JP2006111967A - ガスバリア膜及び容器 - Google Patents

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Abstract

【課題】アモルファスカーボン膜中のダングリングボンドを水素以外の元素により積極的に終端させ、ガスバリア性を向上させたガスバリア膜及び該膜を有する容器を提供する。
【解決手段】本発明のガスバリア膜は、基材上の少なくとも片面に形成され、ガスバリア性を有するアモルファスカーボン膜であって、膜中の窒素濃度が0.5原子%以上5.0原子%以下とする。又は第2のアモルファスカーボン膜は、基材上の少なくとも片面に形成され、ガスバリア性を有するアモルファスカーボン膜であって、膜中の酸素濃度が0.1原子%以上2.0原子%以下とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、例えば樹脂等の容器等においてガスバリア性を付与するガスバリア膜及び該ガスバリア膜を有する容器に関する。
近年、プラスチック容器の一つである例えばペット(PET)ボトルは、外部からの酸素の透過、内部(例えば炭酸飲料水)からの二酸化炭素の透過を防止するためにその内面に例えばDLC(DiamondLikeCarbon)のような硬質の炭素膜をコーティングすることが試みられている(特許文献1)。
特開2003−237754号公報
しかしながら前記成膜された膜は水素を含む炭素膜であるDLC膜であるので、該DLC膜中に形成されるダングリングボンドは基本的には水素で終端されるが、原料ガス中の水素では全てのダングリングボンドを埋めることはできない、という問題がある。これは、原料中のCとHとがプラズマで分解された後、再び膜でCとHとが理想的に結合する必要があるが、短時間における成膜では困難であるからである。よって、容器に充填した内容物中のガスがダングリングボンド間をすり抜け透過することがあり、高いガスバリア性が得られない、という問題がある。
一方、原料ガスを水素で希釈する方法も考えられるが、一般的にはダイヤモンドの合成のように、水素希釈は膜中の水素を奪い取る効果を示すため、ダングリングボンドを積極的に水素で終端させる効果は薄いと考えられる。
また、DLC膜は硬質な炭素膜であるので、容器基材との密着性が良好ではなく、容器が伸縮する場合にはクラックが生じる、という問題がある。
本発明は、前記問題に鑑み、アモルファスカーボン膜中のダングリングボンドを水素以外の元素により積極的に終端させ、ガスバリア性を向上させたガスバリア膜及び該膜を有する容器を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、基材上の少なくとも片面に形成され、ガスバリア性を有するアモルファスカーボン膜であって、膜中の窒素濃度が0.5原子%以上5.0原子%以下であることを特徴とするガスバリア膜にある。
第2の発明は、基材上の少なくとも片面に形成され、ガスバリア性を有するアモルファスカーボン膜であって、膜中の酸素濃度が0.1原子%以上2.0原子%未満であることを特徴とするガスバリア膜にある。
第3の発明は、基材上の少なくとも片面に形成され、ガスバリア性を有するアモルファスカーボン膜であって、膜中の窒素濃度が0.5原子%以上5.0原子%以下であると共に、膜中の酸素濃度が0.1原子%以上2.0原子%未満であることを特徴とするガスバリア膜にある。
第4の発明は、基材上の少なくとも片面に形成され、ガスバリア性を有するシリカ系又はアルミナ系の膜であって、膜中の窒素濃度が0.5原子%以上20.0原子%以下であることを特徴とするガスバリア膜にある。
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記基材が樹脂基材、ガラス基材、セラミック基材、紙基材のいずれかであることを特徴とするガスバリア膜にある。
第6の発明は、第5の発明において、前記基材が電子材料を有することを特徴とするガスバリア膜にある。
第7の発明は、第5において、電子材料を封止する樹脂基材のガスバリア膜として用いてなることを特徴とするガスバリア膜にある。
第8の発明は、容器本体の表面に形成されるガスバリア性被膜が請求項1乃至4のいずれか一つのガスバリア膜であることを特徴とする容器にある。
