JP2006104711A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、苗木用客土注入マット及びそれを用いた法面の樹林化工法に関するものである。
従来、苗木を法面に配植する場合に、苗木の生育に支障をきたす雑草の発芽を防止等するために、苗木の周りの地面を覆うマルチングシートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−275497号公報(2乃至4頁、図1)
上記マルチングシートを用いた法面の樹林化工法では、まず、法面の地山を予め掘って苗木を配植し、その後、現地発生土を埋め戻したり、客土を盛る必要があった。しかしながら、法面の地山を配植する苗木ごとに予め掘ることは、施工手間が掛かり、また客土を盛る場合で、例えば、水分を含んだ泥状客土のときには、客土の整形等が難しく、施工が困難であった。
そこで、本発明の主たる課題は、施工効率よく地盤の樹林化が可能な苗木用客土注入マット、及びそれを用いた法面の樹林化工法を提供することにある。
上記課題を解決した本発明は、次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
請求項1記載の発明は、少なくとも遮光性と不透水性を有するマルチングシートと、網状のシートから形成された袋体と、を備えた苗木用客土注入マットであって、前記マルチングシートは、該袋体の表面側の網状のシートを覆うように、この袋体に取付けられた、 ことを特徴とする苗木用客土注入マットである。
<請求項1記載の発明>
請求項1記載の発明は、少なくとも遮光性と不透水性を有するマルチングシートと、網状のシートから形成された袋体と、を備えた苗木用客土注入マットであって、前記マルチングシートは、該袋体の表面側の網状のシートを覆うように、この袋体に取付けられた、 ことを特徴とする苗木用客土注入マットである。
(作用効果)
マルチングシートは、袋体の表面側の網状のシートを覆うように、この袋体に取付けられた構成となっていることにより、苗木を配植する際の地面の掘削作業が不要であると共に、客土は網状のシート内に注入すればよく、特に客土の整形は必要としない。また、袋体は網状のシートであることにより、客土が水分を含んだ泥状客土のときでは、余剰水を排出することができると共に、水分補給においても地面からの湧水や地表面流により容易に行うことができる。さらに、少なくとも遮光性と不透水性を有するマルチングシートが客土を注入する袋体と一体化しているので、マルチング施工の手間が軽減される。
マルチングシートは、袋体の表面側の網状のシートを覆うように、この袋体に取付けられた構成となっていることにより、苗木を配植する際の地面の掘削作業が不要であると共に、客土は網状のシート内に注入すればよく、特に客土の整形は必要としない。また、袋体は網状のシートであることにより、客土が水分を含んだ泥状客土のときでは、余剰水を排出することができると共に、水分補給においても地面からの湧水や地表面流により容易に行うことができる。さらに、少なくとも遮光性と不透水性を有するマルチングシートが客土を注入する袋体と一体化しているので、マルチング施工の手間が軽減される。
<請求項2記載の発明>
請求項2記載の発明は、前記マルチングシートは、前記袋体の外周の一辺に沿って、少なくとも2枚以上取付けられ、隣り合うマルチングシートにおいて、一方のマルチングシートは他方のマルチングシートの端部を覆うように重なりしろをもって配設された、請求項1記載の苗木用客土注入マットである。
請求項2記載の発明は、前記マルチングシートは、前記袋体の外周の一辺に沿って、少なくとも2枚以上取付けられ、隣り合うマルチングシートにおいて、一方のマルチングシートは他方のマルチングシートの端部を覆うように重なりしろをもって配設された、請求項1記載の苗木用客土注入マットである。
(作用効果)
マルチングシートは、前記袋体の外周の一辺に沿って、少なくとも2枚以上取付けられ、隣り合うマルチングシートにおいて、一方のマルチングシートは他方のマルチングシートの端部を覆うように重なりしろをもって配設された構成とされることにより、苗木を配植する際には、網状シートに切込みを入れ、さらに、隣り合うマルチングシートの少なくともどちらか一方に切込みを入れて、その切込みに苗木を挟み込みつつ植え込めばよいので、苗木の配植手間とマルチング施工の手間が軽減される。
ここで、「隣り合う」関係は、左右方向のみならず、上下方向や斜め方向等にも成立するものとする。
マルチングシートは、前記袋体の外周の一辺に沿って、少なくとも2枚以上取付けられ、隣り合うマルチングシートにおいて、一方のマルチングシートは他方のマルチングシートの端部を覆うように重なりしろをもって配設された構成とされることにより、苗木を配植する際には、網状シートに切込みを入れ、さらに、隣り合うマルチングシートの少なくともどちらか一方に切込みを入れて、その切込みに苗木を挟み込みつつ植え込めばよいので、苗木の配植手間とマルチング施工の手間が軽減される。
