの製造方法の発明としても有効であり、本発明の実施形態にかかるマスクブランクスの製造方法は、上述したマスクブランクス用基板の製造方法にてマスクブランクス用基板1を製造し、製造したマスクブランクス用基板1の主表面上に、マスクパターン(被転写パターン)となる薄膜を形成する方法としてある。
ところで、マスクブランクスは、透過型マスクブランクスと反射型マスクブランクスとに分類される。本実施形態のマスクブランクスは、いずれのマスクブランクスにも適用でき、マスクブランクス用基板1上に、被転写パターンとなる薄膜が精度よく形成される。なお、薄膜上にはレジスト膜が形成されてもよい。
また、透過型マスクブランクスに形成される薄膜は、被転写体に転写するときに使用される露光光(露光光源から発せられる光)に対し、光学的変化をもたらす薄膜であり、例えば、露光光を遮断する遮光膜や、露光光の位相差を変化させる位相シフト膜などが挙げられる。
遮光膜としては、一般に、Cr膜、Crに酸素,窒素,炭素,弗素を選択的に含むCr合金膜、これらの積層膜、MoSi膜、MoSiに酸素,窒素,炭素を選択的に含むMoSi合金膜、これらの積層膜などが挙げられる。
位相シフト膜としては、位相シフト機能のみを有するSiO膜のほかに、位相シフト機能及び遮光機能を有する金属シリサイド酸化物膜,金属シリサイド窒化物膜,金属シリサイド酸化窒化物膜,金属シリサイド酸化炭化物膜,金属シリサイド酸化窒化炭化物膜(金属:Mo,Ti,W,Taなどの遷移金属),CrO膜,CrF膜,SiON膜などのハーフトーン膜が挙げられる。
また、反射型マスクブランクスは、ガラス基板上に、反射多層膜(多層反射膜)と、被転写パターンとなる光吸収体膜(吸収体層)とを含む積層膜が形成される。
光反射多層膜としては、Ru/Si周期多層膜,Mo/Be周期多層膜,Mo化合物/Si化合物周期多層膜,Si/Nb周期多層膜,Si/Mo/Ru周期多層膜,Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜,Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などの材料が使用される。
光吸収体膜としては、TaやTa合金(例えば、TaとBを含む材料、TaとBとNを含む材料)、CrやCr合金(例えば、Crに窒素,酸素,炭素,弗素の少なくとも1つの元素が添加された材料)が使用される。
透過型マスクブランクスは、露光光源として、g線(波長:436nm),i線(波長:365nm),KrF(波長:246nm),ArF(波長:193nm),F2(波長:157nm)が使用され、反射型マスクブランクスは、露光光源として、EUV(例えば、波長:13nm)が使用される。
なお、上述の薄膜は、例えば、DCスパッタ,RFスパッタ,イオンビームスパッタなどのスパッタリング法で形成することができる。
このように、本実施形態にかかるマスクブランクスの製造方法によれば、平坦度に優れかつ位相欠陥要因の凹欠陥や凸欠陥が少なく、さらに、基板表面に鉄成分がほとんど存在しない高品質のマスクブランクスを製造することができる。
[マスクブランクス]
また、本発明は、マスクブランクスの発明としても有効であり、本発明の実施形態にかかるマスクブランクスは、上述したマスクブランクス用基板1の主表面上に、マスクパターンとなる薄膜を形成した構成としてある。
このようにすると、平坦度に優れ表面欠陥のない高品質なマスクブランクス用基板1により、転写パターン欠陥の発生を効果的に低減することができる。
[露光用マスクの製造方法]
また、本発明は、露光用マスクの製造方法の発明としても有効であり、本発明の実施形態にかかる露光用マスクの製造方法は、上述したマスクブランクスの製造方法にてマスクブランクスを製造し、製造したマスクブランクスにおける薄膜をパターニングしてマスクブランクス用基板1の主表面上にマスクパターンを形成する方法としてある。