本発明によれば、ガスバリア膜中に所定量の酸素、窒素又は酸素と窒素とを含むので、膜中のダングリングボンドをこれらにより終端させ、これらのガスの添加していないものと較べてガスバリア性の高いコーティングを得ることができる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態及び実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態及び実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
[発明の実施形態]
本発明に係る実施形態の第1のガスバリア膜は、基材上の少なくとも片面に形成され、ガスバリア性を有するアモルファスカーボン膜であって、膜中の窒素濃度が0.5原子%以上5.0原子%以下とするものである。
ここで、本発明で膜中の窒素濃度が0.5原子%未満及び窒素濃度が5.0原子%を超える場合では、後述する実施例に示すように、共にアモルファスカーボン膜中のダングリングボンドの終端効果が発現できず、ガスバリア性の効果が発揮せず、好ましくないからである。
本発明に係る実施形態の第2のガスバリア膜は、基材上の少なくとも片面に形成され、ガスバリア性を有するアモルファスカーボン膜であって、膜中の酸素濃度が0.1原子%以上2.0原子%以下とするものである。
ここで、本発明で膜中の酸素濃度が0.1原子%未満及び酸素濃度が2.0原子%を超える場合では、後述する実施例に示すように、共にアモルファスカーボン膜中のダングリングボンドの終端効果が発現できず、ガスバリア性の効果が発揮せず、好ましくないからである。
また、本発明に係る実施形態の第3のガスバリア膜は、基材上の少なくとも片面に形成され、ガスバリア性を有するアモルファスカーボン膜であって、膜中の窒素濃度が0.5原子%以上5.0原子%以下とすると共に、膜中の酸素濃度が0.1原子%以上2.0原子%以下とするものである。
また、本発明はガスバリア膜として、アモルファスカーボン膜以外に、例えばシリカ系バリア膜やアルミナ系バリア膜に窒素を0.5原子%以上20.0原子%以下添加するものである。ここで、前記シリカ系又はアルミナ系膜としては、例えばSiOx又はSi−Al−O、AlyOxからなる材料としてもよい。さらに、本発明は、ガスバリア膜として、アモルファスカーボン膜、シリカ系膜又はアルミナ系膜又はシリカアルミナ系膜以外のガスバリア性を有する膜においても所定の窒素又は酸素又は窒素及び酸素を添加することで、ガスバリア効果を向上させることに適用することができる。
ここで、SiOx膜等は、基材変形に対する追従性が不十分(膜がもろい)ので、外部から力が加わった際には、バリア性を保持することが難しい。よって、窒素を添加してこのもろさを改善し、バリア性を向上させることができる。
ここで、本発明で基材とは、いわゆるプラスチック等の樹脂基材の他にガラス基材、セラミック基材、紙基材等を例示することができる。
また、この樹脂、ガラス、セラミック基材には、例えば発光層、電極層等の電子材料を有するものであってもよい。例えば電子材料としては、有機EL(Organic Electro Luminescence、又は、OLED(Organic Light Emitting Diode)ともいう。)又は無機EL基板の保護膜としてアモルファスカーボン膜を用いるようにしてもよい。
また、有機トランジスタ等の有機電子デバイスにおいて、機能材料を水分や酸素等から保護する必要性の高い保護膜として用いるようにしてもよい。
また、前記基材の加工品としては、各種容器を挙げることができる。
前記容器としては、例えばガソリンタンク等の燃料を充填する容器等を挙げることができる。また、それ以外の容器としては、例えば医薬品用プラスチック容器、食品用プラスチック容器を挙げることができる。また、容器以外には、フィルム等に対するガスバリア膜として有効である。
ここで、前記樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム等の公知の材料を例示することができる。
また、有機トランジスタ等の有機電子デバイスにおいて、機能材料を水分や酸素等から保護する必要性の高い保護膜として用いるようにしてもよい。
ここで、本発明において、前記アモルファスカーボン膜とは、ダイヤモンド成分(炭素原子の結合がSP3結合)とグラファイト成分(炭素原子の結合がSP2結合)、ポリマー成分(炭素原子の結合がSP1結合)が混在したアモルファス状の構造を有する炭素膜のことである。アモルファスカーボン膜は、それぞれの炭素原子の結合成分の存在比率の変化により硬度が変化し、硬質の炭素膜及び軟質の炭素膜を含むものをいう。また、前記硬質の炭素膜には、SP3結合を主体にしたアモルファスなDLC(Diamond Like Carbon)膜も含まれる。