ここで、「隣り合う」関係は、左右方向のみならず、上下方向や斜め方向等にも成立するものとする。
<請求項3記載の発明>
請求項3記載の発明は、前記網状のシートから形成される袋体は、表面側を形成する表面網状シート及び裏面側を形成する裏面網状シートの二枚からなり、これら網状シートは、非生分解性素材で編み込まれた補強部で四周が区画されると共に、前記裏面網状シートの補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸及び縦糸の少なくともどちらか一方が生分解性素材で構成された、請求項1又は2記載の苗木用客土注入マットである。
請求項3記載の発明は、前記網状のシートから形成される袋体は、表面側を形成する表面網状シート及び裏面側を形成する裏面網状シートの二枚からなり、これら網状シートは、非生分解性素材で編み込まれた補強部で四周が区画されると共に、前記裏面網状シートの補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸及び縦糸の少なくともどちらか一方が生分解性素材で構成された、請求項1又は2記載の苗木用客土注入マットである。
(作用効果)
網状シートは、非生分解性素材で編み込まれた補強部で四周が区画されると共に、前記裏面網状シートの補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸及び縦糸の少なくともどちらか一方が生分解性素材で構成されているので、裏面網状シートを地盤に面するように敷設し、苗木の配植を行えば、生分解性素材の糸が施工数ヵ月後には腐食するため、苗木の根の生育を阻害することはない。
網状シートは、非生分解性素材で編み込まれた補強部で四周が区画されると共に、前記裏面網状シートの補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸及び縦糸の少なくともどちらか一方が生分解性素材で構成されているので、裏面網状シートを地盤に面するように敷設し、苗木の配植を行えば、生分解性素材の糸が施工数ヵ月後には腐食するため、苗木の根の生育を阻害することはない。
<請求項4記載の発明>
請求項4記載の発明は、前記裏面網状シートの補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸が生分解性素材で構成されると共に、縦糸が非生分解性素材で構成された、請求項3記載の苗木用客土注入マットである。
請求項4記載の発明は、前記裏面網状シートの補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸が生分解性素材で構成されると共に、縦糸が非生分解性素材で構成された、請求項3記載の苗木用客土注入マットである。
(作用効果)
前記裏面網状シートの補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸が生分解性素材で構成されると共に、縦糸が非生分解性素材で構成されているので、施工数ヵ月後には横糸は腐食するため、苗木の根の生育を阻害することはなく、また、縦糸は腐食せずに残ることにより、例えば、法面に敷設された場合には、注入された客土が浸食されたり崩壊してしまう虞を最小限にすることができる。
前記裏面網状シートの補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸が生分解性素材で構成されると共に、縦糸が非生分解性素材で構成されているので、施工数ヵ月後には横糸は腐食するため、苗木の根の生育を阻害することはなく、また、縦糸は腐食せずに残ることにより、例えば、法面に敷設された場合には、注入された客土が浸食されたり崩壊してしまう虞を最小限にすることができる。
<請求項5記載の発明>
請求項5記載の発明は、前記表面網状シートの略中央から法尻方向にかけての部分が、非伸縮性糸で構成された、請求項3又は4記載の苗木用客土注入マットである。
請求項5記載の発明は、前記表面網状シートの略中央から法尻方向にかけての部分が、非伸縮性糸で構成された、請求項3又は4記載の苗木用客土注入マットである。
(作用効果)
前記表面網状シートの少なくとも略中央から法尻方向にかけての部分が、非伸縮性糸で構成されていることにより、客土が注入されたときの客土の重みによって客土の型崩れをなくすることができる。
前記表面網状シートの少なくとも略中央から法尻方向にかけての部分が、非伸縮性糸で構成されていることにより、客土が注入されたときの客土の重みによって客土の型崩れをなくすることができる。
<請求項6記載の発明>