すなわち、この転写マスクの製造方法は、上記マスクブランクスの製造方法によって得られたレジスト膜付きマスクブランクスを準備する工程と、レジスト膜に描画・現像処理等を経て所望のレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、レジストパターンをマスクして、薄膜をエッチング除去してマスクブランクス用ガラス基板1上に薄膜パターンを形成する薄膜パターン形成工程とを有する。
透過型の転写マスクであるフォトマスクにおいては、マスクブランクス用ガラス基板1上に遮光膜,レジスト膜が形成されたフォトマスクブランクスの前記レジスト膜に描画・現像処理等を経て所望のレジストパターンを形成した後、このレジストパターンをマスクにして遮光膜をエッチング除去し、最後にレジスト膜を除去することで、マスクブランクス用ガラス基板1上に遮光膜パターンが形成されたフォトマスクを得る。
また、透過型の転写マスクであるハーフトーン型位相シフトマスクにおいては、マスクブランクス用ガラス基板1上にハーフトーン膜,遮光膜,レジスト膜が形成されたハーフトーン型位相シフトマスクブランクスの前記レジスト膜に描画・現像処理等を経て所望のレジストパターンを形成した後、このレジストパターンをマスクにして遮光膜をエッチング除去し、遮光膜パターンを形成し、この遮光膜パターンをマスクにしてハーフトーン膜をエッチング除去し、最後にレジスト膜,遮光膜を除去することで、マスクブランクス用ガラス基板1上にハーフトーン膜パターンが形成されたハーフトーン型位相シフトマスクを得る。
また、反射型の転写マスクである反射型マスクにおいては、マスクブランクス用ガラス基板1上に光反射多層膜,光吸収体膜,レジスト膜が形成された反射型マスクブランクスの前記レジスト膜に描画・現像処理等を経て所望のレジストパターンを形成した後、このレジストパターンをマスクにして光吸収体膜をエッチング除去し、最後にレジスト膜を除去することで、光反射多層膜上に光吸収体膜パターンが形成された反射型マスクを得る。
このように、本実施形態にかかる露光用マスクの製造方法によれば、平坦度に優れ、かつ、表面欠陥のない高品質な露光用マスクを製造することができる。
[露光用マスク]
また、本発明は、露光用マスクの発明としても有効であり、本発明の実施形態にかかる露光用マスクは、上述したマスクブランクスにおける薄膜がパターニングされ、マスクブランクス用基板1の主表面上にマスクパターンを形成した構成としてある。
このようにすると、平坦度に優れ、かつ、表面欠陥のない高品質な露光用マスクによって、転写パターン欠陥の発生を効果的に低減することができる。
[半導体装置の製造方法]
また、本発明は、半導体装置の製造方法の発明としても有効であり、本発明の実施形態にかかる半導体装置の製造方法は、上述した露光用マスクの製造方法によって、露光用マスクを製造し、製造した露光用マスクを使用し、リソグラフィー法により露光用マスクの薄膜パターンを半導体基板1上にパターン転写する方法としてある。この際、半導体基板1上には回路パターンとなる導電膜とレジスト膜とを有しており、転写マスクを1/4や1/5倍程度に縮小露光することで、所望の回路パターンをレジスト膜に転写し、レジスト膜をマスクにして導電膜をパターニングすることで、半導体基板上に所望の回路パターンが形成された半導体装置を得ることができる。
このようにすると、現状レベルよりさらなる高密度化や高精度化を実現できる超LSIデバイス等の半導体装置を製造することができる。
[半導体装置]
また、本発明は、半導体装置の発明としても有効であり、本発明の実施形態にかかる半導体装置は、上述した露光用マスクにおける薄膜パターンを、リソグラフィー法により、半導体基板1上にパターン転写した構成としてある。
このようにすると、たとえば超LSIデバイス等の半導体装置に対して、現状レベルよりさらなる高密度化や高精度化を実現できる。
[実施例及び比較例]
以下、EUVマスクブランクス用ガラス基板(以下、ガラス基板と称す。)、EUV反射型マスクブランクス,EUV反射型マスク,及びそれらの製造方法を例として本発明の実施の形態を説明するが、以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