また、本発明のように所定量の窒素や酸素をガスバリア膜に積極的にドープさせることにより、炭素膜の性質がDLC膜のような硬質の性質から軟質の性質をより多く呈することになる。そして、この軟質な炭素膜の場合には、可撓性を有する樹脂基材との密着性もさらに向上することとなり、ガスバリア性と共に、基材との密着性をも向上する膜となる。
このようなガスバリア膜を製造する方法としては、例えばCVD法、熱CVD法、プラズマCVD法等に代表される公知の化学気相成長法(CHEMICAL Vapor Deposition:CVD)を用いることができる。
また、例えば反応性スパッタ法、イオンプレーティング法、アーク蒸着法、イオン蒸着法、プラズマイオン注入法等に代表される公知の物理的気相成膜法(Physical Vapor Deposition:PVD)を用いることができる。
なお、本発明においては、前記PVD法よりCVD法を適用する場合において、本発明の効果をより発揮することになる。これは、前記CVD法で作製する膜の方が、アモルファスカーボン膜中にダングリングボンドを多く含むためである。
ここで、前記媒質ガスとしては炭化水素を基本とし、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン類;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ブタジエン等のアルケン類;アセチレン等のアルキン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタリン、フェナントレン等の芳香族炭化水素類;シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロパラフィン類;シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン類などが使用でき、その他一酸化炭素、二酸化炭素なども使用できる。これにより、例えば容器に充填された例えば炭酸飲料水からの二酸化炭素の透過を防止するためのアモルファスカーボン膜をコーティングすることができる。また、アモルファスカーボン膜が傾斜機能を有する膜であってもよい。
なお、PVD法を用いる場合には、グラファイト等の固体蒸発源も利用可能となる。
また、媒質ガスに添加する窒素源としては、窒素原子を含むガスであればいずれでもよく、例えば窒素、アンモニア以外に、例えばメチルアミン、エチルアミン、アニリン等の含窒素炭化水素類等を例示することができる。
また、媒質ガスに添加する酸素源としては、酸素が一般的であるが、酸素以外には、例えば二酸化炭素、一酸化炭素、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等)等を用いるようにしてもよい。
ここで、高周波プラズマCVD法においては、例えば媒質ガス中の窒素濃度を2〜28%とすることで、アモルファスカーボン膜の場合に前記所定の窒素濃度とすることができる。
また、高周波プラズマCVD法においては、媒質ガス中の酸素濃度を1〜20%とすることで、アモルファスカーボン膜の場合に前記所定の酸素濃度とすることができる。
また、高周波プラズマCVD法において、アモルファスカーボン膜の場合、媒質ガス中に窒素と酸素とを添加する方法として空気を用いる場合には、2〜35%とするようにすればよい。これは、窒素と酸素との分圧の関係から窒素が28%となるのが、35%であるからである。
ここで、高周波プラズマCVD法においては、例えば媒質ガス中の窒素濃度を1〜30%とすることで、シリカ系又はアルミナ系膜の場合に前記所定の窒素濃度とすることができる。
以下、本発明のガスバリア膜としてアモルファスカーボン膜を形成する成膜装置の一例について図面を参照して説明する。
図5は、本実施形態に係る成膜装置を示す概念図である。
以下、基材の一例として、プラスチック容器を例にして説明する。