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の苗木用客土注入マットを法面に敷設し、該苗木用客土注入マット内に客土を注入し、苗木を配植する、ことを特徴とする法面の樹林化工法である。
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の苗木用客土注入マットを法面に敷設し、該苗木用客土注入マット内に客土を注入し、苗木を配植する、ことを特徴とする法面の樹林化工法である。
<請求項7記載の発明>
請求項7記載の発明は、前記客土は、団粒化させた泥状客土である請求項6記載の法面の樹林化工法である。
請求項7記載の発明は、前記客土は、団粒化させた泥状客土である請求項6記載の法面の樹林化工法である。
(作用効果)
請求項6又は7記載の発明によれば、施工効率よく法面の樹林化を行うことができる。
請求項6又は7記載の発明によれば、施工効率よく法面の樹林化を行うことができる。
<請求項1乃至5記載の発明の実施態様>
苗木用客土注入マットに係る請求項1乃至5記載の発明の実施態様として、以下の態様も提案できる。
第1の実施態様として、前記網状のシートから形成される袋体が、表面側を形成する表面網状シート及び裏面側を形成する裏面網状シートの二枚からなり、これら網状シートは、非生分解性素材で編み込まれた外周補強部で四周が区画され、該網状シートの長辺方向を端から見て、それぞれ対向する長辺方向の外周補強部を連結するように、非生分解性素材で編み込まれた第1、第2及び第3の縦補強部が形成されることにより、苗木を植生するための区画が4つ形成され、前記第2の縦補強部は、その部分全体で表面網状シート及び裏面網状シートを縫合して中仕切りを形成し、前記第1及び第3の縦補強部には、網状を形成する縦糸及び横糸よりも径の太いロープが縫合されていると共に、該ロープは所望の間隔をもって表面網状シート及び裏面網状シートを縫合している構成とされ、前記裏面網状シートの外周補強部並びに第1、第2及び第3の縦補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸及び縦糸の少なくともどちらか一方が生分解性素材で構成された、請求項1又は2記載の苗木用客土注入マットも提案できる。
苗木用客土注入マットに係る請求項1乃至5記載の発明の実施態様として、以下の態様も提案できる。
第1の実施態様として、前記網状のシートから形成される袋体が、表面側を形成する表面網状シート及び裏面側を形成する裏面網状シートの二枚からなり、これら網状シートは、非生分解性素材で編み込まれた外周補強部で四周が区画され、該網状シートの長辺方向を端から見て、それぞれ対向する長辺方向の外周補強部を連結するように、非生分解性素材で編み込まれた第1、第2及び第3の縦補強部が形成されることにより、苗木を植生するための区画が4つ形成され、前記第2の縦補強部は、その部分全体で表面網状シート及び裏面網状シートを縫合して中仕切りを形成し、前記第1及び第3の縦補強部には、網状を形成する縦糸及び横糸よりも径の太いロープが縫合されていると共に、該ロープは所望の間隔をもって表面網状シート及び裏面網状シートを縫合している構成とされ、前記裏面網状シートの外周補強部並びに第1、第2及び第3の縦補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸及び縦糸の少なくともどちらか一方が生分解性素材で構成された、請求項1又は2記載の苗木用客土注入マットも提案できる。
第1の実施態様の作用効果としては、外周補強部並びに第1、第2及び第3の縦補強部で苗木を植生するための領域が4つ区画されており、一つの苗木用客土注入マットの敷設で苗木を4本配植することができ、この苗木用客土注入マットを地面に複数敷設することにより、様々なデザインで植栽の配置ができる。
また、これら補強部と共に、第1及び第3の縦補強部には、網状を形成する縦糸及び横糸よりも径の太いロープが縫合されていると共に、該ロープは所望の間隔をもって表面網状シート及び裏面網状シートを縫合している構成とされていることにより、注入される客土の重みによる客土の型崩れをなくすことができるので、法面に使用した場合の客土の厚みの不均一さをなくすことができる。そのため、袋体内への苗木の配植は、網状のシート短辺方向では任意の位置で行うことができる。
さらに前記裏面網状シートの外周補強部並びに第1、第2及び第3の縦補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸及び縦糸の少なくともどちらか一方が生分解性素材で構成されているので、裏面網状シートを地盤に面するように敷設し、苗木の配植を行えば、生分解性素材の糸が施工数ヵ月後には腐食するので、苗木の根の生育を阻害することはない。