両面研磨装置を用い、酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカ砥粒により段階的に研磨し、低濃度のケイフッ酸で基板表面を表面処理したSiO−TiO系のガラス基板(大きさが約152.4mm×約152.4mm、厚さが約6.35mm)を準備した。得られたガラス基板の表面粗さは、自乗平均平方根粗さ(RMS)で約0.15nmであった(原子間力顕微鏡にて測定した。)。
このガラス基板の表裏面の表面形状(表面形態、平坦度)、TTV(板厚ばらつき)を、波長変調レーザーを用いた波長シフト干渉計で測定した(測定領域約148mm×約148mm)。
その結果、ガラス基板表面及び裏面の平坦度は約290nm(凸形状)であった。
ガラス基板表面の表面形状(平坦度)の測定結果は、測定点ごとにある基準面に対する高さの情報としてコンピュータに保存するとともに、ガラス基板に必要な表面平坦度の基準値50nm(凸形状)、裏面平坦度の基準値50nmと比較し、その差分(必要除去量)をコンピュータで計算した。
次に、ガラス基板面内を加工スポット形状領域ごとに、必要除去量に応じた局所表面加工の加工条件を設定した。
事前にダミー基板を用いて、実際の加工と同じようにダミー基板を、一定時間基板を移動させずにスポットで加工し、その形状を上記表裏面の表面形状を測定する装置と同じ測定機にて測定し、単位時間当たりにおけるスポットの加工体積を算出する。そして、スポットの情報とガラス基板の表面形状の情報より得られた必要除去量に従い、ガラス基板をラスタ走査する際の走査スピードを決定した。
設定した加工条件に従い、QED社製磁気流体による基板仕上げ装置を用いてMRF(磁気流動的流体)加工法により、ガラス基板の表裏面平坦度が上記の基準値以下となるように局所的表面加工処理をして表面形状を調整した。
なお、このとき使用した磁性流体21は、鉄成分5を含んでおり、研磨スラリー22は、アルカリ水溶液+研磨剤(約2wt%)、研磨剤:コロイダルシリカ(平均粒径:約70nm)とした。
その後、ガラス基板を濃度約10%の塩酸水溶液(温度約25℃)が入った洗浄槽に約10分間浸漬した後、純水によるリンス、イソプロピルアルコール(IPA)乾燥を行った。
得られたガラス基板表面の表面形状(表面形態、平坦度)を測定したところ、表裏面の平坦度は約40〜50nmとなっており良好であった。また、基板表面に残留する鉄成分を、全反射蛍光X線分析装置を用い測定したところ、その量は、1.8×1010原子/cmとなっており殆ど残留していない。また、ガラス基板表面の表面粗さを測定したところ、自乗平均平方根粗さRMSで、0.37nmとなっており、MRFによる局所表面加工前の表面粗さより荒れた状態になっていた。
そのため、ガラス基板の表裏面について、ガラス基板表面の表面形状が維持又は改善する研磨条件で両面研磨装置を用いて両面研磨を行った。この仕上げ研磨は以下の研磨条件で行った。
加工液:アルカリ水溶液(NaOH)+研磨剤(濃度:約2wt%)
研磨剤:コロイダルシリカ、平均粒径:約70nm
研磨定盤回転数:約1〜50rpm
加工圧力:約0.1〜10kPa
研磨時間:約1〜10分
その後、ガラス基板をアルカリ水溶液(NaOH)で洗浄し、EUVマスクブランクス用ガラス基板を得た。
得られたガラス基板の表裏面の平坦度、表面粗さを測定したところ、上述の測定装置によって測定したところ、表裏面平坦度は約40nmと両面研磨装置による加工前の状態を維持又は改善しており良好であった。また、表面粗さはRMSで0.13nmであり、両面研磨前と比べガラス基板の表面荒れの状態を改善することができた。
また、ガラス基板表面について、欠陥検査装置で凸欠陥、凹欠陥を測定したところ、50nmを超える欠陥は発見されず良好であった。
(実施例2)
上述の実施例1において、MRFによる局所加工後の洗浄条件を、濃度約0.5%の塩酸+5%過酸化水素+水からなる洗浄液にガラス基板を浸漬した。その他の条件は、実施例1と同様にしてEUVマスクブランクス用ガラス基板を作製した。