図5に示すように、本実施例に係る成膜装置は、口部11を有するプラスチック容器12の内面に放電プラズマにより成膜を施す成膜装置であって、プラスチック容器12の外周を取り囲む大きさを有する外部電極13と、前記口部11が位置する側の前記外部電極13の端面に絶縁部材を介して取り付けられた排気管14と、前記外部電極13内の前記プラスチック容器12内に前記排気管14側から前記プラスチック容器12の長手のほぼ全長に亙って挿入され、接地G側に接続されると共に、先端部に媒質ガス15を吹き出すための絶縁性のガス吹き出し孔16が設けられた内部電極17と、前記排気管14に取り付けられた図示しない排気装置と、前記内部電極17に媒質ガス15を供給するための図示しないガス供給装置と、前記外部電極13に接続された高周波電源18とを具備してなるものである。
前記外部電極13は、上下端にフランジ22a,22bを有するチャンバー(上部)22−1及びチャンバー(下部)22−2から構成される筒状のチャンバー22内に設けられている。
前記筒状のチャンバー22と前記外部電極13は、上部側と下部側とに二分割可能としており、着脱可能に取り付けられている。また、円板状の絶縁板24は、前記基台23と前記下部外部電極13−2の底部側との間に配置されている。
また、上下にフランジ31a,31bを有するガス排気管14が形成されており、下フランジ31bから上フランジ22aを介してチャンバー22−1が垂下されている。なお、蓋体32は、前記排気管14の上部フランジ31aに取り付けられている。
ここで、前記筒状のチャンバー22は、導電性の材料(アルミニウム、ステンレス、銅、真鍮等の導電部材)からなり、電磁波のシールド及び高周波のアースとして機能するアースシールドの役割も兼ねている。また、無垢材料、メッシュ、パンチングメタル等から構成されている。なお、形状は、円筒状、角状等の筒状体としている。
なお、前記筒状のチャンバー22と外部電極13の分割部には、導電コネクタ41及び真空シール(Oリング)42が介装されている。
また、前記外部電極(下部)13−2、前記絶縁板24及び前記基台23は、図示しないプッシャーにより、前記外部電極(上部)13−1に対して一体的に上下動し、前記外部電極(上部)13−1の底部を開閉する。ここで、前記チャンバー(下部)22−2は基台23と共に、一緒に分割される。
また、本実施例では、内部に挿入されるプラスチック容器12の口部および肩部に対応する円柱および円錐台を組み合わせた形状をなす空洞部を有する誘電体材料からなる円柱状のスペーサが上部外部電極13−1の内側に配設されている。前記円板状のスペーサ25は、この上に載置される環状の絶縁部材26から螺着されたねじ(図示せず)により固定されている。このように円柱状のスペーサ25を前記外部電極13の上部に挿入固定することにより、前記外部電極13の底部側からプラスチック容器12を挿入すると、そのプラスチック容器12の口部および肩部が前記円板状のスペーサ25の空洞部内に位置し、かつこれ以外のプラスチック容器12の外周が前記外部電極13内面に位置する。
前記円板状のスペーサ25を構成する誘電体材料としては、例えばプラスチックまたはセラミックを挙げることができる。プラスチックとしては、種々のものを用いることができるが、特に高周波損失が低く、耐熱性の優れたポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素系樹脂が好ましい。セラミックとしては、高周波損失が低いアルミナ、ステアタイトまたは機械加工性が高いマコール(登録商標)が好ましい。
高周波電力を出力する高周波電源18は、ケーブル34および給電端子35を通して前記外部電極13に接続されている。整合器36は、前記高周波電源18と前記給電端子35の間の前記ケーブル34に介装されている。
内部電極17は、前記外部電極13および円板状のスペーサ25内に挿入されたプラスチック容器12内にこの容器長手方向のほぼ全長に亙って配置され、その上端が前記プラスチック容器12の口部11側に位置する前記ガス供給管と兼用している。なお、ガス供給管は接地端子を兼ねるようにしている。
なお、ガス吹き出し孔は前記内部電極17の下部側壁にガス流路37と連通するように開口してもよい。この場合、ガス吹き出し孔は前記内部電極17の底部から前記プラスチック容器12内に挿入された長さの25%までの範囲内の側面領域に開口することが好ましい。前記内部電極17の径は、プラスチック容器の口金径以下とし、その長さはプラスチック容器12の長手方向のほぼ全長にわたって挿入可能な長さとする。
前記内部電極17は、例えばタングステンやステンレス鋼のような耐熱性を有する金属材料により作られるが、アルミニウムで作ってもよい。また、内部電極17表面が平滑であると、その内部電極17の表面に堆積する炭素膜を剥離し易くなる虞がある。このため、内部電極17の表面を予めサンドブラスト処理し、表面粗さを大きくして表面に堆積する炭素膜を剥離し難くすることが好ましい。