また、これら補強部と共に、第1及び第3の縦補強部には、網状を形成する縦糸及び横糸よりも径の太いロープが縫合されていると共に、該ロープは所望の間隔をもって表面網状シート及び裏面網状シートを縫合している構成とされていることにより、注入される客土の重みによる客土の型崩れをなくすことができるので、法面に使用した場合の客土の厚みの不均一さをなくすことができる。そのため、袋体内への苗木の配植は、網状のシート短辺方向では任意の位置で行うことができる。
さらに前記裏面網状シートの外周補強部並びに第1、第2及び第3の縦補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸及び縦糸の少なくともどちらか一方が生分解性素材で構成されているので、裏面網状シートを地盤に面するように敷設し、苗木の配植を行えば、生分解性素材の糸が施工数ヵ月後には腐食するので、苗木の根の生育を阻害することはない。
また、第2の実施態様として、前記裏面網状シートの外周補強部並びに第1、第2及び第3の縦補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸が生分解性素材で構成されると共に、縦糸が非生分解性素材で構成された、第1の実施態様の苗木用客土注入マットも提案できる。
第2の実施態様の作用効果としては、前記裏面網状シートの外周補強部並びに第1、第2及び第3の縦補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸が生分解性素材で構成されているので、施工数ヵ月後には横糸は腐食するため、苗木の根の生育を阻害することはなく、また、縦糸は腐食せずに残ることにより、例えば、法面に敷設された場合には、注入された客土が浸食されたり崩壊してしまう虞を最小限にすることができる。
さらに、第3の実施形態として、前記網状シートにおいて、それぞれ対向する短辺方向の外周補強部を連結するように、非生分解性素材で編み込まれた横補強部が、前記網状シート短辺方向に所望の間隔をもって複数形成された、第1又は第2の実施態様の苗木用客土注入マットも提案できる。
第3の実施態様の作用効果としては、横補強部が、網状シート短辺方向に所望の間隔をもって複数形成されているので、さらに注入される客土の重みによる客土の型崩れ防止を強化でき、法面に使用した場合の客土の厚みの不均一さを一層なくすことができる。
本発明によれば、施工効率よく地盤の樹林化が可能である等の利点がもたらされる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
<苗木用客土注入マットの全体構成>
苗木用客土注入マットの全体構成について、主に図1乃至4に基づき説明する。なお、図1は本発明に係る苗木用客土注入マットの平面図であり、図2は隣り合うマルチングシートの重なり合いを説明するためのA−A断面図であり、図3は網状シートからなる袋体の平面図であり、図4は網状シートの部分拡大図である。
本発明に係る苗木用客土注入マットは、少なくとも遮光性と不透水性を有するマルチングシート1,1,…と、網状シート3から形成された袋体2と、を備えており、マルチングシート1,1,…は、袋体2の表面側を形成する表面網状シート31を覆うように、この袋体2に取付けられた構成となっている。このマルチングシート1,1,…は、図1に示す実施の形態では、袋体2の外周の長辺方向の一辺(図3に示す3A)に沿って縫合等により5枚取付けられており、隣り合うマルチングシート1,1において、図2に示すように、一方のマルチングシート1の側端部は他方のマルチングシート1の側端部を覆うように重なりしろKをもって配設されている。
<苗木用客土注入マットの全体構成>
苗木用客土注入マットの全体構成について、主に図1乃至4に基づき説明する。なお、図1は本発明に係る苗木用客土注入マットの平面図であり、図2は隣り合うマルチングシートの重なり合いを説明するためのA−A断面図であり、図3は網状シートからなる袋体の平面図であり、図4は網状シートの部分拡大図である。
本発明に係る苗木用客土注入マットは、少なくとも遮光性と不透水性を有するマルチングシート1,1,…と、網状シート3から形成された袋体2と、を備えており、マルチングシート1,1,…は、袋体2の表面側を形成する表面網状シート31を覆うように、この袋体2に取付けられた構成となっている。このマルチングシート1,1,…は、図1に示す実施の形態では、袋体2の外周の長辺方向の一辺(図3に示す3A)に沿って縫合等により5枚取付けられており、隣り合うマルチングシート1,1において、図2に示すように、一方のマルチングシート1の側端部は他方のマルチングシート1の側端部を覆うように重なりしろKをもって配設されている。