その結果、洗浄工程後の基板表面に残留した鉄の量は、約1.5×1010原子/cmとなり、実施例1と比べて鉄の残渣を少なくすることができた。
また、両面研磨後の欠陥検査装置による凸欠陥、凹欠陥を測定したところ、実施例1と同様に50nmを超える欠陥は発見されず良好であった。
(実施例3)
上述の実施例1において、MRFによる局所加工後の洗浄条件を、濃度0.5%の塩酸水溶液+超音波(周波数:約400kHz)の洗浄液にガラス基板を浸漬した。その他の条件は、実施例1と同様にしてEUVマスクブランクス用ガラス基板を作製した。
その結果、洗浄工程後の基板表面に残留した鉄の量は、約1×1010原子/cmとなり、実施例2と比べて鉄の残渣をさらに少なくすることができた。
また、両面研磨後の欠陥検査装置による凸欠陥、凹欠陥を測定したところ、実施例1と同様に50nmを超える欠陥は発見されず良好であった。
(実施例4)
上述の実施例1において、MRFによる局所加工後の洗浄条件を、濃度0.5%の塩酸水溶液+超音波(周波数:約750kHz)の洗浄液をガラス基板にノズル供給した。その他の条件は、実施例1と同様にしてEUVマスクブランクス用ガラス基板を作製した。
その結果、洗浄工程後の基板表面に残留した鉄の量は、約1×1010原子/cmとなり、実施例2と比べて鉄の残渣をさらに少なくすることができた。
また、両面研磨後の欠陥検査装置による凸欠陥、凹欠陥を測定したところ、実施例1と同様に50nmを超える欠陥は発見されず良好であった。
(実施例5)
上述の実施例1において、MRFによる局所加工後の洗浄条件を、濃度0.5%の硫酸水溶液からなる洗浄液にガラス基板を浸漬した。その他の条件は、実施例1と同様にしてEUVマスクブランクス用ガラス基板を作製した。
その結果、洗浄工程後の基板表面に残留した鉄の量は、約2.3×1010原子/cmとなった。
また、両面研磨後の欠陥検査装置による凸欠陥、凹欠陥を測定したところ、実施例1と同様に50nmを超える欠陥は発見されず良好であった。
(比較例1)
上述の実施例1において、MRFによる局所加工後の洗浄条件を、アンモニア過水(アンモニア水:過酸化水素水:水=1:2:10)にした以外は実施例1と同様にしてEUVマスクブランクス用ガラス基板を作製した。
その結果、洗浄工程後の基板表面に残留した鉄の量は、約3×1014原子/cmであり、磁性流体に含まれている鉄成分が完全に除去されずに残留している結果となった。
また、両面研磨後の欠陥検査装置による凸欠陥、凹欠陥を測定したところ、50nmを超える欠陥が、500〜600個発見された。これは、鉄成分の残渣よる影響により両面研磨で基板表面にキズが発生したものと考えられる。
次に、図4に示すように、上述の実施例1〜4及び比較例によって得られたガラス基板201上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、Si膜(膜厚:約4.2nm)とMo膜(膜厚:約28nm)を一周期として、約40周期積層した後、Si膜(膜厚:約11nm)形成して多層反射膜202を形成した。次に、同様のDCマグネトロンスパッタリング法により、多層反射膜202上にバッファ層203として窒化クロム(CrN)膜(膜厚:約30nm)、吸収体層204としてTaBN膜(膜厚:約60nm)を形成してEUV反射型マスクブランクス200を得た。
得られたEUV反射型マスクブランクス200について、欠陥検査装置を用いて欠陥検査をしたところ、実施例1〜4のマスクブランクス200については、50nmを超える欠陥は発見されず良好であったが、比較例のマスクブランクス200については、50nmを超える欠陥が多数発見された。これは、比較例のガラス基板201表面に存在している凸欠陥や凹欠陥が、多層反射膜202,バッファ層203,吸収体層204表面に反映されて位相欠陥となったものと考えられる。
次に、このEUV反射型マスクブランクス200を用いて、EUV反射型マスク200aを作製した。