次に、上述した成膜装置を用いて内面にアモルファスカーボン膜を被覆してなるプラスチック容器の製造方法を説明する。図示しないプッシャーにより外部電極13とチャンバー22とを分割し、内部を開放する。つづいて、プラスチック容器12を開放した外部電極(上部)13−1内に挿入した後、図示しないプッシャーにより外部電極(下部)13−2、絶縁板24、基台23及びチャンバー(下部)22−2を元に戻す。このとき、前記プラスチック容器12は排気管14にその口部を通して連通する。
次いで、図示しない排気手段により排気管14を通して前記排気管14及び前記プラスチック容器12内外のガスを排気する。媒質ガス15を内部電極17のガス流路37に供給し、この内部電極17のガス吹き出し孔16からプラスチック容器12内に底部にむかって吹き出させる。この媒質ガス15は、さらにプラスチック容器12の底部から壁面を伝わり、口部11に向かって流れていく。つづいて、ガス供給量とガス排気量のバランスをとり、前記プラスチック容器12内を所定のガス圧力に設定する。
次いで、高周波電源18から高周波電力をケーブル34、整合器36および給電端子35を通して前記外部電極13に供給する。このとき、前記外部電極13(実質的に前記プラスチック容器内面)と接地された前記内部電極17との間に放電プラズマが生成される。この放電プラズマによって媒質ガス15が解離し、生成した成膜種が前記プラスチック容器12内面に堆積し、アモルファスカーボン膜が形成される。
前記アモルファスカーボン膜の膜厚が所定の厚さに達した後、前記高周波電源18からの高周波電力の供給を停止し、媒質ガス15の供給の停止、残留ガスの排気を行い、ガスの排気を停止した後、窒素、希ガス、又は空気等を内部電極17のガス流路37のガス吹き出し孔16を通してプラスチック容器12内に供給し、このプラスチック容器12内外を大気圧に戻し、内面炭素膜被覆プラスチック容器を取り出す。その後、前述した順序に従ってプラスチック容器を交換し、次のプラスチック容器のコーティング作業へ移る。
ここで、前記媒質ガスには、窒素源又は酸素源並びにこれらの併用物(例えば空気)を添加したアセチレンを用いている。
前記高周波電源18からの高周波電力は、13.56MHz乃至100MHzを用い、100〜1000Wの出力、0.1〜1Torrの圧力としている。また、この高周波電力の印加は連続的でも間欠的(パルス的)でもよい。なお、印加する高周波の周波数を高く(例えば60MHz)し、DLC膜に較べてより軟質なアモルファスカーボン膜を合成し、窒素又は酸素等の添加効果による軟質な炭素膜との相乗効果によって、基材との密着性をさらに良好にさせるようにすることができる。
また、図6に示すように、先ず、媒質ガスでプラスチック容器12内の残留大気を置換する工程と同時に、放電を開始するようにしてもよい。
これにより、媒質ガス15に残留している大気ガスを含む混合ガスのプラズマを形成し、基材の表面をプラズマに曝露し、基材の表面処理を行ない、活性処理層を形成する。この結果、表面処理を施された基材の表面に徐々に媒質ガス成分の比率が増大しつつ成膜された被膜は、該表面処理層に存在する窒素又は酸素がアンカー効果を奏することで強い密着力を発揮し、結果としてその後に成膜される所定濃度に調整された窒素、酸素又はこれらの混合物を含むアモルファスカーボン膜の密着性が向上することになる。
以上説明したように、本発明に係るガスバリア膜をプラスチック容器の内面に成膜することで、ガスバリア性が向上することとなる。なお、本発明は図5に示した容器に何等限定されるものではなく、いずれの容器形状であってもよい。また、成膜装置も図5に示した成膜装置に何等限定されるものではない。さらに、ガスバリア膜の形成も容器内面に限定されるものではなく、容器の外面又は容器の内外面の両方に成膜するようにしてもよい。
以下、本発明の効果を示す実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