マルチングシート1,1,…は、少なくとも遮光性と不透水性を有しており、その遮光性によって苗木の生育に支障をきたす雑草の発芽を防止すると共に、不透水性によって水分の蒸発を防いで(乾燥防止)、苗木の枯れを防止することができる。このマルチングシート1,1,…の材質としては、ポリエチレンクロスラミネートシート等が考えられる。マルチングシート1,1,…が、袋体2と一体化していることにより、樹林化作業において、袋体2への客土の注入の際には、マルチングシート1,1,…をめくって網状シート2を露出させておき、客土の注入や苗木の植え込みを終えた後に、マルチングシート1,1,…で苗木を覆し、後述するようにピン等での固定作業をするだけで苗木による樹林化作業が終了してしまうので苗木の配植手間とマルチング施工の手間が軽減される。また、マルチングシート1,1,…が、重なり合う暖簾状であることにより、図5に示すように、重ねられる方のマルチングシート1を側端縁から重なりしろKの際の部分まで切込み12を入れ、切込み12に苗木Nを挟み込みつつ配植し、そして苗木Nの根元近傍までマルチングシート1,1で覆うことで、隣り合うマルチングシート1,1の隙間からの日差しの差込や水分の蒸発を防ぐことができる。この重なりしろKの長さとしては、袋体2内に客土を充填し終えた状態で、10cm〜15cm程度あればよい。なお、図1や図5に示す実施の形態では、苗木Nを4本配植するものであるためマルチングシート1,1,…は5枚であるが、本発明はこの枚数に限定されるものではなく、苗木Nを1本配植するものであれば、重なりしろが形成されればよいことから、マルチングシートの枚数は少なくとも2枚袋体に取付けられればよい。そして、一つの袋体に苗木Nを複数本は移植するのであれば、それに応じてマルチングシートの枚数を増やせばよい。
マルチングシート1,1,…の長辺及び短辺の長さとしては、マルチングシート1,1,…の短辺方向の長さは、袋体2の長辺方向の長さよりも若干長く、約10cm程度長くしている。これは、図7に示すように、袋体2内に客土が充填された状態でも表面網状シート31を覆うようにするため、及びマルチング処理のしやすさを考慮してのことである。そのため、後述するように、マルチング処理の際に、余分な部分(袋体2内に客土が充填された状態での、マルチングシート1,1,…の短辺方向長さから袋体2の短辺長さを除いた部分)は、図5及び図7に示すように、巻き取ってインシュロック4等により結束して固定すればよい。また、重なりしろKを形成する方向の長さ、すなわち図1に示す袋体2の長辺方向の長さは、袋体2の長さと同等程度であればよく、好ましくは、袋体2内に客土が充填された状態でも、表面網状シート31を覆うように、袋体2の長さよりも若干長いことが望ましい。
次に、袋体2を形成する網状シート3について説明する。袋体2は、表面側を形成する表面網状シート31及び裏面側を形成する裏面網状シート32の二枚からなっている。ここで、表面及び裏面の意味であるが、マルチングシート1,1,…に接触している面を表面側といい、袋体2が地面に敷設される際に、地面に接して置かれる面を裏面側と便宜的に命名するものである。袋体2は網状シート3で形成されていることにより、法面に敷設される場合は特に、客土が水分を含んだ泥状客土のときに、余剰水を排出することができると共に、水分補給においても地面からの湧水や地表面流により容易に行うことができる。なお、網目間隔(縦糸33と横糸34で形成される網目間隔)は、1〜10mmピッチ程度が好ましく、より好適には1〜5mmピッチ程度、さらに好ましくは2〜5mmピッチ程度である。
表面網状シート31及び裏面網状シート32の網状シート3は、図3に示すように、非生分解性素材で編み込まれた外周補強部3A,3A,…で四周が区画され、網状シート3の長辺方向を端から見て、それぞれ対向する長辺方向の外周補強部3A,3Aを連結するように、非生分解性素材で編み込まれた第1、第2及び第3の縦補強部3B,3C,3Dが形成されることにより、苗木Nを植生するための区画が4つ形成されている。このうち、第2の縦補強部3Cは、その部分全体で表面網状シート31及び裏面網状シート32を縫合して中仕切りを形成しており、図6に示すように、この第2の縦補強部3Cを境として客土の流入・移動が無いようになっている。そして、第1及び第3の縦補強部3B,3Dには、後述する網状を形成する縦糸33,33,…及び横糸34,34,…よりも径の太いロープ35が縫合されていると共に、このロープ35は所定の間隔をもって表面網状シート31及び裏面網状シート32を縫合している。このロープ35は、第1及び第3の縦補強部3B,3Dそれぞれについて1本通しとなっており、客土に対して均一な応力が加えられ、客土の厚みの均一な管理がしやすくなっている。すなわち、第1及び第3の縦補強部3B,3Dにより、苗木用客土注入マットが法面に敷設された場合に、注入される客土の重みによる客土の型崩れ(図10参照)をなくすことができるので、図7に示すように、客土の厚みの不均一さをなくすことができ、そのため、袋体2内への苗木の配植は、網状シート3の短辺方向では両端部分を除いて任意の位置で行うことができる。