まず、EUV反射型マスクブランクス200上に電子線照射用レジスト(図示せず)を塗布・形成し、電子線により描画して現像を行い、レジストパターン(図示せず)を形成した。
このレジストパターンをマスクとし、吸収体層204を塩素でドライエッチングし、バッファ層203上に吸収体層パターン204aを形成した。
さらに、吸収体層パターン204a上に残ったレジストパターンを熱硫酸で除去した。
その後、バッファ層203を塩素と酸素の混合ガスにより、吸収体層パターン204aに従ってドライエッチングし、多層反射膜202上にバッファ層パターン203aを形成した。これにより、バッファ層パターン203a/吸収体層204aを多層反射膜202上に形成してEUV反射型マスク200aを得た。
次に、上記EUV反射型マスク200aを用いて、レジスト付き半導体基板にEUV光によってパターンを転写する方法を説明する。
図5は、本発明の実施例及び比較例にかかる反射型マスクによるパターン転写方法を説明する概略図を示している。
同図において、パターン転写装置100は、レーザープラズマX線源101,EUV反射型マスク101,縮小光学系102などから構成される。縮小光学系102は、X線反射ミラー103を用いて構成され、EUV反射型マスク200aで反射されたパターンは1/4程度に縮小される。なお、露光波長として13〜14nmの波長帯を使用するので、光路が真空中になるように予め設定した。
このような状態で、レーザープラズマX線源101から得られたEUV光をEUV反射型マスク200aに入射し、ここで反射された光を、縮小光学系102を介して、レジスト付き半導体基板上に転写した。
つまり、EUV反射型マスク200aに入射した光は、吸収体層パターンのある部分では、吸収体層に吸収されて反射されず、一方、吸収体層のパターンのない部分に入射した光は、多層反射膜により反射される。このようにして、EUV反射型マスク200aからの反射光で形成されるパターンが、縮小光学系102を介して、半導体基板110上のレジスト層に転写される。
実施例及び比較例で得たガラス基板からなるEUV反射型マスク200aを使用し、上記のパターン転写方法によって半導体基板110にパターン転写を行ったところ、実施例1、2に係るEUV反射型マスク200aではパターン欠陥は見られなかったが、比較例に係るEUV反射型マスク200aではパターン欠陥が見られた。
(実施例6)
上述の実施例1において、ガラス基板を合成石英ガラスにした以外は、実施例1と同様にしてガラス基板を作成した。その結果、MRFによる局所加工を行いさらに洗浄工程を行った後の基板表面に残留した鉄の量は、約2×1012原子/cmとなった。
また、両面研磨後の欠陥検査装置による凸欠陥、凹欠陥を測定したところ、100nmを超える欠陥は発見されず良好であった。
次に、上述の得られたガラス基板上に、DCマグネトロンスパックリング法により、モリブデンシリサイドの窒化膜(MoSiN)からなるハーフトーン膜、クロム膜/クロムの酸化窒化膜からなる遮光膜を形成してArFエキシマレーザー露光用の透過型マスクブランクス(ハーフトーン型位相シフトマスクブランクス)を得た。
次に、この透過型マスクフランクス上に電子線照射用レジストを塗布・形成し、電子線により描画して現像を行い、レジストパターンを形成した。
このレジストパターンをマスクとし、遮光膜を塩素系ガス+酸素ガスでドライエッチングし、遮光膜パターンを形成し、さらに、レジストパターンと遮光膜パターンをマスクとして、弗素系ガス+酸素ガスでドライエッチングし、ハーフトーン膜パターンを形成した。最後に、レジストパターン、遮光膜パターンを除去して、基板上にハーフトーン膜パターンを形成したハーフトーン型位相シフトマスクを得た。
次に、このハーフトーン型位相シフトマスクをステッパーに装着し、半導体基板上にパターン転写を行ったところ、パターン欠陥は発見されず良好であった。
(実施例7)