アセチレン70sccm、窒素10sccmを導入し、圧力0.12Torr、周波数13.56MHz、パワー700Wを印加し、プラスチックフィルム(PET)上にアモルファスカーボン膜を30nm成膜した。その結果、酸素透過率が未コートと比較し16倍、窒素の導入が無い場合と比較して1.3倍減少した。光電子分光法によりアモルファスカーボン膜を分析した結果、膜中の窒素の割合が1.9原子%であり、398〜400eV、286〜287eVにC−Nのピークが確認され、窒素はアモルファスカーボン膜中に炭素と結合して存在することが明らかとなった。
[実施例2]
アセチレン70sccm、窒素20sccmを導入し、圧力0.12Torr、周波数13.56MHz、パワー700Wを印加し、プラスチックフィルム(PET)上にアモルファスカーボン膜を30nm成膜した。その結果、酸素透過率が未コートと比較し18倍、窒素の導入が無い場合と比較して1.5倍減少した。光電子分光法によりアモルファスカーボン膜を分析した結果、膜中の窒素の割合が3.6原子%であり、398〜400eV、286〜287eVにC−Nのピークが確認され、窒素はアモルファスカーボン膜中に炭素と結合して存在することが明らかとなった。
[実施例3]
アセチレン70sccm、酸素10sccmを導入し、圧力0.12Torr、周波数13.56MHz、パワー700Wを印加し、プラスチックフィルム(PET)上にアモルファスカーボン膜を30nm成膜した。その結果、酸素透過率が未コートと比較し19倍、酸素の導入が無い場合と比較して1.7倍減少した。光電子分光法によりアモルファスカーボン膜を分析した結果、膜中の酸素の割合が1.3原子%であり、288eVにC−Oのピークが確認され、酸素はアモルファスカーボン膜中に炭素と結合して存在することが明らかとなった。
[実施例4]
アセチレン70sccm、乾燥空気10sccmを導入し、圧力0.12Torr、周波数13.56MHz、パワー700Wを印加し、プラスチックフィルム(PET)上にアモルファスカーボン膜を25nm成膜した。その結果、酸素透過率が未コートと比較し24倍、窒素の導入が無い場合と比較して2.2倍減少した。光電子分光法によりアモルファスカーボン膜を分析した結果、膜中の窒素の割合が1.9原子%であり、膜中の酸素の割合が0.6原子%であり、398〜400eV、286〜287eVにC−Nのピークが、288eVにC−Oのピークが、各々確認され、窒素及び酸素がアモルファスカーボン膜中に炭素と結合して存在することが明らかとなった。
[実施例5]
アセチレン70sccm、乾燥空気20sccmを導入し、圧力0.12Torr、周波数13.56MHz、パワー700Wを印加し、プラスチックフィルム(PET)上にアモルファスカーボン膜を25nm成膜した。その結果、酸素透過率が未コートと比較し16倍、窒素の導入が無い場合と比較して1.4倍減少した。光電子分光法によりアモルファスカーボン膜を分析した結果、膜中の窒素の割合が3.6原子%であり、膜中の酸素の割合が1.7原子%であり、398〜400eV、286〜287eVにC−Nのピークが、288eVにC−Oのピークが、各々確認され、窒素及び酸素がアモルファスカーボン膜中に炭素と結合して存在することが明らかとなった。
[比較例1]
アセチレン70sccm、窒素30sccmを導入し、圧力0.12Torr、周波数13.56MHz、パワー700Wを印加し、プラスチックフィルム(PET)上にアモルファスカーボン膜を30nm成膜した。その結果、酸素透過率が未コートと比較し3倍、窒素の導入が無い場合と比較して0.3倍減少した。光電子分光法によりアモルファスカーボン膜を分析した結果、膜中の窒素の割合が5.7原子%であり、398〜400eV、286〜287eVにC−Nのピークが確認された。
[比較例2]
アセチレン70sccm、窒素3.5sccmを導入し、圧力0.12Torr、周波数13.56MHz、パワー700Wを印加し、プラスチックフィルム(PET)上にアモルファスカーボン膜を30nm成膜した。その結果、酸素透過率が未コートと比較し12倍、窒素の導入が無い場合と比較して1.1倍減少した。光電子分光法によりアモルファスカーボン膜を分析した結果、膜中の窒素の割合が0.4原子%であり、398〜400eV、286〜287eVにC−Nのピークが確認された。
[比較例3]
アセチレン70sccm、酸素20sccmを導入し、圧力0.12Torr、周波数13.56MHz、パワー700Wを印加し、プラスチックフィルム(PET)上にアモルファスカーボン膜を30nm成膜した。その結果、酸素透過率が未コートと比較し6倍、酸素の導入が無い場合と比較して0.5倍減少した。光電子分光法によりアモルファスカーボン膜を分析した結果、膜中の酸素の割合が2.8原子%であり、288eVにC−Oのピークが確認された。