また、本実施の形態では、図3に示すように、網状シート3において、それぞれ対向する短辺方向の外周補強部3A,3Aを連結するように、非生分解性素材で編み込まれた横補強部3E,3E,…が、網状シート2の短辺方向に所望の間隔をもって複数形成されている。そのため、第1及び第3の縦補強部3B,3Dと協動して、注入される客土の重みによる客土の型崩れ防止をさらに強化でき、法面に使用した場合の客土の厚みの不均一さを一層なくすことができる。また、第1及び第3の縦補強部3B,3Dと横補強部3E,3E,…との交差する部分を、ロープ35の表面網状シート31と裏面網状シート32との縫合箇所とすれば、図4に示すように、ロープ35と横補強部3E,3E,…とが縫合箇所を中心として略格子状になり、より一層、均一に客土に応力を加えることができる。
なお、ロープ35が表面網状シート31及び裏面網状シート32を縫合していない部分においては、第2の縦補強部3Cの中仕切りとは異なり、図6に示すように、客土の流入・移動ができるようになっている。すなわち、第1植生区画21(短辺方向の外周補強部3A、長辺方向の外周補強部3A,3A及び第1の縦補強部3Bによって区画された苗木を植え込むための区画)、及び第2植生区画22(第1の縦補強部3B、長辺方向の外周補強部3A,3A及び第2の縦補強部3Cによって区画された苗木を植え込むための区画)では、それぞれの区画の客土の流入・移動が可能であり、同様に、第3植生区域23(第2の縦補強部3C、長辺方向の外周補強部3A,3A及び第3の縦補強部3Dによって区画された苗木を植え込むための区画)、及び第4植生区域24(第3の縦補強部3D、長辺方向の外周補強部3A,3A及び短辺方向の外周補強部3Aによって区画された苗木を植え込むための区画)でもそれぞれの区画の客土の流入・移動が可能であるが、第2の縦補強部3Cを境として隣接する第2植生区画22と第3植生区画23との間の客土の流入・移動はない。
なお、袋体2を法面に設置する場合に、表面網状シート31の略中央から法尻方向にかけての部分を非伸縮性糸で構成すれば、注入される客土の重みによる客土の型崩れ(図10参照)をより一層なくすことができる。この際、表面網状シート31の略中央から法肩側にかけての部分については、伸縮性糸で構成してもよいし、非伸縮性糸で構成してもよい。
網状シート3の大きさとしては、図3に示すように、長辺方向の仕上がり寸法L(短辺方向の外周補強部3A,3Aの内々寸法)では1700mm以上(袋体長さ寸法としては1800mm以上)、短辺方向の仕上がり寸法H(長辺方向の外周補強部3A,3Aの内々寸法)としては600mm以上(袋体幅寸法としては700mm以上)が好ましい。この大きさであれば、第1植生区画21及び第2植生区画22には合わせて客土を40リットル以上注入することができる。同様に、第3植生区域23及び第4植生区域24にも合わせて客土を40リットル以上注入することができる。そのため、両端部を除いて全体として客土の厚みが20cm以上確保できることにより、水分の確保等がしやすくなり、苗木の生育環境として十分なものとすることができる。
外周補強部3A,3A,…には、貫通孔3F,3F,…が形成されており、L型アンカーピン5等により地面への苗木用客土注入マットの固定や、マルチングシート1,1,…と袋体2とのインシュロック4等の結束を行うことができる。図5に示すように、法面に苗木用客土注入マットを敷設する際には、法肩側の貫通孔3F,3F,…にL型アンカーピン5等により地山への固定を行い、法尻側の貫通孔3F,3F,…においてL型アンカーピン5等により地山への固定を行う。それと共に、マルチングシート1,1,…の重なりしろK近傍の貫通孔3F,3F,…において、マルチングシート1,1,…の重なりしろKで、隣接するマルチングシート1,1のそれぞれと袋体2とをインシュロック4等で結束を行う。このインシュロック4等により、重なりしろKで、隣接するマルチングシート1,1を結束すると同時に、袋体2とマルチングシート1,1,…とを固定することができる。
なお、実施の形態では、苗木を植える区画として4区画形成されたものを示したが、本発明は4区画のもの(つまり、苗木を4本配植するもの)に限定されない。1区画のものでもよいし、2以上の区画からなるものでもよい。すなわち、苗木をn本は移植するのであれば、n区画形成すればよいし、その場合、前述したマルチングシートはn+1枚袋体に取付ければよいことになる。