上述の実施例6において、MRFによる局所加工後、1分間、濃度約5%の塩酸水溶液+超音波(周波数:約950kHz)の洗浄液にガラス基板(合成石英ガラス)を浸漬した。その他の条件は、実施例6と同様にしてArFエキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板を作製した。
その結果、洗浄工程後の基板表面に残留した鉄の量は、約3×1012原子/cmであった。また、両面研磨後の欠陥検査装置による凸欠陥、凹欠陥を測定したところ、実施例6と同様に100nmを超える欠陥は発見されず良好であった。
(実施例8)
上述の実施例6において、MRFによる局所加工後、5分間、濃度約5%の塩酸水溶液+超音波(周波数:約950kHz)の洗浄液にガラス基板(合成石英ガラス)を浸漬した。その他の条件は、実施例6と同様にしてArFエキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板を作製した。
その結果、洗浄工程後の基板表面に残留した鉄の量は、約2×1012原子/cmであった。また、両面研磨後の欠陥検査装置による凸欠陥、凹欠陥を測定したところ、実施例6と同様に100nmを超える欠陥は発見されず良好であった。
(実施例9)
上述の実施例6において、MRFによる局所加工後、10分間、濃度約5%の塩酸水溶液+超音波(周波数:約950kHz)の洗浄液にガラス基板(合成石英ガラス)を浸漬した。その他の条件は、実施例6と同様にしてArFエキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板を作製した。
その結果、洗浄工程後の基板表面に残留した鉄の量は、約3×1012原子/cmであった。また、両面研磨後の欠陥検査装置による凸欠陥、凹欠陥を測定したところ、実施例6と同様に100nmを超える欠陥は発見されず良好であった。
(比較例2)
上述の実施例6において、MRFによる局所加工後に酸洗浄を行なわず、実施例6と同様にしてArFエキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板を作製した。
その結果、洗浄工程後の基板表面に残留した鉄の量は約1×1014原子/cmであり、上述した実施例7〜9と比べて多量の鉄が残留した。また、両面研磨後の欠陥検査装置による凸欠陥、凹欠陥を測定したところ、100nmを超える欠陥が多数発見された。
なお、上述した実施例7〜9及び比較例2で作製したマスクブランクスを用いて、上記実施例6と同様にしてハーフトーン型位相シフトマスクを作製し、このハーフトーン型位相シフトマスクをステッパーに装着して半導体基板上にパターン転写を行ったところ、実施例7〜9のマスクブランクスではパターン欠陥は発見されず良好であったが、比較例2のマスクブランクスではパターン欠陥が発見された。
以上、本発明のマスクブランクス用基板,マスクブランクス,露光用マスク及び半導体装置,並びにそれらの製造方法について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係るマスクブランクス用基板,マスクブランクス,露光用マスク及び半導体装置,並びにそれらの製造方法は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
たとえば、磁性研磨スラリー2を使用した研磨方法は、上述したMRF加工法に限定されるものではなく、鉄を含む磁性研磨スラリー2を使用した研磨方法であればよい。
以上説明したように、本発明のマスクブランクス用基板,マスクブランクス,露光用マスク及び半導体装置,並びにそれらの製造方法は、磁性研磨スラリーを使用した研磨加工を施した後、高度の清浄度を必要とする機器、たとえば、光学機器や医療器具等の洗浄にも好適に利用することができる。