なお、実施例及び比較例の膜中の窒素又は酸素濃度(原子%)は、公知の光電子分光装置を用い、以下の条件にて測定した。
X線源:Al(Kα)、出力:300W(14kV―22mA)、X線照射径:約800μm中和銃使用、Arスパッタ:1kV、スパッタ時間2分である。
また、酸素バリア性相対値は、無添加アモルファスカーボンコートボトルの酸素透過率/ガス添加アモルファスカーボンコーティングボトルの酸素透過率とした。本実施例では、酸素バリア性相対値が1以上でガス添加によるプラスの効果があることを示す。
これらの結果を下記「表1」に示す。
また、窒素のガス添加割合(%)と酸素バリア性相対値との関係図を図1に、窒素のガス添加割合(%)と膜中窒素濃度(原子%)との関係図を図2に示す。
また、酸素及び空気のガス添加割合(%)と酸素バリア性相対値との関係図を図3に、酸素のガス添加割合(%)と膜中酸素濃度(原子%)との関係図を図4に示す。
Figure 2006111967
前記「表1」及び図1、2に示すように、窒素については、最初は窒素の添加効果の発現は少ないものの窒素のガス添加割合が22%程度で添加効果が最大となり、窒素のガス添加割合が28%程度で添加しない場合と同様となった。
よって、アモルファスカーボン膜の膜中の窒素濃度は0.5〜5.0原子%とするのが良いことが判明した。
前記「表1」及び図3、4に示すように、酸素については、添加当初から添加効果が発現し、酸素のガス添加割合が13%程度で添加効果が最大となり、窒素のガス添加割合が20%程度で添加しない場合と同様となった。
よって、アモルファスカーボン膜の膜中の酸素濃度は0.1〜2.0原子%とするのが良いことが判明した。
前記「表1」及び図3から、空気については、最初は窒素の影響が大きく添加効果の発現は少ないものの、添加量が多くなると酸素と同様の挙動を示した。
以上のように、本発明に係るガスバリア膜は、窒素又は酸素又はこれらの混合物を添加することにより、膜中のダングリングボンドが終端され、ガスバリア性が極めて良好となり、ガスバリア性の良好な容器等に用いて適している。
窒素のガス添加割合(%)と酸素バリア性相対値との関係図である。 窒素のガス添加割合(%)と膜中窒素濃度(原子%)との関係図である。 酸素及び空気のガス添加割合(%)と酸素バリア性相対値との関係図である。 酸素のガス添加割合(%)と膜中酸素濃度(原子%)との関係図である。 本実施形態に係る成膜装置の概略図である。 ガスバリア膜の成膜状態を示す図である。
符号の説明
11 口部
12 プラスチック容器
13 外部電極
14 排気管
15 媒質ガス
16 ガス吹き出し孔
17 内部電極
18 高周波電源

Claims (8)

  1. 基材上の少なくとも片面に形成され、ガスバリア性を有するアモルファスカーボン膜であって、
    膜中の窒素濃度が0.5原子%以上5.0原子%以下であることを特徴とするガスバリア膜。
  2. 基材上の少なくとも片面に形成され、ガスバリア性を有するアモルファスカーボン膜であって、
    膜中の酸素濃度が0.1原子%以上2.0原子%未満であることを特徴とするガスバリア膜。
  3. 基材上の少なくとも片面に形成され、ガスバリア性を有するアモルファスカーボン膜であって、
    膜中の窒素濃度が0.5原子%以上5.0原子%以下であると共に、膜中の酸素濃度が0.1原子%以上2.0原子%未満であることを特徴とするガスバリア膜。
  4. 基材上の少なくとも片面に形成され、ガスバリア性を有するシリカ系又はアルミナ系の膜であって、
    膜中の窒素濃度が0.5原子%以上20.0原子%以下であることを特徴とするガスバリア膜。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
    前記基材が樹脂基材、ガラス基材、セラミック基材、紙基材のいずれかであることを特徴とするガスバリア膜。
  6. 請求項5において、
    前記基材が電子材料を有することを特徴とするガスバリア膜。
  7. 請求項5において、
    電子材料を封止する樹脂基材のガスバリア膜として用いてなることを特徴とするガスバリア膜。
  8. 容器本体の表面に形成されるガスバリア性被膜が請求項1乃至4のいずれか一つのガスバリア膜であることを特徴とする容器。
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