上記実施の形態では、袋体2の外周補強部3Aの長辺方向の一辺に沿ってマルチングシート1,1,…が縫合等により取付けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。図示はしないが、上方から流れ落ちる雨水を隣り合うマルチングシート1の側端部から内部に侵入させるため、上下方向に重なりしろKが形成されるように袋体2の外周補強部3Aの短辺方向の一辺にマルチングシート1,1,…を取付けてもよい。この際、図示はしないが、法尻側に位置する袋体2の外周補強部3Aと法尻側に位置するマルチングシート1の下方側端部とを縫合等により取付けておけば、内部に侵入した雨水がそのまま下方に流れることなく、袋体2内に留まらせることができると共に、保水性を向上させることができる。
<網状シートの素材構成>
本発明に係る網状シートの素材構成について、主に図3及び図4に基づき説明する。
前述のように、表面網状シート31及び裏面網状シート32の網状シート3の外周補強部3A,3A,…、第1、第2及び第3の縦補強部3B,3C,3D、横補強部3E,3E,…、及びロープ35は非生分解性素材で構成されている。ここで、非生分解性素材には、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、アクリル、ポリプロピレン、ガラス、カーボン、セラミック等が含まれている。したがって、これら袋体2の骨格に相当する部分については、経時的に腐食し難くなっているので、客土の侵食や崩壊を長期的に防止することができる。
本発明に係る網状シートの素材構成について、主に図3及び図4に基づき説明する。
前述のように、表面網状シート31及び裏面網状シート32の網状シート3の外周補強部3A,3A,…、第1、第2及び第3の縦補強部3B,3C,3D、横補強部3E,3E,…、及びロープ35は非生分解性素材で構成されている。ここで、非生分解性素材には、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、アクリル、ポリプロピレン、ガラス、カーボン、セラミック等が含まれている。したがって、これら袋体2の骨格に相当する部分については、経時的に腐食し難くなっているので、客土の侵食や崩壊を長期的に防止することができる。
裏面網状シート32については、外周補強部3A,3A,…並びに第1、第2及び第3の縦補強部3B,3C,3Dで区画された領域において、編み込まれる横糸34及び縦糸33の少なくともどちらか一方が生分解性素材で構成されている。ここで、生分解性素材には、例えば、綿、麻、絹、椰子などの天然繊維やレーヨン、アセテート、キュプラ等が含まれている。このことによって、施工数ヵ月後には少なくともどちらか一方は腐食するため、苗木Nの根の生育を阻害することはなくなる。
また、外周補強部3A,3A,…並びに第1、第2及び第3の縦補強部3B,3C,3Dで区画された領域において、編み込まれる横糸34を生分解性素材で構成されると共に、縦糸33を非生分解性素材で構成すれば、縦糸33については、経時的に腐食し難くなっているので、表面網状シート31及び裏面網状シート32の網状シート3の外周補強部3A,3A,…、第1、第2及び第3の縦補強部3B,3C,3D、横補強部3E,3E,…、及びロープ35と協動して、より一層、客土の侵食や崩壊を長期的に防止することができる。
表面網状シート31については、編み込まれる横糸34及び縦糸33の両方を非生分解性素材で構成されている。しかしながら、少なくともどちらか一方を生分解性素材で構成してもよい。
<苗木用客土注入マットを用いた法面樹林化工法>
苗木用客土注入マットを用いた法面樹林化工法について、主に図5乃至図8に基づいて説明する。なお、図5は苗木用客土注入マットに苗木を植え込んだ状態を示す平面図であり、図6はそのB−B断面であり、図7はそのC−C断面であり、図8は袋体への客土の注入を説明するための説明図であり、図9は袋体へ苗木の植え込むための切込みを説明するための説明図である。
苗木用客土注入マットを用いた法面樹林化工法について、主に図5乃至図8に基づいて説明する。なお、図5は苗木用客土注入マットに苗木を植え込んだ状態を示す平面図であり、図6はそのB−B断面であり、図7はそのC−C断面であり、図8は袋体への客土の注入を説明するための説明図であり、図9は袋体へ苗木の植え込むための切込みを説明するための説明図である。
まず、法面樹林化工法について説明する前に、客土Sを袋体2への注入するための客土注入装置(図示せず)を説明する。この客土注入装置は、客土を圧送するためのポンプ(図示せず)と、客土を法面に敷設された袋体まで搬送するための圧送ホース(図示せず)と、圧送ホースの先端に連結された注入ノズル6と、を備えている。なお、後述するように、客土を団粒化させるためには、保水団粒形成剤を土壌に混ぜ込む必要があるが、その際には、この保水団粒形成剤を圧送するポンプ(図示せず)と、保水団粒形成剤を搬送するための供給ホース(図示せず)を備えればよく、このうち供給ホースの先端を客土用圧送ホースの中間部分(より具体的には、注入ノズル6先端から、0.3m〜10m、好適には0.3m〜5m離れた位置の供給ホースに取付けられたY字管)に連結することにより、この中間部分から注入ノズル6までの間で客土と保水団粒形成剤を混ぜ合わせ、注入ノズル6の先端から、団粒化した客土Sを吐出させればよい。なお、使用される土壌としては、現地発生土や黒土等を用いることができる。