本発明の実施形態にかかるマスクブランクス用ガラス基板の製造方法を説明するための概略フローチャート図を示している。 本実施形態の平坦度制御工程におけるMRF加工法による加工状態を説明する概略図であり、(a)は正面方向断面図を、(b)は側面方向断面図を示している。 本実施形態の洗浄工程におけるマスクブランクス用基板の洗浄状態を説明する概略拡大図であり、(a)は洗浄前の断面図を、(b)は洗浄後の断面図を、(c)は仕上げ研磨・洗浄後の断面図を示している。 本発明の実施例及び比較例にかかる反射型マスクの製造方法を説明する概略図であり、(a)は反射型マスクブランクスの拡大断面図を、(b)は反射型マスクの拡大断面図を示している。 本発明の実施例及び比較例にかかる反射型マスクによるパターン転写方法を説明する概略図を示している。
符号の説明
1 マスクブランクス用基板
2 磁性研磨スラリー
3 磁石
4 研磨スポット
5 鉄成分
6 洗浄液
11 凸部分
12 凹部
21 磁性流体
22 研磨スラリー
100 パターン転写装置
101 レーザープラズマX線源
102 縮小光学系
103 X線反射ミラー
110 半導体基板
200 EUV反射型マスクブランクス
200a EUV反射型マスク
201 ガラス基板
202 多層反射膜
203 バッファ層
203a バッファ層パターン
204 吸収体層
204a 吸収体層パターン

Claims (11)

  1. 鉄を含む磁性流体中に研磨砥粒を含有させた磁性研磨スラリーを用いて、マスクブランクス用基板の表面を研磨した後、強酸を含む洗浄液を用いて、前記マスクブランクス用基板の表面を洗浄することを特徴とするマスクブランクス用基板の製造方法。
  2. 前記洗浄液に含まれる強酸が塩酸であって、その塩酸の濃度を0.05〜30%としたことを特徴とする請求項1記載のマスクブランクス用基板の製造方法。
  3. 前記マスクブランクス用基板を、ArFエキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板,F2エキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板,又は,EUV露光用マスクブランクス用基板としたことを特徴とする請求項1又は2記載のマスクブランクス用基板の製造方法。
  4. 上記請求項1〜3のいずれかに記載のマスクブランクス用基板の製造方法によって、マスクブランクス用基板を製造し、製造した前記マスクブランクス用基板の主表面上に、マスクパターンとなる薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクスの製造方法。
  5. 上記請求項4記載のマスクブランクスの製造方法によって、マスクブランクスを製造し、製造した前記マスクブランクスにおける薄膜をパターニングして前記マスクブランクス用基板の主表面上にマスクパターンを形成することを特徴とする露光用マスクの製造方法。
  6. 上記請求項5記載の露光用マスクの製造方法によって、露光用マスクを製造し、製造した前記露光用マスクを使用し、リソグラフィー法により該露光用マスクの薄膜パターンを半導体基板上にパターン転写することを特徴とする半導体装置の製造方法。
  7. 基板表面に存在する鉄の量が5×1012原子/cm以下であることを特徴とするマスクブランクス用基板。
  8. 前記マスクブランクス用基板を、ArFエキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板,F2エキシマレーザー露光用マスクブランクス用基板,又は,EUV露光用マスクブランクス用基板としたことを特徴とする請求項7記載のマスクブランクス用基板。
  9. 上記請求項7又は8記載のマスクブランクス用基板の主表面上に、マスクパターンとなる薄膜を形成したことを特徴とするマスクブランクス。
  10. 上記請求項9記載のマスクブランクスにおける前記薄膜がパターニングされ、前記マスクブランクス用基板の主表面上にマスクパターンを形成したことを特徴とする露光用マスク。
  11. 上記請求項10記載の露光用マスクにおける薄膜パターンを、リソグラフィー法により、半導体基板上にパターン転写したことを特徴とする半導体装置。
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