苗木用客土注入マットを用いた法面樹林化工法としては、まず、苗木用客土注入マットの法面への敷設の前に、敷設予定の法面の地山の清掃や除草を予め行っておく。そして、苗木用客土注入マットを法面に敷設し、図5に示すように、貫通孔3F,3F,…にL型アンカーピン5等を挿入し、苗木用客土注入マットを法面に固定する。
次に、図8に示すように、袋体2の表面網状シート31の一部に切込みを入れ、客土Sを注入するための吹付ノズル6を挿入するための客土注入口13を形成する。なお、この客土注入口13については、第1植生区画21及び第2植生区画22への客土Sの注入の場合で説明すると、第1植生区画21及び第2植生区画22内に客土Sが十分に充填されるようにするためには、図8に示すように、法肩側に形成したほうが、客土Sが充填されやすくなるので好ましく、また法肩側であれば横方向の位置は任意でよい。なお、第3植生区域23及び第4植生区域24についても同様に行う。
注入する客土Sとしては、植物の生育性の観点から通気性や保水性等があり、また、施工性の観点から余剰水の排水性が高い等の理由により、前述した団粒化された土壌であることが好ましく、より好ましくは団粒化させた泥状土壌(客土)が望ましい。
次に、客土Sを充填した後は、苗木を袋体2内に配植するために、図9に示すように、所望の位置に切込み11を入れ、この切込み11から客土S内に苗木を植え込めばよい。この切込み11の切込み方向は、図9に示すような縦方向でなくても、横方向に形成してもよい。ただし、縦方向と横方向をクロスさせて切り込むことは好ましくはない。
その後、図5に示すように、重ねられる方のマルチングシート1を側端縁から重なりしろKの際の部分まで切込み12を入れ、切込み12に苗木Nを挟み込みつつ配植し、そして苗木Nの根元近傍までマルチングシート1,1で覆う。そして、マルチングシート1,1の余分な部分を巻き取り、重なりしろKの一部分に穴(図示せず)を開け、その穴と貫通孔3F,3F,…とをインシュロック4等により連結し袋体2とマルチングシート1,1とを一体化させ、このマルチングシート1,1により、袋体2の表面網状シート31を覆ってやればよい。
1…マルチングシート、2…袋体、3…網状シート、3A…外周補強部、3B…第1の縦補強部、3C…第2の縦補強部、3D…第3の縦補強部、3E…横補強部、3F…貫通孔、4…インシュロック、5…L型アンカーピン、6…注入ノズル、11…切込み(網状シート側)、12…切込み(マルチングシート側)、13…客土注入口、21…第1植生区画、22…第2植生区画、23…第3植生区画、24…第4植生区画、31…表面網状シート、32…裏面網状シート、33…縦糸、34…横糸、35…ロープ、K…重なりしろ、N…苗木、S…客土。
Claims (7)
- 少なくとも遮光性と不透水性を有するマルチングシートと、網状のシートから形成された袋体と、を備えた苗木用客土注入マットであって、
前記マルチングシートは、該袋体の表面側の網状のシートを覆うように、この袋体に取付けられた、
ことを特徴とする苗木用客土注入マット。 - 前記マルチングシートは、前記袋体の外周の一辺に沿って、少なくとも2枚以上取付けられ、
隣り合うマルチングシートにおいて、一方のマルチングシートは他方のマルチングシートの端部を覆うように重なりしろをもって配設された、請求項1記載の苗木用客土注入マット。 - 前記網状のシートから形成される袋体は、表面側を形成する表面網状シート及び裏面側を形成する裏面網状シートの二枚からなり、
これら網状シートは、非生分解性素材で編み込まれた補強部で四周が区画されると共に、前記裏面網状シートの補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸及び縦糸の少なくともどちらか一方が生分解性素材で構成された、請求項1又は2記載の苗木用客土注入マット。 - 前記裏面網状シートの補強部で区画された領域において、編み込まれる横糸が生分解性素材で構成されると共に、縦糸が非生分解性素材で構成された、請求項3記載の苗木用客土注入マット。
- 前記表面網状シートの少なくとも略中央から法尻方向にかけての部分が、非伸縮性糸で構成された、請求項3又は4記載の苗木用客土注入マット。
- 請求項1乃至5のいずれか1項記載の苗木用客土注入マットを法面に敷設し、該苗木用客土注入マット内に客土を注入し、苗木を配植する、
ことを特徴とする法面の樹林化工法。 - 前記客土は、団粒化させた泥状客土である請求項6記載の法面の樹林化工法。
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